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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011876
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】防水板装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114273
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(71)【出願人】
【識別番号】000154288
【氏名又は名称】株式会社富士精工本社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 眞也
(72)【発明者】
【氏名】細川 祐生
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】作動信頼性が高い防水板装置を提供する。
【解決手段】ケース3に枢着され、倒伏位置と起立位置との間を移動可能に支持された防水板4と、防水板4を起立位置まで押し上げる起立機構5と、防水板4の起立状態を保持する保持機構6とを備える防水板装置1であって、保持機構6は、一端が防水板4側とケース3側のいずれか一方に枢着され、他端が防水板4側とケース3側のいずれか他方に前後方向にスライド移動可能に配設された杆部材9を備えている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに枢着され、倒伏位置と起立位置との間を移動可能に支持された防水板と、該防水板を前記起立位置まで押し上げる起立機構と、前記防水板の起立状態を保持する保持機構とを備える防水板装置であって、
前記保持機構は、一端が前記防水板側と前記ベース側のいずれか一方に枢着され、他端が前記防水板側と前記ベース側のいずれか他方に前後方向にスライド移動可能に配設された杆部材を備えていることを特徴とする防水板装置。
【請求項2】
前記起立機構は、一端が前記防水板側と前記ベース側のいずれか一方に枢着され、他端が前記防水板側と前記ベース側のいずれか他方に前後方向にスライド移動可能に配設されたアームを備えていることを特徴とする請求項1に記載の防水板装置。
【請求項3】
前記保持機構の前記杆部材は、一端が前記防水板側に枢着され、他端が前記ベース側に前後方向にスライド移動可能に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の防水板装置。
【請求項4】
前記ベースには、前記杆部材の他端側のスライド移動の軌道上に対して進出してスライド移動を規制するロック機構が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の防水板装置。
【請求項5】
前記杆部材が、前記防水板の全高の約1/3の高さを、約45°で支持することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の防水板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の出入口等に設置される防水板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば洪水や集中豪雨等により想定以上の大量の水が道路に溢れた場合、家屋、ビル、地下駐車場、地下鉄等の出入口を介して建造物内に水が浸入するおそれがある。そこで、建造物内への水の浸入を防止するために、洪水時に防水板(防水扉)を起立させて建造物の出入口を閉塞することができるようにした防水板装置(防水扉装置)が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の防水板装置の起立機構は、高圧ガスを駆動源として作動するシリンダと、一端部を中心として上下に回動し、他端部に設けたローラの転動により防水板を起立させるアームとを備え、ガス供給部の水感知部が増水を感知したとき、ガスボンベの高圧ガスがシリンダに供給されてアームと共に防水板を自動的に起立させる構成となっている。
【0004】
また、防水板装置には、防水板の起立方向逆側から水圧を受ける正水圧仕様と、防水板の起立方向から水圧を受ける逆水圧仕様とがある。正水圧仕様では、防水板は水圧によって出入口側に押し付けられて水の浸入を防止することができるが、逆水圧仕様では、水圧に抗して防水板の起立状態を保持する必要がある。例えば特許文献2に記載の防水板装置は、駆動力を用いて防水板を起立させる起立機構に加えて、起立状態の防水板と地上側のケースとの間で突っ張る保持機構を別途備え、防水板の起立方向から受ける水圧に抗して防水板の起立状態を保持することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-114619号公報(第4頁、第1図)
【特許文献2】特開2013-256764号公報(第7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のような防水板装置にあっては、保持機構の両端は起立状態の防水板と地上側のケースとにそれぞれ枢着され、かつ長手方向中央がヒンジを有して折りたたみ可能な構造になっている。そのため、折りたたまれた保持機構は、起立機構による防水板の起立動作に従動して伸び、最後にヒンジ部分を上方から手動で押して直線上もしくは反転させることで、起立状態の防水板と地上側のケースとの間で突っ張った状態を維持できる。しかしながら、保持機構がヒンジを用いた折りたたみ構造を採用していることから、ヒンジ部分を円滑かつ正常に動作させるために頻繁な保守点検が必要となり、特に緊急時にのみ用いられる防水板装置にあっては作動信頼性が十分でないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、作動信頼性が高い防水板装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の防水板装置は、
ベースに枢着され、倒伏位置と起立位置との間を移動可能に支持された防水板と、該防水板を前記起立位置まで押し上げる起立機構と、前記防水板の起立状態を保持する保持機構とを備える防水板装置であって、
前記保持機構は、一端が前記防水板側と前記ベース側のいずれか一方に枢着され、他端が前記防水板側と前記ベース側のいずれか他方に前後方向にスライド移動可能に配設された杆部材を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、保持機構を構成する杆部材は、一端が防水板側とベース側のいずれか一方に枢着され、他端側が前後にスライド移動する構成であるため、防水板の倒伏状態では寝た状態であり、起立機構による防水板の起立動作に従動して立ち上がり、防水板の起立方向から受ける水圧に抗して防水板の起立状態を保持することができる。このように保持機構に単純な構造の杆部材を採用したことで、頻繁な保守点検が不要となり作動信頼性を高めることができる。
【0009】
前記起立機構は、一端が前記防水板側と前記ベース側のいずれか一方に枢着され、他端が前記防水板側と前記ベース側のいずれか他方に前後方向にスライド移動可能に配設されたアームを備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、起立機構が保持機構と同様に一端が防水板側とベース側のいずれか一方に枢着され、他端側が前後にスライド移動する構成であることから、これら起立機構と保持機構とが互いの動作に影響せず、円滑に起立動作を行うことができる。
【0010】
前記保持機構の前記杆部材は、一端が前記防水板側に枢着され、他端が前記ベース側に前後方向にスライド移動可能に配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、杆部材の他端は自重によりベース側に沿って前後にスライド移動できるため、構造が簡素になる。
【0011】
前記ベースには、前記杆部材の他端側のスライド移動の軌道上に対して進出してスライド移動を規制するロック機構が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、防水板の起立状態を保持可能な杆部材の傾斜姿勢を簡素な構成で維持することができる。
【0012】
前記杆部材が、前記防水板の全高の約1/3の高さを、約45°で支持することを特徴としている。
この特徴によれば、保持機構を大型化せずに、確実に防水板の起立状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る防水板装置おける防水板が倒伏位置にあるときの平面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。説明の便宜上、奥側の部材の図示を省略している。
図4】防水板が起立位置にあるときの平面図である。
図5図4のC-C線断面図である。
図6】(a)及び(b)は、防水板が倒伏位置から起立位置の途中まで回動した状態の概略側面図である。
図7】(a)及び(b)は、起立位置の途中まで回動した防水板が更に回動して起立位置に達する様子を示す概略側面図であり、(b)は図4のD-D線断面図である。
図8】保持機構を示す斜視図である。
図9】スライダ機構を正面側から見た拡大断面図である。
図10】(a)及び(b)は、起立位置の途中まで回動した防水板が更に回動して起立位置に達する際の保持機構の様子を示す概略側面図である。
図11】ロック機構とスライド部材の形状及び相関関係を示す平面図である。
図12】(a)と(b)は、保持機構のスライド部材がレール部材の終端までスライド移動する様子を示し、(c)は、ロック機構が作動した状態を示す平面図である。
図13】防水板装置の動作システムの配線を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る防水板装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例に係る防水板装置につき、図1から図13を参照して説明する。以下においては、防水板の起立方向である屋外側(図1の紙面上方)を前方、倒伏方向である屋内側を後方として説明する。
【0016】
図1図7に示すように、防水板装置1は、建造物の出入口の左右一対の柱2,2間の屋内側の床面に設置され、洪水や集中豪雨等の非常時に後記する防水板4を起立させ、柱2,2の後面に密封状に押し当てることにより、建造物内への水の浸入を防止するものである。すなわち、逆水圧仕様の防水板装置である。尚、建造物の出入口の左右一対の柱2,2間の屋外側の床面に設置される正水圧仕様の防水板装置としても使用可能である。
【0017】
防水板装置1は、床面または地中に形成された凹部内に設置されるベースとしての上面が開口する箱形金属製のケース3と、ケース3の前端部の底面に枢着された防水板4と、ケース3内に配線された電気(商用電源)を駆動源として作動する左右に配置された起立機構5と、起立機構5と交互に設置された保持機構6とを備えている。
【0018】
ケース3の底面には、前後方向に延びる補強壁11が複数平行に設けられている。この補強壁11は、倒伏位置の防水板4の裏面を支持するものであり、ケース3の底面の左右方向に渡って離間して配置されている。そして、起立機構5と保持機構6は、隣り合う補強壁11,11間に交互に一つずつ配設されている。
【0019】
防水板4は、金属製の長方形の板材により形成され、その裏面(起立状態において後面)には、複数の補強材7が溶接により縦横に固着されている(図5参照)。防水板4は、一方の長辺が左右複数のヒンジ機構8によりケース3の前側の底面に倒伏位置(図1図3参照)と起立位置(図7(b)参照)との間を回動可能に枢着されている。
【0020】
防水板4が倒伏位置まで回動すると、その後端部の裏面が左右複数の補強壁11の上端に当接し、防水板4の上面と床面Fとがほぼ同一面に整合するようになっている(図3参照)。また、防水板4が起立位置まで回動すると、防水板4の表面(前面)が左右の柱2,2の後面にシール部材(図示略)を介して密封状に圧接するとともに、下端縁がケース3の前面の設けられたシール部材(図示略)に密封状に圧接して防水性が維持されるようになっている。
【0021】
図3図4に示されるように、起立機構5は、アクチュエータである電動シリンダ(電動アクチュエータ)51と、電動シリンダ51の駆動力を防水板4に伝達するアーム52とを備えている。電動シリンダ51は、中空の筒状であるシリンダ513と、シリンダ513に対して前後方向に進退可能なシリンダロッド511とからなるシリンダ部材510と、モータ512とを備えている。電動シリンダ51は公知のものであり、電動シリンダ51の内部には、モータ512により回転させられる軸方向に延びるボールねじ(図示略)が収容されている。また、シリンダロッド511には、ボールねじに対し共回りが規制された状態で螺合するナット(図示略)が固定されている。モータ512によりボールねじが回転すると、ナットがボールねじに沿ってねじ送りされることにより、シリンダロッド511が進退するようになっている。電動シリンダ51を用いると、図示しない制御装置により左右の電動シリンダ51を同期させて作動させることができる。
【0022】
起立機構5のアーム52は、左右に所定寸法離間して対向する左右一対の側板部材521、521と、左右の側板部材521の長手方向の一端部と他端部(倒伏時において前端部と後端部)同士及び一端部寄りの中間部同士を連結する左右方向を向く3つの連結軸522とを備え、一対の側板部材521は、連結軸522により一体をなすようにユニット化されている。アーム52の(側板部材521の)一端部と他端部の連結軸522は、側板部材521の外側方に突出し、他端部の連結軸522の左右の突出部には、移動端部である転動ローラ15,15が枢支されている。転動ローラ15,15は、防水板4の裏面に沿って相対移動する(詳細は後述する)。
【0023】
ケース3の底面の前部寄りの上面には、アームブラケット16がボルト止めされ、各アームブラケット16の左右の起立片16a,16aには、それぞれ起立機構5のアーム52における一端部側の連結軸522の左右の突出部が枢支されている。これにより各アーム52は、一端部(前端部)を中心として回動することができる。
【0024】
各アーム52の中間部の連結軸522の左右方向の中央部には、それぞれ起立機構5のシリンダロッド511の先端部が回動可能に枢着され、シリンダロッド511とアーム52の左右方向の中央とが平面視において直線状に並ぶようになっている。各アーム52は、電動シリンダ51の推力により一端部を中心として上向きに回動し、他端部の転動ローラ15により防水板4が押し上げられるようになる。
【0025】
防水板4の裏面の補強材7の左右両側部には、それぞれ左右一対ずつのレール部材18,18とガード部材19,19とが、起立機構5に対応して設けられている。左右両側のレール部材18,18及びガード部材19,19は、構造並びに取付形態が同一である。
【0026】
図5に示すように防水板4が起立した状態において、補強材7の互いに隣接する縦補強材7a,7aの裏面の上下方向の中央部には、取付基板20が溶接により固定され、この取付基板20の中央部の裏面(後面)に上下方向を向く左右一対のレール部材18,18のフランジ部18aが複数のボルト21により固定されている。また、取付基板20における左右のレール部材18を挟む左右両側には、左右一対のガード部材19,19の外向きフランジ部19a,19aが複数のボルト21により固定されている。
【0027】
レール部材18,18は、後方(防水板4の裏面方向)に突出し、それらの後端面(なお、倒伏状態において下面である。)は、アーム52の転動ローラ15,15を案内する案内面18b,18bとなっている。案内面18bは、始端から終端に向けて、防水板4の裏面方向に徐々に突出する傾斜面となっている。左右の案内面(傾斜面)18b,18bの終端には、案内面18bと鈍角に交わる面により段部18c(図7(b)参照)が形成されている。この段部18cには、防水板4が起立位置まで回動したとき、転動ローラ15,15が落ち込むようになっている。
【0028】
ガード部材19,19は、レール部材18,18の案内面18b,18bに沿って延び、後方に突出する側壁部19b,19bと、側壁部19b,19bの後端から左右内側に延びる規制部19c,19cを有している(図5参照)。規制部19c,19cとレール部材18,18の案内面18b,18bとの対向面は、転動ローラ15,15が通過可能なように離間している。
【0029】
次に、図6図11を参照して防水板装置1の動作及び作用効果について説明する。図6(a)に示すように、通常時は防水板4が完全に倒伏した状態にあり、防水板4の上面と床面Fとはほぼ同一面をなしている。洪水や集中豪雨等の緊急時において建造物内への水の浸入を防止する必要が生じた場合には、図示しない制御装置を操作して左右の起立機構5を同時に作動させる。
【0030】
左右の起立機構5を作動させると、電動シリンダ51のモータ512が作動し、シリンダロッド511がねじ送りされて前方に突出する。すると、図6(b),図7(a),(b)に示すように、シリンダロッド511の先端に連結されたアーム52が一端部(前端部)を中心として徐々に上向きに回動する。これにより、アーム52の他端部に枢支された転動ローラ15、15が防水板4の裏面のレール部材18、18の案内面18bに当接し、防水板4を徐々に押し上げながら下方に相対移動する。この際、転動ローラ15は、ガード部材19の側壁部19bにより左右方向への移動が規制された状態で、規制部19cと案内面18bとの間を移動するため、転動ローラ15を確実に案内面18bに沿って移動させることができ、かつアーム52と転動ローラ15とが当接した状態を保ち相対的に離間しないため、防水板4を円滑かつ安全に起立させることができる。
【0031】
図7(b)に示すように、シリンダロッド511が予め定めた最大ストロ-クまで突出すると、モータ512が停止し、防水板4は左右の柱2と当接する起立位置まで回動して停止する。シリンダロッド511はねじ送り機構により伸長するため、モータ512が停止すると最大伸長位置に保持され、防水板4が倒伏方向に押し戻されるおそれは小さい。なお、モータ512の停止条件を、シリンダロッド511のストロ-ク以外でもよく、例えば、シリンダロッド511に作用する荷重や防水板4と柱2との当接によるものであってもよい。
【0032】
また、アーム52の長さ方向の一端はケース3に枢着され、他端には転動ローラ15が枢支され、中間部にシリンダロッド511の先端が枢着されているので、アーム52の一端と他端との距離が大となり、従って、防水板4の重量をアーム52により確実に受けることができる。
【0033】
防水板4が起立位置まで回動すると、転動ローラ15がレール部材18の段部18cに落ち込む。これにより、防水板4の重量による力はアーム52の前後方向の成分は小さくかつ上下方向の成分を主体として受けることができ、簡素な構成の起立機構5により防水板4を起立状態に仮維持することができる。
【0034】
次いで、図8から図11を用いて、保持機構6の構造とその動作について説明する。図8に示されるように、保持機構6は、杆部材9と、スライダ機構10と、ロック機構12とを備えている。
【0035】
防水板4の内面のヒンジ機構8寄りには、ブラケット30がボルト止めされ、ブラケット30の左右の起立片30a,30aに、それぞれ保持機構6の杆部材9における一端部側に設けられた連結軸622が枢着されている。
【0036】
ケース3の底面には、スライダ機構10を構成するレール部材31が保持機構6に対応して複数設けられている。レール部材31は、起立機構5のアーム52と平行な方向に長手を有して形成されている。また、図9に示されるように、レール部材31は、根元側の下部31bが上部31aよりも幅狭となっておりこの上部31aと下部31bとの幅寸法の差によって幅方向の両側に段部31cが形成されている。上部31aには後述するスライド部材32がスライド移動する案内面である平滑な上面31dを備えている。
【0037】
レール部材31には、ともにスライダ機構10を構成するスライド部材32がレール部材31の長手方向に移動可能に遊嵌されている。スライド部材32は、レール部材31の段部31cに係止されるC字状の爪部32aを備え、かつレール部材31の上面31dに当接する下方の面部32bを備え、スライド部材32はその荷重を上面31dに支持させながら、爪部32aが段部31cに係止されることで、上方向への浮き上がりが防止され、安定したスライド移動が可能となっている。
【0038】
このように、保持機構6の杆部材9における一端部側は防水板4に枢着され、他方端部はケース3側のレール部材31に対してスライド移動する構成であるため、図10(a)に示されるように、起立機構5の動作による防水板4の起立時には、保持機構6が防水板4の動作に従動して杆部材9が立ち上がる。そして、図10(b)に示されるように、防水板4が直立した起立状態となると、スライド部材32はレール部材31におけるヒンジ機構8側の終端位置まで移動する。ここでいう終端位置とは、防水板4が起立側の移動限界に達した状態におけるスライド部材32の位置を指し、レール部材31のヒンジ機構8側の端部を指すものではない。
【0039】
保持機構6の杆部材9における他方端部側に固着された連結軸623は、スライド部材32の前方側、つまりヒンジ機構8側に形成された側壁部32cに左右の突出部がそれぞれ枢支されている。また、スライド部材32の後方側には、後方側に開放し上下に平行にブラケット32d,32dが形成され、このブラケット32d,32dに対して上下に棒材33が挿嵌されている。棒材33は固定手段34aによりスライド部材32から離脱しないように固定されている。図9に示されるように、棒材33にはブラケット32d,32d間と略同じ長さの円筒体34が遊嵌されている。
【0040】
ロック機構12は、アクチュエータである電動シリンダ(電動アクチュエータ)61を有し、電気を駆動源として動作する。ロック機構12は、電動シリンダ61に加えて、方向転換機構62と、進退機構63とを備えている。
【0041】
電動シリンダ61は、中空の筒状であるシリンダ613と、シリンダ613に対して前後方向に進退可能なシリンダロッド611とからなるシリンダ部材610と、モータ612とを備えている。この電動シリンダ61は、起立機構の電動シリンダと同規格である。
【0042】
ケース3の底面には、ロック機構12を構成するベース部材35が固定されている。ベース部材35には、方向転換機構を構成するベルクランク36が枢軸37により水平方向に回動可能に枢着されている。
【0043】
ベルクランク36は略3角形の同形状のものが上下に一対配設されている。図12(a)に示されるように、ベルクランク36には上下に貫通する貫通孔(38A,38B,38C)が各角部にそれぞれ形成されている。対向するベルランクの1つの貫通孔38Aには、ベース部材35側に固定された枢軸37が、他の1つの貫通孔38Bにはシリンダロッド611の先端に設けられた連結軸622の上下端が、更に他の1つの貫通孔38Cには進退機構63の後述するデッドボルト40の後端に設けられた連結軸41の上下端が、それぞれ枢着されている。
【0044】
進退機構63は、ベース部材に固着されて形成されたロックブラケット39,39と、このロックブラケット39,39にそれぞれ形成された貫通孔に挿通された規制部材であるデッドボルト40とから構成されている。
【0045】
このように、シリンダロッド611とデッドボルト40とは、ベルクランク36を介して接続されており、図12(b)と(c)とに示されるように、シリンダロッド611の進出動作時には、ベルクランク36が枢軸37を回動中心として回動し、デッドボルト40が進出動作する。
【0046】
デッドボルト40及びロックブラケット39,39は、スライダ機構10を構成するレール部材31の横近傍に配置され、デッドボルト40はその長手方向がレール部材31の長手方向と直交するように配置されている。また、これらデッドボルト40及びロックブラケット39,39は、レール部材31におけるヒンジ機構8側に偏在している。このため、図12(c)に示されるように、進出動作されたデッドボルト40はレール部材31の上方で横切るように張り出すことになる。
【0047】
後に詳述するが、電動シリンダ61は図12に示される制御装置Cにより動作が制御されるようになっており、制御装置Cは起立機構5の電動シリンダ51の起立動作の完了に基づき、電動シリンダ61に進出動作を行わせる。詳しくは、電動シリンダ61のモータ612を正回転させることで、シリンダロッド611が進出し、これによりベルクランク36が回転してデッドボルト40がレール部材31における終端位置(図10(b),図12(b)参照)に位置するスライド部材32の後方に張り出される。
【0048】
このスライド部材32の後方に張り出したデッドボルト40により、スライド部材32の後方への移動が規制される。つまり、スライド部材32が終端位置に位置している状態、すなわち防水板4が直立した起立状態において、ケース3側に固定されたベース部材35と防水板4の内面に固定されたブラケット30との間で、立ち上げられた杆部材9が突っ張り、防水板4の倒伏方向への傾斜を防止するようになっている。これにより、緊急時において出入口が防水板4により閉塞され、建造物内への水の浸入が防止される。
【0049】
以上説明したように、保持機構6を構成する杆部材9は、一端が防水板4側に枢着され、他端側がスライダ機構10によりスライド移動する構成であるため、杆部材9は防水板4の倒伏状態では寝た状態であり、起立機構5による防水板4の起立動作に従動して立ち上がり、防水板4の起立方向から受ける水圧に抗して防水板4の起立状態を保持することができる。このように保持機構6に単純な構造の杆部材9を採用したことで、頻繁な保守点検が不要となり作動信頼性を高めることができる。
【0050】
また、起立機構5が保持機構6と同様に一端がケース3側に枢着され、他端が防水板4の裏面側のレール部材18にてスライド移動する構成であることから、防水板4の起立時及び倒伏時において起立機構5と保持機構6とが互いの動作に影響せず、円滑に起立動作を行うことができる。
【0051】
また、保持機構6の杆部材9は一端が防水板4側に枢着され、他端がケース3側のレール部材31に前後方向にスライド移動可能に配設されており、杆部材9の他端は自重によりレール部材31に沿ってスライド移動できるため、構造が簡素になる。
【0052】
また、スライド部材32は、レール部材31に対して爪部32aを段部31cに係合させることで、上下方向に離脱不能に遊嵌されているため、スライド部材32がレール部材31から浮き上がることなく、円滑なスライド移動が可能になる。
【0053】
また、ロック機構12は、スライド部材32のスライド移動の軌道上に対して進出してスライド移動を直接規制するため、防水板4の起立状態を保持可能な杆部材9の傾斜姿勢を簡素な構成で確実に維持することができる。
【0054】
また、図10(b)に示されるように、杆部材9が防水板4の全高の約1/3の高さHの位置を、約45°の角度で支持するようになっている。これによれば、最大効率で杆部材9が荷重を受けることができるため、保持機構6を大型化せずに確実に防水板4の起立状態を保持することができる。
【0055】
また、図11に示されるように、デッドボルト40の先端側には、ヒンジ機構8側に向く平面部40aを有し、かつ平面部40aから先端面40bにかけて傾斜平面であるテーパ面部40cが形成されている。テーパ面部40cは、棒材33には円筒体34の前方側の頂点Oの接線よりも若干ヒンジ機構8側まで延設されている。そのため、進出動作時のデッドボルト40は、まずテーパ面部40cが円筒体34に線接触し、そのまま線接触を保ちながら進出され、円筒体34が平面部40aまで案内される。このとき、スライド部材32は前述の終端位置から若干ヒンジ機構8方向に移動し、防水板4を左右の柱2,2の後面にシール部材を潰すように押し付ける。これによれば、防水板4による密封状態を更に高めることができるとともに、防水板4は起立機構5の電動シリンダ51の駆動完了位置における起立角度から更に前方に回動されるため、防水板4の荷重及び防水板4が前方側から受ける水圧に対しては、起立機構5に直接作用せず、電動シリンダ51及びモータ512への負荷がない。
【0056】
また、進出動作時のデッドボルト40はスライド部材32の円筒体34に対して線接触するため、摩擦抵抗を少なくし、かつ上下に応力を分散でき、円滑にデッドボルト40を進出させることができ、ロック機構12側のモータ612の必要トルクを小さくできる。
【0057】
また、スライド部材32におけるデッドボルト40との接触箇所である円筒体34は、円柱である棒材33に対して水平方向に回転可能であるため、更に円滑にデッドボルト40の進出時の抵抗を小さくできる。
【0058】
また、円筒体34と棒材33は、固定手段34aを取り外すことでスライド部材32の本体から分離でき、消耗時に容易に交換を行うことができる。
【0059】
また、デッドボルト40は、レール部材31の長手方向つまりスライド部材32のスライド移動方向と直交して進出する構成であることから、スライド部材32を介して受ける防水板4の荷重及び水圧を効率よく受けることができる。
【0060】
また、デッドボルト40の後端に設けられた連結軸41が枢着されたベルクランク36の貫通孔38Cは、ベルクランク36の角部から枢軸37が挿通される貫通孔38A方向に延びる長孔であり、かつ貫通孔38Cと貫通孔38Bとが共に位置する辺側に頂点を有する円弧形状を成している。これによれば、シリンダロッド611の突出方向に対して鋭角方向にデッドボルト40を進出させることができる。また、シリンダロッド611の突出方向に対して鋭角方向にデッドボルト40を進出させるようにしたことで、隣り合う補強壁11,11間の小さな幅スペース内にて、十分なデッドボルト40の進出量を確保できるだけのシリンダロッド611を配設することができる。
【0061】
図13は防水板装置の動作システムの配線を示す概略図である。図13に示されるように、制御装置Cは、制御盤C1と操作盤C2とから構成されている。制御盤C1には、外部電源、例えば商用電源から延びる電源用配線LN1が接続されているとともに、操作盤C2から延びる制御信号用配線LN2が接続されている。
【0062】
また、制御盤C1から延びる外部からの配線としての電源用配線LN3と外部からの制御信号用の配線としての制御信号用配線LN4は、水密ボックスとしての接続ボックス50で電源用配線LN5、制御信号用配線LN6に対して電気的に着脱可能に接続されている。
【0063】
また、接続ボックス50から延びる電源用配線LN5は、各電動シリンダ51に接続されたAC/DCコンバータ60Aと、各電動シリンダ61に接続されたAC/DCコンバータ60Bと、に対し渡り配線により接続されている。なお、本実施例では、渡り配線は、接続ボックス50外である形態を例示したが、接続ボックス50内であってもよい。
【0064】
また、接続ボックス50から延びる制御信号用配線LN6は、各電動シリンダ51,61に対し渡り配線により接続されている。
【0065】
AC/DCコンバータ60A,60Bは、各電源用配線LN5から供給された商用電源である交流を直流に変換し、電動シリンダ51,61にそれぞれ供給するようになっている。
【0066】
また、電動シリンダ51,61は同規格であるため、AC/DCコンバータ60A,60Bや各種配線を相互に流用でき、配線工事やメンテナンス性に優れる。
【0067】
また、電源用配線LN3と電源用配線LN5との接続部、および制御信号用配線LN4と制御信号用配線LN6との接続部が接続ボックス50に集約されるため、各配線の取り回しを簡素にできる。
【0068】
また、AC/DCコンバータ60A,60Bと電動シリンダ51,61を複数セット備え、各セットは渡り配線により接続されているため、1つのAC/DCコンバータ60A,60Bが故障しても残りのAC/DCコンバータ60A,60Bとセットの電動シリンダ51,61を駆動させることができる。
【0069】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0070】
例えば、前記実施例では、保持機構6は左右一対の起立機構5と交互に配置されるものとしたが、一つの保持機構6を防水板4の左右方向の中央部に設置してもよいし、防水板4の大きさや形に応じて、配置位置と配置数が適宜変更できる。同様に起立機構5についても防水板4の大きさや形に応じて、配置位置と配置数が適宜変更できる。
【0071】
また、前記実施例では、保持機構6における杆部材9の一端側はスライド部材32がレール部材31に対して爪部32aによって遊嵌する構造で説明したが、これに限らず、例えば爪部を省略してもよいし、またスライド部材に代えてローラや低摩擦材など有する構成としてもよい。
【0072】
また、前記実施例では、保持機構6の杆部材9は一端が防水板4側に枢着され、他端がケース3側のレール部材31に前後方向にスライド移動可能に配設されているが、逆に杆部材の一端が防水板側のレール部材にスライド移動可能に配設され、他端がケース3側に枢着されてもよい。
【0073】
また、起立機構5は一端がケース3側に枢着され、他端が防水板4の裏面側のレール部材18にてスライド移動する構成に限らない。
【0074】
また、前記実施例においてロック機構12を構成する進退機構63は、デッドボルト40が水平方向に進出するが、これに限らず、例えば進退機構をレール部材の下方に埋設させ、デッドボルトがレール部材上に下方から突出する構成でもよいし、ベルクランクの貫通孔を全て丸孔としてデッドボルトが円弧軌道で進出する構成としてもよい。
【0075】
また、ロック機構12を構成する方向転換機構62は、ベルクランクを用いるものに限らず、例えばラックアンドピニオン等を用いる構成であってもよい。
【0076】
また、前記実施例では、ロック機構12のアクチュエータに電動シリンダ61を使用しているが、これに限らず油圧または空気圧により作動する流体圧シリンダを使用することもできる。尚、ロック機構12の駆動源はシリンダ構造に限らず、例えばモータとギアによるものであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 防水板装置
2 柱
3 ケース(ベース)
4 防水板
5 起立機構
6 保持機構
7 補強材
7a 縦補強材
8 ヒンジ機構
9 杆部材
10 スライダ機構
11 補強壁
12 ロック機構
15 転動ローラ
18 レール部材
30 ブラケット
30a,30a 起立片
31 レール部材
31a 上部
31b 下部
31c 段部
31d 上面
32 スライド部材
32a 爪部
32b 面部
33 棒材
32d,32d ブラケット
34 円筒体
35 ベース部材
36 ベルクランク
37 枢軸
38A 貫通孔
38B 貫通孔
38C 貫通孔
39,39 ロックブラケット
40 デッドボルト(規制部材)
40a 平面部
40b 先端面
40c テーパ面部
41 連結軸
50 接続ボックス
51 電動シリンダ
52 アーム
60A,60B AC/DCコンバータ
61 電動シリンダ
62 方向転換機構
63 進退機構
610 シリンダ部材
611 シリンダロッド
612 モータ
613 シリンダ
622 連結軸
623 連結軸
C 制御装置
F 床面
LN1 電源用配線
LN2 制御信号用配線
LN3 電源用配線
LN4 制御信号用配線
LN5 電源用配線
LN6 制御信号用配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13