(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011845
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】道路交通情報生成装置、道路交通情報生成方法、道路交通情報生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G08G1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114207
(22)【出願日】2023-07-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/自動運転(システムとサービスの拡張)/車線別プローブ等を活用した自動運転制御の技術検討及び評価」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】市川 博一
(72)【発明者】
【氏名】船岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 篤
(72)【発明者】
【氏名】内山 直浩
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181DD02
5H181DD03
5H181DD05
5H181MC12
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】より実用的な道路交通情報を生成する。
【解決手段】本発明の道路交通情報生成装置は、少なくともプローブ情報取得部、ウインカー情報加工部、横方向分析部を備える。プローブ情報取得部は、進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得する。ウインカー情報加工部は、リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とする。横方向分析部は、リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向異常と判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とするウインカー情報加工部と、
リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向異常と判断する横方向分析部と、
を備える道路交通情報生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の道路交通情報生成装置であって、
前記プローブ情報は、前記リンクごとに、前記所定時間ごとの車両の速度に関する速度情報も含んでおり、
下流側に複数のリンクが分岐として存在するリンクおよび当該リンクの上流側の第1所定数のリンクを、前記分岐の分岐部判定リンクとして記録する記録部と、
リンクごとかつ所定時間ごとに、前記速度情報に基づいて速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断する速度分析部と、
分岐部判定リンクではないリンクが横方向異常ではなく、かつ上流側のリンクが横方向異常であり、車線別速度異常もしくは全車線速度異常である場合に、2つのリンクの境界付近に避走点が存在すると判断する第1避走点分析部も備える
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項3】
請求項2記載の道路交通情報生成装置であって、
前記横方向分析部は、分岐部判定リンクではないリンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい第3所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向への横方向大異常と判断し、
上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する、また、上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは上流側とは逆方法の横方向大異常であり、当該リンクの下流側のリンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する第2避走点分析部も備える
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項4】
進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とするウインカー情報加工部と、
分岐部判定リンクではないリンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第3所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向大異常と判断する横方向分析部と、
上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する、また、上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは上流側とは逆方法の横方向大異常であり、当該リンクの下流側のリンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する第2避走点分析部と、
を備える道路交通情報生成装置。
【請求項5】
請求項2記載の道路交通情報生成装置であって、
前記第1避走点分析部は、分岐部判定リンクではないリンクが横方向異常ではなく、隣接する上流側のリンクが横方向異常でなく、車線別速度異常もしくは全車線速度異常であり、もう一つ上流側のリンクが横方向異常の場合に、当該リンクと隣接する上流側のリンクの境界付近に避走点が存在すると判断する
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項6】
請求項2記載の道路交通情報生成装置であって、
前記第1避走点分析部は、分岐部判定リンクではないリンクが速度正常であり、横方向異常のときに、上流側の第3所定数以内のリンクに車線別速度異常のリンクが存在し、かつ、車線別速度異常が連続して存在する範囲内に横方向異常が存在しない場合は、上流側の最初の車線別速度異常のリンクの下流側付近に避走点が存在すると判断する
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項7】
請求項2記載の道路交通情報生成装置であって、
前記第1避走点分析部は、分岐部判定リンクではないリンクが速度正常であり、横方向異常のときに、下流側の第3所定数以内のリンクに車線別速度異常のリンクが存在し、かつ、車線別速度異常が連続して存在する範囲内に横方向異常が存在しない場合は、下流側の最初の車線別速度異常のリンクの上流側付近に避走点が存在すると判断する
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項8】
請求項2から7のいずれかに記載の道路交通情報生成装置であって、
分岐部判定リンクであるリンクが車線別速度異常もしくは全車線速度異常であり、前記複数のリンクのいずれかが速度正常である場合は、前記複数のリンクの速度分析の結果に基づいて分岐の渋滞情報を取得する分岐部渋滞分析部も備える
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項9】
請求項2記載の道路交通情報生成装置であって、
前記速度分析部は、
低速側からの所定の割合の車両である低速側判定車両の速度が低速しきい値より速い場合、速度正常と判断し、
前記低速側判定車両の速度が低速しきい値以下であり、高速側からの所定の割合の車両である高速側判定車両の速度が高速しきい値以上の場合、車線別速度異常と判断し、
前記低速側判定車両の速度が低速しきい値以下であり、前記高速側判定車両の速度が高速しきい値より遅い場合、全車線速度異常と判断する
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項10】
請求項2記載の道路交通情報生成装置であって、
前記速度分析部は、
判断対象の所定時間ごとに、
低速側からの所定の割合の車両である低速側判定車両の速度が低速しきい値より速い場合、暫定速度正常とし、
前記低速側判定車両の速度が低速しきい値以下であり、高速側からの所定の割合の車両である高速側判定車両の速度が高速しきい値以上の場合、暫定車線別速度異常とし、
前記低速側判定車両の速度が低速しきい値以下であり、前記高速側判定車両の速度が高速しきい値より遅い場合、暫定全車線速度異常とし、
暫定速度正常の場合は、速度正常と判断し、
暫定車線別速度異常の場合は、当該所定時間の直前の所定時間が暫定速度正常のときは速度正常と判断し、当該所定時間の直前の所定時間が暫定全車線速度異常のときは全車線速度異常と判断し、当該所定時間の直前の所定時間が暫定車線別速度異常のときは車線別速度異常と判断し、
暫定全車線速度異常の場合は、当該所定時間の直前の所定時間が暫定速度正常のときは速度正常と判断し、当該所定時間の直前の所定時間が暫定全車線速度異常または暫定車線別速度異常のときは全車線速度異常と判断する
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項11】
請求項2記載の道路交通情報生成装置であって、
前記速度分析部は、
判断対象のリンクに隣接する上流側のリンクと下流側のリンクの両方が全車線速度異常の場合は、当該リンクを全車線速度異常とし、
判断対象のリンクに隣接する上流側のリンクと下流側のリンクの両方が車線別速度異常の場合は、当該リンクを車線別速度異常とし、
判断対象のリンクに隣接する上流側のリンクと下流側のリンクが全車線速度異常と車線別速度異常の場合は、当該リンクを全車線速度異常とする
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項12】
請求項2記載の道路交通情報生成装置であって、
リンクが全車線速度異常の場合は、当該リンクの全車線に対して渋滞情報を対応付け、リンクが車線別速度異常の場合は、前記避走点の情報に基づいて避ける方向の車線に渋滞情報を対応付けることで、車線ごとの渋滞情報の先頭と末尾を示す情報を渋滞区間情報として生成する渋滞区間情報生成部も備える
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項13】
請求項1記載の道路交通情報生成装置であって、
前記プローブ情報取得部は、
所定時間ごとに取得するプローブ情報に含まれる車両の数が所定車両数に満たない場合は、当該所定時間よりも前の所定時間のプローブ情報に対して重みを下げる係数を乗算した上で追加し、重み付きの車両数が前記所定車両数と同じ数になるようにしたプローブ情報を、当該所定時間のプローブ情報として利用する
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項14】
請求項2,9~11のいずれかに記載の道路交通情報生成装置であって、
前記プローブ情報は、前記リンクごとに、前記所定時間ごとの車両のブレーキに関するブレーキ情報も含んでおり、
リンクにおけるブレーキ情報が示すブレーキの数が第4所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるブレーキ情報が示すブレーキの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクのブレーキの数をブレーキ合計とするブレーキ情報加工部も備え、
前記速度分析部は、ブレーキ合計にも基づいて速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断する
ことを特徴とする道路交通情報生成装置。
【請求項15】
進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得ステップと、
リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とするウインカー情報加工ステップと、
リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向異常と判断する横方向分析ステップと、
を実行する道路交通情報生成方法。
【請求項16】
請求項15記載の道路交通情報生成方法であって、
前記プローブ情報は、前記リンクごとに、前記所定時間ごとの車両の速度に関する速度情報も含んでおり、
あらかじめ、下流側に複数のリンクが分岐として存在するリンクおよび当該リンクの上流側の第1所定数のリンクを、前記分岐の分岐部判定リンクとして記録しておき、
リンクごとかつ所定時間ごとに、前記速度情報に基づいて速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断する速度分析ステップと、
分岐部判定リンクではないリンクが横方向異常ではなく、かつ上流側のリンクが横方向異常であり、車線別速度異常もしくは全車線速度異常である場合に、2つのリンクの境界付近に避走点が存在すると判断する第1避走点分析ステップも実行する
ことを特徴とする道路交通情報生成方法。
【請求項17】
進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得ステップと、
リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とするウインカー情報加工ステップと、
分岐部判定リンクではないリンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第3所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向大異常と判断する横方向分析ステップと、
上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する、また、上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは上流側とは逆方法の横方向大異常であり、当該リンクの下流側のリンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する第2避走点分析ステップと、
を実行する道路交通情報生成方法。
【請求項18】
請求項1~7のいずれかに記載の道路交通情報生成装置としてコンピュータを機能させるための道路交通情報生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関するプローブ情報に基づいて車線ごとの道路交通情報を生成する道路交通情報生成装置、道路交通情報生成方法、道路交通情報生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に関するプローブ情報に基づいた道路交通情報に関しては、非特許文献1および非特許文献2のp.53~60に示された“車両プローブによる車線別道路交通情報に係る技術開発”などが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】パシフィックコンサルタンツ株式会社、“成果報告書”,2022年3月、[令和5年6月19日検索]、インターネット<https://www.sip-adus.go.jp/rd/rddata/rd05/208.pdf>.
【非特許文献2】国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、“SIP第2期「自動運転(システムとサービスの拡張),最終成果報告書(2018-2022)」”,2023年3月6日、[令和5年6月1日検索]、インターネット<https://www.sip-adus.go.jp/file/rd05/rd-result_all.pdf>.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術はプローブ情報の利用に関する実証実験などに関するものであり、実用化に向けた検討を進める必要があるという課題がある。
本発明は、このような状況に鑑みて行われたものであり、より実用的な道路交通情報を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の道路交通情報生成装置は、少なくともプローブ情報取得部、ウインカー情報加工部、横方向分析部を備える。プローブ情報取得部は、進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得する。ウインカー情報加工部は、リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とする。横方向分析部は、リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向異常と判断する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の道路交通情報生成装置によれば、プローブ情報に含まれるウインカー情報を、ウインカーの数が多いときに上流側のウインカーの数と合算した移動合計を求める。したがって、事故、工事などが原因で生じている避けるべき点(避走点)を避けている車両の数を明確に認識できる。よって、より実用的な道路交通情報を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1の道路交通情報生成装置を含むシステムの機能構成例を示す図。
【
図2】実施例1の道路交通情報生成装置の処理フロー例を示す図。
【
図3】下流側に複数のリンクが分岐として存在する場合のイメージを示す図。
【
図4】プローブ情報が示しているあるリンクにおける所定時間ごとの車両数の例を示す図。
【
図5】ウインカーの数と横方向の異常の判断の例を示す図。
【
図7】速度情報に基づいて速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断する方法のイメージを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0009】
図1に実施例1の道路交通情報生成装置を含むシステムの機能構成例を示す。
図2に実施例1の道路交通情報生成装置の処理フロー例を示す。
図1に示しているシステムは、道路交通情報生成装置100、ネットワーク900、プローブ情報提供装置810,820で構成される。道路交通情報生成装置100とプローブ情報提供装置810,820は、ネットワーク900を介して通信可能に接続されている。この図では、プローブ情報提供装置は2つだが、3つ以上のプローブ情報提供装置が存在しても構わない。
【0010】
道路交通情報生成装置100は、少なくともプローブ情報取得部110、ウインカー情報加工部120、横方向分析部140を備える。道路交通情報生成装置100は、速度分析部150、記録部190、第1避走点分析部210、第2避走点分析部220、分岐部渋滞分析部230、渋滞区間情報生成部240も備えればよい。また、道路交通情報生成装置100は、ブレーキ情報加工部130も備えてもよい。
【0011】
記録部190は、下流側に複数のリンクが分岐として存在するリンクおよび当該リンクの上流側の第1所定数のリンクを、分岐の分岐部判定リンクとしてあらかじめ記録する。
図3は、下流側に複数のリンクが分岐として存在する場合のイメージを示す図である。リンクとは、進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間である。区間の長さは、例えば、50m,100m,200mなどである。後述するプローブ情報は、リンクごとかつ所定時間ごとに取得されるので、車両を特定できない程度の数のプローブ情報が得られるように区間の長さは定められる。本線と分岐は進行方向が異なるので、リンクは別々となる。
【0012】
図3においては、リンク1~7は本線のリンクであり、リンク21,22は分岐のリンクである。「下流側」とは、進行方向側であり、リンク3から見ると、リンク2,リンク22が下流側である。つまり、リンク3は、下流側に複数のリンク2,22が分岐として存在する。「上流側」とは、進行方向とは逆側である。
図3での「第1所定数」は2であり、リンクの区間の長さなどに応じて値は適宜定めればよい。
【0013】
プローブ情報取得部110は、進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両の数および車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得する(S110)。プローブ情報は、リンクごとに、所定時間ごとの車両の速度に関する速度情報も含めばよい。また、プローブ情報は、リンクごとに、所定時間ごとの車両の数および車両のブレーキに関するブレーキ情報も含んでもよい。「プローブ情報」は、個々の車両の情報は分からないように加工された、リンクごと、所定時間ごとの車両に関する情報であり、プローブ情報提供事業者から提供される。
図1のプローブ情報提供装置810,820は、プローブ情報提供事業者が管理する装置である。
【0014】
図4は、プローブ情報が示しているあるリンクにおける所定時間ごとの車両数の例を示している。
図4の例では、「所定時間」は5分ごとである。プローブ情報取得部110は、所定時間ごとでは取得するプローブ情報に含まれる車両の数が所定車両数に満たない場合は、当該所定時間よりも前の所定時間のプローブ情報も利用すればよい。その際は、当該所定時間よりも前の所定時間のプローブ情報に対して重みを下げる係数を乗算した上で追加し、重み付きの車両数が所定車両数と同じ数になるようにしたプローブ情報を、当該所定時間のプローブ情報として利用すればよい。「所定車両数」は、道路交通情報生成の精度を維持するために必要と考える数に適宜定めればよい。
【0015】
例えば、所定車両数を10と設定したとする。
図4の情報生成時刻18:55では、原則は18:50-18:55にリンクに存在した車両でプローブ情報が生成される。しかし、4台では車両数が所定車両数よりも少ないので、18:45-18:50の5台分の情報も情報生成時刻18:55のプローブ情報に利用する。また、2つの所定時間分を合わせても9台であり、1台足りない。そこで、18:40-18:45の10台分の情報に、足りない台数(1台)を車両数(10台)で除算した値である0.1を乗算してプローブ情報に利用すればよい。
図4の情報生成時刻19:00では、原則は18:55-19:00にリンクに存在した車両でプローブ情報が生成される。しかし、8台では車両数が所定車両数よりも少ないので、18:50-18:55の4台分の情報も情報生成時刻19:00のプローブ情報に利用する。2つの所定時間分を合わせると12台になるので、18:50-18:55の情報には重みをかける。18:50-18:55の車両の情報には、足りない台数(2台)を車両数(4台)で除算した値である0.5を乗算してプローブ情報に利用すればよい。ウインカーの数、ブレーキの回数には、重みを乗算した数値を用いればよい。速度については、後述する車両の割合を考慮した速度に関する処理で利用するので、台数を計算する際に重みを乗算した台数を用いればよい。
【0016】
ウインカー情報加工部120は、リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とする(S120)。
図5は、ウインカーの数と横方向の異常の判断の例を示す図である。ある所定の時間における各リンクでのウインカーの数、移動合計、横方向の異常の判断結果が示されている。「右ウインカー」は右方向へ車線変更するためのウインカー情報、「左ウインカー」は左方向へ車線変更するためのウインカー情報である。
図5の例では、「第1所定値」を“1”、「あらかじめ定めた数」を“1”としている。ただし、「第1所定値」と「あらかじめ定めた数」は、リンクの長さ、避走点が存在する場合にどの程度手前から車線変更を行うかなどを考慮して適宜定めればよい。移動合計には、移動が必要な状況を強調する効果がある。
【0017】
リンク6の「右ウインカー」は“1”であり、リンク7の「右ウインカー」が“0”なので、リンク6の「移動合計右」は“1”である。リンク5の「右ウインカー」は“1”であり、リンク6の「右ウインカー」が“1”なので、リンク5の「移動合計右」は“2”である。リンク4の「右ウインカー」は“0”であり、第1所定値より小さいので、リンク4の「移動合計右」は“0”である。リンク3の「右ウインカー」は“3”であり、リンク4の「右ウインカー」が“0”なので、リンク3の「移動合計右」は“3”である。リンク2の「右ウインカー」は“3”であり、リンク3の「右ウインカー」が“3”なので、リンク2の「移動合計右」は“6”である。リンク1の「右ウインカー」は“0”であり、第1所定値より小さいので、リンク1の「移動合計右」は“0”である。「移動合計左」の行の値も同様の処理を行って得ている。
【0018】
横方向分析部140は、リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向異常と判断する(S140)。
図5の例では、「第2所定値」は、“2”に設定されている。リンク4は「移動合計右」は“0”,「移動合計左」は“2”であり、差の絶対値は第2所定値以下なので、「横方向異常」は「正常」と判断されている。リンク3は「移動合計右」は“3”,「移動合計左」は“0”であり、差の絶対値は第2所定値より大きいので、「横方向異常」は「左異常」と判断されている。同様に、リンク2は「移動合計右」は“6”,「移動合計左」は“0”であり、差の絶対値は第2所定値より大きいので、「横方向異常」は「左異常」と判断されている。なお、横方向分析部140は、分岐部判定リンクではないリンクに対してのみ、リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向異常と判断してもよい。
【0019】
横方向分析部140は、さらに、リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい第3所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向への横方向大異常と判断してもよい(S140)。「第3所定値」は、「第2所定値」よりも大きい値を設定する。例えば、
図5では「第3所定値」を“4”に設定しているとする。まず、リンク2,3は分岐部判定リンクではないリンクとする。その上で、リンク3は「移動合計右」は“3”,「移動合計左」は“0”であり、差の絶対値は第3所定値以下なので、「横方向大異常」は「正常」と判断されている。リンク2は「移動合計右」は“6”,「移動合計左」は“0”であり、差の絶対値は第3所定値より大きいので、「横方向大異常」は「左大異常」と判断されている。なお、横方向分析部140は、分岐部判定リンクではないリンクに対してのみ、右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第3所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向への横方向大異常と判断してもよい。
【0020】
道路交通情報生成装置100がブレーキ情報加工部130も備える場合、ブレーキ情報加工部130は、リンクにおけるブレーキ情報が示すブレーキの数が第4所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるブレーキ情報が示すブレーキの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクのブレーキの数をブレーキ合計とする(S130)。
図6は、ブレーキ数とブレーキ合計の関係を示す図である。
図6の例では、「第4所定値」を“5”、「あらかじめ定めた数」を“1”としている。ただし、「第4所定値」と「あらかじめ定めた数」は、リンクの長さ、渋滞が存在する場合にどの程度手前からブレーキ操作を行うかなどを考慮して適宜定めればよい。ブレーキ合計には、減速が必要な状況を強調する効果がある。
【0021】
速度分析部150は、リンクごとかつ所定時間ごとに、プローブ情報に含まれる速度情報に基づいて速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断する(S150)。
図7は、速度情報に基づいて速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断する方法のイメージを説明するための図である。横軸は車両の速度、縦軸は横軸で示した速度以下の車両の割合を示している。例えば、速度分析部150は、低速側からの所定の割合の車両である低速側判定車両の速度が低速しきい値より速い場合、速度正常と判断する。
図7では線151と線152が該当する。つまり、低速しきい値よりも遅い車両が少ないので、速度が正常な状態と判断している。速度分析部150は、低速側判定車両の速度が低速しきい値以下であり、高速側からの所定の割合の車両である高速側判定車両の速度が高速しきい値以上の場合、車線別速度異常と判断する。
図7では線153が該当する。速度分析部150は、低速側判定車両の速度が低速しきい値以下であり、高速側判定車両の速度が高速しきい値より遅い場合、全車線速度異常と判断する。
図7では線154が該当する。なお、速度分析部150は、ブレーキ合計にも基づいて速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断してもよい。例えば、ブレーキ合計が多い場合には低速しきい値の速度を高くし、ブレーク合計が少ないときは低速しきい値の速度を低くしてもよい。
【0022】
上記の説明では、速度分析部150は、所定時間ごとに独立に判断している。しかし、直前の判断も考慮して、速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断してもよい。例えば、速度分析部150は、判断対象の所定時間ごとに、まず暫定的に暫定速度正常、暫定車線別速度異常、暫定全車線速度異常を判断する。具体的には、速度分析部150は、低速側からの所定の割合の車両である低速側判定車両の速度が低速しきい値より速い場合、暫定速度正常とする。速度分析部150は、低速側判定車両の速度が低速しきい値以下であり、高速側からの所定の割合の車両である高速側判定車両の速度が高速しきい値以上の場合、暫定車線別速度異常とする。速度分析部150は、低速側判定車両の速度が低速しきい値以下であり、高速側判定車両の速度が高速しきい値より遅い場合、暫定全車線速度異常とする。
【0023】
その後、速度分析部150は、直前の所定時間の暫定的な判断も考慮して速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断する。具体的には、速度分析部150は、当該所定時間の暫定的な判断が暫定速度正常の場合は、直前の所定時間の暫定的な判断に関わらず、速度正常と判断する。速度分析部150は、暫定車線別速度異常の場合は、当該所定時間の直前の所定時間が暫定速度正常のときは速度正常と判断し、当該所定時間の直前の所定時間が暫定全車線速度異常のときは全車線速度異常と判断し、当該所定時間の直前の所定時間が暫定車線別速度異常のときは車線別速度異常と判断する。速度分析部150は、暫定全車線速度異常の場合は、当該所定時間の直前の所定時間が暫定速度正常のときは速度正常と判断し、当該所定時間の直前の所定時間が暫定全車線速度異常または暫定車線別速度異常のときは全車線速度異常と判断する。このように、直前の暫定的な判断も考慮すれば、車両の速度の分布が判断の境界付近で不安定に変化しているときに、判断が頻繁に変化することを避けることができる。
【0024】
上記の説明では、速度分析部150は、リンクごとに独立に判断している。しかし、上流側および下流側のリンクの判断も考慮して、速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断してもよい。例えば、速度分析部150は、まず、判断対象のリンクに隣接する上流側のリンクと下流側のリンクの両方が全車線速度異常の場合は、当該リンクを全車線速度異常とする。その後、速度分析部150は、判断対象のリンクに隣接する上流側のリンクと下流側のリンクの両方が車線別速度異常の場合は、当該リンクを車線別速度異常とする。最後に、速度分析部150は、判断対象のリンクに隣接する上流側のリンクと下流側のリンクが全車線速度異常と車線別速度異常の場合は、当該リンクを全車線速度異常とする。このように、直前の上流側と下流側のリンクの判断も考慮すれば、車両の速度の分布が判断の境界付近で不安定に変化しているときに、判断が頻繁に変化することを避けることができる。
【0025】
第1避走点分析部210は、分岐部判定リンクではないリンクが横方向異常ではなく、かつ上流側のリンクが横方向異常であり、車線別速度異常もしくは全車線速度異常である場合に、2つのリンクの境界付近に避走点が存在すると判断する(S210)。
図5において、リンク1~7は、分岐部判定リンクではないリンクとする。そして、
図5には示していないが、リンク2が車線別速度異常とする。この場合、第1避走点分析部210は、リンク1とリンク2の境界付近の左側に避走点があると判断する。「避走点」とは、避けて走行すべき点を意味しており、原因としては事故車、工事、インターチェンジなどでの合流などいろいろな原因が考えられる。例えば、2車線の道路においてリンク1とリンク2の境界付近の左車線に故障車両が停止しているとする。通過するためには、右車線に移動しなければならないので多数の車両が右ウインカーを使用する。早期に右車線に移動した方がいいことに気付いた運転手の場合、リンク3で右車線に移動することもあり得るので、リンク3でも右ウインカーが使用されている。「避走点」は、横方向異常が示している方向(
図5のリンク1とリンク2の境界付近は左側)に存在する。第1避走点分析部210は、避走点が右側か左側かも、横方向異常の情報に基づいて判断すればよい。
【0026】
第1避走点分析部210は、さらに、分岐部判定リンクではないリンクが横方向異常ではなく、隣接する上流側のリンクが横方向異常でなく、車線別速度異常もしくは全車線速度異常であり、もう一つ上流側のリンクが横方向異常の場合に、当該リンクと隣接する上流側のリンクの境界付近に避走点が存在すると判断してもよい。
図5においては、リンク1の下流側のリンクは示されていないで、リンク1の下流側のリンクをリンク0とし、横方向異常ではないとする。また、リンク1は車線別速度異常とする。この場合、リンク0とリンク1の境界付近の左側に避走点があると判断する。この判断では、リンク1は車線別速度異常の状態なので、第1避走点分析部210は、まだ避走点を通過していないと考え、リンク0とリンク1の境界付近の左側に避走点があると判断している。
【0027】
また、第1避走点分析部210は、分岐部判定リンクではないリンクが速度正常であり、横方向異常のときに、上流側の第3所定数以内のリンクに車線別速度異常のリンクが存在し、かつ、車線別速度異常が連続して存在する範囲内に横方向異常が存在しない場合は、上流側の最初の車線別速度異常のリンクの下流側付近に避走点が存在すると判断してもよい。例えば、合流が原因で車線別速度異常が生じていて、合流後は速度正常になっているが車線ごとの速度には差がある場合に、速度正常のリンクで車線を変更する車両が多いことがあり得るからである。さらに、第1避走点分析部210は、分岐部判定リンクではないリンクが速度正常であり、横方向異常のときに、下流側の第3所定数以内のリンクに車線別速度異常のリンクが存在し、かつ、車線別速度異常が連続して存在する範囲内に横方向異常が存在しない場合は、下流側の最初の車線別速度異常のリンクの上流側付近に避走点が存在すると判断してもよい。例えば、車両の前方(下流側)に車線別速度異常があることを運転手が認識できた場合、車線別速度異常があるリンクより上流側の速度正常のリンクで車線を変更することがあり得るからである。
【0028】
車線別速度異常が生じている範囲内に横方向異常が生じていない場合、右側に避走点があるか左側に避走点があるか判断できない。このような場合であっても、車線別速度異常が生じているリンクの上流側もしくは下流側の「第3所定数」以内の速度正常のリンクに、横方向異常が生じている場合がある。この場合は、避走点が右側か左側かの判断に、速度正常のリンクで生じた横方向異常の情報を用いればよい。「第3所定数」はリンクの長さなどに応じて適宜定めればよく、例えば“2”などにすればよい。「第3所定数」を大きくしすぎると、車線別速度異常に関係ない横方向異常に基づいて避走点が右側か左側かを判断してしまうリスクがある。よって、「第3所定数」は適切に設定する必要があるし、適切な設定になるように運用後も適宜見直しを行えばよい。
【0029】
第2避走点分析部220は、上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する。また、第2避走点分析部220は、上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは上流側とは逆方法の横方向大異常であり、当該リンクの下流側のリンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する(S220)。例えば、全車線速度異常が連続している区間において、車線ごとに少し速度が異なることはある。このような場合は、速度に関する情報(速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常)を使用しないで、横方向分析部140の分析結果にのみ基づいて避走点を判断することが望まれる。そこで、横方向の異常が大きい場合は、第2避走点分析部220が、速度の異常を考慮しないで避走点を判断する。「第2所定数」が“1”であれば、
図5の場合は、リンク1とリンク2の境界付近の左側に避走点があると判断する。ただし、「第2所定数」が“2”であれば、
図5の場合は、第2避走点分析部220は、避走点が存在するとは判断しない。例えば、全車線速度異常が連続して発生しやすい区間において、横方向の異常が大きいリンクが連続することもあり得る。「第2所定数」は道路の実情を考慮して適宜定めればよい。また、避走点を通過すると避けていた側に戻る車両のウインカーが多くなることもある。そのため、横方向大異常の方向が一時的に変わり、その下流側には横方向大異常がない場合は、横方向大異常の方向が変わった位置周辺に避走点が存在することが多い。
【0030】
分岐部渋滞分析部230は、分岐部判定リンクであるリンクが車線別速度異常もしくは全車線速度異常であり、分岐として存在する複数のリンクのいずれかが速度正常である場合は、分岐として存在する複数のリンクの速度分析の結果に基づいて分岐の渋滞情報を取得する(S230)。下流側に複数のリンクがある場合は、分岐方向に進みたい車両は分岐方向へのウインカーを使用する。このように、分岐部判定リンクでは、ウインカーの使用頻度が多くなる。したがって、渋滞の状況の分析にウインカー情報を利用しにくい。一方、複数のリンクのいずれかが速度正常の場合は、分岐部判定リンクが車線別速度異常もしくは全車線速度異常である原因は、分岐部判定リンク以外のリンクにあると考えられる。よって、分岐として存在する複数のリンクの速度分析の結果に基づいて、分岐の渋滞情報を取得すればよい。
【0031】
「分岐の渋滞情報」は、少なくとも速度に関する情報を含んでおり、望ましくは車線別の速度に関する情報を含む。ただし、例えば避走点などの速度以外の情報を含んでもよい。例えば、下流側の分岐側リンクが全車線速度異常、下流側の本線側リンクが速度正常、分岐部分から連続して上流側のリンク(本線のリンク)が車線別速度異常もしくは全車線速度異常の場合を考える。本線を進む車両に対しては、車線別速度異常または全車線速度異常である最も上流のリンクと、そのリンクの上流側のリンクとの間の分岐側に避走点があるとすればよい。一方、分岐に進む車両に対しては、車線別速度異常もしくは全車線速度異常である最も上流のリンクまでに分岐側の車線に移動するように指示すればよい。例えば、分岐に進む車両に対しては、分岐側の車線が全線速度異常であること、および車線別速度異常もしくは全車線速度異常である最も上流のリンクの情報を送ればよい。次に、下流側の分岐側リンクが速度正常、本線側リンクが全車線速度異常、分岐部分から連続して上流側のリンク(本線のリンク)が車線別速度異常または全車線速度異常の場合を考える。どちらに進む車両に対しても避走点を設定する必要はない。本線側に進む車両に対して本線側リンクが全車線速度異常である情報を送ればよい。分岐に進む車両に対しては、車線別速度異常もしくは全車線速度異常である最も上流のリンクまでの間に分岐側の車線に移動するように指示すればよい。例えば、車線別速度異常もしくは全車線速度異常である上流側のリンクの情報を送ればよい。このように、分岐として存在する複数のリンクの速度分析の結果に基づいて分岐の渋滞情報を取得し、処理を行えばよい。
【0032】
渋滞区間情報生成部240は、リンクが全車線速度異常の場合は、当該リンクの全車線に対して渋滞情報を対応付け、リンクが車線別速度異常の場合は、避走点の情報に基づいて避ける方向の車線に渋滞情報を対応付けることで、車線ごとの渋滞情報の先頭と末尾を示す情報を渋滞区間情報として生成する(S240)。車線ごとの渋滞区間を明確にできれば、車線単位での車両を制御することが容易になる。
【0033】
道路交通情報生成装置100によれば、プローブ情報に含まれるウインカー情報を、ウインカーの数が多いときに上流側のウインカーの数と合算した移動合計を求める。したがって、事故、工事などが原因で生じている避けるべき点(避走点)を避けている車両の数を明確に認識できる。また、速度情報を用いて、正確に、かつ安定して速度正常、車線別速度異常、全車線速度異常を判断できる。また、分岐付近と分岐がない部分とで異なる判断にできるので、正確に状況を判断できる。よって、より実用的な道路交通情報を生成できる。
[変形例1]
【0034】
実施例1では、道路交通情報生成装置100が第1避走点分析部210を備える前提で第2避走点分析部220を備えていた。しかし、第1避走点分析部210を備えない状態で第2避走点分析部220を備えてもよい。この場合は、道路交通情報生成装置100は以下のように表現できる。
【0035】
変形例の道路交通情報生成装置100は、少なくともプローブ情報取得部110、ウインカー情報加工部120、横方向分析部140、第2避走点分析部220を備える。プローブ情報取得部110、ウインカー情報加工部120、第2避走点分析部220は実施例1と同じである。横方向分析部140も実施例1と実質的に同じだが、分岐部判定リンクではないリンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第3所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向大異常と判断する。第2避走点分析部220は、横方向大異常に基づいて避走点を判断できるので、変形例1でも、従来技術よりは、より実用的な道路交通情報を生成できる。
【0036】
[プログラム、記録媒体]
上述の各種の処理は、
図8に示すコンピュータ2000の記録部2020に、上記方法の各ステップを実行させるプログラムを読み込ませ、制御部2010、入力部2030、出力部2040、表示部2050などを動作させることで実施できる。
【0037】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0038】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0039】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0040】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とするウインカー情報加工部と、
リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向異常と判断する横方向分析部と、
を備える道路交通情報生成装置。
進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
下流側に複数のリンクが分岐として存在するリンクおよび当該リンクの上流側の第1所定数のリンクを、前記分岐の分岐部判定リンクとして記録する記録部と、
リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とするウインカー情報加工部と、
分岐部判定リンクではないリンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第3所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向大異常と判断する横方向分析部と、
上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する、また、上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは上流側とは逆方法の横方向大異常であり、当該リンクの下流側のリンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する第2避走点分析部と、
を備える道路交通情報生成装置。
進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得ステップと、
リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とするウインカー情報加工ステップと、
リンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第2所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向異常と判断する横方向分析ステップと、
を実行する道路交通情報生成方法。
進行方向ごとに、道路を長さ方向に区切った区間であるリンクごとに、所定時間ごとの車両のウインカーに関するウインカー情報を含むプローブ情報を取得するプローブ情報取得ステップと、
リンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数が第1所定値以上の場合に、あらかじめ定めた数の上流側のリンクにおけるウインカー情報が示す同じ方向のウインカーの数を加算して当該リンクの移動合計とし、それ以外の場合は当該リンクの同じ方向のウインカーの数を移動合計とするウインカー情報加工ステップと、
分岐部判定リンクではないリンクの右方向と左方向の移動合計の差の絶対値が第3所定値より大きい場合に、移動合計が少ない方向の横方向大異常と判断する横方向分析ステップと、
上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する、また、上流側の第2所定数のリンクが同じ方向の横方向大異常のリンクであり、当該リンクは上流側とは逆方法の横方向大異常であり、当該リンクの下流側のリンクは横方向大異常ではない場合に、当該リンクと上流側のリンクとの境界付近に避走点が存在すると判断する第2避走点分析ステップと、
を実行する道路交通情報生成方法。