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特開2025-11702廃水の生物処理装置、及び、曝気風量を制御する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011702
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】廃水の生物処理装置、及び、曝気風量を制御する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20250117BHJP
【FI】
C02F3/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113963
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 英輔
(72)【発明者】
【氏名】増田 周平
【テーマコード(参考)】
4D028
【Fターム(参考)】
4D028BC24
4D028BD06
4D028CA00
4D028CA09
4D028CB03
4D028CC01
4D028CC04
4D028CC09
4D028CD00
(57)【要約】
【課題】好気槽内での有機物の分解に悪影響を与えることなく、アンモニア態窒素の硝化によって発生するNOの排出量を確実に低減できるようにする。
【解決手段】曝気装置30の曝気風量と、好気槽4で処理される廃水の水量と、好気槽4の溶存態NO又はガス態NOの濃度とをそれぞれ測定する。そして、水量の測定値と曝気風量の測定値と溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値とに基づいて単位処理水量当たりNO排出量を算出する。制御装置10は、単位処理水量当たりNO排出量が所定の閾値以上である場合、曝気風量を低下させるように曝気装置30を操作する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気槽を用いた生物処理装置であって、
前記好気槽内を曝気する曝気装置と、
前記曝気装置の曝気風量を測定する風量センサと、
前記好気槽で処理される廃水の水量を測定する水量センサと、
前記好気槽の溶存態NO又はガス態NOの濃度を測定するNO濃度センサと、
前記曝気装置の操作によって前記曝気風量を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記水量の測定値と前記曝気風量の測定値と前記溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値とに基づいて単位処理水量当たりNO排出量を算出することと、
前記単位処理水量当たりNO排出量が所定の閾値以上である場合、前記曝気風量を低下させることと、を実行するように構成されている
ことを特徴とする廃水の生物処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生物処理装置であって、
前記NO濃度センサは溶存態NOの濃度を測定するセンサであって、前記好気槽のアンモニア硝化領域の水中に設置されている
ことを特徴とする廃水の生物処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生物処理装置であって、
前記NO濃度センサはガス態NOの濃度を測定するセンサであって、前記好気槽のアンモニア硝化領域の水面に設置されたガス捕集装置に接続されている
ことを特徴とする廃水の生物処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生物処理装置であって、
前記好気槽は少なくともアンモニア硝化領域と他の領域とが隔壁で分離され、
前記曝気装置は前記アンモニア硝化領域内の前記曝気風量を前記他の領域とは独立して変更可能に構成され、
前記NO濃度センサは前記アンモニア硝化領域の溶存態NO又はガス態NOの濃度を測定するように配置され、
前記制御装置は、前記単位処理水量当たりNO排出量が前記閾値以上である場合、前記アンモニア硝化領域内の前記曝気風量を低下させる
ことを特徴とする廃水の生物処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生物処理装置であって、
前記制御装置は、前記単位処理水量当たりNO排出量を前記閾値未満に抑えつつ、前記曝気風量を所定の設定値に近付けるように前記曝気風量を制御するように構成されている
ことを特徴とする廃水の生物処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生物処理装置であって、
前記制御装置は、前記単位処理水量当たりNO排出量を前記閾値未満に抑えつつ、前記水量の測定値に対する前記曝気風量の測定値の比を所定の設定値に近付けるように前記曝気風量を制御するように構成されている
ことを特徴とする廃水の生物処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生物処理装置であって、
前記好気槽の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記単位処理水量当たりNO排出量を前記閾値未満に抑えつつ、前記溶存酸素濃度の測定値を所定の設定値に近付けるように前記曝気風量を制御するように構成されている
ことを特徴とする廃水の生物処理装置。
【請求項8】
好気槽内を曝気する曝気装置の曝気風量を制御する制御装置であって、
前記曝気風量の測定値を取得することと、
前記好気槽で処理される廃水の水量の測定値を取得することと、
前記好気槽の溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値を取得することと、
前記水量の測定値と前記曝気風量の測定値と前記溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値とに基づいて単位処理水量当たりNO排出量を算出することと、
前記単位処理水量当たりNO排出量が所定の閾値以上である場合、前記曝気風量を低下させるように前記曝気装置を操作することと、を実行するように構成されている
ことを特徴とする曝気風量の制御装置。
【請求項9】
好気槽の曝気風量の制御方法であって、
前記曝気風量を測定することと、
前記好気槽で処理される廃水の水量を測定することと、
前記好気槽の溶存態NO又はガス態NOの濃度を測定することと、
前記水量の測定値と前記曝気風量の測定値と前記溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値とに基づいて単位処理水量当たりNO排出量を算出することと、
前記単位処理水量当たりNO排出量が所定の閾値以上である場合、前記曝気風量を低下させることと、を含む
ことを特徴とする曝気風量の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、好気槽内への曝気により有機物を酸化分解する廃水の生物処理装置と、その曝気風量を制御する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水を含む廃水の処理には、好気性微生物を活用した生物処理装置が用いられている。生物処理装置が備える好気槽(あるいは曝気槽)内には好気性微生物がフロック化した活性汚泥が浮遊している。ここに有機性の廃水が酸素を含む空気等の気体とともに供給されることで、廃水中の有機物は酸化分解されて廃水は浄化される。
【0003】
ただし、酸素を含む気体の供給、すなわち、曝気は非常に動力を要する。例えば、下水処理場の使用電力の約半分が曝気に起因している。曝気風量は送風量、送風倍率、及び溶存酸素濃度(DO)のいずれかを一定とするように制御されるのが一般的な方法である。
【0004】
生物処理装置の処理方式には、標準法、AO法、A2O法等のように目的に応じたいくつかの方式が存在する。一般的な処理方式である標準法とAO法では、N-BODが問題となる場合、その対策として硝化促進運転が行われている。硝化促進運転により、廃水中のアンモニア態窒素を硝酸態窒素まで酸化することができる。ただし、硝化促進運転では、曝気風量が硝化抑制運転の1.7倍程度に増加する。そのため、N-BODが問題とならない場合は、省エネのために硝化抑制運転が行われる。
【0005】
ところが、硝化抑制運転を行う場合、有機物が十分処理されたことを示す指標とするため、部分硝化が進行するよう運転が行われるケースがある。また、送風量一定制御、送風倍率一定制御、或いはDO一定制御で曝気風量が制御される結果、意図せず部分硝化が進行してしまうケースもある。
【0006】
図17は、廃水を標準法で処理した場合の好気槽内の各地点における水質の測定例を示している。測定点は流入水、有機物吸着・分解領域、有機物分解領域、アンモニア硝化領域、及び処理水の五地点である。測定した水質は有機物濃度、DO、無機態窒素、及び溶存態の亜酸化窒素(NO)である。この図に示すように、曝気により供給される酸素は、まず、有機物の酸化分解のために消費される。そして、有機物の分解が十分に達成されるとDOが上昇し、その領域においてアンモニア態窒素の硝化が進む。アンモニア態窒素の硝化が進むアンモニア硝化領域では、亜硝酸態窒素、及び硝酸態窒素が発生するとともに、NOも発生する。
【0007】
アンモニア態窒素の硝化には、図18に示すように、ヒドロキシルアミンの酸化によって亜硝酸態窒素を経て硝酸態窒素に至るルートとヒドロキシルアミンの酸化によって副生成物としてNOに至るルートがある。前述のような部分硝化を進行させる運転はNOの発生の原因となる。NOは二酸化炭素の約300倍の温暖化係数を持つ温室効果ガスであるため、地球温暖化の防止のためにはNOの排出を抑制することが求められる。
【0008】
図19はNOの排出量を経時的にモニタリングした結果の一例を示す。この例ではDO一定制御で曝気風量が制御されている。時間が経過することでNOの排出量は低下する傾向にはあるが絶えず増減を繰り返しておりゼロに近い値まで収束するには至っていない。つまり、NOの排出量の低減を目的とした何らかの積極的な制御を行わない限り、成り行きによるNOの排出量の低減には限界がある。
【0009】
特許文献1には、NOの排出量を制御することを目的とした技術が開示されている。特許文献1に開示されている従来技術では、ガス態NOの濃度をモニタリングし、その濃度の上昇に基づいて反応槽内に供給する曝気風量を減少させることが行われている。しかし、NOは当初は溶存態として液中に存在し、曝気空気との濃度差や気液接触によるストリッピングでガス態へ移行し大気中へ排出される。そのため、液とガスの濃度差の他、廃水の水量と曝気風量のバランスもガス態NOの濃度に影響を与える因子となる。また、水量や曝気風量は時々刻々と変化し、常に一定ではない。そのため、ガス態NO濃度の上昇に基づいた曝気風量の制御では、NOの絶対量を確実に減らすことができるとは限らないし、曝気風量を過度に減少させて有機物の分解に悪影響を及ぼしてしまう虞もある。つまり、特許文献1に開示されている従来技術には改善の余地がある。
【0010】
特許文献1の他にも、本出願の出願時の技術レベルを知る上での参考となりうる先行技術文献として、例えば、特許文献2乃至4を列挙することができる。しかし、特許文献1と同様、特許文献2乃至4の何れにも、好気槽内での有機物の分解に悪影響を与えることなく、アンモニア態窒素の硝化によって発生するNOの排出量を確実に低減できる技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第5140545号公報
【特許文献2】特許第5300827号公報
【特許文献3】特開昭57-027197号公報
【特許文献4】特開昭55-151262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示は、上述のような問題に鑑みてなされたものであり、好気槽内での有機物の分解に悪影響を与えることなく、アンモニア態窒素の硝化によって発生するNOの排出量を確実に低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は廃水の生物処理装置を提供する。本開示の生物処理装置は、好気槽を用いた生物処理装置である。本開示の生物処理装置は、好気槽内を曝気する曝気装置、風量センサ、水量センサ、NO濃度センサ、及び制御装置を備える。風量センサは曝気装置の曝気風量を測定する。水量センサは好気槽で処理される廃水の水量を測定する。NO濃度センサは好気槽の溶存態NO又はガス態NOの濃度を測定する。そして、制御装置は曝気装置の操作によって曝気風量を制御するように構成される。詳しくは、制御装置は、水量の測定値と曝気風量の測定値と溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値とに基づいて単位処理水量当たりNO排出量を算出し、単位処理水量当たりNO排出量が所定の閾値以上である場合、曝気装置の操作によって曝気風量を低下させるように構成されている。
【0014】
本開示の生物処理装置において、NO濃度センサは溶存態NOの濃度を測定するセンサであって、好気槽のアンモニア硝化領域の水中に設置されてもよい。或いは、NO濃度センサはガス態NOの濃度を測定するセンサであって、好気槽のアンモニア硝化領域の水面に設置されたガス捕集装置に接続されてもよい。
【0015】
本開示の生物処理装置において、好気槽は少なくともアンモニア硝化領域と他の領域とが隔壁で分離されてもよい。その場合、曝気装置はアンモニア硝化領域内の曝気風量を他の領域とは独立して変更可能に構成されてもよい。また、NO濃度センサはアンモニア硝化領域の溶存態NO又はガス態NOの濃度を測定するように配置されてもよい。そして、制御装置は、単位処理水量当たりNO排出量が閾値以上である場合、アンモニア硝化領域内の曝気風量を低下させるように構成されてもよい。
【0016】
本開示の生物処理装置において、制御装置は、単位処理水量当たりNO排出量を閾値未満に抑えつつ、曝気風量を所定の設定値に近付けるように曝気風量を制御するように構成されてもよい。すなわち、制御装置は、単位処理水量当たりNO排出量を閾値未満に抑えるという制約条件の下で送風量一定制御を行ってもよい。
【0017】
本開示の生物処理装置において、制御装置は、単位処理水量当たりNO排出量を閾値未満に抑えつつ、処理水量の測定値に対する曝気風量の測定値の比を所定の設定値に近付けるように曝気風量を制御するように構成されてもよい。すなわち、制御装置は、単位処理水量当たりNO排出量を閾値未満に抑えるという制約条件の下で送風倍率一定制御を行ってもよい。
【0018】
本開示の生物処理装置は、好気槽のDOを測定するDOセンサをさらに備えてもよい。その場合、制御装置は、単位処理水量当たりNO排出量を閾値未満に抑えつつ、DOの測定値を所定の設定値に近付けるように曝気風量を制御するように構成されてもよい。すなわち、制御装置は、単位処理水量当たりNO排出量を閾値未満に抑えるという制約条件の下でDO一定制御を行ってもよい。
【0019】
また、本開示は廃水の曝気風量の制御装置を提供する。本開示の曝気風量の制御装置は、好気槽内を曝気する曝気装置の曝気風量を制御する制御装置であって、以下の第一乃至第五の処理を実行するように構成されている。第一の処理は、曝気風量の測定値を取得する処理である。第二の処理は、好気槽で処理される廃水の水量の測定値を取得する処理である。第三の処理は、好気槽の溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値を取得する処理である。第一乃至第三の処理の間での実行の順番は任意である。第四の処理は、水量の測定値と曝気風量の測定値と溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値とに基づいて単位処理水量当たりNO排出量を算出する処理である。そして、第五の処理は、単位処理水量当たりNO排出量が所定の閾値以上である場合、曝気風量を低下させるように曝気装置を操作する処理である。
【0020】
さらに、本開示は廃水の曝気風量の制御方法を提供する。本開示の曝気風量の制御方法は、好気槽の曝気風量の制御方法であって、以下の第一乃至第五のステップを含む。第一のステップは、曝気風量を測定するステップである。第二のステップは、好気槽で処理される廃水の水量を測定するステップである。第三のステップは、好気槽の溶存態NO又はガス態NOの濃度を測定するステップである。第一乃至第三のステップの間での実行の順番は任意である。第四のステップは、水量の測定値と曝気風量の測定値と溶存態NO又はガス態NOの濃度の測定値とに基づいて単位処理水量当たりNO排出量を算出するステップである。そして、第五のステップは、単位処理水量当たりNO排出量が所定の閾値以上である場合、曝気風量を低下させるステップである。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術によれば、測定した処理水量、曝気風量、及びNO濃度から単位処理水量当たりNO排出量を演算することで、排出されるNOの絶対量の増減を的確に把握することができる。そして、その的確に把握されたNOの排出量が閾値以上となったら曝気風量を低下させることで、好気槽内での有機物の分解に悪影響を与えることなく、アンモニア態窒素の硝化によって発生するNOの排出量を確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態に係る生物処理装置の構成を示す図である。
図2】溶存態NOの濃度とガス態NOの濃度との相関性を示す図である。
図3】一般的な風量一定制御のフローチャートである。
図4】第一実施形態に係る生物処理装置で実行される風量一定制御にNO制御を組み合わせた曝気風量制御のフローチャートである。
図5】一般的な送風倍率一定制御のフローチャートである。
図6】第一実施形態に係る生物処理装置で実行される送風倍率一定制御にNO制御を組み合わせた曝気風量制御のフローチャートである。
図7】一般的なDO一定制御のフローチャートである。
図8】第一実施形態に係る生物処理装置で実行されるDO一定制御にNO制御を組み合わせた曝気風量制御のフローチャートである。
図9】第一実施形態に係る生物処理装置の第一変形例の構成を示す図である。
図10】第一実施形態に係る生物処理装置の第二変形例の構成を示す図である。
図11】第一実施形態に係る生物処理装置の第三変形例の構成を示す図である。
図12】第二実施形態に係る生物処理装置の構成を示す図である。
図13】第二実施形態に係る生物処理装置で実行される風量一定制御にNO制御を組み合わせた曝気風量制御のフローチャートである。
図14】第二実施形態に係る生物処理装置で実行される送風倍率一定制御にNO制御を組み合わせた曝気風量制御のフローチャートである。
図15】第二実施形態に係る生物処理装置で実行されるDO一定制御にNO制御を組み合わせた曝気風量制御のフローチャートである。
図16】第二実施形態に係る生物処理装置の変形例の構成を示す図である。
図17】好気槽内の各地点における水質の測定例を示す図である。
図18】アンモニア態窒素の硝化・脱窒反応を示す図である。
図19】NO排出量の経時的モニタリング結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.第一実施形態
1-1.生物処理装置の構成
本実施形態及び後述する第二実施形態では、生物処理装置の処理方式として標準法が採用されている。ただし、好気槽内において有機物の吸着と分解、分解、硝化の一連のプロセスが進む処理方式であるならば、本開示の技術は標準法以外の処理方式にも適用可能である。例えば、本開示の技術は処理方式としてAO法を用いた生物処理装置にも適用することができる。
【0024】
図1は、本実施形態に係る生物処理装置101の構成を示す図である。標準法が採用された生物処理装置101は、最初沈殿池2、好気槽4、及び最終沈殿池6の三つの槽を有している。処理対象である廃水は最初沈殿池2を経て好気槽4に送られる。好気槽4にて処理された廃水は最終沈殿池6に送られ、最終沈殿池6から処理水として排出される。最終沈殿池6において沈殿した汚泥は、図示しない返送ポンプによって好気槽4の入口に戻される。
【0025】
好気槽4は上流から順に、有機物吸着・分解領域R1、有機物分解領域R2、及びアンモニア硝化領域R3の三つの領域に分けられる。これら三つの領域R1、R2、R3はそこで起きている反応に着目して区分されている。有機物吸着・分解領域R1は活性汚泥による有機物の吸着と分解が行われる領域である。有機物分解領域R2は微生物による有機物の分解が進む領域である。そして、アンモニア硝化領域R3はアンモニア態窒素の硝化が進む領域である。ただし、これら三つの領域R1、R2、R3の間に明確な区切りがある訳ではないし、厳密に区切られている必要もない。
【0026】
生物処理装置101は好気槽4内を曝気するための曝気装置30を備える。曝気装置30は、好気槽4内に敷設された散気装置31と、散気装置31に酸素を含む空気等の気体を送るブロア34と、散気装置31を流れる曝気風量を調整するためのバルブ33とを備える。
【0027】
生物処理装置101は多数のセンサを備える。散気装置31におけるバルブ33の下流には、風量センサ21が設けられている。風量センサ21は曝気装置30によって好気槽4に曝気される酸素を含む空気等の気体の風量、すなわち、曝気風量を測定するセンサである。最初沈殿池2に廃水を供給する廃水管には、水量センサ22が設けられている。水量センサ22は好気槽4で処理される廃水の水量を測定するセンサである。風量センサ21及び水量センサ22としては、オリフィス流量計、電磁流量計、超音波流量計等、一般的に用いられる流量計を用いることができる。
【0028】
好気槽4の水面WS下にはDOセンサ23とNO濃度センサ24とが投入されている。DOセンサ23は廃水のDOをリアルタイムで測定するセンサである。NO濃度センサ24は廃水中の溶存態NOの濃度をリアルタイムで測定するセンサである。DOセンサ23とNO濃度センサ24はともにアンモニア硝化領域R3の水中に投入されている。ただし、DOセンサ23は曝気風量の制御方式によっては必ずしも必要ではない。具体的には、後述するDO一定制御にNO制御を組み合わせた曝気風量制御以外の制御では、DOセンサ23は省略することができる。
【0029】
生物処理装置101は制御装置10を備える。制御装置10は曝気装置30の操作によって曝気風量を制御する制御装置である。制御装置10には、風量センサ21、水量センサ22、DOセンサ23、及びNO濃度センサ24で得られた情報が入力されている。制御装置10は入力された情報に基づいて曝気風量を制御する。
【0030】
制御装置10による曝気風量の制御では、まず、風量センサ21による風量の測定値、水量センサ22による水量の測定値、及びNO濃度センサ24によるNO濃度の測定値に基づいて単位処理水量当たりNO排出量(以下、単にNO排出量と表記する場合もある)が計算される。この計算の際、NO濃度センサ24により測定された溶存態NO濃度はガス態NO濃度に変換される。溶存態NO濃度とガス態NO濃度との間には、図2に示すような相関性がある。溶存態NO濃度のガス態NO濃度への変換には、両者の相関性に基づく変換係数が用いられる。
【0031】
制御装置10は上記の計算で得られるNO排出量をモニタリングする。風量、水量、NO濃度のいずれもがリアルタイムで連続的に取得できるデータであるので、制御装置10はNO排出量をリアルタイムで連続的にモニタリングすることができる。そして、NO排出量が所定の閾値以上になった場合に、制御装置10はブロア34の回転数を下げるとともにバルブ33の開度を小さくする。この操作によって曝気風量は低下する。
【0032】
曝気風量を低下させることで、アンモニア硝化領域での過度な硝化の進行は抑えられ、温室効果ガスであるNO排出量を低下させることが可能となる。また、曝気風量を低下させることによってブロア34の駆動に伴う電力消費を抑えることも可能となる。さらに、この制御はNO排出量が閾値未満に収まる程度に曝気風量を低下させるものであって曝気風量をゼロにするものではない。ゆえに、曝気風量の不足によって有機物の分解を不十分にしてしまうことは避けられる。
【0033】
以上のようにNOの排出量を低下させることを目的とした曝気風量の制御を、本明細書ではNO制御と呼ぶ。制御装置10は従来の曝気風量制御と組み合わせてNO制御を実行する。制御装置10による曝気風量制御の制御方式には、送風量一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式と、送風倍率一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式と、DO一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式とがある。制御装置10はいずれか一つの制御方式を選択的に実施可能に構成されている。ただし、DO一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式を実施する場合にはDOセンサ23が必須である。
【0034】
以下、生物処理装置101の制御装置10が実施可能な曝気風量制御の三つの制御方式について図を参照しながら順に説明する。
【0035】
1-2.曝気風量制御の制御方式
1-2-1.送風量一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式
まず、一般的な送風量一定制御について図3のフローチャートを用いて説明する。一般的な送風量一定制御では、風量設定値Fが設定される(ステップS11)。そして、曝気装置30の運転によって曝気が開始される(ステップS12)。
【0036】
曝気の開始後、風量センサ21から風量測定値Fが取得される(ステップS13)。風量測定値Fは風量設定値Fと比較される(ステップS14)。風量測定値Fが風量設定値F以下である場合、曝気風量は増加される(ステップS15)。一方、風量測定値Fが風量設定値Fより大きい場合、曝気風量は低下される(ステップS16)。そして、曝気が終了するまで一定の周期でステップS13以降の処理が繰り返し行われる(ステップS17)。
【0037】
次に、送風量一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式について図4のフローチャートを用いて説明する。この制御方式では、風量設定値FとともにNO排出量の閾値(以下、NO閾値と表記する)Kが設定される(ステップS101)。NO閾値Kは、好ましくは20mg-NO/m以下、より望ましくは10mg-NO/m以下である。これらの設定値の設定後、曝気装置30の運転によって曝気が開始される(ステップS102)。
【0038】
曝気の開始後、風量センサ21から風量測定値Fが取得される。また、NO濃度センサ24からNO濃度測定値Cが取得される。ただし、NO濃度測定値Cは溶存態NO濃度からガス態NO濃度への変換後の値である。さらに、水量センサ22から水量測定値Fが取得される(以上、ステップS103)。そして、風量測定値FとNO濃度測定値Cと水量測定値Fとを用いて、以下の式によりNO排出量Kが演算される(ステップS104)。
=(F×C)/F
【0039】
ただし、風量測定値Fは好気槽4の全体の曝気風量を表しているのに対し、硝化反応を左右するのはアンモニア硝化領域R3の曝気風量である。ゆえに、上記式によるNO排出量Kの演算には、好気槽4の全体の曝気風量に対するアンモニア硝化領域R3の曝気風量の比率によって補正された風量測定値Fが用いられる。このことは後述する他の制御方式にも共通する。
【0040】
O排出量KはNO閾値Kと比較される(ステップS105)。NO排出量KがNO閾値K以上である場合、曝気風量は低下される(ステップS106)。ただし、ステップS106の一回の実行で曝気風量は急激に低下されるのではなく、ステップS106の処理が実行される度に曝気風量は徐々に低下されていく。制御装置10には、例えば、ステップS106の一回の実行当たりのブロア34の回転数の低下量及びバルブ33の開度の低下量が設定されている。ステップS106の処理が実行される度に、制御装置10は所定回転数だけブロア34の回転数を低下させ、また、所定開度だけバルブ33の開度を小さくする。ここで説明した曝気風量を低下させる方法は後述する他の制御方式にも共通する。
【0041】
ステップS103乃至S106の処理はNO排出量KがNO閾値K未満になるまで繰り返し行われる。そして、NO排出量KがNO閾値K未満まで低下した場合、風量測定値Fと風量設定値Fとの比較が行われる(ステップS107)。風量測定値Fが風量設定値F以下である場合、曝気風量は増加される(ステップS108)。一方、風量測定値Fが風量設定値Fより大きい場合、曝気風量は低下される(ステップS109)。そして、曝気が終了するまでステップS103以降の処理が繰り返し行われる(ステップS110)。
【0042】
以上のようなNO制御に送風量一定制御を組み合わせた制御方式で曝気風量を制御することで、有機物の除去とNOの排出の抑制とを両立させることができる。また、NOの排出の抑制は曝気風量を下げることで達成されるため、曝気由来の動力も低減され、さらなる省エネと温室効果ガスの削減とを図ることができる。
【0043】
1-2-2.送風倍率一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式
まず、一般的な送風倍率一定制御について図5のフローチャートを用いて説明する。一般的な送風倍率一定制御では、送風倍率設定値Mが設定される(ステップS21)。送風倍率とは、好気槽4に供給される廃水の水量に対する曝気風量の比率を意味する。送風倍率設定値Mの設定後、曝気装置30の運転によって曝気が開始される(ステップS22)。
【0044】
曝気の開始後、風量センサ21から風量測定値Fが取得される。また、水量センサ22から水量測定値Fが取得される(以上、ステップS23)。そして、風量測定値Fを水量測定値Fで除算することによって送風倍率Mが演算される(ステップS24)。送風倍率Mは送風倍率設定値Mと比較される(ステップS25)。送風倍率Mが送風倍率設定値M未満である場合、曝気風量は増加される(ステップS26)。一方、送風倍率Mが送風倍率設定値M以上の場合、曝気風量は低下される(ステップS27)。そして、曝気が終了するまで一定の周期でステップS23以降の処理が繰り返し行われる(ステップS28)。
【0045】
次に、送風倍率一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式について図6のフローチャートを用いて説明する。この制御方式では、送風倍率設定値MとともにNO閾値Kが設定される(ステップS201)。そして、曝気装置30の運転によって曝気が開始される(ステップS202)。
【0046】
曝気の開始後、風量センサ21から風量測定値Fが取得される。また、NO濃度センサ24からNO濃度測定値Cが取得される。さらに、水量センサ22から水量測定値Fが取得される(以上、ステップS203)。そして、風量測定値FとNO濃度測定値Cと水量測定値Fとを用いてNO排出量Kが演算される(ステップS204)。
【0047】
O排出量KはNO閾値Kと比較される(ステップS205)。NO排出量KがNO閾値K以上である場合、曝気風量は低下される(ステップS206)。
【0048】
ステップS203乃至S206の処理はNO排出量KがNO閾値K未満になるまで繰り返し行われる。そして、NO排出量KがNO閾値K未満まで低下した場合、風量測定値Fと水量測定値Fとから送風倍率Mが演算される(ステップS207)。送風倍率Mは送風倍率設定値Mと比較される(ステップS208)。送風倍率Mが送風倍率設定値M未満である場合、曝気風量は増加される(ステップS209)。一方、送風倍率Mが送風倍率設定値M以上の場合、曝気風量は低下される(ステップS210)。そして、曝気が終了するまでステップS203以降の処理が繰り返し行われる(ステップS211)。
【0049】
以上のようなNO制御に送風倍率一定制御を組み合わせた制御方式で曝気風量を制御することで、有機物の除去とNOの排出の抑制とを両立させることができる。また、NOの排出の抑制は曝気風量を下げることで達成されるため、曝気由来の動力も低減され、さらなる省エネと温室効果ガスの削減とを図ることができる。
【0050】
1-2-3.DO一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式
まず、一般的なDO一定制御について図7のフローチャートを用いて説明する。一般的なDO一定制御では、DOの目標値である目標DO値Vが設定される(ステップS31)。目標DO値Vの設定後、曝気装置30の運転によって曝気が開始される(ステップS32)。
【0051】
曝気の開始後、DOセンサ23からDO測定値Vが取得される(ステップS33)。DO測定値Vは目標DO値Vと比較される(ステップS34)。DO測定値Vが目標DO値V未満である場合、曝気風量は増加される(ステップS35)。一方、DO測定値Vが目標DO値V以上の場合、曝気風量は低下される(ステップS36)。そして、曝気が終了するまで一定の周期でステップS33以降の処理が繰り返し行われる(ステップS37)。
【0052】
次に、DO一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式について図8のフローチャートを用いて説明する。この制御方式では、目標DO値VとともにNO閾値Kが設定される(ステップS301)。そして、曝気装置30の運転によって曝気が開始される(ステップS302)。
【0053】
曝気の開始後、風量センサ21から風量測定値Fが取得される。また、NO濃度センサ24からNO濃度測定値Cが取得される。さらに、水量センサ22から水量測定値Fが取得される(以上、ステップS303)。そして、風量測定値FとNO濃度測定値Cと水量測定値Fとを用いてNO排出量Kが演算される(ステップS304)。
【0054】
O排出量KはNO閾値Kと比較される(ステップS305)。NO排出量KがNO閾値K以上である場合、曝気風量は低下される(ステップS306)。
【0055】
ステップS303乃至S306の処理はNO排出量KがNO閾値K未満になるまで繰り返し行われる。そして、NO排出量KがNO閾値K未満まで低下した場合、DOセンサ23からDO測定値Vが取得される(ステップS307)。DO測定値Vは目標DO値Vと比較される(ステップS308)。DO測定値Vが目標DO値V未満である場合、曝気風量は増加される(ステップS309)。一方、DO測定値Vが目標DO値V以上の場合、曝気風量は低下される(ステップS310)。そして、曝気が終了するまで一定の周期でステップS303以降の処理が繰り返し行われる(ステップS311)。
【0056】
以上のようなNO制御にDO一定制御を組み合わせた制御方式で曝気風量を制御することで、有機物の除去とNOの排出の抑制とを両立させることができる。特に、DO一定制御との組み合わせによれば、DOを適正な値に維持しながらNOの排出を抑制することができる。また、DO一定制御は、安定した制御であり、好気槽4に流入する廃水の水量及び水質に応じて送風量が変化するために送風量の無駄が少ないという利点がある。このような利点を有するDO一定制御にNO制御を組み合わせることで、曝気由来の動力はさらに低減され、さらなる省エネと温室効果ガスの削減とを図ることができる。
【0057】
以上の三つの制御方式について説明した通り、処理水量、曝気風量、及びNO濃度から単位処理水量当たりNO排出量を演算することで、排出されるNOの絶対量の増減を的確に把握することができる。そして、その的確に把握されたNOの排出量が閾値以上となったら曝気風量を低下させることで、好気槽4内での有機物の分解に悪影響を与えることなく、アンモニア態窒素の硝化によって発生するNOの排出量を確実に低減することができる。
【0058】
なお、生物処理装置101ではNO濃度として溶存態NO濃度を測定しているが、溶存態NO濃度に代えてガス態NO濃度を測定し、ガス態NO濃度から単位処理水量当たりNO排出量を演算することもできる。その場合、溶存態NO濃度を用いる場合のような変換処理は必要なく、ガス態NO濃度の値をそのままNO排出量の演算に用いることができる。以下、生物処理装置101の変形例として、ガス態NO濃度を測定するように構成された生物処理装置について説明する。
【0059】
1-3.生物処理装置の変形例
1-3-1.第一変形例
図9は生物処理装置101の第一変形例としての生物処理装置102の構成を示す図である。図9において前述の生物処理装置101と共通する要素には共通の符号が付されている。
【0060】
第一変形例の生物処理装置102はNO濃度センサ25を備える。NO濃度センサ25は好気槽4に溜まったガス態NOの濃度をリアルタイムで測定するセンサである。発生したガス態NOの大気への放出を防ぐため、好気槽4には覆蓋4aが設けられている。NO濃度センサ25のガス取込口25aは水面WSと覆蓋4aとの間の空間に設けられている。
【0061】
第一変形例の生物処理装置102では、NO濃度センサ25によって覆蓋4a下の空間におけるガス態NOの平均濃度が測定される。制御装置10は、風量センサ21から得られた風量測定値にNO濃度センサ25から得られたNO濃度測定値を乗算し、それを水量センサ22から得られた水量測定値で除算することによって単位処理水量当たりNO排出量を算出する。
【0062】
1-3-2.第二変形例
図10は生物処理装置101の第二変形例としての生物処理装置103の構成を示す図である。図9において前述の生物処理装置101或いは102と共通する要素には共通の符号が付されている。
【0063】
第二変形例の生物処理装置103は、好気槽4の覆蓋4a下に溜まったガスを脱臭装置に導くダクト25bを備える。NO濃度センサ25はダクト25bに設けられている。NO濃度センサ25のガス取込口25aはダクト25bのガス取込口も兼ねている。生物処理装置では、このように既存のダクト25bを利用してNO濃度センサ25を取り付けることも可能である。
【0064】
1-3-3.第三変形例
図11は生物処理装置101の第三変形例としての生物処理装置104の構成を示す図である。図9において前述の生物処理装置101、102或いは103と共通する要素には共通の符号が付されている。
【0065】
第三変形例の生物処理装置104はNO濃度センサ25を備える。NO濃度センサ25はガス態NOの濃度をリアルタイムで測定するセンサである。ただし、生物処理装置104の好気槽4は覆蓋を有していないオープンタイプである。そのため、NO濃度センサ25はオープンチャンバーと呼ばれるガス捕集装置25cに取り付けられている。ガス捕集装置25cは水面WSに設置されて、水面WSに浮上してくるガスを直接捕集する装置である。ガス捕集装置25cはアンモニア硝化領域R3の水面に浮かべられ、アンモニア硝化領域R3で発生したNOを捕集する。
【0066】
第三変形例の生物処理装置104では、NO濃度センサ25によってアンモニア硝化領域R3で発生したガス態NOの濃度が測定される。制御装置10は、風量センサ21から得られた風量測定値をアンモニア硝化領域R3の曝気風量に換算する。そして、アンモニア硝化領域R3の曝気風量にNO濃度センサ25から得られたNO濃度測定値を乗算し、それを水量センサ22から得られた水量測定値で除算することによって単位処理水量当たりNO排出量を算出する。
【0067】
2.第二実施形態
2-1.生物処理装置の構成
図12は、本実施形態に係る生物処理装置201の構成を示す図である。図12において前述の生物処理装置101、102、103或いは104と共通する要素には共通の符号が付されている。
【0068】
生物処理装置201の好気槽4は、有機物吸着・分解領域R1に対応する上流槽4A、有機物分解領域R2に対応する中流槽4B、及びアンモニア硝化領域R3に対応する下流槽4Cから構成されている。上流槽4Aと中流槽4Bとは隔壁4bによって上部空間を分離され、中流槽4Bと下流槽4Cとは隔壁4cによって上部空間を分離されている。ただし、上流槽4A、中流槽4B、及び下流槽4Cは水中で繋がっている。
【0069】
生物処理装置201は槽毎に独立した曝気装置30A、30B、30Cを備える。曝気装置30Aは、上流槽4Aに敷設された散気装置31Aと、散気装置31Aに酸素を含む空気等の気体を送るブロア34Aと、散気装置31Aを流れる曝気風量を調整するためのバルブ33Aとを備える。曝気装置30Bは、中流槽4Bに敷設された散気装置31Bと、散気装置31Bに酸素を含む空気等の気体を送るブロア34Bと、散気装置31Bを流れる曝気風量を調整するためのバルブ33Bとを備える。曝気装置30Cは、下流槽4Cに敷設された散気装置31Cと、散気装置31Cに酸素を含む空気等の気体を送るブロア34Cと、散気装置31Cを流れる曝気風量を調整するためのバルブ33Cとを備える。
【0070】
生物処理装置201は多数のセンサを備える。各散気装置31A、31B、31Cにおけるバルブ33A、33B、33Cの下流には、それぞれ風量センサ21A、21B、21Cが設けられている。最初沈殿池2に廃水を供給する廃水管には、水量センサ22が設けられている。DOセンサ23とNO濃度センサ25は下流槽4Cに設けられている。DOセンサ23は下流槽4Cの水面WS下に投入されている。NO濃度センサ25はそのガス取込口25aを下流槽4Cの水面WSと覆蓋4aとの間の空間に設けられている。
【0071】
生物処理装置201の制御装置10は、三つの曝気装置30A、30B、30Cを別々に操作することによって、三つの槽4A、4B、4Cの曝気風量をそれぞれ独立して制御することができる。特に、下流槽4Cの曝気風量の制御では、送風量一定制御、送風倍率一定制御、或いはDO一定制御とともにNO制御が行われる。
【0072】
下流槽4Cの曝気風量に対するNO制御では、まず、風量センサ21Cによる風量の測定値、水量センサ22による水量の測定値、及びNO濃度センサ25によるNO濃度の測定値が取得される。風量センサ21Cから得られる風量測定値はアンモニア硝化領域R3の曝気風量である。NO濃度センサ25から得られるNO濃度測定値はアンモニア硝化領域R3のガス態NOの濃度である。制御装置10は、取得したこれらの測定値に基づいて単位処理水量当たりNO排出量を計算する。制御装置10は上記の計算で得られるNO排出量をモニタリングする。そして、NO排出量が所定の閾値以上になった場合に、制御装置10はブロア34Cの回転数を下げるとともにバルブ33Cの開度を小さくする。この操作によって下流槽4Cの曝気風量は低下し、硝化が抑制されることでNOの発生も抑えられる。
【0073】
以下、生物処理装置201の制御装置10が実施可能な曝気風量制御の三つの制御方式について図を参照しながら順に説明する。なお、生物処理装置201では各槽4A、4B、4Cで個別に曝気風量が制御されるので、有機物吸着・分解領域R1や有機物分解領域R2に十分酸素を供給しながら、アンモニア硝化領域R3のみの曝気風量を下げることができる。このため、生物処理装置201によれば、有機物の除去とNOの排出の抑制とを高度に両立させることができる。
【0074】
2-2.曝気風量制御の制御方式
2-2-1.送風量一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式
送風量一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式について図13のフローチャートを用いて説明する。この制御方式では、上流槽4Aの風量設定値Ff、中流槽4Bの風量設定値Fc、及び下流槽4Cの風量設定値Frがそれぞれ設定される。また、NO閾値Kが設定される(以上、ステップS151)。これらの設定値の設定後、各曝気装置30A、30B、30Cの運転によって曝気が開始される(ステップS152)。
【0075】
曝気の開始後、各風量センサ21A、21B、21Cから風量測定値Ff、Fc、Frが取得される。また、NO濃度センサ24からNO濃度測定値Cが取得される。さらに、水量センサ22から水量測定値Fが取得される(以上、ステップS153)。そして、下流槽4Cの風量測定値FrとNO濃度測定値Cと水量測定値Fとを用いて、以下の式によりNO排出量Kが演算される(ステップS154)。
=(Fr×C)/F
【0076】
O排出量KはNO閾値Kと比較される(ステップS155)。NO排出量KがNO閾値K以上である場合、上流槽4Aと中流槽4Bの曝気風量は一定にしたまま、下流槽4Cの曝気風量のみ低下される(ステップS156)。詳しくは、制御装置10はブロア34A、34Bの回転数とバルブ33A、33Bの開度は維持したまま、所定回転数だけブロア34Cの回転数を低下させ、また、所定開度だけバルブ33Cの開度を小さくする。この処理により風量測定値Ff、Fcは維持されつつ、風量測定値Frのみが低下するようになる。
【0077】
ステップS153乃至S156の処理はNO排出量KがNO閾値K未満になるまで繰り返し行われる。そして、NO排出量KがNO閾値K未満まで低下した場合、槽4A、4B、4Cごとに以下の送風量一定制御が行われる。
【0078】
上流槽4Aについては、風量測定値Ffと風量設定値Ffとの比較が行われる(ステップS157)。風量測定値Ffが風量設定値Ff以下である場合、上流槽4Aの曝気風量は増加される(ステップS158)。一方、風量測定値Ffが風量設定値Ffより大きい場合、上流槽4Aの曝気風量は低下される(ステップS159)。
【0079】
中流槽4Bについては、風量測定値Fcと風量設定値Fcとの比較が行われる(ステップS160)。風量測定値Fcが風量設定値Fc以下である場合、中流槽4Bの曝気風量は増加される(ステップS161)。一方、風量測定値Fcが風量設定値Fcより大きい場合、中流槽4Bの曝気風量は低下される(ステップS162)。
【0080】
下流槽4Cについては、風量測定値Frと風量設定値Frとの比較が行われる(ステップS163)。風量測定値Frが風量設定値Fr以下である場合、下流槽4Cの曝気風量は増加される(ステップS164)。一方、風量測定値Frが風量設定値Frより大きい場合、下流槽4Cの曝気風量は低下される(ステップS165)。
【0081】
ステップS153乃至S156のNO制御の処理と、ステップS157乃至S165の送風量一定制御の処理は曝気が終了するまで繰り返し行われる(ステップS166)。
【0082】
2-2-2.送風倍率一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式
次に、送風倍率一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式について図14のフローチャートを用いて説明する。この制御方式では、上流槽4Aの送風倍率設定値Mf、中流槽4Bの送風倍率設定値Mc、及び下流槽4Cの送風倍率設定値Mrがそれぞれ設定される。また、NO閾値Kが設定される(以上、ステップS251)。これらの設定値の設定後、各曝気装置30A、30B、30Cの運転によって曝気が開始される(ステップS252)。
【0083】
曝気の開始後、各風量センサ21A、21B、21Cから風量測定値Ff、Fc、Frが取得される。また、NO濃度センサ24からNO濃度測定値Cが取得される。さらに、水量センサ22から水量測定値Fが取得される(以上、ステップS253)。そして、下流槽4Cの風量測定値FrとNO濃度測定値Cと水量測定値Fとを用いてNO排出量Kが演算される(ステップS254)。
【0084】
O排出量KはNO閾値Kと比較される(ステップS255)。NO排出量KがNO閾値K以上である場合、上流槽4Aと中流槽4Bの曝気風量は一定にしたまま、下流槽4Cの曝気風量のみ低下される(ステップS256)。この処理により風量測定値Ff、Fcは維持されつつ、風量測定値Frのみが低下するようになる。
【0085】
ステップS253乃至S256の処理はNO排出量KがNO閾値K未満になるまで繰り返し行われる。そして、NO排出量KがNO閾値K未満まで低下した場合、槽4A、4B、4Cごとに以下の送風倍率一定制御が行われる。
【0086】
上流槽4Aについては、風量測定値Ffと水量測定値Fとから送風倍率Mfが演算される(ステップS257)。送風倍率Mfは送風倍率設定値Mfと比較される(ステップS258)。送風倍率Mfが送風倍率設定値Mf未満である場合、上流槽4Aの曝気風量は増加される(ステップS259)。一方、送風倍率Mfが送風倍率設定値Mf以上の場合、上流槽4Aの曝気風量は低下される(ステップS260)。
【0087】
中流槽4Bについては、風量測定値Fcと水量測定値Fとから送風倍率Mcが演算される(ステップS261)。送風倍率Mcは送風倍率設定値Mcと比較される(ステップS262)。送風倍率Mcが送風倍率設定値Mc未満である場合、中流槽4Bの曝気風量は増加される(ステップS263)。一方、送風倍率Mcが送風倍率設定値Mc以上の場合、中流槽4Bの曝気風量は低下される(ステップS264)。
【0088】
下流槽4Cについては、風量測定値Frと水量測定値Fとから送風倍率Mrが演算される(ステップS265)。送風倍率Mrは送風倍率設定値Mrと比較される(ステップS266)。送風倍率Mrが送風倍率設定値Mr未満である場合、下流槽4Cの曝気風量は増加される(ステップS267)。一方、送風倍率Mrが送風倍率設定値Mr以上の場合、下流槽4Cの曝気風量は低下される(ステップS268)。
【0089】
ステップS253乃至S256のNO制御の処理と、ステップS257乃至S268の送風倍率一定制御の処理は曝気が終了するまで繰り返し行われる(ステップS269)。
【0090】
3-2-3.DO一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式
次に、DO一定制御にNO制御を組み合わせた制御方式について図15のフローチャートを用いて説明する。この制御方式では、目標DO値VとともにNO閾値Kが設定される(ステップS351)。そして、曝気装置30の運転によって曝気が開始される(ステップS352)。
【0091】
曝気の開始後、各風量センサ21A、21B、21Cから風量測定値Ff、Fc、Frが取得される。また、NO濃度センサ24からNO濃度測定値Cが取得される。さらに、水量センサ22から水量測定値Fが取得される(以上、ステップS353)。そして、下流槽4Cの風量測定値FrとNO濃度測定値Cと水量測定値Fとを用いてNO排出量Kが演算される(ステップS354)。
【0092】
O排出量KはNO閾値Kと比較される(ステップS355)。NO排出量KがNO閾値K以上である場合、上流槽4Aと中流槽4Bの曝気風量は一定にしたまま、下流槽4Cの曝気風量のみ低下される(ステップS356)。この処理により風量測定値Ff、Fcは維持されつつ、風量測定値Frのみが低下するようになる。
【0093】
ステップS353乃至S356の処理はNO排出量KがNO閾値K未満になるまで繰り返し行われる。そして、NO排出量KがNO閾値K未満まで低下した場合、DOセンサ23からDO測定値Vが取得される(ステップS357)。DO測定値Vは目標DO値Vと比較される(ステップS358)。DO測定値Vが目標DO値V未満である場合、好気槽4の全体で曝気風量は増加される(ステップS359)。一方、DO測定値Vが目標DO値V以上の場合、好気槽4の全体で曝気風量は低下される(ステップS360)。
【0094】
ステップS353乃至S356のNO制御の処理と、ステップS357乃至S360のDO一定制御の処理は曝気が終了するまで繰り返し行われる(ステップS361)。
【0095】
なお、生物処理装置201ではNO濃度としてガス態NO濃度を測定しているが、図1に示す例のようにガス態NO濃度に代えて溶存態NO濃度を測定し、溶存態NO濃度から単位処理水量当たりNO排出量を演算することもできる。その場合、溶存態NO濃度のガス態NO濃度への変換処理は必要とされる。また、図10に示す例のように、ガスを脱臭装置に導くダクト25bにNO濃度センサ25を備えてもよい。また、図11に示す例のように、水面WSに設置されたガス捕集装置25cにNO濃度センサ25を備えてもよい。
【0096】
2-3.生物処理装置の変形例
図16は生物処理装置201の変形例としての生物処理装置202の構成を示す図である。図16において前述の生物処理装置201と共通する要素には共通の符号が付されている。
【0097】
変形例の生物処理装置102は曝気装置30A、30B、30C間でブロア34を共有する。各槽4A、4B、4Cの曝気風量の制御は、基本的に各バルブ33A、33B、33Cの開度の操作によって行われる。例えば、NO制御において下流槽4Cの曝気風量を低下させる場合、バルブ33A、33Bの開度を維持したままバルブ33Cの開度のみを小さくすることが行われる。この変形例によれば、ブロア34の台数が減った分、イニシャルコストやメンテナンスの手間を抑えることができる。
【符号の説明】
【0098】
2:最初沈殿池
4:好気槽
4a:覆蓋
4b、4c:隔壁
6:最終沈殿池
10:制御装置
21:風量センサ
22:水量センサ
23:DOセンサ
24:NO濃度センサ(溶存態)
25:NO濃度センサ(ガス態)
25a:ガス取込口
25b:ダクト
25c:ガス捕集装置
30、30A、30B、30C:曝気装置
31、31A、31B、31C:散気装置
33、33A、33B、33C:バルブ
34、34A、34B、34C:ブロア
101、102、103、104、201、202:生物処理装置
R1:有機物吸着・分解領域
R2:有機物分解領域
R3:アンモニア硝化領域
WS:水面
図1
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