(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011745
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20250117BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20250117BHJP
【FI】
H02M3/155 E
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114030
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】荒木 清道
(72)【発明者】
【氏名】古川 達也
(72)【発明者】
【氏名】望月 悠史
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS04
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB14
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD03
5H730DD16
5H770AA05
5H770BA02
5H770BA20
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770JA17W
5H770JA17Z
5H770KA01Z
(57)【要約】
【課題】ノイズのアンバランスを抑制できる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置100は、負極側配線70と、正極側配線80~84とを備える。正極側配線には、モータ30のコイル31~33が設けられる。電力変換装置は、コイルを用いて直流電圧を昇圧する。また、電力変換装置は、正極側配線とグランド間に設けられたYコンデンサ40aと、コンデンサ容量がYコンデンサよりも大きく、負極側配線とグランド間に設けられたYコンデンサ41とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を昇圧または降圧する電力変換装置であって、
負極側配線(70)と、
正極側配線(80~84)と、
前記正極側配線に設けられたコイル(31~33)を含む変圧回路(10)と、
前記正極側配線とグランド間に設けられた第1対地コンデンサ(40a)と、
コンデンサ容量が前記第1対地コンデンサよりも大きく、前記負極側配線と前記グランド間に設けられた第2対地コンデンサ(40b,41)と、を備えている電力変換装置。
【請求項2】
前記変圧回路の一端側において、前記負極側配線と前記正極側配線との間に設けられた第1配線間コンデンサ(61)と、
前記変圧回路の他端側において、前記負極側配線と前記正極側配線との間に設けられた第2配線間コンデンサ(62)と、を備え、
前記第2対地コンデンサは、前記第1配線間コンデンサと前記第2配線間コンデンサとの間に設けられている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1対地コンデンサのコンデンサ容量と、前記第2対地コンデンサのコンデンサ容量との差は、前記コイルの寄生容量と同等である請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記コイルを含むモータ(30)と、
複数のスイッチング素子(21~26)を含み前記モータに電力を供給するインバータ回路(20)と、を備える請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記負極側配線と前記正極側配線との間に設けられ、複数の前記スイッチング素子のスイッチング動作に伴うノイズを抑制するフィルタ(40,50)を備える請求項4に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の一例として、特許文献1に開示されたモータ駆動システムがある。モータ駆動システムは、直流連結端と交流連結端との間に連結されたスイッチング素子を含むインバーターと、交流連結端に連結された複数のコイルを含むモーターとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力変換装置は、負極側配線や正極側配線のノイズを抑制するために、負極側配線とグランドとの間、および正極側配線とグランドとの間にコンデンサを備えた構成が考えられる。しかしながら、電力変換装置は、コイルの寄生容量によって、負極側配線と正極側配線とでノイズのアンバランスが生じる虞がある。
【0005】
開示される目的は、ノイズのアンバランスを抑制できる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された電力変換装置は、
直流電圧を昇圧または降圧する電力変換装置であって、
負極側配線(70)と、
正極側配線(80~84)と、
正極側配線に設けられたコイル(31~33)を含む変圧回路(10)と、
正極側配線とグランド間に設けられた第1対地コンデンサ(40a)と、
コンデンサ容量が第1対地コンデンサよりも大きく、負極側配線とグランド間に設けられた第2対地コンデンサ(40b,41)と、を備えている。
【0007】
このように、電力変換装置は、コンデンサ容量が第1コンデンサよりも大きく、負極側配線とグランド間に設けられた第2対地コンデンサを備える。そのため、電力変換装置は、正極側配線に設けられたコイルの寄生容量が形成されたとしても、負極側配線とグランド間のコンデンサ容量と、正極側配線とグランド間のコンデンサ容量の乖離を抑制できる。よって、電力変換装置は、負極側配線側と正極側配線側とでノイズのアンバランスを抑制できる。
【0008】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
【
図3】変形例における電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
【0011】
図1を用いて、電力変換装置100に関して説明する。
図1は、充電スタンド300が接続された状態の電力変換装置100を図示している。
【0012】
電力変換装置100は、たとえば移動体に搭載可能に構成される。移動体としては、自動車や電車や飛行体などを採用できる。本実施形態では、移動体の一例として自動車を採用する。また、本実施形態では、自動車の一例として、充電可能な電池200を備えた電気自動車やハイブリッド車を採用する。自動車は、電力変換装置100、電池200などを備える。電池200は、電源に相当する。
【0013】
電力変換装置100は、インバータ回路20、モータ装置30、フィルタ40,50、コンデンサ61,62、リレー91~93、配線群などを備える。電力変換装置100は、インバータ回路20、リレー91~93を制御するECU1が接続される。電力変換装置100とECU1を備えた構成は、電力変換システムともいえる。
【0014】
また、電力変換装置100は、電池200や充電スタンド300(充電用電源310)と電気的に接続可能に構成されている。電池200は、電力変換装置100とともに自動車に搭載される。一方、充電スタンド300は、自動車の外部に設けられる。よって、充電スタンド300は、外部装置ともいえる。
【0015】
電力変換装置100は、モータ装置30を駆動する駆動モードと、充電スタンド300と接続され電池200を充電する充電モードとで動作する。充電スタンド300と接続された状態は、外部接続モードともいえる。当然ながら、駆動モードでは、電力変換装置100は、充電スタンド300と接続されていない。
【0016】
なお、電池200は、自動車の電力源である。電池200は、たとえば、リチウムイオン電池などを採用できる。つまり、電池200は、充電と放電を繰り返して使用できるものである。電池200は、蓄電池、充電池、バッテリーなどと言い換えることができる。電池200は、電源に相当する。
【0017】
充電スタンド300は、電池200を充電するための充電設備である。充電スタンド300は、充電用電源310を備える。また、充電スタンド300は、充電ケーブルやコンピュータなどを備える。充電ケーブルは、充電用電源310と電気的に接続される。充電ケーブルは、第2リレー92に取り付け、および取り外し可能に構成される。充電用電源310は、充電ケーブルが第2リレー92に取り付けられることで、電力変換装置100と電気的に接続される。
【0018】
ECU1は、CPUなどの演算処理装置、RAMやROMなどを含むメモリ装置、入出力装置などを備える。入出力装置は、インバータ回路20の各スイッチング素子21~26、リレー91~93などと電気的に接続される。
【0019】
演算処理装置は、メモリ装置に記憶されたプログラムを実行する。演算処理装置は、プログラムに従って演算処理を実行する。また、演算処理装置は、メモリ装置に記憶されたデータなどを用いつつ演算処理を実行する。そして、演算処理装置は、入出力装置を介して、各スイッチング素子21~26、リレー91~93を制御する。さらに、演算処理装置は、入出力装置を介して、充電スタンド300と電気的に接続可能に構成される。以下においては、演算処理装置が行う処理動作をECU1の処理動作として記載する。なお、ECU1の処理動作に関しては、後ほど詳しく説明する。ECU1は、電子制御装置ともえる。
【0020】
インバータ回路20は、スイッチング素子として、U相上アームスイッチ21、U相下アームスイッチ22、V相上アームスイッチ23、V相下アームスイッチ24、W相上アームスイッチ25、W相下アームスイッチ26を備える。モータ装置30は、U相コイル31、V相コイル32、W相コイル33、中性点34を備える。ここでは、モータ装置30の一例として三相モータを採用する。しかしながら、本開示は、これに限定されない。
【0021】
U相上アームスイッチ21とU相下アームスイッチ22は、負極側配線70と高圧側配線80との間で直列に接続される。U相上アームスイッチ21とU相下アームスイッチ22との間は、U相配線81を介してU相コイル31に接続される。
【0022】
V相上アームスイッチ23とV相下アームスイッチ24は、負極側配線70と高圧側配線80との間で直列に接続される。V相上アームスイッチ23とV相下アームスイッチ24との間は、V相配線82を介してV相コイル32に接続される。
【0023】
W相上アームスイッチ25とW相下アームスイッチ26は、負極側配線70と高圧側配線80との間で直列に接続される。W相上アームスイッチ25とW相下アームスイッチ26との間は、W相配線83を介してW相コイル33に接続される。
【0024】
負極側配線70と高圧側配線80は、第1リレー91を介して電池200と電気的に接続可能である。負極側配線70は、第1リレー91がオン状態(閉状態)で電池200の負極端子に接続される。高圧側配線80は、第1リレー91がオン状態で電池200の正極端子に接続される。負極側配線70と高圧側配線80は、第1リレー91がオフ状態(開状態)で電池200と電気的に遮断される。オン状態にすることをオン制御や閉制御、オフ状態にすることをオフ制御や開制御ともいえる。
【0025】
モータ装置30の中性点は、中性点配線84が接続される。中性点配線84は、負極側配線70と対をなして構成される。負極側配線70と中性点配線84は、第2リレー92を介して充電用電源310と電気的に接続可能である。
【0026】
負極側配線70は、第2リレー92がオン状態で充電用電源310の負極端子に接続される。中性点配線84は、第2リレー92がオン状態で充電用電源310の正極端子に接続される。負極側配線70と中性点配線84は、第2リレー92がオフ状態で充電用電源310と電気的に遮断される。負極側配線70と中性点配線84は、過電流が流れた場合に溶断するフューズが設けられてもよい。高圧側配線80、中性点配線84、各相配線81~83は、正極側配線に相当する。
【0027】
なお、第2リレー92は、充電スタンド300との電気的な接続口である。第2リレー92は、接続端子やインレットともいえる。なお、中性点配線84には、中性点リレー93が設けられている。
【0028】
このように構成されたインバータ回路20は、ECU1によって制御される。ECU1は、駆動モードと充電モードとで各スイッチング素子21~26の制御が異なる。
【0029】
駆動モード時においては、ECU1は、インバータ回路20からモータ装置30へ電力を供給させるために、各スイッチング素子21~26を制御する。そして、インバータ回路20は、電池200からモータ装置30へ電力を供給する。モータ装置30は、インバータ回路20により駆動されて回転駆動力を発生する。モータ装置30から発生した駆動力は、たとえば、自動車の駆動輪に伝達される。
【0030】
一方、充電モード時においては、EUC100は、インバータ回路20とモータ装置30を昇圧回路として動作させるために、各スイッチング素子21~26を制御する。インバータ回路20とモータ装置30は、昇圧回路として動作する。インバータ回路20とモータ装置30は、充電用電源310の電圧を昇圧して電池200へ供給する。このように、電力変換装置100は、直流電圧を昇圧する機能を有している。
【0031】
インバータ回路20とモータ装置30は、変圧回路に相当する。以下においては、インバータ回路20とモータ装置30を変圧回路10とも称する。充電用電源310の電圧は、充電電圧とも称する。
【0032】
また、負極側配線70と高圧側配線80の間には、平滑コンデンサ61が設けられる。また、平滑コンデンサ61は、変圧回路10の一端側において、負極側配線70と正極側配線との間に設けられるといえる。平滑コンデンサ61は、第1配線間コンデンサに相当する。
【0033】
平滑コンデンサ61は、電池200からの出力電圧を一定に保つ。また、平滑コンデンサ61は、電池200から供給されるパルス状の直流電流を平滑化する。これによって、サージ電圧を抑制できる。なお、平滑コンデンサ61と負極側配線70とが接続された箇所は第1接続点71とする。
【0034】
負極側配線70と中性点配線84との間には、フィルタコンデンサ62が設けられる。また、フィルタコンデンサ62は、変圧回路10の他端側において、負極側配線70と正極側配線との間に設けられるといえる。フィルタコンデンサ62は、第2配線間コンデンサに相当する。
【0035】
フィルタコンデンサ62は、負極側配線70と中性点配線84との間の電圧を一定に保つ。また、フィルタコンデンサ62は、スイッチング素子21~26のオンオフに伴うリップル電流を吸収する。なお、フィルタコンデンサ62と負極側配線70とが接続された箇所は第2接続点72とする。
【0036】
さらに、負極側配線70と中性点配線84との間には、EMCフィルタ40が設けられる。EMCフィルタ40は、たとえば、Yコンデンサ40a,40bを備える。EMCフィルタ40は、スイッチング素子21~26のオンオフに伴うノイズを低減する。つまり、EMCフィルタ40は、インバータ回路20から第2リレー92(充電スタンド300)側にノイズが流れることを抑制する。
【0037】
Yコンデンサ40aは、中性点配線84とグランドとの間に設けられる。Yコンデンサ40aは、第1対地コンデンサに相当する。Yコンデンサ40bは、負極側配線70とグランドとの間に設けられる。
【0038】
EMCフィルタ40は、負極側配線70と中性点配線84とで同様にノイズを低減できることが好ましい。つまり、EMCフィルタ40は、負極側配線70と中性点配線84とでノイズのアンバランスが生じないように設定される。そのため、Yコンデンサ40a,40bは、コンデンサ容量が同等のものを採用する。なお、コンデンサ容量が同等とは、コンデンサ容量が同一であることを示す。さらに、本開示では、製品ごとのバラつき程度の誤差も同等とみなす。
【0039】
なお、EMCフィルタ40の構成は、上記に限定されない。EMCフィルタ40は、Yコンデンサ40a,40bのかわりにチョークコイルを備えていてもよい。さらに、EMCフィルタ40は、Yコンデンサ40a,40bに加えて、負極側配線70と中性点配線84のそれぞれにチョークコイルが設けられていてもよい。なお、負極側配線70と高圧側配線80の間には、同様にEMCフィルタ50が設けられている。また、電力変換装置100は、負極側配線70とグランド間および中性点配線84とグランド間に、同等のコンデンサ容量が形成されるともいえる。
【0040】
高圧側配線80は、変圧回路10よりも第1リレー91側に配置される。中性点配線84は、変圧回路10よりも第2リレー92側に配置される。ここでは、変圧回路10の第1リレー91側が一端側に相当し、変圧回路10の第2リレー92側が他端側に相当する。
【0041】
また、インバータ回路20とモータ装置30が昇圧回路として機能する場合、負極側配線70と中性点配線84間の電圧は、負極側配線70と高圧側配線80間の電圧よりも低電圧となる。そのため、本実施形態では、一端側を高圧側、他端側を低圧側ともいえる。さらに、高圧側配線80は、高圧側の正極側配線ともいえる。中性点配線84は、低圧側の正極側配線ともいえる。
【0042】
ところで、
図2に示すように、モータ装置30は、寄生容量(浮遊容量)31c~33cを含んでいる。詳述すると、U相コイル31は、寄生容量31cを含んでいる。V相コイル32は、寄生容量32cを含んでいる。W相コイル33は、寄生容量33cを含んでいる。各寄生容量31c~33cは、各相配線81~83とグランドとの間に形成される。そのため、各相配線81~83は、Yコンデンサが設けられているとみなせる。また、各寄生容量31c~33cは、モータ装置30のYコンデンサともいえる。
【0043】
そのため、正極側配線側と負極側配線70側とでは、Yコンデンサのコンデンサ容量が異なる。つまり、EMCフィルタ40は、Yコンデンサ40a,40bのコンデンサ容量を同等としている。しかしながら、正極側配線側には、寄生容量31c~33cが形成される。そのため、正極側配線は、負極側配線70よりもYコンデンサのコンデンサ容量が大きくなってしまう。なお、正極側配線側と負極側配線70側とでは、グランドとの間のコンデンサ容量が異なるともいえる。
【0044】
そこで、電力変換装置100は、負極側配線70に接続されたYコンデンサ41を備える。Yコンデンサ41は、負極側配線70とグランドとの間に設けられる。Yコンデンサ41は、インバータ回路20から第2リレー92(充電スタンド300)側にノイズが流れることを抑制する。電力変換装置100は、負極側配線70とグランドとの間に、Yコンデンサ40aよりも大きなコンデンサ容量が形成されているともいえる。
【0045】
Yコンデンサ41は、平滑コンデンサ61とフィルタコンデンサ62との間に設けられると好ましい。つまり、Yコンデンサ41は、負極側配線70における第1接続点71と第2接続点との間に接続される。また、Yコンデンサ41は、複数のコンデンサ素子で構成されてもよい。
【0046】
Yコンデンサ41のコンデンサ容量は、Yコンデンサ40aのコンデンサ容量よりも大きい。つまり、Yコンデンサ40b,41は、コンデンサ容量がYコンデンサ40aよりも大きい構成を有する。Yコンデンサ41は、正極側配線側と負極側配線70側における、Yコンデンサのコンデンサ容量の乖離を抑制するために設けられている。なお、電力変換装置100は、中性点配線84や高圧側配線80とグランド間よりも、負極側配線70とグランド間の方がコンデンサ容量が大きい構成を有しているともいえる。Yコンデンサ40b,41は、第2対地コンデンサに相当する。
【0047】
Yコンデンサ40aのコンデンサ容量と、Yコンデンサ40b,41のコンデンサ容量との差は、寄生容量31c~33cと同等であると好ましい。言い換えると、Yコンデンサ40aのコンデンサ容量と、Yコンデンサ40b,41のコンデンサ容量との差は、モータ装置30のYコンデンサのコンデンサ容量と同等であると好ましい。なお、モータ装置30のYコンデンサは、仮想コンデンサともいえる。
【0048】
また、Yコンデンサ40aとYコンデンサ40bは、コンデンサ容量が同等である。そのため、Yコンデンサ40aのコンデンサ容量と、Yコンデンサ41のコンデンサ容量との差は、寄生容量31c~33cと同等であると好ましい。
【0049】
さらに、正極側配線側では、Yコンデンサ40aとモータ装置30の各Yコンデンサとが並列接続されている。一方、負極側配線70側では、Yコンデンサ40b,41が並列接続されている。そのため、正極側配線側のYコンデンサの合成容量は、負極側配線70側のYコンデンサの合成容量と同等であるといえる。
【0050】
なお、Yコンデンサ40bが設けられていなくてもよい。この場合、Yコンデンサ40aのコンデンサ容量と、Yコンデンサ41のコンデンサ容量との差は、モータ装置30のYコンデンサのコンデンサ容量と同等であると好ましい。
【0051】
<効果>
このように、電力変換装置100は、コンデンサ容量がYコンデンサ40aよりも大きく、負極側配線70とグランド間に設けられたYコンデンサ41を備える。そのため、電力変換装置100は、正極側配線に設けられたコイル31~33の寄生容量31c~33cが形成されたとしても、負極側配線70とグランド間のコンデンサ容量と、正極側配線とグランド間のコンデンサ容量の乖離を抑制できる。よって、電力変換装置100は、負極側配線70側と正極側配線側とでノイズのアンバランスを抑制できる。
【0052】
また、電力変換装置100は、EMCフィルタ40,50を備えている。電力変換装置100は、ノイズのアンバランスを抑制できるため、EMCフィルタ40,50によるノイズ低減効果を向上できる。
【0053】
なお、上記のように、EMCフィルタ40は、チョークコイルを備えた構成も考えられる。この場合、チョークコイルの寄生容量を考慮して、正極側配線側と負極側配線70側で合成容量の乖離が抑制されるように、Yコンデンサ41のコンデンサ容量を設けると好ましい。
【0054】
また、電力変換装置100は、EMCフィルタ40が設けられていない構成も考えられる。この場合、電力変換装置100は、Yコンデンサ41を備えることで、正極側配線側と負極側配線70側で合成容量の乖離が抑制される。この場合、Yコンデンサ41のコンデンサ容量は、寄生容量31c~33cと同等であること好ましい。
【0055】
つまり、電力変換装置100は、正極側配線にコイル31~33が設けられた構成において、正極側配線とグランド間のコンデンサ容量と、負極側配線70とグランド間のコンデンサ容量との乖離を抑制するためにYコンデンサ41などが設けられていればよい。
【0056】
本実施形態では、インバータ回路20とモータ装置30とを昇圧回路(変圧回路10)として用いる例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。電力変換装置100は、インバータ回路20の一部ではないスイッチング素子と、モータ装置30の一部ではないコイルとを有する変圧回路10を備えた構成であっても採用できる。つまり、電力変換装置100は、コイルを一つのみ、およびスイッチング素子を一つのみ有する変圧回路10を備えた構成であっても採用できる。
【0057】
また、電力変換装置100は、充電スタンド300のかわりに、外部装置として家屋などと電気的に接続されてもよい。この場合、第2リレー92は、家屋のコンセントに接続される。そして、電力変換装置100は、家屋に設けられた蓄電池や分電盤などと電気的に接続される。
【0058】
電力変換装置100は、家屋と電気的に接続された状態で、電池200の電力を家屋の蓄電池などに供給(給電)する。つまり、電力変換装置100は、給電モードで動作する。
【0059】
インバータ回路20とモータ装置30は、給電モードでは降圧回路(変圧回路10)として機能する。インバータ回路20とモータ装置30は、電池200の電圧を降圧して蓄電池などへ供給する。
【0060】
この場合、EUC1は、インバータ回路20とモータ装置30を降圧回路として動作させるために、各スイッチング素子21~26を制御する。これによって、降圧された電池200の電圧が蓄電池などへ供給される。
【0061】
さらに、
図3に示す変形例のように、第2リレー92に電池200が接続可能に構成されてもよい。この場合、第1リレー91には、自動車に搭載された、電池200とは異なるサブ電池400が接続される。そして、電力変換装置100は、電池200の電力を降圧して、第1リレー91に接続されているサブ電池400に供給する。また、第1リレー91は、電圧が異なる複数のサブ電池が切り換え可能に接続されるように構成されてもよい。なお、この構成では、符号80が低圧側の正極側配線、符号84が高圧側の正極側配線となる。
【0062】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【0063】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0064】
(技術的思想1)
直流電圧を昇圧または降圧する電力変換装置であって、
負極側配線(70)と、
正極側配線(80~84)と、
前記正極側配線に設けられたコイル(31~33)を含む変圧回路(10)と、
前記正極側配線とグランド間に設けられた第1対地コンデンサ(40a)と、
コンデンサ容量が前記第1対地コンデンサよりも大きく、前記負極側配線と前記グランド間に設けられた第2対地コンデンサ(40b,41)と、を備えた電力変換装置。
【0065】
(技術的思想2)
前記変圧回路の一端側において、前記負極側配線と前記正極側配線との間に設けられた第1配線間コンデンサ(61)と、
前記変圧回路の他端側において、前記負極側配線と前記正極側配線との間に設けられた第2配線間コンデンサ(62)と、を備え、
前記第2対地コンデンサは、前記第1配線間コンデンサと前記第2配線間コンデンサとの間に設けられている技術的思想1に記載の電力変換装置。
【0066】
(技術的思想3)
前記第1対地コンデンサのコンデンサ容量と、前記第2対地コンデンサのコンデンサ容量との差は、前記コイルの寄生容量と同等である技術的思想1または2に記載の電力変換装置。
【0067】
(技術的思想4)
前記コイルを含むモータ(30)と、
複数のスイッチング素子(21~26)を含み前記モータに電力を供給するインバータ回路(20)と、を備える技術的思想1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【0068】
(技術的思想5)
前記負極側配線と前記正極側配線との間に設けられ、複数の前記スイッチング素子のスイッチング動作に伴うノイズを抑制するフィルタ(40,50)を備える技術的思想4に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0069】
1…ECU、20…インバータ回路、21…U相上アームスイッチ、22…U相下アームスイッチ、23…V相上アームスイッチ、24…V相下アームスイッチ、25…W相上アームスイッチ、26…W相下アームスイッチ、30…モータ装置、31…U相コイル、32…V相コイル、33…W相コイル、34…中性点、40,50…EMCフィルタ、40a…Yコンデンサ、40b…Yコンデンサ、41…Yコンデンサ61…平滑コンデンサ、62…フィルタコンデンサ、70…負極側配線、71…第1接続点、72…第2接続点、80…高圧側配線、81…U相配線、82…V相配線、83…W相配線、84…中性点配線、91…第1リレー、92…第2リレー、93…中性点リレー、100…電力変換装置、200…電池、300…充電スタンド、310…充電用電源、400…サブ電池