(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011783
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】積層体の製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114103
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503410627
【氏名又は名称】株式会社コーセン社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】塚本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕作
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA04
4F211AA11
4F211AA24
4F211AA29
4F211AA31
4F211AA45
4F211AD03
4F211AG01
4F211AG03
4F211AG15
4F211AR02
4F211AR06
4F211AR11
4F211TA04
4F211TN56
4F211TQ04
(57)【要約】
【課題】メッシュに起伏を有するエキスパンドメタルを用いても、ストランドに樹脂フィルムが十分に密着している積層体を製造することができる積層体の製造方法が提供される。
【解決手段】本開示の積層体の製造方法は、加熱されたエキスパンドメタル上に、樹脂フィルム及び剥離フィルムをこの順に載置して、重ね合わせ体を作製する工程と、ショアA硬度が40~60のゴム板を、前記重ね合わせ体の前記剥離フィルムに押し当てて、前記樹脂フィルムを前記エキスパンドメタルに接着させる工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されたエキスパンドメタル上に、樹脂フィルム及び剥離フィルムをこの順に載置して、重ね合わせ体を作製する工程と、
ショアA硬度が40~60のゴム板を、前記重ね合わせ体の前記剥離フィルムに押し当てて、前記樹脂フィルムを前記エキスパンドメタルに接着させる工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの材質が、ホットメルト樹脂組成物である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記ホットメルト樹脂組成物が、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、スチレン系エラストマーとポリオレフィンが混合された熱可塑性エラストマー、及び、エチレン系ゴムとポリプロピレンが混合された熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記エキスパンドメタルのストランドの板厚が、500μm~8,000μmであり、
前記樹脂フィルムの厚みが、15μm~500μmである、請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記ゴム板が、シリコーンゴムを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記ゴム板が加熱されている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
エキスパンドメタルと、
前記エキスパンドメタルの少なくとも一方の主面に接着された樹脂フィルムと、
を備え、
前記エキスパンドメタルが、複数のストランドと、前記複数のストランドのうちの3つ以上の前記ストランドが接続された複数のボンドと、を有し、
前記複数のストランド及び前記複数のボンドによって、複数のメッシュが形成されており、
前記複数のメッシュの総数に対する接着メッシュの総数の比率が、80%以上であり、
前記接着メッシュが、前記複数のメッシュのうち、1つの前記メッシュを形成する複数のストランドの全てが前記樹脂フィルムに接着しているメッシュを示す、積層体。
【請求項8】
前記樹脂フィルムの材質が、ホットメルト樹脂組成物である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記ホットメルト樹脂組成物が、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、スチレン系エラストマーとポリオレフィンが混合された熱可塑性エラストマー、及び、エチレン系ゴムとポリプロピレンが混合された熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1つを含む、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記ストランドの板厚が、500μm~8,000μmであり、
前記樹脂フィルムの厚みが、15μm~500μmである、請求項8又は請求項9に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体の製造方法及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エキスパンドメタルにフィルムを積層してなる積層体は、様々な部材(例えば、吸音材)として用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
「エキスパンドメタル」とは、エキスパンド製法によって、金属板をメッシュ状にした金網を示す。詳しくは、エキスパンドメタルは、山型の上刃及び平状の下刃で、金属板にスリッ卜を入れながら拡開(エキスパンド)することで得られる。そのため、エキスパンドメタルは、打抜金網と異なり、メッシュに起伏(すなわち、ストランドとボンドとの間の段差)を有する。「ストランド」とは、メッシュの細い部分を示す。「ボンド」とは、メッシュの交差している太い部分を示す。
【0004】
特許文献3は、膜振動吸音板を開示している。特許文献3に開示の膜振動吸音板は、多数の開口を有する2枚の板状体で透明樹脂薄膜を挟持してなる。2枚の板状体の一方は、アルミニウム製エキスパンドメタルを平坦化したもの(以下、「フラット加工品」ともいう)である。特許文献3には、フラット加工品を用いることで、メッシュに起伏を有するエキスパンドメタルを用いる場合よりも、透明樹脂薄膜との接触が十分となり、膜振動吸音板の吸音特性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-324389号公報
【特許文献2】特開2020-073318号公報
【特許文献3】特開2007-303080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エキスパンドメタルは、フラット加工品よりも安価である。そのため、メッシュに起伏を有するエキスパンドメタルを用いても、ストランドに樹脂フィルムが十分に密着している積層体を製造することができる積層体の製造方法が求められている。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みたものである。
本開示の実施形態が解決しようとする課題は、メッシュに起伏を有するエキスパンドメタルを用いても、ストランドに樹脂フィルムが十分に密着している積層体を製造することができる積層体の製造方法、及び積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
【0009】
<1> 加熱されたエキスパンドメタル上に、樹脂フィルム及び剥離フィルムをこの順に載置して、重ね合わせ体を作製する工程と、
ショアA硬度が40~60のゴム板を、前記重ね合わせ体の前記剥離フィルムに押し当てて、前記樹脂フィルムを前記エキスパンドメタルに接着させる工程と、
を含む、積層体の製造方法。
<2> 前記樹脂フィルムの材質が、ホットメルト樹脂組成物である、前記<1>に記載の積層体の製造方法。
<3> 前記ホットメルト樹脂組成物が、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、スチレン系エラストマーとポリオレフィンが混合された熱可塑性エラストマー、及び、エチレン系ゴムとポリプロピレンが混合された熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1つを含む、前記<2>に記載の積層体の製造方法。
<4> 前記エキスパンドメタルのストランドの板厚が、500μm~8,000μmであり、
前記樹脂フィルムの厚みが、15μm~500μmである、前記<2>に記載の積層体の製造方法。
<5> 前記ゴム板が、シリコーンゴムを含む、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<6> 前記ゴム板が加熱されている、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<7> エキスパンドメタルと、
前記エキスパンドメタルの少なくとも一方の主面に接着された樹脂フィルムと、
を備え、
前記エキスパンドメタルが、複数のストランドと、前記複数のストランドのうちの3つ以上の前記ストランドが接続された複数のボンドと、を有し、
前記複数のストランド及び前記複数のボンドによって、複数のメッシュが形成されており、
前記複数のメッシュの総数に対する接着メッシュの総数の比率が、80%以上であり、
前記接着メッシュが、前記複数のメッシュのうち、1つの前記メッシュを形成する複数のストランドの全てが前記樹脂フィルムに接着しているメッシュを示す、積層体。
<8> 前記樹脂フィルムの材質が、ホットメルト樹脂組成物である、前記<7>に記載の積層体。
<9> 前記ホットメルト樹脂組成物が、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、スチレン系エラストマーとポリオレフィンが混合された熱可塑性エラストマー、及び、エチレン系ゴムとポリプロピレンが混合された熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1つを含む、前記<8>に記載の積層体。
<10> 前記ストランドの板厚が、500μm~8,000μmであり、
前記樹脂フィルムの厚みが、15μm~500μmである、前記<8>又は<9>に記載の積層体。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、メッシュに起伏を有するエキスパンドメタルを用いても、ストランドに樹脂フィルムが十分に密着している積層体を製造することができる積層体の製造方法、及び積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るエキスパンドメタルの斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るゴム板付き重ね合わせ体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0013】
(1)積素体の製造方法
本開示の積素体の製造方法は、加熱されたエキスパンドメタル上に、樹脂フィルム及び剥離フィルムをこの順に載置して、重ね合わせ体を作製する工程(以下、「載置工程」ともいう)と、ショアA硬度が40~60のゴム板を、前記重ね合わせ体の前記剥離フィルムに押し当てて、前記樹脂フィルムを前記エキスパンドメタルに接着させる工程(以下、「接着工程」ともいう)と、を含む。
【0014】
本開示において、「エキスパンドメタル」とは、エキスパンド製法により、金属板を網状にした、メッシュに起伏(すなわち、ストランドとボンドとの間の段差)を有する金網を示す。エキスパンドメタルは、フラット加工品を含まない。
「樹脂フィルム」とは、樹脂製のフィルムを示す。
「剥離フィルム」とは、樹脂フィルムに対して剥離性を有するフィルムの他、剥離紙を含む。
「ショアA硬度」は、23℃でのショアA硬度を示す。
【0015】
本開示の積層体の製造方法は、上記の構成を有するので、メッシュに起伏を有するエキスパンドメタルを用いても、ストランドに樹脂フィルムが十分に密着している積層体を製造することができる。
この効果は、以下の理由によると推測されるが、これに限定されない。
従来、樹脂フィルムを貼り合せるアプリケーションとしては、熱ラミネーター及び加熱プレスが用いられている。
熱ラミネーターでは、加熱された一対のロールの間に、薄くかつ平滑な複数の材料(総厚:1mm以下)を通すことで、複数の材料同士を貼り合せる。エキスパンドメタルは、通常、総厚が1mmを超え、さらにメッシュに起伏を有する。その結果、熱ラミネーターでは、エキスパンドメタルのストランドに樹脂フィルムが十分に密着させることができないおそれがある。
加熱プレスでは、加熱プレス機の上板及び下板で、複数の材料を熱圧着して、複数の材料同士を貼り合せる。しかしながら、上板及び下板は、熱圧着の際、樹脂フィルムをエキスパンドメタルのストランドの形状に追従して変形させることができない。その結果、加熱プレスでは、熱ラミネーターと同様に、エキスパンドメタルのストランドに樹脂フィルムが十分に密着させることができないおそれがある。
一方で、本開示では、接着工程において、ショアA硬度が40~60のゴム板を、重ね合わせ体の剥離フィルムに押し当てて、樹脂フィルムを加熱されたエキスパンドメタルに接着させる。そのため、ゴム板は、樹脂フィルムをエキスパンドメタルに接着させる際、樹脂フィルムをエキスパンドメタルのストランドの形状に追従して変形させることができる。その結果、本開示の積素体の製造方法は、エキスパンドメタルのストランドに樹脂フィルムが十分に密着させることができると推測される。
【0016】
本開示積層体の製造方法は、エキスパンドメタル、樹脂フィルム及び剥離フィルムを準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、エキスパンドメタルを加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)と、接着工程の実施により得られる重ね合わせ体(以下、「接着重ね合わせ体」ともいう)から剥離フィルムを剥離する工程(以下、「剥離工程」ともいう)と、を更に含んでもよい。本開示積層体の製造方法が、準備工程、加熱工程及び剥離工程をさらに含む場合、準備工程、加熱工程、載置工程、接着工程及び剥離工程は、この順に実施される。
【0017】
以下、本開示積層体の製造方法が、準備工程及び剥離工程をさらに含む場合について、説明する。
【0018】
(1.1)積層体
本開示の積層体の積層方法により得られる積層体は、エキスパンドメタルと、樹脂フィルムと、を備える。樹脂フィルムは、エキスパンドメタルの少なくとも一方の主面に接着されている。樹脂フィルムは、エキスパンドメタルに直接的に接着していてもよいし、公知の接着剤によって形成された接着層を介して間接的に接着していてもよい。積層体の詳細については、後述する。積層体は、膜振動吸音板として好適に用いられる。
【0019】
膜振動吸音板では、音源から樹脂フィルムに音波(すなわち、振動する空気)が入射すると、音波の作用によって、樹脂フィルムが振動する。この際、樹脂フィルムの内部摩擦によってエネルギー損失し、吸音作用が発現する。樹脂フィルムとエキスパンドメタルとの接触状態及び樹脂フィルムの剛性等によって決まる固有振動数で大きな振動振幅を示す。
【0020】
(1.2)準備工程
準備工程では、エキスパンドメタル、樹脂フィルム及び剥離フィルムを準備する。
【0021】
エキスパンドメタル、樹脂フィルム及び剥離フィルムを準備する方法は、公知の方法であればよい。
【0022】
(1.2.1)エキスパンドメタル
エキスパンドメタルは、複数のストランドと、複数のボンドと、を有する。複数のボンドの各々は、複数のストランドのうちの3つ以上のストランドが接続されている。複数のストランド及び複数のボンドによって、複数のメッシュが形成されている。複数のストランドと、複数のボンドと、は一体化している。
【0023】
メッシュの形状は、特に限定されず、菱形、及び亀甲形等が挙げられる。メッシュの形状が菱形である場合、複数のボンドの各々には、4つのストランドが接続される。メッシュの形状が亀甲形である場合、複数のボンドの各々には、3つのストランドが接続される。
【0024】
エキスパンドメタルのサイズは、特に限定されるものではなく、積層体の用途等に応じて、適宜選択される。メッシュの形状が菱形である場合、エキスパンドメタルのサイズは、下記のサイズであってもよいし、JIS G 3351に規定の寸法であってもよい。
【0025】
図1に、エキスパンドメタルの一例の斜視図を示す。
図2に、
図1中のC2-C2線断面図を示す。
図1及び
図2中、符号「10」はエキスパンドメタルを示し、符号「11」はストランドを示し、符号「12」はボンドを示す。
メッシュの短目方向中心間距離SW(
図1参照)は、好ましくは3,000μm~16,000μm、より好ましくは7,000μm~10,000μmである。メッシュの長目方向中心間距離LW(
図1参照)は、好ましくは4,600μm~32,000μm、より好ましくは14,000μm~20,000μmである。ストランド11の板厚T(
図1及び
図2参照)は、好ましくは500μm~1,500μm、より好ましくは800μm~1,000μmである。ストランド11の刻み幅W(
図1及び
図2参照)は、好ましくは700μm~1,700μm、より好ましくは800μm~1,000μmである。
【0026】
エキスパンドメタルの材質は、金属であれば特に限定されるものではなく、例えば、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、コバルト、亜鉛、鉛、スズ、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金(ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム鋼、真鍮、リン青銅等)等が挙げられる。
【0027】
エキスパンドメタルは、市販品であってもよい。
【0028】
(1.2.2)樹脂フィルム
樹脂フィルムの厚みは、特に限定されず、積層体の用途等に応じて適宜選択される。樹脂フィルムの厚みは、15μm~500μmであってもよい。積層体の用途が膜振動吸音板である場合、樹脂フィルムの厚みは、好ましくは30μm~400μm、より好ましくは50μm~300μmである。
【0029】
樹脂フィルムの材質は、積層体の用途等に応じて適宜選択される。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ホットメルト樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0030】
「ホットメルト樹脂組成物」とは、23℃で固体であり、熱を加えると溶融する樹脂組成物を示す。
【0031】
以下、材質がホットメルト樹脂組成物である樹脂フィルムを、「ホットメルトフィルム」ともいう。ホットメルトフィルムの軟化点は、好ましくは80℃~200℃、より好ましくは100℃~160℃である。
【0032】
中でも、樹脂フィルムの材質は、ホットメルト樹脂組成物であることが好ましい。樹脂フィルムがホットメルトフィルムである場合、ホットメルトフィルムを加熱することで、接着剤を用いなくても、ホットメルトフィルムをエキスパンドメタルに直接的に接着することができる。ホットメルト樹脂組成物は、有機溶剤を含まない。そのため、樹脂フィルムの材質がホットメルト樹脂組成物であることで、環境への負荷を低減して、積層体を製造することができる。
【0033】
ホットメルト樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、及びポリアミド等)、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系エラストマーとポリオレフィンが混合された熱可塑性エラストマー、及び、エチレン系ゴムとポリプロピレンが混合された熱可塑性エラストマー等)等が挙げられる。
【0034】
中でも、ホットメルト樹脂組成物は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、スチレン系エラストマーとポリオレフィンが混合された熱可塑性エラストマー、及び、エチレン系ゴムとポリプロピレンが混合された熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1つ(以下、「特定ポリマー」ともいう)を含むことが好ましい。これにより、ホットメルト樹脂組成物が特定ポリマーを含まない場合よりも、エキスパンドメタルへの接着を強固にできる。
【0035】
ホットメルト樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を含んでもいてもよい。その他の成分としては、粘着付与樹脂、可塑剤、無機充填剤、安定剤、着色剤等が挙げられる。
【0036】
樹脂フィルムは、製品であってもよい。ホットメルトフィルムの一方の主面に剥離フィルムが積層された製品として、アロンメルトPESシリーズ等が挙げられる。
【0037】
(1.2.3)剥離フィルム
剥離フィルムは、樹脂フィルムをエキスパンドメタルに接着させる際に、ゴム板が樹脂フィルムに溶着することを防止する機能を有する。
【0038】
剥離フィルムは、上記機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知の剥離フィルムであればよい。剥離フィルムは、剥離紙であってもよい。剥離紙としてはグラシン紙にシリコーン等の剥離剤を塗布・乾燥したもの等が挙げられ、公知の剥離紙であってもよい。
【0039】
(1.2.4)好ましい態様
樹脂フィルムがホットメルトフィルムである場合、エキスパンドメタルのストランドの板厚は、500μm~8,000μmであり、樹脂フィルムの厚みは、15μm~500μmであることが好ましい。これにより、エキスパンドメタルに溶着された樹脂フィルムは、エキスパンドメタルのストランドを埋め込みにくい。換言すると、エキスパンドメタルに溶着する樹脂フィルムは、ストランドの主面(すなわち、エキスパンドメタルの樹脂フィルムが溶着される主面)に溶着し、ストランドの側面に溶着しにくい。そのため、積層体の樹脂フィルムに音波が入射すると、樹脂フィルムは振動しやすい。その結果、積層体は、膜振動吸音板として好適に用いられる。
【0040】
「エキスパンドメタルのストランドの板厚」とは、メッシュの形状が菱形である場合、ストランド11の板厚T(
図1及び
図2参照)を示す。
【0041】
エキスパンドメタルの板厚に対する樹脂フィルムの厚みの割合(以下、「厚み割合」)は、特に限定されるものではなく、好ましくは0.1%~100%、より好ましくは5%~30%である。厚み割合が上記範囲内であれば、エキスパンドメタルに溶着された樹脂フィルムは、エキスパンドメタルのストランドを埋め込みにくい。その結果、積層体は、膜振動吸音板として好適に用いられる。
【0042】
(1.3)加熱工程
加熱工程では、エキスパンドメタルを加熱する。加熱工程で加熱されるエキスパンドメタルは、載置工程の加熱されたエキスパンドメタルとして用いられる。
【0043】
エキスパンドメタルを加熱する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法であればよい。エキスパンドメタルの加熱温度は、樹脂フィルムの材質に応じて適宜選択される。
【0044】
以下、JISK6863に準拠して測定されるホットメルトフィルムの軟化点を、単に「軟化点」ともいう。ここで「ホットメルトフィルムの軟化点」はホットメルトフィルムを構成する樹脂組成物の軟化点を測定した値を表す。
【0045】
樹脂フィルムがホットメルトフィルムである場合、エキスパンドメタルの加熱温度は、下記の範囲であることが好ましい。エキスパンドメタルの加熱温度は、ホットメルトフィルムを軟化させ、エキスパンドメタルの段差に追従させやすくするという観点から、好ましくは(軟化点-20℃)以上、より好ましくは(軟化点-10℃)以上、さらに好ましくは(軟化点-5℃)以上である。エキスパンドメタルの加熱温度は、エキスパンドメタルのストランド部と接するホットメルトフィルムの溶断を抑制する観点から、好ましくは(軟化点+20℃)以下、より好ましくは(軟化点+15℃)以下、さらに好ましくは(軟化点+10℃)以下である。
【0046】
加熱工程では、接着工程で用いられるゴム板を加熱してもよい。加熱工程で加熱されるゴム板は、載置工程の加熱されたゴム板として用いられる。
【0047】
ゴム板は、エキスパンドメタルとともに加熱されてもよいし、エキスパンドメタルとは別に加熱されてもよい。
【0048】
ゴム板を加熱する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法であればよい。ゴム板の加熱温度は、樹脂フィルムの材質に応じて適宜選択される。
【0049】
樹脂フィルムがホットメルトフィルムである場合、ゴム板の加熱温度は、エキスパンドメタルの加熱温度として例示したものと同様のものが挙げられる。ゴム板の加熱温度は、エキスパンドメタルの加熱温度と同一であってもよいし、ゴム板の加熱温度は、エキスパンドメタルの加熱温度より高い温度であってもよいし、ゴム板の加熱温度は、エキスパンドメタルの加熱温度よりも低い温度であってもよい。中でも、ホットメルトフィルムとエキスパンドメタルの接着性の観点から、ゴム板の加熱温度は、エキスパンドメタルの加熱温度と同一の温度であることが好ましい。
【0050】
(1.4)載置工程
載置工程では、加熱されたエキスパンドメタル上に、樹脂フィルム及び剥離フィルムをこの順に載置して、重ね合わせ体を作製する。
【0051】
エキスパンドメタル上に、樹脂フィルム及び剥離フィルムをこの順に載置する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法であればよい。
【0052】
(1.5)接着工程
接着工程では、ショアA硬度が40~60のゴム板を、前記重ね合わせ体の前記剥離フィルムに押し当てて、前記樹脂フィルムを前記エキスパンドメタルに接着させる。
【0053】
以下、重ね合わせ体と、重ね合わせ体の剥離フィルム上に配置されたゴム板と、をまとめて「ゴム板付き重ね合わせ体」ともいう。
【0054】
(1.5.1)接着方法
重ね合わせ体の剥離フィルムにゴム板を押し当てて、樹脂フィルムをエキスパンドメタルに接着させる方法(以下、「接着方法」ともいう)は、特に限定されるものではなく、樹脂フィルムの種類等に応じて、適宜選択される。接着方法は、例えば、公知の接着剤を用いる方法であってもよい。樹脂フィルムがホットメルトフィルムである場合、接着方法は、加熱プレスであってもよい。
【0055】
以下、加熱プレスについて、
図3を参照して説明する。
図3に、本開示の一実施形態に係るゴム板付き重ね合わせ体の断面図を示す。
図3中、符号10はエキスパンドメタルを示し、符号21は樹脂フィルムを示し、符号22は離型フィルムを示し、符号30は重ね合わせ体を示し、符号40はゴム板を示し、符号50はゴム板付き重ね合わせ体を示す。
【0056】
加熱プレスでは、加熱プレス機を用いる方法であってもよい。加熱プレス機は、上板(図示せず)及び下板(図示せず)を有する。加熱プレスでは、下板上に、ゴム板付き重ね合わせ体50を載置し、上板と下板でゴム板付き重ね合わせ体50を挟んで、熱圧着することで、樹脂フィルム21をエキスパンドメタル10に溶着させる。
【0057】
上板の温度は、樹脂フィルム21の材質に応じて適宜選択される。上板の温度は、接着工程の実施されている間は維持される。樹脂フィルム21がホットメルトフィルムである場合、上板の温度は、下記の範囲であることが好ましい。上板の加熱温度は、ゴム板付き重ね合わせ体50の加熱されたゴム板40の温度低下を抑制する観点から、好ましくは(軟化点-10℃)以上、より好ましくは(軟化点-5℃)以上、さらに好ましくは軟化点以上である。上板の加熱温度は、エキスパンドメタル10のストランド部と接するホットメルトフィルムの溶断を抑制する観点から、好ましくは(軟化点+50℃)以下、より好ましくは(軟化点+30℃)以下、さらに好ましくは(軟化点+20℃)以下である。「フィルムの溶断」とは、上板の加熱温度が高すぎる場合に、エキスパンドメタル10のストランド近傍のホットメルトフィルムが溶融し、エキスパンドメタル10のメッシュからホットメルトフィルムが抜け落ちることを示す。
【0058】
下板の温度は、樹脂フィルム21の材質に応じて適宜選択される。下板の温度は、接着工程の実施されている間は維持される。樹脂フィルム21がホットメルトフィルムである場合、下板の温度は、上板の温度として例示したものと同様のものが挙げられる。下板の温度は、上板の温度と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
プレス圧力は、特に限定されるものではなく、上板の温度、下板の温度及び樹脂フィルム21の材質等に応じて適宜選択される。積層体が膜振動吸音板に用いられる場合、プレス圧力は、ホットメルトフィルムとエキスパンドメタル10の接着性の観点から、好ましくは0.02MPa~0.5MPa、より好ましくは0.03MPa~0.3MPa、さらに好ましくは0.04MPa~0.2MPaである。
【0060】
プレス時間は、特に限定されるものではなく、上板の温度、下板の温度及びプレス圧力等に応じて適宜選択される。積層体が膜振動吸音板に用いられる場合、プレス時間は、ホットメルトフィルムとエキスパンドメタル10の接着性の観点から、好ましくは0.2分~20分、より好ましくは0.3分~10分、さらに好ましくは0.5分~5分である。
【0061】
(1.5.2)ゴム板
ゴム板は、接着工程の実施の際に、樹脂フィルムの形状をエキスパンドメタルのストランドの形状に追従させる。
【0062】
ゴム板のショアA硬度は、40~60である。ゴム板のショアA硬度が40未満であると、加熱時にゴム板が柔らかくなりすぎて、加圧接着時にエキスパンドメタルの段差でゴム表面が損傷するおそれがある。ゴム板のショアA硬度が60超であると、ゴム板がエキスパンドメタルの段差に追従して変形できず、ホットメルトフィルムのエキスパンドメタルのストランドへの接着不良が発生するおそれがある。ゴム板のショアA硬度は、50~60であってもよいし、53~58であってもよい。
【0063】
ゴム板は、平板状であることが好ましい。ゴム板は、積層板のサイズ及びゴム板の材質等に応じて適宜選択され、板厚は、好ましくは1mm~10mm、より好ましくは2mm~5mmである。
【0064】
ゴム板の材質は、ゴム板のショアA硬度を40~60にするものであれば特に限定されるものではなく、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、及びフッ素ゴム等が挙げられる。
【0065】
なかでも、ゴム板は、シリコーンゴムを含むことが好ましく、シリコーンゴムからなることがより好ましい。ゴム板がシリコーンゴムを含むことで、ゴム板がシリコーンゴムを含まない場合よりも、加熱使用時のゴムの耐久性が高まり、生産性に優れる。
【0066】
ゴム板は、加熱されていることが好ましい。これにより、ゴム板が加熱されていない場合よりも、より短いプレス時間で、積層体が得られる。
【0067】
(1.6)剥離工程
剥離工程では、接着重ね合わせ体から離型フィルムを剥離する。
【0068】
接着重ね合わせ体から離型フィルムを剥離する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法であればよい。
【0069】
(2)積層体
本開示の積層体は、エキスパンドメタルと、樹脂フィルムと、を備える。樹脂フィルムは、前記エキスパンドメタルの少なくとも一方の主面に接着されている。前記エキスパンドメタルは、複数のストランドと、複数のボンドと、を有する。複数のボンドの各々は、前記複数のストランドのうちの3つ以上の前記ストランドが接続されている。前記複数のストランド及び前記複数のボンドによって、複数のメッシュが形成されている。前記複数のメッシュの総数に対する接着メッシュの総数の比率(以下、「接着比率」)は、80%以上である。前記接着メッシュは、前記複数のメッシュのうち、1つの前記メッシュを形成する複数のストランドの全てが前記樹脂フィルムに接着しているメッシュを示す。接着メッシュの各ストランドは少なくとも一部において樹脂フィルムと接着している。接着比率は、100%に近いほど好ましい。接着メッシュにおいて、ストランドの長さに対するストランドと樹脂フィルムとの接着部分の合計の長さ(以下、「接着部分の長さ」ともいう)の割合は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。「ストランドの長さ」とは、ストランドが延在する方向において、ストランドの一方側のボンドと接続される部位と、ストランドの他方側のボンドと接続される部位との間の距離を示す。「接着部分の長さ」とは、ストランドが延在する方向において、ストランドと樹脂フィルムとの接着部分の長さを示す。「接着部分の長さ」とは、ストランドが延在する方向において、1つの接着部材が連続的に形成されている場合は、1つの接着部材の長さを示し、複数の接着部材が断続的に形成されている場合は、複数の接着部材の長さの合計を示す。
【0070】
本開示の積層体は、上記の構成を有するので、ストランドに樹脂フィルムが十分に密着している。そのため、本開示の積層体は、膜振動吸音板として好適に用いられる。
【0071】
前記複数のメッシュのうちの25個のメッシュに対する第1接着メッシュの総数の比率(以下、「第1接着比率」ともいう)が、80%以上であってもよい。前記第1接着メッシュは、前記25個のメッシュのうち、1つの前記メッシュを形成する複数のストランドの全てが前記樹脂フィルムに接着しているメッシュを示す。第1接着比率は、100%に近いほど好ましい。
【0072】
本開示の積層体は、シート状物である。本開示の積層体のサイズは、特に限定されるものではなく、積層板の用途に応じて適宜選択される。
【0073】
(2.1)エキスパンドメタル
エキスパンドメタルとしては、積素体の製造方法においてエキスパンドメタルとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0074】
(2.2)樹脂フィルム
樹脂フィルムとしては、積素体の製造方法において樹脂フィルムとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0075】
樹脂フィルムの材質は、ホットメルト樹脂組成物であることが好ましい。これにより、樹脂フィルムの材質がホットメルト樹脂組成物ではない場合よりも、本開示の積層体は、環境への負荷を低減した積層体を製造することができる。
【0076】
ホットメルト樹脂組成物は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、スチレン系エラストマーとポリオレフィンが混合された熱可塑性エラストマー、及び、エチレン系ゴムとポリプロピレンが混合された熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1つを含むことが好ましい。これにより、ホットメルト樹脂組成物が特定ポリマーを含まない場合よりも、エキスパンドメタルへの接着を強固にできる。
【0077】
(2.3)好ましい態様
樹脂フィルムがホットメルトフィルムである場合、エキスパンドメタルのストランドの板厚は、800μm~1,000μmであり、前記樹脂フィルムの厚みが、50μm~300μmであることが好ましい。これにより、エキスパンドメタルに溶着された樹脂フィルムは、エキスパンドメタルのストランドに埋め込られていない。換言すると、エキスパンドメタルに溶着する樹脂フィルムは、ストランドの主面(すなわち、エキスパンドメタルの樹脂フィルムが溶着される主面)に溶着しており、ストランドの側面に溶着しにくい。そのため、積層体の樹脂フィルムに音波が入射すると、樹脂フィルムは振動しやすい。その結果、積層体は、膜振動吸音板として好適に用いられる。
【0078】
エキスパンドメタルの板厚に対する樹脂フィルムの厚みの割合(以下、「厚み割合」)は、特に限定されるものではなく、好ましくは0.1%~100%、より好ましくは5%~30%である。厚み割合が上記範囲内であれば、エキスパンドメタルに溶着された樹脂フィルムは、エキスパンドメタルのストランドを埋め込みにくい。その結果、積層体は、膜振動吸音板として好適に用いられる。
【0079】
(2.4)用途
本開示の積層板の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、膜振動吸音板等が挙げられる。
【実施例0080】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
[1]実施例及び比較例
[1.1]実施例1
[1.1.1]準備工程
エキスパンドメタルとして、エキスパンドメタルの製品(材質:SUS304、メッシュの形状:菱形、メッシュの短目方向中心間距離SW:7mm、メッシュの長目方向中心間距離LW:14mm、ストランドの板厚T:800μm、ストランドの刻み幅W:1mm)を準備した。
【0082】
樹脂フィルム及び剥離フィルムとして、ポリエステル系ホットメルトフィルム「アロンメルト PES-111EE」(東亞合成株式会社製、構成:ホットメルトフィルムと剥離紙との2層構造、JISK6863に準拠して測定されるホットメルトフィルムの軟化点:125℃、ホットメルトフィルムの厚み:100μm)を準備した。
【0083】
以下、ポリエステル系ホットメルトフィルムを「離型フィルム付き樹脂フィルム」ともいう
【0084】
ゴム板として、シリコーンゴム板の製品(材質:シリコーンゴム、厚み:5mm、シリコーンゴムのショアA硬度:55)を準備した。シリコーンゴム板のショアA硬度はJIS K 6251に従い、A型硬度計(高分子計器社製)を用いて測定した。
【0085】
[1.1.2]加熱工程
予め120℃に調整した熱風循環式恒温槽(「HISPEC HT210S」、楠本化成株式会社製)に、エキスパンドメタル及びゴム板を30分以上投入し、加熱した。
【0086】
[1.1.3]載置工程
恒温槽から取り出したエキスパンドメタルの主面上に、剥離フィルム付き樹脂フィルムを載置して、重ね合わせ体を作製した。重ね合わせ体において、剥離フィルム付き樹脂フィルムのホットメルトフィルムは、エキスパンドメタルと接触していた。
【0087】
[1.1.4]接着工程
重ね合わせ体の離型紙上に加熱したシリコーンゴムを載せ、加熱プレス機(株式会社東洋精機製作所製、型番MP-WNL)で加圧して、接着重ね合わせ体を得た。加熱プレス機の上板及び下板の各々の温度は、120℃に調整されていた。エキスパンドメタルについて、重ね合わせ体の剥離フィルムにゴム板を押し当てる時点の温度(以下、「開始温度」ともいう)は、120℃であった。ゴム板の開始温度は、120℃であった。プレス圧力は、0.08MPaであった。プレス時間は、1分間であった。
【0088】
[1.1.5]剥離工程
解圧後、接着重ね合わせ体を、室温(23℃)で16時間以上放置した。次いで、接着重ね合わせ体から剥離フィルムを剥離して、積層体を得た。
【0089】
[1.2]実施例2~実施例5、及び比較例1~比較例3
樹脂フィルムの厚み、ゴム板の有無、エキスパンドメタルの開始温度、ゴム板の開始温度、加熱プレス機の上板の温度、加熱プレス機の下板の温度、プレス圧力及びプレス時間を、表1に示すように変更したことの他は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0090】
実施例4、実施例5及び比較例3では、樹脂フィルム及び剥離フィルムとして、ポリエステル系ホットメルトフィルム「アロンメルト PES-111EE」(東亞合成株式会社製、構成:ホットメルトフィルムと剥離紙との2層構造、JISK6863に準拠して測定されるホットメルトフィルムの軟化点:125℃、ホットメルトフィルムの厚み:300μm)を用いた。
【0091】
[2]接着評価
積層体の接着評価の方法は、下記の通りである。
【0092】
積層体を試料台に固定した。試料台に固定された積層板の樹脂フィルムは天面を向いていた。試料台に固定された積層板のエキスパンドメタルは、下面を向いていた。
SUS棒(材質:SUS)を準備した。SUS棒の先端の形状は、平滑な円状(直径:3mm)であった。1つのメッシュについて、25℃の雰囲気下で、積層板のエキスパンドメタル側から、SUS棒の先端をメッシュ内の樹脂フィルム面に当てて、約100mm/分の速度で押した。この際、樹脂フィルムがストランドから浮いているか否かを目視で観察した。1つのメッシュを形成する4つのストランドの全てから樹脂フィルムが浮いていないメッシュを、1つのメッシュを形成する4つのストランドの全てが樹脂フィルムに接着しているメッシュ(以下、「良品」ともいう)と判断した。積層板のエキスパンドメタルの複数のメッシュの中から24個のメッシュを任意に選択し、24個のメッシュについても、上述した方法と同様にして、良品であるか否かを確認した。
【0093】
25個のメッシュの観察結果を用いて、積層体の接着評価を、下記の評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。許容可能な積層体の接着評価は、「A+」又は「A」である。
【0094】
[2.1]評価基準
「A+」:良品の数が、23個~25個であった。
「A」 :良品の数が、20個~22個であった。
「B」 :良品の数が、10個~19個であった。
「B-」:良品の数が、10個未満であった。
【0095】
接着工程の実施内容から、「A+」では、複数のメッシュの総数に対する接着メッシュの総数の比率は92%~100%とみなすことができる。「A」では、複数のメッシュの総数に対する接着メッシュの総数の比率は80%~88%とみなすことができる。「B」では、複数のメッシュの総数に対する接着メッシュの総数の比率は40%~76%とみなすことができる。「B-」では、複数のメッシュの総数に対する接着メッシュの総数の比率は40%未満とみなすことができる。
【0096】
【0097】
表1中の略字の意味は、下記の通りである。「EM」とは、エキスパンドメタルを示す。「HMF」とは、ホットメルトフィルムを示す。「SUS」とは、ステンレス鋼を示す。「SR」とは、シリコーンゴムを示す。「開始温度」とは、重ね合わせ体の剥離フィルムにゴム板を押し当てる時点の温度を示す。
【0098】
比較例1では、ゴム板が用いられなかった。つまり、比較例1の積層体の製造方法は、接着工程を含んでいなかった。そのため、積層体の接着評価は、「B」又は「B-」であった。これらの結果、比較例1~比較例3の積層体の製造方法は、メッシュに起伏を有するエキスパンドメタルを用いても、ストランドに樹脂フィルムが十分に密着している積層体を製造することができる積層体の製造方法ではないことがわかった。
【0099】
実施例1~実施例3の積層体の製造方法は、載置工程及び接着工程を含んでいた。そのため、積層体の接着評価は、「A+」又は「A-」であった。これらの結果、比較例1~比較例3の積層体の製造方法は、メッシュに起伏を有するエキスパンドメタルを用いても、ストランドに樹脂フィルムが十分に密着している積層体を製造することができる積層体の製造方法ではないことがわかった。
10:エキスパンドメタル、11:ストランド、12:ボンド、21:樹脂フィルム、22:離型シート、30:重ね合わせ体、40:ゴム板、50:ゴム板付き重ね合わせ体