(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001174
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】光学部品および光学部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/22 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
C30B29/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100626
(22)【出願日】2023-06-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、防衛装備庁安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】391049530
【氏名又は名称】株式会社信光社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】浅賀 翔平
(72)【発明者】
【氏名】川南 修一
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 一裕
(72)【発明者】
【氏名】望月 圭介
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB02
4G077BC01
4G077CF01
4G077EB01
4G077FF07
4G077HA02
(57)【要約】
【課題】大型で屈折率の不均質部分を含まず、接合界面にボイドが少ないYAG単結晶からなる光学部品および光学部品の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともアンドープYAG単結晶の接合面が{211}面であり、ドープYAG単結晶の接合面とアンドープYAG単結晶の接合面を鏡面研磨して接合した後、大気中、1200℃以上1600℃以下の温度で、接合面と垂直な方向に、0.1kPa以上10kPa以下の圧力を加えて拡散接合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性物質をドープしたイットリウム・アルミニウム・ガーネット単結晶であるドープYAG単結晶と、光学活性物質をドープしていないイットリウム・アルミニウム・ガーネット単結晶であるアンドープYAG単結晶との接合体である光学部品であって、
前記アンドープYAG単結晶の接合面が{211}面である、
ことを特徴とする光学部品。
【請求項2】
前記ドープYAG単結晶の接合面が{211}面である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学部品の製造方法であって、
前記ドープYAG単結晶の接合面および前記アンドープYAG単結晶の接合面を、鏡面研磨して接合した後、大気中、1200℃以上1600℃以下の温度で、前記接合面と垂直な方向に、0.1kPa以上10kPa以下の圧力を加え、拡散接合する、
ことを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の光学部品の製造方法であって、
前記ドープYAG単結晶および前記アンドープYAG単結晶を、<211>軸方向に成長させ、透過面を、結晶育成方向と垂直に取得する、
ことを特徴とする光学部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット単結晶材料からなるレーザー利得媒体や蛍光発光素子などの光学部品および光学部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工等の分野において、小型、高出力、高ビーム品質のレーザーが望まれている。最近ではレーザーダイオード(LD)を励起光源とする固体レーザーが普及してきている。中でも、ネオジム(Nd)やイッテルビウム(Yb)をドープしたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(以後、「YAG」と呼ぶ。)結晶は、最も広く固体レーザー材料として使用されている。
【0003】
固体レーザーにおいて出力レーザービームの高出力化を実現するためには、レーザー利得材料である固体中に発生する熱の排熱が大きな問題となっている。
局所的な発熱を効果的に分散させる方法として、光学活性物質をドープしたレーザー結晶と光学活性物質をドープしていない結晶を接合することが提案され、拡散接合法や直接接合法が考案されている(特許文献1)。
【0004】
また、レーザー媒質の構造に関する研究も進められ、ディスク型のレーザー利得材料を用いた方式が知られている。レーザー利得材料を薄いディスク形状とすることで、外部からの励起光の受光面を大きくとることができ、ディスク面全体で均一に冷却することが可能となる。中でも反射型(アクティブミラー型)の構造は、薄膜ディスクの一方の表面に反射膜を施すことでヒートシンクや流体による冷却が可能になることから注目されている。通常アクティブミラー型の構造体は、光学活性物質をドープした薄膜ディスクと光学活性物質をドープしていない材料とを接合することにより、機械的強度や熱の分散性を向上させている(以後、一体化された構造体を「レーザー媒質接合体」と呼ぶ)。これらの材料は、高出力レーザーに対応するため大型のレーザー媒質体が必要になることから、透明のセラミックス素材が使用されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4374415号公報
【特許文献2】特許第5330801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体レーザー用の媒質として、YAG単結晶や、多結晶体であるYAGセラミックスが使用されている。YAGセラミックスは大型化が容易で比較的安価に製造できるという利点があるものの、粒界が存在することから熱伝導率が単結晶に比べて低い、特に低温での熱伝導率が単結晶に比べて小さいという問題がある。そのためレーザー媒質としてYAG単結晶を使用することが望ましいが、大型の単結晶は結晶育成が困難で高コストであること、結晶育成時に屈折率などの光学的な不均質部分(通常結晶の中心部に発生しやすいことから、以後「コア」と呼ぶ)が発生しやすいという問題がある。
【0007】
また、結晶を接合したレーザー媒質接合体は、平滑な研磨面同士を重ね合わせて接合することから、界面にボイドが発生しやすい。ボイドはサイズが小さく光学的にはほとんど影響しないと考えられるが、高出力レーザーではボイドがない方が望ましい。また熱拡散を少しでも向上させる上でも、接合界面にボイドがないことが望まれている。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、大型で屈折率の不均質部分を含まず、接合界面にボイドが少ない単結晶からなる光学部品および光学部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学部品は、光学活性物質をドープしたイットリウム・アルミニウム・ガーネット単結晶であるドープYAG単結晶と、光学活性物質をドープしていないイットリウム・アルミニウム・ガーネット単結晶であるアンドープYAG単結晶との接合体であって、前記アンドープYAG単結晶の接合面が{211}面である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る光学部品は、前記ドープYAG単結晶の接合面が{211}面である、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る光学部品の製造方法は、前記ドープYAG単結晶の接合面および前記アンドープYAG単結晶の接合面を、鏡面研磨して接合した後、大気中、1200℃以上1600℃以下の温度で、前記接合面と垂直な方向に、0.1kPa以上10kPa以下の圧力を加え、拡散接合する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る光学部品は、前記ドープYAG単結晶および前記アンドープYAG単結晶を、<211>軸方向に成長させ、透過面を、結晶育成方向と垂直に取得する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明では、光学活性物質をドープしないYAG(以後、「アンドープYAG」と呼ぶ)単結晶の{211}面を接合面とし、光学活性物質をドープしたYAG(以後、「ドープYAG」と呼ぶ)単結晶と接合したレーザー媒質接合体などの光学部品とすることによって、課題を解決した。
【0014】
YAG単結晶はチョクラルスキー法などにより育成され、通常成長速度が速く育成しやすいことから、<111>軸方向に引き上げて製造される。その際、育成したYAG単結晶には中心部にコアと呼ばれる屈折率の不均一部分ができやすい。<111>軸方向に引き上げて製造されたYAG単結晶のインゴット側面には{211}面が存在し、側面の{211}面を主面としたディスク材料を取得することでコアを回避することが可能である。
【0015】
また発明者らは、高価なイリジウムるつぼを使用しないで大型のYAG単結晶を育成する技術を開発した(特開2023-056860号公報、特開2023-056861号公報)。そのため比較的安価に大型で不均質部分を含まない{211}面を接合面とするYAG結晶体を効率よく取得することが可能となった。
【0016】
本発明は、YAG単結晶の接合面を{211}面とすることで、接合界面のボイドを著しく減少させることが可能なことを見出した。通常YAG単結晶は、<111>軸方向に結晶を成長させ、結晶育成方向と垂直に切断して結晶を取得するため、{111}面を接合面とすることが一般的である。しかし、{111}面を接合面とすると界面にボイドが生成しやすい。これに対し、{211}面を接合面とすることでボイドが極端に減少することを見出した。
【0017】
本発明におけるレーザー媒質接合体などの光学部品は、光学活性物質をドープしたYAG単結晶およびドープしていないYAG単結晶の接合面を鏡面研磨した後、大気中、1200℃~1600℃の温度で、接合面と垂直に0.1kPa以上10kPa以下の低い圧力をかける熱処理により接合が可能である。
【0018】
本発明において、ドープYAG単結晶およびアンドープYAG単結晶を<211>軸方向に結晶育成させた後、育成方向(<211>軸方向)と垂直に切断しディスク状などの光学部品を製造することが有効である。発明者らが開発した大型のYAG単結晶を育成する方法では、コアを避けて大型の結晶体を育成方向と垂直に取得することが可能で、効率よく結晶体を取得することができる。さらにNdやYbをドープしたYAG単結晶を<211>軸方向に結晶成長させることで、結晶体内の濃度ばらつきが小さく、育成中に発生する中心部のコアを避けて{211}面を接合面とする結晶体を取得することが可能となり、効率よくレーザー媒質接合体などの光学部品を製造することが可能となった。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、ポア(気孔)や粒界のない単結晶材料で、コアがなく、接合界面のボイドが極めて少ない接合体であり、光学特性、熱分散性に優れた光学部品および光学部品の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】チョクラルスキー法で<111>軸方向に育成したYAG単結晶の写真
【
図2】結晶成長方向に垂直に切断した従来の結晶のクロスニコル写真
【
図3】<111>軸方向に育成したYAG単結晶から{211}面のディスク状結晶(本発明の実施形態に係る光学部品を構成する部材)を取得する概念図
【
図4】{111}面NdドープYAG単結晶と{111}面アンドープYAG単結晶を接合した従来のレーザー媒質接合体の写真
【
図5】{111}面NdドープYAG単結晶と{111}面アンドープYAG単結晶を接合した従来のレーザー媒質接合体の透過波面データ
【
図6】{111}面NdドープYAG単結晶と{211}面アンドープYAG単結晶を接合したレーザー媒質接合体(本発明の実施形態に係る光学部品)の写真
【
図7】{111}面NdドープYAG単結晶と{211}面アンドープYAG単結晶を接合したレーザー媒質接合体(本発明の実施形態に係る光学部品)の透過波面データ
【
図8】{111}面アンドープYAG単結晶と{111}面アンドープYAG単結晶の従来の接合界面のSEM写真
【
図9】{111}面NdドープYAG単結晶と{211}面アンドープYAG単結晶接合界面(本発明の実施形態に係る光学部品)のSEM写真
【
図10】{211}面YbドープYAG単結晶と{211}面アンドープYAG単結晶接合界面(本発明の実施形態に係る光学部品)のSEM写真
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
図1(写真)は、チョクラルスキー法で育成したYAG単結晶である。結晶の育成方法は<111>軸方向で、育成方向に垂直に切断(輪切り)にすると、
図2に示すように結晶の中心部分に光学的な不均質部分が存在する。そのため良質で大型の結晶体を取得するのは極めて困難である。
【0022】
図3に示すように、YAG単結晶中に存在するコアは<110>軸方向に伸びることもあるが、{211}面は結晶成長方向と平行に、コアを避けるように取得することが可能である。
また発明者らは、高価なイリジウムなどを使用しないで大型のYAG単結晶を育成する技術を開発したが、この方法を採用すると{211}面のディスク状結晶を効率よく取得することが可能である。
【0023】
単結晶材料からなるレーザー媒質接合体の作製方法として、光学活性物質をドープした結晶とドープしていない結晶とを拡散接合や直接接合で接合する。拡散接合は高温で熱処理するため、熱膨張係数の異なる材料の接合は困難であるが、同種の材料である場合には強固な接合が得られ、高額な装置も必要ないという利点がある。一方、低温の高真空中でArビームなどにより活性化した表面を直接接合する方法も実用化されているが、高額な装置を必要とする。
ドープYAG単結晶とアンドープYAG単結晶のように、同種の結晶を接合する場合は比較的容易に強固な接合ができるため拡散接合が有利である。拡散接合の場合には表面を平坦に研磨する必要があるが、表面粗さ(Ra)が0.5nm以下の鏡面で、およそφ50mmエリアで、<λ/2(λ:633nm)の平坦度があれば接合が可能で、さほど特別な研磨を必要としない。
【0024】
拡散接合のための熱処理は、電気炉などを使用し、大気中、1200℃~1600℃の温度で処理する。熱処理の際、焼成治具で位置決めをし、ドープYAG単結晶の接合面または(および)アンドープYAG単結晶の接合面に対して垂直な方向から、0.1kPa以上10kPa以下の荷重をかけることで十分で、ホットプレスなどの装置を使用することなく接合が可能である。自重による荷重によって両結晶を接合することも可能である。自重に相当する荷重は、0.1kPa程度である。一方で、荷重が10kPaを超えても、接合の強度は変わらない。熱処理温度は、1200℃未満では接合強度が十分でないことがあり、1600℃以上では界面でボイドが成長することがある。
【0025】
ドープYAG単結晶とアンドープYAG単結晶は、通常<111>軸方向に結晶成長させるため、軸方向と垂直に輪切りにするように円板を取得する。{111}面のドープYAG単結晶と{111}面のアンドープYAG単結晶を拡散接合した場合、接合界面に微小のボイドが生成することがある。ボイドのサイズは1μmより小さいため、通常の使用では問題はないと考えられるが、高強度のレーザー媒質としてはボイドが少ないことが、光学的、熱的に好ましい。
【0026】
YAG単結晶の接合面を{211}面にすることで、接合界面のボイドを大幅に減少させることが可能である。{211}面は、結晶成長の際、ファセットとして出現しやすい面であり、安定な面であると考えられることから、{211}面を接合面とすることでボイドが減少すると考えられる。{111}面同士の接合界面のボイドを観察すると、{211}面がボイド中に出現することもあるため、{211}面を接合面とするとボイドが生成しにくい。なお、少なくともアンドープYAG単結晶の接合面が{211}面であれば、ドープYAG単結晶の接合面は、{211}面であっても{211}以外の面であってもよい。
【0027】
NdやYbをドープしたYAG単結晶は、レーザー媒体として利用されていて、チョクラルスキー法などにより融液から結晶成長させるのが一般的である。融液から結晶を成長させる場合、ドープする元素が結晶内に取り込まれる割合が元素によって異なり、その割合を示す偏析係数がNdでは約0.2、Ybでは約1.0である。
【0028】
NdドープYAG単結晶の場合は、偏析が起こりやすいため結晶育成方向の濃度勾配ができやすい。そのため結晶育成方向に平行に結晶を取得すると面内の濃度分布が大きくなるため望ましくない。そこで<111>軸方向に結晶を育成した場合、結晶育成方向と垂直な{111}面が利用されるが、通常厚みが薄いため光学的不均質部分の影響をほとんど受けることがない。また大型結晶であればコアを避けて結晶を取得することが可能である。{111}面のNdドープYAG単結晶と{211}面のアンドープYAG単結晶を接合した場合、{111}面のNdドープYAG単結晶と{111}面のアンドープYAG単結晶を接合した場合に比べ界面のボイドは大幅に減少する。
【0029】
これに対しYbドープYAG単結晶の場合は偏析係数がほぼ1.0であり、育成方向による濃度勾配がほとんど生じない。そのため<111>軸方向で結晶育成をした場合でも、{211}面を縦方向に取得することが可能である。{211}面のYbドープYAG単結晶と{211}面のアンドープYAG単結晶を接合すると、よりボイドの少ないレーザー媒質接合体が作製可能である。もちろん、NdドープYAG単結晶の場合と同様、{111}面であっても{211}面のアンドープYAG単結晶と接合すれば、接合界面のボイドが少ない良好な接合体が得られる。
【0030】
大型のYAG単結晶を育成する技術を用いれば、結晶を<211>軸方向に育成することによって、より効率的に結晶を取得することができる。<211>軸方向に結晶成長させた結晶から、育成方向と垂直に結晶を切り出し、コアを避けて結晶体を取得することが可能である。光学活性物質をドープしない結晶のみならず光学活性物質をドープした場合でも、育成方向に垂直に切断するため濃度むらがなく、コアを避けた結晶体を取得することができる。
【0031】
これまで述べてきたレーザー媒質としてのYAG単結晶からなる光学部品に関する技術は、セリウム(Ce)をドープした蛍光発光材料を利用した照明などにも活用が可能である。
【0032】
<実施例>
以下、比較例および実施例について説明する(下表1参照)。
まず比較例の結晶接合体の作製方法について説明する。<111>軸方向に育成したアンドープYAG単結晶を育成軸と垂直に切断、研削加工、接合面の鏡面研磨を行い、φ54mm×6mmtの円板を作製した。また同様にNdを1at%ドープしたYAG単結晶を<111>軸方向に育成し、育成方向と垂直に切断、研削加工、接合面の鏡面研磨を行い、φ54mm×1.6mmtの円板を作製した。これら2枚の円板を重ね、1.3kPaの重石による荷重をかけ、大気中にて、1500℃、10hの熱処理をすることで接合した。接合した結晶体を、外周研削および両面研磨を行い、φ50mm×5.2mmt(Nd:YAG単結晶の厚みは0.2mm)の接合体を得た。その外観を
図4に示す。また、レーザー干渉計(ZYGO社製Verifire)による透過波面精度の測定結果を
図5に示す。透過波面精度は結晶中のコアの影響で、φ42.5mmエリアで0.89λ(λ=633nm)であった。
【0033】
実施例の結晶接合体について説明する。<111>軸方向に育成したアンドープYAG単結晶から、育成方向と平行に{211}面が接合面となるように結晶を切り出し、研削加工、接合面の鏡面研磨加工を施し、φ54×6mmtの円板を製造した。NdドープYAG単結晶については、比較例と同様に作製した試料を用いた。比較例と同様の手順により作製したφ50mm×5.2mmt(Nd:YAG単結晶の厚みは0.2mm)結晶接合体の外観を
図6に、透過波面精度を
図7に示す。透過波面精度は結晶中のコアを避けているため小さく0.12λと良好な結果が得られた(実施例1)。
【0034】
実施例2の結晶接合体は、実施例1と同様、<111>軸方向に育成したアンドープYAG結晶から{211}面が接合面となるようにφ30×3mmtの円板を製造した。また、Ybを5at%ドープしたYAG単結晶を<111>軸方向に育成し、育成方向と平行に{211}面が接合面となるように結晶を切り出し加工することにより、φ30×1mmtの円板を作製した。これら2枚の円板を重ね、4.3kPaの荷重をかけ、大気中、1500℃、10hの熱処理をすることで接合した。
【0035】
【0036】
接合界面の観察について説明する。
図8はドープYAG単結晶の{111}面とアンドープYAG単結晶の{111}面を1500℃、10hの熱処理により接合した界面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。所々に約0.1μm程度の小さなボイドが散見される。
【0037】
これに対し、
図9は、NdドープYAG単結晶の{111}面とアンドープYAG単結晶の{211}面を1500℃、10hの熱処理で接合した界面のSEM写真である(実施例1)。また、
図10は、YbドープYAG単結晶の{211}面とアンドープYAG単結晶の{211}面を1500℃、10hの熱処理で接合した界面のSEM写真である(実施例2)。実施例1およびと実施例2とも、接合界面にボイドはほとんど見られず良好な接合であることがわかる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。