(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011750
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】制御装置、半導体遮断システム、半導体スイッチの制御方法、制御プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
H03K 17/16 20060101AFI20250117BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20250117BHJP
H02H 7/16 20060101ALI20250117BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H03K17/16 F
H03K17/082
H02H7/16 A
H02H7/16 B
H02J1/00 309H
H02J1/00 309Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114043
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】豊田 玄紀
【テーマコード(参考)】
5G053
5G165
5J055
【Fターム(参考)】
5G053AA05
5G053AA10
5G053BA01
5G053BA04
5G053CA04
5G053EA01
5G053EC03
5G165BB01
5G165BB04
5G165CA01
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5G165HA01
5G165HA07
5G165HA17
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5G165LA01
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5G165MA10
5G165NA05
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5J055AX25
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5J055FX22
5J055GX02
5J055GX03
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】半導体スイッチに接続される負荷に関わらず、サージ電圧の発生を抑制することができる制御装置等を提供する。
【解決手段】制御装置(3)は、検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する検出電流傾き取得部(31)と、検出電流傾き取得部(31)の取得結果を使用して、半導体スイッチ(2)の開閉制御を行う開閉制御部(32)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、
前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御装置であって、
前記電流センサで検出された検出電流の時間的変化を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する検出電流傾き取得部と、
前記検出電流傾き取得部の取得結果を使用して、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御部と、を備える、制御装置。
【請求項2】
前記開閉制御部は、
前記電流センサで検出された検出電流と、予め定められた過電流閾値との比較を行うことにより、前記半導体スイッチの遮断動作の要否について判定する遮断判定処理部、を備える、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記開閉制御部は、
予め定められたN個(Nは2以上の整数)の遮断動作領域のうち、前記取得結果に基づいて、いずれか一つの遮断動作領域を選択する遮断動作選択部と、
前記遮断動作選択部が選択した遮断動作領域に対応して、遮断動作を前記半導体スイッチに実行させる遮断動作実行部と、を備える、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記N個の値の上限値は、前記半導体スイッチでの遮断電流の大きさを基に定められている、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記遮断動作実行部は、前記N個の前記遮断動作領域ごとに、予め定められたゲート電圧変更情報に基づいて、前記半導体スイッチのゲート電極を制御して、遮断動作を行わせる、請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ゲート電圧変更情報は、前記ゲート電極への印加電圧及び印加時間からなる複数組の変更情報を含む、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記遮断動作実行部は、前記検出電流が零となったことを判別した場合、前記半導体スイッチでの遮断動作を終了させる、請求項3に記載の制御装置。
【請求項8】
一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、
前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、
請求項1から7のいずれか1項に記載の制御装置と、を含む、半導体遮断システム。
【請求項9】
前記半導体スイッチには、バイポーラトランジスタ、MOSFET、またはIGBTが用いられている、請求項8に記載の半導体遮断システム。
【請求項10】
一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御方法であって、
前記電流センサで検出された検出電流の時間的変化を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する検出電流傾き取得ステップと、
前記検出電流傾き取得ステップの取得結果を使用して、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御ステップと、を含む、半導体スイッチの制御方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1項に記載の制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記検出電流傾き取得部及び前記開閉制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮断動作を行う半導体スイッチの制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源からの電力を負荷に供給する電力系統には、半導体スイッチを備えた半導体遮断システムが用いられている。このような半導体遮断システムは、負荷側での短絡事故の発生時などにおいて、過電流が半導体スイッチに流れたときに、半導体スイッチを動作させることによって高速に遮断する。
【0003】
従来の半導体スイッチの制御装置には、半導体スイッチでの遮断動作時において、その開始から終了までの期間内で当該半導体スイッチのゲート電極に対する印加電圧の電圧変化率を変化させたパターン電圧を発生するゲート電圧パターン発生器と、前記パターン電圧に従って半導体スイッチをターンオフ駆動するゲート電圧駆動アンプと、を設けることが開示されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の半導体スイッチの制御装置では、半導体スイッチに接続される負荷によっては、サージ電圧の発生を抑制できないという問題点を生じることがあった。
【0006】
本開示は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、半導体スイッチに接続される負荷に関わらず、サージ電圧の発生を抑制することができる制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係る制御装置は、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御装置であって、前記電流センサで検出された検出電流の時間的変化を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する検出電流傾き取得部と、前記検出電流傾き取得部の取得結果を使用して、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御部と、を備える。
【0008】
また、本開示の一側面に係る半導体遮断システムは、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、上記制御装置と、を含む。
【0009】
また、本開示の一側面に係る半導体スイッチの制御方法は、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御方法であって、前記電流センサで検出された検出電流の時間的変化を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する検出電流傾き取得ステップと、前記検出電流傾き取得ステップの取得結果を使用して、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御ステップと、を含む。
【0010】
また、本開示の一側面に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置の制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、半導体スイッチに接続される負荷に関わらず、サージ電圧の発生を抑制することができる制御装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る制御装置及びこれを備えた半導体遮断システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示したドライバの具体的な構成例を説明する図である。
【
図3】上記制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示した半導体スイッチでの通過電流(検出電流)の時間的変化とN個との関係を説明する波形図である。
【
図5】上記N個と検出電流の傾きとの関係を示す表である。
【
図6】上記制御装置における、上記半導体スイッチのゲート電極への具体的な印加電圧の変化を示す波形図である。
【
図7】上記N個ごとの上記ゲート電極への印加電圧と印加時間との具体例を説明する図である。
【
図8】上記制御装置の動作例を説明する波形図である。
【
図9】上記制御装置の別の動作例を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
(半導体遮断システム1が適用される電力系統の構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る制御装置3及びこれを備えた半導体遮断システム1を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の半導体遮断システム1は、その入力側に電源51が電気的に接続されるとともに、その出力側に負荷52が電気的に接続されている。なお、以下の説明では、本実施形態の半導体遮断システム1が直流電力系統Kに適用された場合を例示して説明する。
【0015】
本実施形態の半導体遮断システム1は、電源51側からの直流電力を適宜遮断するシステムであり、半導体遮断システム1は、電源51から負荷52への電流を遮断する半導体遮断器である。なお、電源51は、直流電源に限定されるものではなく、交流電源であってもよい。但し、電源51が交流電源である場合には、半導体遮断システム1との間にAC-DC変換器が設置されて、電源51からの交流電力がAC-DC変換器により直流電力に変換された後に半導体遮断システム1に供給される。
【0016】
負荷52は、直流電力によって動作する装置である。負荷52は、その入力側にコンデンサ及びコイルからなるLCフィルタを備えており、入力電力の安定化やノイズ対策等を行うようになっている。また、負荷52は、その入力側にコンデンサ等の蓄電装置が設けられており、前記蓄電装置は、直流電力の供給が瞬断した場合に動作用電圧を補償するように構成されている。なお、上記の説明以外に、交流電力で動作する負荷52を用いることができる。この場合には、例えば、負荷52の内部に半導体遮断システム1からの直流電力を交流電力に変換するDC-AC変換器が設置される。
【0017】
(半導体遮断システム1の構成)
図1に示すように、本実施形態の半導体遮断システム1は、第1線L1、第2線L2、半導体スイッチ2、制御装置3、及び電流センサ4を備えている。第1線L1は、電源51の正極(不図示)と負荷52とをつなぐ。第2線L2は、電源51の負極(不図示)と負荷52とをつなぐ。第1線L1及び第2線L2は、直流電力系統Kの本線及び帰線のそれぞれ一部を構成している。
【0018】
半導体スイッチ2は、第1線11において電源51と負荷52との間に位置しており、一端側が電源51に接続され、他端側が負荷52に接続されている。半導体スイッチ2は、半導体スイッチ本体21と、当該半導体スイッチ本体21に形成された寄生ダイオード22と、を備えている。制御装置3は、電流センサ4の検出結果と、当該制御装置3に予め設定されている遮断動作領域(後掲の
図4及び
図5)とを用いて、半導体スイッチ2の制御を行う(詳細は後述。)。
【0019】
また、半導体スイッチ2は、他端側が負荷52に接続されているので、当該半導体スイッチ2を介して電源51から負荷52に直流電力が供給される場合、当該負荷52に突入電流が流れることがある。すなわち、負荷52には、上記のように、蓄電装置が設けられているため、負荷52は、電源51からみると容量成分を有している。このため、直流電力が供給される場合、電源51から半導体遮断システム1を介して負荷52の蓄電装置への過大な充電電流である、突入電流が流れることがある。
【0020】
図1に示すように、電流センサ4は、電源51と半導体スイッチ2との間に設けられている。電流センサ4は、公知の変流器などの電流計を用いて構成されており、電源51から半導体スイッチ2に流れる電流(つまり、負荷52に向かって半導体スイッチ2を通過する通過電流)を検出電流として検出する。電流センサ4は、その検出結果(検出電流の値)を制御装置3に出力する。
【0021】
また、半導体スイッチ2には、例えば、バイポーラトランジスタ、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられている。
【0022】
(制御装置3の構成)
制御装置3は、検出電流傾き取得部31と、開閉制御部32と、ドライバ33と、記憶部34と、を備えている。制御装置3は、上記半導体スイッチ本体21に指示信号を出力することにより、半導体スイッチ2を制御する。換言すれば、制御装置3は、半導体スイッチ本体21が備えるゲート電極21g(以下、半導体スイッチ2のゲート電極21gという)に上記指示信号としての電圧印加を行うことで半導体スイッチ2を制御する。
【0023】
具体的にいえば、制御装置3は、半導体スイッチ2の遮断動作を行う場合、後述の検出電流の傾きに基づいて、予め定められたN個(Nは2以上の整数)の上記遮断動作領域から一つの遮断動作領域を選択する。そして、制御装置3は、選択した遮断動作領域に対応して予め定められたゲート電圧変更情報を基に半導体スイッチ2のゲート電極21g(
図2)に出力される指示信号を生成する。そして、制御装置3は、生成した指示信号をドライバ33からゲート電極21gに出力することにより、半導体スイッチ2を制御する。
【0024】
検出電流傾き取得部31は、電流センサ4で検出された検出電流の時間的変化を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する。検出電流傾き取得部31は、取得した検出電流の傾きを開閉制御部32に出力する。
【0025】
なお、上記の説明では、検出電流傾き取得部31が半導体スイッチ2のオン動作時(つまり、半導体スイッチ2をオン状態として電源51から負荷52への通電許容時)に検出電流の傾きを常に取得する場合を例示して説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではなく、例えば、開閉制御部32の後述の遮断判定処理部32aによって半導体スイッチ2に遮断動作を行う必要があると判定された場合にのみ、検出電流傾き取得部31は、検出電流の傾きを取得してもよい。
【0026】
開閉制御部32は、遮断判定処理部32aと、遮断動作選択部32bと、遮断動作実行部32cと、を備えている。遮断判定処理部32aは、電流センサ4で検出された検出電流と、予め定められた過電流閾値との比較を行うことにより、半導体スイッチ2の遮断動作の要否について判定する。遮断動作選択部32bは、検出電流傾き取得部31からの検出電流の傾きの取得結果に基づいて、予め定められたN個の遮断動作領域のうち、一つの遮断動作領域を選択する。遮断動作実行部32cは、遮断動作選択部32bが選択した遮断動作領域に対応して、遮断動作を半導体スイッチ2に実行させる。
【0027】
具体的にいえば、遮断動作実行部32cは、N個の遮断動作領域ごとに、予め定められたゲート電圧変更情報(
図7)に基づいて、上記指示信号を作成して半導体スイッチ2のゲート電極21gに出力することにより、当該ゲート電極21gを制御して、半導体スイッチ2に遮断動作を行わせる。また、ゲート電圧変更情報は、後に詳述するように、ゲート電極21gへの印加電圧及び印加時間からなる複数組の変更情報を含んでいる。
【0028】
また、遮断動作実行部32cは、電流センサ4からの検出結果を基に、半導体スイッチ2を通過して負荷52に向かって流れる検出電流が零となったことを判別した場合、半導体スイッチ2での遮断動作を終了させる。これにより、本実施形態では、半導体スイッチ2での遮断動作を適切に終了させることができるので、当該半導体スイッチ2の制御を精度よく行うことが可能となる。なお、この説明以外に、上記検出電流が零となったことを遮断判定処理部32aによって判別された場合に、遮断動作実行部32cが半導体スイッチ2での遮断動作を終了させてもよい。
【0029】
ここで、
図2を参照して、ドライバ33について具体的に説明する。
図2は、
図1に示したドライバ33の具体的な構成例を説明する図である。
【0030】
ドライバ33は、DAC(Digital Analog Converter)33aと、バッファ回路33bと、ゲート抵抗33cと、を備えている。DAC33aは、開閉制御部32の遮断動作実行部32cからの指示信号に対して、DA変換を行って、アナログの指示信号(電圧信号)を生成して、バッファ回路33bに出力する。バッファ回路33bは、DAC33aからの指示信号に対して、所定の電圧補正を行い、ゲート抵抗33cに出力する。
【0031】
ゲート抵抗33cには、半導体スイッチ2の誤動作防止を行うために、所定の抵抗を有する抵抗が用いられており、バッファ回路33bからの電圧信号の電圧値を適切に低減して、低減後の電圧信号をゲート電極21gに供給する。このようにドライバ33は、開閉制御部32からの指示信号に基づいて、半導体スイッチ2を駆動する。
【0032】
記憶部34は、例えば、書き換え可能な不揮発性メモリを用いて構成されており、制御装置3の各部を制御する制御プログラムを記憶可能となっている。また、記憶部34は、上記過電流閾値、上記N個の遮断動作領域、及び上記ゲート電圧変更情報が予め記憶されている。
【0033】
(制御装置3の動作)
次に、
図3乃至
図7も参照して、本実施形態の制御装置3の動作例について具体的に説明する。
図3は、上記制御装置3の動作例を示すフローチャートである。
図4は、
図1に示した半導体スイッチ2での通過電流(検出電流)の時間的変化とN個との関係を説明する波形図である。
図5は、上記N個と検出電流の傾きとの関係を示す表である。
図6は、上記制御装置3における、上記半導体スイッチ2のゲート電極21gへの具体的な印加電圧の変化を示す波形図である。
図7は、上記N個ごとの上記ゲート電極21gへの印加電圧と印加時間との具体例を説明する図である。
【0034】
図3のステップS1に示すように、制御装置3においては、検出電流傾き取得部31が電流センサ4の検出結果に基づいて、検出電流の傾きを取得する。換言すれば、検出電流傾き取得部31において、電流センサ4で検出された検出電流の時間的変化(did/dt)を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾き(did_set/dt)として取得する検出電流傾き取得ステップが行われる。そして、制御装置3では、検出電流傾き取得部31は、取得した検出電流の傾きを開閉制御部32に出力する。これにより、制御装置3では、開閉制御部32により、検出電流傾き取得ステップの取得結果を使用して、半導体スイッチ2の開閉制御を行う開閉制御ステップが実行される。
【0035】
具体的にいえば、まず、ステップS2に示すように、制御装置3においては、遮断判定処理部32aが電流センサ4の検出結果に基づいて、半導体スイッチ2を通過する通過電流が過電流であるか否かについて判定する。換言すれば、遮断判定処理部32aにおいて、電流センサ4で検出された検出電流と、予め定められた過電流閾値との比較を行うことにより、半導体スイッチ2の遮断動作の要否について判定する遮断判定ステップが行われる。
【0036】
遮断判定処理部32aは、電流センサ4からの検出電流の値が記憶部34に保持されている過電流閾値よりも小さいことを判別すると(ステップS2でNO)、遮断判定処理部32aは、半導体スイッチ2を開く必要がないと判断して、ステップS1に戻る。換言すれば、開閉制御部32は、半導体スイッチ2での遮断動作が不要であると判断して、半導体スイッチ2をオン状態(閉じた導通状態)で維持する。
【0037】
一方、遮断判定処理部32aは、電流センサ4からの検出電流の値が記憶部34に保持されている過電流閾値以上であることを判別すると(ステップS2でYES)、遮断判定処理部32aは、半導体スイッチ2を即座に開く必要があると判断して、ステップS3に進む。換言すれば、開閉制御部32は、半導体スイッチ2での遮断動作が必要であると判断して、半導体スイッチ2をオフ状態(開いた開放状態)とする。
【0038】
続いて、ステップS3に示すように、制御装置3においては、遮断動作選択部32bが検出電流傾き取得部31からの検出電流の傾き(did_set/dt)に対応したN個のNの値を選択する。換言すれば、遮断動作選択部32bにおいて、予め定められたN個の遮断動作領域のうち、上記検出電流傾き取得ステップの取得結果に基づいて、いずれか一つの遮断動作領域を選択する選択ステップが行われる。
【0039】
ここで、本実施形態において、遮断動作選択部32bが選択する、N個の遮断動作領域について具体的に説明する。まず
図4を用いて、検出電流傾き取得部31によって取得される検出電流の傾き(did_set/dt)について具体的に説明する。続いて
図5を用いて、検出電流の傾き(did_set/dt)とN個の遮断動作領域との関係について具体的に説明する。
【0040】
図4の両矢印70にて示すように、制御装置3においては、電流センサ4で検出され得る、検出電流の単位時間当たりの時間的変化(did/dt)が、例えば、最大値did_(1)/dtと最小値did_(k+1)/dtとで示される領域の範囲となるとしている。そして、制御装置3においては、上記領域が分割されたN個の遮断動作領域を予め定めて記憶部34に保持している。
【0041】
具体的にいえば、制御装置3においては、
図4及び
図5に示すように、検出電流の傾き(did_set/dt)が、時間的変化の値did_(1)/dt以下で、時間的変化の値did_(2)/dt以上である場合、遮断動作選択部32bは、N個の遮断動作領域のうち、Nの値が1の遮断動作領域を選択する。また、検出電流の傾き(did_set/dt)が、時間的変化の値did_(2)/dt未満で、時間的変化の値did_(3)/dt以上である場合、遮断動作選択部32bは、N個の遮断動作領域のうち、Nの値が2の遮断動作領域を選択する。また、検出電流の傾き(did_set/dt)が、時間的変化の値did_(k)/dt未満で、時間的変化の値did_(k+1)/dt以上である場合、遮断動作選択部32bは、N個の遮断動作領域のうち、Nの値がNの遮断動作領域を選択する。
【0042】
なお、本実施形態の制御装置3においては、Nの値は半導体スイッチ2での遮断電流の大きさを基に、ユーザなどの使用者が2以上の値から適宜決定して、記憶部34に設定されたものである。換言すれば、本実施形態の制御装置3においては、Nの値の上限値は、半導体スイッチ2での遮断電流の大きさを基に定められている。
【0043】
また、本実施形態の制御装置3においては、N個の各遮断動作領域における、kの値は、1以上の整数であり、使用者が半導体スイッチ2の動作特性、半導体スイッチ2に接続される電源51の供給電力等の出力特性、及び/または負荷52の使用電力等の負荷特性などに応じて適宜決定されたものが、記憶部34に記憶されている。また、kの値は、N個の各遮断動作領域において、遮断動作の順序を示す値である。具体的にいえば、kの値は、
図7に示す、パルス幅tsと印加電圧VGSを設定している順序を示している。そして、kの値は、遮断動作の実施回数に応じて、1の値が順次インクリメントされる(
図3のステップS7参照)。さらに、kの値は、N個の各遮断動作領域において、互いに同一の値または互いに異なる値に設定し得る。
【0044】
次に、本実施形態において、遮断動作実行部32cが実行する、ゲート電圧変更情報を用いた遮断動作の具体例について
図6を用いて具体的に説明する。
【0045】
図6に示すように、本実施形態の制御装置3においては、遮断動作実行部32cはドライバ33に出力する指示信号として、ゲート電極21gへの印加電圧VGSが段階的に小さくなるように、当該指示信号を生成してドライバ33に供給する。
【0046】
具体的にいえば、遮断動作実行部32cは、上記指示信号として時点0から時点T1の間では所定の印加電圧を印加させるとともに。時点T1を経過して時点T2までの期間tsにおいては上記所定の印加電圧よりもΔVGSだけ小さくした印加電圧をゲート電極21gに供給するよう指示する。以降、遮断動作実行部32cは、時点T2を経過して時点T3までの期間、及び時点T3を経過して時点T4までの期間において、順次印加電圧を低減してゲート電極21gに供給するよう指示する。
【0047】
また、遮断動作実行部32cは、N個の各遮断動作領域に関わらず、ゲート電極21gへの印加電圧VGSが段階的に小さくなるように、半導体スイッチ2での遮断動作を行わせるように構成されている。但し、各遮断動作領域においては、ゲート電極21gへの印加電圧の大きさ(段階的に低減する印加電圧の大きさ)及び印加時間は、半導体スイッチ2の遮断特性などに応じて、遮断動作領域ごとに、ゲート電極21gへの印加電圧及び印加時間からなる複数組の変更情報を含んだゲート電圧変更情報として予め決定されて、記憶部34に保持されている。
【0048】
具体的にいえば、Nの値が1である場合には、当該Nの値が1の遮断動作領域のゲート電圧印加情報として
図7の701に示すテーブルが記憶部34に予め保持されている。つまりこのゲート電圧印加情報によれば、
図7の701に示すように、遮断動作の開始時点からパルス幅tsで指定される印加時間ts_(11)までの期間には、ゲート電極21gへの印加電圧としてVGS_(11)が印加される。その後、印加時間ts_(12)、印加時間ts_(13)、・・・、及び印加時間ts_(1k)を順次経過するまでの期間に、ゲート電極21gへの印加電圧として大きさが順次低減された、VGS_(12)、VGS_(13)、・・・、及びVGS_(1k)がそれぞれ印加される。
【0049】
同様に、Nの値が2である場合には、当該Nの値が2の遮断動作領域のゲート電圧印加情報として
図7の702に示すテーブルが記憶部34に予め保持されている。つまりこのゲート電圧印加情報によれば、
図7の702に示すように、遮断動作の開始時点からパルス幅tsで指定される印加時間ts_(21)までの期間には、ゲート電極21gへの印加電圧としてVGS_(21)が印加される。その後、印加時間ts_(22)、印加時間ts_(23)、・・・、及び印加時間ts_(2k)を順次経過するまでの期間に、ゲート電極21gへの印加電圧として大きさが順次低減された、VGS_(22)、VGS_(23)、・・・、及びVGS_(2k)がそれぞれ印加される。
【0050】
同様に、Nの値が3である場合には、当該Nの値が3の遮断動作領域のゲート電圧印加情報として
図7の703に示すテーブルが記憶部34に予め保持されている。つまりこのゲート電圧印加情報によれば、
図7の703に示すように、遮断動作の開始時点からパルス幅tsで指定される印加時間ts_(31)までの期間には、ゲート電極21gへの印加電圧としてVGS_(31)が印加される。その後、印加時間ts_(32)、印加時間ts_(33)、・・・、及び印加時間ts_(3k)を順次経過するまでの期間に、ゲート電極21gへの印加電圧として大きさが順次低減された、VGS_(32)、VGS_(33)、・・・、及びVGS_(3k)がそれぞれ印加される。
【0051】
同様に、Nの値がNである場合には、当該Nの値がNの遮断動作領域のゲート電圧印加情報として
図7の704に示すテーブルが記憶部34に予め保持されている。つまりこのゲート電圧印加情報によれば、
図7の704に示すように、遮断動作の開始時点からパルス幅tsで指定される印加時間ts_(N1)までの期間には、ゲート電極21gへの印加電圧としてVGS_(N1)が印加される。その後、印加時間ts_(N2)、印加時間ts_(N3)、・・・、及び印加時間ts_(Nk)を順次経過するまでの期間に、ゲート電極21gへの印加電圧として大きさが順次低減された、VGS_(N2)、VGS_(N3)、・・・、及びVGS_(Nk)がそれぞれ印加される。
【0052】
なお、
図7の701~704において、上記の説明では、
図6に示したように、ゲート電極21gへの印加電圧の大きさを順次低減する場合について説明した。しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、異なる印加期間において、同一の印加電圧を用いたり、前回の印加電圧よりも大きい値としたりすることもできる。また、印加時間においても、互いに同一の時間を使用したり、互いに異なる時間を使用したりすることができる。
【0053】
但し、上記のように、ゲート電極21gへの印加電圧の大きさを順次低減する場合の方が、サージ電圧を低減することができる点で好ましい。具体的にいえば、例えば、上記印加電圧の大きさを急峻に低下させると、負荷52への供給電流、すなわち上記通過電流の時間的変化di/dtが高くなり、これに伴って負荷52での電圧VL(=L×di/dt、Lは負荷52の配線インダクタンス)の値もまた大きくなる。このため、印加電圧の大きさを順次低減する場合に比べて、サージ電圧が大きくなることがあるからである。
【0054】
図3のステップS4に戻って、遮断動作選択部32bが、Nの値として、例えば、Nの値を選択して、上記検出電流の傾きがNの遮断動作領域であることを選択すると、遮断動作実行部32cは、対応するNの遮断動作領域、つまり
図7の704に示したテーブルを今回の遮断動作に適用することを決定する。
【0055】
次に、遮断動作実行部32cは、kの値の初期化、つまりk=1を選択する(ステップS5)。続いて、遮断動作実行部32cは、記憶部34に保持されている、
図7の704に示したテーブルを参照することにより、k=1の印加電圧及び印加時間を示すゲート電圧変更情報を読み出す。具体的にいえば、遮断動作実行部32cは、記憶部34から印加時間ts_(N1)と印加電圧VGS_(N1)とを読み出す。そして、遮断動作実行部32cは、読み出した印加時間ts_(N1)と印加電圧VGS_(N1)とを基に指示信号を作成して、ドライバ33を介して半導体スイッチ2での1回目の遮断動作を行わせる(ステップS6)。
【0056】
続いて、遮断動作実行部32cは、kの値に1を加算する(ステップS7)。具体的にいえば、遮断動作実行部32cは、k=2を選択する。次に、遮断動作実行部32cは、記憶部34に保持されている、
図7の704に示したテーブルを参照することにより、k=2の印加電圧及び印加時間を示すゲート電圧変更情報を読み出す。具体的にいえば、遮断動作実行部32cは、記憶部34から印加時間ts_(N2)と印加電圧VGS_(N2)とを読み出す。そして、遮断動作実行部32cは、読み出した印加時間ts_(N2)と印加電圧VGS_(N2)とを基に指示信号を作成して、ドライバ33を介して半導体スイッチ2での2回目の遮断動作を行わせる(ステップS8)。
【0057】
次に、遮断判定処理部32aは、電流センサ4からの検出結果を基に、半導体スイッチ2を流れる通過電流(検出電流)が零となったか否かについて判別する(ステップS9)。遮断判定処理部32aが、検出電流が零となっていないことを判別した場合(ステップS9でNO)、遮断動作実行部32cは、ステップS7に戻って、その処理を続行することにより、3回目以降の遮断動作を半導体スイッチ2に実行させる。
【0058】
一方、遮断判定処理部32aが、検出電流が零となっていることを判別した場合(ステップS9でYES)、遮断動作実行部32cも、検出電流が零となったことを判別して、ゲート電極21gへの印加電圧VGSとして当該印加電圧VGSの最小値である、ゲート保持電圧VGS_minを適用する(ステップS10)。これにより、本実施形態では、半導体スイッチ2での遮断動作を終了させて半導体スイッチ2を開放状態とする。
【0059】
以上のステップS4~S10により、制御装置3では、選択ステップで選択した遮断動作領域に対応して、遮断動作を半導体スイッチ2に実行させる遮断動作実行ステップが実行される。
【0060】
また、制御装置3においては、上記開閉制御ステップは、ステップS2に示した遮断判定ステップと、ステップS3に示した選択ステップと、ステップS4~S10に示した遮断動作実行ステップと、を含んでいる。
【0061】
また、本実施形態の制御装置3は、ステップS6~ステップS9から明らかなように、少なくとも2回の遮断動作を行わせるので、サージ電圧の抑制効果を確実に奏することができる。
【0062】
以上のように構成された本実施形態の制御装置3では、電流センサ4で検出された検出電流の時間的変化を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する検出電流傾き取得部31と、検出電流傾き取得部31の取得結果を使用して、半導体スイッチ2の開閉制御を行う開閉制御部32と、を備えている。
【0063】
以上の構成により、本実施形態の制御装置3では、開閉制御部32は、検出電流傾き取得部31が取得した検出電流の傾きを基に、半導体スイッチ2をオン状態またはオフ状態とする。これにより、本実施形態の制御装置3においては、開閉制御部32が半導体スイッチ2を通過して負荷52に向かって流れる検出電流を鑑みて、当該半導体スイッチ2に遮断動作を行わせることができる。この結果、本実施形態の制御装置3においては、上記従来例と異なり、半導体スイッチ2に接続される負荷52に関わらず、半導体スイッチ2での遮断動作を適切に行わせることができ、サージ電圧の発生を抑制することができる。
【0064】
さらに、本実施形態の制御装置3においては、サージ電圧の発生を抑制することができることから、当該制御装置3を用いた半導体遮断システム1では、例えば、サージ電圧を抑制するためのスナバ回路の設置を省略することができる。これにより、部品点数が少なく、コストが安価でコンパクトな半導体遮断システム1を容易に構成することができる。
【0065】
また、本実施形態の制御装置3では、遮断判定処理部32aが開閉制御部32に設けられているので、半導体スイッチ2の遮断動作の要否について適切に判定することができる。この結果、開閉制御部32は、半導体スイッチ2の開閉制御を適切に行うことができる。
【0066】
また、本実施形態の制御装置3では、遮断動作選択部32b及び遮断動作実行部32cが開閉制御部32に設けられている。これにより、開閉制御部32は、検出電流傾き取得部31が取得した検出電流の傾きの取得結果に基づいて、予め定められたN個の遮断動作領域のうち、一つの遮断動作領域を選択することができる。さらに、開閉制御部32は、選択された一つの遮断動作領域に対応した、遮断動作を半導体スイッチ2に実行させることが可能となり、半導体スイッチ2に接続される負荷52に関わらず、サージ電圧の発生をより抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の制御装置3では、N個の上限値は半導体スイッチ2での遮断電流の大きさを基に定められているので、N個の範囲を半導体スイッチ2での遮断電流の大きさに基づき、適切に定めることができる。これにより、本実施形態の制御装置3では、半導体スイッチ2の特性に応じて、適切な遮断動作領域を確実に定めることができ、負荷52に関わらず、当該半導体スイッチ2の遮断動作を適切に行わせることができる。
【0068】
また、本実施形態の制御装置3では、遮断動作実行部32cがN個の遮断動作領域ごとに、予め定められたゲート電圧変更情報に基づいて、半導体スイッチ2のゲート電極21gを制御して、遮断動作を行わせている。これにより、本実施形態の制御装置3では、上記検出電流に応じて、半導体スイッチ2の適切な遮断動作を確実に行わせることができる。
【0069】
また、本実施形態の制御装置3では、ゲート電圧変更情報はゲート電極21gへの印加電圧及び印加時間からなる複数組の変更情報を含んでいる。これにより、本実施形態の制御装置3では、ゲート電極21gひいては半導体スイッチ2を段階的に動作させることができ、当該半導体スイッチ2での適切な遮断動作を確実に行わせることができる。
【0070】
ここで、
図8及び
図9も参照して、本実施形態の制御装置3の効果について具体的に説明する。
図8は、上記制御装置3の動作例を説明する波形図である。
図9は、上記制御装置3の別の動作例を説明する波形図である。なお、以下の説明では、
図8の動作例では、例えば、負荷52に対して突入電流などの急峻な電流が半導体スイッチ2を介して流れた場合を例示して説明する。また、
図9の動作例では、例えば、負荷52での配線インダクタンスが大きく負荷52への電流の増加が比較的緩やかである場合を例示して説明する。
【0071】
図8の801に示す、半導体スイッチ2での遮断動作例においては、実線80にて示すように、時点0から時点T21までの期間ts_(11)に、印加電圧VGS_(11)がゲート電極21gに印加される。また、時点T21から時点T22までの期間ts_(12)に、印加電圧VGS_(12)がゲート電極21gに印加される。また、時点T22から時点T23までの期間ts_(13)に、印加電圧VGS_(13)がゲート電極21gに印加される。
【0072】
また、時点T23から時点T24までの期間ts_(14)に、印加電圧VGS_(14)がゲート電極21gに印加される。そして、時点T24において、制御装置3においては、遮断動作実行部32cが、半導体スイッチ2を通過する通過電流が零となったことを判別して、ゲート電極21gにゲート保持電圧VGS_minを印加する。これにより、制御装置3においては、半導体スイッチ2を開放状態として遮断動作を終了する。
【0073】
また、上記のように4つの期間ts_(11)、ts_(12)、ts_(13)、及びts_(14)において、印加電圧VGS_(11)、VGS_(12)、VGS_(13)、及びVGS_(14)がゲート電極21gにそれぞれ印加されると、電流センサ4で検出される検出電流、すなわち半導体スイッチ2の通過電流は、
図8の802の実線90に示すように、変化する。この結果、この遮断動作例では、制御装置3が4回の遮断動作を繰り返して行わせることにより、半導体スイッチ2を開放状態とすることができることが確かめられた。
【0074】
図9の901に示す、半導体スイッチ2での遮断動作例においては、実線81にて示すように、時点0から時点T31までの期間ts_(N1)に、印加電圧VGS_(N1)がゲート電極21gに印加される。また、時点T31から時点T32までの期間ts_(N2)に、印加電圧VGS_(N2)がゲート電極21gに印加される。また、時点T32から時点T33までの期間ts_(N3)に、印加電圧VGS_(N3)がゲート電極21gに印加される。
【0075】
また、時点T33から時点T34までの期間ts_(N4)に、印加電圧VGS_(N4)がゲート電極21gに印加される。さらに、時点T34からの期間ts_(N5)に、印加電圧VGS_(N5)がゲート電極21gに印加された後、当該印加電圧VGS_(N5)よりも小さい印加電圧を用いた遮断動作が行われる。その後、制御装置3においては、遮断動作実行部32cが、半導体スイッチ2を通過する通過電流が零となったことを判別して、ゲート電極21gにゲート保持電圧VGS_minを印加する。これにより、制御装置3においては、半導体スイッチ2を開放状態として遮断動作を終了する。
【0076】
また、上記のように5つの期間ts_(N1)、ts_(N2)、ts_(N3)、ts_(N4)、及びts_(N5)において、印加電圧VGS_(N1)、VGS_(N2)、VGS_(N3)、VGS_(N4)、及びVGS_(N5)がゲート電極21gにそれぞれ印加されると、電流センサ4で検出される検出電流、すなわち半導体スイッチ2の通過電流は、
図9の902の実線91に示すように、変化する。この結果、この遮断動作例では、制御装置3が5回以上の遮断動作を繰り返して行わせることにより、半導体スイッチ2を開放状態とすることができることが確かめられた。
【0077】
図8の802の実線90及び
図9の902の実線91に示したように、遮断動作時での通過電流の傾きは、半導体スイッチ2での遮断動作の動作内容、つまりゲート電極21gへの印加電圧及び/または印加時間に応じて、変化させることが可能であることが確認された、換言すれば、本実施形態の制御装置3では、過電流を検出したときの検出電流の傾きに応じて、遮断動作時での通過電流の傾きを変化させることができ、半導体スイッチ2に接続される負荷52に関わらず、半導体スイッチ2での遮断動作を適切に行わせることが実証された。
【0078】
尚、上記の説明では、過電流閾値、N個の遮断動作領域、及び各遮断動作領域における、ゲート電圧変更情報を記憶部34に設定して予め記憶させる構成について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではなく、半導体遮断システム1に設けた通信インターフェース等を介在させてサーバ等の外部装置から過電流閾値、N個の遮断動作領域、または各遮断動作領域における、ゲート電圧変更情報を適宜設定する構成でもよい。
【0079】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置3(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の制御ブロック(特に、検出電流傾き取得部31及び開閉制御部32)としてコンピュータを機能させるための制御プログラムにより実現することができる。
【0080】
この場合、上記装置は、上記制御プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記制御プログラムを実行することにより、上記実施形態で説明した各機能が実現される。
【0081】
上記制御プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0082】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0083】
上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0084】
また、上記実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0085】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本開示の態様1に係る制御装置は、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御装置であって、前記電流センサで検出された検出電流の時間的変化を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する検出電流傾き取得部と、前記検出電流傾き取得部の取得結果を使用して、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御部と、を備える。
【0086】
上記構成によれば、開閉制御部は、検出電流傾き取得部が取得した検出電流の傾きを基に、半導体スイッチをオン状態またはオフ状態とする。このように、開閉制御部は、半導体スイッチを通過して負荷に向かって流れる検出電流を鑑みて、当該半導体スイッチに遮断動作を行わせているので、半導体スイッチに接続される負荷に関わらず、サージ電圧の発生を抑制することができる。
【0087】
また、本開示の態様2に係る制御装置は、態様1において、前記開閉制御部は、前記電流センサで検出された検出電流と、予め定められた過電流閾値との比較を行うことにより、前記半導体スイッチの遮断動作の要否について判定する遮断判定処理部、を備えてもよい。
【0088】
上記構成によれば、開閉制御部は、遮断判定処理部により、半導体スイッチの遮断動作の要否について適切に判定することが可能となる。これにより、開閉制御部は、半導体スイッチの開閉制御を適切に行うことができる。
【0089】
また、本開示の態様2に係る制御装置は、態様1または態様2において、前記開閉制御部は、予め定められたN個(Nは2以上の整数)の遮断動作領域のうち、前記取得結果に基づいて、いずれか一つの遮断動作領域を選択する遮断動作選択部と、前記遮断動作選択部が選択した遮断動作領域に対応して、遮断動作を前記半導体スイッチに実行させる遮断動作実行部と、を備えてもよい。
【0090】
上記構成によれば、遮断動作選択部が、上記取得結果に基づいて、一つの遮断動作領域を選択する。遮断動作実行部が、選択された遮断動作領域に対応した、遮断動作を半導体スイッチに実行させる。これにより、開閉制御部は、半導体スイッチの遮断動作をより適切に行わせることができ、半導体スイッチに接続される負荷に関わらず、サージ電圧の発生をより抑制することができる。
【0091】
また、本開示の態様4に係る制御装置は、態様3において、前記N個の値の上限値は、前記半導体スイッチでの遮断電流の大きさを基に定められてもよい。
【0092】
上記構成によれば、2以上の整数である、N個の範囲を半導体スイッチでの遮断電流の大きさに基づき、適切に定めることができる。これにより、半導体スイッチの特性に応じて、適切な遮断動作領域を確実に定めることができ、負荷に関わらず、当該半導体スイッチの遮断動作を適切に行わせることができる。
【0093】
また、本開示の態様5に係る制御装置は、態様3または態様4において、前記遮断動作実行部は、前記N個の前記遮断動作領域ごとに、予め定められたゲート電圧変更情報に基づいて、前記半導体スイッチのゲート電極を制御して、遮断動作を行わせてもよい。
【0094】
上記構成によれば、遮断動作実行部が、遮断動作領域ごとのゲート電圧変更情報に基づき半導体スイッチのゲート電極を制御することにより、当該半導体スイッチに遮断動作を実行させる。これにより、上記検出電流に応じて、半導体スイッチの適切な遮断動作を確実に行わせることができる。
【0095】
また、本開示の態様6に係る制御装置は、態様5において、前記ゲート電圧変更情報は、前記ゲート電極への印加電圧及び印加時間からなる複数組の変更情報を含んでもよい。
【0096】
上記構成によれば、ゲート電極ひいては半導体スイッチを段階的に動作させることができ、当該半導体スイッチでの適切な遮断動作を確実に行わせることができる。
【0097】
また、本開示の態様7に係る制御装置は、態様3から態様6のいずれかの態様において、前記遮断動作実行部は、前記検出電流が零となったことを判別した場合、前記半導体スイッチでの遮断動作を終了させてもよい。
【0098】
上記構成によれば、半導体スイッチでの遮断動作を適切に終了させることができるので、当該半導体スイッチの制御を精度よく行うことが可能となる。
【0099】
また、本開示の態様8に係る半導体遮断システムは、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、態様1から態様7のいずれかの態様の制御装置と、を含む。
【0100】
また、本開示の態様9に係る半導体遮断システムは、態様8において、前記半導体スイッチには、バイポーラトランジスタ、MOSFET、またはIGBTが用いられてもよい。
【0101】
また、本開示の態様10に係る半導体スイッチの制御方法は、一端が電源に接続され、他端が負荷に接続され、前記電源から前記負荷への電流を遮断する半導体スイッチと、前記電源から前記半導体スイッチに流れる電流を検出する電流センサと、を備える半導体システムにおいて、前記半導体スイッチを制御する制御方法であって、前記電流センサで検出された検出電流の時間的変化を求めて、求めた検出電流の時間的変化を当該検出電流の傾きとして取得する検出電流傾き取得ステップと、前記検出電流傾き取得ステップの取得結果を使用して、前記半導体スイッチの開閉制御を行う開閉制御ステップと、を含む。
【0102】
また、本開示の態様11に係る制御プログラムは、態様1から態様5のいずれかの態様の制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記検出電流傾き取得部及び前記開閉制御部としてコンピュータを機能させる。
【0103】
また、本開示の態様12に係る記録媒体は、態様9の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0104】
態様8から態様12の構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【0105】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1 半導体遮断システム
2 半導体スイッチ
21g ゲート電極
3 制御装置
31 検出電流傾き取得部
32 開閉制御部
32a 遮断判定処理部
32b 遮断動作選択部
32c 遮断動作実行部
4 電流センサ
51 電源
52 負荷