(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001202
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】金属キャスクの補修溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20241225BHJP
B23K 9/167 20060101ALI20241225BHJP
B23K 9/14 20060101ALI20241225BHJP
B23K 9/173 20060101ALI20241225BHJP
B23K 9/18 20060101ALI20241225BHJP
B23K 9/013 20060101ALI20241225BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20241225BHJP
G21C 19/02 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B23K31/00 D
B23K9/167 A
B23K9/14 Z
B23K9/173 A
B23K9/18 F
B23K9/013 C
B23K26/21 A
G21C19/02 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100670
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505428248
【氏名又は名称】リサイクル燃料貯蔵株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】平沼 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴也
(72)【発明者】
【氏名】川内 進司
(72)【発明者】
【氏名】菅野 智
(72)【発明者】
【氏名】小出 宏夫
(72)【発明者】
【氏名】多羅沢 湘
(72)【発明者】
【氏名】千葉 一憲
(72)【発明者】
【氏名】立花 歩
(72)【発明者】
【氏名】山本 海
【テーマコード(参考)】
4E001
4E168
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB01
4E001BB05
4E001BB07
4E001BB08
4E001BB09
4E168BA00
(57)【要約】
【課題】予熱処理を行うことなく、炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を補修溶接する金属キャスクの補修溶接方法を提供する。
【解決手段】金属キャスクの密封容器1を構成する炭素鋼製又は低合金鋼製の部材として、例えば二次蓋5及び胴2を補修溶接する方法であって、予熱処理を行わず、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属を用いて補修溶接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み原子燃料を収納する金属キャスクの密封容器を構成する炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を補修溶接する方法であって、
予熱処理を行わず、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属又はニッケル若しくはニッケル基合金の溶着金属を用いて、前記部材を補修溶接することを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
初層の1パス又は複数パスをティグ溶接又はレーザ溶接で行い、残層を被覆アーク溶接、炭酸ガスアーク溶接、ミグ溶接、マグ溶接、サブマージアーク溶接、又はセルフシールドアーク溶接で行うことを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項3】
請求項2に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
前記部材である蓋及び胴のうちの少なくとも一方にディスクグラインダ又はエアアークガウジングで開先を加工し、前記蓋及び前記胴を接合する補修溶接を行うことを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項4】
請求項3に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
前記蓋を前記胴に固定する締付ボルトが損傷したために前記蓋及び前記胴を接合する溶接部の機械強度は、損傷前の前記締付ボルトで得られた前記蓋を固定する荷重以上であることを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項5】
請求項4に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
前記補修溶接方法を行う場所とは異なる単数または複数の場所に、当該補修溶接方法の資機材を備えるステップと、
前記補修溶接を行う力量を有する人材情報が登録されたデータベースを設けるステップを備えたことを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項6】
請求項1に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
前記炭素鋼製の部材は、JIS G3118:2010で規定された中・常温圧力容器用炭素鋼鋼板又はJSME S NJ1-2012で規定された低温用炭素鋼鍛造品と同種材であることを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項7】
請求項1に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
前記低合金鋼製の部材は、JSME S NJ1-2012で規定された低温用合金鋼鍛造品と同種材であることを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項8】
請求項2に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
JIS Z3040-1995で規定された区分がF-8Aに該当して前記オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属が得られる被覆アーク溶接棒、又はJIS Z3040-1995で規定された区分がY-8に該当して前記オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属が得られる溶可材を使用することを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項9】
請求項7に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
JIS Z3040-1995で規定された区分がG-21又はG-22に該当するフラックスを使用することを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【請求項10】
請求項2に記載の金属キャスクの補修溶接方法において、
JIS Z3224:2010で規定されて前記ニッケル若しくはニッケル基合金の溶着金属が得られる被覆アーク溶接棒、又はJIS Z3334:2017若しくはJIS Z3335:2014で規定されて前記ニッケル若しくはニッケル基合金の溶着金属が得られる溶可材を使用することを特徴とする金属キャスクの補修溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み原子燃料を収納する金属キャスクの密封容器を構成する炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を補修溶接する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属キャスク構造規格(例えば非特許文献1参照)には、金属キャスクの密封容器を構成する部材の材料として、炭素鋼又は低合金鋼が規定されている。炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を溶接する方法においては、一般的に、同種(すなわち、炭素鋼又は低合金鋼)の溶着金属を用いることを前提とし、材料の化学成分や部材の寸法に応じて、低温割れの防止を目的とした予熱処理が行われる(例えば非特許文献2~5参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本機械学会、JSME S FA1-2007 「使用済燃料貯蔵施設規格 金属キャスク構造規格(2007年版)」
【非特許文献2】JIS B8265:2017 「圧力容器の構造 ― 一般事項」
【非特許文献3】JIS B8266:2003 「圧力容器の構造 ― 特定規格」
【非特許文献4】JIS B8267:2022 「圧力容器の設計」
【非特許文献5】JIS Z3183:2012 「炭素鋼及び低合金鋼用サブマージアーク溶着金属の品質区分」
【非特許文献6】接合・溶接技術Q&A1000編集委員会編、「接合・溶接技術Q&A1000」、1999年、整理番号Q10-1-2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属キャスクの運用にあたり、異常や災害などの何らかの理由で、炭素鋼製又は低合金鋼製の部材に損傷が生じた場合には、当該部材の強度健全性の確保のために可及的速やかな対応が求められる。その対応手段のひとつは補修溶接である。しかし、異常や災害などの状況によっては、予熱処理のための設備が無いか若しくは準備できない、又は狭隘で予熱処理を行うことができない場合が想定される。
【0005】
ここで、29-9(29Cr-9Ni)と呼ばれるステンレス鋼の溶着金属を用いれば、予熱処理を行うことなく、炭素鋼製又は低合金鋼製の材料を溶接できるという知見がある(例えば非特許文献6参照)。しかし、この知見によれば、適切な開先を取るとともに開先面にバタリングを行うことや、溶接部の内部応力を低減するためにピーニングを行うことなどの制限がある。
【0006】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、予熱処理を行うことなく、炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を補修溶接することを課題の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。本発明は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、使用済み原子燃料を収納する金属キャスクの密封容器を構成する炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を補修溶接する方法であって、予熱処理を行わず、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属又はニッケル若しくはニッケル基合金の溶着金属を用いて、前記部材を補修溶接する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予熱処理を行うことなく、炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を補修溶接することができる。
【0009】
なお、上記以外の課題、構成及び効果は、以下の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態における金属キャスクの密閉容器の補修溶接を表す断面図である。
【
図2】
図1の部分IIによる部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態における金属キャスクの密閉容器の補修溶接を表す断面図である。
【
図4】
図3の部分IVによる部分拡大断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態における金属キャスクの密閉容器の補修溶接を表す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の適用対象である金属キャスクについて説明する。
【0012】
金属キャスクは、使用済み原子燃料を収納して輸送又は貯蔵されるものである。金属キャスクは、輸送状態であれば、使用済み原子燃料を収納する円柱形状の密封容器1と、密封容器1の外側に取付けられた複数の緩衝体(図示せず)とを備える。金属キャスクの密封容器1は、輸送状態であれば、有底円筒状の胴2と、胴2の開口部に配置され、複数の締付ボルト3Aで固定された円盤状の一次蓋4と、胴2の開口部に且つ一次蓋4の外側に配置され、複数の締付ボルト3Bで固定された円盤状の二次蓋5と、胴2の開口部に且つ二次蓋5の外側に配置され、複数の締付ボルト3Cで固定された円盤状の三次蓋6とを備える(後述の
図3~
図6参照)。金属キャスクは、輸送状態から貯蔵状態への移行中、緩衝体が取外され、更に、三次蓋6が取外される(後述の
図1及び
図2参照)。
【0013】
金属キャスクの密封容器1を構成する部材(詳細には、胴2、一次蓋4、二次蓋5、又は三次蓋6)は、炭素鋼製又は低合金鋼製である。詳しく説明すると、炭素鋼製の部材は、JIS G3118:2010で規定された中・常温圧力容器用炭素鋼鋼板(詳細には、SGV410、SGV450、及びSGV480のうちのいずれか)又はJSME S NJ1-2012で規定された低温用炭素鋼鍛造品(詳細には、GLF1及びGLF2のうちのいずれか)と同種材である。低合金鋼製の部材は、JSME S NJ1-2012で規定された低温用合金鋼鍛造品(詳細には、GLF3)と同種材である。
【0014】
上述した炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を溶接する方法において、同種(すなわち、炭素鋼又は低合金鋼)の溶着金属を用いれば、低温割れを防止するための予熱処理が必要となる。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属を用いれば、予熱処理を行う必要がない。更に、本願発明者らの試験により、現地での溶接を考慮した開先加工方法と溶接法を選定すれば、ピーニングを行わなくとも、低温割れが生じず、十分な強度を確保できるという知見を得ている。本発明の金属キャスクの補修方法は、前述した知見によるものであり、その実施形態を説明する。
【0015】
本発明の第1の実施形態を、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態における金属キャスクの密閉容器の補修溶接を表す断面図である。
図2は、
図1の部分IIによる部分拡大断面図である。
【0016】
本実施形態は、例えば緩衝体及び三次蓋6が取外された金属キャスクにおいて異常や災害などの何らかの理由で損傷が生じた場合を想定し、金属キャスクの密封容器1を構成する炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を補修溶接するものである。詳細には、二次蓋5及び胴2を溶接部10で接合する補修溶接を行うものである。
【0017】
本実施形態の補修溶接方法では、まず、ディスクグラインダ又はエアアークガウジングを使用して、二次蓋5の外周部に適切な開先11を加工する。締付ボルト3Bと干渉する可能性があれば、締付ボルト3Bの間の領域のみ、開先11を加工する。なお、ディスクグラインダを使用する場合は、有意な熱変形が生じないものの、エアアークガウジングを使用する場合は、多大な熱が発生する。そのため、エアアークガウジングを使用する場合は、断続的に使用して、熱変形を抑えることが望ましい。
【0018】
次に、予熱処理を行わず、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属を用い、二次蓋5及び胴2を溶接部10で接合する補修溶接を行う。このとき、初層12の1パス又は複数パスを、溶接性に優れたティグ溶接又はレーザ溶接で行い、残層13を、1パス当りの溶着量が多い被覆アーク溶接、炭酸ガスアーク溶接、ミグ溶接、マグ溶接、サブマージアーク溶接又はセルフシールドアーク溶接で行う。詳しく説明すると、JIS Z3040-1995で規定された区分がF-8Aに該当してオーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属が得られる被覆アーク溶接棒、又はJIS Z3040-1995で規定された区分がY-8に該当してオーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属が得られる溶可材(但し、ワイヤを含む)を使用する。更に、JIS Z3040-1995で規定された区分がG-21又はG-22に該当するフラックスを使用してもよい。
【0019】
なお、締付ボルト3Bが損傷したために二次蓋5及び胴2を溶接部10で接合する補修溶接を行う場合であれば、溶接部10の機械強度は、損傷前の締付ボルト3Bで得られた二次蓋5を固定する荷重以上とする。溶接部10の機械強度は、開先11の深さdと幅(詳細には、開先11の深さ方向に直交する周方向の長さであり、開先11が周方向に断続する場合は積算した長さ)との積である開先11の面積と、溶着金属の材料強度とから求められる。
【0020】
上述した本実施形態によれば、予熱処理を行うことなく、炭素鋼製又は低合金鋼製の二次蓋5及び胴2を補修溶接することができる。また、ピーニングを行わなくとも、低温割れが生じず、十分な強度を確保することができる。また、全層をティグ溶接又はレーザ溶接で行う場合と比べ、溶接時間の大幅な短縮を図ることができる。したがって、可及的速やかな補修溶接を行うことができる。
【0021】
本発明の第2の実施形態を、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、本実施形態における金属キャスクの密閉容器の補修溶接を表す断面図である。
図4は、
図3の部分IVによる部分拡大断面図である。なお、第1の実施形態と同等の部分の説明は、適宜、省略する。
【0022】
本実施形態は、例えば緩衝体が取外された金属キャスクにおいて異常や災害などの何らかの理由で損傷が生じた場合を想定し、金属キャスクの密封容器を構成する炭素鋼製又は低合金鋼製の部材を補修溶接するものである。詳細には、三次蓋6及び胴2を溶接部10で接合する補修溶接を行うものである。
【0023】
本実施形態では、まず、ディスクグラインダ又はエアアークガウジングを使用して、三次蓋6及び胴2に適切な開先11を加工する。締付ボルト3Cと干渉する可能性があれば、締付ボルト3Cの間の領域のみ、開先11を加工する。
【0024】
次に、予熱処理を行わず、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属を用い、三次蓋6及び胴2を溶接部10で接合する補修溶接を行う。このとき、初層12の1パス又は複数パスを、ティグ溶接又はレーザ溶接で行い、残層13を、被覆アーク溶接、炭酸ガスアーク溶接、ミグ溶接、マグ溶接、サブマージアーク溶接又はセルフシールドアーク溶接で行う。
【0025】
なお、締付ボルト3Cが損傷したために三次蓋6及び胴2を溶接部10で接合する補修溶接を行う場合であれば、溶接部10の機械強度は、損傷前の締付ボルト3Cで得られた三次蓋6を固定する荷重以上とする。
【0026】
上述した本実施形態によれば、予熱処理を行うことなく、炭素鋼製又は低合金鋼製の三次蓋6及び胴2を補修溶接することができる。また、ピーニングを行わなくとも、低温割れが生じず、十分な強度を確保することができる。また、全層をティグ溶接又はレーザ溶接で行う場合と比べ、溶接時間の大幅な短縮を図ることができる。したがって、可及的速やかな補修溶接を行うことができる。
【0027】
本発明の第3の実施形態を、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態における金属キャスクの密閉容器の補修溶接を表す断面図である。なお、第1及び第2の実施形態と同等の部分の説明は、適宜、省略する。
【0028】
本実施形態は、例えば緩衝体が取外された金属キャスクにおいて異常や災害などの何らかの理由で損傷が生じた場合を想定し、金属キャスクの密封容器1を構成する部材を補修溶接するものである。詳細には、胴2の外側に損傷部7が生じた場合を想定し、胴2及び当て板8を溶接部10で接合する補修溶接を行うものである。
【0029】
本実施形態の補修溶接方法では、まず、胴2の損傷部7の周囲に塗膜が存在すれば、ディスクグラインダなどで塗膜を除去する。次に、胴2の損傷部7を覆うように、例えばオーステナイト系ステンレス鋼製の当て板8を配置する。次に、予熱処理を行わず、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属を用い、胴2及び当て板8を溶接部10で接合する補修溶接を行う。
【0030】
上述した本実施形態によれば、予熱処理を行うことなく、炭素鋼製又は低合金鋼製の胴2を補修溶接することができる。
【0031】
なお、第1~第3の実施形態においては、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属を用いる場合を例にとって説明したが、これに限られない。本願発明者らの試験により、溶接割れ感受性組成(Pcm)が小さな溶着金属を用いれば、本発明の課題を達成するという知見が得られている。そのため、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属に代えて、ニッケル若しくはニッケル基合金の溶着金属を用いてもよい。詳しく説明すると、JIS Z3224:2010で規定されてニッケル若しくはニッケル基合金の溶着金属が得られる被覆アーク溶接棒、又はJIS Z3334:2017若しくはJIS Z3335:2014で規定されてニッケル若しくはニッケル基合金の溶着金属が得られる溶可材(詳細には、溶可棒、ワイヤ、又は帯)を使用してもよい。なお、第3の実施形態において、ニッケル若しくはニッケル基合金の溶着金属を用いる場合であれば、同種(すなわち、ニッケル製若しくはニッケル基合金製)の当て板8を使用することが好ましい。
【0032】
また、第1~第3の実施形態においては、金属キャスクの密封容器1を構成する炭素鋼製又は低合金鋼製の部材として、胴2、二次蓋5、及び三次蓋6のうちのいずれかを補修溶接する場合を例にとって説明したが、これに限られず、他の部材を補修溶接してもよい。
【0033】
なお、異常や災害などが複数の場所で同時に発生する可能性を考慮し、上述した補修溶接方法を行う場所とは異なる単数または複数の場所に、補修溶接方法の資機材を備えておくことが非常に重要である。あわせて、補修溶接を行う力量を有する人材情報が登録されたデータベースを設けることも重要である。資機材及び人材を管理する機関又は部署を予め設けることにより、異常や災害などの発生時に迅速な対応が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 金属キャスクの密封容器
2 胴
3A,3B,3C 締付ボルト
4 一次蓋
5 二次蓋
6 三次蓋
10 溶接部
11 開先
12 初層
13 残層