IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社FTSの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図1
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図2
  • 特開-高圧ガス貯留装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011969
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】高圧ガス貯留装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 43/00 20060101AFI20250117BHJP
   F02B 43/10 20060101ALI20250117BHJP
   F17C 7/02 20060101ALI20250117BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F02B43/00 Z
F02B43/10 Z
F17C7/02
F02M21/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114451
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】大前 和広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰倫
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB20
3E172BD03
3E172DA90
3E172EB03
3E172JA02
3E172JA05
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】タンク内から漏出した高圧ガスをNOxの還元剤として消費できる
【解決手段】高圧ガス貯留装置10は、NOxを還元する機能と内燃機関110の燃料としての機能を有する気化ガスを含む高圧ガスを貯留するタンク20と、タンク20の外面との間に保留空間Sを空けるように配置され、タンク20を包囲する外殻体30と、タンク20から保留空間Sに漏出した気化ガスを、内燃機関110からの排気ガスを排気する排気部130に供給する供給部80と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOxを還元する機能と内燃機関の燃料としての機能を有する気化ガスを含む高圧ガスを貯留するタンクと、
前記タンクの外面との間に保留空間を空けるように配置され、前記タンクを包囲する外殻体と、
前記タンクから前記保留空間に漏出した前記気化ガスを、前記内燃機関からの排気ガスを排気する排気部に供給する供給部と、
を備える高圧ガス貯留装置。
【請求項2】
前記保留空間における前記気化ガスの濃度を検出する濃度センサと、
前記保留空間から前記排気部への前記気化ガスの通過を許容する開状態と、前記保留空間から前記排気部への前記気化ガスの通過を遮断する閉状態と、で切り替わる開閉弁と、
前記濃度センサによって検出される濃度が所定のハイレベル状態になった場合に、前記開閉弁を前記閉状態から前記開状態に切り替える制御を行う制御部と、
を備える請求項1に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項3】
前記供給部に設けられ、前記保留空間から前記排気部へ前記気化ガスを送るポンプを備える請求項1又は請求項2に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項4】
前記タンクから前記保留空間へ前記気化ガスを送り出す制御弁を備える請求項1又は請求項2に記載の高圧ガス貯留装置。
【請求項5】
前記高圧ガスは、アンモニアであり、
前記保留空間における前記供給部への前記気化ガスの流出口は、前記外殻体の上端部に配されている請求項1又は請求項2に記載の高圧ガス貯留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス貯留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料用アンモニアを燃焼用空気を用いて燃焼器内で燃焼させる燃焼装置が開示されている。燃用装置は、燃焼器から供給された燃焼排ガス中の窒素酸化物を還元する触媒還元部を備えている。燃用装置は、燃料用アンモニアの少なくとも一部を、燃焼排ガス中の窒素酸化物の還元剤として触媒還元部に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-162939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、燃料用アンモニアを貯留させるタンク等の構成が開示されていない。例えば、燃料用アンモニアを貯留させるタンクが従来のタンクである場合、タンクから漏出した場合に大気中に放出されるおそれがある。そこで、タンクから漏出したガスに対する対策が求められている。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、タンク内から漏出した高圧ガスをNOxの還元剤として消費できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高圧ガス貯留装置は、
NOxを還元する機能と内燃機関の燃料としての機能を有する気化ガスを含む高圧ガスを貯留するタンクと、
前記タンクの外面との間に保留空間を空けるように配置され、前記タンクを包囲する外殻体と、
前記タンクから前記保留空間に漏出した気化ガスを、前記内燃機関からの排気ガスを排気する排気部に供給する供給部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、タンク内から漏出した高圧ガスをNOxの還元剤として消費できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の高圧ガス貯留装置を含む車載システムを概略的に示す説明図
図2】高圧ガス貯留装置の部分側断面図
図3】高圧ガス貯留装置を含む車載システムの電気的構成を概略的に例示するブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記保留空間における前記気化ガスの濃度を検出する濃度センサと、前記保留空間から前記排気部への前記気化ガスの通過を許容する開状態と、前記保留空間から前記排気部への前記気化ガスの通過を遮断する閉状態と、で切り替わる開閉弁と、前記濃度センサによって検出される濃度が所定のハイレベル状態になった場合に、前記開閉弁を前記閉状態から前記開状態に切り替える制御を行う制御部と、を備えることが好ましい。この構成によれば、保留空間における気化ガスの濃度が所定のハイレベル状態となった場合に、開閉弁を開状態として、保留空間から排気部へ気化ガスを供給できる。これにより、気化ガスによる触媒作用を向上させることができる。
【0010】
前記供給部に設けられ、前記保留空間から前記排気部へ前記気化ガスを送るポンプを備えることが好ましい。この構成によれば、保留空間内の気化ガスを効果的に排気部へ送ることができる。
【0011】
前記タンクから前記保留空間へ前記気化ガスを送り出す制御弁を備えることが好ましい。この構成によれば、タンク内の気化ガスを積極的に保留空間へ流入させて、排気部への供給濃度を高めることができる。
【0012】
前記高圧ガスは、アンモニアであり、前記保留空間における前記供給部への前記気化ガスの流出口は、前記外殻体の上端部に配されていることが好ましい。この構成によれば、気化ガスは、保留空間内の高い領域に留まるので、確実に排気部へ送り出すことができる。
【0013】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図2におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、図2におけるH方向を上方と定義する。
【0014】
(車載システムの構成)
本実施例1の高圧ガス貯留装置10は、図1に示すように、車載システム100に用いられる。車載システム100は、車両に搭載される。車載システム100は、高圧ガス貯留装置10によって内燃機関110に高圧ガス及び燃焼用エアを供給するシステムである。
【0015】
車載システム100は、高圧ガス貯留装置10と、内燃機関110と、吸気部120と、排気部130と、を備えている。内燃機関110は、例えば高圧ガスを用いて駆動力を発生させるエンジンである。吸気部120は、例えば車両に設けられる自然吸気口であり、燃焼用エア(空気)が導入される。
【0016】
排気部130は、排気路131と、排気ガス処理部132と、を有している。排気路131は、内燃機関110からの排気ガスを排気する。排気路131は、内燃機関110から排出される排気ガスを車両外部へと導く通路である。排気路131の途中には、排気ガス処理部132が設けられている。排気ガス処理部132は、排気ガス中の有害物質である窒素酸化物(NOx)等を、触媒等を用いて無害成分に変換する。排気路131は、排気ガス処理部132によって処理された排気ガスを車両外部に放出する。
【0017】
(高圧ガス貯留装置の構成)
高圧ガス貯留装置10は、例えば車両(図示省略)に搭載して使用される。高圧ガス貯留装置10は、タンク20と、タンク20を包囲する外殻体30と、を備えて構成されている。タンク20及び外殻体30は、車内(例えば、荷物室)又は車外(ボディの床下)に配置される。タンク20は、高圧ガス(高圧の液化ガスと気化ガス)を貯留するための気密性を有する貯留槽である。液化ガスは、常温・大気圧下において気相であるガスを、加圧と冷却によって液相へ相転移したものである。高圧の気化ガスは、液化ガスの蒸発によって生成された気体である。
【0018】
高圧ガス貯留装置10に貯留する高圧ガス(液化ガスと気化ガス)は、内燃機関110の燃料(車両のエンジン用のガス燃料)としての機能と、NOxを還元する機能と、を有する。高圧ガスは、具体的にはアンモニアである。アンモニアは有害性を有する物質であるため、万一、タンク20内の高圧ガス(アンモニアガス)がタンク20外へ漏出した場合の対策として、外殻体30を設けている。外殻体30は、高圧ガスを一時的に保留するための保留空間Sを空けた状態で、タンク20を包囲する。
【0019】
図2に示すように、タンク20は、例えば1つの筒部21と一対のドーム部22とを有し、全体としてカプセル状をなす。筒部21は、軸線を水平方向(前後方向)に向けた円筒形の部位である。一対のドーム部22は、略半球状をなす部位であり、筒部21の両端の開口を閉塞するように配置されている。例えば、筒部21と一対のドーム部22は、互いに別体部品として製造された金属製の部材からなり、溶接によって気密状に接合されて一体化されている。
【0020】
例えば、タンク20は、複数の脚部(図示略)を介すことによって、外殻体30に支持されている。複数の脚部(図示略)は、例えば、筒部21から下方へ延出している。
【0021】
外殻体30は、タンク20の全体を間隔を空けて気密状に包囲するカプセル状の部材である。タンク20の外面と外殻体30の内面との間の空間は、タンク20から漏出した高圧ガス(気化ガス)を一時的に貯留しておくための保留空間Sとして機能する。タンク20の外面の全領域と外殻体30の内面の全領域は、保留空間Sに臨んでいる。
【0022】
外殻体30は、例えば、1つの筒状部材31と、一対のドーム状部材32とを有し、全体としてカプセル状をなす。筒状部材31は、軸線を水平方向(前後方向)に向けた円筒形の部材であり、タンク20の筒部21と同軸状に配置されている。一対のドーム状部材32は、略半球状をなす部位であり、筒状部材31の両端の開口を閉塞するように配置されている。
【0023】
外殻体30(筒状部材31及びドーム状部材32)は、例えば、金属製のベース部材(図示略)と、ベース部材の外面に密着した補強層とを備えて構成されている。補強層は、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなる複数枚の細長い補強シートを、ベース部材の外面に積層するように貼り付けることによって構成されたものである。
【0024】
例えば、筒状部材31の開口縁部に設けられた筒側フランジ(図示略)と、ドーム状部材32の開口縁部に設けられたドーム側フランジ(図示略)とが締結されることで、筒状部材31とドーム状部材32とが一体化されている。
【0025】
高圧ガス貯留装置10は、図1に示すように、更に、燃料ポンプ23と、燃料路50と、を備えている。燃料ポンプ23は、タンク20に取り付けられている。燃料ポンプ23は、タンク20内の高圧ガス(例えば液化ガス)を、燃料路50を介して内燃機関110に圧送(供給)する。燃料ポンプ23は、例えばタンク20の筒部21の底部に設けられている。なお、燃料ポンプ23は、タンク20の筒部21の天井部(上端部)に設けられていてもよい。燃料路50は、高圧ガスの供給経路であり、タンク20と内燃機関110との間に設けられている。
【0026】
高圧ガス貯留装置10は、図1に示すように、更に、給気路60を備えている。給気路60は、吸気部120から導入される燃焼用エア(外気)を内燃機関110へ供給する経路である。給気路60は、吸気部120と内燃機関110との間に設けられている。給気路60は、保留空間Sを経由している。すなわち、給気路60は、保留空間Sと内燃機関110とに連なっている。
【0027】
給気路60は、第1経路61と、第2経路62と、を有している。第1経路61は、吸気部120と保留空間Sとの間に設けられている。第1経路61は、吸気部120によって導入される燃焼用エア(外気)を、保留空間Sに送る通路である。これにより、保留空間Sには、空気が貯留される。第2経路62は、保留空間Sと内燃機関110の間に設けられている。第2経路62は、保留空間S内の気体(燃焼用エアや気化ガス)を、内燃機関110に送る通路である。
【0028】
第1経路61には、逆止弁63が設けられている。逆止弁63は、第1経路61において吸気部120と保留空間Sとの間に設けられている。逆止弁63は、保留空間Sから吸気部120への燃焼用エアの流れを規制する。
【0029】
第2経路62には、制御弁64が設けられている。制御弁64は、第2経路62において保留空間Sと内燃機関110との間に設けられている。制御弁64は、例えば電磁弁として構成されている。制御弁64は、後述する制御部71の制御によって、閉状態と開状態とに切り替わる。制御弁64は、開状態で、保留空間Sから内燃機関110に気化ガスを送り出す。
【0030】
高圧ガス貯留装置10は、図1に示すように、更に、バイパス65を備えている。バイパス65は、第1経路61と第2経路62の間をつないでいる。すなわち、バイパス65は、吸気部120から導入される燃焼用エア(外気)を、第1経路61から第2経路62へ送る。バイパス65には、制御弁66が設けられている。制御弁66は、例えば電磁弁として構成されている。制御弁66は、後述する制御部71の制御によって、閉状態と開状態とに切り替わる。
【0031】
高圧ガス貯留装置10は、図1に示すように、更に、制御弁24と、安全弁25と、を備えている。制御弁24及び安全弁25は、タンク20に設けられている。
【0032】
制御弁24は、例えば電磁弁として構成されている。制御弁24は、後述する制御部71の制御によって、閉状態と開状態とに切り替わる。制御弁24は、タンク20の内部と保留空間Sの内部とに臨むように配置されている。制御弁24の一次側の開口は、タンク20内に臨んでいる。制御弁24の二次側の開口は、保留空間S内に臨んでいる。制御弁24は、制御部71の制御によって、タンク20から保留空間Sへ気化ガスを送り出す。
【0033】
安全弁25は、タンク20の内部と保留空間Sの内部とに臨むように配置されている。安全弁25の一次側の開口は、タンク20内に臨んでいる。安全弁25の二次側の開口は、保留空間S内に臨んでいる。安全弁25は、タンク20内の圧力が過剰に上昇した場合に自動的に開状態になり、タンク20内の圧力の降下とともに自動的に閉状態となる。
【0034】
高圧ガス貯留装置10は、図1に示すように、更に、濃度センサ33と、安全弁34と、を備えている。濃度センサ33、及び安全弁34は、外殻体30に設けられている。
【0035】
濃度センサ33は、保留空間S内の気化ガスの濃度を検出する。濃度センサ33の検出結果(保留空間S内の気化ガスの濃度値)は、後述する制御部71及び外部制御部141に入力される。濃度センサ33は、例えば保留空間S(外殻体30の筒状部材31)の天井部(上端部)に設けられている。例えば、気化ガス(アンモニアガス等)よりも比重の大きい気体である空気が貯留されていてもよい。この場合、漏出した気化ガスが保留空間S内を上昇するので、気化ガスの漏出を早期のうちに濃度センサ33によって検出できる。
【0036】
安全弁34は、保留空間Sの内部と外殻体30の外部に臨むように配置されている。安全弁34の一次側の開口は、保留空間S内に臨んでいる。安全弁34の二次側の開口は、外殻体30外に臨んでいる。安全弁34は、保留空間S内の圧力が過剰に上昇した場合に自動的に開状態になり、保留空間S内の圧力の降下とともに自動的に閉状態となる。
【0037】
高圧ガス貯留装置10は、図1に示すように、更に、供給部80を備えている。供給部80は、タンク20から保留空間Sに漏出した気化ガスを、排気部130に供給する。供給部80は、供給路81と、開閉弁82と、ポンプ83と、を有している。
【0038】
供給路81は、保留空間S内の気化ガスを排気路131に送る通路である。供給路81は、保留空間Sと排気部130との間に設けられている。より具体的には、供給路81の一端は、外殻体30の筒状部材31に接続されている。供給路81の他端は、排気ガス処理部132に接続されている。
【0039】
外殻体30の筒状部材31には、供給部80への気化ガスの流出口35が設けられている。流出口35は、外殻体30の筒状部材31の上端部(天井部)に配されている。流出口35は、供給路81の一端に接続されている。
【0040】
開閉弁82は、供給路81に設けられている。開閉弁82は、例えば電磁弁として構成されている。開閉弁82は、後述する制御部71の制御によって、閉状態と開状態とで切り替わる。開閉弁82は、開状態で、保留空間Sから排気部130への気化ガスの通過を許容する。開閉弁82は、閉状態で、保留空間Sから排気部130への気化ガスの通過を遮断する。
【0041】
ポンプ83は、供給路81に設けられている。ポンプ83は、保留空間Sから排気部130へ気化ガスを送る。ポンプ83は、後述する制御部71の制御によって、保留空間Sから排気部130(より具体的には排気ガス処理部132)への気化ガスの供給量を調整する。
【0042】
(車載システムの電気的構成)
図3は、車載システム100の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図3に示すように、車載システム100は、外部制御部141と、高圧ガス貯留装置10と、を備えている。
【0043】
外部制御部141は、例えば車載ECU(電子制御装置)として構成されている。外部制御部141は、情報処理機能等を有する情報処理装置である。外部制御部141は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ等を有している。外部制御部141は、タンク20から内燃機関110への高圧ガスの供給量を制御する。例えば、外部制御部141は、車両のアクセルペダルの操作量に関する信号に基づいて、燃料ポンプ23を制御し、燃料(高圧ガス)の供給量を制御する。より具体的には、外部制御部141は、濃度センサ33の検出結果に基づいて燃料ポンプ23を制御し、タンク20から内燃機関110への高圧ガスの供給量を調整する。
【0044】
高圧ガス貯留装置10は、制御部71と、燃料ポンプ23と、制御弁24と、濃度センサ33と、報知部72と、を備えている。制御部71は、情報処理機能等を有する情報処理装置である。制御部71は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ等を有している。制御部71は、高圧ガス貯留装置10全体の制御を行う。制御部71は、燃料ポンプ23、制御弁24、濃度センサ33、制御弁64、制御弁66、及び報知部72を制御する。
【0045】
制御部71は、濃度センサ33によって検出される濃度(検出濃度)が所定のハイレベル状態になった場合に、供給部80の開閉弁82を閉状態から開状態に切り替える制御を行う。検出濃度のハイレベル状態とは、例えば、検出濃度が所定の閾値を超えた状態、検出濃度の上昇率が所定の閾値を超えた場合等である。これにより、開閉弁82の開状態のときに、保留空間Sから排気部130へ供給される気化ガスの濃度を高めることができる。
【0046】
報知部72は、車両のインストルメントパネルに表示される警告ランプや、車両のキャビン内に警報音を発するスピーカー等である。報知部72は、制御部71からの制御信号(異常検出信号)に基づいて動作する。報知部72は、例えば、濃度センサ33によって検出される保留空間Sにおける気化ガスの濃度が予め設定された閾値を超えた場合等に、報知動作を行う。
【0047】
(高圧ガス貯留装置の作用)
次に、本実施例1の高圧ガス貯留装置10の作用を説明する。高圧ガスを貯留するタンク20は、その全体が気密性を有する外殻体30によって包囲されている。タンク20と外殻体30との間には、タンク20から漏れた気化ガスを一時的に貯留するための保留空間Sが確保されている。これにより、万一、タンク20内の高圧ガスがタンク20外へ漏れたとしても、漏れた気化ガスは、保留空間S内に留まる。
【0048】
高圧ガス貯留装置10は、タンク20から保留空間Sに漏出した気化ガスを、排気部130に供給する供給部80を備えている。この構成により、タンク20内から保留空間Sに漏出した気化ガスが、供給部80を介して排気部130に送られ、内燃機関110から排気される排気ガス中のNOxの還元剤として消費される。これにより、排気ガス中のNOxが大気中に放出されない。また、タンク20から漏出する気化ガスによって保留空間Sの内圧が上昇しないため、外殻体30には過度な強度が不要となり軽量化及び小型化が可能となる。
【0049】
例えば、保留空間S内の気化ガスを、内燃機関110及び排気ガス処理部132に供給する場合、制御部71は、制御弁64及び開閉弁82を開状態とし、ポンプ83を動作させる。このとき、例えば、制御部71は、バイパス65の制御弁66を閉状態とする。また、保留空間S内の気化ガスを、排気ガス処理部132のみに供給する場合、制御部71は、開閉弁82を開状態とし、ポンプ83を動作させ、制御弁64を閉状態とする。このとき、制御部71は、燃焼用ガス(外気)を内燃機関110に供給するため、制御弁66を開状態とする。
【0050】
高圧ガス貯留装置10において、制御部71は、濃度センサ33によって検出される濃度が所定のハイレベル状態になった場合に、開閉弁82を閉状態から開状態に切り替える制御を行う。この構成によれば、保留空間Sにおける気化ガスの濃度が所定のハイレベル状態となった場合に、開閉弁82を開状態として、保留空間Sから排気部130へ気化ガスを供給できる。これにより、気化ガスによる触媒作用を向上させることができる。
【0051】
高圧ガス貯留装置10は、供給部80に設けられ、保留空間Sから排気部130へ気化ガスを送るポンプ83を備えている。この構成によれば、保留空間S内の気化ガスを効果的に排気部130へ送ることができる。
【0052】
高圧ガス貯留装置10は、タンク20から保留空間Sへ気化ガスを送り出す制御弁24を備えている。この構成によれば、タンク20内の気化ガスを積極的に保留空間Sへ流入させて、排気部130への供給濃度を高めることができる。また、NOx還元が必要なときに制御弁24を開弁することができる。
【0053】
高圧ガス貯留装置10において、タンク20に貯留される高圧ガスは、例えばアンモニアである。保留空間Sには、給気路60の第1経路61を介して外気が導入可能である。これにより、保留空間Sには、空気が貯留される。保留空間Sにおける供給部80への気化ガスの流出口35は、外殻体30の筒状部材31の上端部(天井部)に配されている。この構成によれば、気化ガスは、保留空間S内の高い領域に留まるので、確実に排気部130へ送り出すことができる。
【0054】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
・実施例1では、タンク20に液化ガスと気化ガスを貯留したが、タンク20には、高圧の気化ガスのみを貯留してもよい。この高圧の気化ガスは、液化ガスの蒸発によって生成された気体ではなく、加圧する過程で大気圧下と同じく気相を保った気体である。
・実施例1において、保留空間Sに貯留する気体は、気化ガスよりも比重の小さいものでもよい。この場合、供給部80につながる流出口35、及び濃度センサ33は、保留空間Sの下端部に配置することが好ましい。
・実施例1では、吸気部120は、自然吸気口であったが、内燃機関が過給機内燃機関の場合に、吸入した空気を圧縮し送り込む装置であってもよい。
・実施例1において、逆止弁63は、制御部71によって開閉制御される制御弁であってもよい。この制御弁は、例えば、保留空間Sにタンク20内から流出する気化ガスの濃度を高めるとき等に、閉状態とされる。
・実施例1において、給気路60が保留空間Sを経由しない構成であってもよい。すなわち、保留空間S内の気化ガスの供給先が排気ガス処理部132のみとなる構成であってもよい。
・実施例1では、調整部の一例として、燃料ポンプ23を例示したが、燃料路50に設けられる制御弁であってもよい。
・実施例1において、制御部71と外部制御部141とが同じ1つの制御部として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10: 高圧ガス貯留装置
20: タンク
21: 筒部
22: ドーム部
23: 燃料ポンプ
24: 制御弁
25: 安全弁
30: 外殻体
31: 筒状部材
32: ドーム状部材
33: 濃度センサ
34: 安全弁
35: 流出口
50: 燃料路
60: 給気路
61: 第1経路
62: 第2経路
63: 逆止弁
64: 制御弁
65: バイパス
66: 制御弁
71: 制御部
72: 報知部
80: 供給部
80: 排気部
81: 供給路
82: 開閉弁
83: ポンプ
100: 車載システム
110: 内燃機関
120: 吸気部
130: 排気部
131: 外部制御部
131: 排気路
132: 排気ガス処理部
141: 外部制御部
S: 保留空間
図1
図2
図3