(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025116743
(43)【公開日】2025-08-08
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ駆動制御装置、モータ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20250801BHJP
【FI】
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011351
(22)【出願日】2024-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA08
5H501CC01
5H501DD08
5H501EE08
5H501GG03
5H501HA06
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ23
5H501JJ24
5H501KK06
5H501LL10
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL53
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】発生している複数の種類の異常種別を回転速度信号により特定する。
【解決手段】モータ40の目標回転速度に基づいて、モータの駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部22と、モータ40の回転位置検出信号に基づいて、モータ40の回転速度に応じたデューティ比のパルス信号である回転速度信号を生成する回転速度信号算出部24と、モータから取得される複数の種類のモータの異常判定の条件値について、条件値が所定の閾値に到達したか否かを判定し、条件値が所定の閾値に到達したと判定された場合に、条件値の種類ごとに異なる値の組み合わせに応じて設定されるデューティ比のパルス信号である異常判定信号を出力する異常判定処理部25と、異常判定信号が出力されない場合に回転速度信号を出力し、異常判定信号が出力された場合に回転速度信号と異常判定信号とを出力する信号出力部26と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、
前記モータの回転位置検出信号に基づいて、前記モータの回転速度に応じたデューティ比のパルス信号である回転速度信号を生成する回転速度信号算出部と、
前記モータから取得される複数の種類の前記モータの異常判定の条件値について、前記条件値が所定の閾値に到達したか否かを判定し、前記条件値が前記閾値に到達したと判定された場合に、前記条件値の種類ごとに異なる値の組み合わせに応じて設定されるデューティ比のパルス信号である異常判定信号を出力する異常判定処理部と、
前記異常判定処理部から前記異常判定信号が出力されない場合に前記回転速度信号算出部が生成した前記回転速度信号を出力し、前記異常判定信号が出力された場合に前記回転速度信号と前記異常判定処理部から出力された前記異常判定信号とを出力する信号出力部と、
を備える、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記信号出力部は、前記異常判定信号が出力された場合に、前記回転速度信号の高電圧信号の期間に前記異常判定信号の高電圧信号の期間を加算して1つの高電圧信号として出力する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記異常判定処理部は、所定の異常判定周期ごとに前記条件値が前記閾値に到達したか否かを判定し、
前記条件値が前記閾値に到達したと判定された後に前記条件値が前記閾値を満たさなくなった場合に、前記異常判定信号の出力を停止する、
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記異常判定処理部は、所定の異常判定周期ごとに前記条件値が前記閾値に到達したか否かを判定し、
前記閾値に到達した前記条件値が、直前の前記異常判定周期で前記閾値に到達した前記条件値と異なる場合には、異常種別の数が最も多い最新の前記異常種別の組み合わせによる前記異常判定信号を所定の時間維持する、
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記条件値の種類は、前記モータの電流値、電圧値、前記回転速度に基づく値である、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
モータの目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動する駆動回路と、
前記モータの回転位置検出信号に基づいて、前記モータの回転速度に応じたデューティ比のパルス信号である回転速度信号を生成する回転速度信号算出部と、
前記モータから取得される複数の種類の前記モータの異常判定の条件値について、前記条件値が所定の閾値に到達したか否かを判定し、前記条件値が前記閾値に到達したと判定された場合に、前記条件値の種類ごとに異なる値の組み合わせに応じて設定されるデューティ比のパルス信号である異常判定信号を生成する異常判定処理部と、
前記異常判定処理部から前記異常判定信号が生成されない場合に前記回転速度信号算出部が生成した前記回転速度信号を出力し、前記異常判定信号が生成された場合に前記回転速度信号と前記異常判定処理部から出力された前記異常判定信号とを出力する信号出力部と、
を備える、
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
モータの目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動制御信号を生成するステップと、
前記モータの回転位置検出信号に基づいて、前記モータの回転速度に応じたデューティ比のパルス信号である回転速度信号を生成するステップと、
前記モータから取得される複数の種類の前記モータの異常判定の条件値について、前記条件値が所定の閾値に到達したか否かを判定し、前記条件値が前記閾値に到達したと判定された場合に、前記条件値の種類ごとに異なる値の組み合わせに応じて設定されるデューティ比のパルス信号である異常判定信号を出力するステップと、
前記異常判定信号が出力されない場合に前記回転速度信号を出力し、前記異常判定信号が出力された場合に前記回転速度信号と前記異常判定信号とを出力するステップと、
を実行する、
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、モータ駆動制御装置、モータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サーバ装置などの機器の冷却に用いられるファンのモータなどのモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置において、モータの回転速度を外部機器に知らせるための回転速度信号を、回転数に比例した回転速度信号の周波数を所定周波数分遷移させてモータの異常を外部機器に知らせる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、例えば、複数の種類の異常種別が同時期に発生した場合に、発生している複数の種類の異常種別の組み合わせを特定することができない場合があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、発生している複数の種類の異常種別を回転速度信号により特定することができるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータ制御装置は、モータの目標回転速度に基づいて、前記モータの駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、前記モータの回転位置検出信号に基づいて、前記モータの回転速度に応じたデューティ比のパルス信号である回転速度信号を生成する回転速度信号算出部と、前記モータから取得される複数の種類の前記モータの異常判定の条件値について、前記条件値が所定の閾値に到達したか否かを判定し、前記条件値が所定の閾値に到達したと判定された場合に、前記条件値の種類ごとに異なる値の組み合わせに応じて設定されるデューティ比のパルス信号である異常判定信号を出力する異常判定処理部と、前記異常判定処理部から前記異常判定信号が出力されない場合に前記回転速度信号算出部が生成した前記回転速度信号を出力し、前記異常判定信号が出力された場合に前記回転速度信号と前記異常判定処理部から出力された前記異常判定信号とを出力する信号出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るモータ制御装置によれば、発生している複数の種類の異常種別を回転速度信号により特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えるモータ装置の一例であるファンユニットの構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図2】制御回路の信号出力部から出力される回転速度信号及び異常判定信号の波形の一例を示す図である。
【
図3】異常判定処理部が判定する異常種別の組み合わせと組み合わせに対応するデューティ比の一例を示す表である。
【
図4】異常判定処理部が判定する異常種別の組み合わせと組み合わせに対応するデューティ比の一例を示す表である。
【
図5】制御回路の信号出力部から出力される複数の異常判定信号の波形の組み合わせの一例を示す図である。
【
図6】制御回路の信号出力部から出力される複数の異常判定信号の波形の組み合わせの別の一例を示す図である。
【
図7】制御回路の信号出力部から出力される複数の異常判定信号の波形の組み合わせのさらに別の一例を示す図である。
【
図8】
図1に示す制御回路における制御処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るモータ制御装置、モータ駆動制御装置、モータ制御方法について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えるモータ装置の一例であるファンユニット1の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るモータ装置の一例である、ファンユニット1は、モータ制御装置の一例である制御回路2、駆動回路3、ファン4、及び、位置検出器5を備える。制御回路2及び駆動回路3は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置の一例である。
【0012】
制御回路2は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラなどの各種コンピュータ)において、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいてA/D変換回路や入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、以下の機能ブロックが実現されている。ファンユニット1では、プログラム処理装置に、上述したハードウェア資源を用いてモータ制御プログラムを実行させることにより、制御回路2の機能ブロック、すなわち、駆動指令信号解析部21、駆動制御信号生成部22、回転速度算出部23、回転速度信号算出部(FG信号生成部)24、異常判定処理部25、及び、信号出力部26を実現する。
【0013】
なお、ファンユニット1におけるモータ駆動制御装置は、駆動回路3と制御回路2の機能部の少なくとも一部とが一つの集積回路装置(IC)としてパッケージ化された構成であってもよいし、駆動回路3と制御回路2の機能部がそれぞれ個別の集積回路装置として夫々パッケージ化された構成であってもよい。
【0014】
駆動回路3は、駆動制御信号生成部22によって生成された駆動制御信号Sdに基づいてモータ40を駆動する。駆動回路3は、例えば、インバータ回路及びプリドライブ回路(不図示)を有している。
【0015】
インバータ回路は、プリドライブ回路から出力された出力信号に基づいてモータ40に駆動信号を出力し、モータ40が備えるコイルに通電する。インバータ回路は、例えば、直流電源の両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、各相のコイルに対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ40の各相の端子が接続されている。
【0016】
プリドライブ回路は、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路に出力する。プリドライブ回路は、例えば、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路の各スイッチ素子を駆動する駆動信号を生成して出力する。この駆動信号がインバータ回路を構成する各スイッチ素子をオン/オフさせることにより、モータ40の各相に電力が供給されてモータ40のロータが回転する。
【0017】
ファンユニット1において、ファン4は、モータ40と、モータ40の回転軸に取り付けられているインペラ41と、を備える。
【0018】
モータ40は、例えば、回転軸に接続されていてモータ40の回転力により回転するインペラ41がロータを構成するアウターロータ型のブラシレスDC(Direct Current)モータである。モータ40は、上述した回転軸の他、不図示の軸受、ステータ、マグネット、ケーシング、及び回路基板などを備える。また、モータ40は、
図1に示した位置検出器5を備える。
【0019】
位置検出器5は、モータ40の回転軸の回転位置を検出する。位置検出器5は、例えば、ホール素子である。位置検出器5は、位置検出信号(ホール信号)Shを回転速度算出部23及び回転速度信号算出部24に出力する。位置検出器5は、回転軸の位置情報を検出して電気信号として出力できればよく、例えばロータリエンコーダであってもよい。
【0020】
図1に示すように、ファンユニット1は、駆動回路3に電気的に接続する電源端子P1と、グラウンド端子P2と、信号入力端子P3と、信号出力部26に電気的に接続する信号出力端子P4と、を備える。電源端子P1には、電源Vdcが接続されている。グラウンド端子P2には、グラウンド線Gが接続されている。信号入力端子P3には、駆動指令信号Sc(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号)が入力する入力信号線が接続されている。信号出力端子P4には、出力信号Soを出力する出力信号線が接続されている。
【0021】
以下、制御回路2を構成する各機能部について詳細に説明する。
【0022】
駆動指令信号解析部21は、信号入力端子P3から入力される駆動指令信号Sc(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号)から目標回転速度Stgの情報を取得する。駆動指令信号解析部21は、取得した目標回転速度Stgの情報を駆動制御信号生成部22に出力する。
【0023】
回転速度算出部23は、位置検出器5から出力されたモータ40の回転位置検出信号(ホール信号)Shに基づいて、モータ40の回転速度Srを算出する。回転速度算出部23は、算出したモータ40の回転速度Srを駆動制御信号生成部22に出力する。
【0024】
駆動制御信号生成部22は、モータ40の目標回転速度Stgとモータ40の回転速度Srとに基づいて、モータ40の駆動制御信号Sdを生成する。具体的には、駆動制御信号生成部22は、目標回転速度Stgとモータの回転速度Srとの誤差を算出し、例えば、PID(Proportional Integral Differential)制御演算により、誤差がゼロになるようにモータ40の動作量を算出し、算出した動作量に応じたデューティ比を有するPWM信号を生成して、駆動制御信号Sdとして出力する。なお、駆動制御信号生成部22は、モータ40の回転速度を維持しようとせず一定の力で回そうとするオープンループ制御で行う場合、所定の回転速度を維持するための動作量に応じたデューティ比を有するPWM信号を生成して、駆動制御信号Sdとして出力する。
【0025】
回転速度信号算出部24は、モータ40の回転位置検出信号Shに基づいて、モータ40の回転速度に応じた周波数を有する回転速度信号Ss(FG信号)を生成する。具体的には、回転速度信号Ssは、パルス信号のような、モータ40の回転速度に応じた周期で出力される周期信号である。なお、回転速度信号Ssは、モータ40の回転速度に応じた周波数を有する周期信号であればよい。
【0026】
異常判定処理部25は、モータ40から取得される複数の種類のモータ40の異常判定の条件値について、所定の異常判定周期ごとに、条件値が所定の閾値に到達したか否か、すなわち、複数の種類の異常判定の条件値が異常であるか否かを判定する。具体的には、異常判定処理部25は、異常判定の条件値の一例であるモータ40の電流値、電圧値、回転速度に基づく値が、所定の閾値(上限値または下限値)に到達したか否かを判定する。
【0027】
異常判定処理部25は、駆動回路3から取得するモータ40の駆動電流信号Siの値に基づいて、モータ40の駆動電流の値が過電流であるか否かの閾値に到達したか否かを判定する。異常判定処理部25は、モータ40の駆動電流信号Siの値に基づいて、電流異常(駆動電流の変動量(ふら付き))が所定の閾値に到達したか否かを判定する。異常判定処理部25は、駆動回路3から取得するモータ40の駆動電圧信号Svの値に基づいて、モータ40の駆動電圧の値が過電圧または低電圧であるか否かの閾値に到達したか否かを判定する。また、位置検出器5から取得する回転位置検出信号Shの値に基づいて、回転異常(回転速度の変動(ふら付き)が所定の範囲よりも大きいこと)を検知する。
【0028】
なお、異常判定処理部25は、電流値と電圧値を、駆動回路3から取得する例に限らず、例えば、駆動制御信号生成部22が生成した駆動制御信号Sdから取得してもよい。また、異常判定処理部25は、回転速度に基づく値を、位置検出器5が出力した回転位置検出信号Shから取得する例に限らず、例えば、回転速度算出部23が算出したモータ40の回転速度Srから取得してもよい。
【0029】
異常判定処理部25は、条件値が所定の閾値に到達したと判定された場合に、モータ40の回転速度信号Ssに対して識別可能な異常判定信号Saを生成する。異常判定信号Saとは、複数の種類の異常判定の値が閾値を超えた場合に、ファンユニット1のモータ40に異常が発生したことを示す信号である。
【0030】
信号出力部26には、回転速度信号Ssと異常判定信号Saとが入力する。信号出力部26は、回転速度信号Ssと回転速度信号Ss及び異常判定信号Saを含む信号とのいずれか一方を、出力信号Soとして信号出力端子P4に出力する。信号出力部26は、異常判定信号Saが生成されない場合に回転速度信号算出部24が生成した回転速度信号Ssを出力信号Soとして信号出力端子P4に出力する。一方、異常判定信号Saが生成された場合に、信号出力部26は、回転速度信号Ssとともに異常判定信号Saを出力信号Soとして信号出力端子P4に出力する。
【0031】
図2は、信号出力部26から出力される回転速度信号Ss及び異常判定信号Saの波形の一例を示す図である。
図2には、信号出力部26から出力される、モータ40の一回転において、回転速度信号Ss(FG信号)の波形、及び、回転速度信号Ssと異常判定信号Saとを含む波形が出力される例を示している。
【0032】
回転速度信号Ssは、上述したようにモータ40の回転速度に応じた周期で高電圧信号(HI信号)と低電圧信号(LO信号)とがデューティ比50%で交互に出力されるパルス信号である。
【0033】
異常判定信号Saは、回転速度信号Ssに付加される、異常判定の条件値の種類ごとに異なる値の組み合わせに応じて設定されるデューティ比のパルス信号である。異常判定信号Saは、例えば、
図2に示すように、回転速度信号SsのHI信号と同レベルの信号を、回転速度信号SsのHI信号から継続して所定の時間出力している。つまり、所定のデューティ比、例えば、HI信号のデューティ比25%の異常判定信号Saは、
図2に示すように、HI信号のデューティ比50%の回転速度信号Ssと合わせて出力されることで、例えば、HI信号のデューティ比75%の信号として出力される。異常判定信号Saは、1回の異常判定周期に1つの周期信号が出力される。
【0034】
図3及び
図4は、異常判定処理部25が判定する異常種別の組み合わせと組み合わせに対応するデューティ比の一例を示す表である。異常判定処理部25は、
図3及び
図4に示すような、異常種別の組み合わせと、その組み合わせに対応する、回転速度信号Ssと異常判定信号Saとを合算したHI信号のデューティ比に関する情報に基づいて、出力する信号のデューティ比を特定する。異常種別の組み合わせと組み合わせに対応するデューティ比の一例を示す表は、例えば、テーブルとして制御回路2のRAM,ROM等の各種記憶装置(不図示)に格納されている。
【0035】
なお、各種記憶装置に格納されている異常判定信号Saのデューティ比に関する情報には、異常判定信号SaのHI信号のデューティ比のみが格納されていてもよい。
【0036】
図3及び
図4において、「異常No.組み合わせ」には、異常種別の番号(No.)、及び、複数の種類の異常種別の番号の組み合わせが表示されている。「異常No.組み合わせ」において、番号「1」が過電流検知、番号「2」が過電圧または低電圧検知、番号「3」が回転異常検知、番号「4」が電流異常検知をそれぞれ示す。「異常No.組み合わせ」において、複数の番号が併記されている場合は、複数の種類の異常が生じた場合を示している。
【0037】
図3及び
図4において、「ON-Duty[%]」には、異常種別の組み合わせに対応する、回転速度信号Ssと異常判定信号SaとのHI信号のデューティ比を合算したHI信号のデューティ比[%]が表示されている。
【0038】
図3及び
図4の表では、ともに、正常な状態のHI信号のデューティ比が回転速度信号Ssのみの50%、判定可能な4つの異常種別を全て含む場合のHI信号のデューティ比が100%(1周期においてHI信号のみ出力)としている。
図3の表では、異常種別ごとに異なるHI信号のデューティ比の異常判定信号Saを付加した場合を示している。
図4の表では、回転速度信号Ssに加算する異常判定信号SaのHI信号のデューティ比を、異常種別の組み合わせ数が1つの場合に10%、2つの場合に25%、3つの場合に40%と、組み合わせ数に応じて変化させている。
【0039】
図5から
図7は、信号出力部26から出力される複数の異常判定信号Saの波形の組み合わせの一例を示す図である。
【0040】
図5は、上述した
図3の表に示した、異常種別ごとに異なるHI信号のデューティ比の異常判定信号Saを付加した場合において、所定の閾値に到達した条件値が、直前の異常判定周期で閾値に到達した条件値と異なる場合を示している。
【0041】
図6及び
図7は、上述した
図4の表に示した、回転速度信号Ssに加算する異常判定信号SaのHI信号のデューティ比を、異常種別の組み合わせ数に応じて変化させる場合において、所定の閾値に到達した条件値が、直前の異常判定周期で閾値に到達した条件値と異なる場合を示している。
【0042】
図5から
図7に示すように、異常判定処理部25は、所定の異常判定周期ごとに条件値が所定の閾値に到達したか否かを判定する。異常判定処理部25は、所定の閾値に到達した条件値が、直前の異常判定周期で閾値に到達した条件値と異なる場合には、異常種別の数が最も多い最新の異常種別の組み合わせによる回転速度信号Ssと異常判定信号SaとのHI信号のデューティ比(On-Duty)を合算したHI信号のデューティ比を所定の時間維持する。例えば、
図5から
図7に示すように、異常判定処理部25で、いずれも異常1が発生したことでOn-Dutyが50%から55.5%または60%に上昇させる。その後、新たな異常として異常2が発生すると、On-Dutyが68.5%または75%に上昇する。さらにその後、複数の異常のうちいずれか一方が解消した場合に、異常判定処理部25は、最新の異常である異常2が発生してから所定時間(例えば、1分間)は、異常種別の数が最も多い最新の異常種別の組み合わせに応じたOn-Dutyを出力する。なお、条件値が所定の閾値に到達したと判定された後に条件値が前記閾値を満たさなくなった場合に、異常判定処理部25は、On-Dutyを50%に戻して異常判定信号の出力を停止する。
【0043】
図8は、制御回路2における制御処理のフローチャートの一例である。
図8に示すフローチャートを参照して以上説明した制御回路2における処理を説明する。
【0044】
駆動制御信号生成部22は、モータ40の目標回転速度Stgとモータ40の回転位置検出信号Shに基づいて算出されるモータ40の回転速度Srとに基づいて、モータの駆動制御信号Sdを生成する。
【0045】
回転速度信号算出部24は、モータ40の回転位置検出信号Shに基づいて、モータ40の回転速度に応じた周波数を有する回転速度信号Ssを生成する。回転速度信号算出部24は、回転速度信号SsのHI信号のデューティ比を(On-Duty)50%に設定する(ステップS101)。
【0046】
異常判定処理部25は、モータ40の駆動回路3から取得した駆動電流信号Si及び駆動電圧信号Svと、位置検出器5から取得した回転位置検出信号Shとに基づく異常判定処理の条件値が、それぞれ異常であるか否かの判定を行う所定の閾値に到達したか否かを判定する(ステップS102)。
【0047】
異常判定処理部25は、複数の種類のうちいずれかの種類において異常判定の条件値が所定の閾値に到達したと判定された場合に(S102:YES)、異常判定信号Saを生成する。
【0048】
信号出力部26は、異常判定信号Saが生成された場合に回転速度信号Ssに異常判定信号Saを加算した新たなHI信号のデューティ比(On-Duty)を決定する(ステップS103)。
【0049】
異常判定処理部25は、新たな異常が発生したか否かを判定する(ステップS104)。
【0050】
新たな異常が発生した場合(S104:YES)、異常判定処理部25は、デューティ比の保持時間をクリアする(ステップS105)。異常判定処理部25は、つまり、保持時間のカウントを初期値から行う。新たな異常が発生しない場合(S104:NO)、異常判定処理部25は、デューティ比の保持時間のカウントアップ、つまり、保持時間の加算を行う(ステップS106)。
【0051】
異常判定処理部25は、デューティ比の保持時間がカウンタ(上限)に到達したか否かを判定する(ステップS107)。デューティ比の保持時間がカウンタに到達したと判定された場合に(S107:YES)、全ての異常が解消したか否かを判定する(ステップS108)。一方、デューティ比の保持時間がカウンタに到達していないと判定された場合(S107:NO)、S110の処理に移行する。
【0052】
全ての異常が解消したと判定された場合(S108:YES)、異常判定処理部25は、異常判定信号Saを含まない回転速度信号SsのHI信号のデューティ比となるように、デューティ比(On-Duty)を50%に設定する(ステップS109)。一方、異常が解消していないと判定された場合(S108:NO)、S110の処理に移行する。
【0053】
信号出力部26は、以上の処理に応じた回転速度信号SsのHI信号のデューティ比、または、回転速度信号Ssに異常判定信号SaのHI信号のデューティ比を加算したHI信号のデューティ比(On-Duty)に設定し、出力信号Soとして出力する(ステップS110)。
【0054】
以上のように構成されている制御回路2は、信号出力部26が、異常判定処理部25により異常判定信号Saが生成された場合に回転速度信号Ssとともに異常判定信号Saを出力する。このため、制御回路2を備えるファンユニット1は、
図1に示すように電源端子P1に接続されている電源線、グラウンド端子P2に接続されているグラウンド線、信号入力端子P3に接続されている信号入力線、及び、信号出力端子P4に接続されている信号出力線の4本のリード線を有する構成であっても、異常判定信号Saを出力するための端子及びリード線を増設することなく、異常判定信号Saを外部機器に出力することができる。
【0055】
以上のように構成されている制御回路2において、異常判定処理部25は、異常判定の条件値の一例であるモータ40の電流値、電圧値、回転速度に基づく値が、所定の閾値に到達したか否かを判定する。信号出力部26は、回転速度信号算出部24から入力した回転速度信号Ssと回転速度信号Ss及び異常判定信号Saを含む信号とのいずれか一方を、出力信号Soとして出力する。このため、制御回路2を備えるファンユニット1は、異常判定信号Saを出力するための端子及びリード線を増設することなく、複数の種類の異常に関する異常判定信号Saを外部機器に出力することができる。
【0056】
従って、異常判定処理部25及び信号出力部26が設けられている制御回路2によれば、発生している複数の種類の異常種別を出力信号Soにより特定することができる。
【0057】
また、制御回路2を備えるファンユニット1は、所定の周期で異常判定処理を行い、異常種別が最も多い最新の異常判定処理の結果を異常判定信号Saとして所定時間出力することができる。
【0058】
上述したファンユニット1の制御回路2により実現される異常判定処理部25、及び、信号出力部26の機能は、駆動指令信号解析部21を備えていないファンユニット1においても、実現することができる。すなわち、駆動指令信号解析部21を備えていないファンユニット1の制御回路2においても、異常判定処理部25により異常判定信号Saが生成された場合に、信号出力部26から回転速度信号Ssに替えて異常判定信号Saを含む出力信号Soを出力する処理を実現することができる。
【0059】
以上説明したファンユニット1は、例えば、サーバ装置のような電気機器システムにおいて、電気機器の各部にそれぞれ配置された複数台のファンユニット1のモータ40を駆動して電気機器の冷却を行うものにも適用することができる。すなわち、ファンユニット1を複数備えるサーバ装置において、以上説明した制御回路2による異常判定処理を実行することができる。
【0060】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0061】
例えば、以上説明した実施の形態では、ファンユニット1の制御回路2において、異常判定処理部25及び信号出力部26を実現していたが、ファンユニット以外のモータを制御するモータ制御装置、モータ駆動制御装置においても、異常判定処理部25及び信号出力部26による処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…ファンユニット、2…制御回路、3…駆動回路、4…ファン、5…位置検出器、21…駆動指令信号解析部、22…駆動制御信号生成部、23…回転速度算出部、24…回転速度信号算出部(FG信号生成部)、25…異常判定処理部、26…信号出力部、40…モータ、41…インペラ、Sc…駆動指令信号、Stg…目標回転速度、Sd…駆動制御信号、Sh…位置検出信号、Sr…回転速度、Ss…回転速度信号、Sa…異常判定信号、So…出力信号