(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011844
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ウイルス除去装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20250117BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20250117BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61L9/00 C
A61L9/01 F
A61L9/01 B
A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114204
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】501274584
【氏名又は名称】クリーン・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】淡路 敏夫
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CB01
4C180CC03
4C180CC16
4C180DD01
4C180DD03
4C180EA17X
4C180EA28X
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4C180EA65X
4C180EB14X
4C180EB15X
4C180EB17X
4C180GG07
4C180JJ03
(57)【要約】
【課題】液体の散布機構から散布する液体を選定することにより、処理対象の空気が含有するウイルスや液体に含まれるウイルスを迅速に死滅させることができるウイルス除去装置の使用方法を提供すること。
【解決手段】ウイルス除去装置の液体の散布機構3から散布する液体に、ラジカル発生触媒としてアンモニウム塩を含み、ラジカル発生源として亜ハロゲン酸塩を含む水溶液を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスを含有する気体を導入する筒状の処理室と、該処理室内に配置され、気体に含有されているウイルスを捕集する、回転ブラシからなる捕集体と、処理室に配設した液体の散布機構と、捕集体を回転させる回転駆動機構と、処理室に気体を導入する気体導入部と、処理室からウイルスを除去した気体を排出する気体排出部と、気体から除去したウイルスを含む液体を、液体の散布機構に循環させる液体機構とを備えた気体からウイルスを除去する機能を備えたウイルス除去装置の使用方法であって、
前記液体に、ラジカル発生触媒としてアンモニウム塩を含み、ラジカル発生源として亜ハロゲン酸塩を含む水溶液を用いるようにしたことを特徴とするウイルス除去装置の使用方法。
【請求項2】
前記アンモニウム塩が、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウム、スフィンゴミエリン、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、レシチン及びコリン類からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去装置の使用方法。
【請求項3】
前記亜ハロゲン酸塩が、亜塩素酸塩であることを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去装置の使用方法。
【請求項4】
前記ラジカル発生源が、オキソ酸を含むことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去装置の使用方法。
【請求項5】
前記オキソ酸が、ホウ酸、炭酸、オルト炭酸、カルボン酸、ケイ酸、亜硝酸、硝酸、亜リン酸、リン酸、ヒ素、亜硫酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、クロム酸、ニクロム酸、過マンガン酸及びハロゲンオキソ酸からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項4に記載のウイルス除去装置の使用方法。
【請求項6】
前記液体に、さらに、pH調整剤を含む水溶液を用いるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のウイルス除去装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体からウイルスを除去するウイルス除去装置の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウイルスを死滅させたり、除去したりするウイルス除去装置として、乾式や湿式の種々の機構を採用した装置が提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【0003】
ところで、これら従来のウイルス除去装置のうち、湿式の機構を採用した装置、例えば、特許文献3に開示された装置は、気体を、薬液を噴霧したフィルタを通過させることによって、ウイルスを死滅させたり、除去したりするものであるため、乾式の機構と比較して、高いウイルスの除去確率を期待できる反面、装置内を流通する気体の圧損が大きく、処理する空気量に対して装置が大型化するという問題があった。
【0004】
上記従来のウイルス除去装置の有する問題点に鑑み、本件出願人は、先に、気体からウイルスを除去するために、湿式の機構を採用することによって、高いウイルスの除去確率を達成でき、かつ、流通する気体の圧損が小さく、処理する空気量に対して装置を小型化できるウイルス除去装置を提案した(特許文献4参照。)。
【0005】
特許文献4に開示されたウイルス除去装置は、ウイルスを含有する気体を導入する筒状の処理室と、該処理室内に配置され、気体に含有されているウイルスを捕集する、回転ブラシからなる捕集体と、処理室に配設した液体の散布機構と、捕集体を回転させる回転駆動機構と、処理室に気体を導入する気体導入部と、処理室からウイルスを除去した気体を排出する気体排出部と、気体から除去したウイルスを含む液体を、液体の散布機構に循環させる液体機構とを備えることで、高いウイルスの除去確率を達成でき、かつ、流通する気体の圧損が小さく、処理する空気量に対して装置を小型化できるという多くの利点を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-10991号公報
【特許文献2】特開2020-151654号公報
【特許文献3】特開2020-96794号公報
【特許文献4】WO2022-080298
【特許文献5】特開2017-109978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献4には、特許文献4に開示されたウイルス除去装置において、液体の散布機構から散布する液体は、水(又は熱水)のほか、処理対象の空気が含有するウイルスや液体に含まれるウイルスを死滅させることができる成分を含有することができることが記載されている。
【0008】
本発明は、特許文献4に開示されたウイルス除去装置において、液体の散布機構から散布する液体を選定することにより、処理対象の空気が含有するウイルスや液体に含まれるウイルスを迅速に死滅させることができるウイルス除去装置の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のウイルス除去装置の使用方法は、ウイルスを含有する気体を導入する筒状の処理室と、該処理室内に配置され、気体に含有されているウイルスを捕集する、回転ブラシからなる捕集体と、処理室に配設した液体の散布機構と、捕集体を回転させる回転駆動機構と、処理室に気体を導入する気体導入部と、処理室からウイルスを除去した気体を排出する気体排出部と、気体から除去したウイルスを含む液体を、液体の散布機構に循環させる液体機構とを備えた気体からウイルスを除去する機能を備えたウイルス除去装置の使用方法であって、
前記液体に、ラジカル発生触媒としてアンモニウム塩を含み、ラジカル発生源として亜ハロゲン酸塩を含む水溶液を用いるようにしたことを特徴とする。
ここで、「ウイルス」には、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス等のウイルスを含むものである。
【0010】
この場合において、前記アンモニウム塩が、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウム、スフィンゴミエリン、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、レシチン及びコリン類からなる群から選択される少なくとも一つであることができる。
【0011】
また、前記亜ハロゲン酸塩が、亜塩素酸塩であることができる。
【0012】
また、前記ラジカル発生源が、オキソ酸を含むことができる。
【0013】
また、前記オキソ酸が、ホウ酸、炭酸、オルト炭酸、カルボン酸、ケイ酸、亜硝酸、硝酸、亜リン酸、リン酸、ヒ素、亜硫酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、クロム酸、ニクロム酸、過マンガン酸及びハロゲンオキソ酸からなる群から選択される少なくとも一つであることができる。
【0014】
前記液体に、さらに、pH調整剤を含む水溶液を用いるようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウイルス除去装置の使用方法によれば、液体の散布機構から散布する液体を選定することにより、処理対象の空気が含有するウイルスや液体に含まれるウイルスを迅速に死滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のウイルス除去装置の使用方法に使用するウイルス除去装置の一実施例を示す説明図である。
【
図2】同ウイルス除去装置の第1変形実施例を示す説明図である。
【
図3】同ウイルス除去装置の第2変形実施例を示す説明図で、(a)は全体正面図、(b)は(a)のX-X断面図、(c)は(a)のY-Y断面図である。
【
図4】同ウイルス除去装置の第3変形実施例を示す説明図で、(a)は全体正面図、(b)は(a)のX-X断面図、(c)は(a)のY-Y断面図である。
【
図5】同ウイルス除去装置の第4変形実施例を示す説明図で、(a)は全体正面図、(b)は(a)のC-C断面図、(c)は(a)のD-D断面図、(d)は(a)のA-A矢視図、(e)は(a)のB-B断面図、(f)は(a)のE-E断面図、(g)は(f)のF矢視図、(h)は(g)のG矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のウイルス除去装置の使用方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に、本発明のウイルス除去装置の使用方法に使用するウイルス除去装置の一実施例を示す。
このウイルス除去装置は、気体からウイルスを除去するためのもので、気体を導入し、この気体からウイルスを除去する筒状、好ましくは、円筒状の処理室1と、処理室1内に配置され、気体に含有されているウイルスを捕集する、支持体21に毛22を植設した回転ブラシからなる捕集体2と、処理室1に配設した液体の散布機構3と、処理室1の下部に形成した撹拌体4を備えた液体の貯留部5と、捕集体2及び撹拌体4を回転させる回転駆動機構6と、処理室1に気体を導入する気体導入部7と、処理室1からウイルスを除去した気体を排出する気体排出部8と、気体から除去したウイルスを含む液体を排出する液体排出部9とを備えるようにしている。
ここで、「ウイルス」には、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス等のウイルスを含むものである。
【0019】
捕集体2を構成する支持体21に毛22を植設したブラシは、毛22が支持体21の局部に植設されるブラシと、毛22が支持体21のほぼ全体にわたって分散して植設されるブラシとが含まれる。
毛22が支持体21の局部に集中して植設されるブラシとしては、螺旋ブラシ(本実施例)、円盤ブラシなどが含まれる。
【0020】
捕集体2を構成するブラシは、支持体21に植設した毛22の先端が、筒状の処理室1の内周面に接触するようにすることが好ましい。
これにより、捕集体2を構成するブラシによって、処理室1の内周面を常に清浄な状態に維持することができる。
【0021】
ブラシの支持体21及び毛22の材質は、特に限定されることはないが、処理温度を斟酌して、例えば、処理温度が常温あるいは室温程度から百数十℃程度と比較的低温の場合には、比較的耐熱性が低いポリエチレンテレフタレート樹脂やポリアミド樹脂などの各種合成樹脂や、この合成樹脂に金属やカーボンなどの電気良導体の粉末を配合した導電性合成樹脂などを用いることができる。また、これよりも処理温度が高い場合には、耐熱性が高い合成樹脂や、この高耐熱性合成樹脂に金属やカーボンなどの電気良導体の粉末を配合した高耐熱導電性合成樹脂や、金属が用いられる。処理温度を高くする場合には、特に熱伝導率の高い材質、例えば、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼などの金属やセラミックウール、さらに、金属とセラミックの混合物で形成された繊維を選択することにより、処理室内の熱を効率よく捕集体に吸収することができる。また、この捕集体を加熱する加熱手段を設ける場合には、加熱手段の発熱を効率よく捕集体の表面まで伝導させることができる。これにより、装置の始動時の処理能力の立ち上がりを急峻にできるとともに、捕集体の表面でウイルスの死滅処理を進行させることができる。
【0022】
処理室1に配設した液体の散布機構3は、液体を散布するためのノズル31を処理室1の中間位置に配設するようにしている。
【0023】
この場合、ノズル31の配設位置より上方位置Z2のブラシからなる捕集体2の毛を、
ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂や金属等の疎水性(撥水性)の材料で構成することが好ましい。
また、ノズル31の配設位置より下方位置Z1のブラシからなる捕集体2の毛は、これと同じ材料で構成するほか、ポリアミド樹脂ナイロン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等の親水性の材料で構成することもできる。
【0024】
これにより、気体排出部8から排出される気体を、液体の散布機構3のノズル31の配設位置より上方位置Z2で、毛を疎水性(撥水性)の材料で構成したブラシからなる捕集体2によって、液体をふるい落とすことによって、ドライな状態で排出するようにすることができる。
また、液体の散布機構3のノズル31の配設位置より下方位置Z1で、毛を親水性の材料で構成したブラシからなる捕集体2によって、ウイルスを絡め捕るようにすることによって、ウイルスの除去効率を向上することができる。
【0025】
なお、ノズル31の配置位置は、本実施例の処理室1の中間位置に限定されず、処理室1の上部位置に配設したり、捕集体2を構成するブラシの支持体21に設けることもできる。
【0026】
液体の散布機構3から散布する液体は、水(又は熱水)のほか、処理対象の空気が含有するウイルスや液体に含まれるウイルスを死滅させることができる成分を含有することができる。
この成分(薬液)には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、次亜塩素酸水、界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルグリコシド、アルキルアミンオキシド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、純石けん分(脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム)等)、オゾン(水)、二酸化チタン等の光触媒物質等を挙げることができる。
これらの成分(薬液)は、当該成分(薬液)を供給装置(図示省略)からウイルス除去装置に直接導入するようにするほか、ウイルス除去装置に生成装置を組み込むようにすることもできる。
また、処理室1や処理室1の下部に形成した液体の貯留部5等の液体の流路に、紫外線、深紫外線(エキシマレーザ光線)、赤外線等のウイルスを死滅させる光(オゾン(水)を生成させたり、光触媒物質との相互作用を目的とするもの含む。)を照射する光源(図示省略)を備えることによって、ウイルスを死滅させるようにすることもできる。
【0027】
処理室1の下部に形成した撹拌体4を備えた液体の貯留部5は、捕集体2によって捕集され、散布機構3から散布される液体によって洗い落とされたウイルスを含む液体を一旦回収、貯留し、液体排出部9を介して順次排出するようにしたものである。
ここで、撹拌体4は、貯留部5に貯留されたウイルスを含む液体を撹拌した状態で排出することができるものであれば、特に形状は限定されるものではなく、棒形状のもののほか、スクリュー形状のものやプロペラ形状のもの等を採用することができる。
これにより、ウイルスを含む液体を均一化させた状態で円滑に排出することができる。
なお、撹拌体4は、処理対象の気体の性状や処理内容によって、省略することもできる。
【0028】
液体の貯留部5は、処理室1の下部に一体に形成するほか、メンテナンスや大量のウイルスの処理のために、処理室1に取り外し可能に配設することもできる。
【0029】
捕集体2及び撹拌体4を回転させる回転駆動機構6は、捕集体2及び撹拌体4を回転させることで、捕集体2によるウイルスの捕集効果、及び、撹拌体4による液体の貯留部5に貯留されたウイルスを含む液体の均一化効果を高めるためのものである。
なお、本実施例においては、捕集体2の回転軸(ブラシの支持体21)及び撹拌体4の回転軸を同じ軸で構成し、回転駆動機構6を共通の駆動機構にしたが、個別の駆動機構とすることもできる。
また、捕集体2の回転軸(ブラシの支持体21)及び撹拌体4の回転軸は、両端に軸受を設けることによって、例えば、1000rpm以上の高速回転運転を可能にしたが、上端のみに軸受を設けるようにすることもできる。
ここで、捕集体2の回転軸の回転数は、捕集体2によるウイルスの捕集効果、消費エネルギ等を勘案して、100~3600rpm、好ましくは、300~2400rpm、より好ましくは、600~1800rpm程度に設定するようにする。
【0030】
また、液体の貯留部5に回収した液体を、液体の散布機構3に循環させるようにすることにより、液体の使用量及び排水量を低減することができる。
この場合、液体の循環路(図示省略)には、必要に応じて、濾過器、ポンプ、切替弁等を設けることができる。
具体的には、直径200mmの処理室1を備えたウイルス除去装置において、液体の散布機構3からは、通常、数L/min~数百L/min、好ましくは、数十L/minの液体を散布するようにするが、このように、液体を循環使用することによって、液体の使用量及び排水量を散布する液体の1/10以下に低減することができる。
【0031】
ところで、本実施例のウイルス除去装置は、気体が流通するダクトの途中に介在させて設置するほか、独立して設置することもできる。
【0032】
この場合、
図2に示す第1変形実施例に示すように、液体を循環させるためのポンプ32のほか、気体を流動させるためのファン10を設けることができる。
【0033】
また、
図3に示す第2変形実施例に示すように、回転ブラシからなる捕集体2の回転により発生する気流のみの作用により、気体導入部7から処理室1に気体を導入し、処理室1から気体排出部8を介して気体を排出するようにすることができる。
気体導入部7及び気体排出部8を形成する処理室1には、回転ブラシからなる捕集体2の回転により発生する気流による気圧差が生じるように、気流ガイド板11、12を形成し、気体導入部7から処理室1に気体が導入され、処理室1から気体排出部8を介して気体が排出されるようにする。
この場合において、回転ブラシからなる捕集体2は、螺旋ブラシ(本実施例)のほか、円盤ブラシ、毛22が支持体21のほぼ全体にわたって分散して植設されるブラシ等を用いることができる。螺旋ブラシの場合、回転ブラシからなる捕集体2の回転方向により、処理室1の気体の流動方向(下から上方向)と、螺旋ブラシの送り方向を一致させることで気体の流量(処理量)を増大させることができる。
ここで、気流ガイド板11に代えて、
図4に示す第3変形実施例に示すように、回転ブラシからなる捕集体2の回転により発生する気流の作用により低圧となる処理室1の中心部に気体導入部7の処理室1側の開口を形成したり、
図5に示す第4変形実施例に示すように、回転ブラシからなる捕集体(図示省略)の回転により発生する気流(
図5(h)の矢印)の動圧が作用しない方向に向けて気体導入部7の処理室1側の開口を形成したり、気流ガイド板12に代えて、
図5に示す第4変形実施例に示すように、回転ブラシからなる捕集体(図示省略)の回転により発生する気流(
図5(d)の矢印)の動圧が作用する方向に向けて気体排出部8の処理室1側の開口を形成したりすることで、気体導入部7から処理室1に気体が導入され、処理室1から気体排出部8を介して気体が排出されるようにすることもできる。
さらに、気体排出部8を、
図5に示す第4変形実施例に示すように、エルボ形状に形成し、処理室1から気体排出部8を介して気体を上方に向けて排出されるようにすることができる。
なお、気体導入部7を処理室1の上部(上面)に、気体排出部8を処理室1の下部に形成するようにしたり、処理室1及び捕集体2(回転ブラシ)の軸を鉛直方向以外の水平方向や斜め方向に設ける等(いずれも図示省略)、適宜その構成を変更することができる。
これにより、独立して設置したウイルス除去装置を、捕集体2(及び必要に応じて配設することができる撹拌体4)を回転させる回転駆動機構6の駆動力のみで、作動するように構成することができ、装置構成を簡易にすることができるとともに、気体を流動させるためのファン10を設ける場合と比較して、気体の流量(処理量)とウイルス除去能力のバランスを取りやすくすることができる。
【0034】
このウイルス除去装置は、捕集体2によって捕集されたウイルスを、散布機構3から散布される液体によって洗い落とし、処理室1の下部に形成した撹拌体4を備えた液体の貯留部5に一旦回収し、ウイルスを含む液体を液体の貯留部5から液体排出部9を介して順次排出するようにすることにより、ウイルス含有気体の処理を、圧損の小さい低負荷環境で、大量の液体を使用することなく、メンテナンスフリーで、円滑に行うことができ、特に、処理する空気量に対して装置を小型化することができる。
また、気体に含まれるウイルスの除去と併せて、散布機構3から散布される液体にウイルスを死滅させる薬液を用いることにより、液体に含まれる気体から除去したウイルスを死滅させることができる。
そして、このウイルス除去装置は、性能試験によって、広範囲の大きさ、具体的には、少なくとも、気体に含まれる粒子を捕集し、当該気体から除去(粒子径が0.04μmの粒子の除去率:89%、0.1μmの粒子の除去率:95%)できることを確認した。このことから、ウイルス(コロナウイルスの大きさ:約0.1μm)に対して、優れた除去性能を発揮するものであるといえる。
【0035】
ところで、本発明のウイルス除去装置の使用方法は、上記のウイルス除去装置において、液体の散布機構3から散布する液体を選定することにより、処理対象の空気が含有するウイルスや液体に含まれるウイルスを迅速に死滅させることができるようにすることを目的としている。
【0036】
この液体は、具体的には、特許文献5に開示された、ラジカル発生触媒と、ラジカル発生源とを含み、ラジカル発生触媒が、アンモニウム及びその塩の少なくとも一方と、ルイス酸性及びブレーンステッド酸性の少なくとも一方を有する物質との、一方又は両方を含むことを特徴とし、より具体的には、ラジカル発生触媒と、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つとを含み、ラジカル発生触媒が、化学式(XI)で表されるアンモニウム塩を含み、かつ、ラジカル発生触媒のルイス酸性度が、0.4eV以上であり、酸性でないことを特徴とするものである。
【0037】
【0038】
化学式(XI)中、
R11、R21、R31及びR41は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合若しくはアミド結合又は芳香環が含まれていてもよく、R11、R21、R31及びR41は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
X-は、アニオンである。
【0039】
ここで、化学式(XI)で表されるアンモニウム塩が、化学式(XII)で表されるアンモニウム塩であることが好ましい。
【0040】
【0041】
化学式(XII)中、
R111は、炭素数が5~40のアルキル基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合若しくはアミド結合又は芳香環が含まれていてもよく、
R21及びX-は、化学式(XI)と同じである。
【0042】
さらに、化学式(XII)で表されるアンモニウム塩が、化学式(XIII)で表されるアンモニウム塩であることが好ましい。
【0043】
【0044】
化学式(XIII)中、
R111及びX-は、化学式(XII)と同じである。
【0045】
さらに、化学式(XI)で表されるアンモニウム塩が、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウム、スフィンゴミエリン、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、レシチン及びコリン類からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0046】
ここで、塩化ベンゼトニウム(Bzn+Cl-)は、例えば、化学式(XIV)で表すことができる。また、塩化ベンザルコニウムは、例えば、化学式(XIII)中、R111が炭素数8~18のアルキル基であり、X-が塩化物イオンである化合物として表すことができる。
【0047】
【0048】
また、亜ハロゲン酸が、亜塩素酸、亜臭素酸及び亜ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0049】
また、ラジカル発生源が、例えば、オキソ酸又はその塩(例えば、ハロゲンオキソ酸又はその塩)を含んでいてもよい。
オキソ酸としては、例えば、ホウ酸、炭酸、オルト炭酸、カルボン酸、ケイ酸、亜硝酸、硝酸、亜リン酸、リン酸、ヒ素、亜硫酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、クロム酸、ニクロム酸及び過マンガン酸などが挙げられる。ハロゲンオキソ酸は、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸及び過塩素酸などの塩素オキソ酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸及び過臭素酸などの臭素オキソ酸並びに次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸及び過ヨウ素酸などのヨウ素オキソ酸が挙げられる。
【0050】
また、水及び有機溶媒の少なくとも一方を溶媒として含むことが好ましく、これにより、ラジカル発生触媒及びラジカル発生源と、前記水及び有機溶媒の少なくとも一方とを混合することにより製造することができる。
【0051】
さらに、この液体には、pH調整剤を含む水溶液を用いるようにすることができる。
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、リン酸1ナトリウム、リン酸2ナトリウムなどが挙げられる。
【0052】
ここで、この液体は、アンモニウムがラジカル発生触媒として機能するとともに、ルイス酸としての性質を有する。
そして、ラジカル発生触媒のルイス酸性度は、例えば、0.4eV以上であり、ルイス酸性度の上限値は、特に限定されないが、例えば、20eV以下である。
【0053】
この液体は、ウイルス等に対する殺菌剤として用いることができ、濃度が低くても十分な殺菌効果を有し、ウイルス等の原因物質が存在するときにのみ有効成分の水性ラジカルが必要な量だけ生成されるため、安全性が高いものである。
【0054】
次に、この液体をウイルス除去装置の液体の散布機構3から散布する液体に使用した実証試験「室内浮遊ウイルス試験」の結果を示す。
【0055】
[試験目的]
室内に浮遊するウイルスの除去性能を検証すること
【0056】
[試験方法]
試験は、一般社団法人日本電機工業会 JEM 1467 附属書D「浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験」に基づいて実施した。
1)条件
供試菌:インフルエンザウイルス H1N1 Iowa 株
ウイルス除去装置:
図3に示す第2変形実施例のウイルス除去装置
液体:
・水道水
・薬液:塩化ベンザルコニウム、亜塩素酸ナトリウム、リン酸、水酸化ナトリウム水溶液(亜塩素酸ナトリウム100ppm MA-T System(登録商標)(要時生成型亜塩素酸イオン水溶液)システム)、アース製薬社製「Aqua Create(登録商標)Deo-アクアクリエイト デオ」(商品名)
試験チャンバー:約25m
3の密閉系チャンバー
ウイルス除去装置設置位置:試験室の中央
浮遊ウイルスの噴霧方法:ネブライザー
浮遊ウイルスの捕集方法:試験チャンバー中央付近の床上1.2mの位置からインピンジャーを用いて回収した。
試験チャンバー内の温湿度:
・試験区1
開始時 温度19.8℃、湿度27%
終了時 温度17.2℃、湿度99%
・試験区2
開始時 温度20.1℃、湿度33%
終了時 温度16.3℃、湿度99%
・試験区3
開始時 温度21.0℃、湿度34%
終了時 温度18.2℃、湿度99%
試験区の設定:表1
【0057】
【0058】
2)ウイルス液の調製
発育鶏卵で培養したウイルス液をPBSで希釈して調製したウイルス液を使用した。
3)試験ウイルス液の噴霧
ネブライザーに試験ウイルス液5mLを入れたものを、4台用意し、20分間撹拌ファンを稼働させながら噴霧した。噴霧終了後、さらに撹拌ファンを2分間稼働させた。
4)浮遊ウイルスの回収
噴霧終了後、2分間の撹拌直後に0.015%チオ硫酸ナトリウム加細胞維持培地10mLを入れたミゼットインピンジャーを用い、10L/minの流量で10分間チャンバー内の空気を回収し、0分のウイルス力価測定用の回収液とした。
その後、ウイルス除去装置を稼働させ、所定時間経過後に同様にチャンバー内の空気を回収した。なお、回収したインピンジャーの液体を測定用試料とした。
5)ウイルス力価の測定
得られた回収液を10倍階段希釈し、MDCK細胞に0.1mLずつ接種し、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、測定用試料1mL当たりのウイルス力価を算出した。
6)評価
得られた結果から、以下の式に従って初期と比較したときの減少率を算出した。
減少率(%)=(1-1/10減少桁数)×100
7)判定
本試験において、得られる減少率が99%以上(対数減少値:2.0以上)のとき、試験品はウイルスに対する除去効果があると判断した。
【0059】
[試験結果]
試験結果を表2及び表3(試験開始時と比較したときの減少率)に示す。
いずれの試験区も時間が経過するに従い、ウイルス力価の減少が認められた。
その減少率について、試験区1では90分後で99%以上の除去率となり、120分後では99.9%以上の除去率となった。試験区2及び試験区3は30分後には99%以上の除去率となり、60分以降では99.9%以上の除去率となった。
また、ウイルス除去装置の回収液のウイルス力価を測定したところ、いずれの時点も検
出されなかった。
この結果から、ウイルスの減少率はいずれも時間が経過するに従い、浮遊ウイルスの減少が認められ、いずれの処理も99.9%以上の除去率となり、判定基準である99%以上の減少率が得られたことから、ウイルス除去装置はウイルスに対する除去効果があることが分かった。
一方、99.9%の減少を示すまでの時間に差があり、水道水よりも薬剤の方が早く、また、循環水量が多い方が30分後の減少率が高いことが確認された。このことから、水道水に比べて薬液は、処理対象の空気が含有するウイルスや液体に含まれるウイルスを迅速に死滅させることができることが分かった。
【0060】
【0061】
【0062】
ところで、上記実証試験と併せて、ウイルス除去装置の稼働時の音の大きさを測定した。
その結果、液体に水道水を用いたときの音の大きさが58dbであるのに対して、液体に薬液を用いたときの音の大きさが53dbとなった。
これは、薬液に含まれる塩化ベンザルコニウムの作用で液体が泡立ち、これによって、消音効果が得られることが分かった。
【0063】
次に、ウイルス除去装置の液体の散布機構3から散布する液体に食塩水を使用した試験「循環水の塩分濃度測定試験」を行った結果を示す。
【0064】
[試験目的]
ウイルス除去装置の排気中に液体の溶質成分が含まれないことを確認すること
【0065】
[試験方法]
1)25L水道水に食塩(塩化ナトリウム)を溶解し、塩分濃度4.4%の食塩水に設定2)運転時間がスタート時・1h・2h・3h・4h経過したとき及び再加水した後の循環水を採取
3)採取した水の塩分濃度を塩分計で測定
【0066】
[試験結果]
試験結果を表4に示す。
スタート時と再加水した後の循環水の塩分濃度に変化がないことから、ウイルス除去装置の排気中に液体の溶質成分(塩化ナトリウム)が含まれないことを確認した。
この結果から、ウイルス除去装置の液体の散布機構3から散布する液体に、薬液を使用しても、薬液の溶質成分は排出されず、処理対象の空間の環境に影響を与えないことを確認した。
【0067】
【0068】
以上、本発明のウイルス除去装置の使用方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のウイルス除去装置の使用方法は、気体からウイルスを除去するために、湿式の機構を採用することによって、高いウイルスの除去確率を達成でき、かつ、流通する気体の圧損が小さく、処理する空気量に対して装置を小型化できることに加えて、処理対象の空気が含有するウイルスや液体に含まれるウイルスを迅速に死滅させることができる特性を有していることから、ウイルス除去装置の用途に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 処理室
11 気流ガイド板
12 気流ガイド板
2 捕集体(ブラシ)
21 支持体
22 毛
3 液体の散布機構
31 ノズル
32 ポンプ
4 撹拌体
5 液体の貯留部
6 回転駆動機構
7 気体導入部
8 気体排出部
9 液体排出部
10 ファン