(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025116700
(43)【公開日】2025-08-08
(54)【発明の名称】ペースト状試料計量装置及びペースト状試料計量装置に備えられる切り離し機構
(51)【国際特許分類】
G01G 13/06 20060101AFI20250801BHJP
G01G 17/04 20060101ALI20250801BHJP
【FI】
G01G13/06 Z
G01G17/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011281
(22)【出願日】2024-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】521086187
【氏名又は名称】株式会社AUC
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 健
【テーマコード(参考)】
2F046
【Fターム(参考)】
2F046BA05
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、シリンジから吐出されたペースト状試料の質量の測定時に、前の測定時のペースト状試料が混ざり合うのを防止できるペースト状試料計量装置及び切り離し機構を提供する。
【解決手段】ペースト状試料計量装置1は、ペースト状試料が充填される筒状の本体部15、及び本体部15の先端に設けられるノズル部16を有するシリンジ7が支持される支持部2と、噴射される圧縮空気によってノズル部16から吐出したペースト状試料を切断する切り離し機構3と、切り離し機構3に圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、切り離し機構3によって切断されたペースト状試料の質量を測定する質量測定部5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状試料が充填される筒状の本体部、及び前記本体部の先端に設けられるノズル部を有するシリンジが支持される支持部と、
噴射される圧縮空気によって前記ノズル部から吐出したペースト状試料を切断する切り離し機構と、
前記切り離し機構に圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、
前記切り離し機構によって切断されたペースト状試料の質量を測定する質量測定部と、を備えるペースト状試料計量装置。
【請求項2】
前記切り離し機構は、圧縮空気を噴射する噴射口を有し、
前記噴射口は、前記支持部に支持された状態の前記シリンジの前記ノズル部の先端よりも基端側に位置するとともに、前記ノズル部の先端に向くように傾斜している、請求項1に記載のペースト状試料計量装置。
【請求項3】
前記切り離し機構は、前記噴射口を複数有し、
複数の前記噴射口は、前記支持部に支持された状態の前記シリンジの前記ノズル部を囲むように位置するとともに、隣接する前記噴射口同士が等間隔に位置している、請求項2に記載のペースト状試料計量装置。
【請求項4】
前記切り離し機構は、前記支持部に設けられる噴射部を有し、
前記噴射部は、前記支持部に支持された状態の前記シリンジの前記ノズル部の軸線を取り囲む筒状隙間と、前記筒状隙間と前記噴射部の外部とを連通させる貫通孔と、前記筒状隙間に連通する複数の経路と、を有し、
前記圧縮空気供給源は、前記貫通孔を介して前記筒状隙間につながれており、
前記複数の経路はそれぞれ、前記噴射口と、前記筒状隙間に開口する連通口と、を有している、請求項3に記載のペースト状試料計量装置。
【請求項5】
前記噴射部は、前記支持部に着脱可能に設けられる、請求項4に記載のペースト状試料計量装置。
【請求項6】
ペースト状試料が充填される筒状の本体部、及び前記本体部の先端に設けられるノズル部を有するシリンジの前記ノズル部から吐出されるペースト状試料の質量を測定するペースト状試料計量装置に備えられ、噴射される圧縮空気によって前記ノズル部から吐出したペースト状試料を切断する切り離し機構であって、
圧縮空気を噴射する噴射口を複数有する噴射部を有し、
複数の前記噴射口はそれぞれ、前記ペースト状試料計量装置に設けられた状態の前記シリンジの前記ノズル部の先端よりも基端側に位置するとともに、前記ノズル部の先端に向くように傾斜し、
複数の前記噴射口は、前記ペースト状試料計量装置に設けられた状態の前記シリンジの前記ノズル部を囲むように位置するとともに、隣接する前記噴射口同士が等間隔に位置しており、
前記噴射部は、前記ペースト状試料計量装置に設けられた状態の前記シリンジの前記ノズル部の軸線を取り囲む筒状隙間と、前記筒状隙間と前記噴射部の外部とを連通させる貫通孔と、前記筒状隙間に連通する複数の経路と、を有し、
前記筒状隙間には、前記貫通孔を介して、圧縮空気供給源から圧縮空気が供給され、
前記複数の経路はそれぞれ、前記噴射口と、前記筒状隙間に開口する連通口と、を有している、切り離し機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状の試料の質量を測定できるペースト状試料計量装置と、ペースト状試料計量装置のシリンジから吐出されたペースト状試料をシリンジから切り離すことができる切り離し機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるペースト吐出装置が知られている。このペースト吐出装置では、ノズルの開口から吐出されたペーストを切断する切断手段として、線材であるワイヤーが用いられている。また、ノズルの開口から吐出されたペーストを切断する手段として、薄刃状のカッターが知られている。このようにしてノズルの開口から吐出されたペーストを切断することで、ノズルから吐出されたペーストがノズル内部のペーストとつながった状態となる糸引きという問題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ペーストの任意の質量を量り取るには、シリンジから任意の量のペーストが吐出され、その吐出されたペーストの質量が天秤で測定される。このような計量装置では、シリンジ先端の開口に向かって、シリンジ内部のペーストをピストンによって押し込むことで、シリンジからペーストが吐出される。このような構成では、シリンジから吐出されるペーストが少量の場合、シリンジの開口から吐出されたペーストがシリンジ内部のペーストとつながった状態となり、天秤に落下させることができないおそれがある。これは、特に、ペーストの粘度が高い場合や、ペーストが収容されるシリンジの口径が太い場合に顕著である。
【0005】
そこで、シリンジの開口から吐出されたペーストを切断する手段として、上述したワイヤー又はカッターを用いることが考えられる。切断手段としてワイヤー又はカッターを用いた場合、切断手段は、ペーストに直接に接触することになる。切断手段がペーストに直接に接触する構成では、シリンジ内のペーストを連続で吐出してそれぞれの質量を測定しようとすると、前に吐出したペーストが付着した切断手段によって、次に吐出したペーストが切断される場合がある。また、切断手段がペーストに直接に接触する構成では、複数の異なるシリンジを装置に対して取り替えながら、それぞれのシリンジから吐出されたペーストの質量を測定しようとすると、取り替え前のシリンジから吐出されたペーストが付着した切断手段によって、取り替え後のシリンジから吐出されたペーストが切断される場合がある。例えば、第1シリンジ内に収容された第1ペーストの質量の測定後に装置から第1シリンジを取り外した後、第1ペーストとは異なる第2ペーストが収容された第2シリンジを装置に取り付けて、第2シリンジ内の第2ペーストの質量を測定しようとすると、第1ペーストが付着した切断手段によって、第2ペーストが切断される場合がある。
【0006】
前にシリンジから吐出されたペースト(以下、前ペーストという)が付着した切断手段によって、次にシリンジから吐出されたペースト(以下、後ペーストという)が切断されると、後ペーストの質量の測定時に前ペーストが混ざってしまうおそれがある。後ペーストに前ペーストが混ざり合った状態では、後ペーストの質量を正確に測定することができない。また、後ペーストに前ペーストが混ざり合った状態では、質量測定後の後ペーストの分析にも悪影響を及ぼすことになるため、後ペーストの性質を正確に把握することができない。このような問題が生じないようにするために、前ペーストの質量の測定後に切断手段を洗浄することが考えられるが、切断手段を洗浄する手間と時間とがかかる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、シリンジから吐出されたペースト状試料の質量の測定時に、前の測定時のペースト状試料が混ざり合うのを防止できるペースト状試料計量装置と、これに用いられる切り離し機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るペースト状試料計量装置は、ペースト状試料が充填される筒状の本体部、及び前記本体部の先端に設けられるノズル部を有するシリンジが支持される支持部と、噴射される圧縮空気によって前記ノズル部から吐出したペースト状試料を切断する切り離し機構と、前記切り離し機構に圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、前記切り離し機構によって切断されたペースト状試料の質量を測定する質量測定部と、を備える。
【0009】
(2)上記(1)において、前記切り離し機構は、圧縮空気を噴射する噴射口を有し、前記噴射口は、前記支持部に支持された状態の前記シリンジの前記ノズル部の先端よりも基端側に位置するとともに、前記ノズル部の先端に向くように傾斜しているのが好ましい。
【0010】
(3)上記(2)において、前記切り離し機構は、前記噴射口を複数有し、複数の前記噴射口は、前記支持部に支持された状態の前記シリンジの前記ノズル部を囲むように位置するとともに、隣接する前記噴射口同士が等間隔に位置しているのが好ましい。
【0011】
(4)上記(3)において、前記切り離し機構は、前記支持部に設けられる噴射部を有し、前記噴射部は、前記支持部に支持された状態の前記シリンジの前記ノズル部の軸線を取り囲む筒状隙間と、前記筒状隙間と前記噴射部の外部とを連通させる貫通孔と、前記筒状隙間に連通する複数の経路と、を有し、前記圧縮空気供給源は、前記貫通孔を介して前記筒状隙間につながれており、前記複数の経路はそれぞれ、前記噴射口と、前記筒状隙間に開口する連通口と、を有しているのが好ましい。
【0012】
(5)上記(4)において、前記噴射部は、前記支持部に着脱可能に設けられるのが好ましい。
【0013】
(6)本発明に係る切り離し機構は、ペースト状試料が充填される筒状の本体部、及び前記本体部の先端に設けられるノズル部を有するシリンジの前記ノズル部から吐出されるペースト状試料の質量を測定するペースト状試料計量装置に備えられ、噴射される圧縮空気によって前記ノズル部から吐出したペースト状試料を切断する切り離し機構であって、圧縮空気を噴射する噴射口を複数有する噴射部を有し、複数の前記噴射口はそれぞれ、前記ペースト状試料計量装置に設けられた状態の前記シリンジの前記ノズル部の先端よりも基端側に位置するとともに、前記ノズル部の先端に向くように傾斜し、複数の前記噴射口は、前記ペースト状試料計量装置に設けられた状態の前記シリンジの前記ノズル部を囲むように位置するとともに、隣接する前記噴射口同士が等間隔に位置しており、前記噴射部は、前記ペースト状試料計量装置に設けられた状態の前記シリンジの前記ノズル部の軸線を取り囲む筒状隙間と、前記筒状隙間と前記噴射部の外部とを連通させる貫通孔と、前記筒状隙間に連通する複数の経路と、を有し、前記筒状隙間には、前記貫通孔を介して、圧縮空気供給源から圧縮空気が供給され、前記複数の経路はそれぞれ、前記噴射口と、前記筒状隙間に開口する連通口と、を有している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で、シリンジから吐出されたペースト状試料の質量の測定時に、前の測定時のペースト状試料が混ざり合うのを防止できるペースト状試料計量装置と、これに用いられる切り離し機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置を示す概略縦断面図であり、主要部を拡大して示している。
【
図3】本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置に備えられる切り離し機構の一例を示す図であり、下方から見た状態を示している。
【
図4】本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置に備えられる切り離し機構の一例を示す概略横断面図であり、上方から見た状態を示している。
【
図5】本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置の使用状態を示す概略側面図であり、装置にシリンジを取り付けた状態を示している。
【
図6】本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置の使用状態を示す概略斜視図であり、ピストン駆動部を拡大して示している。
【
図7】本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置の使用状態を示す概略側面図であり、シリンジからペースト状試料を吐出させるテストを行う状態を示している。
【
図8】本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置の使用状態を示す概略側面図であり、シリンジから質量測定部にペースト状試料を吐出させる状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るペースト状試料計量装置を示す概略斜視図である。
図2は、
図1のペースト状試料計量装置を示す概略縦断面図であり、主要部を拡大して示している。本実施形態に係るペースト状試料計量装置1は、切断されたペースト状試料の質量を測定する装置であって、支持部2、切り離し機構3、圧縮空気供給源4、質量測定部5、及び基台6を備える。
【0018】
本実施形態に係るペースト状試料計量装置1によって測定されるペースト状試料は、ペースト状であれば特に問わないが、例えば、医薬品である。典型的には、ペースト状試料は、ペースト状の歯磨き粉、またはペースト状の軟膏などが挙げられる。なお、ペースト状試料は、医薬品に限定されるものではなく、例えば、マヨネーズなどのペースト状の食品であってもよい。本実施形態において、ペースト状とは、ミキサーなどで材料を細かく砕いたもので、粒状の材料が多少残っているものも含まれる。
【0019】
このようなペースト状試料が充填されるシリンジ7は、支持部2に支持される。支持部2は、シリンジ7が保持される保持部8と、保持部8が支持される柱部9とを有する。保持部8は、略矩形のブロック状であり、上下方向に貫通する保持孔10を有する。柱部9は、一対の柱片11,11を有する。一対の柱片11,11は、上下方向に延出しており、後述する基台6に立設される。一対の柱片11,11は、基台6に設置された状態において、左右に離隔している。柱部9の上下方向中途部には、板状の取付片12を介して、保持部8が前方に突出した状態で設けられる。柱部9に保持部8が設けられた状態において、保持部8の保持孔10の軸方向は、上下方向に沿っている。なお、保持部8は、上下方向の位置を変更可能に柱部9に設けられるのが好ましい。
【0020】
図示例のペースト状試料計量装置1では、シリンジ7内のペースト状試料を押し出すことができる注入器13が用いられる。注入器13は、ペースト状試料が充填されるシリンジ7と、シリンジ7に進退可能に設けられるピストン部14とを有する。
【0021】
シリンジ7は、筒状の本体部15と、ペースト状試料の吐出口であるノズル部16とを有する。本体部15は、上下方向に開口した円筒状であり、下端部は先細りの円錐台状に形成されている。本体部15の内部には、ペースト状試料が充填される。ノズル部16は、上下方向に開口した円筒状であり、本体部15の下端部に設けられる。ノズル部16が本体部15に設けられた状態において、ノズル部16は、本体部15の下部開口及びノズル部16の上部開口を介して、本体部15と連通している。ノズル部16は、本体部15の下端部から下方に突出している。このようにしてノズル部16は、本体部15の先端に設けられる。ピストン部14は、本体部15の上部開口を介して、本体部15内にはめ込まれる。ピストン部14は、本体部15にはめ込まれた状態でノズル部16側に移動することで、本体部15内のペースト状試料をノズル部16から吐出させることができる。
【0022】
前述したように、本実施形態のペースト状試料計量装置1では、ピストン部14を有する注入器13が用いられる。そのため、本実施形態のペースト状試料計量装置1は、ピストン部14をノズル部16側に移動させるピストン駆動部17と、ピストン駆動部17を駆動させる駆動源18とを有する。ピストン駆動部17は、正面視略矩形状の板片19と、注入器13のピストン部14を押し下げる押し下げ機構20と、押し下げ機構20を駆動させる図示しない駆動源とを有する。板片19は、板面を前後方向に向けた状態で、柱部9に設けられる。板片19は、柱部9に対して、上下方向に移動可能、かつ上下方向の任意の位置で維持可能に設けられる。押し下げ機構20は、板片19に前方に突出して設けられる。
図6は、
図1のペースト状試料計量装置の使用状態を示す概略斜視図であり、ピストン駆動部を拡大して示している。ピストン駆動部17の押し下げ機構20は、板片19に設けられる。
【0023】
押し下げ機構20は、ピストン部14に接触する一対の接触片22,22と、一対の接触片22,22が保持される保持片23と、接触片22,22と保持片23とを連結する枢軸24とを有する。一対の接触片22,22はそれぞれ、略矩形の板状であり、基端部が二股に形成されている。保持片23は、略矩形のブロック状であり、板片19に前方に突出して設けられる。左右一対の接触片22,22のうち、左側に位置する接触片22は、保持片23の左側に設けられ、右側に位置する接触片22は、保持片23の右側に設けられる。左側に位置する接触片22は、左側に位置する接触片22の二股別れした部分に保持片23が差し込まれた状態で、上下方向に沿う枢軸24によって連結される。右側に位置する接触片22は、右側に位置する接触片22の二股別れした部分に保持片23が差し込まれた状態で、上下方向に沿う枢軸24によって連結される。このような構成により、一対の接触片22,22は、枢軸24まわりに互いに逆方向に回転可能に、板片19に設けられる。すなわち、一対の接触片22,22は、先端部同士が接触又は近接した閉状態と、先端部同士が離隔した開状態とに開閉可能である。
【0024】
押し下げ機構20を駆動させる駆動源は、典型的にはモータである。この駆動源を駆動させることによって、押し下げ機構20の一対の接触片22,22を開閉することができる。
図1に示すように、ピストン駆動部17を駆動させる駆動源18は、典型的にはモータであり、取付板25を介して柱部9に設けられる。この駆動源18を駆動することによって、ピストン駆動部17の板片19を上下方向に移動させることができる。ピストン駆動部17の板片19は、駆動源18が停止すると移動が止まり、移動が止まった位置で維持される。
【0025】
図3は、
図1のペースト状試料計量装置に備えられる切り離し機構の一例を示す図であり、下方から見た状態を示している。
図4は、
図1のペースト状試料計量装置に備えられる切り離し機構の一例を示す概略横断面図であり、上方から見た状態を示している。切り離し機構3は、噴射される圧縮空気によってノズル部16から吐出したペースト状試料を切断するものである。本実施形態では、切り離し機構3は、支持部2に設けられる噴射部26を有する。噴射部26は、上下方向に沿う略円柱状であり、保持部8の下面に設けられる。噴射部26は、上下方向に貫通する孔27を有する。この孔27は、平面視円形状の段付き孔であり、上側に位置する大径孔28と、下側に位置する小径孔29とを有する。小径孔29の内面は、下方に行くに従って拡径するように、テーパ面となっている。前述したように、噴射部26に設けられる孔27は、段付き孔である。従って、噴射部26は、平面視円形状の段部30を内部に有している。噴射部26の軸方向一端側である上端部には、径方向外方に延出した鍔部31が設けられる。
【0026】
噴射部26は、上方に開口した筒状隙間32と、筒状隙間32と噴射部26の外部とを連通させる複数の貫通孔33と、筒状隙間32に連通する複数の経路34とを有する。筒状隙間32は、円筒状の隙間であり、噴射部26の上面に開口している。筒状隙間32は、噴射部26の孔27を取り囲むように、噴射部26に設けられている。噴射部26の上面には、筒状隙間32よりも径方向内側に上方に開口した円環状の内側溝部35が設けられるとともに、筒状隙間32よりも径方向外側に上方に開口した円環状の外側溝部36が設けられる。図示例では、噴射部26は、2つの貫通孔33を有している。2つの貫通孔33は、噴射部26の径方向に対向した位置に設けられる。各貫通孔33は、噴射部26の径方向に沿っており、筒状隙間32に開口するとともに、噴射部26の外周面に開口している。図示例では、噴射部26は、6つの経路34を有している。複数の経路34はそれぞれ、直線状に形成された貫通孔形状であり、筒状隙間32に開口する連通口37と、圧縮空気を噴射する噴射口38とを有している。噴射口38は、小径孔29のテーパ状の内面に開口しているため、噴射部26の径方向内側に向くように傾斜している。このようにして噴射部26に設けられる複数の経路34は、噴射部26の周方向に等間隔に位置しているとともに、噴射部26の径方向に対向している。従って、噴射部26に設けられる複数の噴射口38は、噴射部26の周方向に等間隔に位置しているとともに、噴射部26の径方向に対向している。
【0027】
図2に示すように、切り離し機構3の噴射部26は、支持部2に着脱可能に設けられる。典型的には、保持部8の下面に噴射部26の鍔部31が当接した状態で、鍔部31を介して保持部8のねじ孔にねじ39をねじ込むことで、噴射部26は、保持部8に着脱可能に取り付けられる。噴射部26が支持部2に取り付けられた状態において、内側溝部35及び外側溝部36にはそれぞれ、円環状の封止材40が設けられる。従って、筒状隙間32よりも径方向内側において、噴射部26と保持部8との間の隙間が封止されるとともに、筒状隙間32よりも径方向外側において、噴射部26と保持部8との間の隙間が封止される。なお、図示例では、封止材40は、Oリングである。噴射部26が支持部2に取り付けられた状態において、保持部8の保持孔10は、噴射部26の孔27と連通している。典型的には、下側に位置する噴射部26の孔27は、上側に位置する保持部8の保持孔10と同一軸線上に配置されている。
【0028】
前述したように、噴射部26は、噴射部26の周方向に等間隔に配置された複数の噴射口38を有している。従って、切り離し機構3は、圧縮空気を噴射する噴射口38を複数有している。このようにして噴射口38が設けられた切り離し機構3には、圧縮空気供給源4から圧縮空気が供給される。圧縮空気供給源4は、典型的にはエアコンプレッサである。圧縮空気供給源4は、空気供給路41を介して、2つの貫通孔33につながれる。この際、空気供給路41は、継手42を介して噴射部26に接続される。空気供給路41には、空気供給路41を開閉する図示しない電磁弁が設けられる。このような構成であるので、圧縮空気供給源4は、貫通孔33を介して、筒状隙間32につながれる。従って、圧縮空気供給源4は、貫通孔33及び筒状隙間32を介して、経路34の噴射口38につながれる。
【0029】
切り離し機構3によって切断されたペースト状試料の質量は、質量測定部5によって測定される。質量測定部5は、例えば、対象物の質量を測定するための電子天秤である。質量測定部5には、切り離し機構3によって切断されたペースト状試料が収容される容器43を保持する容器保持部44が設けられる。容器保持部44は、有底筒状であり、上方に開口した状態で質量測定部5に固定される。容器43は、有底筒状であり、容器保持部44の上部開口から容器保持部44内に差し込まれることで、容器保持部44に保持される。容器43が容器保持部44に設けられた状態において、容器43は、上方に開口している。このようにして容器43は、容器保持部44を介して、質量測定部5に着脱可能に設けられる。
【0030】
質量測定部5は、基台6にスライド可能に設けられる。具体的には、質量測定部5は、質量測定部5に設けられた容器43が支持部2に取り付けられた噴射部26の下方に配置された位置と、質量測定部5に設けられた容器43が支持部2に取り付けられた噴射部26の下方から外れた位置との間を移動可能に基台6に設けられる。
【0031】
図1に示すように、基台6は、前後方向を長手方向とする平面視略長方形の板状であり、板面を上下方向に向けている。前述したように、基台6には、支持部2及び質量測定部5などが設けられる。支持部2は、基台6の後部に立設される。この際、支持部2は、柱部9から保持部8が前方に突出した状態で、基台6に設けられる。質量測定部5は、取付座45を介して、基台6に設けられる。
【0032】
取付座45は、平面視略L字形状であり、左右方向に延出する一片46と、前後方向に延出する他片47とを有する。取付座45の一片46は、基台6の上面に前後方向に移動可能に設けられる。一片46には、質量測定部5が載置された状態で固定される。この際、質量測定部5に設けられた容器43は、一片46の左側に位置している。取付座45の他片47は、一片46の左端部から後方に延出している。他片47は、一片46を介して基台6に設けられる。すなわち、他片47は、基台6に直接に設けられていない。他片47の後端部には、試料捨て容器48を保持する試料捨て容器保持部49が設けられる。試料捨て容器保持部49は、有底筒状であり、上方に開口した状態で他片47の後端部に固定される。試料捨て容器48は、有底筒状であり、試料捨て容器保持部49の上部開口から試料捨て容器保持部49内に差し込まれることで、試料捨て容器保持部49に保持される。試料捨て容器48が試料捨て容器保持部49に設けられた状態において、試料捨て容器48は、上方に開口している。このようにして試料捨て容器48は、試料捨て容器保持部49を介して、他片47の後端部に着脱可能に設けられる。
【0033】
このような構成であるので、基台6に対して取付座45を前後方向にスライドさせることで、前述したように質量測定部5を移動させることができる。本実施形態では、取付座45に試料捨て容器48が設けられるため、取付座45をスライドさせることで、容器43と試料捨て容器48とを同一方向に同時に移動させることができる。なお、本実施形態では、基台6に設けられた駆動源50を駆動することで、取付座45を前後方向にスライドさせることができる。駆動源50は、例えばモータである。
【0034】
次に、本実施形態のペースト状試料計量装置1の測定動作の一例について説明する。
図5、
図7及び
図8は、本実施形態のペースト状試料計量装置の使用状態を時系列に示す側面図である。
図5は、
図1のペースト状試料計量装置の使用状態を示す概略側面図であり、装置にシリンジを取り付けた状態を示している。
図7は、
図1のペースト状試料計量装置の使用状態を示す概略側面図であり、シリンジからペースト状試料を吐出させるテストを行う状態を示している。
図8は、
図1のペースト状試料計量装置の使用状態を示す概略側面図であり、シリンジから質量測定部にペースト状試料を吐出させる状態を示している。
【0035】
本実施形態のペースト状試料計量装置1は、
図5に示すように、支持部2にシリンジ7が保持された状態で使用される。本実施形態のペースト状試料計量装置1では、前述したように、シリンジ7を有する注入器13が用いられる。従って、本実施形態のペースト状試料計量装置1は、支持部2に注入器13が支持された状態で使用される。
【0036】
支持部2に注入器13を支持する際には、ピストン駆動部17の一対の接触片22,22を開いた状態とする。すなわち、
図6に示すように、一対の接触片22,22の先端部同士が離隔した状態とする。この状態において、ピストン部14が設けられたシリンジ7は、上方から保持部8の保持孔10に差し込まれる。シリンジ7が保持孔10に差し込まれると、
図2に示すように、シリンジ7の本体部15の下端部は、噴射部26の孔27に差し込まれて、噴射部26の内部に形成された段部30に接触する。シリンジ7が段部30に接触することで、シリンジ7は、保持部8及び噴射部26から下方に抜けるのが防止される。このようにして注入器13は、支持部2に支持される。
【0037】
シリンジ7が支持部2に支持された状態において、シリンジ7のノズル部16は、
図2に示すように、噴射部26の孔27から下方に突出している。前述したように、噴射部26に設けられた噴射口38は、小径孔29の内面に形成されている。これにより、噴射口38は、ノズル部16の下端よりも上方に位置している。また、噴射口38は、小径孔29のテーパ状の内面に形成されているため、噴射部26の内側に向かって斜め下方に傾斜している。従って、噴射口38は、支持部2に支持された状態のシリンジ7のノズル部16の先端よりも基端側に位置するとともに、ノズル部16の先端に向くように傾斜している。前述したように、複数の経路34は、噴射部26の周方向に等間隔に位置している。従って、複数の噴射口38は、支持部2に支持された状態のシリンジ7のノズル部16を囲むように位置するとともに、隣接する噴射口38,38同士が等間隔に位置している。このような噴射口38と連通される筒状隙間32は、噴射部26の孔27を取り囲むように形成されている。従って、筒状隙間32は、支持部2に支持された状態のシリンジ7のノズル部16の軸線を取り囲んでいる。
【0038】
シリンジ7が支持部2に支持された後、
図7に示すように、ピストン駆動部17の一対の接触片22,22を閉じた状態とする。すなわち、一対の接触片22,22の先端部同士を接触した状態とする。この状態において、ピストン駆動部17の板片19を下方に移動させると、一対の接触片22,22によってピストン部14がノズル部16側に押し込まれる。なお、シリンジ7内のペースト状試料がノズル部16から一度も吐出されていない新品の注入器13では、シリンジ7内に空気が入っているため、ピストン部14を多少押し込んだくらいではペースト状試料をノズル部16から吐出することができない。従って、ペースト状試料の質量の測定前に、後述する前処理が行われる。この前処理を行う際には、支持部2に支持されたシリンジ7のノズル部16の下方に、試料捨て容器48が配置される。
【0039】
具体的には、任意の量のペースト状試料をノズル部16から吐出させる。この場合、ピストン部14は、任意の量のペースト状試料がノズル部16から吐出されるまで、ノズル部16側に押し込まれる。任意の量のペースト状試料がノズル部16から吐出されたか否かは、支持部2に設けられる図示しないセンサによって検出される。任意の量のペースト状試料がノズル部16から吐出されたことをセンサが検出すると、駆動源18が停止するように制御されて、板片19の下方への移動が停止される。
【0040】
任意の量のペースト状試料がノズル部16から吐出された際に、ノズル部16から吐出されたペースト状試料が自然に切れた場合には、切れたペースト状試料は、下方に落下して試料捨て容器48内に収容される。任意の量のペースト状試料がノズル部16から吐出された際に、ノズル部16から吐出されたペースト状試料がシリンジ7内のペースト状試料とつながっている場合には、ノズル部16から吐出されたペースト状試料は、切り離し機構3によって切断される。ノズル部16から吐出されたペースト状試料を切り離し機構3によって切断するには、圧縮空気供給源4からの圧縮空気を噴射口38から噴射すればよい。
【0041】
圧縮空気供給源4からの圧縮空気は、空気供給路41を介して、噴射部26の貫通孔33に供給される。この際、空気供給路41に設けられた電磁弁は開かれている。貫通孔33に供給された圧縮空気は、貫通孔33と連通する筒状隙間32に供給される。筒状隙間32に供給された圧縮空気は、筒状隙間32と連通する複数の経路34に供給される。そして、圧縮空気は、複数の経路34それぞれの噴射口38からノズル部16の先端に向かって噴射される。このようにして噴射された圧縮空気によって、ノズル部16から吐出したペースト状試料は、シリンジ7内のペースト状試料から切断される。切断されたペースト状試料は、下方に落下して試料捨て容器48内に収容される。切断後、噴射口38からの圧縮空気の噴射を停止するには、空気供給路41に設けられた電磁弁を閉じればよい。
【0042】
以上のような前処理の終了後、本実施形態のペースト状試料計量装置1によって、ペースト状試料の質量の測定が行われる。
図8に示すように、ペースト状試料の質量の測定を行う際には、支持部2に支持されたシリンジ7のノズル部16の下方に、容器43が配置される。すなわち、前処理後、基台6に設けられた駆動源50を駆動して、取付座45を後方に移動させる。ここでは、5グラムのペースト状試料を測定する場合について説明する。なお、測定される質量は、5グラムに限定されるものではない。
【0043】
5グラムのペースト状試料を測定する場合、例えば、2.5グラム分のペースト状試料がノズル部16から吐出される。これは、板片19の下方への移動距離がノズル部16から吐出されるペースト状試料が2.5グラム分となるように、駆動源を制御することでなされる。その後、ノズル部16から吐出されたペースト状試料がシリンジ7内のペースト状試料とつながっている場合には、切り離し機構3によって、ノズル部16から吐出されたペースト状試料が切断される。ノズル部16から吐出されたペースト状試料の切断は、前述した場合と同様にして行われる。すなわち、圧縮空気供給源4から空気供給路41、貫通孔33、筒状隙間32、及び複数の経路34を介して供給された圧縮空気が噴射口38から噴射されることで、ノズル部16から吐出されたペースト状試料は、シリンジ7内のペースト状試料から切断される。
【0044】
切断されたペースト状試料は、下方に落下して容器43内に収容される。容器43内に収容されたペースト状試料の質量は、質量測定部5によって測定される。切断後、空気供給路41に設けられた電磁弁が閉じられる。その後、ノズル部16からのペースト状試料の吐出とその吐出部分の切断が、質量測定部5によって測定される質量が5グラムとなるまで繰り返される。なお、ノズル部16からのペースト状試料の吐出とその吐出部分の切断を繰り返す際、ノズル部16からのペースト状試料の吐出量は、後半になるにつれて減少させるのが好ましい。
【0045】
従来では、ペースト状試料に直接に接触するカッターなどの切り離し機構によってペースト状試料を切断している。従って、シリンジ7から吐出されたペースト状試料の質量の測定時に、前の測定時に切り離し機構に付着したペースト状試料が混ざり合うおそれがあった。これに対し、本実施形態のペースト状試料計量装置1の場合、ペースト状試料計量装置1は、噴射される圧縮空気によってノズル部16から吐出したペースト状試料を切断する切り離し機構3を備えている。従って、本実施形態のペースト状試料計量装置1によれば、シリンジ7から吐出されたペースト状試料の質量の測定時に、前の測定時のペースト状試料が混ざり合うのを防止できる。
【0046】
本実施形態のペースト状試料計量装置1の場合、噴射口38は、支持部2に支持された状態のシリンジ7のノズル部16の先端よりも基端側に位置するとともに、ノズル部16の先端に向くように傾斜している。これにより、噴射口38からの圧縮空気は、ノズル部16の先端に向かって斜め下方に噴射される。従って、本実施形態のペースト状試料計量装置1によれば、切断されたペースト状試料が横方向に飛ばされることがなく、切断されたペースト状試料を容器43内に確実に落下させることができる。
【0047】
本実施形態のペースト状試料計量装置1の場合、複数の噴射口38は、支持部2に支持された状態のシリンジ7のノズル部16を囲むように位置するとともに、隣接する噴射口38,38同士が等間隔に位置している。従って、本実施形態のペースト状試料計量装置1によれば、切断されたペースト状試料が横方向に飛ばされるのをより確実に防止できる。
【0048】
本実施形態のペースト状試料計量装置1の場合、噴射部26は、支持部2に支持された状態のシリンジ7のノズル部16の軸線を取り囲む筒状隙間32を有している。従って、本実施形態のペースト状試料計量装置1によれば、複数の噴射口38に対して圧縮空気を均一に分配できる。
【0049】
本実施形態の切り離し機構3によれば、切り離し機構3が前述した構成を有するので、シリンジ7から吐出されたペースト状試料の質量の測定時に、前の測定時のペースト状試料が混ざり合うのを防止できる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0051】
例えば、前記実施形態では、噴射部26に噴射口38が6つ設けられたが、これに限定されるものではない。噴射口38の数は、適宜に変更可能であり、複数であるのが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
1 ペースト状試料計量装置
2 支持部
3 切り離し機構
4 圧縮空気供給源
5 質量測定部
7 シリンジ
15 本体部
16 ノズル部
26 噴射部
32 筒状隙間
33 貫通孔
34 経路
37 連通口
38 噴射口