(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011692
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】スキャン制御装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20250117BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G05F1/67 A
H02J7/35 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113951
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸範
【テーマコード(参考)】
5G503
5H420
【Fターム(参考)】
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB13
5G503FA06
5H420BB03
5H420BB14
5H420CC03
5H420DD02
5H420EA48
5H420FF03
5H420FF05
5H420FF22
(57)【要約】
【課題】ソーラーパネルの最大電力点を正確に追従できないソーラーモジュールが存在する場合でもシステム全体の発電効率の低下を抑制できるスキャン制御装置を提供する。
【解決手段】ソーラーパネル、ソーラーパネルの発電状態を取得するセンサ、発電状態に基づいてソーラーパネルの発電を制御する発電制御部、を備えたソーラーモジュールを、複数接続したシステムにおいて、各発電制御部が実行する各ソーラーパネルの出力電圧を走査して最大電力点を探索するスキャン処理を制御するスキャン制御装置であって、各ソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足するか否かを判断する判断部と、ソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しない制御対象のソーラーモジュールがある場合、特定のソーラーモジュールにおけるスキャン処理の結果に基づいたソーラーパネルの発電制御を、制御対象のソーラーモジュールの発電制御部に指示する指示部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーパネル、前記ソーラーパネルの発電状態を取得するセンサ、および前記ソーラーパネルの発電状態に基づいて前記ソーラーパネルの発電を制御する発電制御部、を備えたソーラーモジュールを、複数接続したシステムにおいて、各前記発電制御部が実行する各前記ソーラーパネルの出力電圧を走査して最大電力点を探索するスキャン処理を制御するスキャン制御装置であって、
各前記ソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足するか否かを判断する判断部と、
前記判断部において前記ソーラーパネルの発電状態が前記所定の条件を満足しないと判断された制御対象の前記ソーラーモジュールがある場合、前記制御対象のソーラーモジュールとは異なる特定の前記ソーラーモジュールにおける前記スキャン処理の結果に基づいた前記ソーラーパネルの発電制御を、前記制御対象のソーラーモジュールの前記発電制御部に指示する指示部と、を備える、スキャン制御装置。
【請求項2】
前記センサは、前記発電状態として前記ソーラーパネルの出力電圧を取得し、
前記所定の条件には、前記ソーラーパネルの出力電圧が、前記ソーラーモジュールが正常である場合に取り得る所定の範囲の値であることが含まれる、請求項1に記載のスキャン制御装置。
【請求項3】
前記センサは、前記発電状態として前記ソーラーパネルの発電電力を取得し、
前記所定の条件には、前記ソーラーパネルの発電電力が、前記ソーラーモジュールが正常である場合に現在の日射状況において取り得る最小電力値以上の電力であることが含まれる、請求項1に記載のスキャン制御装置。
【請求項4】
前記特定のソーラーモジュールは、前記制御対象のソーラーモジュールとの間で日射状況に相関関係を有するモジュールである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスキャン制御装置。
【請求項5】
前記制御対象のソーラーモジュールと前記特定のソーラーモジュールとは、積層して接合された構造である、請求項4に記載のスキャン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両などに搭載されるソーラー充電システムが備えるスキャン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数のソーラーパネルを設けた車載のソーラー充電システムが開示されている。この特許文献1に記載されたソーラー充電システムでは、ソーラーパネル毎に設けられるソーラー制御装置のそれぞれが、自装置の制御対象であるソーラーパネルについて最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御を実行する。このMPPT制御では、日射状態の変化などの環境変化によってソーラーパネルの出力電圧が変化した場合において高精度で最大電力点を探索するために、ソーラーパネルの出力電圧を走査させるスキャン処理を実施して、P-V曲線上の最適なポイントを探し出すことが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたソーラー充電システムでは、複数のソーラー制御装置がそれぞれ独立して制御対象であるソーラーパネルのMPPT制御を実施していが、複数のソーラー制御装置間での協調的な処理は行われていない。このため、センサの故障や制御の異常などによってソーラーパネルの最大電力点を正確に追従できないソーラーモジュールが存在すると、そのソーラーパネルのスキャン精度の低下、スキャン頻度の増加、およびスキャン時間の増大などが生じ、ソーラー充電システム全体の発電効率が低下してしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ソーラーパネルの最大電力点を正確に追従できないソーラーモジュールが存在する場合でも、ソーラー充電システム全体として発電効率の低下を抑制することができる、スキャン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、ソーラーパネル、ソーラーパネルの発電状態を取得するセンサ、およびソーラーパネルの発電状態に基づいてソーラーパネルの発電を制御する発電制御部、を備えたソーラーモジュールを、複数接続したシステムにおいて、各発電制御部が実行する各ソーラーパネルの出力電圧を走査して最大電力点を探索するスキャン処理を制御するスキャン制御装置であって、各ソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足するか否かを判断する判断部と、判断部においてソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しないと判断された制御対象のソーラーモジュールがある場合、制御対象のソーラーモジュールとは異なる特定のソーラーモジュールにおけるスキャン処理の結果に基づいたソーラーパネルの発電制御を、制御対象のソーラーモジュールの発電制御部に指示する指示部と、を備える、スキャン制御装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示のスキャン制御装置によれば、ソーラーパネルの最大電力点を正確に追従できないソーラーモジュールが存在する場合でも、ソーラー充電システム全体の発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るスキャン制御装置を含むソーラー充電システムの構成例を示すブロック図
【
図2A】複数のソーラーパネルを車両に多系統構造で搭載した一例を示す図
【
図2B】複数のソーラーパネルを車両に多接合構造で搭載した一例を示す図
【
図3】スキャン制御装置が実施するスキャン処理制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のスキャン制御装置は、複数のソーラーモジュールの中にMPPT制御が上手く行かないソーラーモジュールがある場合に、MPPT制御に問題がない他のソーラーモジュールのスキャン処理の結果を、MPPT制御が上手く行かないソーラーモジュールの発電制御に応用する。この制御により、ソーラー充電システム全体としての発電効率の低下を抑える。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るスキャン制御装置50を含むソーラー充電システム1の概略構成を示すブロック図である。
図1に例示したソーラー充電システム1は、第1のソーラーモジュール10と、第2のソーラーモジュール20と、バッテリ30と、負荷機器40と、スキャン制御装置50と、を備える。
図1においては、電力が伝わる接続線を太い実線で示し、電力以外の制御信号や検出値などが送受信される接続線を点線で示している。このソーラー充電システム1は、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、および電気自動車(BEV)などの車両に搭載され得る。
【0011】
第1のソーラーモジュール10および第2のソーラーモジュール20は、それぞれ太陽光の照射を受けて発電する発電装置であり、発電した電力を、第1のソーラーモジュール10および第2のソーラーモジュール20に接続されるバッテリ30や負荷機器40などに出力することができる。なお、
図1では、ソーラー充電システム1が第1のソーラーモジュール10と第2のソーラーモジュール20との2つを備える例を説明したが、ソーラーモジュールの数は2つに限定されるものではなく3つ以上の複数であってもよい。
【0012】
第1のソーラーモジュール10は、第1のソーラーパネル11と、第1のDCDCコンバーター12と、第1のセンサ13と、第1の制御部14と、を構成に含む。第2のソーラーモジュール20は、第2のソーラーパネル21と、第2のDCDCコンバーター22と、第2のセンサ23と、第2の制御部24と、を構成に含む。
【0013】
第1のソーラーパネル11および第2のソーラーパネル21は、それぞれ太陽光の照射量に応じた電力を発電することができる機器であり、典型的には太陽電池セルの集合体である。この第1のソーラーパネル11と第2のソーラーパネル21とは、それぞれ異なる場所に並べて平面的に設置されてもよいし、同じ場所に重ねて立体的に設置されてもよい。
図2Aに、第1のソーラーパネル11と第2のソーラーパネル21とを車両のルーフに並べて設置した場合(多系統構造)のイメージ例を示す。
図2Bに、第1のソーラーパネル11と第2のソーラーパネル21とを車両のルーフに重ねて設置した場合(多接合構造)のイメージ例を示す。
【0014】
この第1のソーラーパネル11と第2のソーラーパネル21とは、互いに日射状況に相関関係を有する場所に設置されることが望ましい。日射状況に相関関係が有るとは、双方の太陽光の当たり方がほぼ同等である、または一方の太陽光の当たり方から他方の太陽光の当たり方を推測することが可能である、などによって表現できる。より具体的には、例えば、パネルを異なる場所に並べて設置する多系統構造(
図2A)の場合、第1のソーラーパネル11の面の法線方向や曲率と、第2のソーラーパネル21の面の法線方向や曲率とが、一致または近似していれば日射状況に相関関係が有ると言える。ソーラーパネルを3つ以上設置する場合には、各ソーラーパネルが、少なくとも1つの他のソーラーパネルとの間に日射状況に相関関係を有していることが望ましい。一方、パネルを同じ場所に重ねて設置する多接合構造(
図2B)の場合には、第1のソーラーパネル11と第2のソーラーパネル21とで面の法線方向や曲率はすでに一致しているので、日射状況に相関関係が有ると言える。但し、このような多接合構造の場合には、第1のソーラーパネル11を透過して第2のソーラーパネル21に届く光量が第1のソーラーパネル11が受ける光量よりも減少するため、第1のソーラーパネル11の受光量から第2のソーラーパネル21の受光量(またはその逆)を推測するために、第1のソーラーパネル11の光透過率や光減衰率などを予め把握しておくとよい。なお、車両にソーラーパネルを設置する場所としては、ルーフ以外にボンネット、バックドア、トランク、ウインドウなどが挙げられる。
【0015】
第1のDCDCコンバーター12および第2のDCDCコンバーター22は、第1のソーラーパネル11および第2のソーラーパネル21の発電をそれぞれ独立して制御するための構成である。第1のDCDCコンバーター12は、第1のソーラーパネル11で発電された電力を入力し、その入力した電力を所定の電圧に変換して出力するための電力変換器である。この第1のDCDCコンバーター12は、第1の制御部14からの制御(指示)に従って、発電電力の変換や出力などの制御を行う。第1のDCDCコンバーター12の出力は、バッテリ30および負荷機器40に供給される。また、第2のDCDCコンバーター22は、第2のソーラーパネル21で発電された電力を入力し、その入力した電力を所定の電圧に変換して出力するための電力変換器である。この第2のDCDCコンバーター22は、第2の制御部24からの制御(指示)に従って、発電電力の変換や出力などの制御を行う。第2のDCDCコンバーター22の出力は、第1のDCDCコンバーター12の出力と共に、バッテリ30および負荷機器40に並列供給される。
【0016】
第1のセンサ13および第2のセンサ23は、第1のソーラーパネル11および第2のソーラーパネル21の発電状態をそれぞれ個別に取得するための構成である。第1のセンサ13は、第1のソーラーパネル11の発電状態として、第1のソーラーパネル11の出力電圧、出力電流、温度、発電電力などの物理量を取得することができる。また、第2のセンサ23は、第2のソーラーパネル21の発電状態として、第2のソーラーパネル21の出力電圧、出力電流、温度、発電電力などの物理量を取得することができる。この第1のセンサ13および第2のセンサ23には、電圧センサや電流センサなどの各種の検出素子を用いることができる。
【0017】
第1の制御部14および第2の制御部24は、第1のDCDCコンバーター12および第2のDCDCコンバーター22の動作をそれぞれ独立して制御するための構成である。第1の制御部14は、第1のセンサ13が取得した第1のソーラーパネル11の発電状態に基づいて、第1のDCDCコンバーター12を制御(および指示)する。この制御には、第1のDCDCコンバーター12に対して発電のための電圧指令値を出力する制御や、第1のソーラーパネル11の最大電力点を探索するためのスキャン処理を実施するMPPT制御が、含まれる。第2の制御部24は、第2のセンサ23が取得した第2のソーラーパネル21の発電状態に基づいて、第2のDCDCコンバーター22を制御(および指示)する。この制御には、第2のDCDCコンバーター22に対して発電のための電圧指令値を出力する制御や、第2のソーラーパネル21の最大電力点を探索するためのスキャン処理を実施するMPPT制御が、含まれる。本実施形態のMPPT制御には、周知の技術を用いることができる。
【0018】
上述した第1のDCDCコンバーター12および第1の制御部14は、第1のソーラーパネル11の発電を制御する発電制御部として機能する。また、上述した第2のDCDCコンバーター22および第2の制御部24は、第2のソーラーパネル21の発電を制御する発電制御部として機能する。
【0019】
バッテリ30は、例えばリチウムイオン電池や鉛蓄電池などの、充放電可能に構成された二次電池である。バッテリ30は、第1のソーラーモジュール10および第2のソーラーモジュール20に接続されており、第1のソーラーパネル11が発生する電力を第1のDCDCコンバーター12を介して充電可能に、また第2のソーラーパネル21が発生する電力を第2のDCDCコンバーター22を介して充電可能に、構成されている。
【0020】
負荷機器40は、バッテリ30に接続されており、バッテリ30から供給される電力で動作する様々な機器である。
【0021】
スキャン制御装置50は、第1のソーラーモジュール10および第2のソーラーモジュール20における第1のソーラーパネル11および第2のソーラーパネル21の発電状態を監視し、第1のDCDCコンバーター12および第2のDCDCコンバーター22が実施するMPPT制御のスキャン処理を好適に制御する。このスキャン制御装置50は、典型的にはプロセッサ、メモリ、および入出力インターフェイスを含んだ電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)として構成され、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、以下に説明する判断部51および指示部52の機能を実現させる。
【0022】
判断部51は、第1のソーラーパネル11および第2のソーラーパネル21のそれぞれについて、ソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足するか否かを判断することを行う。所定の条件としては、ソーラーパネルの出力電圧が、ソーラーモジュールが正常である場合に取り得ると推測される所定の範囲の値であることや、ソーラーパネルの発電電力が、ソーラーモジュールが正常である場合に現在の日射状況において取り得ると推測される最小電力値以上の電力であること、などを例示することができる。また、判断部51は、第1のソーラーモジュール10および第2のソーラーモジュール20においてスキャン処理を実行するタイミングの到来を判断してもよい。
【0023】
指示部52は、第1のソーラーパネル11および第2のソーラーパネル21のうち、一方のソーラーモジュールにおいて、判断部51によってソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しないと判断された場合、他方のソーラーモジュールにおけるスキャン処理の結果を用いたソーラーパネルの発電制御を一方のソーラーモジュールの制御部に対して指示する。例えば、第1のソーラーパネル11の発電状態が所定の条件を満足しない場合は、第1のソーラーモジュール10の第1の制御部14に対して、第2のソーラーモジュール20におけるスキャン処理の結果を用いた第1のソーラーパネル11の発電制御を指示する。
【0024】
なお、ソーラー充電システム1が3つ以上のソーラーモジュールを備えている場合には、指示部52は、判断部51によってソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しないソーラーモジュールが少なくとも1つあると判断されれば、所定の条件を満足するソーラーモジュールのうちソーラーパネルの日射状況に相関関係のあるソーラーモジュールにおけるスキャン処理の結果を、所定の条件を満足しないソーラーモジュールに伝えて制御を指示すればよい。
スキャン制御装置50が実行する制御について、以降に詳細に説明する。
【0025】
[制御]
図3をさらに参照して、複数のソーラーモジュールを備えるソーラー充電システム1で行われる制御を説明する。
図3は、本実施形態に係るスキャン制御装置50が実行するスキャン処理制御の手順を示すフローチャートである。この
図3に例示するスキャン処理制御は、例えば、ソーラー充電システム1が起動されると開始され、ソーラー充電システム1が停止するまで繰り返し実行される。
【0026】
(ステップS301)
スキャン制御装置50の判断部51は、複数のソーラーモジュール(第1のソーラーモジュール10および第2のソーラーモジュール20を含む)において、スキャン処理を実行するタイミングになったか否かを判断する。このタイミングは、スキャン処理を定期的に実行できるように予め固定的に与えることができる。スキャン処理を実行するタイミングは、ソーラーモジュールからスキャン制御装置50に通知されてもよいし、スキャン制御装置50が管理してもよい。判断部51がスキャン処理を実行するタイミングになったと判断した場合は(ステップS301、はい)、ステップS302に処理が進む。
【0027】
(ステップS302)
スキャン制御装置50の判断部51は、複数のソーラーモジュールの中に、ソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しないソーラーモジュール(以下「制御対象のソーラーモジュール」という)があるか否かを判断する。所定の条件を満足しない例としては、ソーラーパネルの出力電圧が予め推定される電圧値と大きく乖離している場合や、ソーラーパネルの発電電力が予め推定される最小電力値よりも小さい場合、などが挙げられる。
図1のように、ソーラー充電システム1が第1のソーラーモジュール10と第2のソーラーモジュール20との2つを備えている場合、判断部51は、第1のソーラーモジュール10および第2のソーラーモジュール20のうちの一方のソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しないか否かを判断すればよい。
【0028】
判断部51が、ソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しないソーラーモジュールがあると判断した場合は(ステップS302、はい)、ステップS303に処理が進む。一方、判断部51が、ソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しないソーラーモジュールはないと判断した場合は(ステップS302、いいえ)、ステップS306に処理が進む。
【0029】
(ステップS303)
スキャン制御装置50の指示部52は、複数のソーラーモジュールのうち、制御対象のソーラーモジュール以外となるソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足するソーラーモジュール(以下「制御非対象のソーラーモジュール」という)に対して、スキャン処理を実行するように制御(指示)する。この制御(指示)によって、制御非対象のソーラーモジュールにおいてMPPT制御のスキャン処理がそれぞれ実施される。指示部52の指示によって制御非対象のソーラーモジュールにおいてスキャン処理が実施されると、ステップS304に処理が進む。
【0030】
(ステップS304)
スキャン制御装置50の指示部52は、スキャン処理を実施した制御非対象のソーラーモジュールのうち、特定のソーラーモジュールにおいて実施されたスキャン処理の結果を特定のソーラーモジュールから取得する。この特定のソーラーモジュールとは、制御対象のソーラーモジュールとの間で日射状況に相関関係を有するソーラーモジュールである。日射状況に相関関係を有することに関しては、上述した通りである。指示部52によって特定のソーラーモジュールのスキャン処理結果が取得されると、ステップS305に処理が進む。
【0031】
(ステップS305)
スキャン制御装置50の指示部52は、制御対象のソーラーモジュールの制御部に対しては、特定のソーラーモジュールのスキャン処理の結果に基づいたソーラーパネルの発電制御を行うように指示する。
【0032】
具体的には、例えば、制御対象のソーラーモジュールのソーラーパネルと特定のソーラーモジュールのソーラーパネルとが多系統構造(
図2A)である場合、指示部52は、特定のソーラーモジュールのソーラーパネルにおいて最大電力点を得られたDCDCコンバーターの電圧指令値を、制御対象のソーラーモジュールのDCDCコンバーターの電圧指令値として用いるように、制御対象のソーラーモジュールの制御部へ指示することができる。また、例えば、制御対象のソーラーモジュールのソーラーパネルと特定のソーラーモジュールのソーラーパネルとが多接合構造(
図2B)である場合、指示部52は、特定のソーラーモジュールのソーラーパネルにおいて最大電力点を得られたDCDCコンバーターの電圧指令値にソーラーパネルの光透過率や光減衰率などを反映させた新たな電圧指令値を導出し、この導出した新たな電圧指令値を制御対象のソーラーモジュールのDCDCコンバーターの電圧指令値として用いるように、制御対象のソーラーモジュールの制御部へ指示することができる。
【0033】
一方、スキャン制御装置50の指示部52は、制御非対象のソーラーモジュールの制御部に対しては、それぞれのソーラーモジュールにおいて得られた各自のスキャン処理の結果に基づいてソーラーパネルの発電制御を行うようにそれぞれ指示する。
【0034】
指示部52によって、制御対象のソーラーモジュールおよび制御非対象のソーラーモジュールに対してソーラーパネルの発電制御の指示がそれぞれ行われると、ステップS301に処理が進む。
【0035】
(ステップS306)
スキャン制御装置50の指示部52は、ソーラー充電システム1が備える全てのソーラーモジュールの制御部に対して、それぞれのソーラーモジュールにおいて得られた各自のスキャン処理の結果に基づいてソーラーパネルの発電制御を行うようにそれぞれ指示する。指示部52によって、全てのソーラーモジュールに対してソーラーパネルの発電制御の指示が行われると、ステップS301に処理が進む。
【0036】
なお、上述した処理フローにおいて、ステップS301で行うスキャン処理を実行するタイミングの到来を判断する処理は、ステップS302によるソーラーパネルの発電状態が所定の条件を満足しないソーラーモジュールの有無を判断する処理を行った後に実施してもよい。
【0037】
また、上述した処理フローにおけるステップS305の具体例では、指示部52が、制御対象のソーラーモジュールに対してスキャン処理を実施させることなく、特定のソーラーモジュールのソーラーパネルにおいて最大電力点を得られたDCDCコンバーターの電圧指令値をそのまま指示する制御を行う、ことを説明した。しかし、この制御以外にも、例えば、制御対象のソーラーモジュールの状態がセンサは正常であるがMPPT制御が不安定であるような場合には、特定のソーラーモジュールのソーラーパネルにおいて最大電力点を得られたDCDCコンバーターの電圧指令値に基づいて探索範囲を絞ったまたは探索間隔を広げたスキャン処理を、制御対象のソーラーモジュールに実施させる制御としてもよい。
【0038】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係るスキャン制御装置によれば、ソーラー充電システムが備える複数のソーラーモジュールの中に所定の条件を満足しないソーラーモジュール(制御対象)が存在する場合、所定の条件を満足するソーラーモジュール(制御非対象)のうち所定の条件を満足しないソーラーモジュール(制御対象)との間で日射状況に相関関係を有するソーラーモジュール(特定)におけるスキャン処理の結果に基づいて、所定の条件を満足しないソーラーモジュール(制御対象)のソーラーパネルの発電を制御する。
【0039】
この制御によって、ソーラー充電システムの中に、センサが故障して使用できなかったり、システムの制御ECUにおいてMPPT制御が不安定になるなどの異常が生じていたりして、最大電力点を正確に追従できないソーラーモジュールが存在していても、そのソーラーモジュールの動作に、日射状況が似ており制御の方向が同じであると推定される他のソーラーモジュールにおいて実測した制御値を利用できる。これにより、精度が低い状態でスキャン処理を実施したり、満足する結果が得られるまでスキャン処理を頻繁に実施したり、追従性能の劣化によりスキャン処理を長時間継続して実施したりする、という望まない処理がされてしまうことを回避できるので、ソーラー充電システム全体としての発電効率の低下を抑制することができる(制御性の向上、発電量の向上)。
【0040】
以上、本開示の一実施形態を説明したが、本開示は、スキャン制御装置、スキャン制御装置を備えたソーラー充電システム、スキャン制御装置が実行する方法、その方法を実行させるためのプログラム、そのプログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記録媒体、およびスキャン制御装置を含むソーラー充電システムを搭載した車両など、として捉えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示のスキャン制御装置は、複数のソーラーモジュールを備えたソーラー充電システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ソーラー充電システム
10、20 ソーラーモジュール
11、21 ソーラーパネル
12、22 DCDCコンバーター
13、23 センサ
14、24 制御部
30 バッテリ
40 負荷機器
50 スキャン制御装置
51 判断部
52 指示部