(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011794
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】雌型コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/296 20210101AFI20250117BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20250117BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20250117BHJP
H01R 13/405 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
H01M50/296
H01M50/244 A
H01R13/11 F
H01R13/11 H
H01R13/405
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114127
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 悠太
【テーマコード(参考)】
5E087
5H040
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF06
5E087GG01
5E087HH01
5E087MM02
5E087MM08
5E087QQ03
5E087RR25
5H040AA22
5H040AY08
5H040DD06
5H040NN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の異なる電気装置のそれぞれ異なる雄型端子の仕様に対応可能な電池パック用雌型コネクタを提供する。
【解決手段】電池パック用雌型コネクタ15には、当該電池パック用雌型コネクタ15が突出する第1方向Aから電池パック用雌型コネクタ15に嵌合する仕様の、第1方向Aと対向して突出する雄型端子を嵌合位置に誘導する第1の誘導口E1、および、第1方向Aに直交する第2方向から電池パック用雌型コネクタ15に嵌合する仕様の、第1方向Aと対向して突出する雄型端子を嵌合位置に誘導する第2の誘導口が、対向する雌型端子対である左側端子15bおよび右側端子15d間に設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池が直列および/または並列に接続されて構成される二次電池モジュールと電気的に接続され、第1の電気装置の雄型端子と第2の電気装置の雄型端子とに個別に着脱される電池パック用雌型コネクタであって、
当該電池パック用雌型コネクタが突出する方向の第1方向に移動するときに、前記第1の電気装置の雄型端子および前記第2の電気装置の雄型端子のうちの、前記第1方向と対向して突出する少なくとも一方の雄型端子を当該電池パック用雌型コネクタとの嵌合位置に誘導する、前記第1方向における当該一方の雄型端子の受け入れ側に向かって広がって開口する第1の誘導口と、
前記第1方向に直交する第2方向に移動するときに、前記第1の電気装置の雄型端子および前記第2の電気装置の雄型端子のうちの、前記第1方向と対向して突出する少なくとも他方の雄型端子を前記嵌合位置に誘導する、前記第2方向における当該他方の雄型端子の受け入れ側に向かって広がって開口する第2の誘導口と
が対向する雌型端子対の間に形成されていることを特徴とする電池パック用雌型コネクタ。
【請求項2】
前記雌型端子対を構成する各端子は、前記第1方向および前記第2方向のそれぞれに延在し、頂上が互いに近接する突出部を前記各端子間にそれぞれ有し、
前記突出部は、前記第1方向に延在する部分に、前記一方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる第1傾斜面を有すると共に、前記第2方向に延在する部分に、前記他方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる第2傾斜面を有する形状に形成され、
前記第1の誘導口は、前記突出部の、前記一方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる各前記第1傾斜面に挟まれる部分に形成され、
前記第2の誘導口は、前記突出部の、前記他方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる各前記第2傾斜面に挟まれる部分に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項3】
前記雌型端子対を構成する各端子は、前記第1方向と前記第2方向の中間の同じ方向に延在し、延在する終端側に向かって互いに近接すると共に、最も近接する箇所から、延在する終端の周縁が、前記第1方向において、前記一方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反すると共に、前記第2方向において、前記他方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反する形状に反り返って形成され、
前記第1の誘導口は、前記一方の雄型端子の受け入れ側に向かって前記終端の周縁が離反する反り返った部分に形成され、
前記第2の誘導口は、前記他方の雄型端子の受け入れ側に向かって前記終端の周縁が離反する反り返った部分に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項4】
前記雌型端子対は、前記嵌合位置において、前記第1の電気装置の雄型端子および前記第2の電気装置の雄型端子と面で嵌合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項5】
前記雌型端子対は、前記雌型端子対を構成する各端子間における、前記第1方向および前記第2方向を含む面に関して対称に配置され、
前記第1の電気装置の雄型端子および前記第2の電気装置の雄型端子と嵌合する嵌合面が前記面に関して対称に配置される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項6】
前記雌型端子対を構成する各端子は、対向面の中央部において前記突出部の前記頂上が互いに近接し、前記中央部から離れるにしたがって次第に相互間の距離が徐々に広がる形状に前記突出部の前記第1傾斜面および前記第2傾斜面が形成され、前記嵌合面を前記中央部に有することを特徴とする請求項2を引用する請求項5に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項7】
前記嵌合面の外周のうち、前記一方の雄型端子との前記第1方向における嵌合の際に、前記一方の雄型端子の端部に接触する外周部分の第2方向長さと、前記他方の雄型端子との前記第2方向における嵌合の際に前記他方の雄型端子の端部に接触する外周部分の第1方向長さとが実質的に等しいことを特徴とする請求項6に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項8】
前記雌型端子対を構成する各端子は、前記最も近接する箇所に向かって次第に相互間の距離が徐々に近接し、前記終端の前記第1方向における周縁が、前記一方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反する距離が徐々に大きくなり、前記終端の前記第2方向における周縁が、前記他方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反する距離が徐々に大きくなる形状に形成され、前記嵌合面を前記最も近接する箇所に有することを特徴とする請求項3を引用する請求項5に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項9】
前記第1の電気装置は、当該電池パック用雌型コネクタを介して前記二次電池モジュールから電力が供給される負荷装置であり、
前記第2の電気装置は、当該電池パック用雌型コネクタを介して前記二次電池モジュールを充電する充電器である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項10】
前記第1の誘導口は、前記負荷装置および前記充電器の各雄型端子を前記嵌合位置に誘導することを特徴とする請求項9に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項11】
前記第1の誘導口は、前記負荷装置の雄型端子を前記嵌合位置に誘導し、
前記第2の誘導口は、前記充電器の雄型端子を前記嵌合位置に誘導する
ことを特徴とする請求項9に記載の電池パック用雌型コネクタ。
【請求項12】
第1の電気装置の雄型端子と第2の電気装置の雄型端子とに個別に着脱される雌型コネクタであって、
当該雌型コネクタが突出する方向の第1方向に移動するときに、前記第1の電気装置の雄型端子および前記第2の電気装置の雄型端子のうちの、前記第1方向と対向して突出する少なくとも一方の雄型端子を当該雌型コネクタとの嵌合位置に誘導する、前記第1方向における当該一方の雄型端子の受け入れ側に向かって広がって開口する第1の誘導口と、
前記第1方向に直交する第2方向に移動するときに、前記第1の電気装置の雄型端子および前記第2の電気装置の雄型端子のうちの、前記第1方向と対向して突出する少なくとも他方の雄型端子を前記嵌合位置に誘導する、前記第2方向における当該他方の雄型端子の受け入れ側に向かって広がって開口する第2の誘導口と
が対向する雌型端子対の間に形成されていることを特徴とする雌型コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型コネクタに関し、特に、第1の電気装置の雄型端子と第2の電気装置の雄型端子とに個別に着脱される電池パック用雌型コネクタ等の雌型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の雌型コネクタとして、例えば、特許文献1には、電動工具本体に着脱される電池パックの雌型コネクタが開示されている。同文献の
図41(1)に示されるように、電池パック1100が36V出力の電動工具本体1030に取り付けられるときは、正極入力端子1052と端子部1059bがそれぞれ電池パック1100の上側正極端子1162と下側正極端子1172に嵌合される。このとき、正極入力端子1052が上側正極端子1162の嵌合部間を押し広げるようにして、上側正極端子1162の腕部1162aと1162bの間に圧入される。さらに、ショートバー1059の端子部1059bが、下側正極端子1172の腕部1172aと1172bの間を押し広げるようにして、圧入される。
【0003】
また、同文献の
図41(2)に示されるように、電池パック1100が18V出力の電動工具本体1001に取り付けられるときは、正極入力端子1022は、電池パック1100の上側正極端子1162と下側正極端子1172の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、正極入力端子1022の上側の一部の領域が上側正極端子1162と接触し、下側の領域の一部が下側正極端子1172と接触する。
【0004】
このような電池パック1100の雌型の上側正極端子1162および下側正極端子1172、並びに、同様な雌型の上側負極端子1167および下側負極端子1177によれば、36V出力の電動工具本体1030と18V出力の電動工具本体1001の双方に同じ電池パック1100を装着することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の電池パック用雌型コネクタは、装着する相手となる電気装置の雄型端子に関する、雌型端子の受け入れ方向についての仕様が、第1の電気装置と第2の電気装置とで異なる仕様の場合、これら各電気装置と着脱することが出来ない。
【0007】
この点に鑑みて、本発明の目的は、複数の異なる電気装置のそれぞれ異なる雄型端子の仕様に対応可能な電池パック用雌型コネクタ等の雌型コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明は、
二次電池が直列および/または並列に接続されて構成される二次電池モジュールと電気的に接続され、第1の電気装置の雄型端子と第2の電気装置の雄型端子とに個別に着脱される電池パック用雌型コネクタであって、
当該電池パック用雌型コネクタが突出する方向の第1方向に移動するときに、第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子のうちの、第1方向と対向して突出する少なくとも一方の雄型端子を当該電池パック用雌型コネクタとの嵌合位置に誘導する、第1方向における当該一方の雄型端子の受け入れ側に向かって広がって開口する第1の誘導口と、
第1方向に直交する第2方向に移動するときに、第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子のうちの、第1方向と対向して突出する少なくとも他方の雄型端子を嵌合位置に誘導する、第2方向における当該他方の雄型端子の受け入れ側に向かって広がって開口する第2の誘導口と
が対向する雌型端子対の間に形成されていることを特徴とする電池パック用雌型コネクタを構成した。
【0009】
本構成によれば、電池パック用雌型コネクタには、当該電池パック用雌型コネクタが突出する第1方向から電池パック用雌型コネクタに嵌合する仕様の、第1方向と対向して突出する雄型端子を嵌合位置に誘導する第1の誘導口、および、第1方向に直交する第2方向から電池パック用雌型コネクタに嵌合する仕様の、第1方向と対向して突出する雄型端子を嵌合位置に誘導する第2の誘導口が、対向する雌型端子対の間に設けられる。
【0010】
したがって、第1方向と対向して突出する第1の電気装置および第2の電気装置の各雄型端子が、電池パック用雌型コネクタの突出する方向から電池パック用雌型コネクタに嵌合する仕様か、電池パック用雌型コネクタの突出する方向と直交する方向から電池パック用雌型コネクタに嵌合する仕様かを問わず、その仕様に合った一方の第1または第2の誘導口によって、第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子のいずれにも、電池パック用雌型コネクタを個別に嵌合させることが可能になる。このため、電池パック用雌型コネクタは、複数の異なる電気装置のそれぞれ異なる嵌合仕様の雄型端子と個別に着脱することが出来、また、各電気装置の雄型端子の嵌合仕様の変更にも対応することが可能になる。
【0011】
また、本発明は、
雌型端子対を構成する各端子が、第1方向および第2方向のそれぞれに延在し、頂上が互いに近接する突出部を各端子間にそれぞれ有し、
突出部が、第1方向に延在する部分に、一方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる第1傾斜面を有すると共に、第2方向に延在する部分に、他方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる第2傾斜面を有する形状に形成され、
第1の誘導口が、突出部の、一方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる各第1傾斜面に挟まれる部分に形成され、
第2の誘導口が、突出部の、他方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる各第2傾斜面に挟まれる部分に形成される
ることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、互いに近接する頂上、一方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる第1傾斜面、および、他方の雄型端子の受け入れ側に向かって高さが低くなる第2傾斜面を有する突出部を、雌型端子対を構成する各端子にそれぞれ設けることで、第1の誘導口および第2の誘導口を、電池パック用雌型コネクタに部材を増やすことなく雌型端子対に単に加工を加えることで、簡単に形成することが出来る。
【0013】
また、本発明は、
雌型端子対を構成する各端子が、第1方向と第2方向の中間の同じ方向に延在し、延在する終端側に向かって互いに近接すると共に、最も近接する箇所から、延在する終端の周縁が、第1方向において、一方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反すると共に、第2方向において、他方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反する形状に反り返って形成され、
第1の誘導口が、一方の雄型端子の受け入れ側に向かって終端の周縁が離反する反り返った部分に形成され、
第2の誘導口が、他方の雄型端子の受け入れ側に向かって終端の周縁が離反する反り返った部分に形成される
ことを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、第1方向と第2方向の中間の同じ方向に延在する、雌型端子対を構成する各端子を、延在する終端側に向かって互いに近接させ、最も近接する箇所から、延在する終端の周縁を、第1方向において、一方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反させると共に、第2方向において、他方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反させる形状に反り返させることで、第1の誘導口および第2の誘導口を、電池パック用雌型コネクタに部材を増やすことなく単に加工を加えることで、簡単に形成することが出来る。
【0015】
また、本発明は、雌型端子対が、嵌合位置において、第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子と面で嵌合することを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、雌型端子対が、第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子と点ではなく面で嵌合するので、当該雌型端子対とこれら雄型端子との間に流すことの出来る電流容量を確保することが可能になる。
【0017】
また、本発明は、
雌型端子対が、雌型端子対を構成する各端子間における、第1方向および第2方向を含む面に関して対称に配置され、
第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子と嵌合する嵌合面が前記面に関して対称に配置される
ることを特徴とする。
【0018】
本構成によれば、雌型端子対、並びに、第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子と嵌合する嵌合面が、第1方向および第2方向を含む面に関して対称に配置されるので、当該電池パック用雌型コネクタ内で嵌合面の配置可能な領域を最大にすることが出来る。したがって、嵌合面を配置する位置を、この配置可能な領域の中で、各雄型端子に雌型端子対が着脱される際、雌型端子対が変形する要因や、雌型端子対の耐久性が低下する要因を最小にする位置に選択することが出来る。嵌合面のこの配置位置では、雄型端子から嵌合面を介して雌型端子対に加わる応力が、雌型端子対を構成する各端子に均等に印加され、一方の端子の特定の箇所に過大な応力が偏ってかからなくなるので、雌型端子対と各雄型端子との嵌合および嵌合解除が繰り返し行われても、雌型端子対が変形したり、電池パック用雌型コネクタの耐久性が低下するのを低減することが出来る。
【0019】
また、本発明は、雌型端子対を構成する各端子が、第1方向および第2方向のそれぞれに延在する電池パック用雌型コネクタにおいて、雌型端子対を構成する各端子が、対向面の中央部において突出部の頂上が互いに近接し、中央部から離れるにしたがって次第に相互間の距離が徐々に広がる形状に突出部の第1傾斜面および第2傾斜面が形成され、嵌合面を中央部に有することを特徴とする。
【0020】
本構成によれば、雄型端子と嵌合する嵌合面が形成される突出部の頂上は、端子の面を徐々に押し出して傾斜面の傾斜を順につける加工を経ることで、対向面の中央部における所望の位置に正確に配置される。したがって、各端子に設けられる突出部の頂上間の距離を所望の距離に設定して、各端子間に挿入される雄型端子との嵌合強度を所望の強度に正確に設定することが可能になる。
【0021】
また、本発明は、上記の電池パック用雌型コネクタにおいて、
嵌合面の外周のうち、一方の雄型端子との第1方向における嵌合の際に、一方の雄型端子の端部に接触する外周部分の第2方向長さと、他方の雄型端子との第2方向における嵌合の際に、他方の雄型端子の端部に接触する外周部分の第1方向長さとが実質的に等しいことを特徴とする。
【0022】
本構成によれば、雌型端子対が、第1方向において、一方の雄型端子と嵌合する際にその雄型端子から印加される力と、第2方向において、他方の雄型端子と嵌合する際にその雄型端子から印加される力とは、実質的に等しくなる。したがって、雌型端子対を構成する各端子に第1方向および第2方向から印加される力は各方向において実質的に等しくなる。したがって、嵌合面に一方の方向から過大な力が偏ってかからなくなる。このため、雌型端子対と各雄型端子との嵌合および嵌合解除が繰り返し行われても、電池パック用雌型コネクタの変形に係る耐久性が低下するのを低減することが出来る。
【0023】
また、本発明は、雌型端子対を構成する各端子が、第1方向と第2方向の中間の同じ方向に延在する電池パック用雌型コネクタにおいて、雌型端子対を構成する各端子が、最も近接する箇所に向かって次第に相互間の距離が徐々に近接し、終端の第1方向における周縁が、一方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反する距離が徐々に大きくなり、終端の第2方向における周縁が、他方の雄型端子の受け入れ側に向かって互いに離反する距離が徐々に大きくなる形状に形成され、嵌合面を最も近接する箇所に有することを特徴とする。
【0024】
本構成によれば、各端子が徐々に曲げられる工程を経て加工されることで、雄型端子と嵌合する嵌合面は、各端子が最も近接する箇所における所望の位置に正確に配置される。したがって、各端子が最も近接する箇所における端子間の距離を所望の距離に設定して、各端子間に挿入される雄型端子との嵌合強度を所望の強度に正確に設定することが可能になる。
【0025】
また、本発明は、
第1の電気装置が、当該電池パック用雌型コネクタを介して二次電池モジュールから電力が供給される負荷装置であり、
第2の電気装置が、当該電池パック用雌型コネクタを介して二次電池モジュールを充電する充電器である
ことを特徴とする。
【0026】
本構成によれば、例えば、雄型端子の仕様が、当該電池パック用雌型コネクタの突出する第1方向と直交する第2方向から雌型端子と嵌合する仕様であった負荷装置が、当該電池パック用雌型コネクタの突出する第1方向から雌型端子と嵌合する仕様に変更された場合において、その仕様変更に対応出来る電池パック用雌型コネクタを提供することが出来る。
【0027】
また、本発明は、第1の誘導口が、負荷装置および充電器の各雄型端子を嵌合位置に誘導することを特徴とする。
【0028】
本構成によれば、負荷装置および充電器の双方の雄型端子は、第1の誘導口により当該電池パック用雌型コネクタとの嵌合位置に誘導されて、当該電池パック用雌型コネクタと個別に嵌合する。
【0029】
また、本発明は、
第1の誘導口が、負荷装置の雄型端子を嵌合位置に誘導し、
第2の誘導口が、充電器の雄型端子を嵌合位置に誘導する
ことを特徴とする。
【0030】
本構成によれば、負荷装置の雄型端子は、第1の誘導口により当該電池パック用雌型コネクタの嵌合位置に誘導され、充電器の雄型端子は、第2の誘導口により当該電池パック用雌型コネクタの嵌合位置に誘導されて、それぞれ当該電池パック用雌型コネクタと個別に嵌合する。
【0031】
また、本発明は、
第1の電気装置の雄型端子と第2の電気装置の雄型端子とに個別に着脱される雌型コネクタであって、
当該雌型コネクタが突出する方向の第1方向に移動するときに、第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子のうちの、第1方向と対向して突出する少なくとも一方の雄型端子を当該雌型コネクタとの嵌合位置に誘導する、第1方向における当該一方の雄型端子の受け入れ側に向かって広がって開口する第1の誘導口と、
第1方向に直交する第2方向に移動するときに、第1の電気装置の雄型端子および第2の電気装置の雄型端子のうちの、第1方向と対向して突出する少なくとも他方の雄型端子を嵌合位置に誘導する、第2方向における当該他方の雄型端子の受け入れ側に向かって広がって開口する第2の誘導口と
が対向する雌型端子対の間に形成されていることを特徴とする雌型コネクタを構成した。
【0032】
本構成によれば、雌型コネクタは、複数の異なる電気装置のそれぞれ異なる嵌合仕様の雄型端子と個別に着脱することが出来、また、各電気装置の雄型端子の嵌合仕様の変更にも対応することが可能になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、複数の異なる電気装置のそれぞれ異なる雄型端子の仕様に対応可能な電池パック用雌型コネクタ等の雌型コネクタを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1実施および第2実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタが採用される電池パックを例示する外観斜視図である。
【
図2】
図1に例示した第1実施の形態に係る電池パックから前蓋が取り外されたときの様子を例示する外観斜視図である。
【
図3】(a)は、第1実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタと負荷装置の雄型端子との嵌合の際の様子を例示する斜視図、(b)は、第1実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタと充電器の雄型端子との嵌合の際の様子を例示する側面図である。
【
図4】第1実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタの構造を例示する斜視図である。
【
図5】(a)は、
図4に例示した電池パック用雌型コネクタの上面図、(b)は底面図である。
【
図6】(a)は、
図4に例示した電池パック用雌型コネクタの正面図、(b)は背面図である。
【
図7】
図4に例示した電池パック用雌型コネクタの左側面図である。
【
図8】
図4に例示した電池パック用雌型コネクタの右側面図である。
【
図9】第2実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタの構造を例示する斜視図である。
【
図10】(a)は、
図9に例示した電池パック用雌型コネクタの上面図、(b)は底面図である。
【
図11】(a)は、
図9に例示した電池パック用雌型コネクタの正面図、(b)は背面図である。
【
図12】
図9に例示した電池パック用雌型コネクタの左側面図である。
【
図13】
図9に例示した電池パック用雌型コネクタの右側面図である。
【
図14】(a),(b)および(c)は、従来の電池パック用雌型コネクタが採用される電池パックを充電器で充電する際の過程を順に説明する正面図である。
【
図15】
図14(b)に示す電池パックおよび充電器の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタを詳細に説明する。なお、各図において同一または相当する部分には同一符号を付して説明する。
【0036】
図1は、本発明の第1実施および第2実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタが採用される電池パック1を例示する外観斜視図である。
【0037】
電池パック1の筐体は、上蓋3、下蓋5および前蓋7により構成されており、上蓋3、下蓋5および前蓋7は、何れもポリカーボネートなどのプラスチック材料により作製される。上蓋3および下蓋5は、電池パック1の長手方向であるY軸方向に延在し、6箇所に設けられた嵌合部9において、例えばプラスチック材料の弾性を利用した、スナップフィットによりZ軸方向で互いに嵌合されている。前蓋7は、電池パック1の短手方向であるX軸方向に延在し、上蓋3および下蓋5と、例えばボルト・ビス類を使用した締結によりY軸方向で嵌合されている。また、上蓋3のうち、電池パック1の短手方向であるX軸方向に延在し、且つY軸正方向に配置される後面には取手11が設けられている。
【0038】
図2は、
図1に例示した第1実施の形態に係る電池パック1から前蓋7が取り外されたときの様子を例示する外観斜視図である。
【0039】
上蓋3および下蓋5から構成される筐体の内部には、制御回路が搭載された基板14が基板ケース13に収容されて、XZ平面に配置されている。この基板14には、本実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタ15がX軸方向に等間隔で配置されている。
【0040】
基板ケース13は、例えば、基板ケース13の側面から突出したリブ13aと、下蓋5から相対する方向に突出したリブ5aとが互いに嵌合することにより、筐体に取り付けられている。電池パック用雌型コネクタ15は、電池パック1の筐体の内部から外部に向かって、基板14からY軸負方向に突出するように、配置されている。
【0041】
前蓋7には、電池パック用雌型コネクタ15を覆う凸部7aが、Y軸負方向に突出して設けられている。本実施の形態では、凸部7aのうち、XZ平面に配置される表面には、個々の電池パック用雌型コネクタ15に対向する位置に開口部7bが設けられている。この開口部7bは、凸部7aの前面においてY軸負方向側に開口しており、凸部7aの下面においてZ軸負方向側にも開口している。
【0042】
基板14上に形成された制御回路および個々の電池パック用雌型コネクタ15は、電池パック1の筐体の内部に収納される二次電池モジュール(図示せず)と電気的に接続されている。本実施の形態では、二次電池モジュールは、リチウムイオン二次電池(LIB:Lithium Ion Battery、以下、LIBと記す)が直列および/または並列に接続されて構成されるLIBモジュールである。電池パック用雌型コネクタ15は、例えば9.65[Ah]の容量のLIBモジュールについて、6個が基板14上にX軸方向に配置される。
【0043】
蓄電装置等に用いられるLIBは、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池といった他の二次電池と比較して、エネルギー密度が高く、小型且つ軽量であることで知られている。LIBモジュールは、各LIBの電圧や温度を監視するモジュールモニタリングユニット(MMU:Module Monitoring Unit)を含む、基板14に形成された制御回路と接続されて、電池パック1の筐体内部に収容されている。
【0044】
電池パック用雌型コネクタ15は、第1の電気装置の雄型端子と第2の電気装置の雄型端子とに個別に着脱される。例えば、LIBモジュールから放電される電力が供給される、第1の電気装置である負荷装置の雄型端子と嵌合され、また、LIBモジュールに充電する電力を供給する、第2の電気装置である充電器の雄型端子と嵌合される。例えばドローン等の負荷装置に搭載される電池パックは、負荷装置への放電後に負荷装置から取り外されて充電器に装着され、充電器による充電後に充電器から取り外されて負荷装置に再び装着されるといった、負荷装置との間での着脱と充電器との間での着脱が交互に行われる運用が前提となる。
【0045】
図3(a)は、電池パック用雌型コネクタ15と負荷装置の端子板23に配置される雄型端子21との嵌合の際の様子を例示する斜視図である。
図3(b)は、電池パック用雌型コネクタ15と充電器の端子板24に配置される雄型端子25との嵌合の際の様子をYZ平面からみたときの側面図である。
【0046】
本実施の形態では、以下の仕様の変更に対処する電池パック用雌型コネクタ15を例示する。
【0047】
[変更前](
図14,
図15参照)
図14および
図15は、従来技術を例示する図であり、具体的には、電池パック100を充電器200に装着する様子を例示している。この例では電池パック100を負荷装置(図示せず)に装着する場合も同様である。
【0048】
図14(a)の矢印に示す方向より、電池パック100の右下部が充電器200の右上部の凹部(図示せず)に当接される。次に、
図14(b)の矢印に示すように、電池パック100の左下部が充電器200の左上部の凹部(図示せず)に向けて回転される。その後、
図14(c)において電池パック100の充電器200への装着が完了される。
【0049】
図15は
図14(b)に対応する左側面図であり、電池パック100の各雌型端子101と充電器200の各雄型端子201とが鉛直方向(
図14(c)に示すZ軸方向)で対応している。ここで、電池パック100の各雌型端子101は、基板14と同様な基板(図示せず)から、
図3(a)に示す電池パック用雌型コネクタ15と同様に、筐体の内部から外部に向かって水平(
図14(c)に示すY軸負方向)に突出して取り付けられている。また、各雌型端子101を囲う前蓋の開口部102は、
図2に示す前蓋7の開口部7bと同様に、鉛直下方(
図14(c)に示すZ軸負方向)にも開口している。
【0050】
電池パック100の
図14(b)に示す回転に伴い、開口部102の鉛直下方に露出する各雌型端子101は、筐体の内部から外部に向かって水平(
図14(c)に示すY軸正方向)に突出して取り付けられている充電器200の各雄型端子201と、実質的に鉛直上方から嵌合する。
【0051】
この例では、充電器200の雄型端子201が突出する方向は水平方向(
図14(c)に示すY軸正方向)であり、電池パック100の雌型端子101の当該雄型端子201との嵌合および嵌合解除に際して、その開口部102が移動する方向は鉛直方向(
図14(c)に示すZ軸方向)である。同様に、図示しない負荷装置の雄型端子が筐体の内部から外部に突出する方向は水平方向(
図14(c)に示すY軸正方向)であり、電池パック100の雌型端子101が当該雄型端子との嵌合および嵌合解除に際して、その開口部が移動する方向は鉛直方向(
図14(c)に示すZ軸方向)である。
【0052】
ドローン等の負荷装置や充電器では、負荷装置や充電器を構成する部材等の最適な配置を実現するために頻繁に仕様が変更され、これに伴い、負荷装置と充電器に交互に着脱される電池パックにも仕様の変更が要求される。
【0053】
上記
図14および
図15に示す電池パック100の着脱構造の場合、例えば、充電器200の雄型端子201が突出する方向は水平方向のままであり、電池パック100の雌型端子101が当該雄型端子201との嵌合および嵌合解除に際して、その開口部102が移動する方向は鉛直方向のままであるが、負荷装置の雄型端子が突出する方向が水平方向であり、電池パック100の雌型端子101が当該雄型端子との嵌合および嵌合解除に際して、その開口部102が移動する方向が水平方向(
図14(c)に示すY軸方向)となるように仕様が変更されることが想定される。
【0054】
この仕様の変更によると、水平方向(
図14(c)に示すY軸正方向)に突出する負荷装置の雄型端子に対して、嵌合および嵌合解除に際してその開口部が鉛直方向(
図14(c)に示すZ軸方向)に移動して嵌合するように設計された電池パック100の雌型端子101を、そのまま水平方向(
図14(c)に示すY軸負方向)に移動して嵌合させようとしても、嵌合させることは出来ない。また、電池パック100が負荷装置と充電器200に頻繁且つ交互に着脱が行われる運用が前提にあることを考慮すると、仕様の変更により、交互に着脱されることに関わる耐久性が低下するのを低減する必要がある。
【0055】
すなわち、仕様の変更前における、電池パック100と、充電器200および負荷装置の仕様は以下の通りである。
【0056】
・充電器200の雄型端子201が突出する方向は水平方向(
図14(c)に示すY軸正方向)、電池パック100の雌型端子101が突出する方向は水平方向(
図14(c)に示すY軸負方向)であり、開口部102が開口する方向は鉛直方向(
図14(c)に示すZ軸負方向)であり、開口部102の開口が当該雄型端子201との嵌合に際して移動する方向は鉛直方向(
図14(c)に示すZ軸負方向)である。
【0057】
・負荷装置の雄型端子が突出する方向は水平方向(
図14(c)に示すY軸正方向)、電池パック100の雌型端子101が突出する方向は水平方向(
図14(c)に示すY軸負方向)であり、開口部102が開口する方向は鉛直方向(
図14(c)に示すZ軸負方向)であり、開口部102の開口が当該雄型端子との嵌合に際して移動する方向は鉛直方向(
図14(c)に示すZ軸負方向)である。
【0058】
[変更後](
図3参照)
ここで、電池パック用雌型コネクタ15が突出するY軸負方向の水平方向を
図3(a)に示す第1方向A、第1方向Aに直交するZ軸負方向の鉛直方向を
図3(b)に示す第2方向B、第1方向Aと対向するY軸正方向の水平方向を
図3(a)に示す第3方向Cとする。
【0059】
仕様の変更後における、電池パック1と、充電器および負荷装置の仕様は以下の通りである。
【0060】
・
図3(b)に示すように、従前通り、充電器の端子板24に配置される雄型端子25が突出する方向は第3方向Cであり、電池パック1の雌型端子対を構成する電池パック用雌型コネクタ15が突出する方向は第1方向Aである。電池パック1の第2方向Bに開口する開口部7bは、従前通り、第2方向Bに移動して、電池パック用雌型コネクタ15は当該雄型端子25と嵌合する。
【0061】
・
図3(a)に示すように、従前通り、負荷装置の端子板23に配置される雄型端子21が突出する方向は第3方向Cであり、電池パック1の電池パック用雌型コネクタ15が突出する方向は第1方向Aである。しかし、従前と異なり、電池パック1のY軸方向の水平方向に開口する開口部7bが第1方向Aに移動して、電池パック用雌型コネクタ15は当該雄型端子21と嵌合する。
【0062】
図3を参照すると、負荷装置の端子板23に配置される雄型端子21は、XZ平面に配置される端子板23から第3方向Cに突出する板状の端子である。各雄型端子21は、対応する電池パック用雌型コネクタ15と対向して端子板23のXZ平面にそれぞれ配置され、YZ平面に延在している。また、負荷装置の雄型端子21が端子板23から突出する第3方向Cは、電池パック用雌型コネクタ15が基板14から突出する第1方向Aと対向する。本実施の形態では、電池パック用雌型コネクタ15は、負荷装置の雄型端子21が突出する第3方向Cと対向する第1方向Aに移動することで、負荷装置の雄型端子21とY軸方向で嵌合する。
【0063】
図4は、第1実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタ15の構造を例示する斜視図である。
【0064】
電池パック用雌型コネクタ15は、ベリリウム銅など、導電性材料が採用されて例えば順送プレス加工により一体成形される。この電池パック用雌型コネクタ15は、頂部15a、頂部15aのX軸負方向側でZ軸負方向に向けて形成される左側端子15bおよび左側脚部15c、ならびに、頂部15aのX軸正方向側でZ軸負方向に向けて形成される右側端子15dおよび右側脚部15eを有している。
【0065】
左側端子15bおよび右側端子15dは、電池パック用雌型コネクタ15の雌型端子対を構成する。これら左側端子15bおよび右側端子15dは、第1方向Aおよび第2方向Bのそれぞれに延在し、左側端子15bおよび右側端子15d間には、頂上が互いに近接する左側突出部15iおよび右側突出部15jが形成されている。
【0066】
頂部15aは、電池パック用雌型コネクタ15の長手方向であるY軸方向に延在している。この頂部15aを通る平面であって、上記第1方向Aと第2方向Bとを含むYZ平面D(
図5(b)参照)に関して対称に、左側端子15bと右側端子15dが頂部15aのY軸負方向側に配置されており、左側脚部15cと右側脚部15eがY軸正方向側に配置されている。
【0067】
なお、頂部15aのY軸正方向側の端部15f、左側脚部15cのY軸正方向側の端部15g、および右側脚部15eのY軸正方向側の端部15hが基板14にそれぞれ取り付けられることで、電池パック用雌型コネクタ15は基板14に固定される。
【0068】
図5(a)は、
図4に例示した電池パック用雌型コネクタ15をZ軸正方向側のXY平面から見たときの上面図であり、
図5(b)は、
図4に例示した電池パック用雌型コネクタ15をZ軸負方向側のXY平面から見たときの底面図である。
【0069】
雌型端子対を構成する左側端子15bおよび右側端子15dは、上記のように左側端子15bおよび右側端子15d間におけるYZ平面Dに関して対称に配置されている。左側突出部15iおよび右側突出部15jは、第1方向Aに延在する部分に第1傾斜面15i1および15j1を有する。第1傾斜面15i1および15j1は、雄型端子21および25の少なくとも一方の雄型端子21または25の受け入れ側である第1方向Aに向かって高さがそれぞれ低くなる形状に形成される。
【0070】
左側突出部15iおよび右側突出部15jの各第1傾斜面15i1および15j1に挟まれる部分には、第1の誘導口E1が形成される。この第1の誘導口E1は、第1方向Aにおける一方の雄型端子21または25の受け入れ側に向かって広がって開口し、電池パック用雌型コネクタ15が
図3(a)に示すように第1方向Aに移動するときに、第3方向Cに突出する少なくとも一方の雄型端子21または25を電池パック用雌型コネクタ15との嵌合位置に誘導する。
【0071】
本実施の形態では、頂部15aのY軸方向長さが14[mm]に設定され、また、電池パック用雌型コネクタ15のX軸方向における幅は5[mm]に設定されている。また、左側突出部15iおよび右側突出部15jの各頂上間の距離は、Y軸方向およびZ軸方向での嵌合のために所定の距離に設定される。6個の電池パック用雌型コネクタ15を有する1個の電池パック1当たり、12[N]の所望の嵌合強度を得るため、左側突出部15iおよび右側突出部15jの各頂上間の距離は、例えば、0.3[mm]に設定される。各頂上間の距離が0.3[mm]に設定されることで、1個の電池パック用雌型コネクタ15当たり2[N]の嵌合強度が得られるため、1個の電池パック1当たり、12[N](=2[N]×6)の所望の嵌合強度が得られる。
【0072】
図6(a)は、
図4に例示した電池パック用雌型コネクタ15をY軸負方向側のXZ平面から見たときの正面図であり、
図6(b)は、
図4に例示した電池パック用雌型コネクタ15をY軸正方向側のXZ平面から見たときの背面図である。本実施の形態では、電池パック用雌型コネクタ15の高さは12[mm]に設定されている。
【0073】
左側端子15bおよび右側端子15dは、上記のように左側端子15bおよび右側端子15d間におけるYZ平面Dに関して対称に配置されている。左側突出部15iおよび右側突出部15jは、第2方向Bに延在する部分に第2傾斜面15i2および15j2を有する。第2傾斜面15i2および15j2は、雄型端子21および25の少なくとも他方の雄型端子25または21の受け入れ側である第2方向Bに向かって高さがそれぞれ低くなる形状に形成される。
【0074】
左側突出部15iおよび右側突出部15jの各第2傾斜面15i2および15j2に挟まれる部分には、第2の誘導口E2が形成される。この第2の誘導口E2は、第2方向Bにおける他方の雄型端子25または21の受け入れ側に向かって広がって開口し、電池パック用雌型コネクタ15が
図3(b)に示すように第2方向Bに移動するときに、第3方向Cに突出する少なくとも他方の雄型端子25または21を電池パック用雌型コネクタ15との嵌合位置に誘導する。
【0075】
第1の誘導口E1および第2の誘導口E2は、左側端子15bおよび右側端子15dの対向する雌型端子対の間に形成されている。
【0076】
図7は、
図4に例示した電池パック用雌型コネクタ15をX軸負方向側のYZ平面から見たときの左側面図であり、
図8は、
図4に例示した電池パック用雌型コネクタ15をX軸正方向側のYZ平面から見たときの右側面図である。
【0077】
雌型端子対を構成する左側端子15bおよび右側端子15dは、それぞれ、左側突出部15iおよび右側突出部15jの各頂部間の距離が所定の距離(0.3[mm])に接近するまで、3段階にわたる押し出し工程を経てプレス加工されている。したがって、左側端子15bおよび右側端子15dは、対向面の中央部において左側突出部15iおよび右側突出部15jの頂上がYZ平面D(
図5(b)参照)を挟んで互いに近接し、中央部から離れるにしたがって次第に相互間の距離が徐々に広がる形状に第1傾斜面15i1、15j1および第2傾斜面15i2、15j2が形成されている。
【0078】
また、これら左側端子15bおよび右側端子15dは、YZ平面Dに最も近接する、対向面の各中央領域において、対向面の対角線の交点に位置する中央部に、嵌合面F1,F2をそれぞれ有する。各嵌合面F1,F2は、YZ平面Dに関して対称に配置され、電池パック用雌型コネクタ15がY軸負方向(第1方向A)に移動することで、負荷装置の雄型端子21を挟み込み、電池パック用雌型コネクタ15がZ軸負方向(第2方向B)に移動することで、充電器の雄型端子25を挟み込む。すなわち、本実施の形態では、左側端子15bおよび右側端子15dは、各嵌合位置において、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25と点ではなく面で嵌合する。
【0079】
左側端子15bおよび右側端子15dが負荷装置の雄型端子21と嵌合する際に形成される嵌合面F1,F2と、充電器の雄型端子25と嵌合する際に形成される嵌合面F1,F2とは、実質的に一致する。本実施の形態では、各嵌合面F1,F2の面積は、約7.6[mm2]である。電池パック1が負荷装置に放電するときの最大電流20[A]、および電池パック1が充電器から充電されるときの最大電流9[A]を考慮すると、各嵌合面F1,F2の面積は少なくとも3.6[mm2]を確保することが好ましい。
【0080】
また、電池パック1が負荷装置と充電器に交互に着脱されることによる電池パック用雌型コネクタ15の耐久性を考慮すると、電池パック用雌型コネクタ15が負荷装置の雄型端子21と第1方向Aで嵌合するときに、雄型端子21から電池パック用雌型コネクタ15に印加される力と、充電器の雄型端子25と第2方向Bで嵌合するときに、雄型端子25から電池パック用雌型コネクタ15に印加される力とは、実質的に同じであることが好ましい。このため、嵌合面F1,F2は正方形または円等であることが好ましい。
【0081】
このため、本実施の形態では、各嵌合面F1,F2は長方形状をしているが、嵌合面F1,F2の外周のうち、一方の雄型端子21の左端との第1方向Aにおける嵌合の際に、一方の雄型端子21の左端端部に接触する外周部分の第2方向Bの長さaと、他方の雄型端子25の上端との第2方向Bにおける嵌合の際に、他方の雄型端子25の上端端部に接触する外周部分の第1方向Aの長さbとは、少なくとも、実質的に等しいことが望ましい。
【0082】
本構成によれば、左側端子15bおよび右側端子15dが、第1方向Aにおいて、一方の雄型端子21と嵌合する際にその雄型端子21から印加される力と、第2方向Bにおいて、他方の雄型端子25と嵌合する際にその雄型端子25から印加される力とは、実質的に等しくなる。したがって、雌型端子対を構成する左側端子15bおよび右側端子15dに第1方向Aおよび第2方向Bから印加される力は各方向において実質的に等しくなる。したがって、嵌合面F1,F2に一方の方向から過大な力が偏ってかからなくなる。このため、雌型端子対と各雄型端子21,25との嵌合および嵌合解除が繰り返し行われても、電池パック用雌型コネクタ15の変形に係る耐久性が低下するのを低減することが出来る。
【0083】
このように本実施形態による電池パック用雌型コネクタ15には、当該電池パック用雌型コネクタ15が突出する第1方向Aから電池パック用雌型コネクタ15に嵌合する仕様の、第1方向Aと対向して突出する雄型端子を嵌合位置に誘導する第1の誘導口E1、および、第1方向Aに直交する第2方向Bから電池パック用雌型コネクタ15に嵌合する仕様の、第1方向Aと対向して突出する雄型端子を嵌合位置に誘導する第2の誘導口E2が、対向する雌型端子対である左側端子15bおよび右側端子15d間に設けられる。
【0084】
したがって、第1方向Aと対向して突出する負荷装置および充電器の各雄型端子21,25が、電池パック用雌型コネクタ15の突出する第1方向Aから電池パック用雌型コネクタ15に嵌合する仕様か、電池パック用雌型コネクタ15の突出する第1方向Aと直交する第2方向Bから電池パック用雌型コネクタ15に嵌合する仕様かを問わず、その仕様に合った一方の第1または第2の誘導口E1またはE2によって、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25のいずれにも、電池パック用雌型コネクタ15を個別に嵌合させることが可能になる。このため、電池パック用雌型コネクタ15は、複数の異なる電気装置のそれぞれ異なる嵌合仕様の雄型端子21,25と個別に着脱することが出来、また、各電気装置の雄型端子21,25の嵌合仕様の変更にも対応することが可能になる。
【0085】
また、本実施形態による電池パック用雌型コネクタ15によれば、互いに近接する頂上、一方の雄型端子21の受け入れ側に向かって高さが低くなる第1傾斜面15i1,15j1、および、他方の雄型端子25の受け入れ側に向かって高さが低くなる第2傾斜面15i2,15j2を有する左側突出部15i,右側突出部15jを、雌型端子対を構成する左側端子15bおよび右側端子15dにそれぞれ設けることで、第1の誘導口E1および第2の誘導口E2を、電池パック用雌型コネクタ15に部材を増やすことなく雌型端子対に単に加工を加えることで、簡単に形成することが出来る。
【0086】
また、本実施形態による電池パック用雌型コネクタ15によれば、左側端子15bおよび右側端子15dが、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25と点ではなく面で嵌合するので、当該雌型端子対とこれら雄型端子21,25との間に流すことの出来る電流容量を確保することが可能になる。
【0087】
また、本実施形態による電池パック用雌型コネクタ15によれば、雌型端子対を構成する左側端子15bおよび右側端子15d、並びに、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25と嵌合する嵌合面F1,F2が、第1方向Aおよび第2方向Bを含むYZ平面Dに関して対称に配置されるので、当該電池パック用雌型コネクタ15内で嵌合面F1,F2の配置可能な領域を最大にすることが出来る。
【0088】
したがって、嵌合面F1,F2を配置する位置を、この配置可能な領域の中で、各雄型端子21,25に雌型端子対が着脱される際、雌型端子対が変形する要因や、雌型端子対の耐久性が低下する要因を最小にする位置に選択することが出来る。嵌合面F1,F2のこの配置位置では、雄型端子21,25から嵌合面F1,F2を介して雌型端子対に加わる応力が、雌型端子対を構成する左側端子15bおよび右側端子15dに均等に印加され、一方の端子の特定の箇所に過大な応力が偏ってかからなくなるので、雌型端子対と各雄型端子21,25との嵌合および嵌合解除が繰り返し行われても、雌型端子対が変形したり、電池パック用雌型コネクタ15の耐久性が低下するのを低減することが出来る。
【0089】
また、本実施形態による電池パック用雌型コネクタ15によれば、雄型端子21,25と嵌合する嵌合面F1,F2が形成される左側突出部15i,右側突出部15jの頂上は、左側端子15bおよび右側端子15dの各面を徐々に押し出して傾斜面15i1,15j1、15i2,15j2の傾斜を順につける加工を経ることで、対向面の中央部における所望の位置に正確に配置される。したがって、左側端子15bおよび右側端子15dに設けられる左側突出部15i,右側突出部15jの頂上間の距離を所望の距離に設定して、左側端子15bおよび右側端子15d間に挿入される雄型端子21,25との嵌合強度を所望の強度に正確に設定することが可能になる。
【0090】
以上、本発明の第1実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、以下に示す他の態様も包含される。すなわち、本発明は、Y軸方向での嵌合に寄与する第1の誘導口とZ軸方向での嵌合に寄与する第2の誘導口とを備える構成であればよく、以下、これを第2実施の形態として説明する。
【0091】
図9は、本発明の第2実施の形態に係る電池パック用雌型コネクタ35の構造を例示する斜視図である。
【0092】
電池パック用雌型コネクタ35は、ベリリウム銅など、導電性材料から例えば順送プレス加工により一体成形され、頂部35a、頂部35aのX軸負方向側でZ軸負方向に成形される左側端子35bおよび左側脚部35c、ならびに、頂部35aのX軸正方向側でZ軸負方向に成形される右側端子35dおよび右側脚部35eを有している。
【0093】
本実施の形態では、雌型端子対を構成する左側端子35bおよび右側端子35dは、第1方向Aと第2方向Bの中間の同じ方向にそれぞれ延在し、延在する終端側に向かって互いに近接する。また、左側端子35bおよび右側端子35dの最も近接する箇所から、延在する終端の周縁35b1,35d1が、第1方向Aにおいて、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25のうちの少なくとも一方の雄型端子21または25の受け入れ側に向かって互いに離反すると共に、第2方向Bにおいて、他方の雄型端子25または21の受け入れ側に向かって互いに離反する形状に反り返って形成されている。
【0094】
頂部35aは、電池パック用雌型コネクタ35の長手方向であるY軸方向に延在しており、この頂部15aを通る平面であって、上記第1方向Aと第2方向Bとを含むYZ平面D(
図10(b)参照)に関して対称に、左側端子35bと右側端子35dが頂部35aのY軸負方向側に配置されており、左側脚部35cと右側脚部35eがY軸正方向側に配置されている。
【0095】
なお、頂部35aのY軸正方向側の端部35f、左側脚部35cのY軸正方向側の端部35g(
図10参照)、および右側脚部35eのY軸正方向側の端部35hが電池パック1に収納される基板14にそれぞれ取り付けられることで、電池パック用雌型コネクタ35は基板14に固定される。
【0096】
図10(a)は、
図9に例示した電池パック用雌型コネクタ35をZ軸正方向側のXY平面から見たときの上面図であり、
図10(b)は、
図9に例示した電池パック用雌型コネクタ35をZ軸負方向側のXY平面から見たときの底面図である。
【0097】
雌型端子対を構成する左側端子35bおよび右側端子35dは、上記のように左側端子35bおよび右側端子35d間におけるYZ平面Dに関して対称に配置されている。また、一方の雄型端子21の受け入れ側である第1方向Aに向かって終端の周縁35b1,35d1が離反する反り返った第1傾斜部分35b2,35d2に挟まれた箇所に、第1の誘導口G1が形成されている。この第1の誘導口G1は、第1方向Aにおける、一方の雄型端子21または25の受け入れ側に向かって広がって開口し、電池パック用雌型コネクタ35が
図3(a)に示すように第1方向Aに移動するときに、第3方向Cに突出する少なくとも一方の雄型端子21または25を電池パック用雌型コネクタ35との嵌合位置に誘導する。
【0098】
本実施の形態でも、頂部35aのY軸方向長さが14[mm]に設定され、また、電池パック用雌型コネクタ35のX軸方向における幅は5[mm]に設定されている。また、左側端子35bおよび右側端子35dの最も近接する箇所における左側端子35bおよび右側端子35d間の距離は、Y軸方向およびZ軸方向での嵌合のために所定の距離に設定される。6個の電池パック用雌型コネクタ35を有する1個の電池パック1当たり、12[N]の所望の嵌合強度を得るため、最も近接する箇所における左側端子35bおよび右側端子35d間の距離は、例えば、0.3[mm]に設定される。左側端子35bおよび右側端子35d間の距離が0.3[mm]に設定されることで、1個の電池パック用雌型コネクタ35当たり2[N]の嵌合強度が得られるため、1個の電池パック1当たり、12[N](=2[N]×6)の所望の嵌合強度が得られる。
【0099】
図11(a)は、
図9に例示した電池パック用雌型コネクタ35をY軸負方向側のXZ平面から見たときの正面図であり、
図11(b)は、
図9に例示した電池パック用雌型コネクタ35をY軸正方向側のXZ平面から見たときの背面図である。本実施の形態でも、電池パック用雌型コネクタ35の高さは12[mm]に設定されている。
【0100】
左側端子35bおよび右側端子35dは、上記のように左側端子35bおよび右側端子35d間におけるYZ平面Dに関して対称に配置されている。また、他方の雄型端子25または21の受け入れ側である第2方向Bに向かって終端の周縁35b1,35d1が離反する反り返った第2傾斜部分35b3,35d3に挟まれた箇所に、第2の誘導口G2が形成されている。この第2の誘導口G2は、第2方向Bにおける、他方の雄型端子25または21の受け入れ側に向かって広がって開口し、電池パック用雌型コネクタ35が
図3(b)に示すように第2方向Bに移動するときに、第3方向Cに突出する少なくとも他方の雄型端子25または21を電池パック用雌型コネクタ35との嵌合位置に誘導する。
【0101】
第1の誘導口G1および第2の誘導口G2は、左側端子35bおよび右側端子35dの対向する雌型端子対の間に形成されている。
【0102】
図12は、
図9に例示した電池パック用雌型コネクタ35をX軸負方向側のYZ平面から見たときの左側面図であり、
図13は、
図9に例示した電池パック用雌型コネクタ35をX軸正方向側のYZ平面から見たときの右側面図である。
【0103】
雌型端子対を構成する左側端子35bおよび右側端子35dは、それぞれ、最も近接する箇所における左側端子35bおよび右側端子35d間の距離が所定の距離(0.3[mm])に接近するまで、4段階にわたる曲げ工程を経てプレス加工されている。したがって、左側端子35bおよび右側端子35dは、最も近接する箇所に向かって次第に相互間の距離が徐々に近接する。また、終端の第1方向Aにおける周縁35b1,35d1の第1傾斜部分35b2,35d2が、一方の雄型端子21または25の受け入れ側に向かって互いに離反する距離が徐々に大きくなり、終端の第2方向Bにおける周縁35b1,35d1の第2傾斜部分35b3,35d3が、他方の雄型端子25または21の受け入れ側に向かって互いに離反する距離が徐々に大きくなる形状に形成されている。
【0104】
また、左側端子35bおよび右側端子35dは、最も近接する箇所がYZ平面D(
図10(b)参照)を挟んで互いに近接し、この最も近接する箇所に嵌合面H1,H2をそれぞれ有する。各嵌合面H1,H2は、YZ平面Dに関して対称に配置され、電池パック用雌型コネクタ35がY軸負方向(第1方向A)に移動することで、負荷装置の雄型端子21を挟み込み、電池パック用雌型コネクタ35がZ軸負方向(第2方向B)に移動することで、充電器の雄型端子25を挟み込む。すなわち、本実施の形態では、左側端子35bおよび右側端子35dは、各嵌合位置において、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25と点ではなく面で嵌合する。
【0105】
左側端子35bおよび右側端子35dが負荷装置の雄型端子21と嵌合する際に形成される嵌合面H1,H2と、充電器の雄型端子25と嵌合する際に形成される嵌合面H1,H2とは、実質的に一致する。
【0106】
また、電池パック1が負荷装置と充電器に交互に着脱されることによる電池パック用雌型コネクタ35の耐久性を考慮すると、電池パック用雌型コネクタ35が負荷装置の雄型端子21と第1方向Aで嵌合するときに、雄型端子21から電池パック用雌型コネクタ35に印加される力と、充電器の雄型端子25と第2方向Bで嵌合するときに、雄型端子25から電池パック用雌型コネクタ35に印加される力とは、実質的に同じであることが好ましい。実質的に同じであれば、嵌合面H1,H2に一方の方向から過大な力が偏ってかからなくなる。このため、雌型端子対と各雄型端子21,25との嵌合および嵌合解除が繰り返し行われても、電池パック用雌型コネクタ35の変形に係る耐久性が低下するのを低減することが出来る。
【0107】
このように本実施形態による電池パック用雌型コネクタ35には、当該電池パック用雌型コネクタ35が突出する第1方向Aから電池パック用雌型コネクタ35に嵌合する仕様の、第1方向Aと対向して突出する雄型端子21を嵌合位置に誘導する第1の誘導口G1、および、第1方向Aに直交する第2方向Bから電池パック用雌型コネクタ35に嵌合する仕様の、第1方向Aと対向して突出する雄型端子25を嵌合位置に誘導する第2の誘導口G2が、対向する雌型端子対である左側端子35bおよび右側端子35d間に設けられる。
【0108】
したがって、第1方向Aと対向して突出する負荷装置および充電器の各雄型端子21,25が、電池パック用雌型コネクタ35の突出する第1方向Aから電池パック用雌型コネクタ35に嵌合する仕様か、電池パック用雌型コネクタ35の突出する第1方向Aと直交する第2方向Bから電池パック用雌型コネクタ35に嵌合する仕様かを問わず、その仕様に合った一方の第1または第2の誘導口G1またはG2によって、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25のいずれにも、電池パック用雌型コネクタ35を個別に嵌合させることが可能になる。このため、電池パック用雌型コネクタ35は、複数の異なる電気装置のそれぞれ異なる嵌合仕様の雄型端子21,25と個別に着脱することが出来、また、各電気装置の雄型端子21,25の嵌合仕様の変更にも対応することが可能になる。
【0109】
また、本実施形態による電池パック用雌型コネクタ35によれば、第1方向Aと第2方向Bの中間の同じ方向に延在する、雌型端子対を構成する左側端子35bおよび右側端子35dを、延在する終端側に向かって互いに近接させ、最も近接する箇所から、延在する終端の周縁35b1,35d1を、第1方向Aにおいて、一方の雄型端子21の受け入れ側に向かって互いに離反させると共に、第2方向Bにおいて、他方の雄型端子25の受け入れ側に向かって互いに離反させる形状に反り返させることで、第1の誘導口G1および第2の誘導口G2を、電池パック用雌型コネクタ35に部材を増やすことなく単に加工を加えることで、簡単に形成することが出来る。
【0110】
また、本実施形態による電池パック用雌型コネクタ35によっても、左側端子35bおよび右側端子35dが、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25と点ではなく面で嵌合するので、当該雌型端子対とこれら雄型端子21,25との間に流すことの出来る電流容量を確保することが可能になる。
【0111】
また、本実施形態による電池パック用雌型コネクタ35によっても、雌型端子対を構成する左側端子35bおよび右側端子35d、並びに、負荷装置の雄型端子21および充電器の雄型端子25と嵌合する嵌合面H1,H2が、第1方向Aおよび第2方向Bを含むYZ平面Dに関して対称に配置されるので、当該電池パック用雌型コネクタ35内で嵌合面H1,H2の配置可能な領域を最大にすることが出来る。
【0112】
したがって、嵌合面H1,H2を配置する位置を、この配置可能な領域の中で、各雄型端子21,25に雌型端子対が着脱される際、雌型端子対が変形する要因や、雌型端子対の耐久性が低下する要因を最小にする位置に選択することが出来る。嵌合面H1,H2のこの配置位置では、雄型端子21,25から嵌合面H1,H2を介して雌型端子対に加わる応力が、雌型端子対を構成する左側端子35bおよび右側端子35dに均等に印加され、一方の端子の特定の箇所に過大な応力が偏ってかからなくなるので、雌型端子対と各雄型端子21,25との嵌合および嵌合解除が繰り返し行われても、雌型端子対が変形したり、電池パック用雌型コネクタ35の耐久性が低下するのを低減することが出来る。
【0113】
また、本実施形態による電池パック用雌型コネクタ35によれば、左側端子35bおよび右側端子35dが徐々に曲げられる工程を経て加工されることで、雄型端子21および25と嵌合する嵌合面H1,H2は、左側端子35bおよび右側端子35dが最も近接する箇所における所望の位置に正確に配置される。したがって、左側端子35bおよび右側端子35dが最も近接する箇所における左側端子35bおよび右側端子35d間の距離を所望の距離に設定して、左側端子35bおよび右側端子35d間に挿入される雄型端子21および25との嵌合強度を所望の強度に正確に設定することが可能になる。
【0114】
また、上記の第1および第2の各実施形態では、第1の電気装置が、当該電池パック用雌型コネクタ15,35を介して二次電池モジュールから電力が供給される負荷装置であり、第2の電気装置が、当該電池パック用雌型コネクタ15,35を介して二次電池モジュールを充電する充電器である場合について、説明した。
【0115】
本構成によれば、例えば、雄型端子21の仕様が、当該電池パック用雌型コネクタ15,35の突出する第1方向Aと直交する第2方向Bから雌型端子と嵌合する仕様であった負荷装置が、当該電池パック用雌型コネクタ15,35の突出する第1方向Aから雌型端子と嵌合する仕様に変更された場合において、その仕様変更に対応出来る電池パック用雌型コネクタ15,35を提供することが出来る。
【0116】
また、上記の第1および第2の各実施形態では、第1の誘導口E1,G1が第1方向Aへ移動して、第3方向Cに突出する負荷装置の雄型端子21を嵌合位置に誘導し、第2の誘導口E2,G2が第2方向Bへ移動して、第3方向Cに突出する充電器の雄型端子25を嵌合位置に誘導する場合について、説明した。
【0117】
本構成によれば、負荷装置の雄型端子21は、第1の誘導口E1,G1により当該電池パック用雌型コネクタ15,35の嵌合位置に誘導され、充電器の雄型端子25は、第2の誘導口E2,G2により当該電池パック用雌型コネクタ15,35の嵌合位置に誘導されて、それぞれ当該電池パック用雌型コネクタ15,35と個別に嵌合する。このため、電池パック1の電池パック用雌型コネクタ15,35が基板14から突出する方向が第1方向Aであり、充電器および負荷装置の雄型端子21,25が突出する方向が第3方向Cである場合に、負荷装置の雄型端子21との嵌合について電池パック用雌型コネクタ15,35の移動方向が第2方向Bから第1方向Aに仕様変更された場合に、対処することが出来る。
【0118】
しかし、第1の誘導口E1,G1が、負荷装置および充電器の各雄型端子21,25を嵌合位置に誘導するようにしてもよい。本構成によれば、負荷装置および充電器の双方の雄型端子21,25は、第1の誘導口E1,G1により当該電池パック用雌型コネクタ15,35との嵌合位置に誘導されて、当該電池パック用雌型コネクタ15,35と個別に嵌合する。このため、充電器の雄型端子25との嵌合について、電池パック用雌型コネクタ15,35の移動方向が第2方向Bから第1方向Aに仕様変更された場合に、対処することが出来る。さらに、充電器および/または負荷装置の雄型端子21,25が突出する第3方向Cと電池パック用雌型コネクタ15,35の突出する第1方向Aとが互いに対向する場合であって、電池パック用雌型コネクタ15,35の移動方向に第2方向Bから第1方向Aに仕様変更が生じた場合にも、対処することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0119】
上記の各実施の形態では、リチウムイオン二次電池(LIB)が直列および/または並列に接続されて構成されるLIBモジュールを二次電池モジュールとして例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばニッケル水素電池等の他の二次電池が採用された二次電池モジュールであっても良い。
【0120】
また、上記の各実施の形態では、第1の電気装置として負荷装置および第2の電気装置として充電器である態様を例示したが、第1の電気装置および第2の電気装置は負荷装置および充電器に限定されるものではなく、他の電気装置であってもよい。つまり、上記の各実施の形態では、負荷装置の雄型端子21や充電器の雄型端子25と嵌合される電池パック用雌型コネクタ15,35を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の異なる種類の電気装置の雄型端子と嵌合される雌型端子(電池パック用雌型コネクタ)であってもよい。
【0121】
例えば電池パック用雌型コネクタが第1の電気装置である負荷装置の雄型端子と水平方向Aで嵌合および嵌合解除され、次いで同種または異種の第2の電気装置である負荷装置の雄型端子と水平方向Aまたは鉛直方向Bで嵌合・嵌合解除され、次いで第3の電気装置である充電器の雄型端子と水平方向Aまたは鉛直方向Bで嵌合・嵌合解除される態様も本発明に含まれる。この場合、本発明は電池パック1が特定の1台の負荷装置と特定の1台の充電器に交互に着脱される運用形態に限定されるものではない。
【0122】
さらに、上記の各実施の形態では、複数の異なる種類の電気装置の雄型端子と嵌合される電池パック用の雌型コネクタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図5や
図10に示される第1の誘導口E1,G1と、
図6や
図11に示される第2の誘導口E2,G2とにそれぞれ相当する構成が雌型端子対の間に形成される、例えばアダプタ等に設けられる雌型コネクタであっても良い。
【0123】
本発明による電池パック用雌型端子は、電池パックが放電する負荷装置および電池パックを充電する充電器等の仕様の変更に対応可能な電池パック用雌型コネクタを提供するものであるから、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0124】
1:電池パック
15,35:電池パック用雌型コネクタ
15a,35a:頂部
15b、35b:左側端子
15c、35c:左側脚部
15d,35d:右側端子
15e,35e:右側脚部
15i:左側突出部
15j:右側突出部
15i1,15j1:第1傾斜面
15i2,15j2:第2傾斜面
35b1,35d1:左側端子35b,右側端子35dの終端の周縁
35b2,35d2:第1傾斜部分
35b3,35d3:第2傾斜部分
21:負荷装置の雄型端子
25:充電器側の雄型端子
A:第1の方向
B:第2の方向
E1,G1:第1の誘導口
E2,G2:第2の誘導口
F1,F2,H1,H2:嵌合面