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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025119794
(43)【公開日】2025-08-15
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20250807BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20250807BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20250807BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M8/0258
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014808
(22)【出願日】2024-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018DD06
5H018EE03
5H018EE05
5H018HH02
5H018HH05
5H126AA08
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE05
5H126EE06
5H126EE22
5H126JJ02
(57)【要約】
【課題】加工がしやすく、ガス拡散層へのガスの拡散効率を向上できる燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池は、ガス拡散層と、ガス拡散層にガスを供給するガス流路を有し、ガス拡散層に面してガス拡散層と接触して配置されるセパレータと、を備え、ガス拡散層は、ガス流路をガスが流れる方向である流路方向に沿ってガス流路の一部を形成するガス流路形成部を備え、ガス流路形成部は、第1部分と、流路方向において第1部分に隣接する第2部分と、を備え、第1部分のガス流路に突出する量は、第2部分のガス流路に突出する量よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
ガス拡散層と、
前記ガス拡散層にガスを供給するガス流路を有し、前記ガス拡散層に面して前記ガス拡散層と接触して配置されるセパレータと、を備え、
前記ガス拡散層は、前記ガス流路を前記ガスが流れる方向である流路方向に沿って前記ガス流路の一部を形成するガス流路形成部を備え、
前記ガス流路形成部は、
第1部分と、
前記流路方向において前記第1部分に隣接する第2部分と、を備え、
前記第1部分の前記ガス流路に突出する量は、前記第2部分の前記ガス流路に突出する量よりも大きい、
燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池であって、
前記第1部分における前記ガス拡散層の圧縮率は、前記第2部分における前記ガス拡散層の圧縮率よりも低い、
燃料電池。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池であって、
前記流路方向の中間位置よりも上流側の前記ガス流路形成部に占める前記第1部分の面積は、前記中間位置よりも下流側の前記ガス流路形成部に占める前記第1部分の面積よりも大きい、
燃料電池。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池であって、
前記流路方向の中間位置よりも下流側の前記ガス流路形成部に占める前記第1部分の面積は、前記中間位置よりも上流側の前記ガス流路形成部に占める前記第1部分の面積よりも大きい、
燃料電池。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料電池であって、
前記セパレータは、互いに平行に設けられた複数の前記ガス流路を備え、
前記ガス拡散層は、互いに平行に設けられた複数の前記ガス流路形成部を備え、
各前記ガス流路形成部は、それぞれ異なる前記ガス流路の一部を形成し、
各前記ガス流路形成部が備える前記第1部分は、前記ガス拡散層の面内で前記流路方向に略直交する方向に並んでいる、
燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セパレータの流路に、流路の断面積が小さくなる絞り部が配置されている燃料電池が開示されている。特許文献1の技術では、流路に絞り部を配置することで、流路を流れる反応ガスのカソード拡散層への拡散効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-102413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス流路に絞り部が形成されたセパレータは形状が複雑なため、加工が難しいという問題があった。そのため、より加工がしやすく、ガス流路を流れるガスのガス拡散層への拡散効率を向上できる燃料電池が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、燃料電池が提供される。この燃料電池は、ガス拡散層と、前記ガス拡散層にガスを供給するガス流路を有し、前記ガス拡散層に面して前記ガス拡散層と接触して配置されるセパレータと、を備え、前記ガス拡散層は、前記ガス流路を前記ガスが流れる方向である流路方向に沿って前記ガス流路の一部を形成するガス流路形成部を備え、前記ガス流路形成部は、第1部分と、前記流路方向において前記第1部分に隣接する第2部分と、を備え、前記第1部分の前記ガス流路に突出する量は、前記第2部分の前記ガス流路に突出する量よりも大きい。
この形態の燃料電池によれば、複雑な形状のセパレータを加工する場合よりも簡単に、第1部分及び第2部分を備えるガス拡散層を加工できる。また、第1部分において、ガス流路を流れるガスのガス拡散層への拡散効率を向上できる。
(2)上記形態の燃料電池において、前記第1部分における前記ガス拡散層の圧縮率は、前記第2部分における前記ガス拡散層の圧縮率よりも低くてもよい。
この形態の燃料電池によれば、ガス流路を流れるガスのガス拡散層への拡散効率をさらに向上できる。
(3)上記形態の燃料電池において、前記流路方向の中間位置よりも上流側の前記ガス流路形成部に占める前記第1部分の面積は、前記中間位置よりも下流側の前記ガス流路形成部に占める前記第1部分の面積よりも大きくてもよい。
この形態の燃料電池によれば、ガス流路の中間位置よりも上流側の発電性能をより高めることができる。
(4)上記形態の燃料電池において、前記流路方向の中間位置よりも下流側の前記ガス流路形成部に占める前記第1部分の面積は、前記中間位置よりも上流側の前記ガス流路形成部に占める前記第1部分の面積よりも大きくてもよい。
この形態の燃料電池によれば、ガス流路の中間位置よりも下流側の発電性能をより高めることができる。
(5)上記形態の燃料電池において、前記セパレータは、互いに平行に設けられた複数の前記ガス流路を備え、前記ガス拡散層は、互いに平行に設けられた複数の前記ガス流路形成部を備え、各前記ガス流路形成部は、それぞれ異なる前記ガス流路の一部を形成し、各前記ガス流路形成部が備える前記第1部分は、前記ガス拡散層の面内で前記流路方向に略直交する方向に並んでいてもよい。
この形態の燃料電池によれば、全てのガス流路で、流路方向における、ガス拡散層へのガスの拡散効率の高い位置を揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】燃料電池の概略構成を示す断面図。
図2】カソード拡散層を+Z方向から見た図。
図3図2に示すIII-III断面におけるカソード拡散層とカソードセパレータの断面図。
図4図2に示すIV-IV断面におけるカソード拡散層とカソードセパレータの断面図。
図5】カソード拡散層の加工方法を説明する図。
図6】第1ローラーの斜視図。
図7】第2実施形態におけるカソード拡散層を+Z方向から見た図。
図8】第3実施形態におけるカソード拡散層を+Z方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、固体高分子形燃料電池である燃料電池100の概略構成を示す断面図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を表す矢印が示されている。図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を指し示している。向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符号を併用する。
【0009】
燃料電池100は、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)10と、カソード拡散層50と、アノード拡散層60と、カソードセパレータ70と、アノードセパレータ80と、を備える。
【0010】
膜電極接合体10は、電解質膜20と、カソード触媒層30と、アノード触媒層40と、を備える。電解質膜20は、固体高分子材料、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸を備えるフッ素系樹脂により形成された、プロトン伝導性を有するイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。
【0011】
カソード触媒層30及びアノード触媒層40は、例えば白金あるいは白金合金等の触媒を担持した導電性粒子、例えばカーボン粒子を、プロトン伝導性を有する高分子電解質で被覆して形成される。カソード触媒層30は、電解質膜20の一方の面に形成されており、アノード触媒層40は、電解質膜20の他方の面に形成されている。本実施形態では、カソード触媒層30は電解質膜20の+Z方向側の面に形成されており、アノード触媒層40は電解質膜20の-Z方向側の面に形成されている。
【0012】
カソード拡散層50及びアノード拡散層60は、例えば、カーボンクロスやカーボンペーパー等の気体透過性および導電性を有する材料から構成される。カソード拡散層50は、カソード触媒層30の電解質膜20と接する面とは反対側の面に形成されている。アノード拡散層60は、アノード触媒層40の電解質膜20と接する面とは反対側の面に形成されている。以下では、カソード拡散層50とアノード拡散層60を区別無く呼ぶ場合は、ガス拡散層と呼ぶ。
【0013】
カソードセパレータ70及びアノードセパレータ80は、ガス遮断性および電気伝導性を有する部材によって構成されており、例えば、カーボン粒子を圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン等のカーボン製部材や、プレス成形したステンレス鋼やチタン鋼などの金属部材によって形成されている。以下では、カソードセパレータ70とアノードセパレータ80を区別無く呼ぶ場合は、セパレータと呼ぶ。
【0014】
カソードセパレータ70は、カソード拡散層50のカソード触媒層30と接する面とは反対側の面に、カソード拡散層50に接触して配置されている。カソードセパレータ70には、カソード拡散層50に対向する面に開口する、複数の溝71が設けられている。本実施形態では、複数の溝71は、Y方向に沿って互いに平行に設けられている。溝71は、カソードセパレータ70が有するカソードガス流路75の一部を形成する。カソードガス流路75には、酸化剤ガスとしての空気が供給される。カソードガス流路75は、カソード拡散層50に空気を供給する。
【0015】
アノードセパレータ80は、アノード拡散層60のアノード触媒層40と接する面とは反対側の面に、アノード拡散層60に接触して配置されている。アノードセパレータ80には、アノード拡散層60に対向する面に開口する、複数の溝81が設けられている。本実施形態では、複数の溝81は、Y方向に沿って互いに平行に設けられている。溝81は、アノードセパレータ80が有するアノードガス流路85の一部を形成する。アノードガス流路85には、反応ガスとしての水素が供給される。アノードガス流路85は、アノード拡散層60に水素を供給する。以下では、カソードガス流路75とアノードガス流路85を区別無く呼ぶ場合は、ガス流路と呼ぶ。また、カソードガス流路75を酸化剤ガスが流れる方向、及び、アノードガス流路85を反応ガスが流れる方向を、流路方向と呼ぶ。本実施形態では、流路方向は、+Y方向である。
【0016】
図2は、カソード拡散層50を+Z方向から見た図である。カソード拡散層50は、複数のカソードガス流路形成部51を備える。複数のカソードガス流路形成部51は、カソード拡散層50のカソードセパレータ70と接触する側の面に、Y方向に沿って互いに平行に設けられている。カソードガス流路形成部51は、カソードガス流路75の一部を形成する。具体的には、1つのカソードガス流路形成部51と、カソードセパレータ70に設けられた1つの溝71とによって、1つのカソードガス流路75が形成される。つまり、それぞれのカソードガス流路形成部51は、それぞれ異なるカソードガス流路75の一部を形成する。図2には、流路方向、すなわち酸化剤ガスの流れる方向が、白抜きの矢印で示されている。
【0017】
カソードガス流路形成部51は、第1部分52と、第2部分53と、を備える。図2では、第1部分52と第2部分53を分かりやすく示すために、第1部分52と第2部分53にそれぞれ異なるハッチングが施されている。第2部分53は、流路方向において第1部分52に隣接して設けられている。図2に示す例では、カソード拡散層50は、3つのカソードガス流路形成部51を備え、それぞれのカソードガス流路形成部51は、2つの第1部分52と3つの第2部分53を備える。それぞれのカソードガス流路形成部51が備える第1部分52は、カソード拡散層50の面内で、流路方向に略直交する方向に並んでいる。図2に示す例では、それぞれのカソードガス流路形成部51が備える第1部分52は、X方向に並んでいる。
【0018】
図3は、図2に示すIII-III断面における、カソード拡散層50とカソードセパレータ70の断面図である。図4は、図2に示すIV-IV断面における、カソード拡散層50とカソードセパレータ70の断面図である。図3は、第1部分52を含む位置での断面図であり、図4は、第2部分53を含む位置での断面図である。図3及び図4に示すように、第1部分52のカソードガス流路75へ突出する量は、第2部分53のカソードガス流路75へ突出する量よりも大きい。ここで、カソードガス流路75へ突出する量とは、カソード拡散層50とカソードセパレータ70が接触する面を基準面Sとしたときの、基準面Sの位置と、最も+Z方向側に位置する第1部分52または第2部分53の位置との、Z方向における距離である。ガス流路へ突出することを、ガス流路へのたわみ込みとも呼ぶ。
【0019】
図5は、カソード拡散層50の加工方法を説明する図である。図6は、図5に示す第1ローラー110の斜視図である。カソード拡散層50は、例えば、2つのローラーでカーボンクロス等のカソード拡散層50の材料を圧縮することで加工される。図5に示す第1ローラー110及び第2ローラー120は、X方向に沿う軸線を有する円筒形状のローラーである。カソード拡散層50は、Z方向において第1ローラー110と第2ローラー120の間に配置されており、第1ローラー110及び第2ローラー120の回転に伴って、第1ローラー110及び第2ローラー120に対して相対的に-Y方向へ移動する。第1ローラー110には、その外周面にX方向に沿う溝111が設けられている。第2ローラー120の外周面には、溝は設けられていない。第1ローラー110と第2ローラー120によってカソード拡散層50が圧縮されることで、カソード拡散層50には、圧縮率の異なる低圧縮部131と高圧縮部132が形成される。低圧縮部131は、高圧縮部132よりもカソード拡散層50の圧縮率が低い部分である。低圧縮部131は、カソード拡散層50の、第1ローラー110の溝111と接触する部分に、X方向に沿って形成される。高圧縮部132は、カソード拡散層50の、第1ローラー110の溝111と接触しない部分に形成される。低圧縮部131は、図2に示すカソードガス流路形成部51の第1部分52に対応し、高圧縮部132は、カソードガス流路形成部51の第2部分53に対応する。すなわち、第1部分52におけるカソード拡散層50の圧縮率は、第2部分53におけるカソード拡散層50の圧縮率よりも低い。
【0020】
ここで、カソード拡散層50の圧縮率が高いとは、カソード拡散層50の潰れの程度が大きいことを意味し、カソード拡散層50の圧縮率が低いとは、カソード拡散層50の潰れの程度が小さいことを意味する。例えば、カソード拡散層50が、カーボン繊維を樹脂バインダで結着させた素材から構成されている場合、圧縮率が高い部分はカーボン繊維間の隙間が少なく、圧縮率が低い部分はカーボン繊維間の隙間が多い。すなわち、圧縮率が高い部分はガスの透過性が低く、圧縮率が低い部分はガスの透過性が高い。
【0021】
アノード拡散層60は、複数のアノードガス流路形成部を備える。アノードガス流路形成部は、カソード拡散層50のカソードガス流路形成部51と同様に、アノード拡散層60に形成されている。アノードガス流路形成部の形状は、カソードガス流路形成部51と同様であるため、図示を省略する。
【0022】
複数のアノードガス流路形成部は、図2に示すカソードガス流路形成部51と同様に、アノード拡散層60のアノードセパレータ80と接触する側の面に、Y方向に沿って互いに平行に設けられている。アノードガス流路形成部は、アノードガス流路85の一部を形成する。それぞれのアノードガス流路形成部は、それぞれ異なるアノードガス流路85の一部を形成する。アノードガス流路形成部は、第1部分52と、第2部分53と、を備える。それぞれのアノードガス流路形成部が備える第1部分52は、アノード拡散層60の面内で、流路方向に略直交する方向に並んでいる。アノードガス流路形成部の、第1部分52のアノードガス流路85へ突出する量は、第2部分53のアノードガス流路85へ突出する量よりも大きい。また、アノード拡散層60は、カソード拡散層50と同様に加工される。第1部分52におけるアノード拡散層60の圧縮率は、第2部分53におけるアノード拡散層60の圧縮率よりも低い。以下では、カソードガス流路形成部51とアノードガス流路形成部を区別無く呼ぶ場合は、ガス流路形成部と呼ぶ。
【0023】
以上で説明した第1実施形態における燃料電池100によれば、ガス拡散層は、ガス流路の一部を形成するガス流路形成部を備え、ガス流路形成部は、第1部分52と第2部分53を備える。第1部分52のガス流路へ突出する量は、第2部分53のガス流路へ突出する量よりも大きい。そのため、ガス流路を流れるガスの、第1部分52における圧力損失が、第2部分53における圧力損失よりも大きくなり、ガス拡散層へのガスの潜り込みが第1部分52において促進される。したがって、ガス流路を流れるガスのガス拡散層への拡散効率を、第1部分52において高めることができる。また、ガス拡散層は、溝を有する第1ローラー110と溝を有さない第2ローラー120でガス拡散層の材料を圧縮することで加工される。そのため、複雑な形状のセパレータを加工する場合よりも簡単に、ガス流路を流れるガスのガス拡散層への拡散効率の高い燃料電池100を作成できる。
【0024】
また、本実施形態では、第1部分52におけるガス拡散層の圧縮率は、第2部分53におけるガス拡散層の圧縮率よりも低い。そのため、ガス流路を流れるガスの、第1部分52におけるガス拡散層へのガスの透過性は、第2部分53におけるガス拡散層へのガスの透過性よりも高い。したがって、ガス流路を流れるガスのガス拡散層への拡散効率をより高めることができる。
【0025】
また、本実施形態では、セパレータは、互いに平行に設けられた複数のガス流路を備え、ガス拡散層は、互いに平行に設けられた複数のガス流路形成部を備え、各ガス流路形成部は、それぞれ異なるガス流路の一部を形成している。それぞれのガス流路形成部が備える第1部分52は、ガス拡散層の面内で流路方向に略直交する方向に並んでいる。そのため、全てのガス流路で、流路方向における、ガス拡散層へのガスの拡散効率の高い位置を揃えることができる。
【0026】
B.第2実施形態:
第2実施形態では、ガス流路形成部が備える第1部分52と第2部分53の位置が、第1実施形態と異なる。ガス流路形成部以外の燃料電池100の各部の構成は、第1実施形態と同じである。
【0027】
図7は、第2実施形態におけるカソード拡散層50bを+Z方向から見た図である。第2実施形態では、カソードガス流路形成部51bの第1部分52及び第2部分53は、流路方向の中間位置Cよりも上流側のカソードガス流路形成部51bに占める第1部分52の面積が、中間位置Cよりも下流側のカソードガス流路形成部51bに占める第1部分52の面積よりも大きくなるように設けられている。ここで、中間位置Cとは、流路方向においてカソードガス流路形成部51bを等分する位置である。流路方向の上流側は、中間位置Cよりも-Y方向側であり、流路方向の下流側は、中間位置Cよりも+Y方向側である。カソードガス流路形成部51bが複数の第1部分52を備える場合、第1部分52の面積とは、全ての第1部分52の面積の合計を意味する。なお、第1部分52及び第2部分53は、中間位置Cよりも上流側のカソードガス流路形成部51bにおける第1部分52の密度が、中間位置Cよりも下流側のカソードガス流路形成部51bにおける第1部分52の密度よりも高くなるように設けられていてもよい。
【0028】
アノードガス流路形成部の第1部分52及び第2部分53は、カソードガス流路形成部51bの第1部分52及び第2部分53と同様に、流路方向の中間位置よりも上流側のアノードガス流路形成部に占める第1部分52の面積が、流路方向の中間位置よりも下流側のアノードガス流路形成部に占める第1部分52の面積よりも大きくなるように設けられている。アノードガス流路形成部の図示は省略する。アノードガス流路形成部が複数の第1部分52を備える場合、第1部分52の面積とは、全ての第1部分52の面積の合計を意味する。なお、第1部分52及び第2部分53は、中間位置よりも上流側のアノードガス流路形成部における第1部分52の密度が、中間位置よりも下流側のアノードガス流路形成部における第1部分52の密度よりも高くなるように設けられていてもよい。
【0029】
カソードガス流路75の上流側は、下流側と比べて酸素濃度が高く、反応ガスと酸化剤ガスの電気化学反応で生成される生成水の量が少ないため、下流側よりも発電性能が高い。第2実施形態の燃料電池100によれば、流路方向の中間位置Cよりも上流側のカソードガス流路形成部51bに占める第1部分52の面積が、中間位置Cよりも下流側のカソードガス流路形成部51bに占める第1部分52の面積よりも大きいため、カソードガス流路75の中間位置Cよりも上流側の発電性能をより高めることができる。
【0030】
アノードガス流路85の上流側は、下流側と比べて水素濃度が高いため、下流側よりも発電性能が高い。第2実施形態の燃料電池100によれば、流路方向の中間位置よりも上流側のアノードガス流路形成部に占める第1部分52の面積が、流路方向の中間位置よりも下流側のアノードガス流路形成部に占める第1部分52の面積よりも大きいため、アノードガス流路85の中間位置よりも上流側の発電性能をより高めることができる。
【0031】
C.第3実施形態:
第3実施形態では、ガス流路形成部が備える第1部分52と第2部分53の位置が、第1実施形態と異なる。ガス流路形成部以外の燃料電池100の各部の構成は、第1実施形態と同じである。
【0032】
図8は、第3実施形態におけるカソード拡散層50cを+Z方向から見た図である。第3実施形態では、カソードガス流路形成部51cの第1部分52及び第2部分53は、流路方向の中間位置Cよりも下流側のカソードガス流路形成部51cに占める第1部分52の面積が、中間位置Cよりも上流側のカソードガス流路形成部51cに占める第1部分52の面積よりも大きくなるように設けられている。カソードガス流路形成部51cが複数の第1部分52を備える場合、第1部分52の面積とは、全ての第1部分52の面積の合計を意味する。なお、第1部分52及び第2部分53は、中間位置Cよりも上流側のカソードガス流路形成部51cにおける第1部分52の密度が、中間位置Cよりも下流側のカソードガス流路形成部51cにおける第1部分52の密度よりも高くなるように設けられていてもよい。
【0033】
アノードガス流路形成部の第1部分52及び第2部分53は、カソードガス流路形成部51cの第1部分52及び第2部分53と同様に、流路方向の中間位置よりも下流側のアノードガス流路形成部に占める第1部分52の面積が、流路方向の中間位置よりも上流側のアノードガス流路形成部に占める第1部分52の面積よりも大きくなるように設けられている。アノードガス流路形成部の図示は省略する。アノードガス流路形成部が複数の第1部分52を備える場合、第1部分52の面積とは、全ての第1部分52の面積の合計を意味する。なお、第1部分52及び第2部分53は、中間位置よりも上流側のアノードガス流路形成部における第1部分52の密度が、中間位置よりも下流側のアノードガス流路形成部における第1部分52の密度よりも高くなるように設けられていてもよい。
【0034】
第3実施形態の燃料電池100によれば、流路方向の中間位置Cよりも下流側のカソードガス流路形成部51cに占める第1部分52の面積が、中間位置Cよりも上流側のカソードガス流路形成部51cに占める第1部分52の面積よりも大きい。そのため、カソードガス流路75の中間位置Cよりも下流側の発電性能をより高めることができる。
【0035】
また、本実施形態では、流路方向の中間位置よりも下流側のアノードガス流路形成部に占める第1部分52の面積が、流路方向の中間位置よりも上流側のアノードガス流路形成部に占める第1部分52の面積よりも大きい。そのため、アノードガス流路85の中間位置よりも下流側の発電性能をより高めることができる。
【0036】
D.他の実施形態:
(D-1)上記実施形態では、第1部分52におけるガス拡散層の圧縮率は、第2部分53におけるガス拡散層の圧縮率よりも低い。これに対して、第1部分52におけるガス拡散層の圧縮率は、第2部分53におけるガス拡散層の圧縮率より低くなくてもよい。
【0037】
(D-2)上記実施形態では、セパレータは複数のガス流路を備え、ガス拡散層は複数のガス流路形成部を備える。これに対して、セパレータは少なくとも1つのガス流路を備えていればよい。また、ガス拡散層は少なくとも1つのガス流路形成部を備えていればよい。
【0038】
(D-3)上記実施形態では、複数のガス流路は、互いに平行に設けられている。また、複数のガス流路形成部は、互いに平行に設けられている。これに対して、ガス流路とガス流路形成部は、セパレータとガス拡散層が接触することでガス流路を形成するように設けられていればよく、複数のガス流路は互いに平行に設けられていなくてもよいし、複数のガス流路形成部は互いに平行に設けられていなくてもよい。
【0039】
(D-4)第1実施形態では、ガス流路形成部は、2つの第1部分52と3つの第2部分53を備える。これに対して、ガス流路形成部は、少なくとも1つの第1部分52と、少なくとも1つの第2部分53を備えればよい。
【0040】
(D-5)上記実施形態では、カソード拡散層50とアノード拡散層60の両方が、第1部分52及び第2部分53を備えるガス流路形成部を備える。これに対して、カソード拡散層50とアノード拡散層60のいずれか一方のみが、第1部分52及び第2部分53を備えるガス流路形成部を備えてもよい。例えば、カソード拡散層50のみが第1部分52及び第2部分53を備えるカソードガス流路形成部51を備える場合、アノード拡散層60のアノードガス流路形成部の、アノードガス流路85に突出する量は、流路方向の位置によらず一定でもよい。
【0041】
(D-6)上記実施形態では、ガス拡散層は、2つのローラーでカーボンクロス等のガス拡散層の材料を圧縮することで加工される。これに対して、ガス拡散層は、第1部分52のガス流路に突出する量が、第2部分53のガス流路に突出する量よりも大きくなるように加工されればよく、その加工方法は上述した方法に限定されない。
【0042】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…膜電極接合体、20…電解質膜、30…カソード触媒層、40…アノード触媒層、50,50b,50c…カソード拡散層、51,51b,51c…カソードガス流路形成部、52…第1部分、53…第2部分、60…アノード拡散層、70…カソードセパレータ、71…溝、75…カソードガス流路、80…アノードセパレータ、81…溝、85…アノードガス流路、100…燃料電池、110…第1ローラー、111…溝、120…第2ローラー、131…低圧縮部、132…高圧縮部、C…中間位置、S…基準面
図1
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図8