(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011712
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20250117BHJP
F25B 1/04 20060101ALI20250117BHJP
F04C 18/02 20060101ALI20250117BHJP
C09K 5/10 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F25B1/00 304Z
F25B1/00 396Z
F25B1/00 101F
F25B1/04 Y
F04C18/02 311P
C09K5/10 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113976
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 晃啓
(72)【発明者】
【氏名】太田 和昌
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA03
3H039AA06
3H039AA12
3H039BB25
3H039CC28
3H039CC29
3H039CC30
3H039CC40
(57)【要約】
【課題】不均化反応を抑制することを目的とする。
【解決手段】冷媒回路に冷媒が充填された冷凍サイクル装置であって、冷媒は、不均化反応を起こす性質の冷媒を含み、冷媒回路には、圧縮機の吐出側配管と吸入側配管とを接続するバイパス配管が設けられ、前記バイパス配管を流れる冷媒の通過を制御する電磁弁と、圧縮機の吐出側圧力及び圧縮機の温度に基づいて、電磁弁の開閉を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路に冷媒が充填された冷凍サイクル装置であって、
前記冷媒は、不均化反応を起こす性質の冷媒を含み、
前記冷媒回路には、圧縮機の吐出側配管と吸入側配管とを接続するバイパス配管が設けられ、
前記バイパス配管を流れる冷媒の通過を制御する電磁弁と、
前記圧縮機の吐出側圧力及び圧縮機温度に基づいて、前記電磁弁の開閉を制御する制御部と、
を備える、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記吐出側圧力が第1圧力閾値以上、かつ前記圧縮機温度が第1温度閾値以上である場合に、前記電磁弁を開く、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記吐出側圧力が第2圧力閾値未満、かつ前記圧縮機温度が第2温度閾値未満である場合に、前記電磁弁を閉じる、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記不均化反応を起こす性質の冷媒は、R1132(E)又はR1123を含む混合冷媒である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記圧縮機は、過圧縮弁を有するスクロール圧縮機である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記圧縮機温度は、前記圧縮機の前記吐出側配管に設けられた温度センサによって取得される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記圧縮機温度は、前記圧縮機の表面に設けられた温度センサによって取得される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記圧縮機は、圧縮機構で圧縮された吐出ガスが前記圧縮機の密閉容器内に吐出され、前記密閉容器の内部の圧力が略吐出圧力となる高圧チャンバ方式である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵、冷凍、業務用空調機等で主流となっているR410A冷媒は、地球温暖化係数(GWP)が2090と高く、地球温暖化防止を目的にGWP値の低い冷媒への変更が必要となっている。例えば、次世代低GWP候補冷媒として、R1234yf、R1132(E)、R1123等が提案されている。
【0003】
R1123、R1132(E)を混合冷媒の成分として用いる場合、不均化反応(自己分解反応)が発生すると、大きな熱放出を伴って圧力が上昇するため、圧縮機や冷凍サイクルの信頼性確保が課題となる。不均化反応は、過度に高温高圧となった冷媒雰囲気下にて、高エネルギーが付加されると、これが起点となって発生することが知られている。
【0004】
特許文献1には、不均化反応の抑制手段として、圧縮機から吐出される冷媒の吐出ガス温度と凝縮器出口温度から求められる冷媒の不均化反応圧力値に基づいて、圧縮機の回転数抑制を行うシステム構成が開示されている。特許文献2には、圧縮機の外郭の一部に圧力脆弱部を設けることにより、不均化反応発生時に作動流体を外部に放出し、圧縮機の電動機を制御する電動機駆動装置を脆弱部材によって破壊することで圧縮機を停止させる構成が開示されている。特許文献3には、圧縮機の吐出側配管と吸入側配管とを接続する高低圧バイパス配管を設けて、可溶栓もしくは圧力弁によって、バイパス回路を開閉させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6289611号公報
【特許文献2】特許第6805794号公報
【特許文献3】特許第6857815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、圧縮機の回転数抑制による圧力・温度低減の効果が乏しい場合に、不均化反応を十分に抑制できないという課題がある。例えば、スクロール圧縮機の場合は、回転数に関わらず、吸入圧力で吸い込んだ冷媒は、スクロール歯形で設定された圧縮比に基づいて吐出圧力まで圧縮されるため、回転数を下げただけでは吐出圧力が下がらないことが考えられる。また、回転数抑制により冷媒循環量が低下すると、密閉容器内を流れる冷媒の放熱効果が弱まり、温度低減が十分になされないことも考えられる。
【0007】
特許文献2に記載の技術では、圧縮機外郭の圧力脆弱部が破壊され、高温高圧の冷媒が外部に放出されることから安全性の課題がある。特に、住宅密集地や店舗等で使用される製品の場合は、破壊に伴う爆発音や冷媒の放出に伴って煙等が発生する懸念がある。さらに圧力脆弱部が破壊された場合は、製品が使用できなくなり、製品の交換が必須となることから、利便性が悪い。
【0008】
特許文献3に記載の技術では、不均化反応が過度に高温高圧となった状態で発生することから、可溶栓もしくは圧力弁による開閉では、温度もしくは圧力の片方の感知しかできず、更に物理的な感知であるため、反応遅れや腐食等の経年劣化が発生する懸念がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、不均化反応を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、冷媒回路に冷媒が充填された冷凍サイクル装置であって、前記冷媒は、不均化反応を起こす性質の冷媒を含み、前記冷媒回路には、圧縮機の吐出側配管と吸入側配管とを接続するバイパス配管が設けられ、前記バイパス配管を流れる冷媒の通過を制御する電磁弁と、前記圧縮機の吐出側圧力及び前記圧縮機の温度に基づいて、前記電磁弁の開閉を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不均化反応を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】電磁弁制御処理を示すフローチャートである。例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、空気調和機1の冷凍サイクルを示す図である。ここで、空気調和機1は、冷凍サイクル装置の一例である。冷凍サイクルを循環する冷媒としては、R1234yfにR1132(E)を混合させた混合冷媒や、R1234yfにR1123を混合させた混合冷媒、これらR1234yfをR1234zeに替えた混合冷媒などが挙げられる。本実施形態の空気調和機1は、このような混合冷媒を用いつつ、不均化反応を抑制する。なお、冷凍サイクル装置は、空気調和機1に限定されず、例えば冷凍機であってもよい。
【0014】
空気調和機1は、室外機1Aと、室内機1Bと、を備えている。室外機1Aは、圧縮機2と、油分離器3と、四方弁4と、室外ファン5と、室外熱交換器6と、暖房用の膨張弁7と、レシーバ8と、を備えている。圧縮機2は、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する。圧縮機2の吸入側冷媒配管13には、アキュームレータ15が設けられ、圧縮機2の吐出側冷媒配管14には、油分離器3が設けられている。油分離器3に溜まった油は油戻し配管12を経由して圧縮機2に戻される。圧縮機2の吐出側冷媒配管14には、圧力センサ21が設けられ、配管内の圧力、すなわち圧縮機2の吐出側圧力を検知する。また、圧縮機2の吐出側冷媒配管14には、温度センサ22が設けられ、圧縮機2の温度(圧縮機温度)を検知する。
【0015】
室外熱交換器6では、その伝熱管を通流する冷媒と、室外ファン5から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる。室外熱交換器6は、四方弁4の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。室外ファン5は、室外熱交換器6の付近に設置され、室外熱交換器6に外気を送り込む。膨張弁7は、「凝縮器」(室外熱交換器6及び室内熱交換器11の一方)で凝縮した冷媒を減圧する機能を有している。なお、膨張弁7において減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器6及び室内熱交換器11の他方)に導かれる。
【0016】
室内機1Bは、膨張弁9と、室内ファン10と、室内熱交換器11と、を備えている。室内熱交換器11において、その伝熱管を通流する冷媒と、室内ファン10から送り込まれる室内空気と、の間で熱交換が行われる。室内熱交換器11は、四方弁4の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。室内ファン10は、室内熱交換器11付近に設置されている。室内ファン10は、室内熱交換器11に室内空気を送り込む。室外機1A及び室内機1Bの各部は、接続冷媒配管16により接続されて閉サイクルの冷凍サイクルを構成する。
【0017】
さらに、本実施形態においては、圧縮機2の吸入側冷媒配管13と吐出側冷媒配管14とを繋ぐバイパス配管17が設けられ、バイパス配管17には電磁弁18が設けられている。より具体的には、バイパス配管17は、吸入側冷媒配管13のうち、四方弁4とアキュームレータ15の間と、吐出側冷媒配管14の間に設けられている。また、室外機1Aには、電磁弁18の開閉を制御する制御部23が設けられている。制御部23は、図示しないCPU、RAM、ROM等を備えており、ROM等に格納されたプログラムを実行することで、電磁弁18の制御を行う。なお、他の例としては、制御部23は、回路などにより構成されてもよい。
【0018】
空気調和機1を冷房運転する場合、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス状冷媒と油の混合物は、油分離器3で冷媒と油とに分離される。分離された油は、圧縮機2内底部の油溜り部に直接戻される。分離された冷媒は、四方弁4を通って室外熱交換器6で外気に放熱することで凝縮し、高圧の液状冷媒となる。液状冷媒は、レシーバ8を通過後、接続冷媒配管16を通って室内機1B側に流れ、冷房用の膨張弁9の作用で減圧されて低温低圧の気液二相状態となって室内熱交換器11で室内空気の熱を吸収することで蒸発する。室内熱交換器11で蒸発した冷媒は、接続冷媒配管16を通って室外機1Aへ戻り、四方弁4を通って圧縮機2に流れ、圧縮機2で再び圧縮される。
【0019】
次に、空気調和機1が暖房運転をする場合について説明する。暖房運転の場合では、冷媒流路が四方弁4により冷房運転の場合から切り替えられる。暖房運転の場合、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス状冷媒と油の混合物は、油分離器3により冷媒と油とに分離される。分離された油は、圧縮機2内底部の油溜り部に直接戻される。分離された冷媒は、四方弁4及び接続冷媒配管16を通って室内機1B側に流れる。室内機1Bに入った冷媒は、室内熱交換器11で室内空気に放熱することで凝縮し、高圧の液状冷媒となる。高圧の液状冷媒は、接続冷媒配管16を通って室外機1A側に流れる。室外機1Aに入った高圧の液状冷媒は、暖房用の膨張弁7で減圧され、低温低圧の気液二相状態となり、室外熱交換器6に流れ、室外空気の熱を吸収することで蒸発し、ガス状冷媒になる。室外熱交換器6でガス状となった冷媒は、四方弁4を通って圧縮機2に流れ、圧縮機2で再び圧縮される。
【0020】
図2は、圧縮機2の縦断面図である。本実施形態の圧縮機2は、過圧縮弁37を有するスクロール圧縮機である。また、圧縮機2は、圧縮機構部31により圧縮された吐出ガスが密閉容器30内に吐出され、密閉容器30の内部の圧力が略吐出圧力となるように構成された高圧チャンバタイプ方式の圧縮機である。
【0021】
図2に示す圧縮機2において、圧縮機構部31及び電動機部32が略円筒形の密閉容器(高圧容器)30内に収容されている。圧縮機構部31は、固定スクロール31aと旋回スクロール31bを備え、密閉容器30の上部空間に配置されている。また、圧縮機構部31の上部には、過圧縮弁37と、過圧縮弁抑え板38とが設けられ、圧力が上がり過ぎた場合には、過圧縮弁37が開くことで、圧力を下げることができる。電動機部32は、固定子32a及び回転子32bを備える。圧縮機2は、電動機部32の回転が回転軸33によって圧縮機構部31に伝達される構造となっている。
【0022】
圧縮機2は、さらに、吸込配管34、吐出配管35及び油戻し配管36を備え、これらにより外部に対して流体の出入りが可能である。吸込配管34は、冷媒を密閉容器30の内部に流入させる入口となるもので、
図1に示す吸入側冷媒配管13に接続される。吐出配管35は、冷媒と微量の油の混合物を吐出する出口となるもので、
図1に示す吐出側冷媒配管14に接続される。油戻し配管36は、混合物から分離された油を密閉容器30の内部に戻す入口となるもので、
図1に示す油戻し配管12に接続される。
【0023】
電動機部32が稼動すると、その回転は、回転軸33によって圧縮機構部31に伝達され、旋回スクロール31bを旋回運動させる。旋回スクロール31bと固定スクロール31cとが相対的に動くことにより、冷媒は、吸込配管34から圧縮機構部31に吸い込まれ、圧縮される。
【0024】
次に、電磁弁18の制御について説明する。バイパス配管17を含む回路は、空気調和機1の起動負荷軽減のために利用される。圧縮機2の吐出側冷媒配管14と吸入側冷媒配管13とを結ぶバイパス回路において、電磁弁18を開くことで、圧縮機2の内部の圧力を低圧側にバランスさせ、高温の吐出側冷媒と、低温の吸入側冷媒と、が混ざり合うことで、吐出側冷媒の温度を下げる構成になっている。これにより、30秒ほどの電磁弁18の開閉で圧力と温度を低減させることができる。
【0025】
本実施形態の空気調和機1においては、このバイパス配管17を含むバイパス回路が、不均化反応の抑制に使用される。具体的には、制御部23は、
図3に示す電磁弁制御処理を行う。
図3は、電磁弁制御処理を示すフローチャートである。まず、ステップS100において、制御部23は、圧力センサ21から吐出側圧力を取得する。次に、ステップS102において、制御部23は、温度センサ22から圧縮機温度を取得する。
【0026】
次に、ステップS104において、制御部23は、取得した吐出側圧力と、予め設定された第1圧力閾値とを比較し、かつ取得した圧縮機温度と、予め設定された第1温度閾値とを比較する。そして、制御部23は、吐出側圧力と圧縮機温度とが、第1条件を満たすか否かを確認する。ここで、第1条件は、取得した吐出側圧力が第1圧力閾値よりも高く、かつ取得した圧縮機温度が第1温度閾値よりも高いことである。制御部23は、第1条件を満たす場合には(ステップS104でY)、電磁弁18を開く(ステップS106)。ここで、第1圧力閾値と第1温度閾値は、それぞれ、不均化反応が発生する圧力及び温度である。第1圧力閾値は、例えば、4.3MPaGであることが好ましい。第1温度閾値は、例えば、130℃であることが好ましい。このように、第1圧力閾値と第1温度閾値が設定されているので、不均化反応が発生する前に、電磁弁18を開くことができる。
【0027】
制御部23は、第1条件を満たさない場合、すなわち、取得した吐出側圧力が第1圧力閾値以下である場合、取得した圧縮機温度が第1温度閾値以下である場合の、少なくともいずれかの場合には(ステップS104でN)、処理をステップS100へ進める。この場合には、制御部23は、吐出側圧力と圧縮機温度が第1条件を満たすまで、定期的に、ステップS100~ステップS104の処理を繰り返す。このように、第1条件を満たす場合に電磁弁18を開くことで、不均化反応を抑制することができる。
【0028】
制御部23は、ステップS106の処理の後、ステップS108において、再び圧力センサ21から吐出側圧力を取得する。次に、ステップS110において、制御部23は、温度センサ22から圧縮機温度を取得する。次に、ステップS112において、制御部23は、取得した吐出側圧力と、予め設定された第2圧力閾値とを比較し、かつ取得した圧縮機温度と、予め設定された第2温度閾値とを比較する。ここで、第2圧力閾値は、第1圧力閾値と等しい値とする。また、第2温度閾値は、第1温度閾値と等しい値とする。
【0029】
そして、制御部23は、吐出側圧力と温度とが、第2条件を満たすか否かを確認する。ここで、第2条件は、取得した吐出側圧力が第2圧力閾値よりも低く、かつ取得した圧縮機温度が第2温度閾値よりも低いことである。制御部23は、第2条件を満たす場合には(ステップS112でY)、電磁弁18を閉じる(ステップS114)。その後、制御部23は、処理をステップS100へ進め、吐出側圧力と圧縮機温度が第1条件を満たすまで、定期的にステップS100~ステップS104の処理を繰り返す。このように、第2条件を満たす場合には、電磁弁18を閉じることで、吐出側圧力及び圧縮機2の温度が下がり過ぎるのを防ぐことができる。
【0030】
一方、制御部23は、第2条件を満たさない場合、すなわち、取得した吐出側圧力が第2圧力閾値以上である場合、取得した圧縮機温度が第2温度閾値以上である場合の、少なくともいずれかの場合には(ステップS112でN)、処理をステップS108へ進める。この場合には、制御部23は、吐出側圧力と圧縮機温度が第2条件を満たすまで、定期的に、ステップS108~ステップS112の処理を繰り返す。
【0031】
以上のように、本実施形態の空気調和機1は、圧縮機2の吐出側圧力のみ、または圧縮機2の温度のみ、ではなく、これら両方に基づいて、不均化反応を防ぐための処理を行う。不均化反応は、過度に高温高圧になった冷媒雰囲気下にて発生する。したがって、不均化反応を抑制するためには、速やかに高温及び高圧を低減する必要がある。そこで、本実施形態においては、圧縮機温度及び圧力が閾値以上となった場合には、バイパス配管17を含む回路の電磁弁18を開くことで、吐出側圧力と圧縮機温度を下げることとした。これにより、不均化反応が発生するのを防ぐことができる。
【0032】
なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、例えばある実施形態の変形例を他の実施形態に適用するなど、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0033】
そうした第1の変形例としては、電磁弁制御処理において参照される第2圧力閾値は、第1圧力閾値よりも低く、第2温度閾値は、第1温度閾値よりも低い値としてもよい。これにより、電磁弁18の開閉が頻繁に行われるのを防ぐことができる。
【0034】
また、第2の変形例としては、圧縮機温度として、圧縮機2の表面温度が取得されてもよい。ここで、圧縮機2の表面温度は、圧縮機2の表面に設けられた温度センサによって検知されるものとする。
【0035】
また、第3の変形例としては、制御部23は、圧縮機2の吐出側圧力及び圧縮機温度に基づいて、電磁弁18を制御すればよく、具体的な制御方法は、実施形態に限定されるものではない。例えば、制御部23は、吐出側圧力や圧縮機温度が高くなるほど、電磁弁18の開度を大きくする等、その開度をさらに調整してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 空気調和機
1A 室外機
1B 室内機
2 圧縮機
3 油分離器
4 四方弁
5 室外ファン
6 室外熱交換器
7 膨張弁
8 レシーバ
9 膨張弁
10 室内ファン
11 室内熱交換器
13 吸入側冷媒配管
14 吐出側冷媒配管
15 アキュームレータ
16 接続冷媒配管
17 バイパス配管
18 電磁弁
21 圧力センサ
22 温度センサ
23 制御部
31 圧縮機構部
31a 固定スクロール
31b 旋回スクロール
32 電動機部
32a 固定子
32b 回転子
33 回転軸
34 吸込配管
35 吐出配管
36 油戻し配管
37 過圧縮弁
38 過圧縮弁抑え板
【手続補正書】
【提出日】2024-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路に冷媒が充填された冷凍サイクル装置であって、
前記冷媒は、不均化反応を起こす性質の冷媒を含み、
前記冷媒回路には、圧縮機の吐出側配管と吸入側配管とを接続するバイパス配管が設けられ、
前記バイパス配管を流れる冷媒の通過を制御する電磁弁と、
前記圧縮機の吐出側圧力及び圧縮機温度に基づいて、前記電磁弁の開閉を制御する制御部と、
を備え、
前記圧縮機温度は、前記圧縮機の電動機の近傍に設けられた温度センサによって取得される、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記吐出側圧力が第1圧力閾値以上、かつ前記圧縮機温度が第1温度閾値以上である場合に、前記電磁弁を開く、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記吐出側圧力が第2圧力閾値未満、かつ前記圧縮機温度が第2温度閾値未満である場合に、前記電磁弁を閉じる、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記不均化反応を起こす性質の冷媒は、R1132(E)又はR1123を含む混合冷媒である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記圧縮機は、過圧縮弁を有するスクロール圧縮機である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記圧縮機温度は、前記圧縮機の前記吐出側配管に設けられた温度センサによって取得される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記圧縮機温度は、前記圧縮機の表面に設けられた温度センサによって取得される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記圧縮機は、圧縮機構で圧縮された吐出ガスが前記圧縮機の密閉容器内に吐出され、前記密閉容器の内部の圧力が略吐出圧力となる高圧チャンバ方式である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、冷媒回路に冷媒が充填された冷凍サイクル装置であって、前記冷媒は、不均化反応を起こす性質の冷媒を含み、前記冷媒回路には、圧縮機の吐出側配管と吸入側配管とを接続するバイパス配管が設けられ、前記バイパス配管を流れる冷媒の通過を制御する電磁弁と、前記圧縮機の吐出側圧力及び前記圧縮機の温度に基づいて、前記電磁弁の開閉を制御する制御部と、を備え、前記圧縮機温度は、前記圧縮機の電動機の近傍に設けられた温度センサによって取得される。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路に冷媒が充填された冷凍サイクル装置であって、
前記冷媒は、不均化反応を起こす性質の冷媒を含み、
前記冷媒回路には、圧縮機の吐出側配管と吸入側配管とを接続するバイパス配管が設けられ、
前記バイパス配管を流れる冷媒の通過を制御する電磁弁と、
前記圧縮機の吐出側圧力及び圧縮機温度に基づいて、前記電磁弁の開閉を制御する制御部と、
を備え、
前記圧縮機温度は、前記圧縮機の電動機の近傍に設けられた温度センサによって取得され、
前記制御部は、前記吐出側圧力が第1圧力閾値以上、かつ前記圧縮機温度が第1温度閾値以上である場合に、前記吐出側圧力が前記第1圧力閾値以下である第2圧力閾値未満、かつ前記圧縮機温度が前記第1温度閾値以下である第2温度閾値未満になるまで前記電磁弁の開閉を制御する、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記不均化反応を起こす性質の冷媒は、R1132(E)又はR1123を含む混合冷媒である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記圧縮機は、過圧縮弁を有するスクロール圧縮機である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記圧縮機温度は、前記圧縮機の前記吐出側配管に設けられた温度センサによって取得される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記圧縮機温度は、前記圧縮機の表面に設けられた温度センサによって取得される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記圧縮機は、圧縮機構で圧縮された吐出ガスが前記圧縮機の密閉容器内に吐出され、前記密閉容器の内部の圧力が略吐出圧力となる高圧チャンバ方式である、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、冷媒回路に冷媒が充填された冷凍サイクル装置であって、前記冷媒は、不均化反応を起こす性質の冷媒を含み、前記冷媒回路には、圧縮機の吐出側配管と吸入側配管とを接続するバイパス配管が設けられ、前記バイパス配管を流れる冷媒の通過を制御する電磁弁と、前記圧縮機の吐出側圧力及び前記圧縮機の温度に基づいて、前記電磁弁の開閉を制御する制御部と、を備え、前記圧縮機温度は、前記圧縮機の電動機の近傍に設けられた温度センサによって取得され、前記制御部は、前記吐出側圧力が第1圧力以上、かつ前記圧縮機温度が第1閾値以上である場合に、前記吐出側圧力が前記第1の圧力閾値以下である第2圧力閾値未満、かつ前記圧縮機温度が前記第1温度閾値以下である第2温度閾値未満になるまで前記電磁弁の開閉を制御する。