(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001201
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】医療用治具及び移送器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100668
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】臓器移植に用いられる医療用シート(細胞シート)を生体の処置対象部に移送するための外筒を備えた移送器具において、医療用シートを外筒内に効率的に収容すること。
【解決手段】医療用治具94は、移送器具10における外筒22の外周部22Aに着脱可能な治具本体941と、治具本体941の先端部から先端方向に向けて延出し、第1キャリア部材が取り込まれる内部空間943を有したガイド部942と、ガイド部942の内周面から内部空間943に向かって突出する隔壁部945とを備える。医療用治具94に対して移送器具10の第1支持部26が基端方向に相対移動するように、第1支持部26と医療用治具94とを相対移動させるとき、ガイド部942及び隔壁部945が、内部空間943内で第1支持部26を案内して、第1支持部26の幅方向の両側が第1支持面261に向かって突出するように第1支持部26を湾曲形状に変形させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具に用いられる医療用治具であって、
前記移送器具は、先端開口を有する外筒と、
前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置される筒状のシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、
前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面を含み、前記シャフトの延在方向と直交方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、
前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、
前記支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、
前記医療用治具は、
前記外筒の外周部に着脱可能な治具本体と、
前記治具本体の先端部から前記先端方向に向けて延出し、前記キャリア部材が取り込まれる内部空間を有したガイド部と、
前記ガイド部の内周面から前記内部空間に向かって突出する隔壁部と、
を備え、
前記外筒の前記外周部に前記医療用治具が取り付けられるとき、前記ガイド部の前記内部空間が前記外筒の前記先端開口に向かうように配置され、
前記移送器具の前記支持部が前記外筒の先端部から前記先端方向に突出し、前記支持部に前記医療用シートが載置された状態で、前記外筒の前記先端開口と前記ガイド部の前記内部空間とが向かい合った位置から、前記医療用治具に対して前記支持部が前記基端方向に相対移動するように前記支持部と前記医療用治具とを相対移動させるとき、前記ガイド部及び前記隔壁部が、前記内部空間内で前記支持部を案内して、前記支持部の幅方向の両側が前記支持面に向かって突出するように前記支持部を湾曲形状に変形させる、医療用治具。
【請求項2】
請求項1記載の医療用治具において、
前記医療用治具は、前記軸方向に沿って環状に形成された管状体であり、
前記隔壁部は、弾性変形可能な部材から形成される、医療用治具。
【請求項3】
請求項2記載の医療用治具において、
前記治具本体は、前記外筒の前記外周部と係合し、前記外筒に対して前記軸方向に沿って移動可能に支持され、且つ前記外筒に対する回転を規制する回転規制部を備える、医療用治具。
【請求項4】
請求項1記載の医療用治具において、
前記医療用治具は、前記軸方向と直交する方向に開口した開口を有し、前記開口が前記軸方向における全長にわたって形成され、
前記開口の開口方向と前記外筒の前記軸方向とが直交する、医療用治具。
【請求項5】
請求項1記載の医療用治具において、
前記ガイド部は、前記治具本体から前記先端方向に向けて拡径するフレア部を有する、医療用治具。
【請求項6】
請求項1記載の医療用治具において、
前記隔壁部は、前記軸方向に沿って形成される、医療用治具。
【請求項7】
医療用シートを生体の処置対象部に移送するための器具本体と、
前記器具本体に着脱可能な医療用治具と、
を備えた移送器具であって、
前記器具本体は、先端開口を有する外筒と、
前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置される筒状のシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、
前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面を含み、前記シャフトの延在方向と直交方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、
前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、
前記支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、
前記医療用治具は、請求項1~6のいずれか1項に記載の医療用治具である、移送器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具に用いられる医療用治具及び移送器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、例えば、臓器移植に用いられる医療用シート(細胞シート)を生体の処置対象部に移送するための移送器具を開示している。この移送器具は、外筒と、外筒の内部を移動可能なシャフトと、シャフトの先端部に設けられ外筒の先端から突出可能な支持部とを備える。支持部は、医療用シートを載せるためのシート支持体を有する。移送器具では、シート支持体の支持面に医療用シートを載せた状態で、外筒に対してシャフトをスライドさせることにより、シート支持体と共に医療用シートを外筒内に引き込んで外筒内に収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療用シートを外筒内に効率的に収容することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の第1態様は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具に用いられる医療用治具であって、前記移送器具は、先端開口を有する外筒と、前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置される筒状のシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面を含み、前記シャフトの延在方向と直交方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、前記支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、前記医療用治具は、前記外筒の外周部に着脱可能な治具本体と、前記治具本体の先端部から前記先端方向に向けて延出し、前記キャリア部材が取り込まれる内部空間を有したガイド部と、前記ガイド部の内周面から前記内部空間に向かって突出する隔壁部と、を備え、前記外筒の前記外周部に前記医療用治具が取り付けられるとき、前記ガイド部の前記内部空間が前記外筒の前記先端開口に向かうように配置され、前記移送器具の前記支持部が前記外筒の先端部から前記先端方向に突出し、前記支持部に前記医療用シートが載置された状態で、前記外筒の前記先端開口と前記ガイド部の前記内部空間とが向かい合った位置から、前記医療用治具に対して前記支持部が前記基端方向に相対移動するように前記支持部と前記医療用治具とを相対移動させるとき、前記ガイド部及び前記隔壁部が、前記内部空間内で前記支持部を案内して、前記支持部の幅方向の両側が前記支持面に向かって突出するように前記支持部を湾曲形状に変形させる、医療用治具である。
【0006】
この医療用治具によれば、医療用治具を外筒の外周部に装着し、支持部と医療用治具とを軸方向に相対移動させることで、医療用治具のガイド部及び隔壁部が支持部を所定の湾曲形状に変形させることができる。そのため、医療用治具によって、外筒の内周長さよりも大きな幅を有した支持部を外筒内に効果的に収容することが可能となる。
【0007】
(2)上記の(1)記載の医療用治具において、前記医療用治具は、前記軸方向に沿って環状に形成された管状体であり、前記隔壁部は、弾性変形可能な部材から形成してもよい。
【0008】
この構成により、医療用治具を外筒の外周部に取り付けたとき、医療用治具を外筒の軸方向にスライドさせやすく、医療用治具を先端方向にスライドさせることで効果的に支持部を取り込んで湾曲形状にすることができる。医療用治具と外筒とを軸方向に相対移動させるとき、隔壁部が外筒の外周部に接触して弾性変形することで、隔壁部が医療用治具の先端方向に向けて進行させる際の妨げとなることがなく、しかも、外筒の先端開口より先端方向に隔壁部が移動したとき、弾性によって隔壁部を外筒の径方向内方に向けて突出させることが可能である。
【0009】
(3)上記の(1)又は(2)記載の医療用治具において、前記治具本体は、前記外筒の前記外周部と係合し、前記外筒に対して前記軸方向に沿って移動可能に支持され、且つ前記外筒に対する回転を規制する回転規制部を備えてもよい。
【0010】
この構成により、回転規制部によって、外筒に対して医療用治具を先端方向に向けて直線状に移動させ、且つ相対回転を防止できるため、外筒の先端部から先端方向において隔壁部を支持部の幅方向中央に効果的に配置することができ、隔壁部によって医療用シートを円滑且つ所定の湾曲形状に折り畳むことができる。
【0011】
(4)上記の(1)記載の医療用治具において、前記医療用治具は、前記軸方向と直交する方向に開口した開口を有し、前記開口が前記軸方向における全長にわたって形成され、前記開口の開口方向と前記外筒の前記軸方向とが直交してもよい。
【0012】
この構成により、外筒の外周部に対して、外筒の径方向外方から医療用治具を外筒に対して取り付けることができるため、外筒に対する医療用治具の着脱が容易である。
【0013】
(5)上記の(1)~(4)のいずれか1つに記載の医療用治具において、前記ガイド部は、前記治具本体から前記先端方向に向けて拡径するフレア部を有してもよい。
【0014】
この構成により、フレア部を有することで、ガイド部の先端から支持部を内部空間に円滑に取り込んで徐々に湾曲形状へと変形させることができる。
【0015】
(6)上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の医療用治具において、前記隔壁部は、前記軸方向に沿って形成されてもよい。
【0016】
この構成により、支持部と医療用治具とを軸方向に相対移動させるとき、隔壁部によって軸方向における広範囲で支持部を湾曲形状に変形させることができる。
【0017】
(7)本発明の第2態様は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための器具本体と、前記器具本体に着脱可能な医療用治具と、を備えた移送器具であって、前記器具本体は、先端開口を有する外筒と、前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置される筒状のシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面を含み、前記シャフトの延在方向と直交方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、前記支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、前記医療用治具は、(1)~(6)のいずれか1つに記載の医療用治具を有した、移送器具である。
である。
【0018】
この移送器具によれば、医療用治具を外筒に装着し、支持部と医療用治具とを軸方向に相対移動させることで、医療用治具のガイド部及び隔壁部が支持部を所定の湾曲形状に変形させることができる。そのため、医療用治具によって、外筒の内周長さよりも大きな幅を有した支持部を外筒内に効果的に収容することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、医療用治具は、移送器具の外筒の外周部に着脱可能な治具本体と、治具本体の先端部から先端方向に向けて延出し、キャリア部材が取り込まれる内部空間を有したガイド部と、ガイド部の内周面から前記内部空間に向かって突出する隔壁部とを備えているため、医療用治具を外筒の外周部に装着し、支持部と医療用治具とを軸方向に相対移動させることで、医療用治具のガイド部及び隔壁部が支持部を所定の湾曲形状に変形させることができる。これにより、医療用治具によって、外筒の内周長さよりも大きな幅を有した支持部を外筒内に効果的に収容することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る移送器具の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の移送器具に医療用治具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1の移送器具を用いた医療用シートの移送方法の手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、シート載置工程の第1説明図である。
【
図21】
図21は、変形例に係る医療用治具が移送器具に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係る移送器具10は、医療用シート300を生体の処置対象部に移送するための医療機器である。移送器具10は、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用される。この場合、医療用シート300は、心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移植される(
図17~
図20参照)。移送器具10では、複数枚の医療用シート300を移植対象部402に貼付することができる。
【0022】
このような医療用シート300は、医療用途の医薬品や再生医療等製品、医療機器等を含む。医療用シート300は、フィルム状、膜状(ゲル状の物体)等のシート状に形成されている。医療用シート300は、フィブリン等を塗布して補強されてもよい。細胞を含む再生医療等製品は、例えば、細胞シート(シート状細胞培養物)、スフェロイド等を含む。細胞シートは、自家細胞又は他家細胞を培養して形成することができる。細胞シートを構成する細胞は、例えば、体性幹細胞(somatic stem cells)(成体幹細胞(adult stem cells))、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells)、又はiPS細胞(人工多能性幹細胞:induced Pluripotent Stem Cells)由来心筋細胞を含む。体性幹細胞は、好ましくは、骨格筋芽細胞(筋芽細胞(myoblast cells))を含む。
【0023】
医療用シート300は、組織接着剤、局所麻酔剤等を含んでもよい。医療用シート300の厚さは、例えば約100μmであり、医療用シート300の直径は、例えば約60mmである。ただし、医療用シート300の厚さ及び直径(大きさ)は、適宜設定可能である。
【0024】
医療用シート300は、心臓400以外の臓器(例えば、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、食道等)に移植されるシートであってもよい。また、医療用シート300は、医療用途であれば、例えば、癒着を防止するためのシートであってもよい。
【0025】
図1及び
図2に示すように、移送器具10は、器具本体12と、内視鏡14と、固定部材16とを備える。器具本体12は、第1キャリア部材18と、第2キャリア部材20と、外筒22とを有する。なお、移送器具10は、内視鏡14を備える場合に限定されない。
【0026】
図2において、第1キャリア部材18は、第1シャフト24及び第1支持部26を有する。
【0027】
第1シャフト24は、第1内腔28を有する管状体(本実施形態では、円管部材)である。第1内腔28は、第1シャフト24の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共に第1シャフト24の基端(矢印X2方向の端)に開口する。第1シャフト24の基端には、第2シャフト48の外周面に密着する気密用の弁体55が設けられる。弁体55の外周面にはマーカ551が設けられる。移送器具10を使用するとき、ユーザがマーカ551を視認可能である。なお、第1シャフト24は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0028】
第1シャフト24は、外筒22の軸方向に延在して外筒22の内部に軸方向に沿って移動可能に配置される。第1シャフト24は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1シャフト24の構成材料としては、特に限定されないがポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。第1シャフト24は、金属材料によって構成されてもよい。
【0029】
第1シャフト24は、可撓性を有してもよい。第1シャフト24は、曲げた形状を保持可能なフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、体腔内において第1シャフト24を適宜の形状に屈曲させると共にその屈曲形状を保持できる。
【0030】
図2~
図4に示すように、第1支持部26は、第1シャフト24の先端部に取り付けられる。第1支持部26は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1支持部26は、医療用シート300を保持可能である。第1支持部26は、可撓性を有した樹脂製のシート材(フィルム材)を所定形状に折り曲げることにより形成される。第1支持部26は、例えば、シート成形型によってシート材を所定形状に成形することにより形成される。シート材の肉厚は、特に限定されないが、例えば、100μm以上200μm以下に設定されるのが好ましい。第1支持部26は、第1接合部30及び第1支持本体32を有する。
【0031】
第1支持部26の構成材料としては、特に限定されないが透明性を有することが望ましく、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂等が挙げられる。また、第1支持部26はメッシュ状であってもよい。
【0032】
図4において、第1接合部30は、第1シャフト24の先端部の内周面に接着剤によって接着されている。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、UV接着剤、ホットメルト接着剤、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤)等が挙げられる。第1接合部30は、第1シャフト24の内周面に熱融着されてもよい。なお、第1シャフト24の先端部に対して第1支持部26が着脱可能であってもよい。
【0033】
図2に示すように、第1支持本体32は、第1接合部30から先端方向に延出している。第1支持本体32は、基端支持部34と、中間支持部36と、一対の第1突出部38と、一対の第2突出部40と、先端支持部42とを有する。第1支持本体32は、第1支持面261を有する。第1支持面261を上方に向けたときに第1シャフト24のマーカ551が上方に向くように、マーカ551が配置される。すなわち、マーカ551によって、ユーザが第1支持部26における第1支持面261の方向を確認可能である。
【0034】
図3に示すように、基端支持部34は、その延出方向に向かって幅広に形成されている。換言すれば、基端支持部34の幅方向の両側部は、第1接合部30に向かってテーパ状に傾斜している。中間支持部36は、先端から基端方向(矢印X2方向)に向けて徐々に幅が小さくなるテーパ状に形成される。
【0035】
先端支持部42は、中間支持部36の先端と一対の第2突出部40の先端とに繋がっている。先端支持部42は、先端方向(矢印X1方向)に向かって円弧状に突出している。すなわち、
図3に示す第1支持面261と直交する方向から見て、第1支持部26の先端支持部42は、一対の第2突出部40を繋ぐ円弧状である。
【0036】
図4に示すように、基端支持部34は、第1接合部30の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに概ね沿うように延出している。中間支持部36は、基端支持部34の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに対して交差し、第1支持部26の先端方向(矢印X1方向)に向かって延出している。
【0037】
図2及び
図3において、一対の第1突出部38は、第1シャフト24の移動方向と直交する中間支持部36の幅方向の両側部から上方(矢印Y方向)且つ中間支持部36の幅方向内方に突出している。一対の第1突出部38は、基端支持部34に接続されている。第1突出部38は、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した円弧状である。
【0038】
図3に示すように、一対の第2突出部40は、一対の第1突出部38の先端にそれぞれ繋がっている。一対の第2突出部40は、中間支持部36の幅方向の両側部から上方且つ中間支持部36の幅方向外方に突出している。第2突出部40は、第1突出部38よりも小さな曲率で形成される。第2突出部40は、第1突出部38より第1支持面261に対する突出高さが低い。
【0039】
図3に示すように、以下、第1支持部26の第1突出部38及び第2突出部40を合わせた部分を「突出部37」という。従って、第1支持部26の幅方向の両側には一対の突出部37が設けられている。
図3において、第1シャフト24の軸方向と直交する方向(W方向)が第1支持部26の幅方向である。W方向は、他の構成要素(外筒22等)の幅方向でもある。本実施形態において第1支持部26は、一対の突出部37を有するが、
図3におけるW1は、第1支持部26を平面状に展開した場合の第1支持部26の幅が最大になる箇所の幅である。すなわち、第1支持部26の幅W1は、一対の突出部37を形成する前(折曲げ前)の平面状態での第1支持部26Pの最大幅である。第1支持部26の幅W1は、外筒22の内周長さL(
図16参照)よりも大きい。
図16において、外筒22の内周長さLは、外筒22の周方向に沿った内周面の長さである(L=2πR)。Rは外筒22の内腔78の半径である。
【0040】
一対の第1突出部38の各々は、一対の折曲部444を有する。一対の折曲部444の各々は、一対の第1突出部38を第1支持部26の第1支持面261(中間支持部36)に対して折り曲げる(
図5参照)。
【0041】
第1支持本体32は、上方(矢印Y方向)を向き第1支持面261を含む表面461と、表面461の反対面である裏面462とを有する。第1支持面261は、基端支持部34の上面、中間支持部36及び先端支持部42の上面に連なった平坦面である。第1支持面261には、第2キャリア部材20の後述する第2支持部50を第1支持面261に対して円滑にスライドできるように潤滑剤が塗布されてもよい。
【0042】
図2に示すように、第2キャリア部材20は、第2シャフト48と、第2支持部50と、ハブ52とを有する。
【0043】
第2シャフト48は、第2内腔57を有する管状体(本実施形態では、円管部材)である。第2シャフト48の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも長い。第2シャフト48は、第1シャフト24の第1内腔28に挿通されている(
図1及び
図4参照)。換言すれば、第2シャフト48の先端部は、第1シャフト24の先端開口から先端方向(矢印X1方向)に突出している。第2シャフト48の基端部は、第1シャフト24の基端開口から基端方向(矢印X2方向)に突出している(
図1参照)。第2シャフト48は、第1シャフト24に沿って延在して第1シャフト24に沿って移動可能に設けられる。なお、第2シャフト48は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0044】
第2シャフト48は、第1支持部26の形状に追従できるように構成される。第2シャフト48の構成材料としては、例えば、第1シャフト24の構成材料よりも柔軟性がある材料が選択される。具体的に、第2シャフト48の構成材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、シリコーンゴム、金属コイル(樹脂との複合も含む)等が挙げられる。第2シャフト48は、可撓性を有する。
【0045】
図4に示すように、第2シャフト48は、キャリア保持部54と、第2シャフト48の先端部により構成された押付部56を有する。押付部56は、エラストマ材等の弾性体から形成される。押付部56は、外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、第1支持部26を外筒22の内面に押し付ける。
【0046】
キャリア保持部54の先端は、押圧面58を有する。キャリア保持部54は、第1支持部26に支持された医療用シート300の外周端面を押圧面58により先端方向(矢印X1方向)に押圧可能である。本実施形態では、押付部56には、第2支持部50を支持するキャリア保持部54が設けられる。キャリア保持部54は、押圧面58と、取付孔60とを備える。
【0047】
図4において、押圧面58は、キャリア保持部54の先端面に設けられる。押圧面58に取付孔60が開口する。押圧面58には、第2支持部50が取り付けられる。押圧面58は、医療用シート300の外周端面を先端方向(矢印X1方向)に押圧する(
図19参照)。
【0048】
図2~
図4において、第2支持部50は、可撓性を有したシート状に構成される。第2支持部50は、第2接合部70及び第2支持本体72を有する。第2接合部70は、第2支持部50の基端に設けられる。第2接合部70は、第2支持本体72の基端に設けられる。第2接合部70は、キャリア保持部54の取付孔60に挿入され、例えば、接着されている。第2接合部70は、接着以外の適宜の接合方法によりキャリア保持部54の取付孔60に接合されてもよい。また、第2支持部50は、キャリア保持部54と一体的に成形されてもよい。
【0049】
第2支持本体72は、第2接合部70から先端方向(矢印X1方向)に延出している。第2支持本体72の第2接合部70からの延出方向長さは、第1支持本体32の第1接合部30からの延出方向長さよりも短い。第2支持本体72の上面には、医療用シート300を載せるための第2支持面74が設けられる。第2支持面74は、平坦面である。第2支持本体72は、第1支持本体32よりも小さい。すなわち、第2支持面74の面積は、第1支持面261の面積よりも小さい。
【0050】
図2において、ハブ52は、第2シャフト48の基端部に取り付けられている。
【0051】
図1及び
図2において、外筒22は、内腔78を有する円筒部材である。内腔78は、外筒22の先端(矢印X1方向の端)に開口する先端開口80を有する。内腔78は、外筒22の基端(矢印X2方向の端)に開口する。外筒22は、可撓性を有する。外筒22の構成材料は、上述した第1シャフト24の構成材料と同様の材料が挙げられる。
【0052】
外筒22の内腔78には、第1シャフト24が挿通されている。外筒22の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも短い。外筒22の基端には、第1シャフト24の外周面に密着する気密用の弁体84が設けられる。
【0053】
図2及び
図4において、外筒22の先端面は、外筒22の軸方向と直交する方向に沿って延在している。
【0054】
図2に示すように、内視鏡14は、長尺な内視鏡本体86を有する。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の外周面に固定部材16によって固定されている(
図1参照)。内視鏡本体86の先端面に設けられた対物レンズ88は、外筒22の先端方向(矢印X1方向)を向いている。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の軸方向の中間部に固定される。ただし、内視鏡本体86の先端部は、外筒22の先端部に固定されてもよい。
【0055】
固定部材16は、例えば、固定筒90と、固定チューブ92とを含む。固定筒90は、例えば、硬質な樹脂材料によって構成されている。固定筒90の内腔には、内視鏡本体86を挿入可能である。固定筒90は、外筒22の長手方向に沿うように配置されている。固定チューブ92は、固定筒90を外筒22の所定位置に固定するためのチューブである。固定チューブ92は、例えば、熱収縮チューブである。なお、内視鏡本体86の先端部の外筒22への固定方法は、適宜設定可能である。
【0056】
図6に示すように、移送器具10は、さらに医療用治具94を備える。医療用治具94は、外筒22の外側に対して着脱可能に設けられる。医療用シート300を保持した第1支持部26を外筒22内に収容する際に医療用治具94が用いられる。医療用治具94は、外筒22の外周部22Aに沿って軸方向(矢印X1、X2方向)に移動可能に設けられる。なお、医療用治具94は、外筒22の外周部22Aに着脱可能に配置される場合に限定されない。外筒22の外周部22Aに医療用治具94が移動可能に予め取り付けられていてもよい。
【0057】
医療用治具94は、例えば、樹脂材料から形成され、医療用治具94の軸方向に沿って環状に形成された管状体である。医療用治具94は、治具本体941と、ガイド部942と、隔壁部945とを備える。治具本体941は、治具内腔941Aを有した円筒状である。治具内腔941Aは、治具本体941の先端及び基端に開口する。治具本体941は、外筒22の外周部22Aに設けられる。治具本体941は、外筒22の外周部22Aの径方向外方に設けられる。すなわち、治具本体941の治具内腔941Aは、外筒22を挿通可能な大きさで形成される。治具本体941の軸方向における長さは、外筒22の軸方向に沿った長さよりも短い。
【0058】
治具本体941は、外筒22の外周部22Aに着脱可能に設けられる。治具本体941は、回転規制部946を有する。回転規制部946は、外筒22の外周部22Aと係合し、外筒22に対して軸方向に沿って移動可能に支持され、且つ外筒22に対する回転を規制する。
図7Aに示すように、回転規制部946は、凸部947を有する。凸部947は、治具本体941の内周面から径方向内方に突出する。外筒22の外周部22Aに医療用治具94が取り付けられたとき、外筒22の外周面に形成された溝部221に凸部947が挿入される(
図6参照)。溝部221は、外筒22の軸方向に沿って延在し、外周面に対して窪んで形成される。溝部221は、外筒22の基端まで延在して基端方向に開放される。外筒22に沿って医療用治具94を移動させるとき、回転規制部946によって医療用治具94が外筒22の軸方向に沿って案内され、且つ外筒22に対する医療用治具94の回転変位が阻止される。
【0059】
なお、治具本体941が回転規制部946を備える場合に限定されない。治具本体941が回転規制部946(凸部947)を備えず、凸部947が係合される溝部221を外筒22に備えていなくてもよい。回転規制部946は、凸部947を備える場合に限定されない。例えば、回転規制部946が、治具本体941の内周面に形成されて軸方向に延在する溝部を有し、外筒22の外周面に形成され径方向外方に突出した凸部が係合可能な構成であってもよい。
【0060】
ガイド部942は、治具本体941の先端部に設けられる。
図7Aに示すように、ガイド部942は、治具本体941から先端方向に突出して形成される。ガイド部942は、内部空間943と、フレア部944を有する。内部空間943は、ガイド部942の内部に形成され、第1支持部26が取り込まれる空間である。
【0061】
図7Aに示すように、フレア部944は、治具本体941から先端方向に向けて徐々に拡径する逆テーパ形状である。フレア部944の内腔は、先端で開口する。フレア部944の先端は、第1及び第2支持部26、50を収容可能な収容口944Aを有する。
図6に示すように、外筒22の外周部22Aに医療用治具94が取り付けられるとき、フレア部944が外筒22の先端部側に配置される。
【0062】
隔壁部945は、弾性変形可能な部材(例えば、弾性材料又は樹脂材料)から形成される。隔壁部945は、ガイド部942の内周面から内部空間943に向かって突出する。隔壁部945は、フレア部944の内周面から径方向内方に向けて突出する。隔壁部945は、フレア部944の軸方向に沿って形成される。
図7Bに示すように、医療用治具94の軸方向から医療用治具94を見たとき、隔壁部945は、治具本体941の中心軸線を通るように配置される。医療用治具94の軸方向から医療用治具94を見て、隔壁部945に沿って通る仮想線D1が、断面円形状の治具本体941を2分割するように配置される。
【0063】
隔壁部945は、フレア部944の先端から基端まで軸方向に沿って延在する。フレア部944の内周面に対する隔壁部945の高さは、フレア部944の先端から基端に向けて徐々に大きくなる。なお、隔壁部945の高さは、フレア部944の軸方向において徐々に変化する場合に限定されない。隔壁部945の高さが、フレア部944の軸方向において一定でもよい。
【0064】
隔壁部945は、フレア部944の内周面に接続される固定端945Aと、内周面に対して径方向外方に離間した端部である自由端945Bとを備える。隔壁部945の固定端945Aとフレア部944の内周面とが一対の曲面部948によって接続される。一対の曲面部948は、径方向外方に向けて凹状に窪んだ円弧形状である。隔壁部945は、固定端945Aを基点として自由端945B側が傾動可能に構成される。なお、医療用治具94において、隔壁部945のみを弾性を有した部材から形成してもよいし、隔壁部945を含む医療用治具94の全体を弾性を有した部材から形成してもよい。医療用治具94の治具内腔941Aに外筒22が挿通されたとき、外筒22の外周面と隔壁部945とが接触することで、固定端945Aを基点として隔壁部945が屈曲するように弾性変形し、外筒22の外周面に沿うように湾曲した状態で接触する。
【0065】
次に、医療用シート300を生体の処置対象部に移送する移送方法について説明する。具体的に、
図17~
図20に示すように、胸腔鏡下手術により医療用シート300を心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移送する移送方法について説明する。
図8に示すように、本実施形態に係る移送方法は、準備工程、シート載置工程、収容工程、配置工程、展開工程、移動工程、抜去工程を含む。
【0066】
まず、準備工程(ステップS1)において、上述した本実施形態に係る移送器具10を準備する。以下では、
図1に示すような状態を移送器具10の初期状態として説明する。初期状態では、第1及び第2シャフト24、48を外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させ、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22の先端開口80から先端方向に突出させた突出位置(第2位置)の状態となっている。第1及び第2支持部26、50の各々は、外筒22から先端方向に露出することで展開し、第1支持部26の第1支持面261の上に第2支持部50を配置させる。すなわち、第2支持部50は、第1支持部26の第1支持面261に重なった後退位置に配置される。このとき、キャリア保持部54の基端部は、第1シャフト24の第1内腔28に挿入されている。このとき、
図6に示すように、外筒22から内視鏡14が取り外された状態にある。
【0067】
続いて、シート載置工程(ステップS2)において、
図9に示すように、シャーレ401内に配置されている医療用シート300を第2支持面74に載せる。なお、
図10に示すように、医療用シート300は、第2支持面74に載せた状態で第2支持部50から外側に張り出している。第1支持面261は、医療用シート300のうち第2支持部50から外側に張り出した張出部302を支持する。一対の第2突出部40は、第2支持面74に医療用シート300を載せた状態で、中間支持部36の幅方向(W方向)における医療用シート300の移動(位置ずれ)を抑制する。
【0068】
その後、医療用シート300を外筒22内に収容する収容工程(
図8のステップS3)を行う。収容工程は、外筒22の外周部22Aに医療用治具94を取り付ける取付工程を有する。
【0069】
図6に示すように、取付工程では、外筒22の基端から医療用治具94を先端方向(矢印X1方向)に向けて挿通させる。フレア部944の収容口944Aに外筒22の基端部を挿入し、ユーザが外筒22を把持した状態で外筒22の基端部から先端方向に向けて医療用治具94を進行させる。これにより、外筒22の外周部22Aに医療用治具94が取り付けられた状態となる。医療用治具94は、ガイド部942の内部空間943が外筒22の先端開口80に向かうように配置される。
【0070】
取付工程が完了した後、医療用シート300を第1支持部26及び第2支持部50と共に外筒22内に収容した収容位置(第1位置)とする。具体的には、外筒22の先端方向(矢印X1方向)に向けて外筒22の外周部22Aに沿って医療用治具94を進行させる。すなわち、外筒22に対して医療用治具94を軸方向(先端方向)に向けて相対移動させる。このとき、外筒22の外周面に対して隔壁部945が接触することで、固定端945Aを基点として隔壁部945の自由端945B側が径方向外方に向けて屈曲するように弾性変形する。隔壁部945は、外筒22の外周面に沿うように湾曲して外周面に接触する。また、医療用治具94の回転規制部946が外筒22の溝部221に挿入され、回転規制部946の凸部947が溝部221に沿って移動する。医療用治具94が外筒22に沿って先端方向(矢印X1方向)に向けて案内され、外筒22に対する医療用治具94の相対回転が規制される。弾性変形した隔壁部945が外筒22の外周面に接触した状態で、医療用治具94が外筒22の先端部に向けて移動する。
【0071】
図11に示すように、外筒22の軸方向において、フレア部944の基端と外筒22の先端とが一致するまで先端方向(矢印X1方向)に向けて前進させると、第1支持部26の基端支持部34が医療用治具94におけるフレア部944の収容口944Aからフレア部944の内部(内部空間943)へと挿入される。
【0072】
図12に示すように、さらに医療用治具94を先端方向(矢印X1方向)に移動させることで、ガイド部942(フレア部944)の内部空間943に基端支持部34から中間支持部36にかけて挿入される。このとき、基端支持部34のテーパ状の両側部がフレア部944の収容口944Aに接触することにより、基端支持部34には、基端支持部34をフレア部944の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、基端支持部34は、基端方向に向けてテーパ状のフレア部944の内周面に沿って徐々に丸まりながら治具本体941の治具内腔941Aにスムーズに引き込まれる。このとき、第1支持部26は、先端側が大径で、基端支持部34が小径となるように円錐状に丸まりながら、フレア部944の基端から治具本体941の治具内腔941Aに収容されていく。
【0073】
基端支持部34が変形すると、中間支持部36に外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、中間支持部36は、フレア部944の内周面に沿って丸まりながら円筒状に変形する。このとき、一対の第1突出部38の各々は、フレア部944の中央の隔壁部945によって内側に巻き込まれるように第1支持部26の表面461が内側、第1支持部26の裏面462が外側となるように湾曲していく(
図13参照)。
図13に示すように、径方向外方に向けて凸状に膨出した中間部443の裏面462同士が医療用治具94の中心軸線と直交方向に延在する仮想線D2を中心として隔壁部945を挟んで向かい合う。
【0074】
これにより、第1支持部26の裏面462がフレア部944の内面に密着した湾曲形状となり、各第1突出部38がフレア部944の中心に向けて折り返すようにさらに湾曲し、外縁部がフレア部944の中心軸線より下方に配置される。
図13に示すように、第1支持部26は、フレア部944の内面に接触することで、内面に沿ったハート型に湾曲する。第1支持部26の湾曲変形に伴って、第2支持部50も同様に、第1支持部26の内側(表面461側)で第1支持部26に沿って第2支持部50が湾曲変形する。第1及び第2支持部26、50の湾曲変形に伴って、医療用シート300が、第1及び第2支持本体32、72の形状に対応した形状に変形する。
【0075】
図12に示す医療用治具94と外筒22との位置から、
図14に示すように、医療用治具94をさらに外筒22に対して先端方向に移動させることで、ガイド部942(フレア部944)の内面及び隔壁部945によって第1支持部26が先端支持部42まで湾曲変形してハート型となって、第1支持部26が、ガイド部942の基端から治具本体941の治具内腔941Aへと収容される。このとき、ガイド部942の隔壁部945が、第1支持部26の幅方向中央に向かい合うように配置されているため、隔壁部945を挟んで第1支持部26が対称形状となるように折り畳まれ湾曲する。
【0076】
ハート型とは、一方において凸状に湾曲した形状と、一方とは反対側となる他方において二つの凸状に湾曲した形状からなる略円形状の形状をいう。管状体(外筒22)の内腔78にハート型が形成される場合、管状体の内面に沿って他方に突出した二つの凸状の湾曲形状が互いに近づいて一部の周面が互いに接することで、全体の輪郭が管状体の内面に沿った略円形状となる(
図16中、第1支持部26の形状を参照)。
【0077】
ユーザが外筒22を保持した状態で、第1及び第2シャフト24、48を一緒に基端方向(矢印X2方向)に移動させることで、湾曲変形してハート型となった第1支持部26が、医療用治具94の治具本体941の治具内腔941Aを通じて基端支持部34から外筒22の先端開口80へと引き込まれる。第1支持部26が外筒22の内腔78の内面に接触することで、内面に沿って第1支持部26のハート型が維持された状態で収容される。
【0078】
収容工程は、
図15に示すように、第1支持部26の全体が外筒22内に完全に収容されることにより完了する。収容位置は、第1支持部26が外筒22の内腔78に収容されるように第1シャフト24を外筒22に対して基端方向(矢印X2方向)に移動させた位置であり、第1支持部26が、湾曲変形した状態で外筒22の内腔78に収容される。収容工程完了時において、第1支持部26の一部が外筒22の先端開口80から突出してもよい。この場合、第1支持部26の一部が外筒22の先端開口80から突出している状態が、第1支持部26の第1位置である。
【0079】
第1支持部26、第2支持部50及び医療用シート300を外筒22内に収容した収容状態では、
図16に示すように、一対の第1突出部38は、裏面462同士が互いに接触した状態で押付部56の押圧面58よりも先端方向(矢印X1方向)に位置する(
図15参照)。
【0080】
医療用シート300が外筒22内に収容された後、外筒22に対して医療用治具94を基端方向(矢印X2方向)に移動させて第1シャフト24の基端方向に取り外す。次の配置工程のために、固定部材16によって外筒22の外側に内視鏡14の先端部を取り付ける。内視鏡本体86の対物レンズ88は、外筒22の先端方向(矢印X1方向)を向いている。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の軸方向の中間部に固定される。
【0081】
なお、収容工程において、外筒22(第1及び第2キャリア部材18、20)に対して、ガイド部942の基端を外筒22の先端開口80に一致させた位置から、医療用治具94を外筒22に対して先端方向に向けて相対移動させて医療用治具94の内部に第1支持部26を収容する場合に限定されない。例えば、ユーザが医療用治具94を保持し、ガイド部942の基端を外筒22の先端開口80に一致させた状態で、医療用治具94に対して第1及び第2キャリア部材18、20を基端方向に相対移動させることで、医療用治具94の内部に第1支持部26を収容してもよい。
【0082】
その後、配置工程(
図8のステップS4)において、
図17に示すように、胸部408の切開創409から胸腔410内に移送器具10を挿入する。この時、心臓400における移植対象部402の近くに移送器具10の先端を位置させると共に内視鏡14の先端を胸腔410内に位置させる。なお、移送器具10を胸腔410内に挿入する前に、ハブ52の接続ポート部に図示しない液体供給器具を接続して液体(例えば、生理食塩水)を導入してもよい。
【0083】
続いて、展開工程(
図8のステップS5)において、
図18に示すように、第1支持部26、第2支持部50及び医療用シート300を展開させる。具体的に、展開工程では、第1シャフト24を把持し外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させる。これにより、第1シャフト24の弁体55によって、第1シャフト24と共に第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)に向けて一体的に移動する。そうすると、外筒22の先端開口80から露出した第1支持部26は、復元力によって元の形状に復帰する。第1支持部26が展開した第2位置において、第2支持部50及び医療用シート300は、平面形状に広がる。
【0084】
展開工程において、第2キャリア部材20は、医療用シート300を載せた第2支持面74の全体が第1支持面261の上に位置する。この時、医療用シート300は、第1支持面261と第2支持面74とによって支持される。これにより、医療用シート300を心臓400の移植対象部402に移送する前の状態で、医療用シート300の張出部302に皺が発生することを抑制できる。
【0085】
次いで、移動工程(
図8のステップS6)において、
図19に示すように、第2キャリア部材20を第1キャリア部材18に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させることで、医療用シート300が載せられた第2支持部50が後退位置から進出位置へと移動し、第2支持部50が第1支持部26の先端よりも先端方向(矢印X1方向)に突出する。具体的に、移動工程では、第2シャフト48を第1シャフト24に対して先端方向に移動させる。
【0086】
これにより、第2支持部50が第1支持部26に対して先端方向(矢印X1方向)に移動する。このとき、キャリア保持部54(押付部56)の押圧面58が医療用シート300の外周端面を先端方向に押圧すると、医療用シート300の全体が、第1支持部26よりも先端方向に位置する。この移動工程では、医療用シート300を心臓400の移植対象部402の上まで移動させて医療用シート300の張出部302を移植対象部402に接触させる。
【0087】
その後、抜去工程(
図8のステップS7)において、
図20に示すように、第2キャリア部材20を第2位置から第1位置まで移動させることにより第2支持部50を移植対象部402と医療用シート300との間から引き抜く。そうすると、医療用シート300の全体が移植対象部402の表面に接触する。これにより、医療用シート300の移植対象部402への移送が完了する。その後、移送器具10は、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22内に収容した状態で、胸部408から抜去される。
【0088】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0089】
図7Aに示すように、移送器具10に用いられる医療用治具94は、外筒22の外周部22Aに着脱可能な治具本体941と、治具本体941の先端部から先端方向に向けて延出し、第1キャリア部材18が取り込まれる内部空間943を有したガイド部942と、ガイド部942の内周面から内部空間943に向かって突出する隔壁部945とを備える。
【0090】
図1に示すように、外筒22の先端開口80から突出するように第1支持部26が露出して展開した移送器具10の第2位置において、医療用治具94に対して第1支持部26を基端方向に相対移動させるとき、
図13に示すように、ガイド部942及び隔壁部945が、内部空間943内で第1支持部26を案内して、第1支持部26の幅方向の両側が第1支持面261に向かって突出するように第1支持部26を湾曲形状に変形させる。
【0091】
これにより、移送器具10の第1支持部26の幅Wが外筒22の内周長さLより大きい場合であっても、第1支持部26と医療用治具94とを軸方向に相対移動させることで、医療用治具94のガイド部942及び隔壁部945が第1支持部26を所定の湾曲形状に効果的に変形させ、医療用治具94によって、第1支持部26を外筒22の内腔78に効果的に収容することができる。
【0092】
図7Aに示すように、医療用治具94は、医療用治具94の軸方向に沿って環状に形成された管状体であり、隔壁部945は、弾性変形可能な部材から形成される。これにより、
図6に示すように、医療用治具94を外筒22の外周部22Aに取り付けたとき、医療用治具94を外筒22に沿って軸方向へスライドさせやすく、医療用治具94を先端方向にスライドさせることで効果的に第1支持部26を医療用治具94の内部に取り込んで湾曲形状にすることができる。外筒22の基端から外筒22の外周部22Aに医療用治具94を挿通させ、医療用治具94と外筒22とを軸方向に相対移動させるとき、隔壁部945が外筒22の外周部22Aに接触して弾性変形することで、隔壁部945が医療用治具94の先端方向に向けて進行させる際の妨げとなることがなく、しかも、外筒22の先端開口80より先端方向に隔壁部945が移動したとき、弾性によって隔壁部945を外筒22の径方向内方に向けて突出させることが可能である。
【0093】
図7Bに示すように、治具本体941は、外筒22の外周部22Aと係合し、外筒22に対して軸方向に沿って移動可能に支持され、且つ外筒22に対する回転を規制する回転規制部946を備える。これにより、回転規制部946によって、外筒22に対して医療用治具94を先端方向に向けて直線状に移動させ相対回転を防止できる。そのため、隔壁部945を第1支持部26の幅方向中央に効果的に配置することができ、隔壁部945によって医療用シート300を円滑且つ所定の湾曲形状に折り畳むことができる。
【0094】
図7Aに示すように、ガイド部942は、治具本体941から先端方向に向けて拡径するフレア部944を有する。これにより、フレア部944を有することで、ガイド部942の先端から第1支持部26を内部空間943に円滑に取り込んで徐々に所定の湾曲形状へと変形させることができる。
【0095】
隔壁部945は、医療用治具94の軸方向に沿って形成される。これにより、軸方向に沿って延在する隔壁部945によって、軸方向における広範囲で第1支持部26を湾曲形状に変形させることができる。
【0096】
移送器具10を構成する医療用治具は、
図6に示すような円筒部材から構成される医療用治具94に代えて、
図21に示す変形例に係る医療用治具100が採用されてもよい。
【0097】
医療用治具100は、治具本体104と、ガイド部106と、隔壁部108と、開口102とを備える。
図22に示すように、医療用治具100は、管状体である治具本体104及びガイド部106の一部が切り欠かれた開口102を有する。開口102は、医療用治具100において医療用治具100の軸方向と直交する方向(径方向)に開口する。開口102は、医療用治具100の軸方向における全長に亘って形成される。
【0098】
隔壁部108は、ガイド部106の内部空間106Aに設けられる。隔壁部108は、ガイド部106の開口102に向かい合い、且つ、医療用治具100を軸方向から見たとき、開口102とは反対方向に配置される。ガイド部106は、治具本体104の先端から先端方向に向けて拡径するフレア部110を有する。隔壁部108は、弾性変形しない硬さで形成される。なお、隔壁部108は、弾性変形可能であってもよい。
【0099】
外筒22の外周部22Aに対して医療用治具100を取り付けるとき、外筒22の軸方向と開口102の開口方向とが直交した状態とする。医療用治具100の開口102を通じて、外筒22の径方向外方から医療用治具100を外筒22の外周部22Aに取り付ける。すなわち、医療用治具100の開口102を通じて、治具本体104及びガイド部106の内部に外筒22を挿入する。このとき、移送器具10の軸方向において、ガイド部106の基端と外筒22の先端開口80との位置を一致させる。これにより、外筒22の外周部22Aの一部が医療用治具100によって覆われる。外筒22の軸方向と医療用治具100の軸方向とが平行に配置される。
【0100】
収容工程において、ガイド部106の基端と外筒22の先端開口80との位置を一致させた状態で、医療用シート300の載置された第1支持部26をユーザが把持し、医療用シート300が内側となるように湾曲させる。ガイド部106の開口102を通じて、湾曲させた第1支持部26をガイド部106の内部に挿入する。これにより、ガイド部106の内部に第1支持部26が収容され、第1支持部26の裏面462がガイド部106の内面に当接する。外筒22に対して医療用治具100を先端方向に相対移動させることで、フレア部944の内面によって、第1キャリア部材18の第1支持部26をガイド部106の内部空間106Aに取り込んで、フレア部110によって第1支持部26を所定の湾曲形状に折り畳んで外筒22の内腔78に収容させる。
【0101】
なお、収容工程において、第1支持部26をガイド部106に収容する方法は、ユーザが第1支持部26を湾曲させてガイド部106内に挿入する方法に限定されない。例えば、ガイド部106の基端と外筒22の先端開口80との位置を一致させた状態で、外筒22に対して第1及び第2キャリア部材18、20を先端方向へ相対移動させ、第1支持部26の基端支持部34を医療用治具100のガイド部106よりも先端方向に配置する。この状態で、医療用治具100に対して第1及び第2キャリア部材18、20を基端方向に移動させることで、医療用シート300の載置された第1支持部26をガイド部106の先端から内部へと収容して湾曲変形させることが可能である。
【0102】
本変形例は、以下の効果を奏する。
【0103】
図21に示すように、医療用治具100は、軸方向と直交する方向に開口した開口102を有し、開口102が軸方向における全長にわたって形成される。開口102の開口方向と外筒22の軸方向とが直交する。これにより、外筒22の外周部22Aに対して、外筒22の径方向外方から医療用治具100を外筒22の外周部22Aに取り付けられるため、外筒22に対する医療用治具100の着脱が容易である。
【0104】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0105】
10…移送器具
12…器具本体
18…第1キャリア部材
22…外筒
24…第1シャフト
26…第1支持部
80…先端開口
94、100…医療用治具
300…医療用シート
402…移植対象部
104、941…治具本体
106、942…ガイド部
108、945…隔壁部