(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011727
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
H04M 9/00 20060101AFI20250117BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H04M9/00 J
H04M11/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114006
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135127
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 正己
(72)【発明者】
【氏名】川名 宏明
【テーマコード(参考)】
5K038
5K201
【Fターム(参考)】
5K038AA06
5K038BB01
5K038CC06
5K038DD15
5K038FF01
5K038FF04
5K201AA08
5K201BA05
5K201BB08
5K201EA08
5K201EC06
5K201ED05
5K201EF04
(57)【要約】
【課題】 録画保存されている患者映像の送信元の真正性を確保でき、また改ざんされていない映像であることの真正性を確保できるナースコールシステムを提供する。
【解決手段】 ベッド毎に配置されて患者が看護師を呼び出す機能を有する子機1と、ナースステーションに設置されて子機1からの呼び出しに応答する機能を有する親機3と、病室毎に設置されて子機1からの呼出信号を中継すると共に呼出発生を報知する廊下灯2と、患者を撮像するカメラ5と、カメラ5の撮像映を保存する保存サーバ6とを有し、廊下灯2がカメラ5の撮像映像を秘密鍵でデジタル署名して保存サーバ6に送信する。保存サーバ6は秘密鍵と対を成す公開鍵を有して、デジタル署名された状態で保存されている映像を、公開鍵で復号化して出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド毎に配置されて患者が看護師を呼び出す機能を有する子機と、ナースステーションに設置されて前記子機からの呼び出しに応答する機能を有する親機と、病室毎に設置されて前記子機からの呼出信号を中継すると共に呼出発生を報知する廊下灯と、患者を撮像するカメラと、を備えて成るナースコールシステムであって、
秘密鍵を有して前記カメラの撮像映像を前記秘密鍵でデジタル署名して暗号化する署名部と、
前記カメラの撮像映像を保存する保存手段と、を有し、
前記秘密鍵でデジタル署名された映像が前記保存手段に保存される一方、
前記保存手段は、前記秘密鍵と対を成す公開鍵と、当該公開鍵により保存されている映像を復号化する復号化部とを有し、
デジタル署名されて保存している前記映像を出力する際には、前記公開鍵で復号化して出力することを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
前記署名部は、時刻同期プロトコルによりNTPサーバから入手した時刻情報を映像に埋め込んでデジタル署名することを特徴とする請求項1記載のナースコールシステム。
【請求項3】
前記廊下灯が前記署名部を具備し、前記カメラの撮像映像は前記廊下灯においてデジタル署名されて前記保存手段に送信されることを特徴とする請求項1に記載のナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナースコールシステムに関し、特に患者を撮像するカメラを備えてカメラの撮像映像を保存する機能を有するナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
病室にカメラを設置して、患者からの呼出発生時や患者の異常動作を検知したら、その患者を撮像してナースステーションに表示するナースコールシステムがある。このようなシステムでは、撮像映像がナースステーションで表示されると共に録画されて後日状況を確認可能とした(例えば、特許文献1参照)。
一方で、のぞき見をされないよう暗号化して情報を送信する技術がある。その中で、秘密鍵でデジタル署名することで暗号化して送信し、署名した秘密鍵と対を成す公開鍵で復号化する公開鍵暗号化方式は、改ざんの防止に有効であり、改ざんされていないことを検証できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術は、患者から呼び出しがあった際の患者の状態や、患者が特定の姿勢をとった際の撮像映像が保存されたため、患者に異常が発生した際の状況の確認に有効であった。
しかしながら、録画されている映像自体が改ざんされてもそれを判別することができなかった。即ち、いったん録画保存された映像に関しては、送信元の真正性が確保できなかった。また、改ざんされていないか判断することができなかった。
一方で、録画された患者の映像は、医療過誤等の問題が発生した際に重要な意味を持つため、録画された映像の改ざんを防止する構成が望まれている。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、録画保存されている患者映像の送信元の真正性を確保でき、また改ざんされていない映像であることの真正性を確保できるナースコールシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明の構成は、ベッド毎に配置されて患者が看護師を呼び出す機能を有する子機と、ナースステーションに設置されて子機からの呼び出しに応答する機能を有する親機と、病室毎に設置されて子機からの呼出信号を中継すると共に呼出発生を報知する廊下灯と、患者を撮像するカメラと、を備えて成るナースコールシステムであって、秘密鍵を有してカメラの撮像映像を秘密鍵でデジタル署名して暗号化する署名部と、カメラの撮像映像を保存する保存手段と、を有し、秘密鍵でデジタル署名された映像が保存手段に保存される一方、保存手段は、秘密鍵と対を成す公開鍵と、当該公開鍵により保存されている映像を復号化する復号化部とを有し、デジタル署名されて保存している映像を出力する際には、公開鍵で復号化して出力することを特徴とする。
この構成によれば、保存手段に保存されるカメラの撮像映像は、秘密鍵によりデジタル署名された状態で保存されるため、送信元のカメラの真正性を確保できる。そして、保存手段から出力される映像は公開鍵によりデジタル署名が検証されるため、改ざんされていないことの真正性を確保できる。結果、保存された患者映像の改ざんは不可能であり、例えば録画された患者に対する医療過誤等の問題発生時の客観的証明等に有効活用できる。尚、撮像映像は、静止画である撮像画像を含むものである。
【0007】
本発明の別の態様は、上記構成において、署名部は、時刻同期プロトコルによりNTPサーバから入手した時刻情報を映像に埋め込んでデジタル署名することを特徴とする。
この構成によれば、デジタル署名された映像に正確な時刻が埋め込まれるため、撮像時刻も改ざんされていないことが証明でき、問題発生時の映像確認等に活用できる。
【0008】
本発明の別の態様は、上記構成において、廊下灯が署名部を具備し、カメラの撮像映像は廊下灯においてデジタル署名されて保存手段に送信されることを特徴とする。
この構成によれば、廊下灯に署名部が設けられてカメラの撮像映像が秘密鍵でデジタル署名されるため、カメラに署名部を設ける等の変更を行うことなく従来のカメラを使用してデジタル署名できる。そして、カメラの接続先も変更する必要がない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存手段に保存されるカメラの撮像映像は、秘密鍵によりデジタル署名された状態で保存されるため、送信元のカメラの真正性を確保できる。そして、保存手段から出力される映像は公開鍵によりデジタル署名が検証されるため、改ざんされていないことの真正性を確保できる。結果、保存された患者映像の改ざんは不可能であり、例えば録画された患者に対する医療過誤等の問題発生時の客観的証明等に有効活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るナースコールシステムの一例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、ナースコールシステム10は、患者が看護師を呼び出すためにベッド毎に設置された子機1、病室前に設置されて呼び出しの発生を通知すると共に病室の患者情報を表示する廊下灯2、ナースステーションにおいて患者からの呼び出しを報知して応答するための親機3、呼び出し/応答を制御する制御機4、患者を撮像するために病室に設置されたカメラ5、カメラ5の撮像映像を保存する保存手段としての保存サーバ6等を備えている。また、看護師が携行して患者からの呼び出しに応答するための携帯端末7、携帯端末7と通信する基地局8、基地局8を介した通信を管理するPBX(交換機)9等を更に備えている。
【0012】
廊下灯2、親機3、制御機4、保存サーバ6、交換機9は、HUB12を介してLAN配線L1により互いに接続されている。また、子機1は病室毎に伝送線L2を介して廊下灯2に接続され、カメラ5は病室毎に伝送線L3を介して廊下灯2に接続されている。尚、13は汎用ネットワークN上に設けられているNTPサーバである。
【0013】
子機1は、ベッド毎にベッド上或いはベッド近傍に置かれて、患者が呼出操作する呼出ボタン1aと、壁面に設置されてマイク、スピーカを備えたプレート子機1bとで構成されている。呼出ボタン1aはプレート子機1bに接続され、プレート子機1bは伝送線L2を介して廊下灯2に接続されている。
【0014】
図2は廊下灯2の機能ブロック図を示している。
図2に示すように廊下灯2は、子機1による呼び出しの発生を表示する表示灯21、病室の患者情報を表示する患者情報表示部22、カメラ5から送信された映像を暗号化するための秘密鍵を保管する秘密鍵保管部23、カメラ5の撮像継続時間をカウントするタイマ部24、廊下灯2を制御する廊下灯CPU25、子機1、制御機4そしてカメラ5と通信する廊下灯通信IF26等を備えている。廊下灯CPU25は、カメラ5から送信された撮像映像を秘密鍵でデジタル署名して送出する署名部としての機能を備えている。
【0015】
親機3は、ハンドセット31、患者情報の一覧やカメラ5の撮像映像の表示を行う第1ディスプレイ32、呼び出しが発生した際に呼出元情報等を表示する第2ディスプレイ33、第1ディスプレイ32と一体に設けられて各種操作を行う操作部34等を備えている。加えて、親機3はカメラ5毎に設定されている秘密鍵の個々に対応する公開鍵を保持しており、秘密鍵でデジタル署名されて送信されたカメラ5の撮像製造を公開鍵で復号化して表示する機能を有している。
【0016】
制御機4は、患者とベッドの関連付け情報、患者とカメラの関連付け情報等を記憶する患者関連情報記憶部、患者の担当看護師を記憶する看護師情報記憶部、看護師と携帯端末7との関連付けを記憶する携帯情報記憶部等(何れも図示せず)を有し、子機1と親機3との間の通信、子機1と携帯端末7との間の通信を制御する。また、汎用ネットワークNを介してNTPサーバ13から時刻情報を入手して廊下灯2に通知する制御を行う。
【0017】
図3は保存サーバ6の機能ブロック図を示している。保存サーバ6は、
図3に示すようにカメラ5の撮像映像を保存する映像保存部61、カメラ5毎に設定されている秘密鍵と対を成す公開鍵を保管する公開鍵保管部62、保存サーバ6を制御する保存サーバCPU63、LAN接続して制御機4等と通信する保存サーバ通信IF64等を備えている。
保存サーバCPU64は、保存している映像を出力する際に、暗号化した状態で(秘密鍵でデジタル署名されて)保存している映像を公開鍵を使用して復号化して出力する復号化部としての機能を備えている。
【0018】
上記の如く構成されたナースコールステムの動作は以下のようである。但し、子機1の操作による看護師の呼び出し、呼び出しに対する親機3からの応答操作は従来と同様であるため説明を省略し、ここではカメラ5の撮像映像の伝送を中心に説明する。
カメラ5は、子機1の操作による呼出時、親機3のカメラ5起動操作、或いは患者が特定の姿勢を採ったらそれを検知(詳述せず)して撮像を開始し、撮像された映像は録画される。
【0019】
まず呼出操作によりカメラ5の撮像映像が送信される場合を説明する。呼出ボタン1aが押下されて呼び出しが成されると、呼出信号がプレート子機1bから廊下灯2、制御機4を経由して親機3へ送信される。
呼出信号が送信された廊下灯2では、制御機4に呼出信号を送信すると共に、カメラ5を起動してその撮像映像を制御機4に送信する。その際、制御機4から入手しているNTPサーバ13の時刻情報を時刻同期プロトコルに基づいて映像データに埋め込み、秘密鍵でデジタル署名して暗号化して送信する。
【0020】
廊下灯2から暗号化された映像を受信した制御機4は、親機3及び保存サーバ6に映像を送信する。呼出信号及び映像が送信された親機3は、呼出音を報音すると共に、保持している公開鍵により送信された映像を復号化して第1ディスプレイ32に表示する。
一方、制御機4から映像を受信した保存サーバ6では、デジタル署名された状態で映像を映像保存部61に保存する。尚、映像には撮像したカメラ5の情報が添付されており、その情報を基に使用する公開鍵が選択される。
【0021】
次に、親機3の操作でカメラ5の撮像映像が保存される場合を説明する。親機3の所定の操作で、確認したい患者が選択されると制御機4が患者に関連付けられているカメラ5を起動制御する。こうして撮像を開始してカメラ5の撮像映像が親機3に送信される。同時に保存サーバ6に保存される。
この場合も、廊下灯2において秘密鍵でデジタル署名された映像が親機3及び保存サーバ6に送信される。その後の表示動作、保存動作、そして時刻情報が映像に埋め込まれる制御は上記子機1の操作の場合と同様である。
【0022】
尚、廊下灯2は、タイマ部24により撮像時間(録画時間)をカウントし、カメラ5の撮像継続時間が所定時間に達したら一旦自動終了させ、再び録画を開始する。これは、暗号化された映像を保存する際のシノニムを防ぐために設定された時間である。
【0023】
また、患者が特定の姿勢を採ると、カメラ5に備えられている姿勢認識部(図示せず)がそれを認識して制御機4等に通知し、撮像映像が出力される。こうして出力された映像は、親機3に表示されると共に保存サーバ6に保存される。
この場合も、廊下灯2において秘密鍵でデジタル署名された映像が親機3及び保存サーバ6に送信される。その後の表示動作、保存動作、そして時刻情報が映像に埋め込まれる制御は上記子機1の操作の場合と同様である。
尚、姿勢認識部を備えたカメラは常時撮像しており、映像情報から患者の特定の姿勢を判別する。
【0024】
こうして保存サーバ6に保存された映像は、親機3の操作で取り出して確認することができる。親機3の所定の操作で、任意の保存映像が第1ディスプレイ32に表示される。例えば、患者氏名で選択されたら、当該患者の映像ファイルの一覧が表示され、いずれかのファイルを選択すれば、その映像が表示される。この表示操作で、公開鍵で復号化が成された映像が保存サーバ6から送信され、第1ディスプレイ32に表示される。この時、映像に埋め込まれている時刻情報が合わせて表示される。
【0025】
また携帯端末7からでも、保存サーバ6に保存されている映像を閲覧することが可能であり、所定の操作で親機3での表示と同様に選択された映像が保存サーバ6から復号化されて送信され、表示される。
【0026】
このように、保存サーバ6に保存されるカメラ5の撮像映像は、秘密鍵によりデジタル署名された状態で保存されるため、送信元のカメラ5の真正性を確保できる。そして、保存サーバ6から出力される映像は公開鍵によりデジタル署名が検証されるため、改ざんされていないことの真正性を確保できる。結果、保存された患者映像の改ざんは不可能であり、例えば録画された患者に対する医療過誤等の問題発生時の客観的証明等に有効活用できる。
また、デジタル署名された映像に正確な時刻が埋め込まれるため、撮像時刻も改ざんされていないことが証明でき、問題発生時の映像確認等に活用できる。
更に、廊下灯2においてカメラ5の撮像映像が秘密鍵でデジタル署名されるため、従来のカメラ5の構成を変更することなくデジタル署名できるし、カメラ5の接続先を変更する必要もない。
【0027】
尚、カメラ5の撮像映像の保存先を保存サーバ6としているが、例えば制御機4に映像保存部61を設けて保存しても良い。また、カメラ5の撮像映像の送信を中継する廊下灯2に署名部を設けているが、個々のカメラ5に署名部を設けても良い。この場合は、カメラ5をHUB12に直接接続することができる。
また、カメラ5が撮像した映像のデジタル署名(暗号化)/復号化に関して説明しているが、暗号化/復号化するデータは撮像画像(静止画)であっても良い。
【符号の説明】
【0028】
1・・子機、1a・・呼出子機、1b・・プレート子機、2・・廊下灯、3・・親機、4・・制御機、5・・カメラ、6・・保存サーバ(保存手段)、10・・ナースコールシステム、13・・NTPサーバ、23・・秘密鍵保管部、24・・タイマ部、25・・廊下灯CPU(署名部)、61・・映像保存部、63・・保存サーバCPU(復号化部)。