IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハート光学株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-眼鏡ケース 図1
  • 特開-眼鏡ケース 図2
  • 特開-眼鏡ケース 図3
  • 特開-眼鏡ケース 図4
  • 特開-眼鏡ケース 図5
  • 特開-眼鏡ケース 図6
  • 特開-眼鏡ケース 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011884
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】眼鏡ケース
(51)【国際特許分類】
   G02C 11/00 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G02C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114281
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】510145163
【氏名又は名称】ハート光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】武井 透
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006CA00
(57)【要約】
【課題】専用工具を必要とすることなく、装着者自身が随意に眼鏡の一部を最適に調整可能である眼鏡ケースを提供すること。
【解決手段】下側ケース体2と、前記下側ケース体2に対して開閉可能に構成された上側ケース体1とを備え、前記上側ケース体1と前記下側ケース体2の何れか一方または両方には、眼鏡Gの一部を嵌めこみ可能な溝部13が形成されるようにした。溝部13により、『てこ』によって眼鏡Gの一部を軽い力で少しずつ曲げることができるとともに、溝部13に嵌めこんだ状態で曲げることで、必要以上に曲げてしまう恐れがない。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側ケース体と、前記下側ケース体に対して開閉可能に構成された上側ケース体とを備える眼鏡ケースであって、
前記上側ケース体と前記下側ケース体の何れか一方または両方には、眼鏡の一部を嵌めこみ可能な溝部が形成されていることを特徴とする、眼鏡ケース。
【請求項2】
前記溝部は前記上側ケース体の天面と前記下側ケース体の底面の何れか一方または両方に形成されるとともに、眼鏡のテンプル先端部を平行に嵌めこみ可能な形状であり、
前記溝部の一端は前記溝部が形成されている上側ケース体の側面または下側ケース体の側面と連通していることを特徴とする、請求項1に記載の眼鏡ケース。
【請求項3】
前記溝部は、眼鏡のテンプル先端部を嵌めこんだ状態における前記溝部と前記テンプル先端部との隙間において、前記一端側の隙間の方が、他端側の隙間よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の眼鏡ケース。
【請求項4】
前記溝部の底面は、前記溝部が形成されている前記上側ケース体の天面または前記下側ケース体の底面に対して、前記一端側に向かって下降するように傾斜していることを特徴とする、請求項2または3に記載の眼鏡ケース。
【請求項5】
前記上側ケース体に設けられた溝部は左側のテンプル先端部または右側のテンプル先端部を嵌めこみ可能である一方、前記下側ケース体に設けられた溝部は前記上側ケース体に設けられた溝部に嵌めこみ可能なテンプル先端部と反対側のテンプル先端部を嵌めこみ可能であることを特徴とする、請求項2または3に記載の眼鏡ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡やサングラスの携帯時または保管時に用いる眼鏡ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡を装着する場合には、テンプル先端部を耳に掛けて装着する。耳に掛けたテンプルと鼻当てとによって眼鏡の重量を支持するとともに、テンプルが側頭部を僅かに挟持することで、頭部に安定的に保持可能となっている。
【0003】
一般的な眼鏡は、テンプル先端部が耳の形状に沿って僅かに湾曲または屈曲した形状となっている。これにより、眼鏡が前後にずれにくくなるとともに、耳に掛かる荷重を分散して耳への負荷を低減している。
また、テンプル先端部は側頭部の形状に沿って内側にも僅かに湾曲させている。これにより、側頭部を抱え込むように保持することができるため、より一層耳への負担を軽減させることができる。
【0004】
テンプル先端部の湾曲の大きさや屈曲の角度については、その形状の微細な違いが耳へ当接する面積や圧力に大きな影響を与える。その一方で、人によって耳の大きさや形が異なるという事情がある。
このような理由から、眼鏡の小売店においては、装着者の耳への掛け具合に応じて、テンプル先端部の湾曲または屈曲具合を、プライヤー等の専用工具を用いて微調整することが行われている。
【0005】
しかし、テンプル先端部の形状の微調整は、熟練した技能を必要とするうえ、量販店においてはそのような技能者がおらず、工場生産時の形状のまま販売・使用することを余儀なくされる場合もある。
そこで、従来においては、装着者自らがテンプル先端部を容易に変形させて自身の耳や頭の形状にしっかりと沿うように調整できるよう工夫された眼鏡の技術が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、テンプル先端部の断面形状を部位ごとに異なる形状とすることで、指定した方向に湾曲させやすくした眼鏡フレームの技術が開示されている。
詳述すると、特許文献1の眼鏡フレームのテンプル900は、図7に示すように、弾性の高いバネ部91と弾性の低い耳掛け部92とがろう付け等により連結されて構成されている。
また、耳掛け部92の断面形状は、前方部93は真円形状、中央部94は上下方向に扁平な形状、後方部95は幅方向に扁平な形状と、それぞれ異なる形状に形成されている。
【0007】
中央部94が上下方向に扁平な形状となっていることにより、中央部94を中心に上下方向の曲げ形状を容易に調節することができるとされている。また、後方部95が幅方向に扁平な形状となっていることにより、後方部95を中心に幅方向の曲げ形状を容易に調節することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-96781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の技術では、曲げ形状を容易に調整することができるように断面形状を工夫しているとはいえ、その調整作業は人の感覚で行う必要がある。そのため、プライヤー等の工具は不要であるとしても、技能を必要とする点では従来と同様である。
また、曲げやすくなっている一方で、簡単に曲がってしまうことで微調整がしにくかったり、衝撃や落下により意図せず変形してしまったりすることも考えられる。
【0010】
さらに、デザイン上の制約も生じるため、従来のように多様なデザインとすることもできない。もし従来のように多様なデザインのテンプルとしたい場合には、特許文献1の技術を採用することはできないため、経年や落下等で意図しない変形が生じていた場合には、専用工具を用いて都度調整する必要がある。
しかし、自宅や出先で専用工具の準備ができることは稀であり、最寄りの販売店等に持ち込まなければならないという問題に立ち戻ってしまう。
【0011】
この問題は、耳に掛けるテンプル先端部に限らず、鼻当てにおける高さや角度、智の開き角度等においても同様であり、調整を要する眼鏡のあらゆる部分において生じる問題である。
【0012】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、専用工具を必要とすることなく、装着者自身が随意に眼鏡の一部を最適に調整可能である眼鏡ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明の眼鏡ケースは、下側ケース体と、前記下側ケース体に対して開閉可能に構成された上側ケース体とを備える眼鏡ケースである。その基本的な構成として、前記上側ケース体と前記下側ケース体の何れか一方または両方に、眼鏡の一部を嵌めこみ可能な溝部が形成されている点に特徴がある。
なお、本発明においては、眼鏡には視力矯正用の眼鏡だけでなく、ファッション用の眼鏡やサングラス等、レンズを備え耳に掛けて使用するもの全般が含まれる。
【0014】
ケース体とは一部が窪んだ筐体であり、上側ケース体を閉めて下側ケース体と一体になると、内部に眼鏡を収納可能な空間が生じる。この空間に眼鏡を収納することで、眼鏡を傷から保護したり携帯したりすることができる。このように、眼鏡ケースは眼鏡を収納するものであるから、本発明の眼鏡ケースは、日常生活のほとんどにおいて眼鏡の装着者の手元に置かれる状態となる。
【0015】
上述のように、装着者の手元に置かれる本発明の眼鏡ケースは、前記上側ケース体と前記下側ケース体の何れか一方または両方に、眼鏡の一部を嵌めこみ可能な溝部が形成されていることで、任意のタイミングで、例えばテンプルの先端や鼻当て等の眼鏡の一部を溝部に嵌めこんで固定させることができる。固定の手段は問わないが、溝部の一部に係合するように構成してもよいし、指で押さえて固定する方法を採用してもよい。その固定された状態で眼鏡フレームを動かすことで、固定された部分に大きな応力が生じ、塑性変形を生じさせる。すなわち、嵌めこんだ眼鏡の一部を、溝部による『てこ』によって軽い力で変形させることができる。
【0016】
前記溝部は、予め所定の形状として形成されており、その溝部に眼鏡の一部を嵌めこんで変形させるため、嵌めこんだ眼鏡の一部は、溝部の形状を超えて曲げることはできない。換言すると、作業者が大きく曲げ過ぎてしまう恐れがない。
また、溝部に嵌めこんだ状態となることで、作業者はゆっくりと曲げ作業を行うことができるため、熟練した技能を要することなく、少しずつ曲げて掛け具合を微調整していくことができる。
【0017】
前述の課題を解決するために本発明が採用した手段としては、上記手段に加え、前記溝部は前記上側ケース体の天面と前記下側ケース体の底面の何れか一方または両方に形成されるとともに、眼鏡のテンプル先端部を平行に嵌めこみ可能な形状とし、前記溝部の一端を前記溝部が形成されている上側ケース体の側面または下側ケース体の側面と連通した構成とすることも可能である。
【0018】
前記手段においては、溝部に嵌めこむ対象が眼鏡のテンプル先端部であり、溝部の一端がケース体の側面と連通した構成としていることで、テンプルにおける曲げの対象部ではない智寄りの部分が溝部の壁面と干渉してしまうことを防止することができる。換言すると、テンプルの智寄りの部分を、前記一端側から外部に突出した状態で嵌めこむことができる。
【0019】
上記のような配置でテンプル先端部を溝部に嵌めこんで固定し、眼鏡フレームを平面方向に動かすことで、テンプル先端部を容易に曲げることができる。
また、上記のように嵌めこんだ状態で、眼鏡フレームを下方向に動かすことで、テンプル先端部を側頭部に沿った形状となるように湾曲または屈曲させることもできる。
【0020】
前述の課題を解決するために本発明が採用した他の手段としては、前記溝部を、眼鏡のテンプル先端部を嵌めこんだ状態における前記溝部と前記テンプル先端部との隙間において、前記一端側の隙間の方が、他端側の隙間よりも大きくなるように構成することも可能である。
【0021】
テンプル先端部を嵌めこむための溝部は、テンプル先端部の形状を平面方向に拡大(オフセット)した形状となっている。すなわち、テンプル先端部を溝部に嵌めこんだ状態においては、テンプル先端部と溝部との間に隙間が生じている。曲げ作業においては、この隙間の分だけ眼鏡フレームを動かすことができる。換言すると、この隙間は曲げ代である。
【0022】
上記手段においては、この隙間において、前記一端側の隙間の方が、他端側の隙間よりも大きくなるように溝部を形成している。このように一端側の隙間が大きくなるようにすることで、曲げの基点となる固定部分に対して、隙間の大きな一端側を大きく動かすことができる。
これにより、曲げ調整できる範囲が広くなり、装着者の耳の形状に最適な曲げ具合に微調整させることができる。
【0023】
また、本発明の他の手段として、前記溝部の底面は、前記溝部が形成されている前記上側ケース体の天面または前記下側ケース体の底面に対して、前記一端側に向かって下降して傾斜するように構成することも可能である。
【0024】
溝部の底面が、前記一端側に向かって下降するように構成されていることで、眼鏡フレームを下方向に動かすことで、溝部の底面と眼鏡ケースの側面との境界部でテンプルを大きく湾曲または屈曲させるとともに、傾斜した溝部の底面に沿ってテンプル先端部全体を緩やかに湾曲させることができる。
これにより、テンプル先端部全体を側頭部に沿うようにゆるやかに湾曲または屈曲させることができる。
【0025】
さらに、本発明においては、前記上側ケース体に設けられた溝部を左側のテンプル先端部または右側のテンプル先端部を嵌めこみ可能である一方、前記下側ケース体に設けられた溝部は前記上側ケース体に設けられた溝部に嵌めこみ可能なテンプル先端部と反対側のテンプル先端部を嵌めこみ可能とすることも可能である。
【0026】
上下ケース体の何れかに、左右何れかのテンプル先端部を挿入可能な溝部をそれぞれ設けることで、何れのテンプル先端部を嵌めこむのかが明確にすることができる。
また、上側ケース体の天面または下側ケース体の底面において、溝部が占める面積を低減させることができるため、模様や印刷等のデザイン上の処理を施す面積を確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
前述のとおり、装着者の手元に置かれる本発明の眼鏡ケースは、上側ケース体と前記下側ケース体の何れか一方または両方に、眼鏡の一部を嵌めこみ可能な溝部を形成したことにより、『てこ』によって眼鏡の一部を軽い力で少しずつ曲げることができるとともに、溝部に嵌めこんだ状態で曲げることで、必要以上に曲げてしまう恐れがない。
これにより、本発明には、専用工具を必要とすることなく、装着者自身が随意に眼鏡の一部を最適に調整可能とすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の眼鏡ケースを表す斜視図及び断面図である。
図2】本発明の眼鏡ケースを用いてテンプル先端部を平面方向に曲げる様子を表した説明図である。
図3】本発明の眼鏡ケースを用いてテンプル先端部を下方向に曲げる様子を表した 説明図である。
図4】本発明の眼鏡ケースの変形例1を表す斜視図及び断面図である。
図5】本発明の眼鏡ケースの変形例2を表す斜視図及び断面図である。
図6】本発明の眼鏡ケースの変形例3を表す斜視図及び断面図である。
図7】眼鏡ケースの従来例1を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について、図1から図3に基づいて以下に説明する。
なお、各図は説明のために模式的に記載されており、寸法や形状は一部強調または簡略化して示されている。
【0030】
図1に示す眼鏡ケース100は、下側ケース体2と、下側ケース体2に対して開閉可能に構成された上側ケース体1とを備えている。上側ケース体1と下側ケース体2はヒンジ連結するとともに、ヒンジによって回転可能に構成されており、下側ケース体2の窪み21に眼鏡Gを載置して上側ケース体1を回転させて閉めることで、下側ケース体2の窪み21と上側ケース体1の窪み11とによって内部にできた空間に眼鏡Gが収納される。
図1の形態では、上側ケース体1と下側ケース体2とは、何れも樹脂製であり、内面側には起毛した布帛が貼り付けられている。なお、これらの素材については適宜変更することができる。
【0031】
上側ケース体の天面12には、所定の形状の溝部13が形成されている。この溝部13は、平面視で眼鏡Gのテンプル先端部Mの形状を平面方向に拡大(オフセット)した形状を呈しており、テンプル先端部Mを嵌めこみ可能に構成されている。
また、溝部13は一端側14と他端側15とを有し、一端側14は上側ケース体の側面16に連通しているが、他端部15は反対側の側面16’には連通していない。
なお、図1の形態では、テンプル先端部Mは溝部13の何れかに係止するものではなく、溝部13に挿入した状態となっており、テンプル先端部Mを持ち上げれば溝部13から抜け出るようになっている。
【0032】
上記溝部13の一端側14における上側ケース体の側面16と連通した部分については、溝部の底面17と上側ケース体の側面16との境界部は、角を大きく丸めている。
また、溝部13の一端側14の幅は、溝部13の他端側15の幅よりも大きく形成されている。具体的には、テンプル先端部Mを嵌めこんだ状態における溝部13とテンプル先端部Mとの隙間において、上側ケース体の側面16と連通している一端側14の隙間の方が、他端側15の隙間よりも大きくなるように構成されている。
【0033】
さらに、溝部の底面17は、上側ケース体1の天面12に対して、一端側14に向かって下降する、即ち側面16に向かうほど深くなるように傾斜している。図1の形態では、溝部の底面17の傾斜は、僅かに湾曲して傾斜しているが、直線的に傾斜していてもよい。
【0034】
一方、下側ケース体2の底面22には、上側ケース体1同様、所定の形状の溝部23が形成されている。この溝部23は、上側ケース体1同様、平面視で眼鏡Gのテンプル先端部M’の形状を平面方向に拡大(オフセット)した形状を呈しているが、上側ケース体1の溝部13が左側のテンプル先端部Mを嵌めこみ可能に構成しているのに対し、下側ケース体2の溝部23は右側のテンプル先端部M’を嵌めこみ可能に構成している点が異なる。
【0035】
その他、一端側24が下側ケース体の側面26と連通している点や、溝部の底面27と下側ケース体2の側面26の境界部の角を大きく丸めている点、溝部23の一端側24の幅が、溝部23の他端側25の幅よりも大きく形成されている点、溝部の底面27が、下側ケース体の底面22に対して、一端側24に向かって下降するように傾斜している点についても、上側ケース体1と同様である。
【0036】
次に、上記構成の眼鏡ケース100を用いてテンプル先端部Mの耳への掛かり具合を調整する方法について、図2に基づいて説明する。
まず、図2(a)に示すように、上側ケース体1の溝部13に右側のテンプル先端部Mを嵌めこむ。このとき、他端側15にテンプル先端部Mの先が合うように配置し、上側ケース体1の側面16と連通している一端側14からテンプルTの智B寄りの部分を突出させるように配置する。
そして、テンプル先端部Mが溝部13から外れてしまわないように、他端側15付近を指で押さえて固定する。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、テンプル先端部Mを押さえている方と逆の手で、一端側14から突出したテンプルTの智B寄りの部分を持ち、テンプル先端部Mの湾曲が大きくなる方向または湾曲が小さくなる方向の何れかの方向に曲げるように力を入れて移動させる。換言すると、眼鏡ケース100の平面方向に力を入れて移動させる。
【0038】
このようにテンプルTの智B寄りの部分を移動させるように力を入れてテンプル先端部Mを溝部13に沿って曲げることで、テンプル先端部Mが嵌めこまれた溝部13が支点となり、テンプルTに軽く力を入れるだけで、容易にテンプル先端部Mを曲げることができる。
曲げの方向については、テンプル先端部Mの耳への掛かりが浅い場合には湾曲が大きくなる方向に移動させ、耳への掛かりが深い場合には湾曲が小さくなる方向に移動させる。
例えば図2(b)では、白抜きの矢印の方向、すなわちテンプル先端部Mの湾曲が小さくなる方向に力を入れて移動させた様子を示している。
【0039】
テンプル先端部Mの変形においては、大きく曲げようとしてテンプルTの智B寄りの部分を過度に移動させようとした場合であっても、溝部13の外側の壁部131及び内側の壁部132に当接してそれ以上の変形が阻害される。そのため、意図せず大きく曲げてしまうことがない。例えば図2(b)では、内側の壁部132にテンプル先端部Mが当接して、それ以上曲げることができないようになっている。
なお、下側ケース体2の溝部23を用いて右側のテンプル先端部M’の耳への掛かり具合を調整する方法についても同様である。
【0040】
次に、上記構成の眼鏡ケース100を用いてテンプル先端部Mの側頭部への密着具合を調整する方法について、図3に基づいて説明する。
まず、耳への掛かり具合の調整のときと同様に、図2(a)に示すように、上側ケース体1の溝部13に左側のテンプル先端部Mを嵌めこみ、テンプル先端部Mが溝部13から外れてしまわないように、一端側14付近を指で押さえて固定する。
【0041】
次に、図3に示すように、テンプル先端部Mを押さえている方と逆の手で、一端側14から突出したテンプルTの智B寄りの部分を持ち、白抜き矢印の方向、すなわちテンプル先端部Mの内側への湾曲が大きくなる方向に曲げるように力を入れて移動させる。換言すると、上側ケース体1の底面12側から下側ケース体2側の方向に力を入れて移動させる。
【0042】
このとき、溝部の底面17は、上側ケース体1の底面12に対して、一端側14に向かって下降するように傾斜しているため、テンプル先端部Mは、この傾斜した溝部の底面17に沿った形で緩やかに湾曲した形状に変形するとともに、溝部の底面17と上側ケース体1の側面16との境界部によって先が大きく湾曲する。
【0043】
これにより、テンプル先端部Mを側頭部に沿うように、内側に湾曲または屈曲させることができる。
なお、下側ケース体2の溝部23を用いて左側のテンプル先端部M’の側頭部への密着具合を調整する方法についても同様である。
【0044】
『変形例1』
本発明においては上記の形態に限定されず、他の形態を採用することもできる。例えば、図4(a)に示す眼鏡ケース101は、上側ケース1の天底面12に、眼鏡Gの智Bの角度を調整するための溝部13が設けられている点が図1の形態と異なる。
【0045】
本変形例の溝部13は、フロントフレームのリムRと智Bの形状を幅方向に拡大した形状に形成されていることで、リムRと智Bを嵌めこみ可能に構成されている。
【0046】
そして、本変形例では、図4(b)に示すように、溝部13にリムRを挟持し、テンプルTを摘んで外側に向けて力を入れることで、智Bの開き角度を大きくすることができる。
また、テンプルTを摘んで内側に向けて力を入れることで、智Bの開き角度を小さくすることもできる。
【0047】
本変形例であっても、このようにテンプルTを移動させるように力を入れて智Bを溝部13に沿って曲げることで、リムRと智Bが嵌めこまれた溝部13が支点となり、テンプルTに軽く力を入れるだけで、容易に智Bを曲げることができる。
【0048】
また、智Bを大きく曲げようとしてテンプルTを過度に移動させようとした場合であっても、溝部13の両側の壁部131・132に当接してそれ以上の変形が阻害される。そのため、意図せず大きく曲げてしまうことがない。
なお、本変形例では、上側ケース体1には左側の智Bを嵌めこみ可能な溝部13が形成され、下側ケース体2には右側の智B’を嵌めこみ可能な溝部23が形成されている。
【0049】
『変形例2』
本発明においては、さらに他の形態を採用することもできる。例えば、図5に示す眼鏡ケース102は、下側ケース体2の底面22に、眼鏡Gの左右のテンプル先端部M・M’の角度を調整するための溝部23・23’が設けられている点が図1の形態と異なる。
なお、図5では、下側ケース体2が上向きになるように表示している。
【0050】
本変形例では、左右のテンプル先端部M・M’を嵌めこみ可能な溝部23・23’を、底面22の同一平面上に配置している一方で、上側ケース体1には何らの形状も形成していない。
このような構成とすることで、眼鏡ケース102を載置したときに人目に触れる上側ケース体1の天面12を滑らかな面とすることができる。これにより、印刷や表面処理等の自由度が増加する。
【0051】
『変形例3』
本発明においては、さらに他の形態を採用することもできる。例えば、図6に示す眼鏡ケース103は、下側ケース体2の側面26・26’に、眼鏡Gの左右のテンプル先端部M・M’の角度を調整するための溝部23・23’が設けられている点が図1の形態と異なる。
【0052】
本変形例では、左右のテンプル先端部M・M’を嵌めこみ可能な溝部23・23’を、側面26・26’に配置している一方で、上側ケース体1には何らの形状も形成していない。
このような構成とすることで、眼鏡ケース103を載置したときに人目に触れる上側ケース体1の天面12を滑らかな面とすることができる。これによっても、図5の形態と同様、印刷や表面処理等の自由度が増加する。
【0053】
本発明では、上記の他、眼鏡Gの鼻当てPの角度を調節するために、鼻当てPを嵌めこみ可能な溝部13とすることもできる。また、上側ケース体1と下側ケース体2とはヒンジによる開閉だけでなく、スライドして開閉するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
100,101,102,103 眼鏡ケース
1 上側ケース体
11 窪み
12 天面
13 溝部
131 外側の壁部
132 内側の壁部
14 一端側
15 他端側
16 側面
17 溝部の底面
2 下側ケース体
21 窪み
22 底面
23 溝部
24 一端側
25 他端側
26 側面
27 溝部の底面
200 防水シート
300 配管
B 智
G 眼鏡
M テンプル先端部
R リム
P 鼻当て
T テンプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7