(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011996
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電池パックおよび車両
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20250117BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20250117BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250117BHJP
H01M 50/358 20210101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M50/204 401D
H01M50/249
H01M10/48 A
H01M50/358
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114498
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浮田 恵佑
(72)【発明者】
【氏名】來間 雄介
(72)【発明者】
【氏名】右田 翼
(72)【発明者】
【氏名】森川 桂
(72)【発明者】
【氏名】小熊 泰正
【テーマコード(参考)】
5H012
5H030
5H040
【Fターム(参考)】
5H012BB08
5H012CC10
5H012EE07
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF51
5H040AA33
5H040AA38
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040DD26
5H040NN05
(57)【要約】
【課題】硫化水素を吸着(吸収)する脱硫剤の硫化水素吸着量が飽和したこと、あるいは、飽和する可能性があることを検知する。
【解決手段】単電池10は、硫化物系全固体電池からなる。電池パック200は、一対のエンドプレート31、32の間に、単電池10を複数積層した電池モジュール50を備える。電池モジュール50は、バッテリケース90に収容される。アッパケース92の天井面92aの形成した開口に、ダクト60が取り付けられる。ダクト60の内部には脱硫剤63が配置されており、脱硫ユニットDsuとして構成される。ダクト60内部には、硫化水素センサ70が配置されている。硫化水素センサ70で硫化水素を検出することにより、脱硫剤63の硫化水素の吸着量が飽和していること、あるいは、飽和する可能性があることを検知できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリケースに収容された硫化物系全固体電池からなる電池と、
前記バッテリケースの内部と外部を連通する連通路と、
前記連通路に設けられた、硫化水素を吸着する脱硫剤と、
前記連通路に設けられた、硫化水素を検出する硫化水素センサと、を備える、電池パック。
【請求項2】
前記硫化水素センサは、前記連通路において、前記脱硫剤より前記外部側に設けられる、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記連通路は、流路断面積が他部より小さいナロー通路部を含み、
前記硫化水素センサは、前記ナロー通路部に設けられる、請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記連通路は、
前記脱硫剤を有する第1脱硫ユニットと、
前記脱硫剤を有する第2脱硫ユニットと、
前記第1脱硫ユニットと前記第2脱硫ユニットとを接続する接続管と、を含み、
前記第1脱硫ユニットは、前記第2脱硫ユニットより前記外部側に配置されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電池パックと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記硫化水素センサの検出値が所定条件を満たしたとき、通知を行うよう構成されている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-113803号公報(特許文献1)には、正極、負極および固体電解質の少なくとも一つに硫黄系材料を用いる固体電池において、バッテリケース(筐体)に設けた凹部に、硫化水素無害剤を設けることが、開示されている。
【0003】
この特許文献1では、全固体電池から発生した硫化水素を硫化水素無害剤で吸収し、無害化することが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硫化水素無害剤における、硫化水素の吸収量(吸着量)には、限界がある。このため、硫化水素無害剤の硫化水素吸着量が飽和したこと、あるいは、飽和する可能性があることを、検知することが好ましい。しかし、特許文献1では、この点について、言及されていない。
【0006】
本開示の目的は、硫化水素を吸着(吸収)する脱硫剤の硫化水素吸着量が飽和したこと、あるいは、飽和する可能性があることを検知可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の電池パックは、バッテリケースに収容された硫化物系全固体電池からなる電池と、バッテリケースの内部と外部を連通する連通路と、連通路に設けられた硫化水素を吸着する脱硫剤と、連通路に設けられた硫化水素を検出する硫化水素センサと、を備える。
【0008】
この構成によれば、電池は、硫化物系全固体電池から構成される。本開示において、硫化物系全固体電池とは、正極の材料、あるいは、固体電解質の材料の少なくとも一方に、硫黄成分を含有するものである。硫化物系全固体電池に含まれる硫黄成分と水分が反応すると、硫化水素が発生する。バッテリケース内の硫化水素を含んだ空気が、連通路を介して、外部に排出される際、硫化水素が脱硫剤によって浄化(吸着)される。これにより、硫化水素がバッテリケースの外部に放出されることを抑制できる。
【0009】
連通路には、硫化水素センサが設けられる。硫化水素センサで検出した連通路内の硫化水素に基づいて、脱硫剤の硫化水素吸着量が飽和したこと、あるいは、飽和する可能性があることを検知することが可能になる。
【0010】
(2)硫化水素センサは、連通路において、脱硫剤よりバッテリケースの外部側に設けられてよい。
【0011】
この構成によれば、連通路において、硫化水素センサが脱硫剤よりバッテリケースの外部側に設けられているので、脱硫剤の硫化水素吸着量が飽和している可能性があるとき、硫化水素センサによって硫化水素が検出される。
【0012】
(3)連通路は、流路断面積が他部より小さいナロー通路部を含み、硫化水素センサは、ナロー通路部に設けられてもよい。
【0013】
硫化水素は、空気より重く(空気より比重が大きく)、連通路の底面(鉛直方向下方)側に滞留し易いので、連通路内において、その濃度がばらつく可能性がある。この構成によれば、流路断面積が他部より小さいナロー通路部では、硫化水素の濃度のばらつきが小さくなる可能性が高いので、硫化水素をより確実に検出できる。
【0014】
(4)連通路は、脱硫剤を有する第1脱硫ユニットと、脱硫剤を有する第2脱硫ユニットと、第1脱硫ユニットと第2脱硫ユニットとを接続する接続管と、を含み、第1脱硫ユニットは、第2脱硫ユニットよりバッテリケースの外部側に配置されてもよい。
【0015】
バッテリケース内の硫化水素を含んだ空気は、第2脱硫ユニットを通過したあと、第1流入ユニットに流入する。この構成によれば、第2脱硫ユニットの硫化水素吸着量が先に飽和するので、必要に応じて、第2脱硫ユニットのみを交換すればよい。
【0016】
(5)本開示の車両は、上記(1)~(4)の電池パックと、制御装置と、を備える。制御装置は、硫化水素センサの検出値が所定条件を満たしたとき、通知を行うよう構成されている。
【0017】
この構成によれば、たとえば、硫化水素センサの検出値が、脱硫剤の硫化水素吸着量が飽和した条件を満たしたとき、あるいは、飽和する可能性が高い条件を満たしたとき、通知を行い、脱硫剤の交換を促すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、硫化水素を吸着(吸収)する脱硫剤の硫化水素吸着量が飽和したこと、あるいは、飽和する可能性があることを検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態に係る電池パックを搭載した車両の全体構成を概略的に示す図である。
【
図3】(A)および(B)は、単電池の概略構成を説明する図である。
【
図4】ECUに構成される機能ブロックを示す図である。
【
図5】(A)および(B)は、変形例に係る脱硫ユニットDsuを説明する図である。
【
図6】(A)および(B)は、実施の形態2における脱硫ユニットDsuを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0021】
<実施の形態1>
図1は、本開実施の形態に係る電池パック200を搭載した車両100の全体構成を概略的に示す図である。車両100は、走行用の電力を蓄電する電池パック200を備える。車両100は、電池パック200に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。本実施の形態において、車両100は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(BEV)であるが、エンジンを備えたハイブリッド車両(HEV)、あるいは、プラグインハイブリッド車両(PHEV)であってもよい。
【0022】
車両100は、制御装置(ECU:Electronic Control Unit)150を備える。ECU150は、電池パック200の充電制御及び放電制御を行なうように構成される。ECU150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、および記憶装置153を含んで構成される。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、ECU150における各種制御が実行される。
【0023】
監視モジュール130は、電池パック200(電池モジュール50)の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。なお、電池パック200は、充電設備から供給される電力によって、充電(外部充電)される。
【0024】
車両100は、走行駆動部110と、HMI(Human Machine Interface)装置120と、MIL(Malfunction Indicator Lamp)125と、ハザードランプ140と、外部表示器160と、駆動輪Wとをさらに備える。走行駆動部110は、図示しないPCU(Power Control Unit)とMG(Motor Generator)とを含み、電池パック200に蓄えられた電力を用いてMGを駆動し、車両100を走行させるように構成される。また、MGは、回生発電を行ない、発電した電力を電池パック200に供給するように構成される。
【0025】
HMI装置120は、入力装置及び表示装置を含む。HMI装置120は、タッチパネルディスプレイを含んでもよい。MIL125は、インストルメントパネルに配置された警告灯である。ハザードランプ140は、車両100の前後左右に配置されたランプであって、ウィンカー(方向指示器)と同じランプであり、非常点滅表示灯として機能する。外部表示器160は、たとえばLED表示器であり、リアウィンドウに設けられ、車両100の外部から、表示内容を視認することが可能にされている。
【0026】
電池パック200は、バッテリケース90と、バッテリケース90に格納された電池モジュール50とを含む。バッテリケース90は、ロアケース91とアッパケース92から構成される。本実施の形態では、ロアケース91とアッパケース92から形成された空間に、2個の電池モジュール50が格納されている。アッパケース92には、呼吸膜61が設けられている。呼吸膜61については、後述する。電池パック200は、車両100のフロアに搭載されており、車両100の車室内側に搭載されてもよく、車両100の車室外側に搭載されてもよい。
【0027】
図2は、電池パック200の概略構成を示す図である。
図2は、
図1におけるA-A断面である。電池モジュール50は、複数の単電池10を接続した組電池である。複数の単電池10は、一対のエンドプレート31、32の間に積層されている。
【0028】
図3は、本実施の形態における単電池10の概略構成を説明する図である。
図3(A)は、単電池10の上面視である。単電池10は、外装部材20としてラミネートフィルムを用いたラミネート型全固体電池であり、外装部材20から、負極端子(負極タブ)1aおよび正極端子(正極タブ)5aが突出している。ラミネートフィルムは、たとえば、アルミラミネートフィル製のパウチであってよく、樹脂フィルムの間にアルミ箔を挟んだ3層構造のフィルムであってよい。
【0029】
図3(B)は、外装部材20に収納される全固体電池積層体15であり、
図3(A)のB-B断面を示している。全固体電池積層体15は、負極集電体層1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、および正極集電体層5がこの順に積層された全固体電池素子8が、負極集電体層1及び正極集電体層5を共有し、積層順を逆方向として3個積層されている。負極集電体層1は負極端子1aに接続され、正極集電体層5は正極端子5aに接続される。なお、全固体電池積層体15に含まれる全固体電池素子8の数は、1個であってもよく、4個以上であってもよい。絶縁フィルム7は、全固体電池積層体15と外装部材(ラミネートフィルム)20との間を絶縁する。
【0030】
単電池10は、硫化物系全固体電池である。本開示において、硫化物系全固体電池とは、正極活物質層4の材料、あるいは、固体電解質層3の材料の少なくとも一方に、硫黄成分を含有するものである。本実施の形態では、固体電解質層3は、硫化物系固体電解質を含み、たとえば、硫化物系固体電解質は、5硫化リン(P2S5)、硫化リチウム(Li2S)、を出発原料としたものであってよい。この場合、正極活物質層4は、たとえば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム、等を含んでよい。固体電解質層3が酸化物系固体電解質から構成される場合、正極活物質層4は、硫黄系正極活物質が用いられる。硫黄系正極活物質としては、有機硫黄化合物あるいは無機硫黄化合物であってよい。なお、固体電解質層3および正極活物質層4の両方が、硫黄成分を含んでもよい。
【0031】
単電池10において、たとえば、外装部材20(ラミネートフィルム)の封止箇所から空気が侵入する懸念がある。侵入した空気に水分が含まれていると、固体電解質層3、あるいは、正極活物質層4に含まれる硫黄成分と水分が反応して硫化水素が発生し、バッテリケース90内に放出される可能性がある。
【0032】
図2を参照して、複数の単電池10は、一対のエンドプレート31、32の間に配置され、積層されている。複数の単電池10は、積層された状態で一対のエンドプレート31、32の間に挟まれており、図示しない拘束バンド等によって、所定の拘束荷重が加わっている。一対のエンドプレート31、32は、ブラケット41、42によって、底板30に固定されている。一対のエンドプレート31、32の間に積層された単電池10、底板30、等からなる、電池モジュール50は、ロアケース91の底面91aに固定される。バッテリケース90は、電池モジュール50を収容する筐体(ハウジング)である。
【0033】
アッパケース92には、ダクト60が設けられる。ダクト60は、バッテリケース90の内部と外部とを連通する連通路であり、バッテリケース90の内圧が高くなると、バッテリケース90内の空気を外部に排出し、バッテリケース90の内圧が低くなると、外部の空気(外気)を取り入れる。ダクト60は、アッパケース92の天井面92aに形成された開口に取り付けられる。
【0034】
ダクト60の端部には、透気防水性(透湿防水性)のシートからなる、呼吸膜61、62が設けられる。透気防水性(透湿防水性)のシートは、たとえば、ゴアテックス(GORE-TEX)(登録商標)であってよい。ダクト60の内部には、脱硫剤63が配置されている。脱硫剤63は、たとえば酸化鉄を主成分としたペレット状の脱硫剤であってよく、硫化水素を化学吸着する。脱硫剤63を吸着、吸収するものであれば、どのようなものであってもよい。バッテリケース90の内圧が高くなると、一点鎖線の矢印で示すよう、ダクト60を介して、バッテリケース90内の空気が外部に排出される。この際、空気に含まれる硫化水素は、脱硫剤63によって化学吸着され、硫化水素が浄化される。このように、ダクト60および脱硫剤63は、脱硫ユニットDsuとして構成される。
【0035】
ダクト60の内部には、硫化水素センサ70が配置されている。硫化水素センサ70は、雰囲気に含まれる硫化水素(H2S)の濃度を検出するセンサであり、検出結果を示す信号を、ECU150に出力する。硫化水素センサ70は、たとえば、熱線型半導体式センサであってよく、定電位電解式センサであってもよい。本実施の形態では、硫化水素センサ70は、ダクト60において、脱硫剤63よりバッテリケース90の外部側(バッテリケース90内の空気に含まれる硫化水素が排出されるときの流れの下流側)に配置されている。
【0036】
バッテリケース90内の硫化水素を含んだ空気が、ダクト60を介して、バッテリケース90の外部に排出される際、硫化水素が脱硫剤63によって浄化(吸着)され、硫化水素がバッテリケース90の外部に放出されることを抑制できる。脱硫剤63の硫化水素吸着量が飽和すると、脱硫剤63による硫化水素の吸着が困難になり、脱硫剤63よりバッテリケース90の外部側(硫化水素が排出されるときの流れの下流側)に硫化水素が流れる。また、脱硫剤63の硫化水素吸着量が飽和状態に近づくと、脱硫剤63の硫化水素の吸着能力が低くなり、脱硫剤63よりバッテリケース90の外部側に硫化水素が流れることもある。本実施の形態によれば、脱硫剤63よりバッテリケース90の外部側のダクト60に配置された硫化水素センサ70によって、硫化水素を検出することにより、脱硫剤63の硫化水素の吸着量が飽和していること、あるいは、飽和する可能性があることを検知できる。
【0037】
図4は、ECU150に構成される機能ブロックを示す図である。判定部150aは、硫化水素センサ70の検出信号(検出値)に基づいて、所定条件が満たされているか否かを判定する。通知部150bは、判定部150aにおいて、所定条件が満たされていると判定されたとき、HMI装置120、MIL125、ハザードランプ140、および外部表示器160の少なくとも一つを用いて、通知(報知)を行う。本実施の形態では、判定部150aにおいて、硫化水素センサ70で硫化水素を検出したとき、通知部150bは、HMI装置120の表示装置に「脱硫ユニットの交換要」の表示を行うとともに、MIL125を点灯する。これにより、車両100のユーザに、脱硫ユニットDsuの交換が必要であることを通知できる。なお、「硫化水素センサ70で硫化水素を検出したとき」とは、硫化水素濃度が、硫化水素センサ70で検出可能な濃度(検出下限の濃度)になった場合であってよい。
【0038】
また、判定部150aが、硫化水素センサ70の検出値(硫化水素の濃度)が、設定値を超えたと判定したとき、通知部150bは、MIL125を点灯し、HMI装置120の表示装置に「脱硫ユニットの交換要」および「路肩への停車/退避走行」を要求する旨を表示し、ハザードランプ140を点滅させるとともに、外部表示器に「注意(硫化水素)」の旨を表示する。
【0039】
本実施の形態によれば、脱硫剤63よりバッテリケース90の外部側のダクト60に配置された硫化水素センサ70によって、硫化水素を検出することにより、脱硫剤63の硫化水素の吸着量が飽和していることを検知し、ユーザに脱硫剤63(脱硫ユニットDsu)の交換を促すことができる。また、硫化水素が大量に発生しているときは、車両100の周囲に注意喚起を行うこともできる。
【0040】
<変形例>
図5は、変形例に係る脱硫ユニットDsuを説明する図である。
図5(A)に示した脱硫ユニットDsuでは、硫化水素センサ70は、ダクト60において、脱硫剤63よりバッテリケース90の内部側(バッテリケース90内の空気に含まれる硫化水素が排出されるときの流れの上流側)に配置されている。この場合、判定部150aは、単位時間(たとえば、1秒)当たりに硫化水素センサ70で検出された硫化水素の濃度Chs[ppm]を積算し、この積算値が所定値Aを超えたとき、所定条件が満たされたと判定する。そして、通知部150bは、HMI装置120の表示装置に[脱硫ユニットの交換要]の表示を行うとともに、MIL125を点灯する。所定値Aは、予め実験等によって、バッテリケース90内部の換気量、脱硫剤63の硫化水素吸着の飽和量、等に基づいて、設定されている。
【0041】
図5(B)に示した脱硫ユニットDsuでは、硫化水素センサ70は、ダクト60において、脱硫剤63が配置された部分に設けられている。この場合、判定部150aは、単位時間(たとえば、1秒)当たりに硫化水素センサ70で検出された硫化水素の濃度Chs[ppm]を積算し、この積算値が所定値Bを超えたとき、所定条件が満たされたと判定する。そして、通知部150bは、HMI装置120の表示装置に[脱硫ユニットの交換要]の表示を行うとともに、MIL125を点灯する。所定値Bは、予め実験等によって設定されており、所定値Aより小さな値に設定される。
【0042】
なお、これら変形例において、積算値が所定値A、あるいは、所定値Bを超えたあと、硫化水素センサ70の検出値(硫化水素の濃度)が、継続して設定値を超えている場合、通知部150bは、さらに、HMI装置120の表示装置に「路肩への停車/退避走行」を要求する旨を表示し、ハザードランプ140を点滅させるとともに、外部表示器に「注意(硫化水素)」の旨を表示してもよい。
【0043】
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2における脱硫ユニットDsuを説明する図である。実施の形態2において、脱硫ユニットDsuの構成以外は、実施の形態1と同様である。実施の形態2の脱硫ユニットDsuは、
図6(A)に示すように、5個のダクト60a~60eから構成される。第1ダクト60aは、呼吸膜61を備え、バッテリケース90(アッパケース92)の開口に取り付けられる。第2ダクト60b、第4ダクト60dの内部には、脱硫剤63が配置されている。第3ダクト60cは、第2ダクト60bと第4ダクト60dを接続する。第5ダクト60eは、呼吸膜62を備え、呼吸膜62を介してバッテリケース90の内部と連通する。
【0044】
第1ダクト60aと第2ダクト60bは、各々のフランジ部において、締結部材fpによって締結される。締結部材fpは、たとえばクリップであってよく、ねじ締結部材であってよい。第2ダクト60bと第3ダクト60cは、各々のフランジ部において、締結部材fpによって締結される。第3ダクト60cと第4ダクト60dは、各々のフランジ部において、締結部材fpによって締結される。第4ダクト60dと第5ダクト60eは、各々のフランジ部において、締結部材fpによって締結される。
【0045】
脱硫剤63が配置される、第2ダクト60bと第4ダクト60dは、実質的に同一の構成であり、交換可能な脱硫ユニット60Ctの機能を有する。第3ダクト60cは、第2ダクト60b(脱硫ユニット60Ct)と第4ダクト60d(脱硫ユニット60Ct)とを接続し、本開示の「接続管」の一例に相当する。また、第2ダクト60b(脱硫ユニット60Ct)は、本開示の「第1脱硫ユニット」に相当し、第4ダクト60d(脱硫ユニット60Ct)は、本開示の「第2脱硫ユニット」に相当する。第2ダクト60bは、第4ダクト60dより、バッテリケース90の外部側(バッテリケース90内の空気に含まれる硫化水素が排出されるときの流れの下流側)に配置されている。
【0046】
第3ダクト60cの流路断面積は、他のダクト(第1ダクト60a、第2ダクト60b、第4ダクト60d、および第5ダクト60e)の流路断面積より小さくされている。第3ダクト60cは、本開示の「ナロー通路部」の一例に相当する。硫化水素センサ70が、第3ダクト60cの内部に設けられている。
【0047】
実施の形態2では、ECU150の判定部150aにおいて、硫化水素センサ70で硫化水素を検出したとき、通知部150bは、HMI装置120の表示装置に「脱硫ユニットの交換要」の表示を行うとともに、MIL125を点灯する。硫化水素センサ70で硫化水素が検出されたとき、第4ダクト60d(脱硫ユニット60Ct)の硫化水素吸着量が飽和している可能性が高い。これにより、ユーザに、第4ダクト60d(脱硫ユニット60Ct)の交換が必要であることを通知でき、第4ダクト60d(脱硫ユニット60Ct)の交換を促すことができる。
【0048】
第4ダクト60d(脱硫ユニット60Ct)の硫化水素吸着量が飽和し、交換を行う場合、
図6(B)に示すように、現在まで使用していた第2ダクト60b(脱硫ユニット60Ct)を、第5ダクト60eに接続する。そして、新品の脱硫ユニット60Ctを、第1ダクト60aに接続するようにしてもよい。硫化水素センサ70で硫化水素を検出したとき、第2ダクト60b(脱硫ユニット60Ct)の硫化水素吸着量には、飽和まで、十分な余裕があるからである。
【0049】
第4ダクト60d(脱硫ユニット60Ct)の硫化水素吸着量が飽和すると、硫化水素は、第3ダクト60cを通って第2ダクト60b(脱硫ユニット60Ct)に流入する。この際、第3ダクト60cを流れる硫化水素の濃度が、硫化水素センサ70の検出限界以下の場合、硫化水素センサ70で硫化水素を検出できない。このような場合であっても、第2ダクト60bの脱硫剤63によって硫化水素が吸着されるので、硫化水素がバッテリケース90の外部に放出されることを抑制できる。
【0050】
この実施の形態2では、硫化水素センサ70は、流路断面積が、他のダクトの流路断面積より小さい第3ダクト60cに設けられている。硫化水素は、空気より重く(空気より比重が大きく)、ダクト内において、その濃度がばらつく可能性がある。流路断面積が小さい第3ダクト60cでは、ダクト内の硫化水素の濃度のばらつきが小さくなる可能性が高いので、より確実に、硫化水素の検出を行うことができる。
【0051】
上記実施の形態では、電池パック200が車両100に搭載された例を説明した。電池パック200は、定置用の蓄電装置であってもよい。
【0052】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 負極集電体層、2 負極活物質層、3 固体電解質層、4 正極活物質層、5 正極集電体層、7 絶縁フィルム、8 全固体電池要素、10 単電池、15 全固体電池積層体、 20 外装部材、30 底板、31,32 エンドプレート、41,42 ブラケット、50 電池モジュール、60 ダクト、61,62 呼吸膜、63 脱硫剤、70 硫化水素センサ、90 バッテリケース、91 ロアケース、92 アッパケース、100 車両、110 走行駆動部、120 HMI装置、125 MIL、130 監視モジュール、140 ハザードランプ、150 制御装置(ECU)、150a 判定部、150b 通知部、160 外部表示器、200 電池パック、Dsu 脱硫ユニット。