(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011693
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】差動歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 48/38 20120101AFI20250117BHJP
F16H 48/40 20120101ALI20250117BHJP
【FI】
F16H48/38
F16H48/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113952
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 克彦
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA37
3J027FB02
(57)【要約】
【課題】リングギヤの変形を防止又は抑制する。
【解決手段】差動歯車装置は、デフケースと、前記デフケースに固定されたリングギヤと、を備える。この場合、前記デフケースの外周面には、前記リングギヤに向けて径方向外側へ突出する外向きフランジが設けられており、前記リングギヤの内周面には、前記デフケースに向けて径方向内側へ突出する内向きフランジが、軸方向の一方側へオフセットして設けられている。加えて、前記外向きフランジと前記内向きフランジとは、軸方向において互いに対向するとともに、複数のボルトによって互いに締結されている。加えて、前記内向きフランジの厚みは、前記外向きフランジに対向する内周部分よりも、前記内周部分に対して径方向外側に位置する外周部分において大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフケースと、
前記デフケースに固定されたリングギヤと、
を備え、
前記デフケースの外周面には、前記リングギヤに向けて径方向外側へ突出する外向きフランジが設けられており、
前記リングギヤの内周面には、前記デフケースに向けて径方向内側へ突出する内向きフランジが、軸方向の一方側へオフセットして設けられており、
前記外向きフランジと前記内向きフランジとは、軸方向において互いに対向するとともに、複数のボルトによって互いに締結されており、
前記内向きフランジの厚みは、前記外向きフランジに対向する内周部分よりも、前記内周部分に対して径方向外側に位置する外周部分において大きい、
差動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、差動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、差動歯車装置が記載されている。差動歯車装置は、デフケースと、
デフケースに固定されたリングギヤと、を備える。デフケースには、その外周面に外向きフランジが設けられている。リングギヤには、その内周面に内向きフランジが設けられており、当該外向きフランジと内向きフランジとは、複数のボルトによって互いに締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の差動歯車装置では、リングギヤの内向きフランジが、リングギヤにおいて軸方向の一方側へオフセットされている。即ち、リングギヤの内周面では、内向きフランジが、軸方向における中央位置ではなく、一方側に寄せて配置されている。このような構成によると、リングギヤに作用する噛み合い時の荷重に対して、内向きフランジがリングギヤを支持する位置は、軸方向の一方側へ偏ることになる。そのため、リングギヤへ噛み合い時の荷重が作用したときに、内向きフランジから離れた軸方向の他方側では、リングギヤが径方向内側に向けて変位(歯の倒れ)及び変形(歯のたわみ)しやすい。本明細書は、リングギヤの変形を防止又は抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術に係る差動歯車装置は、デフケースと、前記デフケースに固定されたリングギヤと、を備える。この場合、前記デフケースの外周面には、前記リングギヤに向けて径方向外側へ突出する外向きフランジが設けられており、前記リングギヤの内周面には、前記デフケースに向けて径方向内側へ突出する内向きフランジが、軸方向の一方側へオフセットして設けられている。加えて、前記外向きフランジと前記内向きフランジとは、軸方向において互いに対向するとともに、複数のボルトによって互いに締結されている。加えて、前記内向きフランジの厚みは、前記外向きフランジに対向する内周部分よりも、前記内周部分に対して径方向外側に位置する外周部分において大きい。
【0006】
上記した構成では、リングギヤに設けられた内向きフランジの外周部分が、即ち、内向きフランジの根元に位置する部分が、その内周部分より厚く形成されている。このような構成によると、内向きフランジの位置が軸方向においてオフセットされていても、リングギヤに作用する噛み合い時の荷重に対して、リングギヤの軸方向他方側における変位や変形を防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】差動歯車装置10の構成を示す断面図である。
【
図3】リングギヤに作用する荷重を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0008】
図面を参照して、実施例の差動歯車装置10について説明する。本実施例の差動歯車装置10は、車両用の差動歯車装置である。なお、本明細書では、本技術が開示する技術に係る要部のみが説明され、差動歯車装置10の細部についての説明は省略される。
【0009】
図1及び
図2に示すように、差動歯車装置10は、デフケース12と、デフケース12に固定されたリングギヤ14とを備える。
【0010】
デフケース12は、その内部に複数のギヤを収容する。複数のギヤには、複数のピニオンギヤや二つのサイドギヤが含まれる。
【0011】
デフケース12の外周面12bに、リングギヤ14に向けて径方向外側へ突出する外向きフランジ13が設けられている。外向きフランジ13は、環状の板状を有し、デフケース12の外周面12bを周方向に沿って一巡している。
【0012】
リングギヤ14は、円環形状を有するギヤ部材である。リングギヤ14は、デフケース12を径方向外側から取り囲むように配置される。リングギヤ14の外周面14bには、複数の歯を構成する歯面が形成されている。リングギヤ14の複数の歯は、斜歯である。但し、リングギヤ14の歯は、斜歯に限定されず、平歯であってもよい。
【0013】
リングギヤ14の内周面14aには、デフケース12に向けて径方向内側へ突出する内向きフランジ15が設けられている。内向きフランジ15は、環状の板状を有し、リングギヤ14の内周面14aを周方向に沿って一巡している。内向きフランジ15は、リングギヤ14の内周面14aにおいて、軸方向の一方側へオフセットされている。内向きフランジ15は、デフケース12の外向きフランジ13と軸方向において対向している。
【0014】
デフケース12の外向きフランジ13には、複数の締結穴13hが設けられている。複数の締結穴13hは、いわゆるキリ孔であり、外向きフランジ13を軸方向に沿って貫通する。同様に、リングギヤ14の内向きフランジ15にも、複数の締結穴15hが設けられている。複数の締結穴15hは、ねじが切られた貫通孔であり、内向きフランジ15を軸方向に沿って貫通する。内向きフランジ15の複数の締結穴15hは、外向きフランジ13の複数の締結穴13hに合わせて配列されている。
【0015】
外向きフランジ13と、内向きフランジ15とは、複数のボルト16によって互いに締結されている。具体的には、複数のボルト16は、リングギヤ14の他方側からワッシャ17、外向きフランジ13、及び内向きフランジ15、を順に貫通して、デフケース12とリングギヤ14とを互いに固定する。
【0016】
図2及び
図3を参照して、主にリングギヤ14の内向きフランジ15を詳細に説明する。
図2及び
図3に示すように、内向きフランジ15は、内周部分15aと、内周部分15aよりも径方向外側に位置する外周部分15bとを有する。内向きフランジ15の内周部分15aは、デフケース12の外向きフランジ13と軸方向において対向する。内向きフランジ15の内周部分15aの厚みT
1は、内周部分15aの全体に亘って略一定である。内向きフランジ15の外周部分15bの厚みT
2は、内向きフランジ15の内周部分15aよりも大きい。
【0017】
内向きフランジ15の外向きフランジ13と対向する面には、立設面15cが設けられている。立設面15cは、内周部分15aと外周部分15bとの間の境界に位置しており、軸方向に延びている。この立設面15cによって、内周部分15aと外周部分15bとの間に段差が形成され、内向きフランジ15の厚みが、内周部分15aと外周部分15bとの間で不連続に変化している。立設面15cは、デフケース12の外向きフランジ13の外周面13eに沿って延びている。特に限定されないが、立設面15cの軸方向における寸法(即ち、段差の高さ)は、デフケース12の外向きフランジ13の軸方向における寸法(即ち、外向きフランジ13の厚み)よりも小さい。
【0018】
上述したように、本実施例の差動歯車装置10では、リングギヤ14の内向きフランジ15が、リングギヤ14において軸方向の一方側へオフセットされている。即ち、リングギヤ14の内周面14aでは、内向きフランジ15が、軸方向における中央位置ではなく、一方側に寄せて配置されている。このような構成によると、リングギヤ14に作用する噛み合い時の荷重(
図3に示すスラスト荷重Faやラジアル荷重Fb)に対して、内向きフランジ15がリングギヤ14を支持する位置は、軸方向の一方側へ偏ることになる。そのため、リングギヤ14へ噛み合い時の荷重Fa、Fbが作用したときに、内向きフランジ15から離れた軸方向の他方側では、リングギヤ14が径方向内側に向けて変位(歯の倒れ)及び変形(歯のたわみ)しやすい(
図3に示す矢印D参照)。
【0019】
上記を鑑みて、本実施例では、リングギヤ14に設けられた内向きフランジ15の外周部分15bが、即ち、内向きフランジ15の根元に位置する部分が、その内周部分15aより厚く形成されている。このような構成によると、内向きフランジ15の位置が軸方向においてオフセットされていても、リングギヤ14に作用する噛み合い時の荷重Fa、Fbに対して、リングギヤ14の軸方向他方側における変位や変形(
図3に示す矢印Dを参照)を防止又は抑制することができる。
【0020】
特に本実施例では、リングギヤ14が斜歯ギヤであるため、リングギヤ14の噛み合い時に、リングギヤ14には、軸方向に平行な方向のスラスト荷重Faと、径方向に平行な方向のラジアル荷重Fbとが作用する。二つの荷重Fa、Fbにより、リングギヤ14は、径方向内側に向けての変位及び変形を大きく受けやすい。このような構成に対して本技術を採用することで、リングギヤ14の軸方向他方側における変位や変形をより防止又は抑制することができる。