(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012010
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】洗浄方法及び造形装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20250117BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20250117BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250117BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20250117BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20250117BHJP
B22F 10/16 20210101ALI20250117BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20250117BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250117BHJP
B22F 12/82 20210101ALN20250117BHJP
B05C 5/00 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B33Y30/00
B33Y10/00
B22F12/90
B22F12/50
B22F10/16
B08B3/04 Z
B41J2/01 501
B41J2/01 129
B22F12/82
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114521
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一将
(72)【発明者】
【氏名】森川 俊治
【テーマコード(参考)】
2C056
3B201
4F041
4K018
【Fターム(参考)】
2C056EB20
2C056EB38
2C056EB52
2C056EC19
2C056EC65
2C056FA04
2C056FB05
2C056HA44
2C056JB15
2C056JB18
2C056KB16
2C056KC02
3B201AA33
3B201AB51
3B201BB01
3B201BB87
3B201BB92
3B201BB94
3B201CD43
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA32
4F041BA36
4F041BA38
4F041BA60
4K018BC29
4K018BD04
4K018KA33
(57)【要約】
【課題】複数のタンクに金属含有液を貯留させる構成において、複数のタンクを適切に洗浄できる洗浄方法、及び造形装置を提供すること。
【解決手段】本開示の洗浄方法は、第1タンク及び第2タンクに貯留された金属含有液をノズルから排出する第1排出工程と、第1排出工程を実行した後、第1タンク及び第2タンクに洗浄液を供給する第1洗浄液供給工程と、第1洗浄液供給工程を実行した後、第1タンク及び第2タンクに貯留された洗浄液をノズルから排出する第2排出工程と、第2排出工程を実行した後、第1タンクに洗浄液を供給する第2洗浄液供給工程と、第2洗浄液供給工程を実行した後、第1タンクと第2タンクとの間で流路を通じて洗浄液を送り合う洗浄液循環工程と、洗浄液循環工程を実行した後、第1タンク及び第2タンクに貯留された洗浄液をノズルから排出する第3排出工程と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子を含有する金属含有液を貯留可能な第1タンク及び第2タンクと、
前記第1タンクと前記第2タンクを接続する流路と、
前記第1タンク及び前記第2タンクに接続され、前記金属含有液を吐出するノズルと、
を備える吐出装置において、前記第1タンク及び前記第2タンクを洗浄する洗浄方法であって、
前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記金属含有液を前記ノズルから排出する第1排出工程と、
前記第1排出工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに洗浄液を供給する第1洗浄液供給工程と、
前記第1洗浄液供給工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記洗浄液を前記ノズルから排出する第2排出工程と、
前記第2排出工程を実行した後、前記第1タンクに前記洗浄液を供給する第2洗浄液供給工程と、
前記第2洗浄液供給工程を実行した後、前記第1タンクと前記第2タンクとの間で前記流路を通じて前記洗浄液を送り合う洗浄液循環工程と、
前記洗浄液循環工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記洗浄液を前記ノズルから排出する第3排出工程と、
を含む、洗浄方法。
【請求項2】
前記第1洗浄液供給工程を実行した後に前記第2排出工程を実行するサイクルを、複数回実行する、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記第2洗浄液供給工程において、
前記第1タンクに前記洗浄液を供給する一方、前記第2タンクには前記洗浄液を供給しない、請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記吐出装置は、
前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された液体の量に応じた検出信号を出力する液体センサを備え、
前記液体センサは、
前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された液体の量が、所定の上限値以上であるか否かの判断に用いられ、
前記第1洗浄液供給工程において、
前記上限値まで前記第1タンク及び前記第2タンクに、前記洗浄液を供給する、請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記金属含有液を前記ノズルから吐出し、吐出した前記金属含有液を硬化させて金属配線を形成する金属配線形成工程と、
前記金属含有液が前記第1タンクに補充された後、及び前記金属配線形成工程を開始する前の少なくとも一方において、前記液体センサを用いて前記第1タンクに貯留された前記金属含有液が前記上限値以上であるか否かを判断する上限値判断工程と、
前記上限値判断工程により前記金属含有液が前記上限値以上であると判断した場合、前記第1タンクに貯留された前記金属含有液の量が前記上限値未満になるまで前記金属含有液を排出する余剰分排出工程と、
を、さらに含む、請求項4に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記第2排出工程において、
前記洗浄液を、前記第1タンク及び前記第2タンクから全て排出する、請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記第1排出工程は、
前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記金属含有液を前記ノズルから排出する際に、前記第1タンク及び前記第2タンクの各々に所定量の前記金属含有液を残した状態で排出を停止する排出中断工程と、
前記排出中断工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに前記洗浄液を供給する第3洗浄液供給工程と、
前記第3洗浄液供給工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに残留させた前記金属含有液を、前記洗浄液とともに前記ノズルから排出する混合液排出工程と、
を、さらに含む、請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記第2排出工程及び前記第3排出工程において、
前記第1タンク及び前記第2タンクから前記洗浄液を同時に排出する、請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記吐出装置は、
前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された液体の量に応じた検出信号を出力する液体センサを備え、
前記液体センサは、
前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された液体の量が、所定の下限値以下であるか否かの判断に用いられ、
前記洗浄液循環工程において、
前記第1タンクから前記第2タンクへ前記洗浄液を送る場合、前記第1タンクに貯留された前記洗浄液が前記下限値になるまで前記洗浄液を送る、請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項10】
吐出装置と、
前記吐出装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記吐出装置は、
金属微粒子を含有する金属含有液を貯留可能な第1タンク及び第2タンクと、
前記第1タンクと前記第2タンクを接続する流路と、
前記第1タンク及び前記第2タンクに接続され、前記金属含有液を吐出するノズルと、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記金属含有液を前記ノズルから排出する第1排出処理と、
前記第1排出処理を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに洗浄液を供給する第1洗浄液供給処理と、
前記第1洗浄液供給処理を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記洗浄液を前記ノズルから排出する第2排出処理と、
前記第2排出処理を実行した後、前記第1タンクに前記洗浄液を供給する第2洗浄液供給処理と、
前記第2洗浄液供給処理を実行した後、前記第1タンクと前記第2タンクとの間で前記流路を通じて前記洗浄液を送り合う洗浄液循環処理と、
前記洗浄液循環処理を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記洗浄液を前記ノズルから排出する第3排出処理と、
を実行する、造形装置。
【請求項11】
前記流路は、
複数の前記ノズルを接続し、
前記第1タンク及び前記第2タンクの各々は、
前記流路を介して複数の前記ノズルに接続され、且つ、前記流路を介して互いに接続される、請求項10に記載の造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属微粒子を含有する金属含有液を貯留するタンクを洗浄する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属微粒子を含有する金属含有液を用いて、3次元積層造形法により3次元造形物を造形する技術について提案されている。例えば、下記特許文献1には、金属含有液をインクジェットヘッドから吐出し、吐出した金属含有液を加熱して造形を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した金属含有液は、例えば、使用期限などの理由から所定の期間だけ経過するとタンクから排出する必要が生じる場合がある。排出後にタンク内に付着した金属含有液については、洗浄液によって洗浄することができる。複数のタンクに金属含有液を貯留させ、複数のタンクからノズルに金属含有液を供給し吐出させる場合、金属含有液を排出させた後に、複数のタンクの洗浄が必要となってくる。
【0005】
本開示は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、複数のタンクに金属含有液を貯留させる構成において、複数のタンクを適切に洗浄できる洗浄方法、及び造形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、金属微粒子を含有する金属含有液を貯留可能な第1タンク及び第2タンクと、前記第1タンクと前記第2タンクを接続する流路と、前記第1タンク及び前記第2タンクに接続され、前記金属含有液を吐出するノズルと、を備える吐出装置において、前記第1タンク及び前記第2タンクを洗浄する洗浄方法であって、前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記金属含有液を前記ノズルから排出する第1排出工程と、前記第1排出工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに洗浄液を供給する第1洗浄液供給工程と、前記第1洗浄液供給工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記洗浄液を前記ノズルから排出する第2排出工程と、前記第2排出工程を実行した後、前記第1タンクに前記洗浄液を供給する第2洗浄液供給工程と、前記第2洗浄液供給工程を実行した後、前記第1タンクと前記第2タンクとの間で前記流路を通じて前記洗浄液を送り合う洗浄液循環工程と、前記洗浄液循環工程を実行した後、前記第1タンク及び前記第2タンクに貯留された前記洗浄液を前記ノズルから排出する第3排出工程と、を含む、洗浄方法を開示する。
尚、本開示の内容は、洗浄方法としての実施に限らず、種々の形態により実施することができる。例えば、本開示の内容は、タンクを洗浄する造形装置、造形装置を制御してタンクを洗浄させる制御プログラム、制御プログラムを記憶した記憶媒体などとして実施しても極めて有益である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、洗浄液循環工程で第1及び第2タンク間で洗浄液を循環させる前に、第1洗浄液供給工程及び第2排出工程を実行し、第1及び第2タンク内を洗浄液で予め洗浄する。これにより、第1排出工程で金属含有液を排出した後に、タンク内等に付着している金属含有液を洗い流すことができる。洗浄液循環工程において循環する洗浄液に含まれる金属含有液の濃度を下げ、粘性を低くすることができる。その結果、循環時の泡の発生や、金属含有液等の飛び跳ねの発生を抑制でき、適切な洗浄を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例に係わる基板形成装置を示す図である。
【
図3】基板形成装置で生産する回路基板を示す図である。
【
図4】第1印刷部のうち、インクジェットヘッドに係わる構成を示す図である。
【
図5】第1印刷部のうち、インクジェットヘッドに係わる構成を示す模式図である。
【
図6】タンクを洗浄する処理を示すフローチャートである。
【
図7】タンクを洗浄する処理を説明するための図である。
【
図8】タンクを洗浄する処理を説明するための図である。
【
図9】タンクを洗浄する処理を説明するための図である。
【
図10】比較例のタンクを洗浄する処理を説明するための図である。
【
図11】タンクを洗浄する処理を説明するための図である。
【
図12】タンクを洗浄する処理を説明するための図である。
【
図13】タンクを洗浄する処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(基板形成装置10の構成)
以下、本開示の造形装置を具体化した一実施例である基板形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施例の基板形成装置10の概略図である。
図2は、本実施例の基板形成装置10の制御装置28を示すブロック図である。
図1及び
図2に示すように、基板形成装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット23と、第3造形ユニット24と、第4造形ユニット25と、押圧ユニット26と、装着ユニット27と、制御装置28(
図2参照)とを備えている。それら搬送装置20と第1造形ユニット22と第2造形ユニット23と第3造形ユニット24と第4造形ユニット25と押圧ユニット26と装着ユニット27とは、基板形成装置10のベース29の上に配置されている。ベース29は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、
図1に示すように、ベース29の長手方向をX軸方向、ベース29の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0010】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34とX軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース29の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。更に、X軸スライド機構30は、電磁モータ38(
図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50とステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース29の上に配設されている。Y軸方向におけるY軸スライドレール50の一端部は、X軸スライダ36に連結されている。このため、Y軸スライドレール50は、X軸スライダ36とともにX軸方向に移動可能とされている。そのY軸スライドレール50には、ステージ52が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。更に、Y軸スライド機構32は、電磁モータ56(
図2参照)を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース29上の任意の位置に移動する。
【0011】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64(
図2参照)と、ヒータ66(
図2参照)とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面にパレット61が載置される。パレット61は、例えば、平板状の金属部材である。パレット61の上には、回路基板が造形される。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置されたパレット61のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、回路基板が固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60を昇降させる。また、ヒータ66は、基台60に内蔵されており、基台60に載置された回路基板を任意の温度に加熱する。
【0012】
第1造形ユニット22は、回路基板の金属配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド76(
図2参照)を有しており、インクジェットヘッド76から金属インクを線状に吐出する。金属インクは、ナノメートルサイズの金属、例えば銀の微粒子が溶剤(有機溶剤など)中に分散されたものである。金属微粒子の表面は分散剤によりコーティングされており、溶剤中での凝集が防止されている。また、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インクを吐出する。尚、金属インクを吐出する方法は、圧電素子を用いたインクジェット方式に限らず、例えば、圧電素子とエアを用いたジェットディスペンサ方式などの他の方法でも良い。
【0013】
焼成部74は、赤外線照射装置78(
図2参照)を有している。赤外線照射装置78は、吐出された金属インクに赤外線を照射する装置である。赤外線が照射された金属インクは焼成し、金属配線を形成する。尚、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。そして、金属インクが焼成することで、金属配線が形成される。
【0014】
また、第2造形ユニット23は、回路基板の樹脂層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド88(
図2参照)を有しており、インクジェットヘッド88は紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。尚、インクジェットヘッド88が紫外線硬化樹脂を吐出する方式は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でも良く、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でも良い。
【0015】
硬化部86は、平坦化装置90(
図2参照)と照射装置92(
図2参照)とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一にする。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層が形成される。
【0016】
第3造形ユニット24は、電子部品の電極と金属配線との接続部を造形するユニットであり、第3印刷部100を有している。第3印刷部100は、ディスペンサ106(
図2参照)を有しており、ディスペンサ106は導電性ペーストを吐出する。導電性ペーストは、比較的低温の加熱により硬化する樹脂に、マイクロメートルサイズの金属粒子(銀微粒子など)が分散されたものである。尚、金属粒子は、フレーク状とされており、導電性ペーストの粘度は、金属インクと比較して比較的高い。また、金属インクと導電性樹脂ペーストに含まれる金属は、銀に限らず、金、銅などでも良く、複数の種類の金属でも良い。
【0017】
そして、ディスペンサ106により吐出された導電性ペーストは、基台60に内蔵されているヒータ66により加熱される。加熱された導電性ペーストでは、樹脂が硬化する。この際、導電性ペーストでは、樹脂が硬化して収縮し、その樹脂に分散されたフレーク状の金属粒子が接触する。これにより、導電性ペーストが導電性を発揮する。また、導電性ペーストの樹脂は、有機系の接着剤であり、加熱により硬化することで接着力を発揮する。尚、上記した金属インク及び導電性樹脂ペーストの加熱方法は、一例である。例えば、加熱プレートを用いて金属インクや導電性ペーストを加熱しても良い。また、基板形成装置10は、金属インクや導電性ペーストを加熱する手段として、例えば、造形物を炉内に入れて加熱する電気炉を備えても良い。
【0018】
第4造形ユニット25は、電子部品を回路基板に固定するための樹脂を造形するユニットであり、第4印刷部110を有している。第4印刷部110は、ディスペンサ116(
図2参照)を有しており、ディスペンサ116は熱硬化性樹脂を吐出する。熱硬化性樹脂は、加熱により硬化する樹脂であり、所謂アンダーフィル樹脂である。尚、ディスペンサ106が導電性ペーストを吐出する方式、及びディスペンサ116が熱硬化性樹脂を吐出する方式は、例えば、圧縮エアを用いたエアパルス方式でも良く、ジェット式やメカニカル式などの他の方式でも良い。そして、ディスペンサ116により吐出された熱硬化性樹脂は、基台60に内蔵されているヒータ66により加熱され、硬化する。
【0019】
また、押圧ユニット26は、回路基板に配置された電子部品を押圧するためのユニットであり、駆動部120、ヒータ121(
図2参照)を有している。押圧ユニット26は、例えば、回路基板に配置された電子部品を上から押圧する押圧部材(ゴムシートなど)を備え、駆動部120を駆動して、押圧部材によって回路基板上の電子部品を回路基板側へ押し付ける。駆動部120としては、サーボモータやエアシリンダ等を採用することができる。また、押圧部材によって電子部品(回路基板)を押圧する際に、押圧部材と電子部品との間に低摩擦シートを挟んでも良い。この低摩擦シートは、例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene)、フッ素樹脂等の摩擦係数の低い素材で形成されたシートである。低摩擦シートを挟むことによって電子部品に対して押圧部材を滑らせ、押圧時に電子部品に対して働くずらす方向の力を低減でき、押圧による電子部品の位置ずれを抑制できる。
【0020】
ヒータ121は、例えば、熱源として機能する電熱線を備え、押圧部材を加熱する位置や、回路基板を載置する載置部を加熱する位置に設けられている。ヒータ121は、押圧部材によって電子部品を押圧する際に、押圧部材や回路基板を加熱することで、上記した導電性ペースト及び熱硬化性樹脂を加熱し、電子部品を回路基板に電気的に接続して固定する。
【0021】
また、装着ユニット27は、回路基板に電子部品を装着するユニットであり、供給部130と、装着部132とを有している。供給部130は、例えば、テーピング化された電子部品を1つずつ送り出すテープフィーダ134(
図2参照)を複数有しており、供給位置において、電子部品を供給する。尚、供給部130は、テープフィーダ134に限らず、トレイから電子部品をピックアップして供給するトレイ型の供給装置等でも良い。
【0022】
装着部132は、装着ヘッド136(
図2参照)と、装着ヘッド136を移動させる移動装置138(
図2参照)とを有している。装着ヘッド136は、電子部品を吸着保持するための吸着ノズル(図示省略)を有する。移動装置138は、テープフィーダ134による電子部品の供給位置と、基台60に載置された回路基板との間で、装着ヘッド136を移動させる。これにより、装着部132は、テープフィーダ134から供給した電子部品を吸着ノズルで吸着し、吸着した電子部品を回路基板に装着する。
【0023】
また、
図2に示すように、基板形成装置10は、ユーザインタフェースとして、例えば、タッチパネル139を備えている。タッチパネル139は、制御装置28の制御に基づいて表示内容を変更する。また、タッチパネル139は、ユーザによる操作入力に応じた信号を制御装置28に出力する。
【0024】
また、制御装置28は、
図2に示すように、コントローラ140と、複数の駆動回路142と、記憶装置144を備えている。複数の駆動回路142の各々は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、ヒータ66、インクジェットヘッド76、赤外線照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92、ディスペンサ106,116、駆動部120、ヒータ121、テープフィーダ134、装着ヘッド136、移動装置138、タッチパネル139に接続されている。コントローラ140は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路142に接続されている。記憶装置144は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、HDD等を備えている。記憶装置144には、制御プログラム146が記憶されている。コントローラ140は、制御プログラム146をCPUで実行し、駆動回路142を介して、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット23、第3造形ユニット24、第4造形ユニット25、押圧ユニット26、装着ユニット27、タッチパネル139の動作を制御する。
【0025】
(回路基板の形成)
次に、回路基板を形成する処理の一例を説明する。基板形成装置10は、上述した構成によって、基台60の上に回路基板を形成する。以下の説明では、
図3に示す回路基板151を形成する場合について説明する。また、制御装置28によって制御される装置を、単に装置名で記載する場合がある。例えば、「ステージ52は第2造形ユニット23の下方に移動する」との記載は、「ステージ52は、制御装置28の制御に基づいてX軸スライド機構30の電磁モータ38やY軸スライド機構32の電磁モータ56が制御されることによって、第2造形ユニット23の下方に移動する」ことを意味している。
【0026】
まず、例えば、ステージ52のパレット61の上には、剥離フィルム153が張り付けられている。造形物である回路基板151は、この剥離フィルム153の上に造形される。剥離フィルム153は、所定の温度以上で粘着性が低下し、パレット61から剥離し易くなるフィルムである。制御装置28は、パレット61(ステージ52)を各ユニットに移動させ形成を行う。例えば、形成作業が開始されると、まず、ステージ52は第2造形ユニット23の下方に移動する。第2造形ユニット23は、インクジェットヘッド88から剥離フィルム153の上に紫外線硬化樹脂を吐出する処理と、吐出された紫外線硬化樹脂に対し照射装置92により紫外線を照射する処理と、を繰り返し実行することにより、剥離フィルム153の上に樹脂積層体155を形成する。第2造形ユニット23は、樹脂積層体155の形成において、硬化部86の平坦化装置90による平坦化を適宜実行する。
【0027】
次に、第1造形ユニット22の第1印刷部72において、インクジェットヘッド76が、樹脂積層体155の上面に金属インクを、回路パターンに応じて線状に吐出する。続いて、焼成部74において、赤外線照射装置78が、吐出された金属インクに赤外線を照射し、金属インクを焼成して、樹脂積層体155の上面に金属配線157を形成する(本願の金属配線形成工程の一例)。
【0028】
続いて、第2造形ユニット23において、上記した樹脂積層体155の形成と同様に、紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射を繰り返し実行し、金属配線157の上に樹脂積層体159を形成する。第2造形ユニット23は、例えば、金属配線157の端部が露出するように樹脂積層体159を形成する。樹脂積層体155と樹脂積層体159との段差部はキャビティとして機能する。
【0029】
続いて、第3造形ユニット24の第3印刷部100において、ディスペンサ106が、金属配線157の端部の上に導電性ペーストを吐出する。続いて、第4造形ユニット25の第4印刷部110において、ディスペンサ116が、金属配線157の端部の間における樹脂積層体155の上面に、熱硬化性樹脂161を吐出する。続いて、装着ユニット27が、テープフィーダ134により電子部品163を供給し、装着ヘッド136の吸着ノズルによって電子部品163を保持する。装着ヘッド136は、移動装置138によって移動され、吸着ノズルにより保持した電子部品163を、電子部品163の電極165と金属配線157が電気的に接続されるように装着する。電極165は、金属配線157の上に吐出され且つ未硬化の導電性ペーストと接触するように配置される。また、電子部品163の下面は、金属配線157間に吐出された未硬化の熱硬化性樹脂161に接触する。熱硬化性樹脂161は、樹脂積層体155の上面と電子部品163の下面との間に封入される。
【0030】
続いて、ステージ52は、押圧ユニット26の下方に移動する。押圧ユニット26は、駆動部120を駆動して、例えば、パレット61を上昇させ押圧部材に押し当て、押圧部材によって電子部品163を樹脂積層体155側に押圧する。尚、押圧ユニット26は、押圧部材を下降させて電子部品163を押圧する構成でも良い。押圧時において、押圧部材は、上記した低摩擦シートを介して電子部品を押圧する。これにより、押圧時の電子部品163の位置ずれが抑制される。また、押圧ユニット26は、電子部品163を押圧する際に、ヒータ121による加熱を実行し、導電性ペースト及び熱硬化性樹脂161を加熱して硬化する。導電性ペーストは圧縮された状態で加熱され硬化することで導電性を発揮させ、電子部品163を金属配線157に対し電気的に接続する。従って、硬化した導電性ペーストは、バンプ167として機能する。また、押圧されることで、電子部品163と熱硬化性樹脂161とが密着するとともに、電極165と導電性ペーストとが密着する。これにより、熱硬化性樹脂161の密着力により、電子部品163は樹脂積層体155の上面に固定される。
【0031】
押圧ユニット26での押圧が完了すると、ステージ52は第4造形ユニット25の下方に移動する。第4造形ユニット25の第4印刷部110において、ディスペンサ116が、電子部品163の側面を覆うように熱硬化性樹脂169を吐出する。そして、基台60に内蔵されているヒータ66により樹脂積層体155が加熱される。これにより、樹脂積層体155を介して熱硬化性樹脂169が加熱されて硬化する。従って、熱硬化性樹脂161が、樹脂積層体155の上面と電子部品163の下面との間に封入されるとともに、熱硬化性樹脂169が電子部品163の側面を覆った状態で硬化する。このように、回路基板151が製造される。尚、上記した製造工程で使用する材料、工程の内容や順番は一例であり、製造対象の造形物に応じて適宜変更される。
【0032】
(第1印刷部72の構成)
次に、本開示の金属微粒子を含有する金属含有液の一例として、第1印刷部72から吐出する金属インクを採用した場合について説明する。
図4は、第1印刷部72のうち、インクジェットヘッド76に係わる構成を模式的に示している。
図4に示すように、第1印刷部72は、上記したインクジェットヘッド76の他に、第1及び第2タンク171A,171B、正圧ポンプ173、負圧ポンプ174、第1及び第2レギュレータ175,176、第1及び第2圧力計177,178等を備えている。第1タンク171Aは、後述するインク供給路179を備える点で第2タンク171Bとは異なるものの、その他の部分では第2タンク171Bと同様の構成となっている。このため、以下の説明では、第1タンク171Aについて主に説明し、第2タンク171Bについての説明を適宜省略する。また、第1タンク171Aに係る部材の符号の最後に「A」の文字を付し、それに対応する第2タンク171Bに係る部材に、同じ数字の符号と、最後に「B」の文字を付している。
【0033】
第1及び第2タンク171A,171Bの各々は、例えば、上下方向に長い筒状をなし、金属インク181を貯留可能となっている。正圧ポンプ173は、第1及び第2タンク171A,171Bの各々に正圧の気体を供給するポンプである。負圧ポンプ174は、第1及び第2タンク171A,171Bの各々に負圧の気体を供給するポンプである。正圧ポンプ173及び負圧ポンプ174が供給する気体としては、エアを採用できるが、酸素や窒素などの特定の気体でも良い。
【0034】
正圧ポンプ173は、第1正圧供給路183Aを介して第1タンク171Aに接続され、第2正圧供給路183Bを介して第2タンク171Bに接続されている。負圧ポンプ174は、第1負圧供給路184Aを介して第1タンク171Aに接続され、第2負圧供給路184Bを介して第2タンク171Bに接続されている。第1タンク171Aには、エアを供給する第1エア供給口185Aが設けられている。正圧ポンプ173は、第1正圧供給路183Aを介して第1エア供給口185Aから第1タンク171A内に、正圧のエアを供給する。負圧ポンプ174は、第1負圧供給路184Aを介して第1エア供給口185Aから第1タンク171A内に、負圧のエアを供給する。同様に、第2タンク171Bの第2エア供給口185Bは、第2正圧供給路183B及び第2負圧供給路184Bの各々に接続されている。
【0035】
正圧ポンプ173は、制御装置28(
図2参照)の制御に基づいて供給するエアの圧力(正圧)を変更する。第1レギュレータ175は、正圧ポンプ173と、第1及び第2正圧供給路183A,183Bの間に接続されている。第1レギュレータ175は、制御装置28の制御に基づいて、正圧ポンプ173から第1及び第2正圧供給路183A,183Bに供給するエアの圧力、即ち、第1及び第2タンク171A,171Bに供給するエアの圧力を、所望の正圧に調整する。第1圧力計177は、第1レギュレータ175から第1及び第2正圧供給路183A,183Bに供給するエアの圧力を検出する装置である。第1圧力計177は、検出した圧力を示す信号を制御装置28へ出力する。制御装置28は、第1圧力計177から入力した信号に基づいて第1レギュレータ175等を制御し、第1及び第2タンク171A,171B内を所望の正圧にする。
【0036】
同様に、負圧ポンプ174は、制御装置28の制御に基づいて供給するエアの圧力(負圧)を変更する。第2レギュレータ176は、負圧ポンプ174と、第1及び第2負圧供給路184A,184Bの間に接続されている。第2レギュレータ176は、制御装置28の制御に基づいて、負圧ポンプ174から第1及び第2負圧供給路184A,184Bに供給するエアの圧力、即ち、第1及び第2タンク171A,171Bに供給するエアの圧力を、所望の負圧に調整する。第2圧力計178は、第2レギュレータ176から第1及び第2負圧供給路184A,184Bに供給するエアの圧力を検出する装置である。第2圧力計178は、検出した圧力を示す信号を制御装置28へ出力する。制御装置28は、第2圧力計178から入力した信号に基づいて第2レギュレータ176等を制御し、第1及び第2タンク171A,171B内を所望の負圧にする。尚、第1及び第2圧力計177,178の各々は、第1及び第2正圧供給路183A,183B、第1及び第2負圧供給路184A,184Bのような流路の圧力を検出する構成に限らず、第1及び第2タンク171A,171B内の圧力を検出する構成でも良い。
【0037】
第1正圧供給路183Aと正圧ポンプ173との間には、第1電磁弁187Aが接続され、第2正圧供給路183Bと正圧ポンプ173との間には、第1電磁弁187Bが接続されている。また、第1負圧供給路184Aと負圧ポンプ174との間には、第2電磁弁188Aが接続され、第2負圧供給路184Bと負圧ポンプ174との間には、第2電磁弁188Bが接続されている。第1電磁弁187A,187B、第2電磁弁188A,188B、及び後述する他の電磁弁(第3電磁弁189A,189B、第4電磁弁193、ノズル電磁弁201A,201B)は、例えば、ソレノイドバルブである。
【0038】
第1電磁弁187Aは、制御装置28の制御に基づいて第1正圧供給路183Aを開閉する。同様に、第1電磁弁187B、及び第2電磁弁188A,188Bの各々は、制御装置28の制御に基づいて、第2正圧供給路183B、第1負圧供給路184A、第2負圧供給路184Bを開閉する。これにより、制御装置28は、正圧ポンプ173、負圧ポンプ174、第1電磁弁187A,187B、及び第2電磁弁188A,188B等を制御することで、第1及び第2タンク171A,171B内の圧力を個別に制御する。尚、第1及び第2タンク171A,171Bの各々の圧力を個別に制御する構成は、
図4に示す構成に限らない。例えば、第1印刷部72は、第1及び第2タンク171A,171Bの各々に接続される2つの正圧ポンプ173を備え、各正圧ポンプ173を制御することで、第1及び第2タンク171A,171Bの各々の圧力を個別に制御しても良い。
【0039】
また、第1エア供給口185Aは、第3電磁弁189Aを介して外部と接続され、装置外の空気を取り込むことができる。制御装置28は、第3電磁弁189Aを開くことで、第1タンク171A内の圧力を大気圧にする。同様に、第2エア供給口185Bは、第3電磁弁189Bを介して外部と接続され、第3電磁弁189Bの開放に応じて第2タンク171B内に、大気圧を供給する。以下の説明では、第1タンク171A内の圧力を、正圧、負圧、又は大気圧にすることを単に「第1タンク171Aを正圧にする」等と記載する。また、第1電磁弁187A、第2電磁弁188A、第3電磁弁189Aは、何れか1つの電磁弁が開けられた場合、他の2つの電磁弁は、閉じられる。このため、例えば、第1タンク171Aを正圧にする場合、制御装置28は、第1電磁弁187Aのみを開き、第2電磁弁188A及び第3電磁弁189Aを閉じる。また、以下の説明では、第1タンク171Aを、正圧、負圧、又は大気圧にする際の第1~第3電磁弁187A,188A,189Aの開閉制御の説明を省略する場合がある。第2タンク171Bについても同様である。尚、制御装置28は、第1電磁弁187A、第2電磁弁188A、及び第3電磁弁189Aのうち、少なくとも2つを同時に開く制御を実行し、正圧ポンプ173、負圧ポンプ174等を制御して第1タンク171A内の圧力を調整しても良い。
【0040】
また、第1印刷部72は、洗浄液197を貯留可能な洗浄液タンク195を備えている。第1タンク171Aには、洗浄液197を供給するための第1洗浄液供給口191Aが設けられている。第1洗浄液供給口191Aは、第1タンク171A内において、第1エア供給口185Aよりも下方に設けられている。尚、第1洗浄液供給口191Aを、第1エア供給口185Aと同じ高さの位置や、第1エア供給口185Aよりも上方となる位置に設けても良い。同様に、第2タンク171Bには、第2エア供給口185Bよりも下方となる位置に、洗浄液197を供給するための第2洗浄液供給口191Bが設けられている。
【0041】
洗浄液タンク195の排出口には、第4電磁弁193が接続されている。また、第4電磁弁193には、三方弁194が接続されている。三方弁194には、第4電磁弁193の他に、第1洗浄液供給口191Aと、第2洗浄液供給口191Bが接続されている。三方弁194は、切り替え弁であり、制御装置28の制御に基づいて、第4電磁弁193(洗浄液タンク195)と第1洗浄液供給口191Aを接続する状態と、第4電磁弁193と第2洗浄液供給口191Bを接続する状態とに切り替わる。このように、1度に洗浄液タンク195と接続できるタンクを、第1及び第2タンク171A,171Bの一方にすることで、洗浄液197の供給量のコントロールが容易となる。
【0042】
尚、上記した第1及び第2タンク171A,171Bと、洗浄液タンク195との接続構成は、一例である。例えば、第1及び第2洗浄液供給口191A,191Bの各々を、洗浄液タンク195に別々の流路で接続しても良い。例えば、第1洗浄液供給口191Aを、第4電磁弁193を介して洗浄液タンク195に接続し、第2洗浄液供給口191Bを、別の第4電磁弁を介して洗浄液タンク195に接続しても良い。この場合、三方弁194をなくしても良い。また、洗浄液タンク195から第1及び第2タンク171A,171Bへ同時に洗浄液197を供給することができる。
【0043】
洗浄液197は、第1及び第2タンク171A,171B内の金属インク181を洗い流すための液体である。制御装置28は、三方弁194を第1タンク171A側に切り替え、第4電磁弁193を開き、第1タンク171A内を負圧にすることで、洗浄液197を、洗浄液タンク195から第1タンク171A内へ供給する。制御装置28は、負圧ポンプ174及び第2レギュレータ176を駆動し、第1タンク171Aの負圧を調整することで、洗浄液タンク195から第1タンク171Aへ供給する洗浄液197の供給量を調整できる。同様に、制御装置28は、三方弁194を第2タンク171B側に切り替え、第4電磁弁193を開き、第2タンク171B内を負圧にすることで、洗浄液タンク195から第2タンク171B内へ洗浄液197を供給する。
【0044】
このため、第1及び第2タンク171A,171Bは、後述するように、時と場合によって、金属インク181、洗浄液197、又はその混合液を貯留する。以下の説明では、第1及び第2タンク171A,171Bに貯留されている液体を、貯留液と総称する場合がある。尚、第1印刷部72は、第1タンク171Aに洗浄液197を供給する洗浄液タンク195とは別に、第2タンク171Bに洗浄液197を供給する洗浄液タンク195を備えても良い。また、第1印刷部72は、第1及び第2タンク171A,171Bの一方のみに、洗浄液タンク195が接続される構成でも良い。
【0045】
図5は、インクジェットヘッド76を模式的に示している。
図4及び
図5に示すように、インクジェットヘッド76は、ノズル電磁弁201A,201B、第1ノズル流路203A,203B、ノズル部205を備えている。第1タンク171Aは、タンク流路207Aを介してインクジェットヘッド76のノズル電磁弁201Aに接続されている。ノズル電磁弁201Aは、第1ノズル流路203Aを介してノズル部205に接続されている。同様に、第2タンク171Bは、タンク流路207B、ノズル電磁弁201B、第1ノズル流路203Bを介してノズル部205に接続されている。ノズル電磁弁201A,201Bは、制御装置28の制御に基づいて開閉され、流路を開閉する。
【0046】
ノズル部205は、第2ノズル流路207(
図5参照)、複数のノズル209(
図5参照)を備えている。第1ノズル流路203A,203Bは、第2ノズル流路207に接続されている。従って、第1タンク171Aは、タンク流路207A、第1ノズル流路203A、第2ノズル流路207、第1ノズル流路203B、タンク流路207Bを介して第2タンク171Bに接続されている。また、複数のノズル209は、第2ノズル流路207に接続されている。従って、複数のノズル209は、第1タンク171A、第2タンク171B、あるいはその両方タンクから、第2ノズル流路207を介して供給された金属インク181や洗浄液197を吐出する。
【0047】
ノズル電磁弁201A,201Bが開いた状態では、貯留液は、第1及び第2タンク171A,171B内の圧力の高低に応じて第1及び第2タンク171A,171Bの間で移動する。制御装置28は、第2ノズル流路207を介して、第1及び第2タンク171A,171Bの間で貯留液を送り合う。例えば、第1タンク171Aから第2タンク171Bへ貯留液を送る場合、制御装置28は、ノズル電磁弁201A,201Bを開き、第3電磁弁189Aを開いて第1タンク171Aを大気圧にし、第2電磁弁188Bを開いて第2タンク171Bを負圧にする。これにより、第1タンク171Aの貯留液は、ノズル部205の第2ノズル流路207を介して第2タンク171Bへ流れ込む。同様に、第2タンク171Bから第1タンク171Aへ貯留液を送る場合、制御装置28は、第2タンク171Bを大気圧にし、第1タンク171Aを負圧にする。制御装置28は、このように大気圧と負圧を切替えて、第1及び第2タンク171A,171Bのうち、一方のタンクから他方のタンクに送った貯留液を、再度、他方のタンクから一方のタンクに戻す動作(以下、循環という場合がある)を実行する。尚、上記した循環動作の制御内容は、一例である。例えば、第1タンク171Aから第2タンク171Bへ貯留液を送る場合、制御装置28は、第1電磁弁187Aを開いて第1タンク171Aを正圧にし、第2電磁弁188Bを開いて第2タンク171Bを負圧にしても良い。
【0048】
また、制御装置28は、例えば、金属配線157を形成するために金属インク181をノズル209から吐出する場合、ノズル電磁弁201A,201Bを開いて、インクジェットヘッド76内に金属インク181を充填させる。制御装置28は、第1及び第2タンク171A,171B内を所定の負圧にした状態で、図示しない圧電素子を振動させることで、複数のノズル209から金属インク181を吐出させる。この所定の負圧は、例えば、ノズル209の開口で金属インク181の液面が保持され、ノズル209から金属インク181が漏れない圧力である。尚、制御装置28は、圧電素子に加え、又は圧電素子を用いずに、第1及び第2タンク171A,171B内の圧力を調整して吐出を実行しても良い。
【0049】
また、第1タンク171Aには、金属インク181を補充するためのインク供給路179が設けられている。インク供給路179は、例えば、筒形状の第1タンク171Aの側面から外側に貫通して形成され、第1タンク171Aの側面から斜め上方に向かって形成された流路(配管)である。インク供給路179の下側の開口は、第1タンク171Aと連通しており、上下方向において、第1エア供給口185Aの下方で、且つ、第1洗浄液供給口191Aの上方となる位置に設けられている。また、インク供給路179の上側の開口には、インク供給部211が取り付けられている。
【0050】
インク供給部211は、例えば、インク供給路179の蓋であり、インク供給路179の開口に対して着脱可能となっている。ユーザは、インク供給部211を取り外してインク供給路179を介して第1タンク171A内に金属インク181を補充する。尚、金属インク181の補充を自動で実行しても良い。例えば、基板形成装置10は、金属インク181を貯留可能なインクタンクを備えても良い。そして、第1タンク171Aと、金属インク181を貯留させたインクタンクとを接続し、洗浄液タンク195と同様に、第1タンク171Aを負圧にすることで、インクタンクから第1タンク171Aへ金属インク181を補充しても良い。
【0051】
また、第1印刷部72は、第1液体センサ213A、第2液体センサ213Bを備えている。また、第1タンク171Aの上面には、第1レンズ215Aが取り付けられ、第2タンク171Bの上面には、第2レンズ215Bが取り付けられている。第1液体センサ213Aは、例えば、光学式の液面センサであり、第1タンク171Aの上方に取り付けられている。第1液体センサ213Aは、第1レンズ215Aを介して第1タンク171A内の貯留液の液面で反射した反射光に基づいて、液面の高さに応じた検出信号を制御装置28に出力する。同様に、第2液体センサ213Bは、第2レンズ215Bを介して第2タンク171B内の貯留液の液面で反射した反射光に基づいて、液面の高さに応じた検出信号を制御装置28に出力する。これにより、制御装置28は、第1及び第2タンク171A,171Bの各々に貯留された貯留液の量の検出や、量に応じた制御を実行できる。
【0052】
第1及び第2液体センサ213A,213Bは、本願の液体センサの一例である。尚、本願の液体センサは、光学式の液面センサに限らない。例えば、超音波や電磁波を用いて液面の高さや貯留液の量を検出するセンサでも良い。あるいは、非接触式のセンサに限らず、液体内に挿入した電極、受光素子等を用いて液面等を検出するセンサでも良い。あるいは、タンク流路207Aを流れる貯留液の量を検出する流量センサを設け、第1及び第2タンク171A,171B間で貯留液を移動させることで貯留液の量を検出しても良い。また、第1印刷部72は、第1液体センサ213Aを備え、第2液体センサ213Bを備えない構成でも良い。
【0053】
図5に示すように、本実施例では、第1タンク171A内の貯留液の液面の高さを判断する上限値TH1Aと、下限値TH2Aが設定されている。上限値TH1Aは、例えば、第1洗浄液供給口191Aの位置から所定の距離だけ下方となる位置に設定されている。下限値TH2Aは、上限値TH1Aよりも下方となる位置に設定されている。同様に、第2タンク171B内の貯留液の液面の高さを判断する上限値TH1Bと、下限値TH2Bが設定されている。本実施例では、第1及び第2タンク171A,171Bは、同様の構成となっている。このため、上限値TH1A,TH1Bは互いに同一の高さであり、下限値TH2A,TH2Bは互いに同一の高さである。
【0054】
制御装置28は、回路基板151の生産を開始する前に、第1タンク171A内の金属インク181の液面の高さが下限値TH2Aを下回る第1条件、及び、第2タンク171B内の金属インク181の液面の高さが下限値TH2Bを下回る第2条件のうち、少なくとも一方の条件が成立した場合、金属インク181の補充を促す。制御装置28は、例えば、第1及び第2条件の少なくとも一方の条件が成立した場合、生産を開始する前に、「金属インクを補充して下さい」といったメッセージをタッチパネル139に表示する。尚、以下の説明では、「金属インク181の液面の高さが下限値TH2Aを下回る」といった表現を、単に、「金属インク181が下限値TH2Aを下回る」といった表現で記載する場合がある。
【0055】
あるいは、制御装置28は、回路基板151の生産を開始する前に、生産予定の回路基板151における金属インク181の使用量等に基づいて、生産中に第1及び第2条件の少なくとも一方の条件が成立すると予想される場合、回路基板151の生産を開始する前に補充を促しても良い。また、制御装置28は、回路基板151の生産中に、上記した第1及び第2条件の少なくとも一方の条件が成立した場合、次回の生産を開始するまでに金属インク181の補充を促しても良い。このため、下限値TH2A,TH2Bとしては、仮に、生産の開始と同時に金属インク181が下限値TH2A,TH2Bに到達したとしても、回路基板151の1回の生産を完了できるだけの金属インク181の量を確保できる値が好ましい。下限値TH2A,TH2Bとしては、1回の生産で使用する金属インク181の平均使用量、最小使用量、又は最大使用量等を設定できる。換言すれば、第1及び第2タンク171A,171Bの両方に、下限値TH2A,TH2Bの金属インク181が貯留されていれば、回路基板151の1回の生産が可能となる。
【0056】
尚、上記した下限値TH2A,TH2Bの設定基準や使用目的は、一例である。例えば、第1印刷部72が第1液体センサ213Aだけを備える場合、制御装置28は、第1液体センサ213Aと下限値TH2Aだけを用いて金属インク181の補充を通知するか判断しても良い。また、制御装置28は、回路基板151の生産中に、金属インク181の補充を通知しても良い。また、基板形成装置10が金属インク181を自動で補充できる場合、制御装置28は、回路基板151の生産中や生産後において、金属インク181が下限値TH2A,TH2Bを下回ったことに基づいて、金属インク181を自動で補充しても良い。
【0057】
また、下限値TH2A,TH2Bは、貯留液の循環動作においても活用される。例えば、ユーザは、上記したインク供給路179から金属インク181を第1タンク171Aに補充する作業を完了させると、補充が完了した旨の操作をタッチパネル139で実行する。制御装置28は、このタッチパネル139に対する操作に基づいて、第1タンク171Aに補充された金属インク181を、第1タンク171Aと第2タンク171Bの間で循環させる。この際、制御装置28は、例えば、第1タンク171Aから第2タンク171Bへ金属インク181を送る際、第1タンク171A内の金属インク181が下限値TH2Aとなるまで送る。制御装置28は、金属インク181が下限値TH2Aに到達すると、第1タンク171Aを大気圧から負圧に切り替え、第2タンク171Bを負圧から大気圧に切り替える。制御装置28は、この循環動作を数回実行した後、第1及び第2タンク171A,171Bの両方を負圧にする。第1及び第2タンク171A,171Bを同じ負圧にすることで、金属インク181は、第1及び第2タンク171A,171Bの両方に同じ量だけ貯留される。これにより、金属インク181の補充が完了する。尚、制御装置28は、金属インク181の循環に限らず、洗浄液197の循環や、金属インク181と洗浄液197の混合液の循環においても上記した下限値TH2A,TH2Bを用いた循環の制御を実行しても良い。
【0058】
また、制御装置28は、例えば、第1タンク171A内の貯留液の高さが上限値TH1Aを上回る第3条件、及び、第2タンク171B内の貯留液が上限値TH1Bを上回る第4条件のうち、少なくとも一方の条件が成立した場合、貯留液を排出(パージ)する。第3及び第4条件を判断するタイミングとしては、金属インク181が補充された後のタイミングや、回路基板151の生産を開始する指示を受け付けた後から開始するまでのタイミングを採用できる。例えば、制御装置28は、上記した補充が完了した旨のタッチパネル139の操作を受け付けると、第1タンク171A内の金属インク181が上限値TH1A以上であるか判断する。制御装置28は、金属インク181が上限値TH1A以上である場合、ノズル電磁弁201Aを開いて第1タンク171Aを正圧にし、液面の高さが上限値TH1A未満となるまで金属インク181をノズル209から排出する。同様に、例えば、洗浄液197を第1タンク171Aに供給した後、第1タンク171A内の洗浄液197が上限値TH1A以上である場合、制御装置28は、洗浄液197を排出する。また、制御装置28は、例えば、回路基板151の生産を開始する指示を、タッチパネル139を受け付けた場合に、第1タンク171A内の金属インク181が上限値TH1A以上であるか判断し、上限値TH1A以上である場合、排出を実行しても良い。
【0059】
貯留液の排出先は、特に限定されないが、例えば、貯留液を排出するボックスを第1印刷部72に設けても良い。第1印刷部72のインクジェットヘッド76は、例えば、一定の範囲でスライド移動可能となっており、回路基板151を形成する領域と、貯留液を排出する位置とに移動可能となっている。そして、この貯留液を排出する位置に、上記したボックスを設置し、排出動作に応じてインクジェットヘッド76を排出する位置に移動させても良い。あるいは、貯留液を排出するボックスや、そのボックスに繋がる排出口を、基台60に設けても良い。
【0060】
また、上記した上限値TH1A,TH1B、下限値TH2A,TH2Bの活用方法は、一例である。例えば、上限値TH1A,TH1Bを、貯留液の循環動作において活用しても良い。制御装置28は、例えば、第1タンク171Aから第2タンク171Bへ貯留液を送る際、第2タンク171B内の貯留液が上限値TH1Bとなるまで送っても良い。また、制御装置28は、例えば、第1タンク171Aから第2タンク171Bへ貯留液を送る際、第1タンク171Aの貯留液が下限値TH2Aとなり送る動作を停止した後、第2タンク171Bの貯留液が上限値TH1B以上になっていた場合、第2タンク171Bの貯留液を上限値TH1Bまで排出しても良い。
【0061】
(第1及び第2タンク171A,171Bの洗浄について)
図6は、第1及び第2タンク171A,171Bを洗浄する処理のフローチャートを示している。制御装置28は、金属インク181を排出した後、洗浄液197によってタンクの洗浄を実行する。ここで、金属インク181は、使用期限が設定されている場合がある。この使用期限が過ぎると、印刷精度や形成した金属配線157の電気的特性が低下する虞がある。例えば、金属インク181は、ロットごとに使用期限が決められている。ここでいうロットの使用期限とは、例えば、金属インク181を製品として販売する単位ごとの使用期限であり、タンクに詰めて販売されている場合は、タンクごとに設定された使用期限である。制御装置28は、金属インク181の補充時に、補充する金属インク181の使用期限を受け付ける。ユーザは、タッチパネル139を操作して、補充する金属インク181が入ったタンクの使用期限を入力する。制御装置28は、例えば、補充された金属インク181を使い切るまでに使用期限が経過すると、
図6に示す処理を開始し、金属インク181を排出して、洗浄液197によって洗浄する。あるいは、制御装置28は、回路基板151の生産中に使用期限が経過することが、生産前に予想される場合、
図6の処理を開始しても良い。本願では、金属配線157を形成するために金属インク181を吐出する動作と区別するため、金属インク181を廃棄・取り出すために第1及び第2タンク171A,171B内から出すことを、排出と記載する。
【0062】
尚、既に、第1及び第2タンク171A,171Bに金属インク181が貯留されており、継ぎ足しで補充する場合は、既に貯留されている金属インク181の使用期限を優先しても良い。例えば、制御装置28は、第1及び第2タンク171A,171B内の金属インク181を全て排出した後に補充される場合には、使用期限を受け付けて使用期限の情報を更新し、継ぎ足しで補充される場合は使用期限を更新しなくとも良い。
【0063】
また、
図6の処理を開始する条件は、上記した使用期限の経過に限らない。例えば、金属インク181は、常温常圧下で、乾燥が進行してしまう虞がある。このため、金属配線157を形成しない時間が長くなると、インクジェットヘッド76のノズル209内の金属インク181が乾燥し、銀微粒子がノズル209に固着する虞がある。その結果、吐出不良が発生し、金属配線157を適切に造形できなくなる虞がある。引いては、インクジェットヘッド76の故障が発生し交換する必要が生じる。従って、制御装置28は、タンク内の金属インク181の未使用期間が長くなるといった、金属インク181が乾燥する虞がある場合、
図6の処理を開始しても良い。
【0064】
例えば、
図5に示すように、第1及び第2タンク171A,171Bにおいて、金属インク181が、上限値TH1A,TH1Bと下限値TH2A,TH2Bとの間となる量だけ貯留された状態で、現在日時が金属インク181の使用期限に到達したとする。
図6に示すように、制御装置28は、まず、ステップ(以下、単にSと記載する)1において、金属インク181を下限値まで排出(パージ)する。
【0065】
制御装置28は、第1電磁弁187A,187B(
図4参照)の両方を開き、正圧ポンプ173から第1及び第2タンク171A,171Bの両方に正圧を供給する。また、制御装置28は、ノズル電磁弁201A,201Bの両方を開く。尚、第4電磁弁193は閉じられている。これにより、
図7に示すように、第1及び第2タンク171A,171Bの両方の金属インク181は、ノズル209から排出される。従って、制御装置28は、金属インク181の排出を、第1及び第2タンク171A,171Bで同時に開始し実行する。制御装置28は、第1液体センサ213Aの検出信号に基づいて第1タンク171Aの金属インク181が下限値TH2Aになると、第1電磁弁187A及びノズル電磁弁201Aを閉じる。同様に、制御装置28は、第2タンク171Bの金属インク181が下限値TH2Bになると、第1電磁弁187B及びノズル電磁弁201Bを閉じる。
【0066】
上記したように、金属インク181が貯留された状態では、第1及び第2タンク171A,171Bは、同一の負圧が供給され、同じ量の金属インク181が貯留される。また、排出において第1及び第2タンク171A,171Bに、同時に同一の正圧の供給を開始するため、第1及び第2タンク171A,171Bの金属インク181は、同時に下限値TH2A,TH2Bとなる。従って、制御装置28は、2つのタンクの排出を同時に開始し、第1及び第2液体センサ213A,213Bの検出信号に基づいて同時に停止させることができる。尚、制御装置28は、第1タンク171Aから金属インク181を排出する処理と、第2タンク171Bから金属インク181を排出する処理を個別に実行しても良い。例えば、制御装置28は、第1タンク171Aの排出を実行してから、第2タンク171Bの排出を実行しても良い。
【0067】
ここで、
図10は、比較例の金属インク181を排出する処理を示している。
図10に示すように、金属インク181を排出する場合に、第1及び第2タンク171A,171Bが空になるまで金属インク181を排出すると、ノズル209の吐出面に泡のかたまり217が発生する虞がある。これは、金属インク181の粘性が高いことで金属インク181の液滴がノズル209の吐出面に張り付き、正圧によりノズル209から排出するエアがその液滴に侵入することで、泡のかたまり217が発生すると考えられる。泡のかたまり217がノズル209に付着した状態でインクジェットヘッド76が移動すると、他のユニットに泡のかたまり217が付着することで機器の故障やセンサの誤動作などを生じさせる虞がある。そこで、本実施例の制御装置28は、S1で金属インク181を完全に排出せずに、下限値TH2A,TH2Bとなる量(本願の所定量の一例)だけ残して排出を中断し、洗浄液197を補充してから排出する。
【0068】
図8に示すように、制御装置28は、S1で下限値TH2A,TH2Bまでの金属インク181を残した後、第1及び第2タンク171A,171Bの各々に洗浄液197を供給する(S2)。制御装置28は、例えば、第1タンク171Aに洗浄液197を供給した後、第2タンク171Bに洗浄液197を供給する。尚、
図8は、第1タンク171Aに洗浄液197を供給している状態を示している。
【0069】
S2において、まず、制御装置28は、例えば、ノズル電磁弁201Aを閉じ、第2電磁弁188Aを開いて第1タンク171Aを負圧にする。また、制御装置28は、三方弁194を第1タンク171A側に切り替え、第4電磁弁193を開いて洗浄液タンク195から第1タンク171Aへ洗浄液197の供給を開始する。制御装置28は、予め設定された供給量だけ洗浄液197を第1タンク171Aへ供給する制御を実行する。具体的には、制御装置28は、例えば、第2電磁弁188Aを開き洗浄液197の供給を開始した時点から、予め設定された供給時間だけ経過すると、第2電磁弁188Aを閉じ供給を停止する。尚、供給時間の計測を開始するタイミングは、第2電磁弁188Aを開くタイミングに限らない。例えば、第2電磁弁188Aを開き洗浄液197の供給が開始され第1液体センサ213Aの検出値が増加、即ち、液面の高さの上昇が開始したタイミングから供給時間の計測を開始しても良い。また、制御装置28は、洗浄液タンク195から洗浄液197を供給する動作において、ノズル電磁弁201A,201Bを開いて、タンク内を負圧にしても良い。また、第1及び第2洗浄液供給口191A,191Bを、洗浄液タンク195と別々の流路で接続する構成の場合、洗浄液タンク195から第1及び第2タンク171A,171Bの両方に同時に洗浄液197を供給しても良い。
【0070】
上記したように、S2の洗浄液197を供給する目的は、第1及び第2タンク171A,171Bに貯留された金属インク181を希釈することであり、より具体的には、希釈後にタンク内が空になるまで排出しても泡のかたまり217が発生しない程度まで希釈することである。このため、S2で供給する洗浄液197の量は、泡のかたまり217が発生しない程度まで希釈できる量である。供給時間は、この量の洗浄液197を洗浄液タンク195から第1タンク171Aに供給するのに必要な時間である。
図8に示すように、例えば、洗浄液197を供給した後の金属インク181及び洗浄液197の混合液の液面の高さは、上限値TH1Aよりも下限値TH2Aに近い位置となる。換言すれば、洗浄液197の供給量は、以下の関係となる。
供給量<(上限値TH1A―下限値TH2A)/2
制御装置28は、第1タンク171Aへの洗浄液197の供給を停止した後、三方弁194を第2タンク171B側に切り替え、ノズル電磁弁201Bを閉じ、第4電磁弁193を開き、第2電磁弁188Bを開いて第2タンク171Bを負圧にして、上記した時間と同一の供給時間だけ、洗浄液タンク195から第2タンク171Bへ洗浄液197を供給する。例えば、第1及び第2タンク171A,171Bは、同量の洗浄液197が供給され、金属インク181を同じ濃度に希釈される。
【0071】
次に、制御装置28は、S3において、第1及び第2タンク171A,171Bの各々に貯留された貯留液(金属インク181と洗浄液197の混合液)を、タンクが空になるまで排出する(
図9参照)。制御装置28は、第1電磁弁187A,187Bの両方を開き、正圧ポンプ173から第1及び第2タンク171A,171Bの両方に正圧を供給し、ノズル電磁弁201A,201Bの両方を開く。制御装置28は、例えば、ノズル電磁弁201A等を開いた時点から、予め設定された第1排出時間だけ経過すると、第1電磁弁187A,187B、ノズル電磁弁201A,201Bを閉じ排出を停止する。この第1排出時間は、第1及び第2タンク171A,171Bが空になるまで貯留液を排出するのに必要な時間である。尚、第1排出時間の計測を開始するタイミングは、ノズル電磁弁201A,201Bを開くタイミングに限らない。例えば、第1液体センサ213Aの検出値が低下、即ち、液面の高さの下降を検出したタイミングから第1排出時間の計測を開始しても良い。後述する第2排出時間、第3排出時間についても同様である。
【0072】
ここで、上記したように、制御装置28は、S1において、下限値TH2A,TH2Bの金属インク181を残した状態で排出を停止する。これにより、排出を中断することで、ノズル209の吐出面に金属インク181の液滴が張り付くことや、その液滴にエアが入り込むことを抑制できる。そして、制御装置28は、第1及び第2タンク171A,171Bに洗浄液197を供給(S2)した後、第1及び第2タンク171A,171Bに残留させた金属インク181を、洗浄液197とともにノズル209から排出する(S3)。これにより、金属インク181を濃度が濃く粘性が高い状態のまま、タンクが空になるまで排出せずに、金属インク181の粘性などを下げた上で排出できる。ノズル209の吐出面に液滴が張り付きエアが入って泡のかたまり217が発生することを抑制できる。結果として、泡が他のユニットなどに付着することを抑制し、装置の故障の発生などを抑制できる。
【0073】
また、S2において洗浄液197を供給することで、第1及び第2タンク171A,171B内の金属インク181を希釈している。換言すれば、S2を実行した後に第1及び第2タンク171A,171Bに貯留される金属インク181と洗浄液197の混合液の粘性は、金属インク181の粘性に比べて低くなっている。これにより、希釈して粘性を下げてからS3で排出することで、ノズル209の吐出面に泡のかたまり217が発生することを、より確実に抑制できる。
【0074】
また、制御装置28は、S3において、金属インク181及び洗浄液197の両方を、第1及び第2タンク171A,171Bの両方から全て排出する。これにより、洗浄液197で希釈した金属インク181を、第1及び第2タンク171A,171Bからなくすことができる。希釈した後、1回の排出動作で、金属インク181をなくすことができる。ノズル209内の金属インク181が乾燥し、銀微粒子がノズル209に固着するなどの不具合の発生を抑制できる。
【0075】
また、制御装置28は、S1において、第1及び第2液体センサ213A,213Bの判断で用いる下限値TH2A,TH2Bとなる位置まで金属インク181を排出する。このように、センサの検出値を判断するための下限値TH2A,TH2Bを、金属インク181の排出にも流用することで、制御装置28の制御に必要なパラメータを減らすことができる。
【0076】
また、制御装置28は、回路基板151の生産を開始する前に、上記した第1及び第2条件のうち、少なくとも一方の条件が成立するか否かを判断する。そして、制御装置28は、第1及び第2条件のうち、少なくとも一方の条件が成立した場合、金属インク181を補充する必要があると判断し、タッチパネル139を介して補充を報知する。これにより、生産中に金属インク181が不足するといった事態の発生を抑制できる。特に、回路基板151の三次元積層造形では、1日などの長い時間を使って造形が行われる場合もあり、生産中に常にオペレータが基板形成装置10の前や監視装置の前にいるとは限らない。このため、可能であれば、生産の開始指示が出されるタイミング、即ち、オペレータがより確実に存在するタイミングで金属インク181の量を判断し、必要であれば補充を促すことは、オペレータの作業負担の軽減を図る点で、極めて有効である。そして、このような下限値TH2A,TH2Bを、金属インク181の排出制御にも流用することで、制御に必要なパラメータを減らすことができる。
【0077】
また、制御装置28は、S2において、予め設定された供給量だけ洗浄液197を第1及び第2タンク171A,171Bに供給する。これにより、供給量を管理することで、供給後の混合液が上限値TH1A,TH1Bを超えて第1及び第2洗浄液供給口191A,191Bに到達し逆流してしまうなどの不具合の発生を抑制できる。
【0078】
また、制御装置28は、S2において、予め設定された供給時間だけ洗浄液197を第1及び第2タンク171A,171Bに供給することで、予め設定された供給量だけ洗浄液197を供給する。これにより、供給時間を設定することで、S2で使用する洗浄液197の量を調整できる。換言すれば、金属インク181の希釈に使用する洗浄液197の量を適切な量に調整できる。ここでいう適切な量とは、上記した金属インク181の排出によって生じる泡のかたまり217が発生しない程度に、金属インク181を希釈できる最低限の量である。これにより、希釈に使用する洗浄液197の消費量を削減でき、引いては、ランニングコストの削減を図ることができる。
【0079】
尚、S2において、制御装置28は、時間(供給時間)を判断することで、予め設定された供給量の洗浄液197を供給できたか判断したが、時間以外の方法で供給量を判断しても良い。例えば、制御装置28は、S2において、貯留液が上限値TH1A,TH1Bとなるまで、洗浄液197を供給しても良い。これにより、S2で供給量を判断するパラメータとして、他の用途で用いる上限値TH1A,TH1Bを流用できる。また、上限値TH1A,TH1Bまで洗浄液197を供給しなくとも良い。例えば、上限値TH1A,TH1Bから所定の距離だけ下がった位置まで洗浄液197を供給しても良い。
【0080】
また、上記した通り、制御装置28は、金属インク181が補充された後や生産を開始する指示を受け付けた後に、第1タンク171A内の金属インク181の液面の高さが上限値TH1A以上であるか否かを判断する(本願の上限値判断工程の一例)。制御装置28は、液面の高さが上限値TH1A以上である場合、液面の高さが上限値TH1A未満となるまで金属インク181を排出する(本願の余剰分排出工程の一例)。上記したように、金属インク181の補充を手作業で実施する場合、補充中にタンク内の金属インク181の量を確認することが難しい場合がある。このため、金属インク181を上限値TH1A,TH1B以上まで補充してしまう可能性がある。その状態で第1印刷部72が動作を開始すると金属インク181が飛び跳ね第1及び第2レンズ215A,215Bに付着してしまう虞がある。結果として、第1及び第2液体センサ213A,213Bの誤検出が発生する虞がある。あるいは、飛び跳ねた金属インク181が第1及び第2洗浄液供給口191A,191Bや第1及び第2エア供給口185A,185Bまで飛び跳ねて金属インク181が逆流してしまう虞がある。結果として、各電磁弁に付着して誤動作を発生させる恐れがある。また、金属インク181を入れすぎるとタンクの水頭圧が高くなり金属インク181をノズル209から吐出する吐出態様が変化して、造形する金属配線157の電気的特性が低下する虞がある。そこで、制御装置28は、補充後や生産前に金属インク181が上限値TH1A,TH1B以上の場合、金属インク181を排出することで、上記した不具合の発生を抑制できる。さらに、このような上限値TH1A,TH1Bを、金属インク181の洗浄制御に流用することで、制御に必要なパラメータを減らすことができる。尚、制御装置28は、金属インク181が補充された後、及び生産を開始する前(生産を開始する指示を受け付けた後など)の少なくとも一方において、上記した上限値TH1A,TH1Bの判断や洗浄の処理を実行しても良い。
【0081】
また、制御装置28は、S1において、第1及び第2タンク171A,171Bから金属インク181を同時に排出する。また、制御装置28は、S3において、第1及び第2タンク171A,171Bから金属インク181及び洗浄液197を、同時に排出する。第1及び第2タンク171A,171Bから順番に排出する場合、第1タンク171Aの排出が完了した後、第1電磁弁187A,187Bを切り替えて、排出対象のタンクを第2タンク171Bに切り替える必要がある。これに対し、2つのタンクから同時に排出することで、第1電磁弁187A,187Bを切り替えずに排出を実行できる。尚、制御装置28は、第1及び第2タンク171A,171Bの貯留液を順番に排出しても良い。
【0082】
また、インクジェットヘッド76は、第1及び第2タンク171A,171Bを接続する第2ノズル流路207を備える。第1及び第2タンク171A,171Bの各々は、第2ノズル流路207を介して複数のノズル209に接続され、且つ、第2ノズル流路207を介して互いに接続されている。これにより、第1及び第2タンク171A,171Bを互いに接続する流路と、各タンクをノズル209に接続する流路とを、第2ノズル流路207として共通の流路にすることができる。インクジェットヘッド76に必要な流路の数を減らすことができる。また、2つのタンクの貯留液を同じノズル209から同時に排出することが可能となる。尚、インクジェットヘッド76は、第1タンク171A用のノズル209と、第2タンク171B用のノズル209とを別々に備える構成でも良い。
【0083】
次に、S3によって第1及び第2タンク171A,171Bは、空となるが、タンクの内壁には、金属インク181が付着している可能性がある。このため、制御装置28は、S3を実行した後、S4以降を実行し、洗浄液197により第1及び第2タンク171A,171Bの洗浄を実行する。
図6に示すように、制御装置28は、S3を実行した後、第1及び第2タンク171A,171Bの各々に洗浄液197を供給する(S4、
図11参照)。制御装置28は、S2と同様に、例えば、第1タンク171Aに洗浄液197を供給した後、第2タンク171Bに洗浄液197を供給する。尚、
図11は、第1タンク171Aに洗浄液197を供給している状態を示している。また、制御装置28は、S4において、S2とは異なり、第1及び第2タンク171A,171Bの両方に、上限値TH1A,TH1Bまで洗浄液197を供給する。例えば、第1タンク171Aの場合であれば、制御装置28は、ノズル電磁弁201Aを閉じ、第2電磁弁188Aを開いて第1タンク171Aを負圧にし、第1液体センサ213Aの検出信号に基づいて上限値TH1Aまで洗浄液197を供給する。上限値TH1A,TH1Bまで洗浄液197を貯留させることで、タンクの内壁のうち、金属インク181が付着している可能性が高い部分を洗浄液197で洗うことができる。供給後、第1及び第2タンク171A,171Bには、内壁等に付着していた金属インク181が混ざった洗浄液197が貯留される。以下の説明(S5~S10)では、説明の便宜上、このタンクに付着した金属インク181が混ざった洗浄液197を、単に洗浄液197と記載する場合がある。
【0084】
次に、制御装置28は、S3と同様に、第1及び第2タンク171A,171Bの洗浄液197を、タンクが空になるまで排出する(S5、
図12参照)。制御装置28は、例えば、両タンクに正圧を供給しノズル電磁弁201A,201Bを開き、洗浄液197の排出を開始する。制御装置28は、ノズル電磁弁201A等を開いた時点から、予め設定された第2排出時間だけ経過すると、第1電磁弁187A,187B、ノズル電磁弁201A,201Bを閉じ排出を停止する。この第2排出時間は、上限値TH1A,TH1Bまで貯留した洗浄液197を、第1及び第2タンク171A,171Bが空になるまで排出するのに必要な時間である。
【0085】
制御装置28は、S5を実行した後、S4及びS5の処理を、予め設定された第1回数だけ実行したか否かを判断する(S6)。制御装置28は、S4及びS5の実行回数が第1回数未満である場合(S6:NO)、S4からの処理を実行する。これにより、S4及びS5の処理が第1回数だけ繰り返し実行される。第1回数は、後述するS7以降の循環動作において送り合う洗浄液197に泡が発生することを抑制できる程度に、タンク内に付着した金属インク181を予め洗い流せる回数であり、例えば、2回である。尚、制御装置28は、S4及びS5の処理を1回だけ実行する構成でも良い。この場合、制御装置28は、S5を実行した後、S6を実行せずに、後述するS7を実行しても良い。
【0086】
制御装置28は、S4及びS5の実行回数が第1回数以上になると(S6:YES)、第1タンク171Aのみに洗浄液197を供給する(S7)。S5を実行することで第1及び第2タンク171A,171B内は、空となっている。制御装置28は、S7において、例えば、ノズル電磁弁201Aを閉じ、第2電磁弁188Aを開いて第1タンク171Aを負圧にし、第1液体センサ213Aの検出信号に基づいて上限値TH1Aまで洗浄液197を第1タンク171Aに供給する(
図11参照)。
【0087】
次に、制御装置28は、第1タンク171Aに供給した洗浄液197を、第1及び第2タンク171A,171B間で循環させる(S8)。制御装置28は、第1タンク171Aを大気圧にし、第2タンク171Bを負圧にして、第1タンク171Aから第2タンク171Bへ洗浄液197を送る(
図13の上図参照)。制御装置28は、例えば、第1タンク171A内の洗浄液197が下限値TH2Aになるまで洗浄液197を第2タンク171Bへ送る。その後、制御装置28は、大気圧と負圧を切り替えて、同様に、下限値TH2Bまで、第2タンク171Bから第1タンク171Aへ洗浄液197を送る(
図13の下図参照)。制御装置28は、
図13に示す循環動作を数回(例えば3回)実行する(S8)。尚、S8の循環動作の回数は1回でも良い。
【0088】
次に、制御装置28は、S5と同様に、タンクが空になるまで洗浄液197を排出する(S9、
図12参照)。制御装置28は、例えば、所定回数だけ循環動作を実行した後、第1及び第2タンク171A,171Bの両方を負圧にし、その状態を一定時間だけ維持する。これにより、第1及び第2タンク171A,171Bには、同量の洗浄液197が貯留される。その後、制御装置28は、両タンクに正圧を供給しノズル電磁弁201A,201Bを開き、洗浄液197の排出を開始する。制御装置28は、ノズル電磁弁201A等を開いた時点から予め設定された第3排出時間だけ経過すると、第1電磁弁187A等を閉じ排出を停止する。この第3排出時間は、S7で第1タンク171Aだけに供給した洗浄液197を、第1及び第2タンク171A,171Bが空になるまで排出するのに必要な時間である。第3排出時間は、上記したように、循環動作後に負圧を供給し両タンクに洗浄液197を均等に分けてから排出を開始する場合は、各タンクに分配した洗浄液197を排出するのに必要な時間である。また、循環動作後に両タンクに負圧を加えず、一方のタンクに洗浄液197が偏った状態のまま排出を開始する場合は、洗浄液197をより多く貯留しているタンク内の洗浄液197を全て排出するのに必要な時間である。
【0089】
制御装置28は、S9を実行した後、S7、S8及びS9の処理を、予め設定された第2回数だけ実行したか否かを判断する(S10)。制御装置28は、S7~S9の実行回数が第2回数未満である場合(S10:NO)、S7からの処理を実行する。これにより、S7~S9の処理を繰り返し実行し、タンク内だけでなく、インクジェットヘッド76(第2ノズル流路207など)内に付着した金属インク181を洗浄できる。第2回数は、例えば、2回である。尚、制御装置28は、S7~S9の処理を1回だけ実行する構成でも良い。
【0090】
制御装置28は、S7~S9の実行回数が第2回数以上になると(S10:YES)、
図6に示す処理を終了する。その後、制御装置28は、洗浄した第1及び第2タンク171A,171B内やインクジェットヘッド76内の乾燥を防ぐため、例えば、第1タンク171Aに洗浄液197を上限値TH1Aまで供給し、第1及び第2タンク171A,171Bを負圧にして、両タンク内及びインクジェットヘッド76内を洗浄液197で満たした状態を維持する。その後、制御装置28は、例えば、回路基板151の生産の開始に合わせて、貯留していた洗浄液197を排出させ、金属インク181を第1及び第2タンク171A,171Bに供給して金属配線157の形成を実行する。
【0091】
ここで、S3で金属インク181を排出した後、S4~S6を実行せずに、S7からS9を実行すると、タンク間で洗浄液197を循環させた場合に、洗浄液197に含まれる金属インク181の濃度が高く、混合液の粘性が高くなると、送り出しのエアで発生した泡が弾けた際に混合液が広く飛び散る虞がある。あるいは、S2からS6を実行せずに、S1において第1及び第2タンク171A,171Bが空になるまで金属インク181を排出して、S7からS9を実行した場合にも、混合液の粘性が高くなって混合液が飛散する虞がある。即ち、循環動作における混合液の粘性が高い場合、混合液に空気が入り混むと、発生した泡が弾けた際に混合液が広く飛散する虞がある。
図14は、比較例の循環動作を示しており、上記した循環動作において泡が発生した状態を示している。例えば、S3の直後に実行する1回目の循環動作では、タンク内やインクジェットヘッド76内に金属インク181が多く付着している可能性があり、インク供給路179内の金属インク181の濃度が高くなる。
【0092】
例えば、第1タンク171Aから第2タンク171Bへ洗浄液197を送る際に、第1タンク171Aが空になるまで送ると、エアを送り出すこととなり、第2タンク171B内の洗浄液197に泡が発生する。本実施例では、制御装置28は、第1タンク171A内の洗浄液197が下限値TH2Aになるまで、洗浄液197を第2タンク171Bへ送る。このため、循環動作において相手側のタンクへエアを送り出す可能性は低いが、正圧の瞬間的な上昇、第1及び第2液体センサ213A,213Bの故障、S7で供給した洗浄液197の量が少なかった場合など、何らかの不具合が生じた場合、エアが入り混んで泡が弾ける可能性がある。そして、洗浄液197中の金属インク181の濃度が高い場合、循環させるために供給したエアが発生した泡に入り混み、
図14に示すように、泡が弾けてタンク内に、洗浄液197や金属インク181が飛び散る可能性がある。飛び散った金属インク181等が、第1及び第2レンズ215A,215Bに付着する、あるいは、第1及び第2洗浄液供給口191A,191B等まで飛んで金属インク181等が逆流してしまう虞がある。そこで、本実施例では、S7以降で洗浄液197を循環させる前に、第1及び第2タンク171A,171B内を洗浄液197で予め洗浄する(S4~S6)ことで、上記した不具合の発生を抑制できる。
【0093】
また、本実施例では、制御装置28は、S4を実行した後にS5を実行するサイクルを、複数回実行している。これにより、洗浄液197の循環を実行する前に、2つのタンク内に付着した金属インク181をより確実に洗い流しておくことができる。
【0094】
また、S7において、制御装置28は、第1タンク171Aのみに洗浄液197を供給する一方、第2タンク171Bには供給しない。これにより、洗浄液197を一方のタンクのみに供給して循環を実行するため、S7で供給する洗浄液197の量の管理、即ち、循環に使用する洗浄液197の量の管理が容易となる。
【0095】
また、S4において、制御装置28は、上限値TH1A,TH1Bまで第1及び第2タンク171A,171Bに、洗浄液197を供給する。これにより、S4で供給量を判断するパラメータとして、上記した他の用途で用いる上限値TH1A,TH1Bを流用できる。
【0096】
また、S5において、制御装置28は、洗浄液197を、第1及び第2タンク171A,171Bから全て排出する。これにより、2つのタンク内に付着した金属インク181と混ざった洗浄液197を、循環させずに全て排出できる。
【0097】
また、制御装置28は、上記した通り、S1で排出を中断し、S2で金属インク181を洗浄液197で希釈し、S3で排出した上で、S4以降の洗浄を実行している。そして、制御装置28は、そのS4以降において、S7の循環前に、S4~S6の洗浄を実行している。これにより、タンク内の金属インク181をより確実に少なくした状態、又はなくした状態で洗浄液197を循環させた洗浄を行うことができる。
【0098】
また、制御装置28は、S5及びS9において、第1及び第2タンク171A,171Bから洗浄液197を同時に排出する。これにより、第1電磁弁187A,187Bを切り替えずに、1度に2つのタンクからまとめて排出できる。尚、制御装置28は、S5及びS9の少なくとも一方において、第1及び第2タンク171A,171Bの洗浄液197を順番に排出しても良い。
【0099】
また、制御装置28は、S8において、第1タンク171Aから第2タンク171Bへ洗浄液197を送る場合、第1タンク171Aに貯留された洗浄液197が下限値TH2Aになるまで送る。これにより、第1タンク171Aが空になるまで送らないことで、第2タンク171B内の洗浄液197にエアが入り混むことをより確実に抑制できる。
【0100】
因みに、上記実施例において、基板形成装置10は、造形装置の一例である。第1印刷部72は、本願の吐出装置の一例である。金属インク181は、金属含有液の一例である。第2ノズル流路207は、流路の一例である。第1液体センサ213A、第2液体センサ213Bは、液体センサの一例である。S1の処理は、第1排出工程、排出中断工程の一例である。S2の処理は、第1排出工程、第3洗浄液供給工程の一例である。S3の処理は、第1排出工程、混合液排出工程の一例である。S4の処理は、第1洗浄液供給工程、第1洗浄液供給処理の一例である。S5の処理は、第2排出工程、第2排出処理の一例である。S7の処理は、第2洗浄液供給工程、第2洗浄液供給処理の一例である。S8の処理は、洗浄液循環工程、洗浄液循環処理の一例である。S9の処理は、第3排出工程、第3排出処理の一例である。
【0101】
以上、上記実施例によれば以下の効果を奏する。
S1~S3で金属インク181を排出した後、第1及び第2タンク171A,171B間で洗浄液197を循環させて洗浄を行う際に、洗浄液197に含まれる金属インク181の濃度が高く、混合液の粘性が高くなった場合、送り出しのエアで泡が発生し泡が弾けて混合液が広く飛散する虞がある(
図14参照)。その結果、通常動作では付着しない部分(第1レンズ215Aや第1洗浄液供給口191Aなど)に金属インク181等が付着し不具合が発生する虞がある。これに対し、本実施例の一態様の制御装置28は、S1~S3を実行した後、第1及び第2タンク171A,171B間で洗浄液197を循環させる(S7以降)前に、第1及び第2タンク171A,171B内を洗浄液197で予め洗浄する(S4~S6)。これにより、S7以降で循環させる混合液に含まれる金属インク181の濃度を下げ、粘性を低くすることで、泡の発生や、金属インク181等が飛び跳ねることを抑制できる。
【0102】
尚、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記した
図6に示す処理の内容・順番等は、一例である。例えば、制御装置28は、S3の処理において、金属インク181及び洗浄液197を、2つのタンクから同時に排出せずに、順番に排出しても良い。あるいは、1度の排出で全ての貯留液を排出せずに、複数回に分けて排出しても良い。また、S2において、上限値TH1A,TH1Bよりも上で、第1及び第2洗浄液供給口191A,191Bよりも下となる位置まで洗浄液197を供給しても良い。
また、S4、S7において、制御装置28は、上限値TH1A,TH1Bよりも少なく、又は多く洗浄液197を供給しても良い。また、制御装置28は、S4、S7において洗浄液197の供給を停止するタイミングを、第1及び第2液体センサ213A,213Bの検出信号に基づいて判断せずに、S2と同様に、予め設定された供給時間に基づいて判断しても良い。
また、本願の第1排出工程として、
図6のS1で下限値TH2A,TH2Bまで金属インク181を排出し、タンク内の金属インク181を洗浄液197で希釈した後で(S2)、全ての貯留液を排出した(S3)。しかしながら、1回の排出処理で金属インク181を全て排出しても良い。即ち、S1~S3に替えて、第1及び第2タンク171A,171Bの両方に正圧を付与し、希釈されていない金属インク181を、第1及び第2タンク171A,171Bの両方から、1回の排出動作で全て排出する処理を実行しても良い。あるいは、S1を実行する前に、洗浄液197を第1及び第2タンク171A,171Bの両方に入れて希釈を実行し、第1及び第2タンク171A,171Bの両方から貯留液を全て排出しても良い。
また、S5、S9において、制御装置28は、洗浄液197を全て排出しなくとも良い。
また、S7において、制御装置28は、第1及び第2タンク171A,171Bの両方に洗浄液197を供給した後に、循環を実行しても良い。
【0103】
また、
図3に示す回路基板151の形状、電子部品163、金属配線157の数等は、一例である。
また、第1印刷部72は、金属インク181を貯留するタンク(第1及び第2タンク171A,171Bなど)を3つ以上備えても良い。そして、第1印刷部72は、3つ以上のタンクで金属インク181や洗浄液197を、排出・循環させても良い。
また、第1印刷部72は、第1及び第2液体センサ213A,213Bを備えない構成でも良い。
【0104】
また、基板形成装置10は、装着ユニット27を備えており、電子部品163の装着までを実行する構成であったが、装着ユニット27を備えなくとも良い。この場合、基板形成装置10は、電子部品163を装着する前の回路基板までの生産を実行しても良い。
また、各流路を切替える第1電磁弁187A,187B、第2電磁弁188A,188B、第3電磁弁189A,189B、第4電磁弁193、三方弁194、ノズル電磁弁201A,201Bは、電磁弁(ソレノイドバルブ)に限らず、例えば、モータを駆動して弁を駆動するタイプのものや、圧電素子を用いたピエゾバルブでも良い。また、空気圧式や油圧式のバルブでも良い。
また、第1印刷部72は、第1及び第2タンク171A,171Bの両方から金属インク181を吐出したが、一方から吐出させる構成でも良い。例えば、第1印刷部72は、第1タンク171Aのみから吐出する構成の場合、金属インク181を吐出する際、ノズル電磁弁201Bを閉じてノズル電磁弁201Aを開き、第1タンク171Aを負圧にする。また、制御装置28は、第1タンク171Aのインク量が減ってきた場合に、ノズル電磁弁201A,201Bを開き、第2タンク171Bから第1タンク171Aへ金属インク181を補充しても良い。
正圧ポンプ173と負圧ポンプ174は、1つの装置でも良い。即ち、第1印刷部72は、正圧と負圧の両方を供給できるポンプを備えても良い。
また、上記した実施例では、本願の金属含有液として金属インク181を採用したが、ディスペンサ106が吐出する導電性ペーストなど、他の金属含有液を採用しても良い。従って、本願の吐出装置は、インクジェットヘッドを備える構成に限らず、ディスペンサ(エアディスペンサやジェットディスペンサなど)を備える構成でも良い。
【0105】
尚、本開示の内容は、請求項に記載の従属関係に限定されない。例えば、請求項4において「請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法」を「請求項1から請求項3の何れか1項に記載の洗浄方法」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項6において「請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法」を「請求項1から請求項5の何れか1項に記載の洗浄方法」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項7において「請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法」を「請求項1から請求項6の何れか1項に記載の洗浄方法」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項8において「請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法」を「請求項1から請求項7の何れか1項に記載の洗浄方法」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項9において「請求項1又は請求項2に記載の洗浄方法」を「請求項1から請求項8の何れか1項に記載の洗浄方法」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。
【符号の説明】
【0106】
10 基板形成装置(造形装置)、28 制御装置、72 第1印刷部(吐出装置)、157 金属配線、171A 第1タンク、171B 第2タンク、181 金属インク(金属含有液)、197 洗浄液、207 第2ノズル流路(流路)、209 ノズル、213A 第1液体センサ(液体センサ)、213B 第2液体センサ(液体センサ)、TH1A,TH1B 上限値、TH2A,TH2B 下限値。