(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011849
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】フィルムを連続的に光学特性を測定する方法、フィルムの製造方法及びフィルムの光学特性測定装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20250117BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20250117BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20250117BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
G01M11/00 T
B29C55/14
B29C55/02
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114215
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】麻生 博行
【テーマコード(参考)】
2G086
4F210
【Fターム(参考)】
2G086EE12
4F210AA24
4F210AG01
4F210AJ08
4F210AM23
4F210AP06
4F210AP20
4F210AR12
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QD05
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG18
4F210QW07
4F210QW12
4F210QW36
4F210QW50
(57)【要約】
【課題】 本発明は、フィルム製膜装置において、簡易かつ安価な構成でフィルムの光学的な異常を検出することが可能な、光学特性測定方法、フィルムの製造方法および光学特性測定装置を提供することをその課題とする。
【解決手段】
本発明の測定方法は、走行するフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法であって、フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法であって、
フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、
フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、
前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、
前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する、フィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法。
【請求項2】
前記偏光板は1辺が100mm四方の範囲内に入る大きさであり、
かつ、前記偏光板を前記フィルムに投影すると200mm四方の範囲内に配置されている、請求項1に記載のフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の受光部は、少なくともフィルム幅方向片側の端部からフィルム幅方向の中心側200mm以内に設置する、請求項1又は2に記載のフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法。
【請求項4】
フィルムの原料を押出機で溶融押出した後、少なくとも一軸方向に延伸する工程を有し、前記延伸工程の後にフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する工程を有するフィルムの製造方法であって、
前記光学特性を測定する工程が、フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する、フィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する工程を有するフィルムの製造方法。
【請求項5】
フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、
フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、
前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、
前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する、フィルムの光学特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを連続的に光学特性を測定する方法、フィルムの製造方法及びフィルムの光学特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを連続的に製造する工程において、破れなどのトラブルを減らし、安定的に製造することは重要な課題である。
【0003】
ポリエステル樹脂は、機械特性、熱特性、電気特性、耐薬品性、成形性などに優れるため、様々な用途に用いられている。そのポリエステル樹脂をフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸方向に延伸して分子配向させた二軸配向ポリエステルフィルムは、光学装置の部材、太陽電池バックシート、電気絶縁材料、感熱転写用途、工程紙などの各種工業材料として幅広く用いられている。
【0004】
フィルム製膜装置において、横延伸工程では、フィルムを幅方向に2~5倍程度に広げるため、フィルムには大きな力がかかっており、フィルムが破れてしまうことがある。特に、フィルムの幅方向端部付近から破れることが多く、これは、横延伸工程ではフィルム両端を把持してフィルムを広げるため、フィルム両端付近に、より大きな応力が集中するためである。フィルムが破れると、復旧するまでに手間と時間がかかり、大きな損失になってしまう。
【0005】
特に、フィルムの物性に異常があった場合はフィルムが破れる可能性が高くなる。その異常の1つとして、フィルム配向角の異常がある。フィルムの配向角は光学特性として検出でき、フィルムの光学特性を測定する装置として、様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-70856号公報
【特許文献2】特開2020-151909号公報
【特許文献3】特開2022-134936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている検査装置は、配向角の定性的なばらつきを検査することは出来るが、配向角を定量的に測定することは出来ない。
【0008】
また、特許文献2に開示されている検査装置は、フィルムの配向角を求めることは出来るが、横延伸工程での破れの原因となり得る場所での配向角は分からない。
【0009】
また、特許文献3に開示されている検査装置は、フィルムの光学的な欠陥を検出することは出来るが、配向角を定量的に測定することは出来ない。
【0010】
本発明は上記課題を解決しようとするものである。すなわち、簡易かつ安価な構成で、フィルムの光学特性の異常を検出することが可能な、走行するフィルムを連続的に光学特性を測定する方法、フィルムの製造方法及び光学特性測定装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の光学特性測定方法は、走行するフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法であって、フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を通過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する、フィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法である。また、本発明の光学特性測定方法、フィルムの製造方法、及び光学特性測定装置は以下の態様とすることも出来る。
(1)走行するフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法であって、
フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する、フィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法。
(2)前記偏光板は1辺が100mm四方の範囲内に入る大きさであり、かつ、前記偏光板を前記フィルムに投影すると200mm四方の範囲内に配置されている、(1)に記載のフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法。
(3)(1)に記載の受光部は、少なくともフィルム幅方向片側の端部からフィルム幅方向の中心側200mm以内に設置する、(1)又は(2)に記載のフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法。
(4)フィルムの原料を押出機で溶融押出した後、少なくとも一軸方向に延伸する工程を有し、前記延伸工程の後にフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する工程を有するフィルムの製造方法であって、
前記光学特性を測定する工程が、フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する、フィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する工程を有するフィルムの製造方法。
(5)フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する、光学特性測定装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成でありながら、フィルムの光学的な異常を検出することが可能な、光学特性測定方法、フィルムの製造方法及び光学特性測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の光学特性測定方法の一例を示した概略斜視図である。
【
図2】本発明の光学特性測定方法の一例を示した概略側面図である。
【
図3】偏光板の位置をフィルムに投影した図である。
【
図4】フィルムにおける配向の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の光学特性測定方法は、走行するフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する方法であって、フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出することを特徴とする。以下、本発明の光学特性測定方法について具体的に説明する。
【0015】
図1は、フィルム製膜装置に設置した、本発明の光学特性測定装置の一態様の概略斜視図、
図2は、フィルム走行方向に垂直な方向から見た概略側面図である。
図1、
図2に示す態様において、フィルム1の一方の面に光源2を配置してフィルムに対して光を照射している。フィルム1の他方の面にフィルム1と平行に4枚以上の偏光板3が光源2からの光に対して重ならない様に設置している。偏光板3に記載している矢印は透過軸角度を示しており、それぞれの偏光板3は透過軸角度を変えている。また、偏光板3のフィルム1とは反対側に受光部4を設置し、受光部4では、フィルム1と偏光板3を透過した光を受光している。
【0016】
図3は、偏光板3の位置をフィルムに投影した図である。
【0017】
図4は、フィルム製膜装置のフィルムを上側から見た上面図であり、矢印でフィルムの配向を示している。
【0018】
本発明の光学特性測定方法は、
図1、
図2に示す様に、走行するフィルム面の検査される領域において、フィルムの一方面側に光源を設置し、他方面側にフィルムと平行に4枚以上の、透過軸角度を変えた偏光板を重ならない様に設置し、フィルムと偏光板を透過した透過光を受光する受光部を有する。
【0019】
受光部について、フィルムと偏光板を透過した光源からの光を受光して、光量(光強度)からフィルムの光学特性を導出する。受光部は、フィルムと偏光板を透過した光源からの光を受光して、光量(光強度)を測定出来るものであれば特に限定されないが、コストや信号処理の容易さから、市販のCCDカメラあるいはCMOSカメラを用いることが好ましい。後述するように、フィルムの製膜工程において、横延伸工程ではフィルムの幅方向端部をクリップで把持しているため、フィルム幅方向端部にはフィルム幅方向中央部より大きな力がかかるため、フィルム幅方向端部は光学的な異常が発生しやすい。そのため、受光部はフィルム幅方向片側の端部からフィルム幅方向の中心側に200mm以内に設置することが好ましい。また、光学的な異常を検知しやすいという観点から、フィルムと受光部の距離は1mm以上2000mm以下であることが好ましく、10mm以上1500mm以下であることがより好ましく、100mm以上1200mm以下であることがさらに好ましく250mm以上1000mm以下であることが特に好ましい。
【0020】
光源について、無偏光であり、偏光板とフィルムを透過して、受光部で光量を測定出来る光量を出せるものであれば限定されない。特には、照度が高く寿命が長い、LED照明が好ましい。また、光源と受光部の間に適宜バンドパスフィルタや円偏光フィルタなどを付け加えても良い。
【0021】
偏光板について、光源を設置した側とは他方面側に、フィルムと平行に4枚以上設置される。ここでフィルムと平行にとは、フィルムの面と偏光板の面がなす角が15°以下であることを表す。フィルムの面と偏光板の面がなす角は10°以下であることが好ましく、5°以下であることがさらに好ましい。適用できる偏光板は、光源からの光を偏光し、受光部によって輝度が測定出来る大きさであれば良く、市販の汎用の偏光板が適用出来る。ただし、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、光源からの光の当たり具合に大きな違いが出ない様に、1辺が100mm四方の範囲内に入る大きさであることが好ましく、かつ、それぞれの偏光板は近くに配置することが好ましい。同様に、光源からの光の当たり具合に大きな違いが出ない様に、それぞれの偏光板とフィルムとの距離は同じかその差を小さくすることが好ましい。
図3は、ある偏光板と、それとは他の偏光板で、フィルムとの距離が違っている場合を示す図である。もし、
図3に示す様に、それぞれの偏光版とフィルムとの距離が違っている場合でも、
図3の様に、偏光板をフィルムに投影して、それらが200mm四方の範囲内に配置されていることが、光源からの光の当たり具合の違いが小さくなるので好ましい。また、受光部でそれぞれの偏光板の輝度を測定し、その差から配向角を導出するため、それぞれの偏光板の透過軸角度は異なっており、その透過軸角度はなるべく離れている方が、精度良く配向角を導出することが出来る。偏光板を4枚とする場合は、ある偏光板の透過軸角度を基準として0°とした場合、45°、90°、135°であることが好ましい。また、光学的な異常を検知しやすいという観点から、フィルムと偏光板の距離は1mm以上1500mm以下であることが好ましく、5mm以上1000mm以下であることがより好ましく、10mm以上800mm以下であることがさらに好ましく、50mm以上700mm以下であることが特に好ましい。
【0022】
フィルムの配向角の算出方法として、偏光を数学的に計算するジョーンズ計算法を用いることが好ましい。ジョーンズ行列の各成分の絶対値の2乗が輝度に比例するため、それぞれの偏光板の輝度から、フィルムの配向角を算出することが可能である。計算方法の一例として、以下に示す(1)式は、光源がフィルムと偏光板を通過した際のジョーンズ行列であり、輝度は(2)式となる。ここで、Lは輝度、θは偏光板の透過軸角度、βはフィルムの配向角、δはフィルムの位相差、Eはジョーンズ行列の成分である。それぞれの偏光板毎にθとβとδを入力するとLが求められる式である。ここで、複数の偏光板毎に輝度を測定しているので、それぞれの偏光板の透過軸角度と輝度の組み合わせにて、θとβとδからジョーンズ計算法から計算する輝度と、実際に測定した輝度の誤差が最小となるようなβとδは数値解析的に求めることができる。数値解析で求める方法としては、市販のソフト(Microsoft社製のExcelなど)を利用しても良いし、自作のプログラムを使っても良い。
【0023】
【0024】
【0025】
続いて、本発明のフィルムの製造方法について説明する。本発明のフィルムの製造方法は、本発明の光学特性測定方法を用いることを特徴とする。例えば、フィルムの原料を押出機で溶融押出した後、少なくとも一軸方向に延伸する工程を有し、前記延伸工程の後にフィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する工程を有するフィルムの製造方法であって、
前記光学特性を測定する工程が、フィルムの一方の面から光源でフィルムに光を照射し、フィルムの他方の面にフィルムと平行に偏光板を設置し、かつ、前記偏光板は4枚以上であり、前記偏光板はそれぞれ透過軸角度が異なり、前記光源からの光に対して重ならないように配置されており、前記偏光板のフィルムとは反対の側に受光部を設置し、前記受光部では、前記フィルムと前記偏光板を透過した光を受光し、当該受光した光の光強度からフィルムの光学特性を導出する、フィルムを長手方向に連続的に光学特性を測定する工程を有するフィルムの製造方法を挙げることができる。このような態様とすることにより、フィルム配向角の異常を早期に検出することができるため、安定してフィルムを製造することが可能となる。
【0026】
以下、本発明のフィルムの製造方法について、逐次二軸延伸法によるポリエステルフィルムを例に挙げて具体的に説明する。但し、これは本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれに限定されない。
【0027】
先ず、ポリエステル樹脂のペレットを押出機の原料投入部に供給し、ポリエステル樹脂を加熱溶融する。その後、ギヤポンプ等で押し出し量を均一化して溶融されたポリエステル樹脂を押し出し、フィルタを介して異物やゲル化物等を取り除く。このとき、押出機は1台であっても複数台であってもよく、複数台の押出機を用いる場合は、フィルタを通過した熱可塑性樹脂を積層装置に送り込む。積層装置としては、マルチマニホールドダイ、フィードブロック、及びスタティックミキサー等を用いることができ、これらを任意に組み合わせてもよい。
【0028】
ポリエステル樹脂の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PPT)、ポリエチレン-p-オキシベンゾエート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等を単独で又は複数種類混合して用いることができる。また、上記の各ポリエステル樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で共重合成分を含むこともできる。
【0029】
このようにして得られた溶融ポリエステル樹脂を、口金からシート状に吐出し、冷却ドラムで冷却固化して無配向ポリエステルシートを得る。この工程においては、静電印加法により冷却ドラムとの密着性を強化することが好ましい。
【0030】
続いて、この無配向ポリエステルシートを温度制御された数本のロールに接触通過させる方法や赤外線ヒーターなどのヒーターの輻射熱による加熱などの方法により、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱し、前後するロールの周速差などを用いて長手方向に延伸(縦延伸)する。この縦延伸の延伸倍率は、製造するフィルムの用途やポリエステル樹脂の種類にもよるが、ポリエステル樹脂がPETである場合、好ましくは2~8倍である。また、縦延伸は1段階で行っても2段階以上で段階的に行ってもよい。
【0031】
縦延伸により得られた一軸配向ポリエステルシートは、その後一旦冷却され、引き続きテンター装置により幅方向に延伸(横延伸)されて二軸配向ポリエステルフィルムとなる。一軸配向ポリエステルシートは、テンター装置の入口付近においてクリップでその幅方向両端部を把持され、ベアリングを備えるクリップがクリップレールに沿って走行することでテンター装置の出口に向かって走行する。その間、一軸配向ポリエステルシートは、テンター装置内で再びポリエステル樹脂のガラス転移温度以上に加熱され、クリップが走行するレールの広がりに伴って幅方向に延伸された後、熱処理、冷却される。幅方向の延伸倍率は、製造するフィルムの用途やポリエステル樹脂の種類にもよるが、ポリエステル樹脂がPETの場合、好ましくは2~5倍である。また、ポリエステル樹脂がPETの場合、180℃~250℃の比較的高温で熱処理を行うことができる。熱処理を行うことにより、その後の加工工程や最終製品として使用する際に高温下に晒されたときの寸法安定性が向上する。また、熱処理後に、長手方向と幅方向の少なくとも一方向に、二軸配向ポリエステルフィルムを1%~10%弛緩させることにより、さらに寸法安定性を向上させることもできる。なお、横延伸の後の工程は、横延伸に引き続き同じテンター装置内で行っても、横延伸を行ったテンター装置とは別のテンター装置で行ってもよい。
【0032】
こうして得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、一旦広幅の巻き取り機で中間製品ロールとして巻き取られた後、スリッターにより、必要な幅と長さに裁断され、再度巻き取られて最終製品となる。
【0033】
ここで、フィルムは延伸される際に、
図4の様に分子が配向するが、厚みムラや温度ムラによって、配向角の異常を生じることがある。配向角が異なると物性も異なるため、特に横延伸工程では、フィルムに大きな力がかかるため、配向角の異常を原因としてフィルムが破れることがある。また、横延伸工程ではフィルム端部をクリップで把持しているため、フィルム端部により大きな力がかかる。そのため、本発明の光学特性測定方法は、少なくとも一方に延伸する工程を経た後に実施することが好ましく、縦延伸工程と横延伸工程の間か、横延伸工程のすぐ後で実施することがより好ましい。
【実施例0034】
以下、フィルムとしてポリエステルフィルムを測定した実施例を説明するが、本発明はこの実施例には限定されない。
【0035】
(測定方法)
光源2はアイテックシステム社の均一発光面照明LMWG200X400-32WD-4、受光部4はキーエンス社のCV-035M、偏光板3は、1辺が25mmの正方形に切り出したものを4枚用いた。更に、偏光板は4枚をフィルムと平行に、かつ前記フィルムに投影すると60mm四方の範囲内に等間隔に並べて配置し、それぞれの透過軸角度は、0°、45°、90°、135°とした。
【0036】
測定方法は、
図5に示す様に、フィルムの下側に光源を設置し、フィルムと偏光板を透過した光を受光部で受光し、それぞれの偏光板毎の輝度を求めた。それぞれの輝度値を、偏光状態を計算するジョーンズ行列に当てはめることで、フィルムの配向角を導出した。ここで、円偏光フィルタ5とバンドパスフィルタ6は、測定誤差を小さくするために使用した。フィルムと偏光板との距離は200mm、フィルムとカメラ(受光部)との距離は700mmとした。
測定結果としては、透過軸角度が0°、45°、90°、135°のそれぞれの偏光板の輝度値が、順に、143、133、38、145であり、計算結果からフィルムの配向角は77°と求めることが出来た。ここで言う輝度値とは、濃淡を0~255階調で分けたものである。また、ジョーンズ行列の計算式で、フィルムの配向角を数値解析で求める際は、Microsoft社製のExcelのソルバー機能を使った。
本発明により、簡易かつ安価な構成でフィルムの光学的な異常を検出することが可能な光学特性測定方法、フィルムの製造方法及び光学特性測定装置を提供することが出来る。本発明の光学特性測定方法を用いることにより、フィルム配向角の異常を検出することが出来るため、フィルム破れを低減させ、フィルムの生産性を向上させることができる。