(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011930
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】漏洩源位置算出装置、漏洩源位置算出システム、プログラム及び漏洩源位置算出方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/02 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G01M3/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114357
(22)【出願日】2023-07-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発/人工知能技術の社会実装に向けた研究開発・実証/AI活用によるプラント保全におけるガス漏洩の発見と特定の迅速化、並びに検出可能ガスの対象拡大」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木内 美佳子
(72)【発明者】
【氏名】浅野 基広
(72)【発明者】
【氏名】阪上 隆英
(72)【発明者】
【氏名】久保 司郎
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 大輝
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067BB17
2G067CC04
2G067DD10
2G067DD11
2G067DD17
2G067EE06
2G067EE08
2G067EE13
(57)【要約】
【課題】異なる時刻における複数の漏洩流体の流れ方向を取得し、その流れ方向が略同一かどうかで異なる決定方法により漏洩源位置を推定できるようにした漏洩源位置算出装置を提供する。
【解決手段】漏洩源位置算出装置3は、少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得する漏洩方向算出部32と、異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得する漏洩源候補算出部33と、異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定する漏洩源決定部34とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得する漏洩方向取得部と、
前記異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得する漏洩源候補位置取得部と、
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定する漏洩源決定部と
を備えた漏洩源位置算出装置。
【請求項2】
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であると、前記漏洩源決定部は、前記異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ取得した複数の漏洩源候補位置の中から、前記漏洩方向の最上流に位置する漏洩源候補位置を漏洩源位置に決定する
請求項1に記載の漏洩源位置算出装置。
【請求項3】
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値以上であると、前記漏洩源決定部は、前記異なる時刻の複数の漏洩方向に基づく各直線の交点を求め、各交点の重心を漏洩源位置に決定する
請求項1に記載の漏洩源位置算出装置。
【請求項4】
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値以上であると、前記漏洩源決定部は、前記異なる時刻の複数の漏洩方向の濃度を求め、濃度の濃さから設定した各直線の交点を求め、各交点の重心を漏洩源位置に決定する
請求項1に記載の漏洩源位置算出装置。
【請求項5】
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値以上であると、前記漏洩源決定部は、前記異なる時刻の複数の漏洩方向を取得した複数の流体領域の輪郭線または中心線から設定した各直線の交点を求め、各交点の重心を漏洩源位置に決定する
請求項1に記載の漏洩源位置算出装置。
【請求項6】
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値以上であると、前記漏洩源決定部は、前記異なる時刻の複数の漏洩方向から設定した各直線から最短距離の点を漏洩源位置に決定する
請求項1に記載の漏洩源位置算出装置。
【請求項7】
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値以上であると、前記漏洩源決定部は、前記異なる時刻の複数の漏洩方向の上流側に重みづけをした確率マップを作成し、最高確率位置を漏洩源位置に決定する
請求項1に記載の漏洩源位置算出装置。
【請求項8】
漏洩方向に基づく直線は、この漏洩方向を取得した流体領域の重心を通る
請求項3、6または7のいずれか1項に記載の漏洩源位置算出装置。
【請求項9】
漏洩方向に基づく直線は、この漏洩方向から取得した漏洩源候補位置を通る
請求項3、6または7のいずれか1項に記載の漏洩源位置算出装置。
【請求項10】
監視対象を含む被写体の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した時系列の画像から、漏洩源位置を決定する漏洩源位置算出装置とを備えた漏洩源位置算出システムであって、
前記漏洩源位置算出装置は、
少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得する漏洩方向取得部と、
前記異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得する漏洩源候補位置取得部と、
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定する漏洩源決定部とを備えた
漏洩源位置算出システム。
【請求項11】
時系列の画像から、漏洩源位置を決定する漏洩源位置算出装置の演算処理部で実行されるプログラムであって、
少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得するステップと、
前記異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得するステップと、
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定するステップと
を前記演算処理部に実行させる
プログラム。
【請求項12】
少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得するステップと、
前記異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得するステップと、
前記異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定するステップとを実行する
漏洩源位置算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列の画像から、ガスなどの漏洩源位置を求める漏洩源位置算出装置、漏洩源位置算出システム、プログラム及び漏洩源位置算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスなどの漏洩流体の漏洩源位置を求める技術として、以下のような技術が提案されている。例えば、特許文献1では、流体画像の画素ごとに流体がどの方向に移動するのかを辿り、漏洩流体の漏洩源位置を算出する技術が提案されている。また、特許文献2では、同一時刻の漏洩流体の複数の移動軌跡を求め、その交点から漏洩流体の漏洩源位置を算出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2020/110410号公報
【特許文献2】国際公開WO2016/208317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手法では、漏洩流体や漏洩源が遮蔽物で隠れている場合、漏洩源まで辿り着くことができない。この場合、遮蔽物から漏洩流体が見え始める箇所を漏洩源としてしまうため、実際の漏洩源位置と推定した漏洩源位置との誤差が大きくなる。
【0005】
また、特許文献2の手法では、漏洩流体の複数の移動方向が同一方向でなす角が小さいとき、交点は大きく外れた位置に結ばれことが多くなる。このため、実際の漏洩源位置と推定した漏洩源位置との誤差が大きくなり、精度良く推定できない。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、異なる時刻における複数の漏洩流体の流れ方向を取得し、その流れ方向が略同一かどうかで異なる決定方法により漏洩源位置を推定できるようにした漏洩源位置算出装置、漏洩源位置算出システム、プログラム及び漏洩源位置算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得する漏洩方向取得部と、異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得する漏洩源候補位置取得部と、異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定する漏洩源決定部とを備えた漏洩源位置算出装置である。
【0008】
また、本発明は、監視対象を含む被写体の画像を取得する画像取得部と、画像取得部で取得した時系列の画像から、漏洩源位置を決定する漏洩源位置算出装置とを備えた漏洩源位置算出システムであって、漏洩源位置算出装置は、少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得する漏洩方向取得部と、異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得する漏洩源候補位置取得部と、異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定する漏洩源決定部とを備えた漏洩源位置算出システムである。
【0009】
さらに、本発明は、時系列の画像から、漏洩源位置を決定する漏洩源位置算出装置の演算処理部で実行されるプログラムであって、少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得するステップと、異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得するステップと、異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定するステップとを演算処理部に実行させるプログラムである。
【0010】
また、本発明は、少なくとも2以上の漏洩流体の異なる時刻の漏洩方向を取得するステップと、異なる時刻の複数の漏洩方向からそれぞれ漏洩源候補位置を取得するステップと、異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定するステップとを実行する漏洩源位置算出方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異なる時刻の複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じた決定方法で、漏洩源位置を決定することができる。これにより、実際の漏洩源位置と推定した漏洩源位置との誤差が大きくなることを抑制できる決定方法で、漏洩源位置を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係る漏洩源位置算出システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態に係る漏洩源位置算出方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3A】時系列な赤外画像の一例を示す説明図である。
【
図3B】時系列な赤外画像の一例を示す説明図である。
【
図3C】時系列な赤外画像の一例を示す説明図である。
【
図3D】時系列な赤外画像の一例を示す説明図である。
【
図4A】ガス信号が抽出された画像の一例を示す説明図である。
【
図4B】ガス信号が抽出された画像の一例を示す説明図である。
【
図4C】ガス信号が抽出された画像の一例を示す説明図である。
【
図4D】ガス信号が抽出された画像の一例を示す説明図である。
【
図5A】ガス信号が最大値の画像の一例を示す説明図である。
【
図6】ガスの漏洩方向及び漏洩源候補位置を取得するタイミングの一例を示すタイムチャートである。
【
図7】複数の漏洩方向の間の角度と誤差の関係を示す説明図である。
【
図8】複数の漏洩方向が略同一である場合において漏洩源を決定する手法の一例を示す説明図である。
【
図9A】複数の漏洩方向が略同一ではない場合において漏洩源を決定する手法の一例を示す説明図である。
【
図9B】複数の漏洩方向が略同一ではない場合において漏洩源を決定する手法の一例を示す説明図である。
【
図10A】複数の漏洩方向が略同一ではない場合において漏洩源を決定する手法の一例を示す説明図である。
【
図10B】複数の漏洩方向が略同一ではない場合において漏洩源を決定する手法の一例を示す説明図である。
【
図11】漏洩方向、漏洩源候補位置及び漏洩源を決定する手法の他の例を示す説明図である。
【
図12】漏洩方向、漏洩源候補位置及び漏洩源を決定する手法の他の例を示す説明図である。
【
図13A】漏洩方向、漏洩源候補位置及び漏洩源を決定する手法の他の例を示す説明図である。
【
図13B】漏洩方向、漏洩源候補位置及び漏洩源を決定する手法の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の漏洩源位置算出装置、漏洩源位置算出装置を備えた漏洩源位置算出システムの実施の形態について説明する。また、漏洩源位置算出装置の演算処理部で実行されるプログラム及び漏洩源位置算出方法の実施の形態について説明する。
【0014】
<漏洩源位置算出装置、漏洩源位置算出システム及びプログラムの構成例>
図1は、本実施の形態に係る漏洩源位置算出システムの構成を示すブロック図である。漏洩源位置算出システム1は、画像取得部2と、漏洩源位置算出装置3と、出力部5を備える。なお、漏洩源位置算出装置3が画像取得部2と出力部5の両方または一方を備える構成でもよい。また、漏洩源位置算出システム1は、入力部を備える構成でもよい。入力部は、キーボード、タッチパネル、マウスなどでよい。漏洩源位置算出装置3が入力部を備える構成でもよい。
【0015】
画像取得部2は、図示しない光学系、フィルター、撮像素子及び信号処理部などを備えた赤外線カメラである。画像取得部2は、監視対象に応じた特定波長の赤外線のみをフィルターで通過させ、撮像素子で受光させる構成である。画像取得部2は、監視対象を含む被写体について、時系列の赤外画像、赤外画像の動画などを撮影し、デジタル信号の画像データを生成する。監視対象は漏洩流体であり、例えば、ガス輸送管どうしが接続されている箇所である。
【0016】
漏洩源位置算出装置3は、パーソナルコンピューター、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置である。漏洩源位置算出装置3は、演算処理部30と、記憶部4を備える。
【0017】
演算処理部30は、CPU(Central Processing Unit)などで構成される。演算処理部30は、機能ブロックとして、流体領域抽出部31と、漏洩方向算出部32と、漏洩源候補算出部33と、漏洩源決定部34を備える。
【0018】
流体領域抽出部31は、画像取得部2で取得した画像からガス領域を取得する。ガス領域は、流体領域の一例である。また、ガスは、漏洩流体の一例である。流体領域抽出部31は、異なる時刻で2回以上、ガス領域を取得する。これにより、流体領域抽出部31は、2以上のガス領域を取得する。流体領域抽出部31は、プログラムで実現される。流体領域抽出部31を実現するプログラムは、演算処理部30で実行される。
【0019】
漏洩方向算出部32は漏洩方向取得部の一例で、流体領域抽出部31で取得したガス領域からガスの漏洩方向を取得する。漏洩方向算出部32は、異なる時刻に取得された複数のガス領域から、それぞれガスの漏洩方向を取得する。これにより、漏洩方向算出部32は、複数のガスの漏洩方向を取得する。漏洩方向算出部32は、プログラムで実現される。漏洩方向算出部32を実現するプログラムは、演算処理部30で実行される。
【0020】
漏洩源候補算出部33は漏洩源候補位置取得部の一例で、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向からガスの漏洩源候補位置を取得する。漏洩源候補算出部33は、異なる時刻に取得された複数のガスの漏洩方向から、それぞれのガスの漏洩源候補位置を取得する。これにより、漏洩源候補算出部33は、複数のガスの漏洩源候補位置を取得する。漏洩源候補算出部33は、プログラムで実現される。漏洩源候補算出部33を実現するプログラムは、演算処理部30で実行される。
【0021】
漏洩源決定部34は、複数のガスの漏洩方向のなす角に応じて、漏洩源の決定方法を切り替える。漏洩源決定部34は、複数のガスの漏洩方向のなす角が所定の閾値未満であるか、閾値以上であるかに応じて、漏洩源の決定方法を切り替える。漏洩源決定部34は、プログラムで実現される。漏洩源決定部34を実現するプログラムは、演算処理部30で実行される。
【0022】
記憶部4は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成される。記憶部4は、HDD(Hard Disk Drive)などを備えてもよい。記憶部4は、漏洩方向記憶部40と、漏洩源候補記憶部41を備える。漏洩方向記憶部40は、複数のガスの漏洩方向を記憶する。漏洩源候補記憶部41は、複数のガスの漏洩源候補位置を記憶する。また、流体領域抽出部31、漏洩方向算出部32、漏洩源候補算出部33及び漏洩源決定部34がプログラムで実現される場合、記憶部4は、これらのプログラムを記憶する。
【0023】
出力部5は、ディスプレイなどで構成される。出力部5は、例えば液晶ディスプレイである。また、出力部5は、液晶ディスプレイの代わりに、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)、プラズマディスプレイなどでもよい。
【0024】
流体領域抽出部31、漏洩方向算出部32、漏洩源候補算出部33及び漏洩源決定部34を実現するプログラムは、記憶部4に予め記憶されているが、これに限定されない。例えば、これらのプログラムを記憶している記憶媒体が用意されており、この記憶媒体に記憶されているプログラムが記憶部4に記憶されてもよい。これらのプログラムを記憶している記憶媒体は、例えば、磁気ディスク、光学ディスク、SSD(Solid State Drive)のような外部記憶媒体である。また、これらのプログラムは、漏洩源位置算出装置3と有線、無線のネットワークで接続されたサーバに記憶されていてもよい。これらのプログラムは、サーバからネットワークを介して漏洩源位置算出装置3に送られ、記憶部4に記憶される。
【0025】
演算処理部30は、これらのプログラムを記憶部4から読み出して実行する。これにより、流体領域抽出部31、漏洩方向算出部32、漏洩源候補算出部33及び漏洩源決定部34が実現される。
【0026】
但し、これらの機能ブロックは、演算処理部30による処理に替えて、DSP(Digital Signal Processor)による処理によって実現されてもよい。これらの機能ブロックは、一部がDSPによる処理によって実現されてもよいし、全部がDSPによる処理によって実現されてもよい。また、これらの機能ブロックは、演算処理部30による処理と共に、DSPによる処理によって実現されてもよい。また、同様に、各機能ブロックの一部又は全部は、ソフトウェアによる処理に替えて、または、これと共に、専用のハードウェア回路による処理によって実現されてもよい。
【0027】
<漏洩源位置算出装置、漏洩源位置算出システム及びプログラムの動作例>
図2は、本実施の形態に係る漏洩源位置算出方法の一例を示すフローチャートである。次に、漏洩源位置算出方法として、漏洩源位置算出システム1、漏洩源位置算出装置3及び漏洩源位置算出装置3で実行されるプログラムの動作例について説明する。
【0028】
演算処理部30は、流体領域抽出部31、漏洩方向算出部32、漏洩源候補算出部33及び漏洩源決定部34を実現するプログラムを記憶部4から読み出して実行する。
【0029】
流体領域抽出部31は、画像取得部2で取得した画像から、
図2のステップSA1で、ガス領域を取得する。
【0030】
漏洩方向算出部32は、流体領域抽出部31で取得したガス領域から、
図2のステップSA2で、ガスの漏洩方向を取得する。演算処理部30は、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向を、
図2のステップSA3で、記憶部4の漏洩方向記憶部40に記憶する。
【0031】
漏洩源候補算出部33は、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向から、
図2のステップSA4で、ガスの漏洩源候補位置を取得する。演算処理部30は、漏洩源候補算出部33で取得したガスの漏洩源候補位置を、
図2のステップSA5で、記憶部4の漏洩源候補記憶部41に記憶する。
【0032】
演算処理部30は、ガスの漏洩方向及び漏洩源候補位置を取得する上述したステップSA1~SA5の処理を所定回数行ったか、
図2のステップSA6で判断する。演算処理部30は、ガスの漏洩方向及び漏洩源候補位置を取得する処理を所定回数行っていないと判断すると、ステップSA1~SA5の処理を所定回数繰り返す。
【0033】
漏洩源決定部34は、複数のガスの漏洩方向のなす角が所定の閾値未満であるか、閾値以上であるか、
図2のステップSA7で判断する。漏洩源決定部34は、複数のガスの漏洩方向のなす角が所定の閾値未満であると、
図2のステップSA8で、複数の漏洩源候補位置の中から漏洩源候補位置を決定する。漏洩源決定部34は、複数のガスの漏洩方向のなす角が閾値以上であると、
図2のステップSA9で、複数の漏洩方向から漏洩源候補位置を決定する。
【0034】
以下に、動作の詳細について説明する。画像取得部2は、時系列な複数の赤外画像MD(1)~MD(4)を取得する。
図3A、
図3B、
図3C及び
図3Dは、時系列な赤外画像の一例を示す説明図である。
図3A、
図3B、
図3C及び
図3Dの赤外画像は、監視対象のガス領域を含む。赤外画像MD(1)は、撮影開始時の最初の赤外画像である。赤外画像MD(2)は、その0.2秒後、赤外画像MD(3)は、0.4秒後、赤外画像MD(4)は、0.6秒後の赤外画像である。取得する赤外画像の数、時間の間隔は一例である。
【0035】
これらの赤外画像に対し、例えば、特許第6245418号公報に記載の画像処理を行う。同公報に記載の画像処理では、ガスが風でゆらぐ変化が捉えられる。これにより、ガス信号が抽出された画像MD(10)~MD(40)が得られる。
図4A、
図4B、
図4C及び
図4Dは、ガス信号が抽出された画像の一例を示す説明図である。画像MD(10)は、赤外画像MD(1)に対しガス信号が抽出された画像である。画像MD(20)は、赤外画像MD(2)に対しガス信号が抽出された画像である。画像MD(30)は、赤外画像MD(3)に対しガス信号が抽出された画像である。画像MD(40)は、赤外画像MD(4)に対しガス信号が抽出された画像である。
【0036】
次に、流体領域抽出部31は、ガス信号が抽出された画像からガス領域を取得する。流体領域抽出部31は、ガス信号が抽出された画像n秒分、例えば画像1秒分のガス信号の最大値を取る。流体領域抽出部31は、ガス信号が最大値の画像MD(max)に対し、既知の手法でノイズ除去や閾値処理を行うことで、ガス領域CLを取得する。
図5Aは、ガス信号が最大値の画像の一例を示す説明図、
図5Bは、ガス領域の一例を示す説明図である。ガス信号を取得する手法、ガス領域を取得する手法は一例であり、別の手法でもよい。また、ガス領域は、ユーザーにより指定された領域であってもよい。
【0037】
漏洩方向算出部32は、流体領域抽出部31で取得したガス領域CLから、例えば以下の手法でガスの漏洩方向を取得する。漏洩方向算出部32は、ガス領域CL内の画素についてオプティカルフローを求める。オプティカルフローの演算には、公知技術の勾配法やLucas-Kanade法等の手法を用いる。漏洩方向算出部32は、ガス領域CL内の画素のオプティカルフローの平均値を算出する。漏洩方向算出部32は、ガス領域CL内の画素のオプティカルフローの平均値を、そのガス領域CL全体の漏洩方向として取得する。演算処理部30は、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向を、記憶部4の漏洩方向記憶部40に記録する。
【0038】
なお、ガスの漏洩方向を算出する手法は、オプティカルフローに限定されるものではない。例えば、SAD(Sum of Absolute Difference)、NCC(Normalized Cross‐Correlation)などのテンプレートマッチングで、ガスの漏洩方向を算出してもよい。
【0039】
漏洩源候補算出部33は、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向から、例えば以下の手法でガスの漏洩源候補位置を取得する。漏洩源候補算出部33は、WO2020/110410の手法のように、画素の移動ベクトルを辿ることで、漏洩源候補位置を算出する。演算処理部30は、漏洩源候補算出部33で取得したガスの漏洩源候補位置を、記憶部4の漏洩源候補記憶部41に記録する。
【0040】
なお、ガスの漏洩源候補位置は、特開2002-296142や特許5861416、特開2016-114500の手法を用いて算出しても良い。また、ガスの漏洩源候補位置は、WO2016/143754、WO2016/208317、WO2017/150565、WO2021/246130の手法を用いて算出しても良い。
【0041】
演算処理部30は、上述したガス領域の抽出から漏洩源候補位置の算出までの動作を異なる時刻で、少なくとも2回以上繰り返す。本例では、ガス領域の抽出から漏洩源候補位置の算出までの動作を、異なる時刻で12回繰り返し、複数のガスの漏洩方向及び漏洩源候補位置を取得する。
【0042】
図6は、ガスの漏洩方向及び漏洩源候補位置を取得するタイミングの一例を示すタイムチャートである。
【0043】
演算処理部30は、
図2のフローチャートのステップSA1~SA5の処理を、例えば2分の間、10秒ごとに繰り返す。これにより、演算処理部30は、ガスの漏洩方向及び漏洩源候補位置を、12回分取得して記憶部4に記録する。そして、演算処理部30は、
図2のステップSA7の処理に移る。演算処理部30は、12回分のガスの漏洩方向の内の複数のガスの漏洩方向が略同一であるかどうかを判定する。なお、ガスの漏洩方向及び漏洩源候補位置を取得する数、間隔、時間は一例であり、これに限るものではない。
【0044】
演算処理部30は、複数の漏洩方向のなす角が所定の閾値未満であれば、複数の漏洩方向が略同一であると判定する。また、演算処理部30は、複数の漏洩方向のなす角が閾値以上であれば、複数の漏洩方向が略同一ではないと判定する。
【0045】
複数の漏洩方向が略同一ではないと判定されると、漏洩源決定部34は、例えば、複数の漏洩方向の交点を求める手法で、漏洩源を決定する。これに対し、複数の漏洩方向が略同一であると判定されると、漏洩源の決定に、複数の漏洩方向の交点を求める手法は適用しない。以下にその理由を説明する。
【0046】
図7は、複数の漏洩方向の間の角度と誤差の関係を示す説明図である。複数の漏洩方向が略同一で、複数の漏洩方向の間の角度が鋭角の場合、実際の漏洩源と、漏洩方向の交点で推定される漏洩源との間に大きな誤差を含む可能性がある。
【0047】
図7に示すように、ある時刻の漏洩方向を示す直線L1と、他の時刻の漏洩方向を示す直線L2との間の角度をθとする。また、直線L1と直線L2の交点P1と、直線L2に対して並行にΔxだけずれた直線L2′と直線L1の交点P2のずれ量をΔdとする。Δdは、以下の(1)式で求められる。
【0048】
【0049】
直線L2に対して直線L2′が例えば5画素並行移動したとする。角度θが例えば30°である場合、直線L1と直線L2の交点P1に対し、直線L1と直線L2′の交点P2は10画素ずれる。角度θが更に鋭角であれば、両交点間に更に大きな誤差が生じることになる。
【0050】
一方、角度θが90°である場合、直線L2に対して直線L2′が5画素並行移動したとすると、交点P1に対する交点P2のずれ量は5画素に抑えることができる。
【0051】
そこで、複数の漏洩方向が略同一であるかどうかを判定する閾値を例えば30°とする。そして、複数の漏洩方向のなす角が閾値未満であるか閾値以上であるかに応じて、ガスの漏洩源候補を決定する手法を切り替える。なお、複数の漏洩方向が略同一であるかどうかを判定する閾値は、30°に限るものではない。
【0052】
<複数の漏洩方向が略同一である場合における漏洩源の決定手法例>
図8は、複数の漏洩方向が略同一である場合において漏洩源を決定する手法の一例を示す説明図である。
【0053】
流体領域抽出部31は、
図2のステップSA1で、時刻t1にガス領域CL1を取得し、時刻t2にガス領域CL2を取得し、時刻t3にガス領域CL3を取得する。
【0054】
漏洩方向算出部32は、
図2のステップSA2で、流体領域抽出部31で取得したガス領域CL1から、ガスの漏洩方向L10を取得する。また、漏洩方向算出部32は、流体領域抽出部31で取得したガス領域CL2から、ガスの漏洩方向L20を取得する。さらに、漏洩方向算出部32は、流体領域抽出部31で取得したガス領域CL3から、ガスの漏洩方向L30を取得する。演算処理部30は、
図2のステップSA3で、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向L10、L20、L30を、記憶部4の漏洩方向記憶部40に記録する。
【0055】
漏洩源候補算出部33は、
図2のステップSA4で、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向L10から、ガスの漏洩源候補位置P10を取得する。また、漏洩源候補算出部33は、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向L20から、ガスの漏洩源候補位置P20を取得する。さらに、漏洩源候補算出部33は、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向L30から、ガスの漏洩源候補位置P30を取得する。演算処理部30は、
図2のステップSA5で、漏洩源候補算出部33で取得したガスの漏洩源候補位置P10、P20、P30を、記憶部4の漏洩源候補記憶部41に記録する。
【0056】
演算処理部30は、
図2のステップSA7で、複数の漏洩方向のなす角が所定の閾値未満であれば、複数の漏洩方向が略同一であると判定する。
【0057】
この場合、漏洩源決定部34は、
図2のステップSA8で、ぞれぞれの漏洩方向から求めた複数の漏洩源候補位置の中から漏洩源を決定する。漏洩源決定部34は、漏洩方向L10、L20、L30を用いて平均の漏洩方向Lcを求める。漏洩源決定部34は、複数の漏洩源候補位置P10、P20、P30の中から、平均の漏洩方向Lcの最上流に位置するものを選択する。例えば、漏洩源候補位置P10が平均の漏洩方向Lcの最上流に位置する場合、漏洩源決定部34は、漏洩源候補位置P10を漏洩源位置Paに決定する。
【0058】
なお、漏洩源決定部34は、漏洩源候補位置のx座標、y座標のどちらかが四分位範囲外にあるかどうかを判定する。漏洩源決定部34は、四分位範囲外にある漏洩源候補位置を、漏洩源の決定対象から除外する。そして、漏洩源決定部34は、残りの漏洩源候補位置の中から平均の漏洩方向の最上流に位置するものを選択して漏洩源を決定する。これにより、ノイズ等の影響を排除することができる。
【0059】
<複数の漏洩方向が略同一ではない場合における漏洩源の決定手法例>
図9A、
図9B、
図10A、
図10Bは、複数の漏洩方向が略同一ではない場合において漏洩源を決定する手法の一例を示す説明図である。
【0060】
流体領域抽出部31は、
図2のステップSA1で、時刻t1にガス領域CL10を取得し、時刻t2にガス領域CL20を取得し、時刻t3にガス領域CL30を取得する。演算処理部30は、各ガス領域CL10、CL20、CL30の重心を取得する。
【0061】
漏洩方向算出部32は、
図2のステップSA2で、流体領域抽出部31で取得したガス領域CL10から、ガスの漏洩方向L11を取得する。また、漏洩方向算出部32は、流体領域抽出部31で取得したガス領域CL20から、ガスの漏洩方向L21を取得する。さらに、漏洩方向算出部32は、流体領域抽出部31で取得したガス領域CL30から、ガスの漏洩方向L31を取得する。漏洩方向L11、L21、L31は、直線で示される。演算処理部30は、
図2のステップSA3で、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向L11、L21、L31を、記憶部4の漏洩方向記憶部40に記録する。
【0062】
漏洩源候補算出部33は、
図2のステップSA4で、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向L11から、ガスの漏洩源候補位置P11を取得する。また、漏洩源候補算出部33は、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向L21から、ガスの漏洩源候補位置P21を取得する。さらに、漏洩源候補算出部33は、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向L31から、ガスの漏洩源候補位置P31を取得する。演算処理部30は、
図2のステップSA5で、漏洩源候補算出部33で取得したガスの漏洩源候補位置P11、P21、P31を、記憶部4の漏洩源候補記憶部41に記録する。
【0063】
演算処理部30は、
図2のステップSA7で、複数の漏洩方向のなす角が所定の閾値以上であれば、複数の漏洩方向が略同一ではないと判定する。
【0064】
この場合、漏洩源決定部34は、
図2のステップSA9で、例えば、複数の漏洩方向の交点を求める手法で、漏洩源を決定する。具体的な手法として、漏洩方向L11を、漏洩方向L11を取得したガス領域CL10の重心を通る直線とする。または、漏洩方向L11を、漏洩方向L11から取得した漏洩源候補位置P11を通る直線とする。また、漏洩方向L21を、漏洩方向L21を取得したガス領域CL20の重心を通る直線とする。または、漏洩方向L21を、漏洩方向L21から取得した漏洩源候補位置P21を通る直線とする。さらに、漏洩方向L31を、漏洩方向L31を取得したガス領域CL30の重心を通る直線とする。または、漏洩方向L31を、漏洩方向L31から取得した漏洩源候補位置P31を通る直線とする。
【0065】
図9Aに記載の手法では、漏洩源決定部34は、漏洩方向L11の直線と漏洩方向L21の直線との交点CP12を求める。また、漏洩源決定部34は、漏洩方向L11の直線と漏洩方向L31の直線との交点CP13を求める。さらに、漏洩源決定部34は、漏洩方向L21の直線と漏洩方向L31の直線との交点CP23を求める。漏洩源決定部34は、交点CP12、CP13、CP23の重心を求め、その重心を漏洩源位置Pbに決定する。
【0066】
図9Bに記載の手法では、異なる時刻に取得した複数の漏洩方向の直線を、ガス領域の重心または漏洩源候補位置を通るように求める。ここまでは、
図9Aに記載の手法と同じである。
【0067】
図9Bに記載の手法では、漏洩源決定部34は、漏洩方向L11の直線と漏洩方向L21の直線と漏洩方向L31の直線から最短距離にある点を算出する。漏洩源決定部34は、その点を漏洩源位置Pcに決定する。各漏洩方向の直線から距離が最短の点は、以下の(2)式を最小化することで求められる。
【0068】
【0069】
(2)式において、cを複数の直線の近傍点、uiを直線上のある点、viを直線の方向ベクトルとする。各漏洩方向の直線から距離が最短の点は、近傍点と直線との距離の和を最小化することで求められる。
【0070】
図10A,
図10Bに記載の手法では、異なる時刻に取得した複数の漏洩方向の直線を、ガス領域の重心または漏洩源候補位置を通るように求める。ここまでは、
図9Aに記載の手法と同じである。
【0071】
図10A、
図10Bに記載の手法では、漏洩方向L11の直線において、上流側に重みづけをして、確率マップMP11を作成する。確率マップMP11では、例えば、漏洩源候補位置P11から上流側に1画素離れるごとに0.5%重みを追加する。逆に、下流側に1画素離れるごとに0.5%重みを減らす。また、漏洩方向L21の直線において、上流側に重みづけをして、確率マップMP21を作成する。確率マップMP21では、例えば、漏洩源候補位置P21から上流側に1画素離れるごとに0.5%重みを追加する。逆に、下流側に1画素離れるごとに0.5%重みを減らす。さらに、漏洩方向L31の直線において、上流側に重みづけをして、確率マップMP31を作成する。確率マップMP31では、例えば、漏洩源候補位置P31から上流側に1画素離れるごとに0.5%重みを追加する。逆に、下流側に1画素離れるごとに0.5%重みを減らす。
【0072】
漏洩源決定部34は、このようにして作成した確率マップMP11、MP21、MP31の最も値が大きい位置を求め、最高確率位置を漏洩源位置Pdに決定する。
【0073】
<漏洩方向、漏洩源候補位置及び漏洩源の決定手法の他の例>
図11は、漏洩方向、漏洩源候補位置及び漏洩源を決定する手法の他の例を示す説明図である。流体領域抽出部31は、
図2のステップSA1で、ガス領域CL10を取得する。
【0074】
漏洩方向算出部32は、
図2のステップSA2で、ガスが高濃度である点を探索して漏洩方向を求める。漏洩源候補算出部33は、ガスが高濃度である点を探索して漏洩源候補位置を求める。
図11に記載の手法では、ガス領域CL10を含む破線で示す四角形CL14の各頂点N1~N4を注目点の始点として、任意の半径1の円C1~C4を設定する。
【0075】
次に、各円C1~C4の円周上を探索し、注目画素よりも濃度が高く、かつ、最も濃度が高い点に注目点を移動する。これを移動先がなくなるまで繰り返す。
【0076】
頂点N1~N4からの探索軌跡のうち、始点と終点との直線距離が最短の軌跡の始点は、ガス漏洩源に最も近い始点であると考えられる。但し、この点は、高濃度点の探索ができていない可能性が高い点であるため除外して以降の処理を実行する。
図11では、例えば、頂点N4からの探索軌跡NL4が、始点と終点との直線距離が最短の軌跡である。このため、頂点N4は除外する。
【0077】
残りの探索軌跡NL1~NL3に対し、それぞれの探索軌跡NL1~NL3を直線に近似すると、ガスの濃度の濃さから設定した直線を引くことができる。例えば、探索軌跡NL1から、ガスの濃度の濃さから設定した直線NL10を引くことができる。また、探索軌跡NL2から、ガスの濃度の濃さから設定した直線NL20を引くことができる。さらに、探索軌跡NL3から、ガスの濃度の濃さから設定した直線NL30を引くことができる。なお、ガスの濃度の濃さから設定した直線は、探索軌跡を直線に近似したものだけではなく、探索軌跡の始点と終点を結んだ直線でも良い。
【0078】
漏洩方向算出部32は、直線NL10を、探索軌跡NL1の始点側を下流方向としたガスの漏洩方向とする。また、漏洩方向算出部32は、直線NL20を、探索軌跡NL2の始点側を下流方向としたガスの漏洩方向とする。さらに、漏洩方向算出部32は、直線NL30を、探索軌跡NL3の始点側を下流方向としたガスの漏洩方向とする。演算処理部30は、
図2のステップSA3で、漏洩方向算出部32で取得したガスの漏洩方向を、記憶部4の漏洩方向記憶部40に記録する。
【0079】
漏洩源候補算出部33は、
図2のステップSA4で、探索軌跡NL1の終点NL11を漏洩源候補位置とする。また、漏洩源候補算出部33は、探索軌跡NL2の終点NL21を漏洩源候補位置とする。さらに、漏洩源候補算出部33は、探索軌跡NL3の終点NL31を漏洩源候補位置とする。演算処理部30は、
図2のステップSA5で、漏洩源候補算出部33で取得したガスの漏洩源候補位置を、記憶部4の漏洩源候補記憶部41に記録する。
【0080】
演算処理部30は、
図2のステップSA6で、ガスが高濃度である点を探索して漏洩方向と漏洩源候補位置を求める処理を、異なる時刻で少なくとも2回以上繰り返す。演算処理部30は、
図2のステップSA7で、複数の漏洩方向のなす角が所定の閾値未満であれば、複数の漏洩方向が略同一であると判定する。この場合、漏洩源決定部34は、
図2のステップSA8で、ぞれぞれの漏洩方向から求めた複数の漏洩源候補位置の中から漏洩源を決定する。また、演算処理部30は、複数の漏洩方向のなす角が所定の閾値以上であれば、複数の漏洩方向が略同一ではないと判定する。この場合、漏洩源決定部34は、
図2のステップSA9で、例えば、複数の漏洩方向の交点を求める手法で、漏洩源位置Peを決定する。
【0081】
図12、
図13A、
図13Bは、漏洩方向、漏洩源候補位置及び漏洩源を決定する手法の他の例を示す説明図である。流体領域抽出部31は、
図2のステップSA1で、時刻t1にガス領域CL10を取得する。また、流体領域抽出部31は、時刻t1と異なる時刻t2にガス領域CL20を取得する。
【0082】
演算処理部30は、
図12に記載の手法では、ガス雲中央線を用いて、ガス領域CL10のガス雲形状を示す直線ML10を取得する。演算処理部30は、同様に、ガス雲中央線を用いて、ガス領域CL20のガス雲形状を示す直線ML20を取得する。ガス雲中央線は、ガス領域を二値化し、二値化したガス領域における各点からの距離の二乗和が最小になるように引いた近似直線である。
【0083】
漏洩方向算出部32は、
図2のステップSA2で、ガス雲形状を示す直線からガスの漏洩方向を求める。演算処理部30は、
図2のステップSA3で、ガスの漏洩方向を記憶部4の漏洩方向記憶部40に記録する。
【0084】
漏洩源候補算出部33は、
図2のステップSA4で、ガス雲形状を示す直線から漏洩源候補位置を求める。演算処理部30は、
図2のステップSA5で、ガスの漏洩源候補位置を記憶部4の漏洩源候補記憶部41に記録する。
【0085】
演算処理部30は、
図2のステップSA6で、ガス雲中央線を用いてガス雲形状を示す直線を取得する処理を、異なる時刻で少なくとも2回以上繰り返す。
【0086】
演算処理部30は、
図2のステップSA7で、異なる時刻のガス雲形状を示す複数の直線のなす角が、所定の閾値未満であるか判定する。異なる時刻のガス雲形状を示す複数の直線のなす角は、複数の漏洩方向のなす角である。
【0087】
演算処理部30は、異なる時刻のガス雲形状を示す複数の直線のなす角が所定の閾値未満であれば、複数の漏洩方向が略同一であると判定する。この場合、漏洩源決定部34は、
図2のステップSA8で、ぞれぞれの漏洩方向から求めた複数の漏洩源候補位置の中から漏洩源を決定する。また、演算処理部30は、異なる時刻のガス雲形状を示す複数の直線のなす角が所定の閾値以上であれば、複数の漏洩方向が略同一ではないと判定する。
この場合、漏洩源決定部34は、
図2のステップSA9で、例えば、複数の流体領域の輪郭線または中心線から設定したガス雲形状を示す直線の交点を求める。そして、複数の漏洩方向の交点を求める手法で、漏洩源位置Pfを決定する。
【0088】
演算処理部30は、
図13A、
図13Bに記載の手法では、ガス雲輪郭線を用いて、ガス領域CL10のガス雲輪郭直線CL11a、CL11bを取得する。演算処理部30は、同様に、ガス雲輪郭線を用いて、ガス領域CL20のガス雲輪郭直線CL21a、CL21bを取得する。
【0089】
演算処理部30は、ガス領域CL10を二値化してガス雲中央線ML10を求め、二値化画像からガス領域CL10の輪郭を抽出する。ガス領域CL10の輪郭は、ソーベルフィルタやラプラシアンフィルタを用いて抽出できる。演算処理部30は、ガス領域CL10の輪郭をガス雲中央線ML10で2分割し、第1の輪郭線CL10aと第2の輪郭線CL10bを求める。第1の輪郭線CL10aと第2の輪郭線CL10bは、ガス領域CL10の輪郭線をガス雲中央線ML10で分割した一方の輪郭線と他方の輪郭線である。
図13Bでは、第1の輪郭線CL10aを実線で示し、第2の輪郭線CL10bを破線で示す。そして、演算処理部30は、第1の輪郭線CL10aとガス雲中央線ML10とで囲まれる領域に対し、当該領域の各点からの距離の二乗和が最小になるように引いた直線で近似することで、第1のガス雲輪郭直線CL11aを求める。また、演算処理部30は、第2の輪郭線CL10bとガス雲中央線ML10とで囲まれる領域に対し、当該領域の各点からの距離の二乗和が最小になるように引いた直線で近似することで、第2のガス雲輪郭直線CL11bを求める。
【0090】
演算処理部30は、ガス領域CL20についても同様に、ガス領域CL20を二値化してガス雲中央線ML20を求め、二値化画像からガス領域CL20の輪郭を抽出する。演算処理部30は、ガス領域CL20の輪郭をガス雲中央線ML20で2分割し、第1の輪郭線CL20aと第2の輪郭線CL20bを求める。そして、演算処理部30は、第1の輪郭線CL20aを直線で近似することで、第1のガス雲輪郭直線CL21aを求める。また、演算処理部30は、第2の輪郭線CL20bを直線で近似することで、第2のガス雲輪郭直線CL21bを求める。
【0091】
漏洩方向算出部32は、
図2のステップSA2で、ガス雲輪郭線を示す直線からガスの漏洩方向を求める。演算処理部30は、
図2のステップSA3で、ガスの漏洩方向を記憶部4の漏洩方向記憶部40に記録する。
【0092】
漏洩源候補算出部33は、
図2のステップSA4で、ガス雲輪郭線を示す直線から漏洩源候補位置を求める。演算処理部30は、
図2のステップSA5で、ガスの漏洩源候補位置を記憶部4の漏洩源候補記憶部41に記録する。
【0093】
演算処理部30は、
図2のステップSA6で、ガス雲輪郭直線を取得する処理を、異なる時刻で少なくとも2回以上繰り返す。
【0094】
演算処理部30は、
図2のステップSA7で、異なる時刻のガス雲輪郭線を示す複数の直線のなす角が、所定の閾値未満であるか判定する。異なる時刻のガス雲輪郭線を示す複数の直線のなす角は、複数の漏洩方向のなす角である。
【0095】
演算処理部30は、異なる時刻のガス雲輪郭線を示す複数の直線のなす角が所定の閾値未満であれば、複数の漏洩方向が略同一であると判定する。この場合、漏洩源決定部34は、
図2のステップSA8で、ぞれぞれの漏洩方向から求めた複数の漏洩源候補位置の中から漏洩源を決定する。また、演算処理部30は、異なる時刻のガス雲輪郭線を示す複数の直線のなす角が所定の閾値以上であれば、複数の漏洩方向が略同一ではないと判定する。この場合、漏洩源決定部34は、
図2のステップSA9で、例えば、異なる時刻のガス雲輪郭線を示す複数の直線の交点の重心を求める手法で、漏洩源位置Pgを決定する。
【0096】
なお、監視対象は、ガスに限らず液体などの流体でも良い。また、漏洩源位置の決定までの処理は、赤外画像をして実施するものに限らず、可視画像や、レーザー光から時系列な複数の流体情報を取得して実施しても良い。レーザー光から流体情報を取得する場合、例えば、特開2002-296142号の手法を用いる。特開2002-296142号の手法では、時系列で複数のレーザー光をスクリーン化し、動画像の時空間微分又は粒子相関により得られた速度ベクトルを用いる。また、その他画像から流体情報を取得する場合、例えば、WO2016/208317の手法を用いる。WO2016/208317の手法では、時系列で取得した複数の画像に基づいてオプティカルフローなどを利用して取得した移動軌跡を用いる。
【符号の説明】
【0097】
1・・・漏洩源位置算出システム、2・・・画像取得部、3・・・漏洩源位置算出装置、30・・・演算処理部、31・・・流体領域抽出部、32・・・漏洩方向算出部、33・・・漏洩源候補算出部、34・・・漏洩源決定部、4・・・記憶部、40・・・漏洩方向記憶部、41・・・漏洩源候補記憶部、5・・・出力部