(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011696
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20160101AFI20250117BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20250117BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20250117BHJP
C25B 9/70 20210101ALI20250117BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20250117BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20250117BHJP
C25B 1/04 20210101ALN20250117BHJP
C25B 9/00 20210101ALN20250117BHJP
H01M 8/0273 20160101ALN20250117BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/2483
H01M8/2465
C25B9/70
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/10 101
C25B1/04
C25B9/00 A
H01M8/0273
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113956
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 計介
(72)【発明者】
【氏名】林 千栄
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲也
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DC01
4K021DC03
5H126AA02
5H126AA22
5H126AA23
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE11
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】電気化学反応セルスタックの耐久性を向上する。
【解決手段】電気化学反応セルスタックは、第1部材と、第1部材と第1の方向に重複する部分である重複部を有する第2部材と、第1部材と第2部材とを接合する接合部であって、第2部材における重複部と、第1部材における重複部と第1の方向に対向する部分と、を接合する接合部と、を備える。重複部は、第1の方向視において少なくとも1つの環状の輪郭線である重複部輪郭線を有している。電気化学反応セルスタックは、接合部と重複部輪郭線との組み合わせであって、第1の方向視において、接合部の輪郭線である接合部輪郭線は、重複部輪郭線の形状に相似し、第1の方向視において、接合部輪郭線と重複部輪郭線との一方が、接合部輪郭線と重複部輪郭線との他方を囲み、第1の方向視において、接合部輪郭線の中心と、重複部輪郭線の中心とは、互いに位置が異なる、という条件を満たす組み合わせを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、
前記第1部材と第1の方向に重複する部分である重複部を有する第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合部であって、前記第2部材における前記重複部と、前記第1部材における前記重複部と前記第1の方向に対向する部分と、を接合する接合部と、
を備え、
前記重複部は、前記第1の方向視において少なくとも1つの環状の輪郭線である重複部輪郭線を有している、電気化学反応セルスタックにおいて、
前記電気化学反応セルスタックは、
前記接合部と前記重複部輪郭線との組み合わせであって、
前記第1の方向視において、前記接合部の輪郭線である接合部輪郭線は、前記重複部輪郭線の形状に相似し、
前記第1の方向視において、前記接合部輪郭線と前記重複部輪郭線との一方が、前記接合部輪郭線と前記重複部輪郭線との他方を囲み、
前記第1の方向視において、前記接合部輪郭線の中心と、前記重複部輪郭線の中心とは、互いに位置が異なる、という条件を満たす組み合わせを含んでいる、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックであって、
前記組み合わせにおいて、前記第1の方向視における前記接合部輪郭線の中心と前記重複部輪郭線の中心との距離は、10μm以上である、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックであって、
前記組み合わせにおいて、前記第1の方向視における前記接合部輪郭線と前記重複部輪郭線との最長距離は、前記第1の方向視における前記接合部輪郭線と前記重複部輪郭線との最短距離の1.01倍以上である、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックであって、さらに、
前記第1の方向に積層する複数の単セルを備え、
前記複数の単セルのそれぞれにガスを供給するマニホールドが形成され、
前記第1部材には、前記マニホールドの一部を構成する第1貫通孔が形成され、
前記第2部材には、前記マニホールドの一部を構成する第2貫通孔が形成され、
前記重複部輪郭線の少なくとも一部は、前記第1の方向視において、前記第1部材における前記第1貫通孔を取り囲む部分である第1貫通孔周囲部の少なくとも一部と一致し、
前記接合部は、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とのそれぞれを囲む接合材である、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックであって、
前記第1部材および前記第2部材をそれぞれ有する第1ユニットと第2ユニットとが前記第1の方向に積層され、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとは、それぞれ前記組み合わせを有し、
前記第1ユニットにおける前記組み合わせの前記重複部輪郭線の少なくとも一部と、前記第2ユニットにおける前記組み合わせの前記重複部輪郭線の少なくとも一部とは、前記第1の方向において互いに重複し、
前記第1ユニットにおける前記組み合わせの前記接合部輪郭線の中心と、前記第2ユニットにおける前記組み合わせの前記接合部輪郭線の中心とは、前記第1の方向視において互いに位置が異なる、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項6】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックであって、
前記第1部材と前記第2部材とには、前記組み合わせが複数存在しており、
一の前記組み合わせの前記第1の方向視における前記接合部輪郭線の中心と前記重複部輪郭線の中心との距離は、他の前記組み合わせの前記第1の方向視における前記接合部輪郭線の中心と前記重複部輪郭線の中心との距離と異なっている、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、燃料電池スタックの形態で利用される。燃料電池スタックは、ある部材(以下、「第1部材」という。)と、第1部材と所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に重複する部分である重複部を有する他の部材(以下、「第2部材」という。)と、第1部材と第2部材とを接合する接合部と、を備える。第1部材と、第2部材と、接合部との組み合わせの具体例としては、セパレータと、燃料極フレームと、セパレータと燃料極フレームとを接合する溶接部と、が挙げられる。
【0003】
従来、複数枚の板状ワークを積層配置し、板状ワーク同士を接合材やレーザー溶接によって接合した燃料電池関連部品が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池スタックの第1部材と第2部材とに応力が加わると、接合部が損傷するおそれがあり、ひいては燃料電池スタックの故障の要因ともなりうる。そのため、燃料電池スタックの耐久性を向上させるために、接合部の耐久性の向上が望まれていた。
【0006】
なお、このような課題は、例えば、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う電解セル(以下、「SOEC」という。)の一形態である電解セルスタックにも共通の課題である。本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルといい、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックという。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、第1部材と、前記第1部材と第1の方向に重複する部分である重複部を有する第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを接合する接合部であって、前記第2部材における前記重複部と、前記第1部材における前記重複部と前記第1の方向に対向する部分と、を接合する接合部と、を備える。前記重複部は、前記第1の方向視において少なくとも1つの環状の輪郭線である重複部輪郭線を有している。前記電気化学反応セルスタックは、前記接合部と前記重複部輪郭線との組み合わせであって、前記第1の方向視において、前記接合部の輪郭線である接合部輪郭線は、前記重複部輪郭線の形状に相似し、前記第1の方向視において、前記接合部輪郭線と前記重複部輪郭線との一方が、前記接合部輪郭線と前記重複部輪郭線との他方を囲み、前記第1の方向視において、前記接合部輪郭線の中心と、前記重複部輪郭線の中心とは、互いに位置が異なる、という条件を満たす組み合わせを含んでいる。
【0010】
本電気化学反応セルスタックによれば、接合部と重複部輪郭線との組み合わせにおいて、第1の方向視における接合部輪郭線の中心と、重複部輪郭線の中心とが、互いに位置が異なっているため、第1部材や第2部材に応力が加わった際に接合部に加わる応力を不均一化させることができる。そのため、接合部のうちの比較的大きな応力が加わる部分が初期の損傷箇所となるが、初期の損傷箇所以外の部分については、初期の損傷箇所ほどの応力が加わらないため、接合部において、初期損傷が生じてから全体が損傷するまでの寿命を延ばすことができる。
【0011】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記組み合わせにおいて、前記第1の方向視における前記接合部輪郭線の中心と前記重複部輪郭線の中心との距離は、10μm以上である、構成としてもよい。本構成によれば、接合部と重複部輪郭線との組み合わせにおいて、第1の方向視における接合部輪郭線の中心と重複部輪郭線の中心との距離が10μm以上であるため、接合部において、初期損傷が生じてから全体が損傷するまでの寿命をより効果的に延ばすことができる。
【0012】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記組み合わせにおいて、前記第1の方向視における前記接合部輪郭線と前記重複部輪郭線との最長距離は、前記第1の方向視における前記接合部輪郭線と前記重複部輪郭線との最短距離の1.01倍以上である、構成としてもよい。本構成によれば、接合部と重複部輪郭線との組み合わせにおいて、接合部輪郭線と重複部輪郭線との最長距離が、接合部輪郭線と重複部輪郭線との最短距離の1.01倍以上であるため、接合部において、初期損傷が生じてから全体が損傷するまでの寿命をより効果的に延ばすことができる。
【0013】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、さらに、前記第1の方向に積層する複数の単セルを備え、前記複数の単セルのそれぞれにガスを供給するマニホールドが形成され、前記第1部材には、前記マニホールドの一部を構成する第1貫通孔が形成され、前記第2部材には、前記マニホールドの一部を構成する第2貫通孔が形成され、前記重複部輪郭線の少なくとも一部は、前記第1の方向視において、前記第1部材における前記第1貫通孔を取り囲む部分である第1貫通孔周囲部の少なくとも一部と一致し、前記接合部は、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とのそれぞれを囲む接合材である、構成としてもよい。本構成によれば、第1の方向視において、重複部輪郭線の中心と、接合材の輪郭線の中心との位置が異なるため、マニホールドの内部の構成が不均一となる。これにより、マニホールドを流れるガスに乱流が生じやすくなり、複数の単セルのそれぞれにガスを均等に供給することができる。
【0014】
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1部材および前記第2部材をそれぞれ有する第1ユニットと第2ユニットとが前記第1の方向に積層され、前記第1ユニットと前記第2ユニットとは、それぞれ前記組み合わせを有し、前記第1ユニットにおける前記組み合わせの前記重複部輪郭線の少なくとも一部と、前記第2ユニットにおける前記組み合わせの前記重複部輪郭線の少なくとも一部とは、前記第1の方向において互いに重複し、前記第1ユニットにおける前記組み合わせの前記接合部輪郭線の中心と、前記第2ユニットにおける前記組み合わせの前記接合部輪郭線の中心とは、前記第1の方向視において互いに位置が異なる、構成としてもよい。本構成によれば、第1ユニットの接合部輪郭線の中心と、第2ユニットの接合部輪郭線の中心とが、第1の方向視において互いに位置が異なるため、ユニットごとに接合部の応力を分散させることができ、ひいては電気化学反応セルスタック全体において応力を分散させることができる。そのため、第1ユニットと第2ユニットの接合部輪郭線の中心が、第1の方向視において互いに位置が同じである構成と比較して、接合部が損傷するまでの寿命を延ばすことができる。
【0015】
(6)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1部材と前記第2部材とには、前記組み合わせが複数存在しており、一の前記組み合わせの前記第1の方向視における前記接合部輪郭線の中心と前記重複部輪郭線の中心との距離は、他の前記組み合わせの前記第1の方向視における前記接合部輪郭線の中心と前記重複部輪郭線の中心との距離と異なっている、構成としてもよい。本構成によれば、一の接合部と重複部輪郭線との組み合わせの第1の方向視における接合部輪郭線の中心と重複部輪郭線の中心との距離が、他の接合部と重複部輪郭線との組み合わせの第1の方向視における接合部輪郭線の中心と重複部輪郭線の中心との距離と異なっているため、電気化学反応セルスタックにおける設計の自由度を高めることができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタックや、その製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態における燃料電池スタック10の外観構成を示す斜視図
【
図2】
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック10のXZ断面構成を示す説明図
【
図3】
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック10のXZ断面構成を示す説明図
【
図4】
図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック10のYZ断面構成を示す説明図
【
図5】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位100UのXZ断面構成を示す説明図
【
図6】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位100UのXZ断面構成を示す説明図
【
図7】
図6のVII-VIIの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図
【
図8】
図6のVIII-VIIIの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図
【
図9】
図6のIX-IXの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図
【
図10】
図6のX-Xの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図
【
図11】
図2のXI-XIの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図
【
図12】ガス流れ評価の評価方法を概略的に示す説明図
【
図13】変形例における
図6のVII-VIIの位置における燃料電池スタック10aのXY断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A-1.燃料電池スタック10の構成:
図1は、本実施形態における燃料電池スタック10の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック10のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック10のXZ断面構成を示す説明図であり、
図4は、
図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック10のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸方向を上下方向と呼び、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック10は、実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されていてもよい。燃料電池スタック10は、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックの一例である。Z軸方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。
【0019】
(燃料電池スタック10の全体構成)
燃料電池スタック10は、
図1から
図4に示すように、発電ブロック100と、末端セパレータ230と、第1プレート232と、第2プレート260と、第1ターミナルプレート240と、第2ターミナルプレート250と、絶縁部220と、第1エンドプレート210と、第2エンドプレート270と、第1バスバー242と、第2バスバー252と、4つのガス通路部材280と、を備える。第1エンドプレート210、絶縁部220、末端セパレータ230、第1ターミナルプレート240、発電ブロック100、第2ターミナルプレート250、第2プレート260、および第2エンドプレート270は、ほぼ同じ大きさの矩形の外形を有しており、所定の配列方向(上下方向)に、この順に重なって配置されている。
【0020】
燃料電池スタック10は、
図1および
図4に示すように、4つの角部付近に、それぞれ、第1エンドプレート210から第2エンドプレート270まで貫通するボルト孔BHを有している。各ボルト孔BHにはボルトBが挿入されている。各ボルトBの両端部にはナットNがねじ付けられている。これらのボルトBおよびナットNにより、第1エンドプレート210から第2エンドプレート270までの部材が一体に締結されている。
図2から
図4に示すように、第1プレート232は末端セパレータ230に支持されており、4つのガス通路部材280は第2エンドプレート270に接続されている。
【0021】
発電ブロック100は、
図2から
図4に示すように、所定の配列方向(上下方向)に並んで配置された複数(本実施形態では7つ)の発電単位100Uによって構成される。また、発電単位100Uのうち、任意の位置(本実施形態では上から2番目と3番目)に配置された隣り合う2つの発電単位100Uのそれぞれを、第1の発電単位100Aおよび第2の発電単位100Bと呼ぶ。第1の発電単位100Aは、特許請求の範囲における第1ユニットの一例であり、第2の発電単位100Bは、特許請求の範囲における第2ユニットの一例である。
【0022】
(第1エンドプレート210)
第1エンドプレート210は、1枚の板状部材をプレス加工(屈曲)することにより形成された部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。第1エンドプレート210は、
図1から
図4に示すように、中央付近に貫通孔212を有する矩形のフレーム状の平面部211と、平面部211から絶縁部220と反対方向(
図2の上方)に突出する外側凸部213および内側凸部214と、を備えている。平面部211は、上述したボルト孔BHを構成する孔を有している。外側凸部213は、平面部211の外周縁から突出している。外側凸部213は、平面部211の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部214は、平面部211の内周縁から突出している。内側凸部214は、平面部211の内周部の全周にわたって形成されている。
【0023】
(絶縁部220)
絶縁部220は、中央付近に貫通孔を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば絶縁性材料により形成されている。絶縁部220は、
図2に示すように、第1エンドプレート210と末端セパレータ230との間に挟み込まれており、これにより、第1エンドプレート210と末端セパレータ230との絶縁性が確保されている。
【0024】
(末端セパレータ230)
末端セパレータ230は、
図2から
図4に示すように、中央付近に貫通孔231を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。
【0025】
(第1プレート232)
第1プレート232は、矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。第1プレート232は、
図2から
図4に示すように、末端セパレータ230における貫通孔231の周縁部分に、例えば溶接により接合されている。末端セパレータ230と第1プレート232とは、発電ブロック100を燃料電池スタック10の外部空間から区画する。
【0026】
第1プレート232は、発電ブロック100を構成する複数の発電単位100Uのうちの一端(
図2の上端)に配された発電単位100Uに備えられる後述のインターコネクタ190に、後述の燃料極集電部材144と同一構造の接続部材を介して接続されており、これにより、この発電単位100Uと第1プレート232とが電気的に接続されている。
【0027】
(第1ターミナルプレート240)
第1ターミナルプレート240は、中央付近に貫通孔241を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば表面にアルミナの酸化被膜を形成するフェライト系ステンレス等の導電材料により形成されている。第1ターミナルプレート240は、発電ブロック100を構成する複数の発電単位100Uのうちの一端(
図2の上端)に配された発電単位100Uに、第1プレート232、および末端セパレータ230を介して電気的に接続されている。第1ターミナルプレート240の一端部(
図2の右端部)は、発電ブロック100から側方に張り出している。
【0028】
(第2ターミナルプレート250)
第2ターミナルプレート250は、矩形の板状の部材であり、例えば表面にアルミナの酸化被膜を形成するフェライト系ステンレス等の導電材料により形成されている。第2ターミナルプレート250は、発電ブロック100を構成する複数の発電単位100Uのうちの他端(
図2の下端)に配された発電単位100Uに電気的に接続されている。第2ターミナルプレート250の一端部(
図2の右端部)は、発電ブロック100から側方に張り出している。
【0029】
(第1バスバー242および第2バスバー252)
第1バスバー242および第2バスバー252は、ともに導電材料により形成された平板状の部材である。第1バスバー242の下面は、溶接部243を介して、第1ターミナルプレート240の上面に接続されている。第1バスバー242は、燃料電池スタック10のプラス側の出力端子として機能する。第2バスバー252の下面は、溶接部253を介して、第2ターミナルプレート250の上面に接続されている。第2バスバー252は、燃料電池スタック10のマイナス側の出力端子として機能する。
【0030】
(第2プレート260)
第2プレート260は、矩形の平板状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。第2プレート260の周縁部は、第2ターミナルプレート250と第2エンドプレート270との間に挟み込まれており、これにより、第2ターミナルプレート250と第2エンドプレート270との絶縁性が確保されている。
【0031】
(第2エンドプレート270)
第2エンドプレート270は、1枚の板状部材をプレス加工(屈曲)することにより形成された部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。第2エンドプレート270は、中央付近に貫通孔272を有する矩形のフレーム状の平面部271と、平面部271から第2ターミナルプレート250と反対方向(
図2の下方)に突出する外側凸部273および内側凸部274と、を備えている。平面部271は、上述したボルト孔BHを構成する孔を有している。外側凸部273は、平面部271の外周縁から突出している。外側凸部273は、平面部271の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部274は、平面部271の内周縁から突出している。内側凸部274は、平面部271の内周部の全周にわたって形成されている。
【0032】
(マニホールド311、312、321、322)
図1、
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック10は、発電ブロック100から第2エンドプレート270まで貫通する4つの孔を有している。4つの孔は、それぞれ、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322である。
【0033】
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311は、燃料電池スタック10の外部から導入された酸化剤ガスOGを各発電単位100Uの後述の空気室313に供給するガス流路である。酸化剤ガス排出マニホールド312は、各発電単位100Uの空気室313から排出された酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック10の外部へ排出するガス流路である。酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。酸化剤ガス供給マニホールド311と酸化剤ガス排出マニホールド312とは、空気室313を挟んで、互いに反対側に配されている。
【0034】
図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド321は、燃料電池スタック10の外部から導入された燃料ガスFGを各発電単位100Uの後述の燃料室323に供給するガス流路である。燃料ガス排出マニホールド322は、各発電単位100Uの燃料室323から排出された燃料オフガスFOGを燃料電池スタック10の外部へ排出するガス流路である。燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料ガス供給マニホールド321と燃料ガス排出マニホールド322とは、燃料室323を挟んで、互いに反対側に配されている。
【0035】
(ガス通路部材280)
4つのガス通路部材280のそれぞれは、
図1から
図3に示すように、本体部281と、フランジ部282と、を備えている。本体部281には、上下方向に貫通するガス貫通孔283が形成されている。フランジ部282は、本体部281の他端(
図2の下端)から外側に張り出すように設けられている。フランジ部282は、複数のボルト孔284を有している。各ボルト孔284には、燃料電池スタック10を外部装置に接続するためのボルト(図示せず)が挿入される。4つのガス通路部材280に備えられる本体部281の一端(
図2、
図3の上端)は、第2エンドプレート270に対して例えば溶接により接合され、ガス貫通孔283は、それぞれマニホールド311、312、321、322に連通している。各本体部281には、ガスの供給または排出のためのガス配管が接続されている(図示せず)。
【0036】
(発電単位100Uの全体構成)
図5は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位100UのXZ断面構成を示す説明図である。
図6は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位100UのXZ断面構成を示す説明図である。
図5および
図6では、複数の発電単位100Uのうち、第1の発電単位100Aおよび第2の発電単位100Bを示している。
図5および
図6に示すように、発電単位100Uは、単セル110と、単セル用セパレータ120と、空気極フレーム130と、燃料極フレーム140と、燃料極集電部材144と、2つのインターコネクタ190と、2つのIC用セパレータ180と、ガラスシール部96と、を備える。一方のIC用セパレータ180、空気極フレーム130、単セル用セパレータ120、燃料極フレーム140、他方のIC用セパレータ180が、この順に重なって配置されている。単セル110は単セル用セパレータ120に支持され、インターコネクタ190はIC用セパレータ180に支持され、燃料極集電部材144は単セル110とインターコネクタ190との間に配されている。
【0037】
図5および
図6に示すように、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190は、隣り合う2つの発電単位100Uに共有されている。但し、
図2に示すように、複数の発電単位100Uのうちの他端(
図2の下端)に位置する発電単位100Uは、燃料極フレーム140に隣り合うIC用セパレータ180とインターコネクタ190とを備えておらず、燃料極フレーム140に第2ターミナルプレート250が重なっている。
【0038】
(単セル110)
単セル110は、電解質層112と、空気極114と、燃料極116と、反応防止層118と、を備える。
図5および
図6に示すように、空気極114と、反応防止層118と、電解質層112と、燃料極116とが、この順に重なって配されている。本実施形態の単セル110は、燃料極116によって単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)が支持される燃料極支持形の単セルである。
【0039】
電解質層112は、矩形の平板状の部材であって、空気極114が配された一面(
図5および
図6の上面)と、燃料極116が配され、一面に平行な他面(
図5および
図6の下面)と、を有する。電解質層112は、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含む層である。空気極114は、電解質層112より小さい矩形の外形を有する層であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含む。燃料極116は、電解質層112と略同じ大きさの矩形の外形を有する層であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等を含む。反応防止層118は、空気極114と略同じ大きさの矩形の外形を有する層であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含む。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO
3)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0040】
(単セル用セパレータ120)
単セル用セパレータ120は、
図5および
図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔121を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下である。単セル用セパレータ120における貫通孔121の周縁部は、電解質層112の一面(空気極114が配された面:
図5および
図6の上面)の周縁部に、接続部材124によって接合されている。接続部材124は、例えばロウ材(Agロウ)により形成されている。単セル用セパレータ120には、上下方向に貫通する孔であって、マニホールド311、312、321、322の一部を構成する貫通孔125が形成されている。貫通孔125は、特許請求の範囲における第1貫通孔の一例である。
【0041】
(空気極フレーム130)
空気極フレーム130は、
図5および
図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔131を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えばマイカにより形成されている。空気極フレーム130の厚さは、0.5mm以上、5mm以下であることが好ましい。空気極フレーム130は、
図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311と空気室313とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室313と酸化剤ガス排出マニホールド312とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133と、を有している。
【0042】
(燃料極フレーム140)
燃料極フレーム140は、
図5および
図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔141を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極フレーム140は、
図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド321と燃料室323とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室323と燃料ガス排出マニホールド322とを連通する燃料ガス排出連通流路143と、を有している。
【0043】
(IC用セパレータ180)
IC用セパレータ180は、
図5および
図6に示すように、中央付近に貫通孔181を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180には、上下方向に貫通する孔であって、マニホールド311、312、321、322の一部を構成する貫通孔185が形成されている。貫通孔185は、特許請求の範囲における第2貫通孔の一例である。
【0044】
(インターコネクタ190、および、燃料極集電部材144)
インターコネクタ190は、
図5および
図6に示すように、矩形の平板形状の平板部191と、平板部191の一面から空気極114に向かって突出した複数の板状の空気極集電部192と、被覆層193と、を備えている。平板部191と空気極集電部192とは、導電性を有し、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。被覆層193は、導電性を有し、空気極集電部192の表面と、平板部191において空気極集電部192が配された面と、を覆うように配されている。平板部191は、IC用セパレータ180における貫通孔181の周縁部に、例えば溶接により接合されている。
【0045】
燃料極集電部材144は、インターコネクタ190と燃料極116とを接続する部材であって、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等の導電性材料により形成されている。燃料極集電部材144は、
図5および
図6に示すように、インターコネクタ対向部146と、インターコネクタ対向部146に平行な電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備え、全体としてU字状をなしている。電極対向部145は、燃料極116に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190の平板部191に接触している。
【0046】
上述したように、インターコネクタ190は、隣り合う2つの発電単位100Uに共有されている。より具体的には、
図5および
図6に示すように、空気極集電部192は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、隣り合う2つの発電単位100Uのうち一方に備えられる単セル110の空気極114に接合されており、これにより空気極114に電気的に接続されている。平板部191は、燃料極集電部材144を介して、隣り合う2つの発電単位100Uのうち他方に備えられる単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。これにより、隣り合う2つの発電単位100U間の電気的導通が確保されている。
【0047】
但し、上述したように、複数の発電単位100Uのうち他端(
図2の下端)に位置する発電単位100Uは、燃料極116側のインターコネクタ190を備えていない。この発電単位100Uに備えられる燃料極116は、燃料極集電部材144を介して第2ターミナルプレート250に接続されている。
【0048】
電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位100Uの変形に追随し、燃料極集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または第2ターミナルプレート250)との電気的接続が良好に維持される。
【0049】
(ガラスシール部96)
ガラスシール部96は、空気極フレーム130を挟んで上下方向に対向する単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間に設けられる。ガラスシール部96は環状であり、燃料ガス供給マニホールド321および燃料ガス排出マニホールド322のそれぞれの周りを囲むように配置されている。ガラスシール部96は、空気極フレーム130と単セル用セパレータ120との界面や、空気極フレーム130とIC用セパレータ180との界面を介した、燃料ガス供給マニホールド321および燃料ガス排出マニホールド322からの燃料ガスFGまたは燃料オフガスFOGのリークを抑制する。
【0050】
(空気室313および燃料室323)
図5および
図6に示すように、単セル用セパレータ120および単セル110と、空気極フレーム130と、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190と、で区画される空間は、空気極114に面し、酸化剤ガスOGが流通する空気室313となっている。空気極フレーム130は、空気室313を全周にわたって外部空間から区画するとともに、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間をシールし、空気室313から外部空間へガスが漏れ出ることを防ぐ役割を果たしている。
【0051】
また、単セル用セパレータ120および単セル110と、燃料極フレーム140と、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190と、で区画される空間は、燃料極116に面し、燃料ガスFGが流通する燃料室323となっている。燃料極フレーム140は、燃料室323を全周にわたって外部空間から区画するとともに、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間をシールし、燃料室323から外部空間へガスが漏れ出ることを防ぐ役割を果たしている。
【0052】
単セル用セパレータ120により、空気室313と燃料室323とが区画され、単セル110の周辺において空気極114側から燃料極116側、または燃料極116側から空気極114側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。また、IC用セパレータ180とインターコネクタ190とにより、隣り合う発電単位100U間のガスのリークが抑制される。
【0053】
A-2.燃料電池スタック10の動作:
図2および
図5に示すように、酸化剤ガスOGは、ガス配管(図示せず)およびガス通路部材280を介して酸化剤ガス供給マニホールド311に供給され、酸化剤ガス供給連通流路132を介して空気室313に供給される。
【0054】
また、
図3および
図6に示すように、燃料ガスFGは、ガス配管(図示せず)およびガス通路部材280を介して燃料ガス供給マニホールド321に供給され、燃料ガス供給連通流路142を介して燃料室323に供給される。
【0055】
各発電単位100Uの空気室313に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室323に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。上述したように、インターコネクタ190は、隣り合う2つの発電単位100Uに共有されており、インターコネクタ190によって隣り合う2つの発電単位100U間の導通が確保されている。つまり、燃料電池スタック10に含まれる複数の発電単位100Uは、電気的に直列に接続されている。また、複数の発電単位100Uのうち他端(
図2の下端)に位置する発電単位100Uには、第2ターミナルプレート250が電気的に接続されており、一端(
図2の上端)に位置する発電単位100Uには、第1ターミナルプレート240が電気的に接続されている。これにより、ターミナルプレート240、250に接続され、燃料電池スタック10の出力端子として機能するバスバー242、252から、各発電単位100Uにおいて生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック10が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0056】
図2および
図5に示すように、各発電単位100Uの空気室313から酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド312に排出された酸化剤オフガスOOGは、本体部281の内部空間を通って燃料電池スタック10の外部に排出される。また、
図3および
図6に示すように、各発電単位100Uの燃料室323から燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド322に排出された燃料オフガスFOGは、本体部281の内部空間を通って燃料電池スタック10の外部に排出される。
【0057】
A-3.燃料電池スタック10における接合部の周辺構成:
(IC用セパレータ180および燃料極フレーム140の周辺構成)
図5および
図6に示すように、燃料極フレーム140は、IC用セパレータ180とZ軸方向に重複する部分である重複部DP1を有している。IC用セパレータ180と燃料極フレーム140とは、溶接部182によって接合されている。溶接部182は、燃料極フレーム140における重複部DP1と、IC用セパレータ180における重複部DP1とZ軸方向に対向する部分とを接合している。溶接部182は、例えばレーザー溶接によって形成される。IC用セパレータ180は、特許請求の範囲における第1部材の一例であり、燃料極フレーム140は、特許請求の範囲における第2部材の一例であり、溶接部182は、特許請求の範囲における接合部の一例である。
【0058】
図7は、
図6のVII-VIIの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図である。
図7は、Z軸方向視における燃料ガス供給マニホールド321の位置における溶接部182の周辺構成を示している。重複部DP1は、Z軸方向視において、環状の輪郭線である重複部輪郭線DO1を有している。また、溶接部182は、Z軸方向視における重複部輪郭線DO1に近い側の輪郭線である接合部輪郭線BO1を有している。このような溶接部182と重複部輪郭線DO1との組み合わせを組み合わせCM1という。
【0059】
組み合わせCM1は、下記の条件(1)~条件(3)を満たしている。
条件(1):Z軸方向視において、溶接部182の輪郭線である接合部輪郭線BO1は、重複部輪郭線DO1の形状に相似している。
条件(2):Z軸方向視において、接合部輪郭線BO1は、重複部輪郭線DO1を囲んでいる。
条件(3):Z軸方向視において、接合部輪郭線の中心BC1と、重複部輪郭線の中心DC1とは、互いに位置が異なっている。
【0060】
図5および
図6に示すように、第1の発電単位100Aと第2の発電単位100Bとは、IC用セパレータ180および燃料極フレーム140をそれぞれ有し、かつ、それぞれ組み合わせCM1を有している。第1の発電単位100Aにおける組み合わせCM1の重複部輪郭線DO1の少なくとも一部と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCM1の重複部輪郭線DO1の少なくとも一部とは、Z軸方向において互いに重複している。第1の発電単位100Aにおける組み合わせCM1の接合部輪郭線の中心BC1と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCM1の接合部輪郭線の中心BC1とは、Z軸方向視において互いに位置が異なっている。
【0061】
本実施形態のIC用セパレータ180と燃料極フレーム140とには、組み合わせCM1が各マニホールド311、312、321、322の周辺に配置されているため、合計で4つ存在している。これら4つの組み合わせCM1のうち、一の組み合わせCM1(例えば酸化剤ガス供給マニホールド311の周辺に配置された組み合わせCM1)のZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BC1と重複部輪郭線の中心DC1との距離は、他の組み合わせCM1(例えば酸化剤ガス排出マニホールド312の周辺に配置された組み合わせCM1)のZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BC1と重複部輪郭線の中心DC1との距離と異なっている。
【0062】
(燃料極フレーム140および単セル用セパレータ120の周辺構成)
図5および
図6に示すように、単セル用セパレータ120は、燃料極フレーム140とZ軸方向に重複する部分である重複部DP2を有している。燃料極フレーム140と単セル用セパレータ120とは、溶接部122によって接合されている。溶接部122は、単セル用セパレータ120における重複部DP2と、燃料極フレーム140における重複部DP2とZ軸方向に対向する部分とを接合している。溶接部122は、例えばレーザー溶接によって形成される。燃料極フレーム140は、特許請求の範囲における第1部材の一例であり、単セル用セパレータ120は、特許請求の範囲における第2部材の一例であり、溶接部122は、特許請求の範囲における接合部の一例である。
【0063】
図8は、
図6のVIII-VIIIの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図である。
図8は、Z軸方向視における燃料ガス供給マニホールド321の位置における溶接部122の周辺構成を示している。重複部DP2は、Z軸方向視において、環状の輪郭線である重複部輪郭線DO2を有している。また、溶接部122は、Z軸方向視における重複部輪郭線DO2に近い側の輪郭線である接合部輪郭線BO2を有している。このような溶接部122と重複部輪郭線DO2との組み合わせを組み合わせCM2という。
【0064】
組み合わせCM2は、下記の条件(1)~条件(3)を満たしている。
条件(1):Z軸方向視において、溶接部122の輪郭線である接合部輪郭線BO2は、重複部輪郭線DO2の形状に相似している。
条件(2):Z軸方向視において、接合部輪郭線BO2は、重複部輪郭線DO2を囲んでいる。
条件(3):Z軸方向視において、接合部輪郭線の中心BC2と、重複部輪郭線の中心DC2とは、互いに位置が異なっている。
【0065】
図5および
図6に示すように、第1の発電単位100Aと第2の発電単位100Bとは、燃料極フレーム140および単セル用セパレータ120をそれぞれ有し、かつ、それぞれ組み合わせCM2を有している。第1の発電単位100Aにおける組み合わせCM2の重複部輪郭線DO2の少なくとも一部と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCM2の重複部輪郭線DO2の少なくとも一部とは、Z軸方向において互いに重複している。第1の発電単位100Aにおける組み合わせCM2の接合部輪郭線の中心BC2と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCM2の接合部輪郭線の中心BC2とは、Z軸方向視において互いに位置が異なっている。
【0066】
本実施形態の燃料極フレーム140と単セル用セパレータ120とには、組み合わせCM2が各マニホールド311、312、321、322の周辺に配置されているため、合計で4つ存在している。これら4つの組み合わせCM2のうち、一の組み合わせCM2(例えば酸化剤ガス供給マニホールド311の周辺に配置された組み合わせCM2)のZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BC2と重複部輪郭線の中心DC2との距離は、他の組み合わせCM2(例えば酸化剤ガス排出マニホールド312の周辺に配置された組み合わせCM2)のZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BC2と重複部輪郭線の中心DC2との距離と異なっている。
【0067】
(単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180の周辺構成)
図5および
図6に示すように、IC用セパレータ180は、単セル用セパレータ120とZ軸方向に重複する部分である重複部DP3を有している。単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とは、ガラスシール部96によって接合されている。ガラスシール部96は、IC用セパレータ180における重複部DP3と、単セル用セパレータ120における重複部DP3とZ軸方向に対向する部分とを接合している。単セル用セパレータ120は、特許請求の範囲における第1部材の一例であり、IC用セパレータ180は、特許請求の範囲における第2部材の一例であり、ガラスシール部96は、特許請求の範囲における接合部の一例である。
【0068】
図9は、
図6のIX-IXの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図である。
図9は、Z軸方向視における燃料ガス供給マニホールド321の位置におけるガラスシール部96の周辺構成を示している。重複部DP3は、Z軸方向視において、環状の輪郭線である重複部輪郭線DO3を有している。また、ガラスシール部96は、Z軸方向視における重複部輪郭線DO3に近い側の輪郭線である接合部輪郭線BO3を有している。このようなガラスシール部96と重複部輪郭線DO3との組み合わせを組み合わせCM3という。
【0069】
組み合わせCM3は、下記の条件(1)~条件(3)を満たしている。
条件(1):Z軸方向視において、ガラスシール部96の輪郭線である接合部輪郭線BO3は、重複部輪郭線DO3の形状に相似している。
条件(2):Z軸方向視において、接合部輪郭線BO3は、重複部輪郭線DO3を囲んでいる。
条件(3):Z軸方向視において、接合部輪郭線の中心BC3と、重複部輪郭線の中心DC3とは、互いに位置が異なっている。
【0070】
本実施形態において、重複部輪郭線DO3は、Z軸方向視において、単セル用セパレータ120における貫通孔125を取り囲む部分である貫通孔周囲部126と一致している。ガラスシール部96は、貫通孔周囲部126と貫通孔周囲部186とのそれぞれを囲んでいる。なお、Z軸方向視において、重複部輪郭線DO3の少なくとも一部が、貫通孔周囲部126の少なくとも一部と一致していればよい。貫通孔周囲部126は、特許請求の範囲における第1貫通孔周囲部の一例である。
【0071】
図5および
図6に示すように、第1の発電単位100Aと第2の発電単位100Bとは、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180をそれぞれ有し、かつ、それぞれ組み合わせCM3を有している。第1の発電単位100Aにおける組み合わせCM3の重複部輪郭線DO3の少なくとも一部と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCM3の重複部輪郭線DO3の少なくとも一部とは、Z軸方向において互いに重複している。第1の発電単位100Aにおける組み合わせCM3の接合部輪郭線の中心BC3と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCM3の接合部輪郭線の中心BC3とは、Z軸方向視において互いに位置が異なっている。
【0072】
本実施形態の単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とには、組み合わせCM3が各マニホールド321、322の周辺に配置されているため、合計で2つ存在している。これら2つの組み合わせCM3のうち、一の組み合わせCM3(例えば燃料ガス供給マニホールド321の周辺に配置された組み合わせCM3)のZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BC3と重複部輪郭線の中心DC3との距離は、他の組み合わせCM3(例えば燃料ガス排出マニホールド322の周辺に配置された組み合わせCM3)のZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BC3と重複部輪郭線の中心DC3との距離と異なっている。
【0073】
(IC用セパレータ180およびインターコネクタ190の周辺構成)
図5および
図6に示すように、インターコネクタ190は、IC用セパレータ180とZ軸方向に重複する部分である重複部DP4を有している。IC用セパレータ180とインターコネクタ190とは、溶接部184によって接合されている。溶接部184は、インターコネクタ190における重複部DP4と、IC用セパレータ180における重複部DP4とZ軸方向に対向する部分とを接合している。溶接部184は、例えばレーザー溶接によって形成される。IC用セパレータ180は、特許請求の範囲における第1部材の一例であり、インターコネクタ190は、特許請求の範囲における第2部材の一例であり、溶接部184は、特許請求の範囲における接合部の一例である。
【0074】
図10は、
図6のX-Xの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図である。
図10は、Z軸方向視における溶接部184の周辺構成を示している。重複部DP4は、Z軸方向視において、環状の輪郭線である重複部輪郭線DO4を有している。また、溶接部184は、Z軸方向視における重複部輪郭線DO4に近い側の輪郭線である接合部輪郭線BO4を有している。このような溶接部184と重複部輪郭線DO4との組み合わせを組み合わせCM4という。
【0075】
組み合わせCM4は、下記の条件(1)~条件(3)を満たしている。
条件(1):Z軸方向視において、溶接部184の輪郭線である接合部輪郭線BO4は、重複部輪郭線DO4の形状に相似している。
条件(2):Z軸方向視において、接合部輪郭線BO4は、重複部輪郭線DO4を囲んでいる。
条件(3):Z軸方向視において、接合部輪郭線の中心BC4と、重複部輪郭線の中心DC4とは、互いに位置が異なっている。
【0076】
図5および
図6に示すように、第1の発電単位100Aと第2の発電単位100Bとは、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190をそれぞれ有し、かつ、それぞれ組み合わせCM4を有している。第1の発電単位100Aにおける組み合わせCM4の重複部輪郭線DO4の少なくとも一部と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCM4の重複部輪郭線DO4の少なくとも一部とは、Z軸方向において互いに重複している。第1の発電単位100Aにおける組み合わせCM4の接合部輪郭線の中心BC4と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCM4の接合部輪郭線の中心BC4とは、Z軸方向視において互いに位置が異なっている。
【0077】
(第1ターミナルプレート240および第1バスバー242の周辺構成)
図2に示すように、第1バスバー242は、第1ターミナルプレート240とZ軸方向に重複する部分である重複部DP5を有している。第1ターミナルプレート240と第1バスバー242とは、溶接部243によって接合されている。溶接部243は、第1バスバー242における重複部DP5と、第1ターミナルプレート240における重複部DP5とZ軸方向に対向する部分とを接合している。溶接部243は、例えばレーザー溶接によって形成される。第1ターミナルプレート240は、特許請求の範囲における第1部材の一例であり、第1バスバー242は、特許請求の範囲における第2部材の一例であり、溶接部243は、特許請求の範囲における接合部の一例である。
【0078】
図11は、
図2のXI-XIの位置における燃料電池スタック10のXY断面構成を示す説明図である。
図11は、Z軸方向視における溶接部243の周辺構成を示している。重複部DP5は、Z軸方向視において、環状の輪郭線である重複部輪郭線DO5を有している。また、溶接部243は、Z軸方向視における重複部輪郭線DO5に近い側の輪郭線である接合部輪郭線BO5を有している。このような溶接部243と重複部輪郭線DO5との組み合わせを組み合わせCM5という。
【0079】
組み合わせCM5は、下記の条件(1)~条件(3)を満たしている。
条件(1):Z軸方向視において、溶接部243の輪郭線である接合部輪郭線BO5は、重複部輪郭線DO5の形状に相似している。
条件(2):Z軸方向視において、重複部輪郭線DO5は、接合部輪郭線BO5を囲んでいる。
条件(3):Z軸方向視において、接合部輪郭線の中心BC5と、重複部輪郭線の中心DC5とは、互いに位置が異なっている。
【0080】
なお、上記では第1ターミナルプレート240および第1バスバー242の周辺構成について詳細に説明しているが、第2ターミナルプレート250および第2バスバー252も基本的には同様の構成を有している。
【0081】
また、上述の各組み合わせCM1~CM5(以下、単に「組み合わせCM」という。)において、Z軸方向視における接合部輪郭線の中心BC1~BC5(以下、単に「接合部輪郭線の中心BC」という。)と重複部輪郭線の中心DC1~DC5(以下、単に「重複部輪郭線の中心DC」という。)との距離は、それぞれ10μm以上である。
【0082】
また、上述の各組み合わせCMにおいて、Z軸方向視における接合部輪郭線BO1~BO5(以下、単に「接合部輪郭線BO」という。)と重複部輪郭線DO1~DO5(以下、単に「重複部輪郭線DO」という。)との最長距離は、Z軸方向視における接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最短距離の1.01倍以上である。なお、「Z軸方向視における接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最長距離」とは、重複部輪郭線DO上の各点から接合部輪郭線BOまでの最短距離を結んだときに、当該最短距離のうちで最も距離が長いものの距離をいう。同様に、「Z軸方向視における接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最短距離」とは、重複部輪郭線DO上の各点から接合部輪郭線BOまでの最短距離を結んだときに、当該最短距離のうちで最も距離が短いものの距離をいう。
【0083】
なお、接合部輪郭線BOが重複部輪郭線DOの形状に「相似する」とは、厳密に相似である構成だけでなく、例えば、Z軸方向視において、接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとが、ともに円形である構成や、接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとが、ともに矩形である構成等も含む。また、接合部輪郭線の中心BCや重複部輪郭線の中心DCの語における「中心」とは、具体的にはZ軸方向視での接合部輪郭線BOや重複部輪郭線DOの図心を意味している。
【0084】
A-4.本実施形態の効果:
以上のように、本実施形態の燃料電池スタック10は、第1部材(IC用セパレータ180、燃料極フレーム140、単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180、第1ターミナルプレート240)と、第1部材とZ軸方向に重複する部分である重複部DP1~DP5(以下、単に「重複部DP」という。)を有する第2部材(燃料極フレーム140、単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180、インターコネクタ190、第1バスバー242)と、第1部材と第2部材とを接合する接合部であって、第2部材における重複部DPと、第1部材における重複部DPとZ軸方向に対向する部分と、を接合する接合部(溶接部182、溶接部122、ガラスシール部96、溶接部184、溶接部243)と、を備える。重複部DPは、Z軸方向視において、少なくとも1つの環状の輪郭線である重複部輪郭線DOを有している。燃料電池スタック10は、接合部と重複部輪郭線DOとの組み合わせCMであって、Z軸方向視において、接合部の輪郭線である接合部輪郭線BOは、重複部輪郭線DOの形状に相似し、Z軸方向視において、接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの一方が、接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの他方を囲み、Z軸方向視において、接合部輪郭線の中心BCと、重複部輪郭線の中心DCとは、互いに位置が異なる、という条件を満たす、組み合わせCMを含んでいる。
【0085】
燃料電池スタック10によれば、接合部と重複部輪郭線DOとの組み合わせCMにおいて、Z軸方向視における接合部輪郭線の中心BCと、重複部輪郭線の中心DCとが、互いに位置が異なっているため、第1部材や第2部材に応力が加わった際に接合部に加わる応力を不均一化させることができる。そのため、接合部のうちの比較的大きな応力が加わる部分が初期の損傷箇所となるが、初期の損傷箇所以外の部分については、初期の損傷箇所ほどの応力が加わらないため、接合部において、初期損傷が生じてから全体が損傷するまでの寿命を延ばすことができる。
【0086】
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、組み合わせCMにおいて、Z軸方向視における接合部輪郭線の中心BCと重複部輪郭線の中心DCとの距離は、10μm以上である。燃料電池スタック10によれば、組み合わせCMにおいて、Z軸方向視における接合部輪郭線の中心BCと重複部輪郭線の中心DCとの距離が燃料電池スタック10μm以上であるため、接合部において、初期損傷が生じてから全体が損傷するまでの寿命をより効果的に延ばすことができる。
【0087】
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、組み合わせCMにおいて、Z軸方向視における接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最長距離は、Z軸方向視における接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最短距離の1.01倍以上である。燃料電池スタック10によれば、組み合わせCMにおいて、接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最長距離が、接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最短距離の1.01倍以上であるため、接合部において、初期損傷が生じてから全体が損傷するまでの寿命をより効果的に延ばすことができる。
【0088】
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、さらに、Z軸方向に積層する複数の単セル110を備え、複数の単セル110のそれぞれにガスを供給する燃料ガス供給マニホールド321が形成され、単セル用セパレータ120には、燃料ガス供給マニホールド321の一部を構成する貫通孔125が形成され、IC用セパレータ180には、燃料ガス供給マニホールド321の一部を構成する貫通孔185が形成され、重複部輪郭線DOの少なくとも一部は、Z軸方向視において、単セル用セパレータ120における貫通孔125を取り囲む部分である貫通孔周囲部126の少なくとも一部と一致し、接合部は、貫通孔125と貫通孔185とのそれぞれを囲むガラスシール部96である。燃料電池スタック10によれば、Z軸方向視において、重複部輪郭線の中心BCと、ガラスシール部96の輪郭線の中心との位置が異なるため、燃料ガス供給マニホールド321の内部の構成が不均一となる。これにより、燃料ガス供給マニホールド321を流れるガスに乱流が生じやすくなり、複数の単セル110のそれぞれにガスを均等に供給することができる。
【0089】
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、第1部材(IC用セパレータ180、燃料極フレーム140、単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180)および第2部材(燃料極フレーム140、単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180、インターコネクタ190)をそれぞれ有する第1の発電単位100Aと第2の発電単位100BとがZ軸方向に積層され、第1の発電単位100Aと第2の発電単位100Bとは、それぞれ組み合わせCMを有し、第1の発電単位100Aにおける組み合わせCMの重複部輪郭線DOの少なくとも一部と、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCMの重複部輪郭線DOの少なくとも一部とは、Z軸方向において互いに重複し、第1の発電単位100Aにおける組み合わせCMの接合部輪郭線の中心BCと、第2の発電単位100Bにおける組み合わせCMの接合部輪郭線の中心BCとは、Z軸方向視において互いに位置が異なる。燃料電池スタック10によれば、第1の発電単位100Aの接合部輪郭線の中心BCと、第2の発電単位100Bの接合部輪郭線の中心BCとが、Z軸方向視において互いに位置が異なるため、発電単位ごとに接合部の応力を分散させることができ、ひいては燃料電池スタック10全体において応力を分散させることができる。そのため、第1の発電単位100Aと第2の発電単位100Bの接合部輪郭線の中心BCが、Z軸方向視において互いに位置が同じである構成と比較して、接合部が損傷するまでの寿命を延ばすことができる。
【0090】
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、第1部材(IC用セパレータ180、燃料極フレーム140、単セル用セパレータ120)と第2部材(燃料極フレーム140、単セル用セパレータ120、IC用セパレータ180)とには、組み合わせCMが複数存在しており、一の組み合わせCMのZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BCと重複部輪郭線の中心DCとの距離は、他の組み合わせCMのZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BCと重複部輪郭線の中心DCとの距離と異なっている。燃料電池スタック10によれば、一の組み合わせCMのZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BCと重複部輪郭線の中心DCとの距離が、他の組み合わせCMのZ軸方向視における接合部輪郭線の中心BCと重複部輪郭線の中心DCとの距離と異なっているため、燃料電池スタック10における設計の自由度を高めることができる。
【0091】
A-5.性能評価:
次に、本実施形態の性能評価について説明する。第1部材と第2部材とが接合部によって接合された複数のサンプルであって、第1部材と第2部材とが重複する方向視における接合部輪郭線の中心BCと重複部輪郭線の中心DCとの距離(以下、「ずれ量」という。)が互いに異なる複数のサンプル(S1~S26)を作製し、各サンプルを用いた性能評価を行った。表1および表2は、性能評価の結果を示している。
【0092】
(耐久評価(1))
耐久評価(1)では、接合部によって接合された第1部材と第2部材について、引き剥がし荷重に対する耐久性の評価を行った。具体的には、第1部材と第2部材とを接合部によって接合したサンプルを準備し、各サンプルについて、第1部材と第2部材とをそれぞれ治具によって固定し、治具を用いて、第1部材と第2部材とを引き剥がす方向に150Nの荷重を印加する動作を、第1部材と第2部材とが完全に剥がれるまで行った。評価基準は、ずれ量が0μmのサンプルにおいて、初期損傷が観察されてから第1部材と第2部材とが完全に剥離するまでに荷重を印加した回数を基準印加回数としたとき、各サンプルにおいて、初期損傷が観察されてから第1部材と第2部材とが完全に剥離するまでに荷重を印加した回数が、基準印加回数の1.2倍以上、1.5倍未満のサンプルを可「△」とし、基準印加回数の1.5倍以上のサンプルを良「○」とした。なお、接合部が溶接によって形成されるサンプルについては、抵抗値の増大によって初期損傷を認定し、接合部がガラスによって形成されるサンプルについては、第1部材または第2部材と接合部との間からのガスのリークによって初期損傷を認定した。
【0093】
(ガス流れ評価)
ガス流れ評価では、第1部材にマニホールドの一部を構成する第1貫通孔が形成され、第2部材にマニホールドの一部を構成する第2貫通孔が形成され、接合部が第1貫通孔と第2貫通孔とのそれぞれを囲む構成における、マニホールドを流れるガスの分配性の評価を行った。
図12は、ガス流れ評価の評価方法を概略的に示す説明図である。
図12に示すように、ガス流れ評価は、2つの発電単位100Uを積層したサンプルを用いて行った。具体的には、2つの発電単位100Uに形成されたマニホールド(本性能評価では「マニホールドMA」という。)の入口側(Z軸負方向側)から出口側(Z軸正方向側)にガスGAを送った。このとき、マニホールドMAにおける入口側と、出口側とを流れるガスGAの流量の差を測定することによって、マニホールドMAを流れるガスGAの分配性を評価した。すなわち、マニホールドMAにおける入口側と出口側とを流れるガスGAの流量の差が大きいほどガスGAの分配性が良好であり、マニホールドMAにおける入口側と出口側とを流れるガスGAの流量の差が小さいほどガスGAの分配性が良好でないと評価した。評価基準は、ずれ量が0μmのサンプルのマニホールドMAにおける入口側と出口側とを流れるガスGAの流量の差を基準として、ガスGAの流れ性が向上したサンプルを良「○」とした。なお、
図12では図示を省略しているが、各サンプルにはマニホールドMAの出口側に絞りを設けており、マニホールドMAの出口側の流路を狭くすることによって、ガスGAが分配するように構成されている。各サンプルに設けられた絞りは、いずれも同一の孔径を有している。
【0094】
(耐久評価(2))
耐久評価(2)では、接合部によって接合された第1部材と第2部材とをそれぞれ含み、互いに積層する2つのユニットの引き剥がし荷重に対する耐久性の評価を行った。具体的には、第1部材と第2部材とを接合部とをそれぞれ有する2つの発電単位100Uが積層したサンプルを準備し、各サンプルについて、一方の発電単位100Uと他方の発電単位100Uとをそれぞれ治具によって固定し、治具を用いて、一方の発電単位100Uと他方の発電単位100Uとを引き剥がす方向に150Nの荷重を印加する動作を、発電単位100Uに含まれる第1部材と第2部材とが完全に剥がれるまで行った。評価基準は、2つの発電単位100Uが積層する方向視における、一方の発電単位100Uにおける組み合わせCMの接合部輪郭線の中心BCと、他方の発電単位100Uにおける組み合わせCMの接合部輪郭線の中心BCとの距離(以下、「各中心BC間の距離」という。)が0μmのサンプルにおいて、初期損傷が観察されてから第1部材と第2部材とが完全に剥離するまでに荷重を印加した回数を基準印加回数としたとき、各サンプルにおいて初期損傷が観察されてから第1部材と第2部材とが完全に剥離するまでに荷重を印加した回数が、基準印加回数よりも多いサンプルを良「○」とした。なお、各サンプルについては、第1部材または第2部材と接合部との間からのガスのリークによって初期損傷を認定した。
【0095】
(性能評価結果)
表1は、性能評価結果を表す表である。
【表1】
【0096】
表1では、各サンプルについて、評価対象となっている第1部材、第2部材および接合部と、ずれ量と、各評価結果等が示されている。表中の「最長距離/最短距離」は、Z軸方向視における接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最短距離に対するZ軸方向視における接合部輪郭線BOと重複部輪郭線DOとの最長距離の値を示しており、ずれ量が大きいほどこの値も大きくなる。
【0097】
サンプルS1~S4は、燃料電池スタック10における組み合わせCM1に相当し、サンプルS5~S8は、燃料電池スタック10における組み合わせCM2に相当し、サンプルS9~S12は、燃料電池スタック10における組み合わせCM3に相当し、サンプルS13~S16は、燃料電池スタック10における組み合わせCM4に相当し、サンプルS17~S20は、燃料電池スタック10における組み合わせCM5に相当する。また、サンプルS21~24は、本実施形態の燃料電池スタック10には示されていないが、第1部材として電解質層112を、第2部材としてインターコネクタ190を、接合部としてガラス接合材を用いている。
【0098】
耐久評価(1)において、各組み合わせCMにおける最長距離/最短距離が1.01であって、ずれ量が5μmのサンプル(サンプルS2,S6,S10,S14,S18,S22)の評価は、可「△」であった。また、各組み合わせCMにおける最長距離/最短距離が1.1であって、ずれ量が10μmのサンプル(サンプルS3,S7,S11,S15,S19,S23)および、各組み合わせCMにおける最長距離/最短距離が10であって、ずれ量が500μmのサンプル(サンプルS4,S8,S12,S16,S20,S24)の評価は、良「○」であった。この結果から、ずれ量が比較的大きいサンプルにおいて、耐久性が向上することが確認された。
【0099】
ガス流れ評価において、組み合わせCM3における最長距離/最短距離が1.01以上であって、ずれ量が5μm以上のサンプル(サンプルS10,S11,S12)の評価は、いずれも良「○」であった。この結果から、ずれ量が比較的大きいサンプルにおいて、ガス流れ性が向上することが確認された。
【0100】
【0101】
表2では、各サンプルについて、評価対象となっている第1部材、第2部材および接合部と、ずれ量と、耐久評価(2)の結果等が示されている。
【0102】
耐久評価(2)において、各中心BC間の距離が10μmのサンプル(サンプルS26)の評価は、良「○」であった。この結果から、一方の発電単位100Uにおける接合部輪郭線の中心BCと、他方の発電単位100Uにおける接合部輪郭線の中心BCとが、2つの発電単位100Uが積層する方向視において互いに位置が異なるサンプルにおいて、耐久性が向上することが確認された。
【0103】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0104】
図13は、変形例における
図6のVII-VIIの位置における燃料電池スタック10aのXY断面構成を示す説明図である。以下では、変形例の燃料電池スタック10aのうち、上述した実施形態の燃料電池スタック10と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を省略する。変形例の燃料電池スタック10aでは、溶接部182aの構成が、実施形態の溶接部182と異なっている。
【0105】
図13に示すように、溶接部182aは、完全な環状のうちの一部が欠けている。このように、溶接部182aは、必ずしも完全な環状でなくてもよく、完全な環状のうちの50%未満が欠けていてもよい。具体的には、Z軸方向視において、溶接部182aの形状に、溶接部182aをZ軸方向まわりに180度以内の特定の角度で回転させた形状である仮想溶接部182avを仮想的に結合し、または、重ね合わせることによって環状の図形が形成されればよい。このような場合には、溶接部182aと重複部輪郭線DO1との組み合わせを組み合わせCM1aとしたとき、組み合わせCM1aが下記の条件を満たしていればよい。
条件(1):Z軸方向視において、溶接部182aの輪郭線である接合部輪郭線BO1aは、重複部輪郭線DO1の全周のうちの50%以上の部分と形状と相似している。
条件(2):Z軸方向視において、重複部輪郭線の中心DC1から重複部輪郭線DO1に向かう各方向において、接合部輪郭線BO1aは、重複部輪郭線DO1の全周のうちの50%以上の部分を囲んでいる。
条件(3):Z軸方向視において、仮想溶接部182avにおける重複部輪郭線DO1に近い側の輪郭線である仮想接合部輪郭線BO1avとしたとき、接合部輪郭線BO1aと仮想接合部輪郭線BO1avとを結合した図形の中心BC1aと、重複部輪郭線の中心DC1とは、互いに位置が異なっている。
【0106】
上記変形例では、溶接部182が完全な環状ではない構成を示したが、他の接合部も同様に、必ずしも完全な環状でなくてもよい。
【0107】
上記実施形態において第1部材、第2部材および接合部として示された部材は、あくまで一例であり、第1部材、第2部材および接合部が、燃料電池スタック10を構成する他の部材であってもよい。
【0108】
上記実施形態における燃料電池スタック10や発電単位100Uの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態における燃料電池スタック10に含まれる単セル110の個数(発電単位100Uの個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は、燃料電池スタック10に要求される出力電圧に応じて適宜決められる。
【0109】
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0110】
上記実施形態の燃料電池スタック10は、コフロータイプのSOFCであるが、本明細書に開示される技術は、カウンターフロータイプのSOFCにも適用可能である。
【0111】
上記実施形態では、単セル110は、燃料極支持型の単セルであるが、電解質支持型や金属支持型等の他のタイプの単セルであってもよい。
【0112】
上記実施形態では、電気化学反応セルスタックが、固体酸化物形の燃料電池(SOFC)に用いられるセルスタックであったが、上記の構成は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池に用いられるセルスタック、あるいは、固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位を単セルとして備える電解セルスタックにも適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10,10a:燃料電池スタック 96:ガラスシール部 100:発電ブロック 100U:発電単位 100A:第1の発電単位 100B:第2の発電単位 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121:貫通孔 122:溶接部 124:接続部材 125:貫通孔 126:貫通孔周囲部 130:空気極フレーム 131:貫通孔 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 140:燃料極フレーム 141:貫通孔 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 180:IC用セパレータ 181:貫通孔 182,182a:溶接部 182av:仮想溶接部 184:溶接部 185:貫通孔 186:貫通孔周囲部 190:インターコネクタ 191:平板部 192:空気極集電部 193:被覆層 196:導電性接合材 210:第1エンドプレート 220:絶縁部 230:末端セパレータ 231:貫通孔 232:第1プレート 240:第1ターミナルプレート 241:貫通孔 242:第1バスバー 243:溶接部 250:第2ターミナルプレート 252:第2バスバー 253:溶接部 260:第2プレート 270:第2エンドプレート 280:ガス通路部材 281:本体部 282:フランジ部 284:ボルト孔 311:酸化剤ガス供給マニホールド 312:酸化剤ガス排出マニホールド 313:空気室 321:燃料ガス供給マニホールド 322:燃料ガス排出マニホールド 323:燃料室 B:ボルト BH:ボルト孔 N:ナット FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス CM:組み合わせ BO:接合部輪郭線 DO:重複部輪郭線 DP:重複部