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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011746
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20250117BHJP
   H02H 7/122 20060101ALI20250117BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20250117BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02H7/122 Z
H02M3/155 F
G01R19/00 B
G01R15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114031
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳矢
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田中 信享
(72)【発明者】
【氏名】淺羽 浩太郎
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
5G053
5H730
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB01
2G025AB02
2G025AC01
2G035AA00
2G035AA15
2G035AC02
2G035AC12
2G035AC13
2G035AD01
2G035AD20
2G035AD28
5G053AA06
5G053AA16
5G053BA02
5G053CA01
5G053EC01
5G053FA04
5H730AS04
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB14
5H730BB91
5H730DD03
5H730DD16
5H730FD61
5H730FG01
5H730FG30
5H730XX02
5H730XX11
5H730XX22
5H730XX31
5H730XX42
(57)【要約】
【課題】電流路の異常を検出できる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置は、昇圧回路として機能するインバータ回路20とモータ30を備え、充電スタンド400と電池200とに接続可能に構成される。電力変換装置は、充電スタンド400との電気的な接続口である外部接続リレー52と、昇圧回路を介して外部接続リレーと電源を電気的に接続する二つの変圧用配線70,80,84と、昇圧回路を迂回するバイパス配線90とを備える。また、電力変換装置は、変圧用配線の一方でありバイパス電流路の分岐点85,86が設けられた第1電流路と、変圧用電流路の他方であり分岐点が設けられてない第2電流路とに設けられたセンサ装置40を備える。センサ装置は、第1電流路における外部接続リレー側の分岐点85と昇圧回路との間を流れる第1電流と第2電流路を流れる第2電流とに応じた電気信号を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧回路(20,30)を備え、外部装置(400)と電源(200)とに接続可能な電力変換装置であって、
前記外部装置との電気的な接続口である接続端子(52)と、
前記変圧回路を介して前記接続端子と前記電源を電気的に接続する高電位側と低電位側の二つの変圧用電流路(70,80,84)と、
二つの前記変圧用電流路の一方から分岐して前記変圧回路を迂回する電流路であり、前記接続端子と前記電源を電気的に接続および遮断するバイパス電流路(90)と、
二つの前記変圧用電流路の一方であり前記バイパス電流路の分岐点が設けられた第1電流路と、二つの前記変圧用電流路の他方であり前記分岐点が設けられてない第2電流路とに設けられたセンサ装置(40)と、を備え、
前記センサ装置は、前記第1電流路における前記接続端子側の前記分岐点と前記変圧回路との間を流れる第1電流と前記第2電流路を流れる第2電流とに応じた電気信号を出力する電力変換装置。
【請求項2】
前記センサ装置は、前記変圧用電流路または前記バイパス電流路に異常が生じている場合、前記第1電流と前記第2電流の向きが同じ、または、前記第1電流と前記第2電流の一方のみが流れていることを示す前記電気信号を出力する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記センサ装置は、
前記第1電流路と前記第2電流路を一体的に囲い、前記第1電流路と前記第2電流路を流れる電流による磁束を集磁するものであり、隙間部(42g)が設けられた集磁部(42)と、
前記隙間部に配置され、前記隙間部の磁気の状態に応じた前記電気信号を出力する磁気検出素子(41)と、を備え、
前記磁気検出素子は、前記変圧用電流路または前記バイパス電流路に異常が生じている場合に限って、前記電気信号を出力する請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記センサ装置は、前記第1電流路における前記接続端子側の前記分岐点と前記変圧回路との間に設けられた第1センサ(40a)と、前記第2電流路に設けられた第2センサ(40b)と、を備え、
前記電気信号として、前記第1センサが前記第1電流に応じた第1信号を出力し、前記第2センサが前記第2電流に応じた第2信号を出力する請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記センサ装置からの前記電気信号に基づいて、前記変圧用電流路または前記バイパス電流路に異常が生じているか否かを判定する制御装置(10)を備える請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
変圧回路(20,30)と、前記変圧回路を制御する制御装置(10)とを備え、外部装置(400)と電源(200)とに接続可能な電力変換システムであって、
前記外部装置との電気的な接続口である接続端子(52)と、
前記変圧回路を介して前記接続端子と前記電源を電気的に接続する高電位側と低電位側の二つの変圧用電流路(70,80,84)と、
二つの前記変圧用電流路の一方から分岐して前記変圧回路を迂回する電流路であり、前記接続端子と前記電源を電気的に接続および遮断するバイパス電流路(90)と、
二つの前記変圧用電流路の一方であり前記バイパス電流路の分岐点が設けられた第1電流路と、二つの前記変圧用電流路の他方であり前記分岐点が設けられてない第2電流路とに設けられたセンサ装置(40)と、
前記センサ装置は、前記第1電流路における前記接続端子側の前記分岐点と前記変圧回路との間を流れる第1電流と、前記第2電流路を流れる第2電流とに応じた電気信号を出力するものであり、
前記制御装置は、
前記変圧回路の変圧動作を実行する通電ステップ(S10)と、
前記変圧動作の実行中に、前記電気信号が示す前記第1電流と前記第2電流の向きを判定する判定ステップ(S20)と、を備えている電力変換システム。
【請求項7】
前記外部装置と前記電源とを電気的に接続および遮断する開閉装置(51)を備え、
前記制御装置は、異常が生じていると判定した場合、前記開閉装置を開制御して前記外部装置と前記電源とを電気的に遮断する請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記外部装置は、前記電源を充電するための充電装置であって、
前記制御装置は、異常が生じていると判定した場合、前記外部装置に対して充電停止を示す停止要求信号を出力する請求項6または7に記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置および電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の一例として、特許文献1に開示されたモータ駆動システムがある。モータ駆動システムは、バッテリと、バッテリに貯蔵された直流電力を3相の交流に変換してモータに提供するインバータとを含む。また、モータ駆動システムは、充電設備と接続可能に構成されている。モータ駆動システムは、外部充電電力をバッテリーに直接提供する第1充電モードと、外部充電電力をモータの中性点に提供した後、インバータのスイッチング素子の制御によって昇圧してバッテリーに提供する第2充電モードとを選択的に使うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-40853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータ駆動システムでは、電流路に異常が生じる可能性がある。また、モータ駆動システムでは、電流路に異常が生じた場合、充電設備に不具合を生じさせる虞がある。
【0005】
開示される一つの目的は、電流路の異常を検出できる電力変換装置を提供することである。開示される他の一つの目的は、電流路の異常を検出できる電力変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された電力変換装置は、
変圧回路(20,30)を備え、外部装置(400)と電源(200)とに接続可能な電力変換装置であって、
外部装置との電気的な接続口である接続端子(52)と、
変圧回路を介して接続端子と電源を電気的に接続する高電位側と低電位側の二つの変圧用電流路(70,80,84)と、
二つの変圧用電流路の一方から分岐して変圧回路を迂回する電流路であり、接続端子と電源を電気的に接続および遮断するバイパス電流路(90)と、
二つの変圧用電流路の一方でありバイパス電流路の分岐点が設けられた第1電流路と、二つの変圧用電流路の他方であり分岐点が設けられてない第2電流路とに設けられたセンサ装置(40)と、を備え、
センサ装置は、第1電流路における接続端子側の分岐点と変圧回路との間を流れる第1電流と第2電流路を流れる第2電流とに応じた電気信号を出力することを特徴とする。
【0007】
上記のように構成された電力変換装置は、変圧用電流路とバイパス電流路が正常な場合と、変圧用電流路またはバイパス電流路に異常が生じている場合とで第1電流と第2電流が変異なる。そのため、センサ装置の電気信号は、正常の場合と異常の場合とで異なる。よって、電力変換装置は、変圧用電流路またはバイパス電流路に異常が生じていることを検出できる。
【0008】
ここに開示された電力変換システムは、
変圧回路(20,30)と、変圧回路を制御する制御装置(10)とを備え、外部装置(400)と電源(200)とに接続可能な電力変換システムであって、
外部装置との電気的な接続口である接続端子(52)と、
変圧回路を介して接続端子と電源を電気的に接続する高電位側と低電位側の二つの変圧用電流路(70,80,84)と、
二つの変圧用電流路の一方から分岐して変圧回路を迂回する電流路であり、接続端子と電源を電気的に接続および遮断するバイパス電流路(90)と、
二つの変圧用電流路の一方でありバイパス電流路の分岐点が設けられた第1電流路と、二つの変圧用電流路の他方であり分岐点が設けられてない第2電流路とに設けられたセンサ装置(40)と、
センサ装置は、第1電流路における接続端子側の分岐点と変圧回路との間を流れる第1電流と、第2電流路を流れる第2電流とに応じた電気信号を出力するものであり、
制御装置は、
変圧回路の変圧動作を実行する通電ステップ(S10)と、
変圧動作の実行中に、電気信号が示す第1電流と第2電流の向きを判定する判定ステップ(S20)と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記のように構成された電力変換システムは、変圧用電流路とバイパス電流路が正常な場合と、変圧用電流路またはバイパス電流路に異常が生じている場合とで第1電流と第2電流が変異なる。そこで、制御装置は、変圧動作の実行中に、電気信号が示す第1電流と第2電流の向きを判定する。よって、制御装置は、電気信号に基づいて、変圧用電流路またはバイパス電流路に異常が生じているか否かを検出できる。このように、電力変換システムは、電流路の異常を検出できる。
【0010】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電力変換システムの概略構成を示す回路図である。
図2】センサ装置の概略構成を示す平面図である。
図3図2のIII‐III線に沿う断面図である。
図4】ECUの通電処理を示すフローチャートである。
図5】ECUの判定処理を示すフローチャートである。
図6】変形例の電力変換システムの概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
【0013】
<電力変換システム>
図1を用いて、電力変換システム100に関して説明する。図1は、充電スタンド400が接続された状態の電力変換システム100を図示している。充電スタンド400は、充電装置に相当する。
【0014】
電力変換システム100は、たとえば移動体に搭載可能に構成される。移動体としては、自動車や電車や飛行体などを採用できる。本実施形態では、移動体の一例として自動車を採用する。また、本実施形態では、自動車の一例として、充電可能な電池200を備えた電気自動車やハイブリッド車を採用する。自動車は、電力変換システム100、電池200、シャシ300などを備える。電池200は、電源に相当する。
【0015】
電力変換システム100は、電力変換装置とECU10とを備える。電力変換装置は、インバータ回路20、モータ装置30、センサ装置40、リレー51~53、コンデンサ61,62、配線群などを備える。なお、電力変換装置は、EMCフィルタなどを備えていてもよい。
【0016】
また、電力変換システム100は、電池200や充電スタンド400(充電用電源410)と電気的に接続可能に構成されている。電力変換システム100は、モータ装置30を駆動する駆動モードと、充電スタンド400と接続され電池200を充電する充電モードとで動作する。充電スタンド400と接続された状態は、外部接続モードともいえる。当然ながら、駆動モードでは、電力変換システム100は、充電スタンド400と接続されていない。電池200は、電力変換装置100とともに自動車に搭載される。一方、充電スタンド400は、自動車の外部に設けられる。よって、充電スタンド400は、外部装置ともいえる。
【0017】
なお、電池200は、自動車の電力源である。電池200は、たとえば、リチウムイオン電池などを採用できる。つまり、電池200は、充電と放電を繰り返して使用できるものである。電池200は、蓄電池、充電池、バッテリーなどと言い換えることができる。電池200は、電源に相当する。
【0018】
充電スタンド400は、電池200を充電するための充電設備である。充電スタンド400は、充電用電源410を備える。また、充電スタンド400は、充電ケーブルやコンピュータなどを備える。充電ケーブルは、充電用電源410と電気的に接続される。充電ケーブルは、外部接続リレー52に取り付け、および取り外し可能に構成される。充電用電源410は、充電ケーブルが外部接続リレー52に取り付けられることで、電力変換システム100と電気的に接続される。充電スタンド400は、外部装置に相当する。
【0019】
ECU10は、CPUなどの演算処理装置、RAMやROMなどを含むメモリ装置、入出力装置などを備える。入出力装置は、インバータ回路20の各スイッチング素子21~26、リレー51~53,91、センサ装置40などと電気的に接続される。
【0020】
演算処理装置は、メモリ装置に記憶されたプログラムを実行する。演算処理装置は、プログラムに従って演算処理を実行する。また、演算処理装置は、メモリ装置に記憶されたデータやセンサ装置40からのセンサ信号などを用いつつ演算処理を実行する。そして、演算処理装置は、入出力装置を介して、各スイッチング素子21~26、リレー51~53、バイパスリレー91を制御する。さらに、演算処理装置は、入出力装置を介して、充電スタンド400と電気的に接続可能に構成される。以下においては、演算処理装置が行う処理動作をECU10の処理動作として記載する。
【0021】
なお、ECU10の処理動作に関しては、後ほど詳しく説明する。ECU10は、制御装置に相当する。センサ信号は、電気信号に相当する。
【0022】
インバータ回路20は、スイッチング素子として、U相上アームスイッチ21、U相下アームスイッチ22、V相上アームスイッチ23、V相下アームスイッチ24、W相上アームスイッチ25、W相下アームスイッチ26を備える。モータ装置30は、U相コイル31、V相コイル32、W相コイル33、中性点34を備える。ここでは、モータ装置30の一例として三相モータを採用する。しかしながら、本開示は、これに限定されない。
【0023】
U相上アームスイッチ21とU相下アームスイッチ22は、負極側配線70と正極側配線80との間で直列に接続される。U相上アームスイッチ21とU相下アームスイッチ22との間は、U相配線81を介してU相コイル31に接続される。
【0024】
V相上アームスイッチ23とV相下アームスイッチ24は、負極側配線70と正極側配線80との間で直列に接続される。V相上アームスイッチ23とV相下アームスイッチ24との間は、V相配線82を介してV相コイル32に接続される。
【0025】
W相上アームスイッチ25とW相下アームスイッチ26は、負極側配線70と正極側配線80との間で直列に接続される。W相上アームスイッチ25とW相下アームスイッチ26との間は、W相配線83を介してW相コイル33に接続される。
【0026】
負極側配線70と正極側配線80は、リレー51を介して電池200と電気的に接続可能である。負極側配線70は、リレー51がオン状態(閉状態)で電池200の負極端子に接続される。正極側配線80は、リレー51がオン状態で電池200の正極端子に接続される。負極側配線70と正極側配線80は、リレー51がオフ状態(開状態)で電池200と電気的に遮断される。なお、負極側配線70と正極側配線80の間には、コンデンサ61が設けられる。また、オン状態にすることをオン制御や閉制御、オフ状態にすることをオフ制御や開制御ともいえる。
【0027】
モータ装置30の中性点は、中性点配線84が接続される。中性点配線84は、負極側配線70と対をなして構成される。負極側配線70と中性点配線84は、外部接続リレー52を介して充電用電源410と電気的に接続可能である。負極側配線70は、外部接続リレー52がオン状態で充電用電源410の負極端子に接続される。中性点配線84は、外部接続リレー52がオン状態で充電用電源410の正極端子に接続される。負極側配線70と中性点配線84は、外部接続リレー52がオフ状態で充電用電源410と電気的に遮断される。なお、負極側配線70と中性点配線84との間には、コンデンサ62が設けられる。また、負極側配線70と中性点配線84は、過電流が流れた場合に溶断するフューズが設けられてもよい。
【0028】
上記のように、リレー51は、充電スタンド400と電池200とを電気的に接続および遮断する。リレー51は、開閉装置に相当する。また、外部接続リレー52は、充電スタンド400との電気的な接続口である。外部接続リレー52は、接続端子に相当する。外部接続リレー52は、インレットともいえる。なお、中性点配線84には、中性点リレー53が設けられている。
【0029】
各スイッチング素子21~26は、ECU10によって制御される。ECU10は、駆動モードと充電モードとで各スイッチング素子21~26の制御が異なる。
【0030】
そして、駆動モード時においては、インバータ回路20は、電池200からモータ装置30へ電力を供給する。モータ装置30は、インバータ回路20により駆動されて回転駆動力を発生する。モータ装置30から発生した駆動力は、たとえば、自動車の駆動輪に伝達される。
【0031】
一方、充電モード時においては、インバータ回路20とモータ装置30は、昇圧回路として動作する。インバータ回路20とモータ装置30は、充電用電源410の電圧を昇圧して電池200へ供給する。インバータ回路20とモータ装置30は、変圧回路に相当する。以下においては、インバータ回路20とモータ装置30を変圧回路とも称する。充電用電源410の電圧は、充電電圧とも称する。
【0032】
負極側配線70と正極側配線80と中性点配線84は、変圧回路を介して外部接続リレー52と電池200を電気的に接続するための配線である。負極側配線70と正極側配線80と中性点配線84は、変圧用電流路に相当する。また、正極側配線80と中性点配線84は、高電位側の変圧用電流路に相当する。負極側配線70は、低電位側の変圧用電流路に相当する。
【0033】
以下では、負極側配線70と正極側配線80と中性点配線84をまとめて変圧用配線とも称する。また、正極側配線80と中性点配線84をまとめて高電位配線とも称する。なお、負極側配線70と正極側配線80と各相配線81~83と中性点配線84は、配線群の一部である。
【0034】
さらに、電力変換システム100は、充電モードにおいて変圧回路を介さずに電池200を充電することもできる。つまり、充電モードは、充電電圧を変圧回路で昇圧して電池200に供給する昇圧モードと、充電電圧を昇圧することなく電池200に供給するバイパスモードを含む。そのために、電力変換システム100は、バイパス配線90を備える。バイパス配線90は、バイパス電流路に相当する。
【0035】
バイパス配線90は、高電位配線から分岐して変圧回路を迂回する電流路である。第1分岐点85と第2分岐点86は、高電位配線に対するバイパス配線90の接続点である。第1分岐点85は、中性点配線84に設けられる。第2分岐点86は、正極側配線80に設けられる。
【0036】
バイパス配線90は、バイパスリレー91が設けられている。よって、バイパス配線90は、外部接続リレー52と電池200を電気的に接続および遮断可能に構成される。バイパスリレー91は、昇圧モード時にオフ状態に制御され、バイパスモード時にオン状態に制御される。
【0037】
本実施形態では、一例として、高電位配線に分岐点85,86が設けられた例を採用する。そのため、高電位配線は、第1電流路に相当する。一方、負極側配線70は、第2電流路に相当する。
【0038】
また、本実施形態では、一例として、高電位配線から分岐したバイパス配線90を採用する。しかしながら、本開示は、これに限定されない。バイパス配線90は、負極側配線70から分岐したものであっても採用できる。この場合、高電位配線が第2電流路に相当し、負極側配線70が第1電流路に相当する。
【0039】
センサ装置40は、高電位配線と負極側配線70とに設けられる。センサ装置40は、高電位配線と負極側配線70とを流れる電流に応じたセンサ信号を出力する。センサ装置40は、中性点配線84における第1分岐点85と変圧回路との間を流れる第1電流と、負極側配線70を流れる第2電流とに応じたセンサ信号を出力する。なお、第1分岐点85は、中性点配線84における外部接続リレー52側の分岐点である。第1電流は中性点電流ともいえる。第2電流はN電流ともいえる。
【0040】
センサ装置40は、電力変換装置の漏電などを検出するために設けられる。さらに、センサ装置40は、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じているか否かを検出するために設けられる。言い換えると、センサ装置40は、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じているか否かの検出に流用できる。
【0041】
ここで、図2図3を用いて、センサ装置40に関して詳しく説明する。図2図3に示すように、センサ装置40は、ホールIC41とコア42とを備える。ホールIC41とコア42は、電気絶縁性の樹脂部材によって一体的に封止されていてもよい。また、センサ装置40は、ホールIC41と電気的に接続された配線基板を備えていてもよい。ホールIC41は、ECU10と電気的に接続される。
【0042】
コア42は、中性点配線84と負極側配線70とを一体的に囲うように設けられる。コア42は、中性点配線84と負極側配線70を流れる電流による磁束を集磁するものである。コア42は、集磁部に相当する。コア42は、磁気コアや磁性体コアなどと称されることもある。コア42は、ギャップ42gが設けられる。ギャップ42gは、隙間部に相当する。
【0043】
ホールIC41は、磁気の状態に応じた電気信号(センサ信号)を出力する。また、センサ装置40は、第1電流による磁束と第2電流による磁束とに応じたセンサ信号を出力するともいえる。ここでの磁気の状態は、磁束密度である。また、ここでのセンサ信号は、ホール電圧である。
【0044】
ホールIC41は、ホール素子と、ホール素子から出力された信号を処理する処理回路とを備える。処理回路は、信号を増幅する増幅回路などを含んでいる。ホールIC41は、ギャップ42gに配置される。つまり、ホールIC41は、ギャップ42gの磁気の状態に応じたセンサ信号を出力する。ホールIC41は、磁気検出素子に相当する。
【0045】
本実施形態では、磁気検出素子としてホールIC41を採用する。しかしながら、本開示は、これに限定されず、MR素子やTMR素子を備えた磁気検出素子であっても採用できる。MRは、Magneto Resistanceの略称である。TMRは、Tunneling Magneto Resistanceの略称である。
【0046】
ここで、図1を用いて、昇圧モードで充電する場合の電力変換システム100の電流に関して説明する。なお、昇圧モード時のバイパスリレー91は、オフ状態である。しかしながら、図1では、便宜的にオン状態のバイパスリレー91を図示している。
【0047】
電力変換システム100は、正常時であれば実線矢印で示すように電流が流れる。よって、中性点配線84と負極側配線70は、電流が流れる方向が互いに逆方向である。つまり、第1電流と第2電流は、向きが逆方向である。第1電流は、充電スタンド400側から電池200側へと流れる。一方、第2電流は、電池200側から充電スタンド400側へと流れる。第1電流と第2電流は、電流値が同じである。
【0048】
そのため、図3に示すように、中性点配線84を流れる電流による磁束と、負極側配線70を流れる電流による磁束とが打ち消しあう。つまり、ホールIC41への磁束は打ち消しあう。そのため、ホールIC41は、センサ信号を出力しない。または、ホールIC41は、磁束密度がゼロとみなせる程度の電気信号を出力する。なお、ホールIC41は、第1電流と第2電流の向きが逆方向であることを示すセンサ信号を出力するともいえる。
【0049】
電力変換システム100は、バイパスリレー91が固着などによって誤オンした場合、一点鎖線矢印で示すように電流が流れる。また、電力変換システム100は、漏電してシャシ300などを介して地絡した場合、二点鎖線矢印で示すように電流が流れる。つまり、変圧用配線が地絡した場合、二点鎖線矢印で示すように電流が流れる。このように、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じた場合、第1電流の向きと第2電流の向きの関係が正常時とは異なる。
【0050】
そのため、ホールIC41は、バイパス電流路に異常が生じている場合、第1電流と第2電流の向きが同じであることを示すセンサ信号、または、第1電流と第2電流の一方のみが流れていることを示すセンサ信号を出力する。なお、本実施形態では、第2電流のみが流れることになる。一方、ホールIC41は、変圧用電流路に異常が生じている場合、第1電流と第2電流の向きが同じであることを示すセンサ信号を出力する。このように、ホールIC41は、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じている場合に限って、センサ信号を出力する。
【0051】
また、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じた場合、第1電流と第2電流とに差分が発生するともいえる。よって、ホールIC41は、第1電流と第2電流とに差分が発生した場合に限ってセンサ信号を出力する。
【0052】
<処理動作>
図4図5を用いて、ECU10の処理動作に関して説明する。ECU10は、電池200の充電開始タイミングで図4に示すフローチャートを開始する。ECU10は、充電スタンド400からの充電開始の指示信号を受信した場合に充電開始タイミングと判断する。また、ECU10は、外部接続リレー52と充電スタンド400とが接続されたことを検出した場合などに充電開始タイミングと判断してもよい。
【0053】
ステップS10では、通電を開始する(通電ステップ)。EUC100は、インバータ回路20とモータ装置30を昇圧回路として動作させるために、各スイッチング素子21~26を制御する。また、ECU10は、リレー51,53をオン状態に制御するとともに、バイパスリレー91をオフ状態に制御する。このように、ECU10は、変圧回路の変圧動作を実行する。これによって、昇圧された充電電圧によって電池200が充電される。
【0054】
ステップS11では、通電停止か否かを判定する。ECU10は、たとえば、充電スタンド400からの充電停止の指示信号を受信した場合や、外部接続リレー52と充電スタンド400との接続が解除された場合などに通電停止と判定する。ECU10は、通電停止と判定すると図4のフローチャートを終了する。一方、ECU10は、通電停止と判定しないとステップS11を繰り返し実行する。つまり、ECU10は、通電停止と判定するまで、変圧動作を実行する。
【0055】
ECU10は、変圧動作の実行中に図5に示すフローチャートを開始する。ECU10は、たとえば、所定時間ごとに図5に示すフローチャートを開始する。また、ECU10は、イベント発生時に割り込みで図5に示すフローチャートを開始してもよい。
【0056】
ステップS20では、第1電流と第2電流の向きが逆であるか否かを判定する(判定ステップ)。ECU10は、センサ信号が示す第1電流と第2電流の向きを確認する。つまり、ECU10は、センサ装置40からのセンサ信号に基づいて、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じているか否かを判定する。
【0057】
ECU10は、センサ信号が出力されない場合、センサ信号が示す第1電流と第2電流の向きが逆であると判定する。そして、ECU10は、第1電流と第2電流の向きが逆であると判定した場合、異常が生じていると判定せずに図5のフローチャートを終了する。なお、ECU10は、センサ信号が出力されない場合に、変圧用配線またはバイパス配線90が正常と判定するともいえる。
【0058】
一方、ECU10は、センサ信号が出力された場合、センサ信号が示す第1電流と第2電流の向きが同じであると判定する。そして、ECU10は、第1電流と第2電流の向きが同じであると判定した場合、異常が生じていると判定してステップS21へ進む。なお、ECU10は、センサ信号が出力された場合、第1電流と第2電流の一方のみが流れており、異常が生じていると判定してもよい。また、ECU10は、センサ信号が出力された場合に、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じていると判定するともいえる。
【0059】
ステップS21では、充電を停止する。ECU10は、電池200の充電を停止する。ECU10は、たとえば、リレー53をオフ状態に制御する。リレー53がオフ状態になることで、充電スタンド400と電池200とが電気的に遮断される。この場合、ECU10は、電力変換システム100内で充電を停止できる。
【0060】
また、ECU10は、充電スタンド400に対して充電停止を示す停止要求信号を出力する。充電スタンド400は、停止要求信号に応じて電力の供給を停止する。この場合、充電スタンド400から電力変換システム100に対する電力供給自体を停止できる。
【0061】
<効果>
上記のように構成された電力変換装置は、変圧用配線とバイパス配線90が正常な場合と、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じている場合とで第1電流と第2電流が変異なる。そのため、センサ装置40のセンサ信号は、正常の場合と異常の場合とで異なる。よって、電力変換装置は、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じていることを検出できる。
【0062】
また、電力変換装置は、センサ装置40が第1電流と第2電流とに基づいて、変圧用配線またはバイパス配線90の異常を検出するように構成されているともいえる。さらに、電力変換装置は、センサ装置40が第1電流と第2電流とに応じて、変圧用配線またはバイパス配線90の異常を検出するための異常検出信号を出力するともいえる。
【0063】
また、電力変換システムは、上記のように正常な場合と異常が生じている場合とで第1電流と第2電流が異なる。そこで、ECU10は、変圧動作の実行中に、センサ信号が示す第1電流と第2電流の向きを判定する。よって、ECU10は、センサ信号に基づいて、変圧用配線またはバイパス配線90に異常が生じているか否かを検出できる。このように、電力変換システムは、電流路の異常を検出できる。
【0064】
本実施形態では、インバータ回路20とモータ装置30とを変圧回路として用いる例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。電力変換装置100は、インバータ回路20の一部ではないスイッチング素子と、モータ装置30の一部ではないコイルとを有する変圧回路を備えた構成であっても採用できる。つまり、電力変換装置100は、コイルを一つのみ、およびスイッチング素子を一つのみ有する変圧回路を備えた構成であっても採用できる。
【0065】
(変形例1)
図6に示すように、変形例の電力変換装置は、第1センサ40aと第2センサ40bとを備えていてもよい。第1センサ40aは、中性点配線84における第1分岐点85と変圧回路との間に設けられる。第2センサ40bは、負極側配線70に設けられる。
【0066】
第1センサ40aと第2センサ40bは、センサ装置40と同様、ホールICとコアとを備える。第1センサ40aのコアは、配線群のうち中性点配線84のみを囲うように設けられる。第2センサ40bのコアは、配線群のうち負極側配線70のみを囲うように設けられる。
【0067】
第1センサ40aは、センサ信号として、第1電流に応じた第1信号を出力する。第2センサ40bは、センサ信号として、第2電流に応じた第2信号を出力する。このため、第1センサ40aと第2センサ40bは、変圧用配線とバイパス配線90とが正常であっても第1信号と第2信号を出力する。つまり、変圧用配線とバイパス配線90とが正常の場合、第1信号と第2信号は、第1電流と第2電流の向きが逆であることを示す信号となる。
【0068】
一方、変圧用配線またはバイパス配線90とが異常の場合、第1信号と第2信号は、第1電流と第2電流の向きが同じであることを示す信号となる。または、第1信号と第2信号は、第1電流と第2電流の一方のみが流れていることを示す信号となる。
【0069】
そして、ECU10は、第1信号と第2信号に基づいて、第1電流と第2電流の向きが逆であるか否かを判定する(S20)。よって、変形例の電力変換装置は、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。また、変形例の電力変換装置を含む電力変換システムに関しても同様である。
【0070】
さらに、電力変換システム100は、充電スタンド400のかわりに、外部装置として家屋などと電気的に接続されてもよい。この場合、外部接続リレー52は、家屋のコンセントに接続される。そして、電力変換システム100は、家屋に設けられた蓄電池や分電盤などと電気的に接続される。
【0071】
電力変換システム100は、家屋と電気的に接続された状態で、電池200の電力を家屋の蓄電池などに供給(給電)する。つまり、電力変換システム100は、給電モードで動作する。
【0072】
インバータ回路20とモータ装置30は、給電モードでは降圧回路として機能する。インバータ回路20とモータ装置30は、電池200の電圧を降圧して蓄電池などへ供給する。
【0073】
この場合、EUC100は、ステップS10において、インバータ回路20とモータ装置30を降圧回路(変圧回路)として動作させるために、各スイッチング素子21~26を制御する。また、ECU10は、リレー51,53をオン状態に制御するとともに、バイパスリレー91をオフ状態に制御する。このように、ECU10は、変圧回路の変圧動作を実行する。これによって、降圧された電池200の電圧が蓄電池などへ供給される。なお、給電モードにおいても、バイパス配線90を介して、降圧することなく給電してもよい。
【0074】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0075】
10…ECU、20…インバータ回路、21…U相上アームスイッチ、22…U相下アームスイッチ、23…V相上アームスイッチ、24…V相下アームスイッチ、25…W相上アームスイッチ、26…W相下アームスイッチ、30…モータ装置、31…U相コイル、32…V相コイル、33…W相コイル、34…中性点、40…センサ装置、40a…第1センサ、40b…第2センサ、41…ホールIC、42…コア、42g…ギャップ、51…リレー、52…外部接続リレー、53…中性点リレー、61,62…コンデンサ、70…負極側配線、80…正極側配線、81…U相配線、82…V相配線、83…W相配線、84…中性点配線、85…第1分岐点、86…第2分岐点、90…バイパス配線、91…バイパスリレー、200…電池、300…シャシ、400…充電スタンド、410…充電用電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6