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特開2025-11837チーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法
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  • 特開-チーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011837
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】チーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 20/00 20250101AFI20250117BHJP
【FI】
A23C20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114195
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】葛原 大士
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC08
4B001AC20
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC07
4B001EC04
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、常温以下の温度帯では固形状態であり、かつ
、加熱時には溶融し、延伸性を有するチーズ様食品を製造することである。
【解決手段】本発明に係るチーズ様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合で
ある。ここで人又は装置によって調合されるのは、少なくとも、植物由来加工品、酸処理
澱粉、及びヒドロキシプロピル化澱粉であり、これによって得られるのは、調合物であり
、当該調合物における脂質含有量は、20重量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーズ様食品であって、当該食品が含有するのは、少なくとも、
植物由来加工品、酸処理澱粉、及びヒドロキシプロピル化澱粉であり、
当該食品における、脂質含有量は、20.0重量%以下である。
【請求項2】
請求項1の食品であって、前記酸処理澱粉の原料は、もち種穀物由来の澱粉である。
【請求項3】
請求項1又は2の食品であって、前記ヒドロキシプロピル化澱粉の原料は、タピオカ由来
の澱粉である。
【請求項4】
請求項1又は2の食品であって、当該食品がさらに含有するのは、
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、デキストリン、及び難消化性デキストリンのうち
、何れか一つ以上である。
【請求項5】
請求項1又は2の食品であって、当該食品がさらに含有するのは、
植物由来の食用油である。
【請求項6】
請求項1又は2の食品であって、当該食品における、前記酸処理澱粉の含有量は、5.0
重量%以上、かつ30.0重量%以下である。
【請求項7】
請求項1又は2の食品であって、当該食品における、前記ヒドロキシプロピル化澱粉の含
有量は、1.0重量%以上、かつ20.0重量%以下である。
【請求項8】
請求項1又は2の食品であって、当該食品における、水分含有量に対する、澱粉含有量の
重量比は、0.20以上、かつ、0.63以下である。
【請求項9】
請求項8の食品であって、当該食品における、水分含有量に対する、酸処理澱粉含有量の
重量比は、0.10以上、かつ、0.70以下である。
【請求項10】
チーズ様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である

調合:ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来加工品、酸処理澱粉、及びヒドロキ
シプロピル化澱粉であり、
これによって得られるのは、調合物であり、
当該調合物における脂質含有量は、20.0重量%以下である。
【請求項11】
請求項10の製造方法であって、前記酸処理澱粉の原料は、もち種穀物由来の澱粉である
【請求項12】
請求項10又は11の製造方法であって、前記ヒドロキシプロピル化澱粉の原料は、タピ
オカ由来の澱粉である。
【請求項13】
請求項10又は11の製造方法であって、前記調合において、さらに調合されるのは、ヒ
ドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、デキストリン、及び難消化性デキストリンのうち、
何れか一つ以上である。
【請求項14】
請求項10又は11の製造方法であって、前記調合において、さらに調合されるのは、
植物由来の食用油である。
【請求項15】
請求項10又は11の製造方法であって、前記調合物における、前記酸処理澱粉の含有量
は、5.0重量%以上、かつ30.0重量%以下である。
【請求項16】
請求項10又は11の製造方法であって、前記調合物における、前記ヒドロキシプロピル
化澱粉の含有量は、1.0重量%以上、かつ20.0重量%以下である。
【請求項17】
請求項10又は11の製造方法であって、それをさらに構成するのは、以下の工程である

均質化:ここで均質化されるのは、前記調合物である。
【請求項18】
請求項10又は11の製造方法であって、前記調合物における、水分含有量に対する、澱
粉含有量の重量比は、0.20以上、かつ、0.63以下である。
【請求項19】
請求項18の製造方法であって、前記調合物における、水分含有量に対する、酸処理澱粉
含有量の重量比は、0.10以上、かつ、0.70以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、チーズ様食品、及びチーズ様食品の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、動物由来原料の一部、あるいは全部を植物由来の原料に置き換え、動物性食品様
の食品とした、代替食品が作られてきている。
【0003】
その背景として、種々の点から、動物性食品の摂取を忌避する人がいるからである。一
つの理由は、動物性食品には、コレステロールが含まれていることである。他の理由は、
菜食主義者やヴィーガンは摂取しないようにしていることである。また他の理由は、動物
の飼育による環境負荷の問題である。このような理由から、植物由来加工品を用いた代替
食品には、一定の需要がある。
【0004】
代替食品の具体的な態様は、獣肉を用いず、植物性原料を用いて製造した代替肉である
。別の具体的な態様は、卵を用いず、植物性原料を用いて製造した代替卵である。また別
の具体的な態様は、乳原料を用いず、植物性原料を用いて製造した代替チーズである。こ
れまで、代替チーズに関する食品の検討は、種々なされてきた。
【0005】
特許文献1が示すのは、チーズ様食品であって、常温で良好な保形性を保持しつつ加熱
により良好な溶融性を有するため、特定の酸化澱粉、ヒドロキシプロピルデンプン、特定
の油脂を有するものである。
【0006】
特許文献2が示すのは、チーズ様食品の製造方法であって、生産性向上を目的として、
酸処理澱粉と、水分と、油脂とを一定の割合で混合することである。
【0007】
特許文献3が示すのは、チーズ様食品であって、成形加工適性、加熱溶融性、及び冷却
時のソフトさを有するため、酸処理澱粉、特定の油脂、及びタンパク質含有量が一定であ
るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開第2018-174712号公報
【特許文献2】特開第2022-060294号公報
【特許文献3】特許第6287828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、常温以下の温度帯では固形状態であり、かつ、加熱
時には溶融し、延伸性を有するチーズ様食品を製造することである。
【0010】
チーズ様食品における製造上の課題は、当該食品におけるチーズ様の物性の付与である
。チーズの種類は豊富であり、その種類によって物性も異なる。本発明者は、モツァレラ
チーズに例を挙げられるような、常温以下の温度帯では固形状態であり、かつ、加熱時に
は溶融し、延伸性を有するチーズに着目した。当該物性は、常温以下で固形状態であるた
めに、保存や持ち運び、カッティング等のハンドリングが良い。また、加熱により溶融す
ることで、喫食時になめらかな食感を得ることができる。さらに、延伸性を有することで
、見た目にも楽しむことができる。このような物性は、ピザのトッピングでの使用等に特
に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らが検討していたのは、チーズ様食品において、如何に、チーズ様の物性を
付与するかである。具体的には、ピザのトッピング等で使用されるチーズのような、常温
以下の温度帯では、固形状態であり、加熱時には溶融し、延伸性を有する物性である。上
記検討の結果、前記チーズ様の物性に寄与する要因として、本願発明者らが見出したのは
、(1)酸処理澱粉は、常温以下の温度帯では固形状態、かつ加熱時に溶融する物性を付
与可能であること、(2)ヒドロキシプロピル化澱粉は、加熱による延伸性を付与可能で
あること、(3)一定の脂質含有量において、前記酸処理澱粉とヒドロキシプロピル化デ
澱粉の特性を活かせること、である。上記機序を応用して、本発明を定義すると、以下の
とおりである。
【0012】
本発明に係るチーズ様食品が含有するのは、少なくとも、植物由来加工品、酸処理澱粉
、及びヒドロキシプロピル化澱粉であり、当該食品における、脂質含有量は、20重量%
以下である。本発明に係るチーズ様食品における前記酸処理澱粉の原料は、もち種穀物由
来の澱粉であることが好ましく、前記ヒドロキシプロピル化澱粉の原料は、タピオカ由来
の澱粉であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るチーズ様食品がさらに含有するのは、ヒドロキシプロピル化リン酸
架橋澱粉、デキストリン、及び難消化性デキストリンのうち、何れか一つ以上であること
が好ましい。当該食品がさらに含有するのは、植物由来の食用油であることが好ましい。
【0014】
本発明に係るチーズ様食品における、前記酸処理澱粉の含有量は、5.0重量%以上、
かつ30.0重量%以下であることが好ましく、前記ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量
は、1.0重量%以上、かつ20.0重量%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係るチーズ様食品における、水分含有量に対する、澱粉含有量の重量比は、0
.20以上、かつ、0.63以下であることが好ましく、当該食品における、水分含有量
に対する、酸処理澱粉含有量の重量比は、0.10以上、かつ、0.70以下であること
が好ましい。
【0016】
本発明に係るチーズ様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合である。ここ
で、人又は装置によって調合されるのは、少なくとも、植物由来加工品、酸処理澱粉、及
びヒドロキシプロピル化澱粉であり、これによって得られるのは、調合物であり、当該調
合物における脂質含有量は、20.0重量%以下である。
【0017】
本製造方法において、前記酸処理澱粉の原料は、もち種穀物由来の澱粉であることが好
ましく、前記ヒドロキシプロピル化澱粉の原料は、タピオカ由来の澱粉であることが好ま
しい。
【0018】
また、前記調合において、さらに調合されるのは、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱
粉、デキストリン、及び難消化性デキストリンのうち、何れか一つ以上であることが好ま
しい。
【0019】
本製造方法における調合において、さらに調合されるのは、植物由来の食用油であるこ
とが好ましい。
【0020】
本製造方法において、前記調合物における、前記酸処理澱粉の含有量は、5.0重量%
以上、かつ30.0重量%以下であることが好ましく、前記調合物における、前記ヒドロ
キシプロピル化澱粉の含有量は、1.0重量%以上、かつ20.0重量%以下であること
が好ましい。
【0021】
本チーズ様食品の製造方法をさらに構成するのは、均質化である。ここで、人又は装置
によって均質化されるのは、前記調合物である。
【0022】
本製造方法にいて、前記調合物における、水分含有量に対する、澱粉含有量の重量比は
、0.20以上、かつ、0.63以下であることが好ましく、前記調合物における、水分
含有量に対する、酸処理澱粉含有量の重量比は、0.10以上、かつ、0.70以下であ
ることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明が可能にするのは、常温以下の温度帯では固形状態であり、かつ、加熱時には溶
融し、延伸性を有するチーズ様食品の提供である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るチーズ様食品の製造方法の流れ図
【発明を実施するための形態】
【0025】
<チーズ>
本願明細書において、チーズとは、食品であって、牛、水牛、羊、山羊、等の家畜から
得られる乳を原料とし、乳酸発酵等による酸乳化、或いは、凝乳酵素の添加によって、カ
ゼインを主としたタンパク質が凝固体となったものを、乳清と分離することにより得る方
法により製造したものである。さらに、当該分離した凝固体を、乳酸菌やカビなどの微生
物で発酵、及び熟成させたものも含まれる。具体的には、モツァレラ、カッテージ、カマ
ンベール、ブリー、ブルー、エメンタール、チェダー、エダム、ゴーダ、等が挙げられる
【0026】
<チーズ様食品>
本発明に係るチーズ様食品(以下、「本チーズ様食品」ともいう。)とは、食品であっ
て、チーズにおける乳原料の一部、あるいは全部を植物由来加工品に代替したものである
。また、本チーズ様食品は、外見上チーズである、あるいは、その用途においてチーズの
代替食品であるものをいう。
【0027】
<植物由来加工品>
本チーズ様食品で使用できるのは、植物由来加工品である。植物由来加工品とは、加工
品であって、その由来が、植物原料であるものである。具体的には、野菜又は果実の加工
品、穀類加工品、及び種実類加工品などである。
【0028】
<野菜又は果実の加工品>
本チーズ様食品で使用できるのは、野菜又は果実の加工品である。この野菜の種類は、
不問であるが、例示すると、トマト、ニンジン、カブ、大根、ホウレンソウ、ピーマン、
アスパラガス、大麦若葉、春菊、カラシ菜、サラダ菜、小松菜、明日葉、甘藷、馬鈴薯、
モロヘイヤ、パプリカ、パセリ、セロリ、三つ葉、レタス、ラディッシュ、紫蘇、茄子、
インゲン、カボチャ、牛蒡、ネギ、生姜、大蒜、ニラ、トウモロコシ、さやえんどう、オ
クラ、かぶ、きゅうり、ウリ、ズッキーニ、へちま、もやし等である。果実の種類も、不
問であるが、例示すると、レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ミ
カン、ライム、スダチ、柚子、シイクワシャー、タンカン等の柑橘類、リンゴ、ウメ、モ
モ、サクランボ、アンズ、プラム、プルーン、カムカム、ナシ、洋ナシ、ビワ、イチゴ、
ラズベリー、ブラックベリー、カシス、クランベリー、ブルーベリー、メロン、スイカ、
キウイフルーツ、ザクロ、ブドウ、バナナ、グァバ、アセロラ、パインアップル、マンゴ
ー、パッションフルーツ、レイシ等である。当該加工品の形態は、特に限定されないが、
搾汁液、搾汁パルプ、搾汁液の濃縮汁、乾燥粉末等が挙げられる。本チーズ様食品の色調
の観点から、使用に適した野菜、又は果実は、カロテノイド含有植物であることが好まし
い。
【0029】
<カロテノイド含有植物>
本発明の実施の形態におけるカロテノイド含有植物とは、植物であって、カロテノイド
を含有するものである。カロテノイドとは、動植物に広く存在する黄色、橙色又は赤色の
色素である。カロテノイド含有植物の加工品とは、加工品であって、カロテノイド含有植
物を原料とするものである。当該加工品の形態は、特に限定されないが、搾汁液、搾汁パ
ルプ、搾汁液の濃縮汁、乾燥粉末等が挙げられる。
【0030】
<穀類加工品>
本発明の実施の形態に係る穀類加工品とは、加工された穀類である。本発明の実施の形
態における穀類は、イネ科の植物、及びマメ科の植物を含むものである。穀類を例示する
と、米、小麦、大麦、オーツ麦、大豆、エンドウ豆、インゲン豆、ソラマメ、ひよこ豆、
レンズマメ、アワ、ヒエ、キビ、などが挙げられる。
【0031】
本発明の実施の形態に係る穀類加工品は、好ましくは、穀類の搾汁、又はピューレであ
る。穀類加工品を例示すると、ライスミルク、豆乳、オーツミルク、等である。
【0032】
本発明において穀類加工品を用いる目的は、チーズ様食品におけるコクの付与、及び栄
養成分の増加である。穀類加工品に含有されるタンパク質、及び炭水化物などは、食品に
おけるコクを付与し得る。あわせて、当該成分による栄養向上が期待される。穀類加工品
を用いる別の目的は、色調の調整、特に明度の調整である。穀類加工品であって、その色
調が白色に近いものは、調合液の明度を高め、明るい色調とすることが可能となる。当該
観点から、本発明に用いられる穀類加工品の穀類は、米、小麦、オーツ麦、大豆、白イン
ゲン豆、エンドウ豆といった、加工品の色調が白色であるものが好ましい。
【0033】
本チーズ様食品における穀類加工品の含有量の下限値は、好ましくは、10重量%、よ
り好ましくは、30重量%、さらに好ましくは、50重量%である。本チーズ様食品にお
ける穀類加工品の含有量の上限値は、好ましくは、50重量%、より好ましくは、70重
量%である。
【0034】
<種実類加工品>
本発明の実施の形態に係る種実類加工品とは、加工された種実類である。本発明の実施
の形態における種実類は、食用とされる種子のうち、穀類を除くものである。種実類を例
示すると、アーモンド、クリ、クルミ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ココ
ナッツ、ヒマワリ、ギンナン、マカダミア、などが挙げられる。本発明の実施の形態に係
る種実類加工品は、好ましくは、種実類の搾汁、エキス、又はピューレである。
【0035】
本発明において種実類加工品を用いる目的は、チーズ様食品におけるコクの付与、及び
栄養成分の増加である。種実類加工品に含有されるタンパク質、脂質、及び炭水化物など
は、食品におけるコクを付与し得る。あわせて、当該成分による栄養向上が期待される。
種実類加工品を用いる別の目的は、色調の調整、特に明度の調整である。種実類加工品で
あって、その色調が白色に近いものは、調合液の明度を高め、明るい色調とすることが可
能となる。当該観点から、本発明に用いられる種実類加工品の種実類は、アーモンドピュ
ーレ、カシューペースト、ココナッツピューレ、といった、加工品の色調が白色に近いも
のであるものが好ましい。
【0036】
<動物性原材料>
本発明の実施の形態に係る動物性原材料とは、食品の原材料であって、その由来が動物
であるものである。動物性原材料を例示すると、牛、豚、鶏、鶏卵、羊、馬、魚、由来の
原材料が挙げられる。本チーズ様食品において、使用を排除しないのは、動物由来の乳で
ある。ただし、動物性原材料を極力使用しない観点から、本チーズ様食品に含有される動
物由来の乳の重量割合は、好ましくは、50重量%以下である。より好ましくは、20重
量%以下であり、さらに好ましくは、10重量%以下であり、最も好ましくは、0重量%
である。
【0037】
<食用油脂>
本発明の実施の形態に係る食用油脂とは、油脂であって、食用に用いられるものである
。本発明において、食用油脂を用いる目的は、風味の調整、及び栄養成分の調整である。
本発明において使用する食用油脂は、植物由来であることが好ましい。より好ましくは、
常温時において液体である、植物由来の食用油である。食用油脂の具体的な例を挙げると
、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブオイル、グレープシードオイル、コーン油、ごま油、米
油、大豆油、なたね油、パーム油、ひまわり油、べに花油、綿実油、等である。
【0038】
本発明において、食用油脂と植物由来加工品は、混合され、均質化されることが好まし
い。これらを均質化することによって、本チーズ様食品の味ムラがなくなり、なめらかな
食味となる。
【0039】
本チーズ様食品における食用油脂の含有量の下限値は、好ましくは、1.0重量%、よ
り好ましくは、5.0重量%、さらに好ましくは、10.0重量%である。本チーズ様食
品における食用油脂の含有量の上限値は、好ましくは、30.0重量%、より好ましくは
、20.0重量%、さらに好ましくは、10.0重量%である。上記数値範囲とすること
により、チーズ様食品に適したコクが付与される傾向にある。
【0040】
<タンパク質原料>
本チーズ様食品の原材料として、本発明が排除しないのは、タンパク質原料の使用であ
る。タンパク質原料の由来を例示すると、乳、畜肉、卵、豆類、穀物等である。動物性原
材料不使用の観点から、大豆等、植物由来の原料であることが好ましい。
【0041】
<調味料>
本チーズ様食品の原材料として、本発明が排除しないのは、調味料の使用である。調味
料とは、材料であって、料理の味を調えるものである。調味料を例示すると、砂糖、食用
酢、みりん、しょうゆ、ウスターソース、塩、うま味調味料、酵母エキス、畜肉エキス等
である。動物性原材料不使用の観点から、畜肉エキス、魚エキス等の動物性原料を使用し
ないことが好ましい。
【0042】
<添加剤>
本チーズ様食品は、各種添加剤が適宜添加されていてもよい。当該添加剤は、通常、飲
食品に添加されるものであり、例示すると、甘味料、酸味料、着色料、pH調整剤、栄養
強化剤、酸化防止剤、香料、増粘剤、凝固剤、乳化剤等である。
【0043】
本発明に係るチーズ様食品を作る上で、糊料を使用することが好ましい。糊料とは、水
に溶解又は分散して粘稠性を生じる高分子物質のことである。糊料は、増粘効果を目的と
して使う「増粘剤」、ゲル化を目的として使用する「ゲル化剤」、粘性を高めて食品成分
を均一に安定させる効果を目的として使用する「安定剤」又は「増粘安定剤」などと呼ば
れる。
【0044】
本チーズ様食品で使用可能な糊料は、特に限定されないが、例示すると、ペクチン、寒
天、澱粉、カラギーナン、グァーガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、アル
ギン酸類、アラビアガム、セルロース、ゼラチン、等である。
【0045】
本チーズ様食品を製造する上で使用する添加剤として、好ましい糊料は、澱粉である。
特に、酸処理澱粉、及びヒドロキシプロピル化澱粉を用いることが好ましい。
【0046】
<酸処理澱粉>
本発明の実施の形態に係る酸処理澱粉とは、澱粉であって、少なくとも酸処理されたも
のである。好ましくは、酸処理のみされた澱粉である。澱粉を酸処理することによる効果
は、酸により澱粉鎖が分解されることである。酸処理澱粉を使用する目的は、常温以下の
温度帯では固形状態であり、かつ、加熱により溶融する特性の付与である。本チーズ様食
品において使用される酸処理澱粉の原料は、もち種穀物由来の澱粉であることが好ましい
。より好ましくは、変性もち種穀物由来である。もち種穀物由来の澱粉を使用する目的は
、加熱溶融時の延伸性の付与である。もち種穀物由来の澱粉を使用することで、後述する
ヒドロキシプロピル化澱粉による延伸性の付与を活かすことが可能となる。ここで由来と
なる穀物は、馬鈴薯、タピオカ、米、麦、コーン、ハイアミロースコーン、ワキシコーン
、甘藷、等が挙げられる。本チーズ様食品に用いられる、もち種穀物由来の酸処理澱粉は
、もち種馬鈴薯由来の酸処理澱粉、或いは、変性もち種馬鈴薯由来の酸処理澱粉である。
なお、酸化澱粉とは、酸化剤を用いて澱粉を酸化した加工澱粉のことであり、酸処理澱粉
とは異なる。
【0047】
<ヒドロキシプロピル化澱粉>
本発明の実施の形態に係るヒドロキシプロピル化澱粉とは、澱粉であって、少なくとも
ヒドロキシプロピル化処理されたものである。好ましくは、ヒドロキシプロピル化処理の
みされた澱粉である。ヒドロキシプロピル化澱粉を使用する目的は、チーズ様食感の付与
と、加熱時の延伸性の付与である。本チーズ様食品において使用されるヒドロキシプロピ
ル化澱粉の原料は、タピオカ由来の澱粉であることが好ましい。もち種穀物由来の酸処理
澱粉と、タピオカ由来のヒドロキシプロピル化澱粉を組み合わせて用いることにより、チ
ーズ様食品の延伸性に影響を受けにくくなり、特に延伸性が向上することを見出した。本
発明における澱粉のヒドロキシプロピル化の度合いは、チーズ様の延伸性を考慮して、適
宜設定すればよい。一般に、ヒドロキシプロピル化の度合いが高い方が、本チーズ様食品
における延伸性も高まる。
【0048】
<多糖類>
本チーズ様食品において、前記澱粉以外の多糖類を用いる目的は、チーズ様食品の延伸
時の、延伸部の太さ(幅)、及び弾力の増大である。前記澱粉と組み合わせて、多糖類を
使用することによって、加熱により単に延伸するだけではなく、延伸部に太さ(幅)をも
たせたものとすることができる。あわせて、本チーズ様食品に弾力を付与することができ
る。これにより、例えば本チーズ様食品をピザ等に使用した際に、本物のチーズのような
外観を有する延伸性と、延伸部の太さ(幅)備えたものとなる。従来のチーズ様食品では
、延伸性を有していたとしても延伸部が細く、チーズソースのような性状を有するものが
多かった。本チーズ様食品に用いられる多糖類は、好ましくは、ヒドロキシプロピル化リ
ン酸架橋澱粉、デキストリン、又は難消化性デキストリンである。
【0049】
<本チーズ様食品の製造方法の概念的構成>
本チーズ様食品の製造方法(以下、この欄では、「本製法」ということもある。)を概
念的に構成するのは、少なくとも、混合である。
【0050】
図1が示すのは、本製法の流れである。この製法を構成するのは、調合(S10)、均
質化(S20)、加熱(S30)、充填(S40)、冷却(S50)、細断(S60)、
容器詰め(S70)である。
【0051】
<調合(S010)>
調合工程で調合されるのは、少なくとも、澱粉、及び植物由来加工品である。澱粉、及
び植物由来加工品を調合する目的は、チーズ様食品用調合液の調製である。調合される原
材料として排除しないのは、食用油脂、動物性原材料、食物繊維、調味料、その他の添加
剤などである。当該調合により得られるのは、調合物である。
【0052】
<均質化(S20)>
本製法が適宜採用するのは、均質化である。調合液を均質化する目的は、性状及び香味
の均質化である。調合液を均質化することによって、植物由来加工品と食用油脂等は乳化
される。これにより、食用油脂と植物原料由来の香味をムラなく感じることができる。乳
化状態は、好ましくは、オイルインウォーター型(以下、「O/W型」ともいう。)であ
る。均質化の手段は、不問である。均質化の手段を例示すると、高圧処理、磨砕処理、ミ
キシング処理、ミル処理、等である。
【0053】
<加熱(S30)>
本製法が適宜採用するのは、加熱である。加熱の目的の一つは、調合物の殺菌である。
加熱のもう一つの目的は、澱粉の糊化である。加熱の方法は、公知の方法で良く、例えば
、プレート式殺菌、及びチューブラー式殺菌方法、等がある。
【0054】
<充填(S40)>
本製法が適宜採用するのは、充填である。加熱された調合物は、容器に充填される。充
填する目的の一つは、チーズ様食品の成形である。充填方法は、公知の方法でよい。本チ
ーズ様食品が充填される容器は、公知の物で良い。
【0055】
<冷却(S50)>
本製法が適宜採用するのは、冷却である。冷却の一つの目的は、調合物の凝固である。
酸処理澱粉を含有する調合物は、冷却されることにより固化する。冷却方法は、公知の方
法でよい。冷却温度は、特に限定されないが、好ましくは、10℃以下である。
【0056】
<細断(S60)>
本製法が適宜採用するのは、細断である。細断する目的の一つは、消費者への提供に適
した形態とすることである。細断方法は、公知の方法で良く、例えば、ダイサー、コミト
ロール、シュレッダー等がある。
【0057】
<容器詰め(S70)>
本製法が適宜採用するのは、容器詰めである。加熱された調合物は、容器に詰められる
。容器詰めの方法は、公知の方法でよい。本チーズ様食品が詰められる容器は、公知の物
で良く、例示すると、プラスチック製容器、ビニル製容器、缶、瓶、紙容器、及びペット
製容器、等である。
【0058】
<本チーズ様食品の特徴>
本チーズ様様食品が有する特徴は、常温以下の温度帯で固形状態であること、熱溶融性
があること、及び延伸性があることである。そのため、冷蔵流通用、及び常温流通用の販
売用途とすることができる。また、特にピザのトッピング用途として使用することが好ま
しい。
【0059】
<常温、冷蔵、又は冷凍流通>
本発明の実施の形態において、「常温」が意味する温度は、25℃である。また、本チ
ーズ様食品が流通可能な温度帯は、「常温流通における温度帯」以下である。ここで、「
常温流通における温度帯」が意味する温度帯は、10℃以上、かつ、35℃以下である。
好ましくは、10℃以上、かつ、20℃以下である。より好ましくは、10℃以上、かつ
、15℃以下である。また、冷蔵流通における温度帯は、0℃以上、かつ、10℃未満で
ある。好ましくは、5℃以上、かつ、10℃未満である。さらに、冷凍流通における温度
帯は、0℃未満である。
【0060】
<熱溶融性>
本発明の実施の形態における熱溶融性とは、常温以下の温度時には固形状態であるもの
が、加熱により流動性を有する性質のことである。加熱の温度は、特に限定されないが、
好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、75℃以上
である。前記温度帯において、流動性が表れやすくなる。本チーズ様食品は、少なくとも
、70℃以上かつ100℃以下で流動性を有する。流動性を有する温度の上限は、特に限
定されないが、高温状態を長時間保持すると、本チーズ様食品中の水分が蒸発し、流動性
が低下し得るため、熱溶融性を計測する際は、上記温度帯で行うことが好ましい。本チー
ズ様食品において、当該性質は、少なくとも、酸処理澱粉を含有することにより付与され
る。
【0061】
<延伸性>
本発明の実施の形態における延伸性とは、物質がのびる性質のことである。本チーズ様
食品において、当該性質は、少なくとも、ヒドロキシプロピル化澱粉を含有することによ
り付与される。本チーズ様食品において、当該延伸性は、加熱時に高まる。本チーズ様食
品は、少なくとも、70℃以上かつ100℃以下で延伸性を有する。本チーズ様食品の延
伸性は、前記食品を加熱した後、その一端を持ち上げることにより評価が可能である。本
チーズ様食品は、50gの前記食品を500W、60秒で電子レンジ加熱し、前記食品の
一端を10cm/秒の速さで伸ばした際、切断されるまでに、少なくとも10cm以上延
伸することが好ましく、より好ましくは、15cm以上である。本評価により10cm以
上延伸することで、例えば、ピザへのトッピング用途で用いた際、本物のチーズらしい伸
びを感じることができる。
【0062】
<澱粉含有量>
本実施の形態に係る澱粉含有量とは、後述する、酸処理澱粉、ヒドロキシプロピル化澱
粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等で示される澱粉の含有量全てを合算したもの
である。本実施の形態に係るチーズ様食品における、澱粉含有量は、特に限定されないが
、澱粉含有量の下限は、5.0重量%であり、好ましくは、10.0重量%であり、より
好ましくは、15.0重量%である。本実施の形態に係るチーズ様食品における、澱粉含
有量の上限は、好ましくは、30.0重量%であり、より好ましくは、25.0重量%で
ある。
【0063】
<酸処理澱粉含有量>
本実施の形態に係るチーズ様食品における、酸処理澱粉の含有量の下限は、5.0重量
%であり、好ましくは、8.0重量%であり、より好ましくは、10.0重量%である。
本実施の形態に係るチーズ様食品における、酸処理澱粉の含有量の上限は、30.0重量
%であり、好ましくは、25.0重量%であり、より好ましくは、20.0重量%である
。酸処理澱粉の含有量を、上記範囲とすることにより、常温以下の温度帯では固形状態で
あり、加熱により好適に溶融するチーズ様食品を製造することができる傾向にある。
【0064】
<ヒドロキシプロピル化澱粉含有量>
本実施の形態に係るチーズ様食品における、ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量の下限
は、0.5重量%であり、好ましくは、1.0重量%である。本実施の形態に係るチーズ
様食品における、ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量の上限は、20.0重量%であり、
好ましくは、10.0重量%であり、より好ましくは、5.0重量%である。ヒドロキシ
プロピル化澱粉の含有量を、上記範囲とすることにより、チーズ様食感と、加熱時の延伸
性が好適に付与されたーズ様食品を製造することができる傾向にある。
【0065】
本実施の形態に係るチーズ様食品における、酸処理澱粉に対するヒドロキシプロピル化
澱粉の含有量の比率は特に限定されないが、好ましくは、0.05以上、かつ0.5以下
、であり、より好ましくは、0.1以上、かつ0.3以下であり、さらに好ましくは、0
.15以上、かつ、0.25以下である。上記範囲とすることにより、チーズ様食感と、
熱溶融性、及び加熱時の延伸性が好適に付与されたチーズ様食品を製造することができる
傾向にある。
【0066】
<多糖類含有量>
本実施の形態に係るチーズ様食品における、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含
有量の下限は、0重量%であり、好ましくは、1.0重量%である。本実施の形態に係る
チーズ用食品における、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量の上限は、5.0
重量%であり、好ましくは、3.0重量%であり、より好ましくは、2.0重量%である
【0067】
本実施の形態に係るチーズ様食品における、デキストリンの含有量の下限は、0重量%
であり、好ましくは、3.0重量%であり、より好ましくは、5.0重量%である。本実
施の形態に係るチーズ用食品における、デキストリンの含有量の上限は、10.0重量%
であり、好ましくは、7.0重量%である。
【0068】
本実施の形態に係るチーズ様食品における、難消化性デキストリンの含有量の下限は、
0重量%であり、好ましくは、3.0重量%であり、より好ましくは、5.0重量%であ
る。本実施の形態に係るチーズ用食品における、グルコマンナンの含有量の上限は、10
.0重量%であり、好ましくは、7.0重量%である。
【0069】
<水分含有量>
本実施の形態に係るチーズ様食品における水分含有量は、特に限定されないが、好まし
くは、40.0重量%以上、かつ、85.0重量%以下である。より好ましくは55.0
重量%以上、かつ、80.0重量%以下である。さらに好ましくは、60.0重量%以上
、かつ、75.0重量%以下である。本発明の実施の形態に係る水分含有量とは、本チー
ズ様食品から、不溶性固形分、可溶性固形分、及び脂質を除いた、本チーズ様食品の純水
部の重量割合である。本チーズ様食品における水分含有量の測定方法は、加熱乾燥法であ
る。具体的な測定機器として、CEM社のSmartSystem5等が挙げられる。
【0070】
また、本実施の形態に係るチーズ様食品における、水分含有量に対する、澱粉含有量の
重量比は、0.20以上、かつ、0.63以下である。好ましくは、0.20以上、かつ
0.55未満である。より好ましくは、0.20以上、かつ、0.40以下である。あわ
せて、本実施の形態に係るチーズ様食品における、水分含有量に対する、酸処理澱粉の重
量比は、0.10以上、かつ、0.70以下である。好ましくは、0.10以上、かつ0
.55以下である。より好ましくは、0.15以上、かつ、0.45以下である。さらに
好ましくは、0.20以上、かつ、0.40以下である。上記範囲とすることにより、常
温以下の温度帯では、固形であり、かつ熱溶融性が好適に付与されたーズ様食品を製造す
ることができる傾向にある。
【0071】
<脂質含有量>
本実施の形態に係るチーズ様食品における脂質含有量は、20.0重量%以下である。
より好ましくは、15.0重量%以下である。より好ましくは、10.0重量%未満であ
る。本発明の実施の形態に係る水分含有量とは、本チーズ様食品から、不溶性固形分、可
溶性固形分、及び水分を除いた、本チーズ様食品が含有する脂質の重量割合である。本チ
ーズ様食品における脂質含有量の測定方法は、公知の方法で良い。具体的には、エーテル
抽出法である。
【0072】
<コレステロール含有量>
本チーズ様食品のコレステロール含有量は、特に限定されないが、好ましくは、3重量
%以下である。より好ましくは、0重量%である。コレステロール含有量の測定方法は、
公知の方法でよい。
【0073】
<タンパク質含有量>
本チーズ様食品のタンパク質含有量は、特に限定されないが、好ましくは、10重量%
以下である。より好ましくは、7.5重量%以下である。さらに好ましくは、5.0重量
%以下である。タンパク質含有量の測定方法は、公知の方法でよい。
【0074】
<総固形分>
本チーズ様食品の総固形分は、特に限定されないが、好ましくは、15.0重量%以上
、かつ50.0重量%以下である。より好ましくは、20重量%以上、かつ、45.0重
量%であり、さらに好ましくは、25.0重量%以上、かつ、40.0重量%以下である
。総固形分の測定方法は、公知の方法でよい。
【0075】
<pH>
本実施の形態に係るチーズ様食品のpHは、特に限定されないが、呈味の観点から、好
ましくは、4.0以上、かつ8.0以下であり、より好ましくは5.0以上、かつ7.0
以下である。
【実施例0076】
[試験1]植物由来加工品の違いによる加熱溶融性、及び延伸性への影響
使用する植物由来加工品の違いが、チーズ様食品の加熱溶融性、及び延伸性に及ぼす影
響を確認した。
【0077】
<実施例1乃至3>
市販の低脂肪豆乳(不二製油社製、商品名:低脂肪豆乳)、高脂肪豆乳(不二製油社製
、商品名:マメマージュと豆乳クリームを1:1で混ぜ合わせたもの、「マメマージュ」は
、登録商標)、ココナッツミルク(東海澱粉社製、商品名:ココナッツミルク)、酸処理
澱粉A(松谷化学社製、商品名:エリアンGEL100)、ヒドロキシプロピル化澱粉(イング
レディオン・ジャパン社製、商品名:National78-0510)、食塩、調味料(富士食品工業
社製、商品名:バーテックスIG20、「バーテックス」は、登録商標)、香料、及び水を、
表1に記載の割合で調合した。その後、フードプロセッサーで均質化処理を行った後、9
0℃達温となるように加熱をし、プラスチック容器に充填後、10℃以下まで冷却するこ
とでチーズ様食品を得た。酸処理澱粉Aは、変性もち種馬鈴薯由来の澱粉を酸処理したも
のであった。ヒドロキシプロピル化澱粉は、タピオカ由来の澱粉をヒドロキシプロピル化
処理したものであった。得られたチーズ様食品に関して、熱溶融性、延伸性、色調、香味
の評価を行った。
【0078】
<熱溶融性の評価>
各試験区分の性状について、目視による評価を行った。常温時において固形状態であり
、かつ、60℃程度まで加熱(4℃保存された各試験サンプル50gを皿に入れ、電子レ
ンジを用いて500W、60秒加熱)したときに流動性を有した場合「○」とした。常温
時において流動性を有する場合、並びに、常温時において固形状態であり、かつ、前記6
0℃程度まで加熱したときにおいても流動性を有しなかった場合「×」とした。
【0079】
<延伸性の評価>
各試験区分の性状について、目視及び計測による評価を行った。冷蔵(4℃)保存され
た各試験サンプル50gを皿に入れ、電子レンジを用いて500W、60秒加熱したもの
の一端を約10cm/秒の速さでスプーンですくい持ち上げ、目視、及び延伸長の計測を
行った。延伸長は、試験サンプルの伸びが切れた直前での、サンプルの長さを計測した。
延伸長が5cm未満であるものを「×」、延伸長が5cm以上かつ、10cm未満である
ものを「△」、延伸長が10cm以上かつ、15cm未満であるものを「○」、延伸長が
15cm以上であるものを「◎」とした。延伸長が10cm以上であれば、外観上チーズ
様の伸びが感じられ、延伸長が15cm以上であれば、外観上、特に好ましいチーズ様の
伸びが感じられた。
【0080】
<色調の評価>
各試験区分の色調について、目視による定性評価を行った。
【0081】
<香味の評価>
各試験区分の香味について、官能による評価を行った。3名の評価者により、各試験区
分がチーズ様の香味を有しているか、定性的な評価を行った。チーズ様の香味を有したも
のの評価を「〇」とした。
【0082】
<結果と考察>
実施例1乃至3の何れの試験区分においても、熱溶融性、及び延伸性を有する結果とな
った。また、何れの試験区分においても、チーズ様の香味を有する結果となった。すなわ
ち、酸処理澱粉A、及びヒドロキシプロピル化澱粉を使用することで、植物由来の加工品
の種類が変化しても、熱溶融性、及び延伸性を有するチーズ様食品を製造することが可能
であることがわかった。
【0083】
【表1】
【0084】
[試験2]澱粉の種類の違いによる加熱溶融性、延伸性への影響
使用する澱粉の種類の違いが、チーズ様食品の加熱溶融性、及び延伸性に及ぼす影響を
確認した。
【0085】
<実施例4、5、参考例1、並びに比較例1乃至7>
高脂肪豆乳、酸処理澱粉A、酸処理澱粉B(イングレディオン・ジャパン社製、商品名
:Elastigel、「Elastigel」は登録商標)、酸化澱粉A(グリコ栄養社製、商品名:ケミ
スター、「ケミスター」は、登録商標)、酸化澱粉B(松谷化学社製、商品名:スタビロ
ーズK、「スタビローズ」は、登録商標)、酸化澱粉C(イングレディオン・ジャパン社
製、商品名:PRECISA604)、酸化澱粉D(松谷化学社製、商品名:スタビローズY、「ス
タビローズ」は、登録商標)、酸化澱粉E(松谷化学社製、商品名:スタビローズTA1
3、「スタビローズ」は、登録商標)、酸化澱粉F(松谷化学社製、商品名:スタビロー
ズPEA、「スタビローズ」は、登録商標)、酸化澱粉G(松谷化学社製、商品名:スタ
ビローズS-10、「スタビローズ」は、登録商標)、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒド
ロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(松谷化学社製、商品名:松谷ロータス)、食塩、調味
料、香料、及び水を、表2、及び3に記載の割合で調合した。その後、フードプロセッサ
ーで均質化処理を行った後、90℃達温となるように加熱をし、プラスチック容器に充填
後、10℃以下まで冷却することでチーズ様食品を得た。酸処理澱粉Bは、サゴヤシ由来
の澱粉を酸処理したものであった。高脂肪豆乳、酸処理澱粉A、ヒドロキシプロピル化澱
粉、食塩、調味料、香料、及び水は、試験1と同じものを使用した。得られたチーズ様食
品に関して、熱溶融性、延伸性、色調、香味の評価を行った。
【0086】
<性状、及び色調の評価>
熱溶融性、延伸性、及び色調の評価は、試験1と同様の方法により行った。
【0087】
<結果と考察>
酸処理澱粉Aの酸処理澱粉を使用した試験区分(実施例4及び5)以外では、延伸性が
十分ではなかった。また、何れの試験区分においても、チーズ様の香味を有する結果とな
った。つまり、もち種由来の穀物の澱粉を酸処理したものを使用することによって、ヒド
ロキシプロピル化澱粉による延伸性を邪魔することなく、本チーズ様食品における延伸性
が付与されることが推察された。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
[試験3]食用油脂の種類の違いによる熱溶融性、及び延伸性への影響
使用する食用油脂の種類の違いが、チーズ様食品の熱溶融性、及び延伸性に及ぼす影響
を確認した。
【0091】
<実施例6乃至10>
高脂肪豆乳、酸処理澱粉A、菜種油(日清オイリオ社製、商品名:日清キャノーラ油)
、大豆油(日清オイリオ社製、商品名:大豆白絞油)、米油(日清オイリオ社製、商品名
:日清こめ油)、ひまわり油(昭和産業社製、商品名:オレインリッチひまわり油)、コ
コナツ油(日清オイリオ社製、商品名:ココナッツオイル)、ヒドロキシプロピル化澱粉
、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、食塩、調味料、香料、及び水を、表4に記載の
割合で調合した。高脂肪豆乳、酸処理澱粉A、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプ
ロピル化リン酸架橋澱粉、食塩、調味料、及び香料は、試験1、及び2と同じものを使用
した。その後、フードプロセッサーで均質化処理を行った後、90℃達温となるように加
熱をし、プラスチック容器に充填後、10℃以下まで冷却することでチーズ様食品を得た
【0092】
【表4】
【0093】
<結果>
用いる食用油脂の種類を変更しても、チーズ様食品の性状に影響はなかった。また、何
れの試験区分においても、チーズ様の香味を有する結果となった。すなわち、何れの食用
油脂であっても、熱溶融性と、十分な延伸性を有するチーズ様食品を作ることができた。
【0094】
[試験4]食物繊維の種類の違いによる延伸部の太さ(幅)への影響
使用する食物繊維の種類の違いが、チーズ様食品の延伸部の太さ(幅)に及ぼす影響を
確認した。
【0095】
<実施例6、並びに、11乃至19、>
高脂肪豆乳、酸処理澱粉A、菜種油(日清オイリオ社製、商品名:日清キャノーラ油)
、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、難消化性デキスト
リン(松谷化学社製、商品名:Eファイバー)、デキストリン(松谷化学社製、商品名:
マルトデキストリンTK16)、イヌリン(フジ日本精糖社製、商品名:FujiFF)、竹食物繊
維(三井製糖社製、商品名:Unicell BS500)、食塩、調味料、香料、及び水を、表5に
記載の割合で調合した。高脂肪豆乳、酸処理澱粉A、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロ
キシプロピル化リン酸架橋澱粉、食塩、調味料、及び香料は、試験1、及び2と同じもの
を使用した。その後、フードプロセッサーで均質化処理を行った後、90℃達温となるよ
うに加熱をし、プラスチック容器に充填後、10℃以下まで冷却することでチーズ様食品
を得た。
【0096】
【表5】
【0097】
<結果と考察>
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量を増加させることで、チーズ様食品の延
伸時の延伸部の太さ(幅)が増大した(実施例6、及び11)。また、デキストリン、及
び難消化性デキストリンの含有量を増加させることでも、チーズ様食品の延伸時の延伸部
の太さ(幅)が増大した(実施例6、12、および13)。一方、イヌリン、竹食物繊維
では、含有量を増加させてもチーズ様食品の延伸時の延伸部の太さ(幅)は増大すること
はなかった(実施例18、及び19)。
【0098】
[試験5]脂質含有量の違いによる熱溶融性、及び延伸性への影響
チーズ様食品における脂質含有量の違いが、チーズ様食品の熱溶融性、及び延伸性に及
ぼす影響を確認した。
【0099】
<実施例20乃至27、並びに、比較例8乃至10>
低脂肪豆乳、高脂肪豆乳、酸処理澱粉A、菜種油、ココナッツ油、ヒドロキシプロピル
化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、食塩、調味料、香料、及び水を、表6に
記載の割合で調合した。高脂肪豆乳、酸処理澱粉A、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロ
キシプロピル化リン酸架橋澱粉、食塩、調味料、及び香料は、試験1、及び2と同じもの
を使用した。菜種油、ココナッツ油は、試験3と同じものを使用した。その後、フードプ
ロセッサーで均質化処理を行った後、90℃達温となるように加熱をし、プラスチック容
器に充填後、10℃以下まで冷却することでチーズ様食品を得た。
【0100】
【表6】
【0101】
<結果と考察>
チーズ様食品における脂質含有量を増加させることにより、加熱時における延伸性が低
下する傾向となった。延伸性が高いという観点から、チーズ様食品における脂質含有量は
、20重量%以下であることが好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明が有用な分野は、チーズ様食品の製造及び販売である。
図1