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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011790
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】信号システム及び信号灯器
(51)【国際特許分類】
   B61L 3/06 20060101AFI20250117BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20250117BHJP
   H04B 10/116 20130101ALI20250117BHJP
【FI】
B61L3/06
B61L23/00 Z
H04B10/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114115
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】内田 景太朗
【テーマコード(参考)】
5H161
5K102
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161CC01
5H161DD20
5H161EE04
5H161GG01
5H161MM13
5H161NN10
5H161PP07
5H161PP11
5K102AL23
5K102AL28
5K102PB02
5K102PH23
5K102PH25
(57)【要約】
【課題】 可視光を利用した通信において、高速な切替えをしなくても点滅やちらつきが視認されないあるいは目立たないようにできる可視光通信の信号システムを提供すること。
【解決手段】 信号システム100は、信号機側において、光源光GLの偏光状態を信号内容に応じて変換し、射出光ELとする偏光変換部22と、車上側において、射出光ELの偏光状態に応じた受光に基づき信号内容を読み取る信号読取部12sとを備える。上記信号システム100では、偏光状態の切替えを利用した信号送信が可能となり、この場合、例えば可視光を利用した通信のための信号切替えの動作が遅いものであっても、点滅やちらつきが視認されることがないようにできる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号機側において、光源光の偏光状態を信号内容に応じて変換し、射出光とする偏光変換部と、
車上側において、前記射出光の偏光状態に応じた受光に基づき前記信号内容を読み取る信号読取部と
を備える信号システム。
【請求項2】
前記偏光変換部は、前記射出光について直線偏光の偏光方向を切り替えて射出し、
車上側において、一の方向の直線偏光となっている前記射出光を透過させ、他の方向の直線偏光となっている前記射出光を吸収する車上側偏光板を備える、請求項1に記載の信号システム。
【請求項3】
前記偏光変換部は、前記射出光について偏光状態を円偏光として射出し、
車上側において、円偏光となっている前記射出光を直線偏光に変換する車上側λ/4波長板を備える、請求項1に記載の信号システム。
【請求項4】
前記信号読取部は、前記射出光の受信における明暗情報から前記信号内容を読み取る、請求項1に記載の信号システム。
【請求項5】
前記偏光変換部は、前記射出光の偏光状態を変換する液晶パネルを有する、請求項1に記載の信号システム。
【請求項6】
車上側において外環境について連続画像を撮像するとともに前記射出光を受光する撮像部を備える、請求項1に記載の信号システム。
【請求項7】
前記偏光変換部における光の変換頻度は、前記撮像部のフレームレートよりも小さい、請求項6に記載の信号システム。
【請求項8】
信号機側において、前記射出光として可視光波長帯域の光を射出する光源部を備える、請求項1に記載の信号システム。
【請求項9】
前記信号読取部は、前記信号内容を、自動運転用信号として読み取る、請求項1に記載の信号システム。
【請求項10】
光源光を発する光源部と、
前記光源部からの前記光源光の偏光状態を信号内容に応じて変換し、射出光とする偏光変換部と
を備える信号灯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道設備等に適用可能な信号システム及び信号灯器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、可視光通信に関する技術として、投射装置や照明制御システムに組み込まれるものが知られている(特許文献1、2参照)。特許文献1、2の可視光通信では、可視光波長帯域の光における点滅やちらつきが見えないように高速で切替えを行うことが前提となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-179905号公報
【特許文献2】特開2011-249134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、鉄道用信号等の信号システムにおいて可視光通信を利用したい、という場合、信号灯器が人(運転士等)に視認されることが想定され得るため、上記特許文献1、2の場合のように、点滅やちらつきが見えないようにすべく、高速で切替えを行う態様とする必要があると考えられる。
【0005】
しかしながら、例えば列車の自動運転化や運転補助等を図るべく、車上側にカメラ等を設置して監視を行うに際して併せて可視光通信を行うといった場合に、上記のような高速で切替えを行う可視光通信をそのまま適用することは、必ずしも容易ではないと考えられる。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、可視光を利用した通信において、高速な切替えをしなくても点滅やちらつきが視認されないあるいは目立たないようにできる可視光通信の信号システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための信号システムは、信号機側において、光源光の偏光状態を信号内容に応じて変換し、射出光とする偏光変換部と、車上側において、射出光の偏光状態に応じた受光に基づき信号内容を読み取る信号読取部とを備える。
【0008】
上記信号システムでは、偏光状態の切替えを利用した信号送信が可能となり、この場合、例えば可視光を利用した通信のための信号切替えの動作が遅いものであっても点滅やちらつきが視認されることがないようにできる。
【0009】
本発明の具体的な側面では、偏光変換部は、射出光について直線偏光の偏光方向を切り替えて射出し、車上側において、一の方向の直線偏光となっている射出光を透過させ、他の方向の直線偏光となっている射出光を吸収する車上側偏光板を備える。この場合、偏光変換部における直線偏光の偏光方向を切替えに応じて、車上側偏光板での射出光の透過・吸収により、車上側において、信号内容を読み取ることができる。
【0010】
本発明の別の側面では、偏光変換部は、射出光について偏光状態を円偏光として射出し、車上側において、円偏光となっている射出光を直線偏光に変換する車上側λ/4波長板を備える。この場合、車上側λ/4波長板で射出光の偏光状態を変換することにより、車上側において、信号内容を読み取ることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、信号読取部は、射出光の受信における明暗情報から信号内容を読み取る。この場合、明暗情報からオンオフ信号を読み取ることで、車上側にいて信号内容が把握できる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、偏光変換部は、射出光の偏光状態を変換する液晶パネルを有する。この場合、液晶パネルにより簡易かつ確実に、所望の速さで変更の切替えができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、車上側において外環境について連続画像を撮像するとともに射出光を受光する撮像部を備える。この場合、撮像部において、外環境の情報を取得しつつ、射出光の偏光状態の切替えに基づく信号内容の読取りが可能となる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、偏光変換部における光の変換頻度は、撮像部のフレームレートよりも小さい。この場合、撮像部で取得した情報を利用して、射出光の偏光状態の切替えに基づく信号内容の読取りが的確に行える。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、信号機側において、射出光として可視光波長帯域の光を射出する光源部を備える。この場合、光源部からの光における偏光状態の切替えを利用した信号の送受信が可能となる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、信号読取部は、信号内容を、自動運転用信号として読み取る。この場合、自動運転用信号に関する信号の送受信を的確に行える。
【0017】
上記目的を達成するための信号灯器は、光源光を発する光源部と、光源部からの光源光の偏光状態を信号内容に応じて変換し、射出光とする偏光変換部とを備える。
【0018】
上記信号灯器では、偏光状態の切替えを利用した信号送信が可能となり、この場合、例えば可視光を利用した通信のための信号切替えの動作が遅いものであっても点滅やちらつきが視認されることがないような射出光の形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の信号システム及びこれを構成する信号灯器が組み込まれた鉄道の様子について説明するための概要図である。
図2】信号システム及びこれを構成する信号灯器の一構成例について説明するための概念的なブロック図である。
図3】信号システムの動作の様子について一例を示す概念図である。
図4】(A)は、信号の送信側と受信側との間での送受信の関係について一例を示すタイムチャートであり、(B)は、信号の送信側と受信側との間での送受信の関係について他の一例を示すタイムチャートである。
図5】信号システムの概要について示す概念図である。
図6】第2実施形態の信号システム及びこれを構成する信号灯器の一構成例について説明するための概念的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本実施形態の信号システム及びこれを構成する信号灯器について、一例を説明する。図1は、本実施形態の信号システム100及びこれを構成する信号灯器20について説明するための概要図であり、図1では、列車TRの自動運転に際して行われる車上側と地上側(信号機側)との間での信号通信処理に適用される場合の信号システム100を例示している。信号システム100は、複数種の信号情報の発信等を行うことで、鉄道信号機として機能する。特に、本実施形態では、上記のような構成において、信号灯器20の点灯に際して、可視光波長帯域の光による点灯を制御することで信号表示を行うことに加えて、当該光の偏光状態を信号内容に応じて変換することで、信号内容を発信するものともなっている。
【0021】
なお、ここで、上述した列車TRの自動運転については、種々の態様が想定され、運転士等が存在しない完全な無人運転による自動運転のようなものから運転士が運転操作を行いその一部を自動運転で補助するようなものまで、広く含まれるものとする。
【0022】
以下、本実施形態の信号システム100及びこれを構成する信号灯器20の一構成例について概要を説明する。図1に示すように、信号システム100は、信号表示の内容を含む各種情報について受信する受信装置10と、信号表示の内容等の各種情報を発信する発信装置である信号灯器20と、信号灯器20より発信すべき信号表示の内容を生成する信号生成装置30とを備える。これらのうち、受信装置10は、地上側からの信号を受ける車上側の装置として、列車TRに搭載されている。一方、信号灯器20及び信号生成装置30は、信号機側すなわち地上側から信号を発信するための装置として、線路RLの周辺に設置されている。
【0023】
まず、受信装置10は、カメラ(イメージセンサー)等で構成されて撮像部として機能している。より具体的には、受信装置10は、列車TRに搭載されており、列車TR側すなわち車上側において、撮像部として、列車TRの外環境について連続画像を撮像する。受信装置10では、取得した種々の画像データから、列車TRの自動運転あるいはこれを補助するための種々の情報を取得、解析あるいは抽出することが可能になっている。このため、受信装置10は、列車TRの進行方向を撮像するように、前方に向けて取り付けられている。つまり、受信装置10は、列車TRの進行方向前方に存在する信号灯器20のほか、外環境に関する各種画像の取得が可能となっている。以上に加え、特に、本実施形態では、受信装置10は、信号灯器20から発信される信号情報としての光について、偏光状態に応じた受光に基づき信号内容を読み取ることが可能となっている。この点について詳しくは、後述する。
【0024】
一方、信号灯器20及び信号生成装置30は、列車TRの進行に関する情報を伝える地上側に設けられた装置として、列車TRに対して、より正確には、列車TRに搭載された受信装置10に対して、信号表示を行う。
【0025】
以下、信号灯器20及び信号生成装置30のうち、まず、信号灯器20の構成について説明する。信号灯器20は、鉄道信号機あるいはその一部として機能すべく、可視光による表示灯として、赤色光波長帯域の光を発する赤色信号灯器20rと、黄色光波長帯域の光を発する黄色信号灯器20yと、青色光波長帯域の光を発する青色信号灯器20gとを有し、さらに、これらの点灯や滅灯等についての制御を行う点灯制御部LCを有し、発光の動作をする。すなわち、信号灯器20において、赤色信号灯器20r等が、点灯制御部LCによる駆動動作指令に従って点灯や消灯をすることで、鉄道信号機として、可視光を検知可能な人やセンサー等に対して列車TRの進行に関する情報を伝える。
【0026】
この上で、特に、本実施形態では、上記各色光波長帯域の光について、その偏光状態を、信号灯器20において信号内容に応じて変換したものを、射出光ELとして発している。これに対して、車上側においては、すなわち受信装置10側においては、既述のように、射出光ELの偏光状態に応じた受光に基づき信号内容を読み取る態様となっている。つまり、本実施形態の信号システム100では、偏光状態の切替えを利用した信号送信及び受信が可能となっている。なお、本実施形態では、射出光ELは、一の方向に偏光した直線偏光の状態となって発せられる第1偏光LLpと、他の方向に偏光した直線偏光の状態となって発せられる第2偏光LLsとに切り替えられるものとする。典型的には、第1偏光LLpと第2偏光LLsとでは、直交する方向に偏光している態様とすることが想定され、以下では、そのようなものとして、第1及び第2偏光LLp,LLsを取り扱う。受信装置10は、第1偏光LLpと第2偏光LLsとの差を検知することで、信号内容の読取り、すなわち送信信号の復元を可能としている。
【0027】
信号生成装置30は、信号灯器20から発信させるべき信号の生成を行うための装置であり、上記した信号灯器20において点灯させるべき信号灯器についての情報等の各種情報を、信号灯器20の点灯制御部LCに対して出力する。
【0028】
以下、図2等を参照して、本実施形態の信号システム100及びこれを構成する信号灯器20の一構成例についてより詳細に説明する。
【0029】
まず、信号システム100を構成する各部のうち、信号灯器20について説明する。信号灯器20は、既述のように、各色信号灯器20r,20y,20gと点灯制御部LCとを備え、信号生成装置30で生成された各種情報に従って、信号表示を行うが、この際、特に、射出光ELについての偏光状態の変換を行うものとなっている。このことについて詳しく説明するため、図示の一例では、信号灯器20の構成について、改めて描き直している。具体的には、信号灯器20は、光源光GLを発する光源部21と、光源部21からの光源光GLの偏光状態を信号内容に応じて変換し、射出光ELとする偏光変換部22とで構成されているものとする。ここでは、各色信号灯器20r,20y,20gのうち、青色信号灯器20gについて点灯制御部LCにより制御する場合の構成について示すが、他の色信号灯器20r,20yについても同様の構成とすることが可能であるので、色信号灯器20r,20yについての図示や説明は、省略する。
【0030】
まず、点灯制御部LCに関しては、図示のように、電力の供給について制御する電源基板PBと、光源光GLの発光に関する駆動制御を行う光源制御部21sと、偏光状態の切替えに関する駆動制御を行う偏光制御部22cとで構成されているものとする。これらのうち、光源制御部21sは、光源光GLを発する光源部21を構成するものとし、偏光制御部22cは、偏光状態を変換する偏光変換部22を構成するものとする。なお、光源制御部21sや偏光制御部22cは、信号生成装置30からの指令に従って動作する。
【0031】
信号灯器20のうち、光源部21は、上述した光源制御部21sのほか、複数のLED素子で構成される発光部21eで構成されている。すなわち、光源部21は、光源制御部21sでの駆動制御に従って、発光部21eが点灯や消灯(滅灯)あるいはこれを繰り返す点滅等の動作を行うことで、特定色(ここでの一例では、青色信号)についての光源光GLが発光される。
【0032】
信号灯器20のうち、偏光変換部22は、上述した偏光制御部22cのほか、光源部21の直近後段に配置される信号機側偏光板(偏光子)22aと、信号機側偏光板22aの直近後段に配置される液晶パネル22pとで構成されている。
【0033】
信号機側偏光板22aは、光源部21からの光源光GLの偏光状態を特定方向についての直線偏光に変換する。
【0034】
液晶パネル22pは、偏光制御部22cからの指令に従って動作する。すなわち、液晶パネル22pをオンオフして、信号機側偏光板22aを経た射出光ELとなるべき光源光GLの成分について、直線偏光の状態をそのまま維持して射出する場合と、偏光状態を90度変換した直線偏光の状態にして射出する場合との切替えがなされる。なお、液晶パネル22p用の液晶については、例えばTN方式のものやVA方式、IPS方式等、種々の態様のものが採用可能であり、偏光制御部22cからのタイミングに応じたオンオフ信号に従って、液晶の姿勢を変化させ、直線偏光の光について、偏光方向の変換を行うか否かを切り替える。以上のように、液晶パネル22pは、光源光GLから射出光ELとなるべき成分光の偏光状態を変換する。
【0035】
ここでは、信号機側偏光板22aを経た直線偏光の状態を液晶パネル22pにおいてそのまま維持して射出された射出光ELを第1偏光LLpとし、液晶パネル22pにおいて90度変換した直線偏光の状態にして射出された射出光ELを第2偏光LLsとする。
【0036】
以上のような構成により、偏光変換部22は、偏光制御部22cにおいて決定された送信すべき信号内容に対応して、射出光ELの偏光方向を切り替えて射出する。なお、以上から、信号灯器20全体から見ると、光源光GLを発している光源部21は、射出光ELとなるべき光として可視光波長帯域の光を射出するものとなっている、とも言える。
【0037】
次に、信号システム100を構成する各部のうち、受信装置10について説明する。受信装置10は、信号機側から、すなわち信号灯器20から射出された射出光ELを受光する。この際、射出光ELの偏光状態に応じた受光に基づき信号内容を読み取るものとなっていることで、受信装置10は、信号機側での偏光状態の切替えを利用した信号送信に応じた信号受信が可能になっている。上記のような態様を可能とすべく、受信装置10は、既述のように撮像部として機能するためのカメラ11と、カメラ11で取得した画像データ等の各種情報について処理を行う画像処理部12とを備える。これらに加え、本実施形態では、受信装置10において、カメラ11の前方に車上側偏光板(検光子)13が設けられている。また、画像処理部12には、偏光状態の変換を利用して送信された信号内容を読み取る信号読取部12sが含まれている。
【0038】
車上側偏光板13は、車上側において、一の方向の直線偏光となっている射出光ELを透過させ、他の方向の直線偏光となっている射出光ELを吸収するような向きに配置されている。なお、これについてより詳しい一例は、図3を参照して後述する。
【0039】
受信装置10のうち、カメラ11は、例えばCCDやCMOS等で構成されるイメージセンサー11sを有する。イメージセンサー11sで受光した光の明暗が、電気信号に変換されて、画像データとして画像処理部12に出力される。カメラ11は、所定のフレームレートでの連続画像の撮像が可能となっている。つまり、カメラ11は、列車TRの外環境について、連続撮像を行う。
【0040】
画像処理部12は、例えば各種回路素子等で構成され、カメラ11からの画像データ等について解析処理を行う。より具体的には、例えば、カメラ11中において撮像された線路内に人の進入があるか否かといった危険性の判断や、踏切の周辺における交通状況、特発信号発生の有無といった鉄道運行に影響を与える可能性がある事項が画像中に含まれているか否かを判定するために、画像処理部12は、各種画像解析を行う。なお、さらに、解析結果に基づく判定処理を画像処理部12において行うことができるものとしてもよい。
【0041】
以上のような状況において、本実施形態では、さらに、受信装置10において、車上側偏光板13による直線偏光に関する特定方向に応じた通過の許否と、画像処理部12に設けた信号読取部12sにおける当該直線偏光についての明暗情報に基づく信号読取りとによって、偏光状態の切替えに基づく信号機側(地上側)から車上側への情報伝達が可能となっている。
【0042】
以下、図3等を参照して、上記のような情報伝達についての詳細について説明する。まず図3に示すように、また既述のように、信号機側(地上側)において、光源部21から発せられた光源光GLは、信号機側偏光板22aにおいて特定方向の直線偏光成分のみが透過する。図示の一例では、信号機側偏光板22aを経た直後の直線偏光の偏光方向を0度の方向としている。信号機側偏光板22aを経た直線偏光成分は、液晶パネル22pに入射する。液晶パネル22pは、既述のように、偏光制御部22cからの指令に従って所定のタイミングごとに、偏光方向を0度の方向のままに維持して第1偏光LLpの状態としたり、偏光方向を90度変換して第2偏光LLsの状態としたりする。液晶パネル22pを経た射出光ELは、タイミングごとに、第1偏光LLpか第2偏光LLsのいずれかの状態で信号灯器20から射出される。
【0043】
一方、受信装置10は、信号灯器20からの射出光ELを、その偏光状態に応じて受光する。図示の一例では、受信装置10に設けた車上側偏光板13は、射出光ELが第1偏光LLpである場合には、これを透過させる、すなわちカメラ11側へ向かわせる。一方、車上側偏光板13は、射出光ELが第2偏光LLsである場合には、これを吸収する、すなわち遮断してカメラ11側へ向かわせない。したがって、車上側では、つまりイメージセンサー11sでは、第1偏光LLpのみが検知され、第2偏光LLsは検知されない、ということになり、これに応じて、信号読取部12sでは、射出光ELの受信における明暗情報から信号内容を読み取るものとなる。すなわち、第1偏光LLpの受光がイメージセンサー11sにおいて検知されている間は、明情報が取得されたものとして取り扱われ、第2偏光LLsが受信装置10に届いている間は、車上側偏光板13において遮断され、暗情報として取り扱われるものとなる。
【0044】
なお、この場合、例えば第1偏光LLpでの射出状態を「1」(オン信号)とし、第2偏光LLsでの射出状態を「0」(オフ信号)とし、これを所定のタイミングで順次送信していくことで、「1」と「0」とを組み合わせた信号送信が可能となる。つまり、「1」と「0」との配列が、信号内容と1対1で対応するようにあらかじめ定められている。また、読み取るべき対象としての信号内容については、種々のものが想定され、例えば点灯している信号の色に対応する情報(ここでの一例の場合、信号表示が「青」である旨の情報)とする場合のほか、これに代えてあるいはこれに加えて、列車TRが現在停車している番線についての情報等、列車運行に関する種々の情報を信号内容に含めることが可能である。
【0045】
以下、図4を参照して、上記のような明暗情報に基づく信号送信についての本実施形態における取り扱われ方について、一例を説明する。なお、図4(A)及び図4(B)においては、いずれも、横軸を時刻としている。
【0046】
まず、図4(A)において、チャートαは、信号の送信側である信号機側から射出される射出光ELについての偏光状態の切替えタイミングの様子を示している。すなわち、所定のタイミングで第1偏光LLp(1:オン信号)と、第2偏光LLs(0:オフ信号)とを組み合わせることができる。なお、図示の一例では、1つの信号の送信時間の長さを長さTとしている。すなわち、長さTは、1つのオン信号又はオフ信号を送るための時間的長さを示すものであり、偏光変換部22における光(光の偏光状態)の変換頻度に相当する。チャートαでは、「1,1,0,1,0…」と続いている信号内容を送信する場合を示している。この場合、信号の受信側すなわち車上側では、チャートβに示すように、車上側偏光板13により、第1偏光LLp(1:オン信号)を透過させる一方、第2偏光LLs(0:オフ信号)は遮断(吸収)される。このため、図示のように、イメージセンサー11sでは、第1偏光LLp(1:オン信号)に相当する期間では、受光検知がなされて、信号読取部12sにおいて明情報として把握される。一方、第2偏光LLs(0:オフ信号)に相当する期間では、受光検知がなされず、信号読取部12sにおいて暗情報として把握される。以上のようにして、信号読取部12sは、射出光PLの受信における明暗情報から、信号機側からの信号内容を読み取る。なお、ここでの一例の場合、信号読取部12sは、信号内容として、列車TRの自動運転用信号に関する情報を読み取るものとなる。
【0047】
ここで、図示の一例では、偏光変換部22における光の変換頻度は、撮像部である受信装置10のカメラ11におけるフレームレートよりも小さいものとなっている。より具体的には、図示の一例では、フレームレートに関して、1つのフレーム分に相当する時間の長さを長さtとしており、この長さtが、信号側における送信時間についての単位長さ(射出光PLの変換頻度)を示す長さTよりも小さくなっている。言い換えると、カメラ11におけるフレームレートが偏光変換部22における光の変換頻度よりも大きくなっている。なお、図示の一例では、カメラ11のフレームレートが光の変換頻度の3倍となっている、すなわちT:t=3:1となっている場合について示している。上記のような場合において、図4(A)は、信号機側の偏光状態の切替えのタイミングと車上側のカメラ11におけるフレーム間の区切りのタイミングとが揃っている場合について示している。この場合、T:t=3:1となっていることから、イメージセンサー11s側で3フレーム分が連続して「明」となると、1つの第1偏光LLpに相当するオン信号(「1」)を検出するものとなり、逆に、イメージセンサー11s側で3フレーム分が連続して「暗」となると、1つのオフ信号(「0」)を検知したことに相当するものとなる。以上のような検知に基づいて、車上側において、信号機側からの信号内容が復元されるものとなる。
【0048】
これに対して、図4(B)は、信号機側の偏光状態の切替えのタイミングと車上側のカメラ11におけるフレーム間の区切りのタイミングとが揃っていない場合について示している。なお、ここでも、T:t=3:1となっていることを前提とする。この場合、チャートγに示すように、イメージセンサー11sで取得される画像データの1フレーム中に、信号機側で光の変換(光の偏光状態の切替え)が生じることがある。すなわち、1フレーム中において、車上側偏光板13による射出光EL(第1偏光LLp)の透過と射出光EL(第2偏光LLs)の吸収(遮断)とが切り替わり、イメージセンサー11sでの明暗情報としてはやや暗いもの(図中では、明暗の度合いを「中」で表示)となる。なお、この場合、例えば図中において丸で囲って示すように、明暗情報が「中」となった後の明暗情報の結果を参照すること等により、オン信号(「1」)とオフ信号(「0」)との検知について判定することができる。具体的には、上記態様の場合、T:t=3:1となっていることから、例えば「暗」から「明」に切り替わる場合は、「中」の後、少なくとも2回以上「明」が続くことになり、「明」から「暗」に切り替わる場合は、その逆の現象が生じることになる。
【0049】
以上の態様は、一例であり、車上側のフレームレートと信号機側の偏光状態の切替え頻度とは、3:1に限らず、種々の態様にできる。ただし、連続撮像を行うカメラ11として、一般的なものを使用することを想定した場合、フレームレートは、例えば30fps程度のもの等が考えられ、仮に30fps(すなわち1フレームの画像が1/30秒分)として上記態様のようにT:t=3:1であるものとすると、偏光の切替えは、1/10秒程度とすることになる。これは、例えば点滅が視認されることやちらつき防止の観点からキロヘルツオーダーでの高速切替えを要すると想定される可視光通信と比較して、非常に遅いものであると言える。逆に、仮に1/10秒程度の遅さで可視光の点滅による可視光通信を行ったとすると、人間には、点滅やちらつきが視認されてしまうことになる。これに対して、本実施形態では、点滅による可視光通信ではなく、偏光状態の切替えを利用していることで、点滅やちらつきが視認されてしまうといった事態が生じないものとなっている。
【0050】
以下、図5として示す概念図を参照して、信号灯器20を含む信号システム100の概要について説明する。
【0051】
図示のように、また既述のように、本実施形態の信号システム100は、車上側を構成する受信装置10と、信号機側を構成する信号灯器20とを有している。このうち、信号灯器20では、偏光変換部22において、光源光GLの偏光状態を、送信すべき信号内容に応じて変換し、射出光ELとしている。この際、図示のように、送信すべき信号内容に応じて、射出光ELの偏光状態を切り替えて射出している。例えば一の信号内容1に対応する射出光ELの偏光状態を偏光状態xとし、信号内容1とは内容が異なる他の一の信号内容2に対応する射出光ELの偏光状態を偏光状態y(偏光状態y≠偏光状態x)として、それぞれ射出する。これに対して、車上側では、例えば車上側偏光板13を介してカメラ11(イメージセンサー11s)で受光した射出光ELの成分のうち偏光状態に基づく情報を、画像処理部12の信号読取部12sにおいて解析し、当該情報を読み取る。すなわち、信号読取部12sは、偏光状態xに対応する信号内容1や、偏光状態yに対応する信号内容2を、車上側において復元する。
【0052】
以上のように、本実施形態の信号システム100は、信号機側において、光源光GLの偏光状態を信号内容に応じて変換し(例えば信号内容1,2に応じて偏光状態x,yに変換する)、射出光ELとする偏光変換部22と、車上側において、射出光ELの偏光状態に応じた受光に基づき信号内容を読み取る信号読取部12sとを備える。上記信号システム100では、偏光状態の切替えを利用した信号送信が可能となり、この場合、例えば可視光を利用した通信のための信号切替えの動作が遅いものであっても、点滅やちらつきが視認されることがないようにできる。
【0053】
〔第2実施形態〕
以下、図6として示すブロック図を参照して、第2実施形態の信号システム及びこれを構成する信号灯器の一構成例について説明する。なお、図6は、図3に対応する図であり、第1実施形態の信号システム100と同様の機能や性質を有するものについては、同符号で示しており、必要に応じて図3において説明した事項を援用するものとし、詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態の信号システム200では、信号機側すなわち信号灯器220において、射出光ELとして、直線偏光ではなく、円偏光の光を射出するものとなっている点において、第1実施形態の信号システム100と異なっている。また、これに応じて、受信装置210においても、円偏光の特性に応じて、透過と吸収(遮断)とを行っている。
【0055】
上記のような態様とすべく、信号システム200のうち、信号灯器220の偏光変換部222では、液晶パネル22pの後段に信号機側λ/4波長板222rが設けられている。これにより、射出光PLの偏光状態を、異なる性質の円偏光として射出させることができる。なお、図示の一例では、信号機側λ/4波長板222rにおいて、0度の直線偏光で入射した第1偏光LLpを右円偏光として射出し、90度の直線偏光で入射した第2偏光LLsを左円偏光として射出している場合が、表現されている。以上のように、本実施形態では、偏光変換部222は、射出光ELについて偏光状態を円偏光として射出するものとなっている。
【0056】
一方、信号システム200のうち、受信装置210では、車上側偏光板13の前段に、車上側λ/4波長板214が設けられている。車上側λ/4波長板214は、円偏光となっている射出光ELを直線偏光に変換する。より具体的には、図示において、車上側λ/4波長板214は、受信装置210に入射する信号灯器220からの射出光PLの成分について、右円偏光となっている状態で入射した第1偏光LLpの成分を90度の直線偏光として射出し、左円偏光となっている状態で入射した第2偏光LLsの成分を0度の直線偏光として射出している。なお、この場合、車上側偏光板13において、第1偏光LLpが吸収(遮断)され、第2偏光LLsが透過する態様となる。
【0057】
なお、上記では、円偏光に変換する場合について説明したが、円偏光とする場合に限らず、楕円偏光とする態様も考えられる。
【0058】
本実施形態においても、偏光状態の切替えを利用した信号送信が可能となり、この場合、例えば可視光を利用した通信のための信号切替えの動作が遅いものであっても、点滅やちらつきが視認されることがないようにできる。特に、本実施形態では、信号機側から射出される際の射出光ELについて、その偏光状態を直線偏光以外の態様とすることができる。
【0059】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0060】
まず、上記では、LED光源や偏光板、液晶パネル等により偏光やその変換(切替)を行う態様としているが、所望の偏光切替が可能であれば、上記態様に限らず、種々の態様を採用することができる。
【0061】
例えば、光源については、発光部21eとして複数のLED素子を採用していることに応じて光源部21の直近後段に信号機側偏光板(偏光子)22aを配置する構成としているが、例えば光源において、偏光した光を発するものを採用し、偏光子を設けない構成とすることも考えられる。
【0062】
また、上記では、例えば発光部21eからの光源光GL全体について偏光状態の切替えを一様に行う態様とし、受光側で偏光状態のオンオフを検知するすなわち0か1かを検知する構成としているが、このような態様に限らず、例えば受信側で受け取る画像としての情報との組合せで各種信号内容を捉える等、より複雑な情報収集を行う態様としてもよい。
【0063】
また、発信側における偏光状態の切替えパターンや、受取側における検知態様についても、種々のものとすることができる。あるいは、発信側における切替えの頻度や、受取側におけるフレームレートについても、使用するカメラ11の性能等に応じて、種々変更可能である。また、フレームレートに対するシャッタースピードについても種々のものとすることが考えられるが、例えば2倍分の1程度(上記一例のようにフレームレートが30fpsである場合、1/60秒)とすることで、1フレーム分に相当する時間の長さtに対する露光時間を半分程度(t/2程度)とする態様が一例として想定される。
【0064】
また、上記では、一例として、本発明が鉄道に利用される場合について、より具体的には、信号読取部12sにおいて、信号内容を、自動運転用信号として読み取る態様となっている場合について説明したが、これに限らず、例えば交通信号用として(自動車用の信号灯器において)、本発明の信号システムあるいは信号灯器を採用することも考えられる。なお、この場合、例えば第2実施形態において説明したように、信号灯器から射出される射出光を円偏光等とすることで、例えばサングラスを装着した運転手にも通常の信号機としての機能を維持できるようにすることができる。
【0065】
また、取り扱いの対象となる複数種の信号情報についても、種々のものが想定され、鉄道であれば、上記した例以外にも、例えば分岐器における方向転換の指示等について、信号システム100を適用して、信号の受け渡しを行うようにしてもよい。また、これらの鉄道運行に関する各種信号を、1つの信号灯器20において集約した構成とすることもできる。これにより、鉄道における信号システム全体を、コンパクトで簡易な構成とすることが可能となる。
【0066】
また、上記では、鉄道の列車の運行に際して信号システム100を適用するものとしているが、これに限らず、例えば、軌道(新設軌道、併用軌道)を走行する路面電車、専用道路を走行するバスについて、信号システム100を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
10,210…受信装置、11…カメラ(撮像部)、11s…イメージセンサー、12…画像処理部、12s…信号読取部、13…車上側偏光板、20,220…信号灯器、20g…青色信号灯器、20r…赤色信号灯器、20y…黄色信号灯器、21…光源部、21e…発光部、21s…光源制御部、22…偏光変換部、22a…信号機側偏光板、22c…偏光制御部、22p…液晶パネル、30…信号生成装置、100,200…信号システム、214…車上側λ/4波長板、222…偏光変換部、222r…信号機側λ/4波長板、EL…射出光、GL…光源光、LC…点灯制御部、PB…電源基板、PL…射出光、RL…線路、TR…列車、α,β,γ…チャート
図1
図2
図3
図4
図5
図6