特開 2025-11970 高圧ガス貯留装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025011970

(43)【公開日】2025-01-24

(54)【発明の名称】高圧ガス貯留装置

(51)【国際特許分類】

   F17C 13/00 20060101AFI20250117BHJP

   F02B 43/00 20060101ALI20250117BHJP

   F02B 43/10 20060101ALI20250117BHJP

【ＦＩ】

F17C13/00 301Z

F02B43/00 Z

F02B43/10 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023114452

(22)【出願日】2023-07-12

(71)【出願人】

【識別番号】308039414

【氏名又は名称】株式会社ＦＴＳ

(71)【出願人】

【識別番号】000003207

【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000497

【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】酒井 孝典

(72)【発明者】

【氏名】近藤 大祐

(72)【発明者】

【氏名】多田 智記

(72)【発明者】

【氏名】佐藤 彰倫

(72)【発明者】

【氏名】大前 和広

【テーマコード（参考）】

3E172

【Ｆターム（参考）】

3E172AA02

3E172AA06

3E172BA01

3E172BB05

3E172BC05

3E172CA13

3E172CA21

3E172DA41

3E172DA90

(57)【要約】

【課題】軽量化を図る。
【解決手段】高圧ガス貯留装置は、筒状部１１の軸線方向両端を一対のドーム部１２で閉塞した形状をなし、高圧ガスを貯留するタンク１０と、タンク１０のうち筒状部１１の軸線方向中央部よりもドーム部１２側の領域のみを覆い、且つドーム部１２の外面との間に気密空間１５を空けて配置された一対のドーム状の外殻体２０と、ドーム部１２のみに取り付けられ、気密空間１５に臨むように配置された機能装置としての燃料ポンプ４０及び充填用バルブ４５と、を備えている。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

筒状部の軸線方向両端を一対のドーム部で閉塞した形状をなし、高圧ガスを貯留するタンクと、
前記タンクのうち前記筒状部の軸線方向中央部よりも前記ドーム部側の領域のみを覆い、且つ前記ドーム部の外面との間に気密空間を空けて配置された一対のドーム状の外殻体と、
前記ドーム部のみに取り付けられ、前記気密空間に臨むように配置された機能装置と、を備えている高圧ガス貯留装置。

【請求項2】

前記外殻体が、前記筒状部の外周面における軸線方向両端部に固着されており、
前記一対の外殻体が、連結部材によって軸線方向への離隔不能に連結されている請求項１に記載の高圧ガス貯留装置。

【請求項3】

前記外殻体が、前記ドーム部を覆うドーム状本体と、リング状のブラケットと、前記ブラケットを前記ドーム状本体の開口縁部に固定する締結部材とを備えて構成され、
前記ブラケットが、溶接によって前記筒状部の外周面に固着されている請求項２に記載の高圧ガス貯留装置。

【請求項4】

一対の前記気密空間が、連通路を介して連通している請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の高圧ガス貯留装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、高圧ガス貯留装置に関するものである。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、液化ガスを貯留する内槽を、外槽によって包囲した二重殻タンクが開示されている。内槽は、円筒形の胴部の両端を、一対の半球形のドーム部で閉塞したカプセル形状をなす。この二重殻タンクは、内槽の液化ガスが気化状態で漏出したときに、気化した液化ガスを内槽と外槽との間の空間に保留することによって、気化した液化ガスが大気中へ放出されることを防止することができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１９－１５２２６０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

この種の二重殻タンクの内槽には、内槽内の液化ガスを外部へ送出するためのポンプや、内槽内における液化ガスの液面高さ、温度、圧力等を電気的に検知するためのセンサ等の機器が取り付けられている。これらの機器が取り付けられている部分では、僅かな隙間から液化ガスが漏出し易い。上記の二重殻タンクは、内槽の全体を外槽で覆う構造であるため、全体として重量が増大する。

【0005】

本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、軽量化を図ることを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示の高圧ガス貯留装置は、
筒状部の軸線方向両端を一対のドーム部で閉塞した形状をなし、高圧ガスを貯留するタンクと、
前記タンクのうち前記筒状部の軸線方向中央部よりも前記ドーム部側の領域のみを覆い、且つ前記ドーム部の外面との間に気密空間を空けて配置された一対のドーム状の外殻体と、
前記ドーム部のみに取り付けられ、前記気密空間に臨むように配置された機能装置と、を備えている。

【発明の効果】

【0007】

この構成によれば、軽量化を図ることがてきる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】実施例１の高圧ガス貯留装置の断面図

【図2】図１の部分拡大断面図

【発明を実施するための形態】

【0009】

最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の実施形態を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
本開示の高圧ガス貯留装置は、
（１）筒状部の軸線方向両端を一対のドーム部で閉塞した形状をなし、高圧ガスを貯留するタンクと、前記タンクのうち前記筒状部の軸線方向中央部よりも前記ドーム部側の領域のみを覆い、且つ前記ドーム部の外面との間に気密空間を空けて配置された一対のドーム状の外殻体と、前記ドーム部のみに取り付けられ、前記気密空間に臨むように配置された機能装置と、を備えている。この構成によれば、機能装置の取付け部位における高圧ガスの漏れ対策として、外殻体で覆う必要があるのは、機能装置が取り付けられているドーム部だけである。タンク全体を外殻体で包囲する必要がないので、軽量化を図ることができる。

【0010】

（２）（１）において、前記外殻体が、前記筒状部の外周面における軸線方向両端部に固着されており、前記一対の外殻体が、連結部材によって軸線方向への離隔不能に連結されていることが好ましい。本開示の構成によれば、タンク内の高圧ガスが一方の気密空間内に漏れて、その気密空間内の圧力が上昇すると、一方の外殻体に対してドーム部から軸線方向へ離隔する方向の押圧力が作用するため、押圧力を受けた外殻体と筒状部との固着部に対する負荷が増大する。しかし、押圧力を受けた外殻体と他方の外殻体は、連結部材によって軸線方向への離隔動作が規制されているので、一方の外殻体に作用する押圧力は、２つの外殻体の固着部に分散される。これにより、外殻体と筒状部との固着部に対する負荷を軽減し、外殻体を筒状部に対して確実に保持しておくことができる。

【0011】

（３）（２）において、前記外殻体が、前記ドーム部を覆うドーム状本体と、リング状のブラケットと、前記ブラケットを前記ドーム状本体の開口縁部に固定する締結部材とを備えて構成され、前記ブラケットが、溶接によって前記筒状部の外周面に固着されていることが好ましい。この構成によれば、ブラケットを筒状部に固着した後に、ブラケットとドーム状本体を締結部材によって固定できる。締結部材の締結を解除することによって、ドーム状本体をタンクから離脱させることができるので、メンテナンスが容易である。

【0012】

（４）（１）～（３）において、一対の前記気密空間が、連通路を介して連通していることが好ましい。この構成によれば、タンク内の高圧ガスが一方の気密空間に漏出すると、その気密空間内の気体が連通路を通って他方の気密空間へ流出するので、一対の気密空間内が同じ圧力に保たれる。これにより、高圧ガスが漏れたときに、一方の気密空間内の圧力が過大に上昇することを抑制できる。

【0013】

＜実施例１＞
以下、本発明を具体化した実施例１を図１及び図２を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図１，２におけるＦ方向を前方と定義する。前後方向と軸線方向を同義で用いる。上下の方向については、図１，２におけるＨ方向を上方と定義する。

【0014】

本実施例１の高圧ガス貯留装置は、金属製のタンク１０と、前後一対の金属製の外殻体２０と、複数の機能装置４０，４５と、複数の連結部材５０と、連通管５５とを備えて構成されている。タンク１０は、軸線（図示省略）を前後方向に向けた円筒形の筒状部１１と、前後一対のドーム部１２とを有するカプセル形状の単一部材である。筒状部１１の前後両端の開口は、一対のドーム部１２によって気密状に閉塞されている。タンク１０内部は、高圧ガス（液化ガスや気化ガス）を貯留するための貯留空間１３として機能する。貯留空間１３に貯留される高圧ガスは、例えば、エンジン（図示省略）に供給される燃料である。

【0015】

１つの外殻体２０は、１つのドーム状本体２１と、１つのブラケット２６と、複数組の締結部材３０とを備えて構成されている。ドーム状本体２１は、略半球形状をなすドーム状覆い部２２と、フランジ部２３とを有する単一部品である。ドーム状覆い部２２の開口縁部２２Ｅの内径は、タンク１０の筒状部１１の外径及びドーム部１２の最大外径よりも大きい寸法に設定されている。本実施例１において、ドーム状覆い部２２の開口縁部２２Ｅは、ドーム状本体２１の開口縁部２１Ｅと同じ部位である。

【0016】

フランジ部２３は、円環形をなし、ドーム状覆い部２２の開口縁部２２Ｅから全周に亘って径方向外方へ延出している。図２に示すように、フランジ部２３のうち径方向においてドーム状覆い部２２の開口縁部２２Ｅに近い領域には、複数の取付孔２４が形成されている。各取付孔２４は、フランジ部２３を前後方向に貫通した形態である。複数の取付孔２４は、ドーム状覆い部２２及びフランジ部２３と同心の１つの円周上において、周方向に間隔を空けて配置されている。フランジ部２３のうち径方向において取付孔２４よりも外周側の領域には、複数の連結孔２５が形成されている。各連結孔２５は、フランジ部２３を前後方向に貫通した形態である。複数の連結孔２５は、ドーム状覆い部２２及びフランジ部２３と同心の１つの円周上において、周方向に間隔を空けて配置されている。

【0017】

ブラケット２６は、ドーム状本体２１と同心の円環形をなす板状の単一部品である。ブラケット２６の内径は、筒状部１１の外径と同じ寸法、又は、筒状部１１の外径よりも僅かに大きい寸法に設定されている。ブラケット２６には、複数の支持孔２７が形成されている。各支持孔２７は、ブラケット２６を前後方向に貫通した形態である。複数の支持孔２７は、ドーム状本体２１及びブラケット２６と同心の１つの円周上において、周方向に間隔を空けて配置されている。複数の支持孔２７の中心を通る円の径寸法は、複数の取付孔２４の中心を通る円の径寸法と同一寸法である。複数の支持孔２７と複数の取付孔２４は、周方向において同一のピッチで配置されている。

【0018】

前側の外殻体２０を構成するブラケット２６と後側の外殻体２０を構成するブラケット２６は、いずれも、タンク１０に対して溶接部２８によって同軸状に固着されている。前側のブラケット２６は、筒状部１１の外周のうち軸線方向中央部よりも前方の位置に配置されている。図１に示すように、前側のブラケット２６は、筒状部１１の最前端１１Ｆよりも少し後方の位置（軸線方向中央寄りの位置）に外嵌され、溶接によってタンク１０の外周面に固着されている。後側のブラケット２６は、筒状部１１の外周のうち軸線方向中央部よりも後方の位置に配置されている。後側のブラケット２６は、筒状部１１の最後端１１Ｒよりも少し前方の位置（軸線方向中央寄りの位置）に外嵌され、溶接によってタンク１０の外周面に固着されている。タンク１０（筒状部１１）の外周面とブラケット２６の内周面との隙間は、溶接部２８のフィレットによって気密状にシールされている。

【0019】

ドーム状本体２１は、複数組の締結部材３０によってブラケット２６に取り付けられている。１組の締結部材３０は、１つの締結ボルト３１と、１つの締結ナット３２とによって構成されている。前側のドーム状本体２１は、ブラケット２６に対して、前方からフランジ部２３を重ね合わせた状態で配置されている。このとき、複数の取付孔２４と複数の支持孔２７とが個別に同軸状に重なるように、ブラケット２６に対してドーム状本体２１を位置決めする。

【0020】

このように位置決めした状態で、ブラケット２６の後方から締結ボルト３１を、各支持孔２７と取付孔２４に挿通する。フランジ部２３の前方へ突出する締結ボルト３１の先端部に対して、締結ナット３２をねじ込んで締め付けると、ドーム状本体２１がブラケット２６に固定される。ブラケット２６の前面とフランジ部２３の後面との間は、シール部材（図示省略）によって気密状にシールされている。ドーム状本体２１がブラケット２６に固定されることよって、外殻体２０の組付けが完了すると同時に、タンク１０に対する外殻体２０の組み付けが完了する。後側のドーム状本体２１も、前側のドーム状本体２１と同様にして、後側のブラケット２６に固定する。

【0021】

外殻体２０をタンク１０に取り付けた状態では、タンク１０の外面のうち一部のみが、一対の外殻体２０によって覆われる。一対の外殻体２０が覆うのは、筒状部１１の前後両端部と、ドーム部１２の全体のみである。タンク１０のうち外殻体２０によって覆われずに露出した領域（筒状部１１の軸線方向中央部）を、露出領域１４と定義する。タンク１０の外面のうち外殻体２０によって覆われた領域と、外殻体２０とによって区画された空間を、気密空間１５と定義する。前後一対の気密空間１５は、高圧ガス貯留装置の外部空間、及びタンク１０の貯留空間１３内に対して気密状に保たれている。

【0022】

機能装置は、タンク１０に対して、タンク１０の内部（貯留空間１３）とタンク１０の外部とに臨むように取り付けられる装置である。本実施例１の高圧ガス貯留装置が備える全ての機能装置は、タンク１０のうち露出領域１４以外の領域のみに取り付けられていて、気密空間１５に臨むように配置されている。本実施例１の高圧ガス貯留装置は、機能装置として、燃料ポンプ４０と充填用バルブ４５とを備えており、更に安全弁（図示省略）や各種センサ（図示省略）等も備えている。

【0023】

燃料ポンプ４０は、タンク１０内に貯留されている燃料（高圧ガス）を車両のエンジン（図示省略）に供給するための装置である。燃料ポンプ４０は、前側のドーム部１２と前側のドーム状覆い部２２に対して、気密状に貫通した状態で取り付けられている。燃料ポンプ４０の吸引ポート４１は貯留空間１３内に配置されている。燃料ポンプ４０の吐出ポート４２は、外殻体２０の外部に配置されている。燃料ポンプ４０の一部は、気密空間１５内に配置されている。

【0024】

充填用バルブ４５は、後側の外殻体２０をタンク１０に取り付ける前の状態において、タンク１０内に燃料を充填するための装置である。充填用バルブ４５は、後側のドーム部１２に対して、気密状に貫通した状態で取り付けられている。充填用バルブ４５の充填口４６は、気密空間１５内に配置されている。充填用バルブ４５の流入ポート４７は、貯留空間１３内に配置されている。

【0025】

前側の外殻体２０と後側の外殻体２０は、複数組の連結部材５０によって前後方向へ離隔しないように連結されている。１組の連結部材５０は、前後方向に細長い１本の連結バー５１と、一対の連結ナット５３とを備えて構成されている。連結バー５１の前後両端部には、雄ネジ部５２が形成されている。連結バー５１の前端部は、前側のフランジ部２３の連結孔２５に挿通されており、フランジ部２３の前方へ突出した雄ネジ部５２には、連結ナット５３がねじ込まれている。

【0026】

連結バー５１の後端部は、後側のフランジ部２３の連結孔２５に挿通されており、フランジ部２３の後方へ突出した雄ネジ部５２には、連結ナット５３がねじ込まれている。前後いずれかの連結ナット５３を締め込むことによって、前後両連結ナット５３が、前後両フランジ部２３を軸線方向に接近させるように押圧する。この両連結ナット５３の押圧によって、前後両外殻体２０が、軸線方向に離隔する方向への相対変位を規制される。

【0027】

連通管５５は、タンク１０及び外殻体２０の外部において、全体として前後方向に延びるように配置されている。連通管５５の前端部は、前側のドーム状覆い部２２に対して気密状に取り付けられている。連通管５５の後端部は、後側のドーム状覆い部２２に対して気密状に取り付けられている。連通管５５の内部は、前側の気密空間１５と後側の気密空間１５とを連通させる連通路５６として機能する。

【0028】

次に、本実施例１の作用及び効果を説明する。タンク１０のうち燃料ポンプ４０と充填用バルブ４５が貫通している部位は、シール部材（図示省略）によって気密が図られている。しかし、シール部材の劣化等によって貯留空間１３内の燃料が気密空間１５内へ露出することが懸念される。しかし、タンク１０のうち燃料ポンプ４０と充填用バルブ４５が取り付けられている部位は、外殻体２０によって気密状態で覆われているので、タンク１０から漏出した燃料（気化ガス）が大気中へ放出されることはない。

【0029】

また、前後いずれか一方の気密空間１５のみに気化ガスが漏出すると、漏出側の気密空間１５内の圧力が上昇する。圧力が上昇すると、外殻体２０は、タンク１０（ドーム部１２）に対して軸線方向へ離隔する方向の押圧力を受ける。この押圧力は、タンク１０とブラケット２６とを固着している溶接部２８に対して剪断力として作用する。そのため、溶接部２８が破壊されてブラケット２６（外殻体２０）がタンク１０から離脱することが懸念される。

【0030】

しかし、本実施例１では、漏出側の気密空間１５内の気体（空気と気化ガス）が、連通路５６を通ることによって、漏出していない側の気密空間１５内へ流入するので、前側の気密空間１５と後側の気密空間１５との圧力は同じ圧力に保たれる。このときの前後両気密空間１５内の圧力は、前後両気密空間１５が連通していない場合における漏出側の気密空間１５内の圧力よりも低い圧力に抑えられる。したがって、溶接部２８に作用する剪断力が低く抑えられ、溶接部２８における破損を防止できる。

【0031】

また、前後両外殻体２０は、ドーム状本体２１同士が連結部材５０によって前後方向へ離隔しない状態に保持されている。そのため、前後両気密空間１５内の圧力が上昇しても、ドーム状本体２１からブラケット２６に対して軸線方向に離隔する方向の力は作用しない。これにより、前後両ドーム状本体２１が軸線方向に離隔することに起因する溶接部２８の破壊を、防止することができる。

【0032】

本実施例１の高圧ガス貯留装置は、高圧ガスを貯留するタンク１０と、前後一対の外殻体２０と、機能装置（燃料ポンプ４０と充填用バルブ４５）とを備えている。タンク１０は、筒状部１１の軸線方向両端を一対のドーム部１２で閉塞した形状をなす。一対の外殻体２０は、ドーム状をなし、タンク１０のうち筒状部１１の軸線方向中央部よりもドーム部１２側の領域のみを覆っている。外殻体２０は、ドーム部１２の外面との間に気密空間１５を空けて配置されている。機能装置（燃料ポンプ４０と充填用バルブ４５）は、ドーム部１２のみに取り付けられており、気密空間１５に臨むように配置されている。

【0033】

この構成によれば、燃料ポンプ４０と充填用バルブ４５の取付け部位における高圧ガスの漏れ対策として、外殻体２０で覆う必要があるのは、燃料ポンプ４０と充填用バルブ４５が取り付けられているドーム部１２だけである。本実施例１の高圧ガス貯留装置は、タンク１０全体を外殻体２０で包囲する必要がないので、軽量化を図ることができる。

【0034】

外殻体２０は、筒状部１１の外周面における軸線方向両端部に固着されている。タンク１０内の高圧ガスが一方の気密空間１５内に漏れて、その気密空間１５内の圧力が上昇すると、一方の外殻体２０に対してドーム部１２から軸線方向へ離隔する方向の押圧力が作用するため、押圧力を受けた外殻体２０と筒状部１１との固着部に対する負荷が増大する。しかし、一対の外殻体２０（押圧力を受けた外殻体２０と他方の外殻体２０）は、連結部材５０によって軸線方向への離隔不能に連結されているので、一方の外殻体２０に作用する押圧力は、２つの外殻体２０の固着部に分散される。これにより、外殻体２０と筒状部１１との固着部に対する負荷を軽減し、外殻体２０を筒状部１１に対して確実に保持しておくことができる。

【0035】

外殻体２０は、ドーム部１２を覆うドーム状本体２１と、リング状のブラケット２６と、ブラケット２６をドーム状本体２１の開口縁部２１Ｅに固定する締結部材３０とを備えて構成されている。ブラケット２６は、溶接によって筒状部１１の外周面に固着されている。この構成によれば、ブラケット２６を筒状部１１に固着した後に、ブラケット２６とドーム状本体２１を締結部材３０によって固定することができる。締結部材３０の締結を解除することによって、ドーム状本体２１をタンク１０から離脱させることができるので、メンテナンスが容易である。

【0036】

一対の気密空間１５は、連通路５６を介して連通している。タンク１０内の高圧ガスが一方の気密空間１５に漏出すると、その気密空間１５内の気体が連通路５６を通って他方の気密空間１５へ流出するので、一対の気密空間１５内が同じ圧力に保たれる。これにより、高圧ガスが漏れたときに、一方の気密空間１５内の圧力が過大に上昇することを抑制できる。

【0037】

＜他の実施例＞
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
外装体は、ドーム状本体とブラケットとからなる２部品構造に限らず、ドーム状本体とブラケットとを一体化させた形状の単一部品であってもよい。
ドーム状本体とブラケットは、締結部材以外の手段によって固定してもよい。
連結部材は、シャフト状に限らず、板状のものでもよい。
連結部材は、外殻体を構成するドーム状本体同士を連結する形態に限らず、ブラケット同士を連結してもよい。
一対の外殻体は、連結部材で連結しない形態としてもよい。
連結部材は、管状のものでもよい。この場合、連結部材に、気密空間同士を連通させる機能を持たせてもよい。
一対の気密空間は、連通しない構成としてもよい。
タンクの材料は、金属に限らず、合成樹脂製であってもよい。
外殻体の材料は、金属に限らず、合成樹脂製であってもよい。

【符号の説明】

【0038】

１０…タンク
１１…筒状部
１２…ドーム部
１５…気密空間
２０…外殻体
２１…ドーム状本体
２１Ｅ…ドーム状本体の開口縁部
２６…ブラケット
２８…溶接部
３０…締結部材
４０…燃料ポンプ（機能装置）
４５…充填用バルブ（機能装置）
５０…連結部材
５６…連通路

【図1】

【図2】