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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012023
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】駆動用バッテリの脱落抑制装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20250117BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114543
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直龍
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA13
3D203BA03
3D203CA21
3D203CB08
3D203DB05
3D235AA01
3D235BB03
3D235DD35
3D235EE09
3D235EE13
3D235EE63
3D235FF42
3D235HH21
(57)【要約】
【課題】駆動用バッテリが車両から脱落することを抑制する脱落抑制装置を提供する。
【解決手段】駆動用バッテリ4のケーシング5、左側サイドレール21L及び右側サイドレール21R、ケーシング5に取り付けられ左側サイドレール21Lと当接可能な第1ストッパ71L、左側サイドレール21Lに取り付けられ車幅方向外側に突出する第1突出部72L、ケーシング5に取り付けられケーシング5を支持可能な第1支持部73L、ケーシング5に取り付けられ右側サイドレール21Rと当接可能な第2ストッパ71R、右側サイドレール21Rに取り付けられ車幅方向外側に突出する第2突出部72R、ケーシング5に取り付けられケーシング5を支持可能な第2支持部73Rを備え、第1ストッパ71Lが左側サイドレール21Lに当接すると第1突出部に第1支持部が係止され、第2ストッパが右側サイドレール21Rに当接すると第2突出部に第2支持部が係止される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される駆動用バッテリの脱落抑制装置であって、
前記駆動用バッテリのケーシングと、
前記車両の前後方向に延在する左側サイドレール及び右側サイドレールと、
前記ケーシングに取り付けられ、前記左側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の左側に移動すると前記左側サイドレールと当接可能な第1ストッパと、
前記左側サイドレールに取り付けられ、車幅方向外側に向かって突出する第1突出部と、
前記ケーシングに取り付けられ、前記第1突出部に係止されることで前記ケーシングを支持可能な第1支持部と、
前記ケーシングに取り付けられ、前記右側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の右側に移動すると前記右側サイドレールと当接可能な第2ストッパと、
前記右側サイドレールに取り付けられ、車幅方向外側に向かって突出する第2突出部と、
前記ケーシングに取り付けられ、前記第2突出部に係止されることで前記ケーシングを支持可能な第2支持部と、
を備え、
前記第1ストッパが前記左側サイドレールに当接したときは、前記第2突出部に前記第2支持部が係止され、
前記第2ストッパが前記右側サイドレールに当接したときは、前記第1突出部に前記第1支持部が係止される
ことを特徴とする駆動用バッテリの脱落抑制装置。
【請求項2】
車両に搭載される駆動用バッテリの脱落抑制装置であって、
前記駆動用バッテリのケーシングと、
前記車両の前後方向に延在する左側サイドレール及び右側サイドレールと、
前記ケーシングに取り付けられ、前記左側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の左側に移動すると前記左側サイドレールと当接可能な第1ストッパと、
前記第1ストッパから車幅方向外側に向かって突出する第1突出部と、
前記左側サイドレールに設けられ、前記第1突出部を係止することで前記ケーシングを支持可能な第1支持部と、
前記ケーシングに取り付けられ、前記右側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の右側に移動すると前記右側サイドレールと当接可能な第2ストッパと、
前記第2ストッパから車幅方向外側に向かって突出する第2突出部と、
前記右側サイドレールに設けられ、前記第2突出部を係止することで前記ケーシングを支持可能な第2支持部と、
を備え、
前記第1ストッパが前記左側サイドレールに当接したときは、前記第1突出部が前記第1支持部に係止され、
前記第2ストッパが前記右側サイドレールに当接したときは、前記第2突出部が前記第2支持部に係止される
ことを特徴とする駆動用バッテリの脱落抑制装置。
【請求項3】
車両に搭載される駆動用バッテリの脱落抑制装置であって、
前記駆動用バッテリのケーシングと、
前記車両の前後方向に延在する左側サイドレール及び右側サイドレールと、
前記ケーシングに取り付けられ、前記左側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の左側に移動すると前記左側サイドレールと当接可能な第1ストッパと、
前記左側サイドレール外側で前記ケーシングに取り付けられ、前記左側サイドレールに向かって突出する第1突出部と、
前記左側サイドレールに設けられ、前記第1突出部が嵌入可能な第1開口部と、
前記ケーシングに取り付けられ、前記右側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の右側に移動すると前記右側サイドレールと当接可能な第2ストッパと、
前記右側サイドレール外側で前記ケーシングに取り付けられ、前記右側サイドレールに向かって突出する第2突出部と、
前記右側サイドレールに設けられ、前記第2突出部が嵌入可能な第2開口部と、
を備え、
前記第1ストッパが前記左側サイドレールに当接したときは、前記第2突出部が前記第2開口部に嵌入することにより前記右側サイドレールに前記第2突出部が係止されて前記ケーシングが支持され、
前記第2ストッパが前記右側サイドレールに当接したときは、前記第1突出部が前記第1開口部に嵌入することにより前記左側サイドレールに前記第1突出部が係止されて前記ケーシングが支持される
ことを特徴とする駆動用バッテリの脱落抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の大型の電動車両に用いて好適の駆動用バッテリの脱落抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境への負荷を低減する観点から、乗用車等の小型車両において、駆動用バッテリの電力をモータに供給することで走行する電気自動車やハイブリッド自動車や燃料電池車等の電動車両の開発が進んでいる。さらに、近年では、トラック等の大型車両の分野においても、電動車両の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-113063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乗用車等の小型車両の場合、駆動用バッテリは、車体の内部に搭載されることを前提としており、車両の衝突による衝撃荷重が駆動用バッテリに直接印加されないため、駆動用バッテリの筐体の耐荷重強度が比較的低く設定することが可能である。
【0005】
これに対して、トラック等の大型車両の場合、ラダーフレームの下方に駆動用バッテリが露出して配置されることがあり、駆動用バッテリの大きさによっては、駆動用バッテリがラダーフレームのサイドレールよりも車幅方向外側まで配置されることがある。この場合、車両側面に乗用車が衝突すると、駆動用バッテリに高い衝撃荷重が印加されうる。
【0006】
なお、駆動用バッテリがラダーフレームのサイドレールよりも車幅方向外側まで配置されない場合でも、ラダーフレームの下方に駆動用バッテリが露出している場合は、車両側面に乗用車などが衝突しサイドレール下方から駆動用バッテリに高い衝撃荷重が印加されうることも考えられる。
仮に、想定よりも大きな衝撃荷重が加えられた場合は、駆動用バッテリがラダーフレームから脱落する虞が考えられる。
【0007】
本件は、上記のような課題に着目して創案されたものであり、駆動用バッテリが車両から脱落することを抑制することができる駆動用バッテリの脱落抑制装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係る第1の駆動用バッテリの脱落抑制装置は、車両に搭載される駆動用バッテリの脱落抑制装置であって、前記駆動用バッテリのケーシングと、前記車両の前後方向に延在する左側サイドレール及び右側サイドレールと、前記ケーシングに取り付けられ、前記左側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の左側に移動すると前記左側サイドレールと当接可能な第1ストッパと、前記左側サイドレールに取り付けられ、車幅方向外側に向かって突出する第1突出部と、前記ケーシングに取り付けられ、前記第1突出部に係止されることで前記ケーシングを支持可能な第1支持部と、前記ケーシングに取り付けられ、前記右側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の右側に移動すると前記右側サイドレールと当接可能な第2ストッパと、前記右側サイドレールに取り付けられ、車幅方向外側に向かって突出する第2突出部と、前記ケーシングに取り付けられ、前記第2突出部に係止されることで前記ケーシングを支持可能な第2支持部と、を備え、前記第1ストッパが前記左側サイドレールに当接したときは、前記第2突出部に前記第2支持部が係止され、前記第2ストッパが前記右側サイドレールに当接したときは、前記第1突出部に前記第1支持部が係止されることを特徴としている。
【0009】
本適用例に係る第1の駆動用バッテリの脱落抑制装置によれば、ケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動した際に、第1突出部に第1支持部が係止されるか、あるいは、第2突出部に第2支持部が係止されることによって、ケーシングが何れかのサイドレールに係止され、ケーシングの脱落が抑制される。
【0010】
本適用例に係る第2の駆動用バッテリの脱落抑制装置は、車両に搭載される駆動用バッテリの脱落抑制装置であって、前記駆動用バッテリのケーシングと、前記車両の前後方向に延在する左側サイドレール及び右側サイドレールと、前記ケーシングに取り付けられ、前記左側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の左側に移動すると前記左側サイドレールと当接可能な第1ストッパと、前記第1ストッパから車幅方向外側に向かって突出する第1突出部と、前記左側サイドレールに設けられ、前記第1突出部を係止することで前記ケーシングを支持可能な第1支持部と、前記ケーシングに取り付けられ、前記右側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の右側に移動すると前記右側サイドレールと当接可能な第2ストッパと、前記第2ストッパから車幅方向外側に向かって突出する第2突出部と、前記右側サイドレールに設けられ、前記第2突出部を係止することで前記ケーシングを支持可能な第2支持部と、を備え、前記第1ストッパが前記左側サイドレールに当接したときは、前記第1突出部が前記第1支持部に係止され、前記第2ストッパが前記右側サイドレールに当接したときは、前記第2突出部が前記第2支持部に係止されることを特徴としている。
【0011】
本適用例に係る第2の駆動用バッテリの脱落抑制装置によれば、ケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動した際に、第1突出部が第1支持部に係止されるか、あるいは、第2突出部が第2支持部に係止されることによって、ケーシングが何れかのサイドレールに係止され、ケーシングの脱落が抑制される。
【0012】
本適用例に係る第3の駆動用バッテリの脱落抑制装置は、車両に搭載される駆動用バッテリの脱落抑制装置であって、前記駆動用バッテリのケーシングと、前記車両の前後方向に延在する左側サイドレール及び右側サイドレールと、前記ケーシングに取り付けられ、前記左側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の左側に移動すると前記左側サイドレールと当接可能な第1ストッパと、前記左側サイドレール外側で前記ケーシングに取り付けられ、前記左側サイドレールに向かって突出する第1突出部と、前記左側サイドレールに設けられ、前記第1突出部が貫入可能な第1開口部と、前記ケーシングに取り付けられ、前記右側サイドレールと対向するとともに前記ケーシングが前記車両の右側に移動すると前記右側サイドレールと当接可能な第2ストッパと、前記右側サイドレール外側で前記ケーシングに取り付けられ、前記右側サイドレールに向かって突出する第2突出部と、前記右側サイドレールに設けられ、前記第2突出部が貫入可能な第2開口部と、を備え、前記第1ストッパが前記左側サイドレールに当接したときは、前記第2突出部が前記第2開口部に嵌入することにより前記右側サイドレールに前記第2突出部が係止されて前記ケーシングが支持され、前記第2ストッパが前記右側サイドレールに当接したときは、前記第1突出部が前記第1開口部に嵌入することにより前記左側サイドレールに前記第1突出部が係止されて前記ケーシングが支持されることを特徴としている。
【0013】
本適用例に係る第3の駆動用バッテリの脱落抑制装置によれば、ケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動した際に、左側サイドレールに第1突出部が係止されるか、あるいは、右側サイドレールに第2突出部が係止されることによって、ケーシングが何れかのサイドレールに係止され、ケーシングの脱落が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本件によれば、ケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動した際に、ケーシングが何れかのサイドレールに係止され、バッテリの脱落が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る駆動用バッテリの支持装置及び駆動用バッテリの脱落抑制装置を、駆動用バッテリが車体へ組み付けられた状態で示す斜視図である。
図2図1に示す駆動用バッテリの支持装置及び駆動用バッテリの脱落抑制装置を、駆動用バッテリが車体へ組み付けられる前の状態で示す斜視図である。
図3図1の要部を抜き出して示す拡大斜視図である。
図4】第1実施形態に係る駆動用バッテリの脱落抑制装置を車体前方から見た状態で示す模式的な断面図であって、(a)はケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動する前の通常状態を示し、(b),(c)はケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動したときの脱落抑制状態を示し、(a),(b),(c)の各図において、右半部はケーシング前側部分の断面を示し、左半部はケーシング後側部分の断面を示す。
図5】第2実施形態に係る駆動用バッテリの脱落抑制装置を示す拡大斜視図であって、図3に対応する図である。
図6】第2実施形態に係る駆動用バッテリの脱落抑制装置を車体前方から見た状態で示す模式的な断面図であって、(a)はケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動する前の通常状態を示し、(b),(c)はケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動したときの脱落抑制状態を示し、(a),(b),(c)の各図において、右半部はケーシング前側部分の断面を示し、左半部はケーシング後側部分の断面を示す。
図7】第3実施形態に係る駆動用バッテリの脱落抑制装置を示す拡大斜視図であって、図3及び図5に対応する図である。
図8】第3実施形態に係る駆動用バッテリの脱落抑制装置を車体前方から見た状態で示す模式的な断面図であって、(a)はケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動する前の通常状態を示し、(b),(c)はケーシングが外部衝撃により車幅方向へ移動したときの脱落抑制状態を示し、(a),(b),(c)の各図において、右半部はケーシング前側部分の断面を示し、左半部はケーシング後側部分の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0017】
[1.第1実施形態]
まず、第1実施形態を説明する。
[1.1.構成]
[1.1-1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係る車両用バッテリパックの支持装置1(単に、支持装置1ともいう)は、車体の骨格をなすラダーフレーム2を備えた電動トラック3に搭載される。電動トラック3は、駆動用バッテリパック(「駆動用バッテリ」、単に、「バッテリパック」ともいう)4の電力を図示しない電動モータに供給することで走行する電動車両である。電動車両には、内燃機関を装備しない純粋な電気自動車のほかに、駆動源又は発電用の内燃機関を装備したハイブリッド車や燃料電池車も電動車両に含むものとする。また、電動トラック3については、「電動車両3」又は「車両3」とも言う。
【0018】
以下、電動トラック3の前後方向を車長方向D1ともいい、電動トラック3の左右方向を車幅方向D2ともいう。また、前後方向と左右方向とのいずれにも直交する上下方向を車高方向D3ともいう。図面では、前方を「FR」で示し、後方を「RR」で示し、左方を「LH」で示し、右方を「RH」で示し、上方を「UP」で示し、下方を「DW」で示す。なお、図4には、電動トラック3の下部構造を示しており、ラダーフレーム2の上方に配置される上部構造(ボデー)は省略している。
【0019】
ラダーフレーム2は、電動トラック3の骨格をなす部材であって、高い剛性及び強度を有する。ラダーフレーム2は、車長方向D1に延びる一対のサイドレール21,21(左右を区別しない場合は、符号「21」で示す)と、車幅方向D2に延びてサイドレール21同士を連結する複数のクロスメンバ22とを含む。
一対のサイドレール21は、車幅方向D2に互いに離間して配置される。各サイドレール21は、車長方向D1及び車高方向D3に沿う板状のウェブ部21aと、このウェブ部21aの上縁及び下縁から車幅方向D2の内側に向けて延出する一対の板状のフランジ部21b,21cとを有するチャネル形状(断面U字状)に形成される。
複数のクロスメンバ22は、車長方向D1に互いに離間して複数配置される。ここでは、バッテリパック4と車高方向D3において重なる位置、及びバッテリパック4よりも後方の位置の二か所にそれぞれ配置された二つのクロスメンバ22を例示する。
【0020】
バッテリパック4は、例えば乗用車に用いられる汎用の高電圧バッテリパックが適用される。電動トラック3において、バッテリパック4は、一対のサイドレール21の下方に搭載され、各サイドレール21よりも車幅方向D2の外側に突出している。ここでは、車高方向D3の寸法が車長方向D1及び車幅方向D2の各寸法よりも小さい(薄い)箱型のバッテリパック4を例示する。ただし、バッテリパック4の形状は特に限定されない。
【0021】
バッテリパック4は、車幅方向D2の外側にそれぞれ向く一対のバッテリ側面41(図1中に、左側のバッテリ側面41のみを示す)を有する。一対のバッテリ側面41は、一対のサイドレール21よりも車幅方向D2の外側にそれぞれ位置する。より具体的にいえば、右のバッテリ側面(図示略)は右のサイドレール21よりも右側に位置し、左のバッテリ側面41は左のサイドレール21よりも左側に位置する。
【0022】
バッテリパック4は、上記のようにバッテリ側面41がサイドレール21よりも車幅方向D2の外側に配置されることから、車幅方向D2の寸法がサイドレール21のウェブ部21a間の距離よりも大きく確保されている。これにより、バッテリパック4は大容量化が図られている。また、バッテリパック4は、電動トラック3の航続距離を確保するうえでは、前輪軸と後輪軸との間の広範囲にわたって配置されることが好ましい。比較的小型な(ホイールベースが比較的短い)電動トラック3では、一つのバッテリパック4がホイールベースのほぼ全域にわたって配置されうる。この場合、バッテリパック4の前方には前輪が近接して配置され、バッテリパック4の後方には後輪が近接して配置される。
【0023】
なお、電動トラック3のサイズ及びバッテリパック4の個数は、本実施形態の例示に限定されない。比較的大型の(ホイールベースが比較的長い)電動トラック3では、複数のバッテリパック4が車長方向D1に並んで設けられてもよい。この場合も、ホイールベースの広範囲にわたって複数のバッテリパック4が配置されることで、バッテリパック4全体としての大容量化が図られ、航続距離を確保できる。
【0024】
支持装置1は、バッテリパック4をサイドレール21に連結し、バッテリパック4を支持する。換言すれば、バッテリパック4は、支持装置1を介してサイドレール21に支持されている。本実施形態では、車幅方向D2の中心を通り車長方向D1に延在する鉛直面を対称面として、左右対称(面対称)に構成された支持装置1を例示する。
【0025】
図2に示すように、支持装置1は、バッテリパック4を収容するバッテリ側ブラケット(ケーシング)5と、バッテリ側ブラケット5及びサイドレール21(図4参照)を連結するフレーム側ブラケット(連結ブラケット)6とを含む。バッテリ側ブラケット5は、バッテリパック4の外周に配置される外壁体であって、バッテリパック4を衝撃荷重から保護する機能をもつ。一方、フレーム側ブラケット6は、サイドレール21から車幅方向D2の外側かつ下方へ延びており、バッテリ側ブラケット5に収容されたバッテリパック4をサイドレール21から吊り下げる機能をもつ。
【0026】
本実施形態のバッテリ側ブラケット5は、バッテリパック4の前縁部を覆うように配置されるメインブラケット(前ブラケット)7Fと、バッテリパック4の後縁部を覆うように配置されるメインブラケット(後ろブラケット)7Rと、バッテリパック4の右側縁部を覆うエンドクロスメンバ(右ブラケット)8Rと、バッテリパック4の左側縁部を覆うエンドクロスメンバ(左ブラケット)8Lと、を有する。
【0027】
なお、一対のメインブラケット7F,7Rは互いに同様の形状であり、これらを区別しない場合は、メインブラケット7又はブラケット7とも言う。また、一対のエンドクロスメンバ8R,8Lも互いに同様の形状であり、これらを区別しない場合は、単に、エンドクロスメンバ8、側縁部ブラケット8又はブラケット8とも言う。
【0028】
一対のメインブラケット7F,7Rの概略形状は、車幅方向D2の中心を通り車長方向D1に延在する鉛直面を対称面として互いに左右対称に形成される。メインブラケット7F,7R同士も互いに面対称に形成される。
一対の各エンドクロスメンバ8R,8Lも、車長方向D1の中心を通り車幅方向D2に延在する鉛直面を対称面として互いに前後対称に形成される。エンドクロスメンバ8R,8L同士も互いに面対称に形成される。
【0029】
本実施形態の各メインブラケット7F,7R及びエンドクロスメンバ8R,8Lはいずれも、鋼板で形成されており、チャネル形状に形成されている。バッテリ側ブラケット5は、これらのメインブラケット7F,7R及びエンドクロスメンバ8R,8Lにより、バッテリパック4の四方を囲むように配置される。
【0030】
また、本実施形態では、各メインブラケット7F,7R及びエンドクロスメンバ8R,8L(即ち、バッテリ側ブラケット5)の材料には、高張力鋼が用いられている。高張力鋼板は、例えば引張強度が490MPa以上で1000MPa未満と定義される鋼材であるが、薄肉化が可能であり、耐食性があるという利点があり、これを用いることで、バッテリ側ブラケット5、延いては、支持装置1を、耐荷重強度を高めつつ軽量化することができる。なお、支持装置1に要求される耐荷重強度は、車両が衝突側面衝突や前面衝突や後面衝突したときに、支持装置1が一定の突荷重を受けても、バッテリパック4のケースを損傷させるほどには変形しない程度の強度である。
【0031】
ただし、バッテリ側ブラケット5の材料はこれに限定されるものでなく、他の鋼材、或いは、鋼材以外の材料を適用してもよい。より引張強度が高い鋼材に、例えば引張強度が1000MPa以上と定義される超高張力鋼を用いればより軽量化が図れるが、現状では、超高張力鋼は、高張力鋼に比べて加工が困難であり、コスト増も招くので、本実施形態では高張力鋼を適用している。
なお、高張力鋼や超高張力鋼は、製造メーカなどにより定義が異なる場合がある。そのため、上記の490MPa以上や1000Mpaは、数値の目安として例示的に記載しているものである。
【0032】
図2に示すように、フレーム側ブラケット6は、メインブラケット7及びエンドクロスメンバ8が互いに重なり結合された重合部51の上部に、それぞれの下部が固定される。また、フレーム側ブラケット6は、図1に示すように、サイドレール21のウェブ部21aに固定される。フレーム側ブラケット6は、電動トラック3の左右(各サイドレール21の車幅方向D2の外側)に二つずつ(合計四つ)設けられる。
【0033】
図3は四つ(バッテリパック4の四隅)のフレーム側ブラケット6のうちの車両前方左側のフレーム側ブラケット6を代表的に例示する図1の拡大斜視図である。他のフレーム側ブラケット6も、この例示するフレーム側ブラケット6に対して、左右対称か、あるいは前後対称か、あるいは、左右対称且つ前後対称であって、同様に構成される。
【0034】
図3に示すように、各フレーム側ブラケット6は、バッテリ側ブラケット(ケーシング)5とサイドレール21とを繋ぐもので、バッテリ側ブラケット5に結合される第1部材61と、フレーム側のサイドレール21に結合される第2部材62と、第1部材61と第2部材62との間に介装されるインシュレータ63とからなる。
【0035】
第1部材61は、重合部51にボルト64で締結されるベースプレート部61aと、ベースプレート部61aの上方に形成されてインシュレータ63の一側を収容する断面略コ字状のインシュレータ当接部61bとを備えており、例えば板金を屈曲形成することで形成することができる。インシュレータ当接部61bのベースプレート部61aと接続する部分には、上方から下方に向け車幅方向の内側に傾斜する傾斜部61cが備えられる。
【0036】
また、第1部材61のベースプレート部61aと傾斜部61cとからなる空間内の両端部(車両前後方向両端部)には、補強プレート61dが介装される。インシュレータ当接部61bの傾斜部61cの上方の断面略コ字状の空間内の両端部(車両前後方向両端部)には、補強プレート61eが介装される。
【0037】
第2部材62は、インシュレータ63の他側を収容するボックス状のインシュレータ当接部62aと、インシュレータ当節部62aの両側に突設しサイドレール21にボルト65で結合されるフランジ状部62bとを備えており、例えば板金を屈曲形成することで形成することができる。
【0038】
なお、第1部材61のベースプレート部61aは、車幅方向外側2点、車幅方向内側1点の3点で、それぞれボルト64で重合部51に締結される。ただし、締結ボルト64の数や位置はこれに限定されない。例えば、車幅方向内側1点のボルト64は、ベースプレート部61aと傾斜部61cとからなる空間内の奥にあり、締結作業性が悪く蹄鉄作業の自動化が困難なため、省略することも考えられる。
【0039】
また、第2部材62の各フランジ状部62bは、上下方向に並んだ複数(ここでは4本)のボルト65でサイドレール21のウェブ部21aに縦横に規則的に並んで設けられた車両部品取付用孔21dを利用してそれぞれ締結される。ただし、締結ボルト65の数や位置はこれに限定されない。
【0040】
したがって、この支持構造によれば、フレーム側ブラケット6の第1部材61と第2部材62との間に介装されるインシュレータ63が変形しながら、車両3の振動のバッテリパック4への伝達を抑制する効果がある。しかし、この一方で、車両の側突時(側面衝突時)には、インシュレータ63が変形してフレーム側ブラケット6がサイドレール21から脱落する虞がある。
【0041】
ただし、例えば図4(b)又は図4(c)に示すように、左右のフレーム側ブラケット6の一方がサイドレール21から脱落しても、他方がサイドレール21に係止されていれば、バッテリパック4について一定の安全性を確保することができる。これに対して、全てのフレーム側ブラケット6がサイドレール21から脱落してしまうと、バッテリパック4が車両3から離れてしまうため、バッテリパック4についての安全性を確保することがでない。
そこで、車両3の側突時に、少なくとも図4(b)又は図4(c)に示すように、何れかのフレーム側ブラケット6がサイドレール21に係止され易くするために、本車両3には、駆動用バッテリの脱落抑制装置10Aが装備される。
【0042】
[1.1-2.駆動用バッテリの脱落抑制装置]
本脱落抑制装置10Aは、図1図4に示すように、車両左側において、バッテリパック4のケーシング5に取り付けられた第1ストッパ71Lと、左側サイドレール21Lに取り付けられて車幅方向外側に向かって突出する第1突出部72Lと、ケーシング5に取り付けられ、突出部72Lに係止されることでケーシング5を支持可能な第1支持部73Lと、を備えている。
【0043】
さらに、本脱落抑制装置10Aは、図1図3では省略するが、図4に示すように、車両右側において、バッテリパック4のケーシング5に取り付けられた第2ストッパ71Rと、右側サイドレール21Rに取り付けられて車幅方向外側に向かって突出する第2突出部72Rと、ケーシング5に取り付けられ、突出部72Rに係止されることでケーシング5を支持可能な第2支持部73Rと、を備えている。
【0044】
なお、以下の説明において、第1ストッパ71Lと第2ストッパ71Rとを区別しない場合は、ストッパ71と言い、第1突出部72Lと第2突出部72Rとを区別しない場合は、突出部72と言い、第1支持部73Lと第2支持部73Rとを区別しない場合は、支持部73と言う。
【0045】
本実施形態では、バッテリパック4の四隅のフレーム側ブラケット6のうちの車両前方左側のフレーム側ブラケット6の近傍に、第1ストッパ71Lと第1突出部72Lと第1支持部73Lとが設けられている。また、車両後方右側のフレーム側ブラケット6の近傍に、第2ストッパ71Rと第2突出部72Rと第2支持部73Rとが設けられている。なお、本実施形態では、ストッパ71については、車両前方右側の車両後方左側も含む、バッテリパック4の四隅の全てに装備されている。
【0046】
ただし、本脱落抑制装置10Aは、左側サイドレール21Lに対応してストッパ71と突出部72と支持部73とが設けられ、右側サイドレール21Rに対応してストッパ71と突出部72と支持部73とが設けられていればよい。つまり、車両前方左側と車両前方右側とのそれぞれにストッパ71と突出部72と支持部73とを設けてもよく、車両後方左側と車両前方右側とのそれぞれにストッパ71と突出部72と支持部73とを設けてもよく、車両後方左側と車両後方右側とのそれぞれにストッパ71と突出部72と支持部73とを設けてもよい。
【0047】
ストッパ71は、板金を断面(車両前方または後方から見た横断面)がL字状をなすように直角に屈曲加工したもので、ベース板部71aと、ベース板部71aから直角に起立しサイドレール21のフランジ部21cと当接可能なストッパ面部71bとを備えている。本実施形態では、補強のために、ベース板部71aとストッパ面部71bとの間の直角部分の両サイドに、三角プレート71cが接合されている。ベース板部71aをケーシング5にボルト等の締結部材によって締結され固定される。
【0048】
突出部72は、板金を断面(車両前方または後方から見た横断面)がL字状をなすように直角に屈曲加工したもので、ベース板部72aと、ベース板部72aから直角に起立し、サイドレール21のウェブ部21bから離隔する方向に突出した突出部本体72bとを備えている。ベース板部72aをサイドレール21のウェブ部21aにボルト等の締結部材によって締結され固定される。
【0049】
支持部73は、板金を断面(車両側方から見た横断面)がハット型をなすように各部を直角又は略直角に屈曲加工したもので、左右のウェブ部73a,73bと、各ウェブ部73a,73bの上端を繋ぐ頂面部73cと、各ウェブ部73a,73bの下端から外方へ屈曲形成されたフランジ部73d,73eとを備えている。各フランジ部73d,73eをケーシング5にボルト等の締結部材によって締結され固定される。ウェブ部73a,73b及び頂面部73cで囲まれた内部空間73fは、突出部72の突出部本体72bが進入できる大きさに設定されている。
【0050】
また、突出部72の突出部本体72bと支持部73との距離d2は、ストッパ71のストッパ面部71bとサイドレール21のフランジ部21cの先端部との距離d1に比べて十分に小さく設定されている。例えばケーシング5が車幅方向左側(図4(a)における右側)へ移動すると車幅方向左側においてストッパ71のストッパ面部71bとサイドレール21のフランジ部21cの先端部と当接するが、この過程で、車幅方向右側(図4(a)における左側)において、突出部72の突出部本体72bが支持部73の内部空間73f内に進入するようになっている。
【0051】
[1.2.作用及び効果]
本実施形態に係る脱落抑制装置10Aは、上記のように構成されているので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0052】
例えば図4(b)に示すように、車両3が車幅方向右側から側突を受けて、ケーシング5が車幅方向左側へ移動して、第1ストッパ71Lのストッパ面部71bが、左側サイドレール21Lのフランジ部21cの先端部に当接した際には、ケーシング5の車幅方向右側において、第2突出部72Rの突出部本体72bが第2支持部73Rの内部空間73f内に進入して、第2突出部72Rが第2支持部73Rを支持する。
この結果、ケーシング5の車幅方向右側が、第2突出部72R及び第2支持部73Rを介して右側サイドレール21Rに支持されることになり、駆動用バッテリパック4の車両3からの脱落が抑制される。
【0053】
また、図4(c)に示すように、車両3が車幅方向左側から側突を受けて、ケーシング5が車幅方向右側へ移動して、第2ストッパ71Rのストッパ面部71bが、右側サイドレール21Rのフランジ部21cの先端部に当接した際には、ケーシング5の車幅方向左側において、第1突出部72Lの突出部本体72bが第1支持部73Lの内部空間73f内に進入して、第1突出部72Lが第1支持部73Lを支持する。
この結果、ケーシング5の車幅方向左側が、第1突出部72L及び第1支持部73Lを介して左側サイドレール21Lに支持されることになり、駆動用バッテリパック4の車両3からの脱落が抑制される。
【0054】
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。
[2.1.構成]
[2.1-1.全体構成]
本実施形態では、駆動用バッテリの脱落抑制装置10Bを除く支持装置1等の全体構成は、図1図2を参照して説明した第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0055】
[2.1-2.駆動用バッテリの脱落抑制装置]
本脱落抑制装置10Bは、図5図6に示すように、車両左側において、バッテリパック4のケーシング5に取り付けられた第1ストッパ81Lと、第1ストッパ81Lから車幅方向外側に向かって突出する第1突出部82Lと、左側サイドレール21Lに設けられ、第1突出部82Lを係止することでケーシング5を支持可能な第1支持部83Lと、を備えている。本実施形態では、第1支持部83Lに左側サイドレール21Lの下側のフランジ部21cが用いられている。
【0056】
さらに、本脱落抑制装置10Bは、図5では省略するが、図6に示すように、車両右側において、バッテリパック4のケーシング5に取り付けられた第2ストッパ81Rと、第2ストッパ81Rから車幅方向外側に向かって突出する第2突出部82Rと、右側サイドレール21Rに設けられ、第2突出部82Rを係止することでケーシング5を支持可能な第2支持部83Rと、を備えている。本実施形態では、第2支持部83Rに右側サイドレール21Rの下側のフランジ部21cが用いられている。
【0057】
なお、以下の説明において、第1ストッパ81Lと第2ストッパ81Rとを区別しない場合は、ストッパ81と言い、第1突出部82Lと第2突出部82Rとを区別しない場合は、突出部82と言い、第1支持部83Lと第2支持部83Rとを区別しない場合は、支持部83と言う。
【0058】
本実施形態では、バッテリパック4の四隅のフレーム側ブラケット6のうちの車両前方左側のフレーム側ブラケット6の近傍に、第1ストッパ81Lと第1突出部82Lと第1支持部83Lとが設けられている。また、車両後方右側のフレーム側ブラケット6の近傍に、第2ストッパ81Rと第2突出部82Rと第2支持部83Rとが設けられている。なお、本実施形態では、ストッパ81については、車両前方右側の車両後方左側も含む、バッテリパック4の四隅の全てに装備されている。
【0059】
ただし、本脱落抑制装置10Aは、左側サイドレール21Lに対応してストッパ81と突出部82と支持部83とが設けられ、右側サイドレール21Rに対応してストッパ81と突出部82と支持部83とが設けられていればよい。つまり、車両前方左側と車両前方右側とのそれぞれにストッパ81と突出部82と支持部83とを設けてもよく、車両後方左側と車両前方右側とのそれぞれにストッパ81と突出部82と支持部83とを設けてもよく、車両後方左側と車両後方右側とのそれぞれにストッパ81と突出部82と支持部83とを設けてもよい。
【0060】
ストッパ81は、第1実施形態のものと同様に、板金を断面(車両前方または後方から見た横断面)がL字状をなすように直角に屈曲加工したもので、ベース板部81aと、ベース板部81aから直角に起立しサイドレール21のフランジ部21cと当接可能なストッパ面部81bとを備えている。本実施形態では、補強のために、ベース板部81aとストッパ面部81bとの間の直角部分の両サイドに、三角プレート81cが接合されている。ベース板部81aをケーシング5にボルト等の締結部材によって締結され固定される。
【0061】
突出部82は、ストッパ81のストッパ面部81bの上端部から車幅方向外側に向かって水平又は略水平に突出した平板状のものである。本実施形態では、ストッパ81を形成する板金を、ストッパ面部81bの上端部となる部分までよりも長く用意し、この部分をストッパ面部81bに対して直角又は略直角に屈曲形成することで、突出部82が形成されている。ただし、突出部82は、ストッパ81とは別体の材料で形成し、ストッパ81の要部に固定してもよい。また、突出部82は、平板状のものが好ましいがこれに限定されない。
【0062】
支持部83は、本実施形態では、サイドレール21の下側のフランジ部21cが適用されている。ただし、支持部83は、平又は略水平に位置する平板状のものであり、サイドレール21とは別体の材料で形成し、サイドレール21の要部に固定してもよい。また、支持部83は、平板状のものが好ましいがこれに限定されない。
【0063】
また、突出部82は、支持部83よりも一定量以上鉛直上方に配置されている。これにより、例えばケーシング5が車幅方向へ移動すると、突出部82が支持部83の上方に移動し、突出部82が支持部83に係止され支持されるようになっている。
【0064】
[2.2.作用及び効果]
本実施形態に係る脱落抑制装置10Bは、上記のように構成されているので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0065】
例えば図6(b)に示すように、車両3が車幅方向右側から側突を受けて、ケーシング5が車幅方向左側へ移動して、第1ストッパ81Lのストッパ面部81bが、左側サイドレール21Lのフランジ部21cの先端部に当接した際には、ケーシング5の車幅方向左側において、第1突出部82Lが第1支持部83Lの上方に進入して、第1突出部82Lが第1支持部83Lに係止され支持される。
この結果、ケーシング5の車幅方向左側が、第1突出部82L及び第1支持部83Lを介して左側サイドレール21Lに支持されることになり、駆動用バッテリパック4の車両3からの脱落が抑制される。
【0066】
また、図6(c)に示すように、車両3が車幅方向左側から側突を受けて、ケーシング5が車幅方向右側へ移動して、第2ストッパ81Rのストッパ面部81bが、右側サイドレール21Rのフランジ部21cの先端部に当接した際には、ケーシング5の車幅方向右側において、第2突出部82Rが第2支持部83Rの上方に進入して、第2突出部82Rが第2支持部83Rに係止され支持される。
この結果、ケーシング5の車幅方向右側が、第2突出部82R及び第2支持部83Rを介して右側サイドレール21Rに支持されることになり、駆動用バッテリパック4の車両3からの脱落が抑制される。
【0067】
[3.第3実施形態]
次に、第3実施形態を説明する。
[3.1.構成]
[3.1-1.全体構成]
本実施形態では、駆動用バッテリの脱落抑制装置10Bを除く支持装置1等の全体構成は、図1図2を参照して説明した第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0068】
[3.1-2.駆動用バッテリの脱落抑制装置]
本脱落抑制装置10Cは、図7図8に示すように、車両左側において、バッテリパック4のケーシング5に取り付けられた第1ストッパ91Lと、左側サイドレール21Lの外側でケーシング5に取り付けられ、左側サイドレール21Lに向かって突出する第1突出部92Lと、左側サイドレール21Lに設けられ、第1突出部92Lが嵌入可能な第1開口部93Lと、を備えている。
【0069】
さらに、本脱落抑制装置10Cは、図7では省略するが、図8に示すように、車両右側において、バッテリパック4のケーシング5に取り付けられた第2ストッパ91Rと、右側サイドレール21Rの外側でケーシング5に取り付けられ、右側サイドレール21Rに向かって突出する第2突出部92Rと、右側サイドレール21Rに設けられ、第2突出部92Rが嵌入可能な第2開口部93Rと、を備えている。
【0070】
なお、以下の説明において、第1ストッパ91Lと第2ストッパ91Rとを区別しない場合は、ストッパ91と言い、第1突出部92Lと第2突出部92Rとを区別しない場合は、突出部92と言い、第1開口部93Lと第2開口部93Rとを区別しない場合は、開口部93と言う。
【0071】
本実施形態では、バッテリパック4の四隅のフレーム側ブラケット6のうちの車両前方左側のフレーム側ブラケット6の近傍に、第1ストッパ91Lと第1突出部92Lと第1開口部93Lとが設けられている。また、車両後方右側のフレーム側ブラケット6の近傍に、第2ストッパ91Rと第2突出部92Rと第2開口部93Rとが設けられている。なお、本実施形態では、ストッパ91については、車両前方右側の車両後方左側も含む、バッテリパック4の四隅の全てに装備されている。
【0072】
ただし、本脱落抑制装置10Cは、左側サイドレール21Lに対応してストッパ91と突出部92と開口部93とが設けられ、右側サイドレール21Rに対応してストッパ91と突出部92と開口部93とが設けられていればよい。つまり、車両前方左側と車両前方右側とのそれぞれにストッパ91と突出部92と開口部93とを設けてもよく、車両後方左側と車両前方右側とのそれぞれにストッパ91と突出部92と開口部93とを設けてもよく、車両後方左側と車両後方右側とのそれぞれにストッパ91と突出部92と開口部93とを設けてもよい。
【0073】
ストッパ91は、第1実施形態のものと同様に、板金を断面(車両前方または後方から見た横断面)がL字状をなすように直角に屈曲加工したもので、ベース板部91aと、ベース板部91aから直角に起立しサイドレール21のフランジ部21cと当接可能なストッパ面部91bとを備えている。本実施形態では、補強のために、ベース板部91aとストッパ面部91bとの間の直角部分の両サイドに、三角プレート91cが接合されている。ベース板部91aをケーシング5にボルト等の締結部材によって締結され固定される。
【0074】
突出部92は、板金を断面(車両前方または後方から見た横断面)がL字状をなすように直角に屈曲加工した支持体94と、支持体94に支持された突出部本体95とから構成される。支持体94は、ベース板部94aと、ベース板部94aから直角に起立した起立部94bとを備えている。本実施形態では、補強のために、ベース板部94aと起立部94bとの間の直角部分の両サイドに、三角プレート94cが接合されている。突出部本体95は、起立部94bから対応するサイドレール21Lに向かって突設されている。本実施形態の突出部本体95は、軸状の軸部95aと、この軸部95aの先端に段差95cを介して拡径した先端部95bを備えている。先端部95bは、テーパ状に尖っている。ただし、突出部本体95は、軸状のものが好ましいがこれに限定されない。
【0075】
開口部93は、突出部本体95が貫入可能な内径の孔部であり、本実施形態では、サイドレール21に予め形成された多数の車両部品取付用孔21dの一つ(図7では、他の孔よりも太線で示している)が適用されている。ただし、開口部93は、サイドレール21とは別体の材料で形成し、サイドレール21の要部に固定した部材に形成してもよい。
【0076】
また、突出部本体95は、開口部93から離隔してはいるが、突出部本体95と開口部93との距離d3は、ストッパ91のストッパ面部91bとサイドレール21のフランジ部21cの先端部との距離d1に比べて十分に小さく設定されている。
さらに、軸状の突出部本体95は、突出部本体95の軸線の延長線上あるいはその近傍に開口部93が位置するように配置されている。
【0077】
したがって、例えばケーシング5が車幅方向左側(図8(a)における右側)へ移動すると車幅方向左側においてストッパ91のストッパ面部91bとサイドレール21のフランジ部21cの先端部と当接するが、この過程で、車幅方向右側(図8(a)における左側)において、突出部92の突出部本体95が開口部93内に貫入するようになっている。
【0078】
[3.2.作用及び効果]
本実施形態に係る脱落抑制装置10Cは、上記のように構成されているので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0079】
例えば図8(b)に示すように、車両3が車幅方向右側から側突を受けて、ケーシング5が車幅方向左側へ移動して、第1ストッパ91Lのストッパ面部91bが、左側サイドレール21Lのフランジ部21cの先端部に当接した際には、ケーシング5の車幅方向右側において、第2突出部92Rの突出部本体95が第2開口部93R内に貫入して、第2突出部92Rが第2開口部93Rを通じて右側サイドレール21Rに支持される。
この結果、ケーシング5の車幅方向右側が、第2突出部92R及び第2支持部93Rを介して右側サイドレール21Rに支持されることになり、駆動用バッテリパック4の車両3からの脱落が抑制される。
【0080】
また、図8(c)に示すように、車両3が車幅方向左側から側突を受けて、ケーシング5が車幅方向右側へ移動して、第2ストッパ91Rのストッパ面部91bが、右側サイドレール21Rのフランジ部21cの先端部に当接した際には、ケーシング5の車幅方向左側において、第1突出部92Lの突出部本体95が第1開口部93L内に貫入して、第1突出部92Lが第1開口部93Lを通じて左側サイドレール21Lに支持される。
この結果、ケーシング5の車幅方向左側が、第1突出部92L及び第1開口部93Lを介して左側サイドレール21Lに支持されることになり、駆動用バッテリパック4の車両3からの脱落が抑制される。
【0081】
[4.その他]
上記各実施形態の構成は一例であって、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
例えば、上記各実施形態では、駆動用バッテリの支持装置をトラックに適用した例を説明したが、本件の駆動用バッテリの支持装置は、トラック以外の車両に適用してもよい。
また、上記実施形態では、駆動用バッテリの支持装置をサイドレール21に連結してサイドレール21に支持させているが、サイドレール21以外の車両の構造要素に連結して支持させてもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、駆動用バッテリ4及び駆動用バッテリの支持装置1がサイドレール21に対し車幅方向外側まで配置される例を説明したが、本件の駆動用バッテリと駆動用バッテリの支持装置は、左右のサイドレール21間に収まっていても構わない。駆動用バッテリと駆動用バッテリの支持装置がサイドレール21よりも下方に突出している場合、側面衝突した乗用車などがサイドレール21の下方から駆動用バッテリの支持装置に衝撃を与えた場合などにも本発明の装置は駆動用バッテリへの衝撃を抑制する効果を有する。
【符号の説明】
【0083】
1 駆動用バッテリの支持装置(支持装置)
2 ラダーフレーム
3 電動トラック(電動車両、車両)
4 駆動用バッテリパック(駆動用バッテリ、バッテリパック)
5 バッテリ側ブラケット(ケーシング)
6 フレーム側ブラケット(連結ブラケット)
7F,7 メインブラケット(前ブラケット)
7R,7 メインブラケット(後ろブラケット)
8R,8 エンドクロスメンバ(右ブラケット)
8L,8 エンドクロスメンバ(左ブラケット)
10A,10B,10C 脱落抑制装置
21,21L,21R サイドレール
21a サイドレール21のウェブ部
21b,21c サイドレール21のフランジ部
21d 車両部品取付用孔
22 クロスメンバ
41 駆動用バッテリパックの側面
51 重合部
61 フレーム側ブラケット6の第1部材
61a ベースプレート部
61b インシュレータ当接部
61c 傾斜部
61d 補強プレート
61e 補強プレート
62 フレーム側ブラケット6の第2部材
62a インシュレータ当接部
62b フランジ状部
63 インシュレータ
64,65 ボルト
71,81,91 ストッパ
71a,81a,91a ベース板部
71b,81b,91b ストッパ面部
71c,81c,91c 三角プレート
71L,81L,91L 第1ストッパ
71R,81R,91R 第2ストッパ
72L,82L,92L 第1突出部
72R,82R,92R 第2突出部
72a ベース板部
72b 突出部本体
73L,83L 第1支持部
73R,83R 第2支持部
73a,73b ウェブ部
73c 頂面部
73d,73e フランジ部
73f 内部空間
93L 第1開口部
93R 第2開口部
94 支持体
94a ベース板部
94b 起立部
94c 三角プレート
95 突出部本体
95a 軸部
95b 先端部
95c 段部
d1 ストッパとサイドレールのフランジ部との距離
d2 突出部の突出部本体と支持部との距離
d3 突出部本体と開口部との距離
D1 車長方向
D2 車幅方向
D3 車高方向
FR 前方
RR 後方
LH 左方
RH 右方
UP 上方
DW 下方
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8