(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012007
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】バタフライ弁の弁体
(51)【国際特許分類】
F16K 1/22 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
F16K1/22 R
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114517
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】594020363
【氏名又は名称】巴バルブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067644
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 友一朗
(72)【発明者】
【氏名】日根野 陽介
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA02
3H052BA02
3H052CA23
3H052CB23
(57)【要約】
【課題】
シートリングに対する弁体の入射角を小さくする構造とし、シートリングの摩耗や開閉トルクの増加を防止すると共に、経年による漏れが発生した場合において、シール性能の回復を図りうるようにすることを課題とする。
【解決手段】
弁体の弁軸方向の断面毎のエッジ形状を同一にして、シートリングに対する弁体の入射角を小さくすると共に、弁体のエッジ形状を2つの円弧と直線でつないだ形状としたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の弁体外周面を弾性密封材からなるシートリング内周面に食い込ませてシール面圧を得るようにした中心型バタフライ弁において、弁体の弁軸方向の断面毎のエッジ形状を同一にして、シートリングに対する弁体の入射角を小さくすると共に、弁体のエッジ形状を2つの円弧と直線でつないだ形状としたことを特徴とするバタフライ弁の弁体。
【請求項2】
弁体のエッジ部入側の円弧を出側の円弧と同一若しくは大きな円弧としたことを特徴とする請求項1記載のバタフライ弁の弁体。
【請求項3】
弁体のエッジ部の入側の直線部を出側の直線部と同一若しくは小さな直線としたことを特徴とする請求項1又は2記載のバタフライ弁の弁体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バタフライ弁の弁体に係り、特に、シートリングの摩耗低減、開閉トルクの低減を図ると共に、弁翼差を全閉位置より更に閉方向に閉めることでシール性能を回復させ得るようにしたバタフライ弁の弁体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円板形状の弁体の外周面を弾性密封材からなるシートリングの内周面に食い込ませてシール面圧を得て、弁の開閉を行うようにした中心型バタフライ弁であって、弁体のボス部を含む全ての外周面を弁体の外周半径よりも小さな半径の同一曲面で構成して、弁体の全周でシール面圧を均等とし、シール性能を弁体の全周で均等にすると共に、必要最小限のつぶし量で安定したシール性能を確保可能とし、より小さなトルクで弁体の開閉駆動を行い得るようにし、且、シートリングの負荷の軽減により、シートリングの耐久性の向上を図りうるようにしたバタフライ弁の弁体が提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このように弁体のボス部を含む全ての外周面を同一の曲面で構成した場合、
図12に示すように、弁体のエッジ形状は、弁体の高さ方向で変化し、弁軸方向上下端に近づくほどエッジ部半径(R)は弁体中心方向に引き延ばされて、楕円形状になる(
図12C参照)。このように、弁体のエッジ部形状が楕円形状になるにしたがって、弁体の縦横比が大きくなり、シートリングの円筒面と弁体のシート接触点が回転しようとする向きのなす角度(入射角)が大きくなるため、弁体がシートリングに食い込むときにシートリングが変形して、スムーズに弁体がシートリングに食い込むことが出来ず、シートリングの摩耗や開閉トルクが増加する。又、弁体の外周面が同一曲面で構成されている結果、バルブ開度が0度となる弁体の位置(全閉位置)においてシートリングの圧縮量が最大となるため、経年により漏れが発生した場合、弁体を開閉いずれの方向に回動しても、シートリングの圧縮量は減少するため、シール性能を回復することは不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、弁軸方向の断面毎の弁体半径形状を同一にして、シートリングに対する弁体の入射角を小さくする構造とし、入射角を小さくすることで弁体がシートリングへ食い込むとき、シートリングの変形を抑えて、スムーズに弁体がシートリングに食い込み、シートリングの摩耗や開閉トルクの増加を防止すると共に、弁体エッジ部の形状を2つの半径を直線でつないだエッジ形状とすることにより、シートリングの最大圧縮位置を弁体の全閉位置から閉方向にずらし、これにより、経年による漏れが発生した場合において、シール性能の回復を図りうるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明者等がとった手段は、弁体のエッジ部半径形状を2つの半径(R)を直線でつないだエッジ形状とし、且、弁軸方向の断面毎のエッジ部形状を同一の形状とすることにより、シートリングに対する弁体の入射角を小さくすると共に、シートリングの最大圧縮位置を弁体の全閉位置から閉方向にずらすようにしたことを特徴とする。
【0007】
弁体のエッジ部入側の円弧を出側の円弧と同一若しくは大きな円弧とし、弁体のエッジ部の入側の直線部を出側の直線部と同一若しくは小さな直線としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弁軸方向の断面毎の弁体エッジ半径形状を同一としてあるので、シートリングに対する弁体の入射角を小さくすることが出来、入射角を小さくすることで弁体がシートリングに食い込むときシートリングの変形が抑えられ、スムーズに弁体がシートリングに食い込み、シートリングの摩耗や開閉トルクの増加を防止することが出来る。又、弁体エッジ部の形状を2つの半径を直線でつないだエッジ形状としてあるので、弁体を全閉位置より更に閉方向に閉めたとき、2つの半径をつなぐ直線で構成される弁体の平面部がシートリングに食い込む状態となる。係る全閉位置よりも弁体がシートリングに食い込むことにより、全閉位置よりもさらなる閉止状態の作出が可能となり、経年により全閉位置で弁漏れが生じても、弁翼差を全閉位置より更に閉方向に閉めることで、シール性能を回復すること出来、弁漏れを解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図7】バタフライ弁の全閉時(バルブ開度0度)の中心横断面図
【
図8】バタフライ弁の全閉時から3度オーバーラン時の中心横断面図
【
図9】弁体の弁軸方向における異なる位置の断面を示す図
【
図11】弁体を全閉時及び3度オーバーラン時における弁体とシートリングとの食い込み状態を示す模式図
【
図12】従来の弁体の弁軸方向における異なる位置の断面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しつつ、 この発明の好ましい実施の形態を詳細に説明する。図において(1)は、バタフライ弁本体であり、その内周面にフッ素樹脂やゴム等の弾性密封材からなるシートリング(2)が装着される。(3)は、該シートリング(2)の内周面に接触してシール性を発揮する円板状の弁体であり、弁軸(4)により弁本体(1)に回動自在に軸支される。
【0011】
本発明は、この弁体(3)の弁軸方向の断面毎のエッジ形状を同一にして、シートリング(2)に対する弁体の入射角を小さくすると共に、弁体(3)のエッジ形状を2つの円弧と直線でつないだ形状としたことを特徴とする。
【0012】
すなわち、第9図及び第10図に示すように、弁体(3)は、弁軸方向の断面1及び断面2のいずれの位置においても、エッジ形状は同一に形成される。そして、そのエッジ形状は、弁体(3)のシートリング(2)への入側、すなわちシートリングとの接触開始側の円弧(Ra)をシートリングとの接触終了の円弧(Rb)と同一若しくは大きくすると共に、入側と出側の2つの円弧(Ra、Rb)を直線(Ya、Yb)でつないだ形状とする。
【0013】
この発明の弁体(3)は、バルブ口径(2Rd)が好ましくは小口径40mmから中口径300mm程度のバタフライ弁に適するものであるが、これに限られるものではない。弁体の厚さ(T)は、流体圧に耐える強度を持ち、かつ全開時の流れを妨げないように、3~36mmの範囲とするのが好ましい。また、弁体半径(Rd)とシートリング内側半径(Rs)の差が小さいとシールせず、大きすぎるとバルブ開閉トルクが増大するので、シートリング内径(2Rs)は弁体直径(2Rd)に対して少し小さくなるように設計し、両者の差であるRd-Rsは0.1~2.0mmの範囲とするのが好ましい。弁体のシートリングを圧縮するシール部を
図9、
図10に示すように直線(Ya、Yb)で構成する。これにより、全閉位置よりも更に閉方向へ弁体を回動させたときに、シール性能を回復させることが出来る。シール部の直線距離(Ya+Yb)は、1.0~15.6mmとするのが良い。弁体(3)のエッジ部の出側の半径(Rb)は小さすぎると開抵抗が増大するため、最低値を0.5mmとする。そして、本発明の弁体は、上記弁体半径(Rd)、シートリング半径(Rs)及び直線部(Ya)と下記式1が成り立つように入側半径(Ra)を設定し、入側半径(Ra)を出側半径(Rb)と同一若しくは大きくし、弁体中心から入側の直線部(Ya)を出側の直線部(Yb)と同一若しくは小さくするように各部の寸法を設定する。
【0014】
【0015】
弁体(3)エッジ部に直線部(Ya、Yb)を設けたことにより、
図11に示すように、弁体(3)を全閉位置より更に閉めたとき、出側の直線部(Yb)で構成される平面部がシートリングにより食い込む状態となる。この結果、経年等により漏れが生じても、弁翼差を全閉位置より更に閉方向に閉めることでシール性能を回復させることが可能となる。
【符号の説明】
【0016】
1弁本体
2シートリング
3弁体
4弁軸