(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001184
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】銀担持ゼオライト、排ガス浄化触媒、排ガス浄化装置、排ガス浄化方法、及び銀担持ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/02 20060101AFI20241225BHJP
B01J 37/30 20060101ALI20241225BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241225BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20241225BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241225BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20241225BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
C01B39/02
B01J37/30 ZAB
B01J37/08
B01J29/70 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100638
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】小川 亮一
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】大野原 佑
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB01
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4G169ZE01
4G169ZE02
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
【課題】本発明は、炭化水素(HC)吸着特性に優れる銀担持ゼオライト、排ガス浄化触媒、排ガス浄化装置、排ガス浄化方法、及び銀担持ゼオライトの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】銀担持ゼオライトであって、上記銀は、銀イオン、銀単体、及び銀化合物のうちの少なくとも1種として存在しており、上記銀に含まれる銀イオンの含有割合が、0.910以上であり、かつ上記銀の含有量が、銀担持ゼオライトの総重量に対し、15.0質量%以下である、銀担持ゼオライト。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀担持ゼオライトであって、
前記銀は、銀イオン、銀単体、及び銀化合物のうちの少なくとも1種として存在しており、
前記銀に含まれる銀イオンの含有割合が、0.910以上であり、かつ
前記銀の含有量が、銀担持ゼオライトの総重量に対し、15.0質量%以下である、
銀担持ゼオライト。
【請求項2】
前記銀担持ゼオライトが、BEA型の結晶構造を有する、請求項1に記載の銀担持ゼオライト。
【請求項3】
前記銀担持ゼオライトのSARが、20~40である、請求項1に記載の銀担持ゼオライト。
【請求項4】
請求項1に記載の銀担持ゼオライトを有する、排ガス浄化触媒。
【請求項5】
ハニカム基材、及び前記ハニカム基材に担持されている請求項4に記載の排ガス浄化触媒を有する、排ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項4に記載の排ガス浄化触媒で排ガスを浄化することを含む、排ガス浄化方法。
【請求項7】
ゼオライトを銀含有水溶液でイオン交換処理すること、及び
前記イオン交換処理したゼオライトを500℃未満で焼成すること、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の銀担持ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀担持ゼオライト、排ガス浄化触媒、排ガス浄化装置、排ガス浄化方法、及び銀担持ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトのガス等の吸着特性を向上させるため、ゼオライトへ銀の添加が検討されている。また、ガス吸着特性が良好なゼオライトは、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)等を浄化するための排ガス浄化触媒に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、Si/Al2モル比が2.0以上3.0以下、(アルカリ金属+Ag)/Alモル比が0.9以上1.1以下、SiO2、Al2O3、Ag2O、及びアルカリ金属酸化物の総量が90重量%以上であり、なおかつ、銀イオンを5重量%以上含み、ゼオライトは1種である銀担持ゼオライト成形体が記載されている。特許文献1によれば、従来の銀担持ゼオライトに比べ、銀の凝集が抑制され、さらに銀の分散性に優れたゼオライト成形体を提供することができるとされている。
【0004】
特許文献2には、排ガスの浄化用触媒であって、該触媒の最内層にAgを担持したゼオライトを主成分とする炭化水素吸着材層が設けられ、その最外層にはパラジウム、白金およびロジウムのうち少なくとも1種の触媒貴金属成分および酸素吸蔵放出材を含む燃焼触媒層を有し、かつこれらの層の間に酸素吸蔵放出材単独層が形成されていることを特徴とする排ガス浄化用触媒が記載されている。特許文献2によれば、最外層としての燃焼触媒層と最内層としての炭化水素吸着材層の間に、酸素吸蔵放出材の単独層が設けられているため、処理ガスの還元性を緩和させることができ、H2やCOを高濃度含有する還元雰囲気でもHC保持力を損なうことなく、効率よく燃焼浄化することができ、処理ガスの雰囲気を選ぶことなく広範囲の排ガスの浄化に適用することができるとされている。
【0005】
特許文献3には、放射性ヨウ素を含む流体を、銀含有量が50wt%以下である銀含有バインダレスゼオライト成形体からなるヨウ素吸着剤に通過させ、当該ヨウ素吸着剤に放射性ヨウ素を吸着させる、放射性ヨウ素含有流体の処理方法が記載されている。特許文献3によれば、銀含有量が大きく、銀を凝集することなく均一に分散させた状態で担持させた銀含有バインダレスゼオライト成形体からなり、単位体積当たりのヨウ素吸着性能が高く、放射性廃液や気体などの流体に含まれる放射性ヨウ素を安価に吸着除去することができるとされている。
【0006】
特許文献4には、Agを含有すると共に、Agとの合金、または、Agを含む金属酸化物または複合酸化物を形成し、かつ、Ag単独の場合よりも融点が上昇するAgとの合金、または、Agを含む金属酸化物または複合酸化物を形成する成分を含有する炭化水素の吸着材が記載されている。特許文献4によれば、Agを含有させた吸着材の吸着性能の低下を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-154985号公報
【特許文献2】特開2005-144253号公報
【特許文献3】国際公開第2017/146130号パンフレット
【特許文献4】特開2006-21153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、炭化水素(HC)吸着特性に優れる銀担持ゼオライト、排ガス浄化触媒、排ガス浄化装置、排ガス浄化方法、及び銀担持ゼオライトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の手段によって、上記目的を達成するものである。
【0010】
〈態様1〉銀担持ゼオライトであって、
上記銀は、銀イオン、銀単体、及び銀化合物のうちの少なくとも1種として存在しており、
上記銀に含まれる銀イオンの含有割合が、0.910以上であり、かつ
上記銀の含有量が、銀担持ゼオライトの総重量に対し、15.0質量%以下である、
銀担持ゼオライト。
〈態様2〉上記銀担持ゼオライトが、BEA型の結晶構造を有する、態様1に記載の銀担持ゼオライト。
〈態様3〉上記銀担持ゼオライトのSARが、20~40である、態様1に記載の銀担持ゼオライト。
〈態様4〉態様1に記載の銀担持ゼオライトを有する、排ガス浄化触媒。
〈態様5〉ハニカム基材、及び上記ハニカム基材に担持されている態様4に記載の排ガス浄化触媒を有する、排ガス浄化装置。
〈態様6〉態様4に記載の排ガス浄化触媒で排ガスを浄化することを含む、排ガス浄化方法。
〈態様7〉ゼオライトを銀含有水溶液でイオン交換処理すること、及び
上記イオン交換処理したゼオライトを500℃未満で焼成すること、
を含む、態様1~3のいずれか1つに記載の銀担持ゼオライトの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の銀担持ゼオライト、排ガス浄化触媒、排ガス浄化装置、及び排ガス浄化方法によれば、HCを効率よく吸着することができる。また、本発明の銀担持ゼオライトの製造方法によれば、本発明の銀担持ゼオライトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、400℃で焼成した銀の含有量が異なる銀担持ゼオライトのHC吸着量と銀イオンの含有割合を示したグラフである。棒グラフは、HC吸着量を示し、点は銀イオンの含有割合を示す。
【
図2】
図2は、異なる温度で焼成した銀の含有量が8.9wt%である銀担持ゼオライトのHC吸着量と銀イオンの含有割合を示したグラフである。HC吸着量を示し、点は銀イオンの含有割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
《銀担持ゼオライト》
本発明の銀担持ゼオライトに関する。本発明の銀担持ゼオライトにおいて、
上記銀は、銀イオン、銀単体、及び銀化合物のうちの少なくとも1種として存在しており、
上記銀に含まれる銀イオンの含有割合が、0.910以上であり、かつ
上記銀の含有量が、銀担持ゼオライトの総重量に対し、15.0質量%以下である。
【0015】
本発明の銀担持ゼオライトによれば、HCを効率よく吸着することができる。
【0016】
ゼオライトのガス吸着特性の改善のため、銀担持ゼオライトが検討されているが、銀担持ゼオライトに存在する銀は、銀イオン、銀単体(金属銀、銀クラスター)、銀化合物等の状態で存在し、この銀の状態はガス吸着特性に影響するとされている。銀が金属銀や銀クラスターとして存在すると、金属銀や銀クラスターがゼオライトの細孔を閉塞し、その結果、銀担持ゼオライトのガス吸着特性を低下させると考えられている。
【0017】
本発明の銀担持ゼオライトは、ゼオライトに一定量以下の銀が担持されているだけでなく、担持された銀が銀イオンとして多く存在し、HC吸着を阻害する銀単体や銀クラスターの存在量が相対的に少ない。そのため、上記銀担持ゼオライトは、銀担持によるHC吸着特性の向上、及びゼオライト細孔閉塞の抑制により、良好なHC吸着特性を得たと推測される。
【0018】
また、本発明の銀担持ゼオライトは、高温環境に晒されても、銀イオンの割合は大きく変化しないことも見出した。そのため、本発明の銀担持ゼオライトは、自動車用排ガス浄化触媒など高温環境下で使用するガス吸着材料としても期待される。
【0019】
〈銀の形態〉
銀担持ゼオライトの銀は、銀イオン、銀単体、及び銀化合物のうちの少なくとも1種として存在すること、を含む。
【0020】
上記銀は、特に限定されないが、銀イオン、金属銀、銀クラスター等であってもよい。また、上記銀は、特に限定されないが、ゼオライトの表面に存在してもよく、ゼオライトの細孔内に存在してもよい。
【0021】
ゼオライトへの銀の担持は、特に限定されないが、ゼオライトと銀の静電相互作用、イオン結合、共有結合、物理吸着等であってもよい。また、銀とゼオライト以外の成分、例えば、有機バインダー、無機バインダー、カップリング剤、表面処理剤等を用いてゼオライトに銀を担持してもよい。
【0022】
〈銀イオンの含有割合〉
銀担持ゼオライトは、銀に含まれる銀イオンの含有割合が、0.910以上である、を含む。
【0023】
より高い吸着特性の銀担持ゼオライトを得るという観点から、本発明の銀担持ゼオライトの銀イオンの含有割合は、特に限定されないが、0.910以上が好ましい。銀イオンは吸着特性に寄与するのに対し、銀イオン以外の成分(例えば、金属銀や銀クラスター)は吸着特性に寄与しないと考えられるからである。
【0024】
上記銀イオンの含有割合は、0.920以上、0.940以上、0.960以上、0.980以上であってもよい。上記銀イオンの含有割合は、1.000以下、0.995以下、0.990以下であってもよい。
【0025】
銀イオンの含有割合は、UV-vis測定により求めることができる。具体的には、標準物質として硫酸バリウムを用いて、拡散反射法にて、本発明の銀担持ゼオライトのUV-visスペクトルを測定する。次いで、粉体量を規定し、Kubelka-Munk変換して出力する。そして、得られたUV-visスペクトルを波形分離し、波形分離後のUV-visスペクトルにおいて、波長200nm以上250nm以下にピークトップを有するピークを銀イオンのピーク、波長250nm以上600nm以下にピークトップを有するピークを銀イオン以外のピークとして求めることができる。得られたピークのピーク面積から銀担持ゼオライトに含まれる銀の銀イオンの含有割合を求めることができる。
【0026】
銀担持ゼオライトの銀の銀イオン以外の成分は、阻害銀として、特に限定はされないが、下記式より算出してもよい。
(阻害銀の含有割合)=1-(銀イオンの含有割合)
【0027】
〈銀の含有量〉
銀担持ゼオライトは、銀の含有量が銀担持ゼオライトの総重量に対し、15.0質量%以下である、を含む。
【0028】
銀イオンの含有割合が高い銀担持ゼオライトを得るという観点から、特に限定されないが、本発明の銀担持ゼオライトの銀の含有量は、15.0質量%以下が好ましい。
【0029】
上記銀の含有量は13.0質量%以下、11.0質量%以下、9.0質量%以下であってもよい。
【0030】
また、一般的に銀の含有量が多くなるほど、吸着特性が高くなるという観点から、特に限定されないが、本発明の銀担持ゼオライトの銀の含有量は、2.0質量%以上、4.0質量%以上、6.0質量%以上であってもよい。
【0031】
銀の含有量は、蛍光X線分析法(XRF)により求めることができる。具体的には、Axios advanced(PANalytical社製)を使用し、粉体を定量分析法(検量線法)により測定することができる。
【0032】
〈ゼオライトの結晶構造〉
銀担持ゼオライトは、特に限定されないが、BEA型の結晶構造を含んでもよい。
【0033】
銀担持ゼオライトの結晶構造は、BEA型、LTA型、FER型、MWW型、MFI型、MOR型、LTL型、及びFAU型等が挙げられるが、この場合に限られない。上記結晶構造を有するゼオライトを1種又は2種以上含んでもよい。細孔径が大きく、自動車排ガスに含まれるHCを吸着するという観点で、BEA型を含むことが好ましい。
【0034】
〈ゼオライトのSAR〉
銀担持ゼオライトは、特に限定されないが、SARが20~40である、を含んでもよい。
【0035】
ゼオライトは、一般的に、SiO2とAl2O3の複合酸化物である。SARとは、SiO2/Al2O3比率であり、Al2O3に対する、SiO2の含有割合である。
【0036】
ゼオライト骨格に含まれる一部のSiがAlに置き換わることによって、ゼオライト骨格の一部が負に帯電し、ゼオライト細孔内に陽イオンを取り込むことができるとされている。SARが高いゼオライトは、主にSiO2から構成される複合酸化物であり、耐久性や耐熱性が高いが、陽イオンとイオン交換できるイオン交換能が低いとされるが、この場合に限られない。
【0037】
銀担持ゼオライトのSARは、特に限定されないが、ゼオライトの耐久性及び自動車排ガス温度域での使用の観点から、20以上が好ましい。
【0038】
SARの下限は、22以上、24以上、28以上であってもよい。
【0039】
また、銀担持ゼオライトのSARは、特に限定されないが、銀を多く担持させる観点から、40以下が好ましい。
【0040】
SARの上限は。38以下、36以下、34以下、32以下、30以下であってもよい。
【0041】
《排ガス浄化触媒》
本発明の排ガス浄化触媒は、本発明の銀担持ゼオライトを含む。
【0042】
排ガス浄化触媒は、特に限定されないが、貴金属が無機酸化物基材上に担持されたものを用いてもよい。上記貴金属として、例えば、銀、金、銅、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ロジウム、イリジウム、ルテニウム等から選択される1種又は2種以上が用いられるが、この場合に限られない。また、上記無機酸化物基材として、例えば、ゼオライト(SiO2/Al2O3複合酸化物)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ランタン(La2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)等から選択される1種又は2種以上が用いられるが、この場合に限られない。排ガス浄化触媒は、HC吸着特性が高いという観点で、本発明の銀担持ゼオライトを含むことが好ましい。
【0043】
排ガス浄化触媒は、特に限定されないが、自動車等のエンジンから排出される炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)を浄化するために使用してもよい。本発明の銀担持ゼオライトは、HC吸着特性が高いため、本発明の排ガス浄化触媒において、HC吸着触媒として用いることが好ましい。
【0044】
《排ガス浄化装置》
排ガス浄化装置は、ハニカム基材、及びハニカム基材に担持されている本発明の銀担持ゼオライトを含む。
【0045】
基材の形状としては、例えば、ハニカム形状を用いることができる。機材の材質としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、ムライト(3Al2O3-2SiO2)、コージェライト(2MgO-2Al2O3-5SiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックスを用いることができる。
【0046】
排ガス浄化装置を製造する方法として、特に限定されないが、銀担持ゼオライト、及び必要に応じてバインダーを含むスラリーを調整し、これをハニカム基材に塗工した後、乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0047】
《排ガス浄化方法》
本発明の排ガス浄化方法は、本発明の銀担持ゼオライトで排ガスを浄化することを含む。
【0048】
排ガス浄化方法は、特に限定されないが、内燃機関からの排ガスを接触せしめて、排ガスを浄化する方法を採用してもよい。内燃機関として、特に限定されないが、公知の内燃機関を適宜利用でき、例えば、ガソリン車のエンジン、ディーゼルエンジンや燃料消費率の低い希薄燃焼式(リーンバーン)エンジン等が挙げられる。
【0049】
《銀担持ゼオライトの製造方法》
銀含有ゼオライトを製造する本発明の方法は、
ゼオライトを銀含有水溶液でイオン交換処理すること、及び
上記イオン交換処理のゼオライトを500℃未満で焼成すること、
を含む。
【0050】
本発明の銀担持ゼオライトの製造方法によれば、銀イオンの含有割合が高い銀担持ゼオライトを得ることができる。
【0051】
本発明者らは、銀イオンの含有割合が高い銀担持ゼオライトを得るために、銀の含有量と焼成温度に着目した。
【0052】
本発明者らは、銀の含有量が15.0質量%以下の場合に、銀イオンの含有割合の高い銀担持ゼオライトが得られることを見出した。上記銀担持ゼオライトが得られた要因として、理由は明らかではないが、銀の含有量が15.0質量%以下のとき、ゼオライトに存在する銀の存在量が少なく、銀同士の凝集が抑制され、そのため、金属銀や銀クラスターの生成を抑制できたためだと推測される。
【0053】
また、本発明者らは、銀イオンとイオン交換処理したゼオライトを低温(具体的には例えば、500℃未満)で焼成すると、焼成後も銀イオンの含有割合の高い銀担持ゼオライトが得られることも見出した。上記銀担持ゼオライトを得られた要因として、理由は明らかではないが、低温焼成では、イオン交換処理したゼオライトに含まれる銀含有化合物(具体的には例えば、硝酸銀)の熱拡散が抑制され、上記銀含有化合物が分散した状態を維持しつつ分解したためだと推測される。
【0054】
〈銀含有水溶液〉
イオン交換処理に供する銀含有水溶液は、特に限定されないが、銀化合物を含有する水溶液であればよい。例えば、銀含有水溶液は、硝酸銀、硫酸銀、酢酸銀、及び塩化銀等から選択される1種又は2種以上を水に溶解させた水溶液が挙げられるが、この場合に限られない。銀含有水溶液の銀濃度は、特に限定されず、任意である。
【0055】
〈イオン交換処理〉
ゼオライトに銀をイオン交換する処理方法は、特に限定されないが、例えば、ゼオライトを粉砕しないように銀含有水溶液中で撹拌する方法や、カラムに充填したゼオライトに銀含有水溶液を流通させる方法が挙げられる。反応容器、混合時間、流通量等は、特に限定されず、任意である。銀含有水溶液を用いてイオン交換処理したゼオライトは、特に限定されないが、乾燥して水分を除去してもよい。乾燥条件は、例えば、80℃で12時間以上行ってもよく、又は250℃で12時間以上行ってもよいが、この場合に限られない。
【0056】
〈焼成〉
上記イオン交換したゼオライトの焼成温度は、銀担持ゼオライトの銀イオンの含有割合を高くする観点から、500℃未満で焼成することが好ましい。
【0057】
焼成温度は、450℃未満、420℃未満であってもよい。また、焼成温度は、360℃以上、380℃以上、400℃以上であってもよい。
【実施例0058】
以下に示す実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0059】
《実施例1》
〈銀担持ゼオライトAの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を0.76g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を80℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を400℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトAを得た。
【0060】
〈銀担持ゼオライトAの銀の含有量〉
Axios advanced(PANalytical社製)を用いて、XRF分析にて、銀担持ゼオライトAの銀の含有量を求めた。銀担持ゼオライトAを250μm以下に粉砕したものを用いて定量分析法(検量線法)にて求めた。銀担持ゼオライトAの銀の含有量が2.2質量%であることを確認した。
【0061】
〈銀担持ゼオライトAの銀イオンの含有割合〉
UV-2600(島津製作所社製)を用いて、拡散反射法にて銀担持ゼオライトAの銀イオンの含有割合を求めた。標準粉末は硫酸バリウムを使用し、測定波長は200~600nmを測定した。得られた測定値は、粉体量を規定し、Kubelka-Munk変換して出力した。
出力されたデータについて、200~250nmを銀イオン、250~600nmを銀イオン以外の吸収とし、全体の吸収に対する250nmまでの吸収量を銀イオンの含有割合とした。銀担持ゼオライトAの銀イオンの含有割合は0.962であることを確認した。
【0062】
〈銀担持ゼオライトAの阻害銀の含有割合〉
銀担持ゼオライトAの銀イオン以外は、阻害銀として存在すると仮定し、下記式より算出した。銀担持ゼオライトAの阻害銀の含有割合は0.038であることを確認した。
阻害銀の含有割合=1-銀イオンの含有割合
【0063】
≪実施例2≫
〈銀担持ゼオライトBの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を1.90g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を80℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を400℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトBを得た。銀担持ゼオライトBの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトBは、銀の含有量が6.4質量%であり、銀イオンの含有割合が0.983であり、阻害銀の含有割合が0.017であった。
【0064】
《実施例3》
〈銀担持ゼオライトCの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を3.04g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を80℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を400℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトCを得た。銀担持ゼオライトCの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトCは、銀の含有量が8.9質量%であり、銀イオンの含有割合が0.942であり、阻害銀の含有割合が0.058であった。
【0065】
〈銀担持ゼオライトCのHC吸着量〉
HC吸着量は、HC-TPD法(Hydrocarbon-Temperature Programmed Desorption法)にて求めた。HC吸着試験用のサンプルは、銀担持ゼオライトCを圧粉、解砕して、ペレット状に成型して作製した。HC吸着試験は、モデルガスとしてプロピレンを含むガスを使用した。下記条件で、モデルガスを飽和吸着させ、入出の差分の積算量を吸着量とした。銀担持ゼオライトCのHC吸着量は13.00mg/g-zeoliteであった。
HC吸着試験条件
(1)前処理:雰囲気:O2 1%
温度:500℃
時間:5分間
(2)飽和吸着:雰囲気:プロピレン 600ppm、H2O 3%
温度:100℃
時間:破過するまで
【0066】
《実施例4》
〈銀担持ゼオライトDの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を3.78g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を80℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を400℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトDを得た。銀担持ゼオライトDの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトDは、銀の含有量が12.8質量%であり、銀イオンの含有割合が0.949であり、阻害銀の含有割合が0.051であった。
【0067】
〈銀担持ゼオライトDのHC吸着量〉
実施例3と同様の方法で、銀担持ゼオライトDのHC吸着量を求めた。銀担持ゼオライトDのHC吸着量は、11.48mg/g-zeoliteであった。
【0068】
《実施例5》
〈銀担持ゼオライトEの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を3.04g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を250℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を400℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトEを得た。銀担持ゼオライトEの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトEは、銀の含有量が8.9質量%であり、銀イオンの含有割合が0.967であり、阻害銀の含有割合が0.033であった。
【0069】
〈銀担持ゼオライトEのHC吸着量〉
実施例3と同様の方法で、銀担持ゼオライトEのHC吸着量を求めた。銀担持ゼオライトEのHC吸着量は、12.90mg/g-zeoliteであった。
【0070】
《比較例1》
〈銀担持ゼオライトaの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を5.70g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を80℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を400℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトaを得た。銀担持ゼオライトaの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトaは、銀の含有量が19.2質量%であり、銀イオンの含有割合が0.904であり、阻害銀の含有割合が0.096であった。
【0071】
〈銀担持ゼオライトaのHC吸着量〉
実施例3と同様の方法で、銀担持ゼオライトaのHC吸着量を求めた。銀担持ゼオライトaのHC吸着量は、9.60mg/g-zeoliteであった。
【0072】
《比較例2》
〈銀担持ゼオライトbの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を7.56g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を80℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を400℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトbを得た。銀担持ゼオライトbの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトbは、銀の含有量が25.6質量%であり、銀イオンの含有割合が0.813であり、阻害銀の含有割合が0.187であった。
【0073】
〈銀担持ゼオライトbのHC吸着量〉
実施例3と同様の方法で、銀担持ゼオライトbのHC吸着量を求めた。銀担持ゼオライトbのHC吸着量は、7.95mg/g-zeoliteであった。
【0074】
《比較例3》
〈銀担持ゼオライトcの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を3.04g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を250℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を500℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトcを得た。銀担持ゼオライトcの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトcは、銀の含有量が8.9質量%であり、銀イオンの含有割合が0.907であり、阻害銀の含有割合が0.093であった。
【0075】
《比較例4》
〈銀担持ゼオライトdの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を3.04g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を250℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を600℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトdを得た。銀担持ゼオライトdの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトdは、銀の含有量が8.9質量%であり、銀イオンの含有割合が0.770であり、阻害銀の含有割合が0.230であった。
【0076】
《比較例5》
〈銀担持ゼオライトeの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を3.04g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を250℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を700℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトeを得た。銀担持ゼオライトeの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトeは、銀の含有量が8.9質量%であり、銀イオンの含有割合が0.764であり、阻害銀の含有割合が0.236であった。
【0077】
《比較例6》
〈銀担持ゼオライトfの製造〉
蒸留水40gに対し、硝酸銀を3.04g加え、溶解するまで混合した。その後、SAR(SiO2/Al2O3比率)が28のBEA型ゼオライト粉末を20g加え、30分間混合した。得られた混合溶液を250℃で、12時間以上乾燥した。次いで、得られた乾燥粉末を800℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトfを得た。銀担持ゼオライトfの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトfは、銀の含有量が8.9質量%であり、銀イオンの含有割合が0.725であり、阻害銀の含有割合が0.275であることを確認した。
【0078】
〈銀担持ゼオライトfのHC吸着量〉
実施例3と同様の方法で、銀担持ゼオライトfのHC吸着量を求めた。銀担持ゼオライトfのHC吸着量は、7.70mg/g-zeoliteであった。
【0079】
表1に実施例1~5で製造した銀担持ゼオライトA~Eの製造条件及び銀担持ゼオライトの分析結果を示す。また、表2に比較例1~6で製造した銀担持ゼオライトa~fの製造条件及び銀担持ゼオライトの分析結果を示す。
【0080】
【0081】
【0082】
実施例1~5及び比較例1~6は、
(a)ゼオライトを硝酸銀水溶液でイオン交換処理すること、及び
(b)上記イオン交換処理のゼオライトを焼成すること、
により、銀担持ゼオライトを製造した。
【0083】
(a)イオン交換処理において、硝酸銀の仕込み量が少ない場合には、銀イオンの含有割合が高い傾向だった。焼成温度が400℃であり、銀の含有量が15.0質量%より少ないとき、銀イオン含有割合が0.910以上の銀担持ゼオライトを得ることができた(実施例1~4、比較例1、2)。銀の含有量が上記量以下では、ゼオライトに存在する銀の存在量が少なく、そのため、銀同士の凝集が抑制され、金属銀や銀クラスターの生成を抑制できたため、銀イオンの含有割合が高くなったと推測する。
【0084】
(b)焼成において、焼成温度が500℃未満である場合には、銀イオンの含有割合が高い銀担持ゼオライトを得ることができた(実施例3、5)。一方、焼成温度が500℃以上である場合には、銀イオン含有割合が低い銀担持ゼオライトが得られた(比較例3~6)。低温焼成では、イオン交換処理したゼオライトに含まれる硝酸銀の熱拡散が抑制され、硝酸銀が分散した状態を維持しつつ分解したため、銀イオンの含有割合が高くなったと推測する。
【0085】
表3に、実施例3~5、比較例1~2、及び比較例6のHC吸着試験の結果を示す。
【0086】
【0087】
実施例3~5、比較例1~2、及び比較例6では、銀の含有量及び銀イオンの含有割合の異なる銀担持ゼオライトのHC吸着量を測定した。
図1は、焼成温度が同じ、銀の含有量が異なる銀担持ゼオライトのHC吸着量及び銀イオンの含有割合を比較したグラフである。
図1では、銀の含有量が一定量以下であり、銀イオンの含有割合が高いと、銀担持ゼオライトのHC吸着量は高い傾向であった。
【0088】
また、
図2は、銀の含有量が同じであり、焼成温度により銀イオンの含有割合の異なる銀担持ゼオライトのHC吸着量及び銀イオンの含有割合を比較したグラフである。
図2では、銀イオンの含有割合が高い銀担持ゼオライトは、高いHC吸着量を示した。
【0089】
HC吸着量が高い銀担持ゼオライトは、いずれも、銀イオンが多く存在し、阻害銀(金属銀や銀クラスター)の量が少ないため、ゼオライト細孔の閉塞を抑制し、良好な吸着特性を示したと考えられる。ゼオライトへ銀を添加するだけでなく、銀の担持状態を規定することで、高いHC吸着量を有する銀担持ゼオライトを得ることができたと考えられる。
【0090】
《実施例6》
〈銀担持ゼオライトFの製造(銀担持ゼオライトCの追加焼成)〉
実施例3で得られた銀担持ゼオライトCを、更に600℃で、2時間焼成することで、銀担持ゼオライトFを得た。銀担持ゼオライトFの銀の含有量、銀イオンの含有割合、及び阻害銀の含有割合は、銀担持ゼオライトAと同様の方法で求めた。銀担持ゼオライトFは、銀の含有量が8.9質量%であり、銀イオンの含有割合が0.910であり、阻害銀の含有割合が0.090であった。
【0091】
表3に、実施例6の銀担持ゼオライトFの分析結果を、焼成前の銀担持ゼオライトC及び600℃焼成した銀担持ゼオライトdと、比較して示す。
【0092】
【0093】
400℃焼成して得られたゼオライトは、600℃で追加焼成しても、銀イオンの含有割合を維持していた(実施例6、比較例4)。400℃焼成により形成し担持された銀イオンは、より大きなエネルギー、少なくとも600℃焼成より大きなエネルギー、がなければ、銀同士が凝集し金属銀や銀クラスターを形成しないため、銀イオンの含有割合を維持できたと推測する。
【0094】
本発明の銀担持ゼオライト及び銀担持ゼオライトの製造方法の好ましい実施形態を詳細に記載したが、特許請求の範囲から逸脱することなく、変更が可能であることを当業者は理解する。