(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012025
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】交流溶接用電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20250117BHJP
B23K 9/073 20060101ALI20250117BHJP
B23K 9/10 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H02M3/28 H
B23K9/073 530
B23K9/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114547
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100206184
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 敦司
(74)【代理人】
【識別番号】100114834
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 慶司
(72)【発明者】
【氏名】森本 健次
【テーマコード(参考)】
4E082
5H730
【Fターム(参考)】
4E082BA02
4E082CA03
4E082DA01
4E082EA02
4E082EB14
4E082EE02
5H730AS01
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD16
5H730EE02
5H730EE03
5H730EE05
5H730EE13
5H730EE19
5H730FF09
(57)【要約】
【課題】変圧された高周波電力の整流及び交流化の回路構成を簡素化する。
【解決手段】交流溶接用電源装置100は、直流電源1と、インバータ2と、変圧器3と、第1双方向スイッチ4と、第2双方向スイッチ5と、第1出力端6と、第2出力端7と、平滑リアクトル9と、制御器10とを含む。制御器10は、第1及び第2双方向スイッチ4,5が変圧器3の二次巻線32から出力される2相交流電圧を整流して第1出力端6と第2出力端7との間に全波正極直流電圧を供給する正側整流制御と、第1及び第2双方向スイッチ4,5が変圧器3の二次巻線32から出力される2相交流電圧を整流して第1出力端6と第2出力端7との間に全波負極直流電圧を供給する負側整流制御と、の少なくともいずれかを行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続され、第1半サイクル期間と前記第1半サイクル期間と反対の極性の第2半サイクル期間とを含む一次側交流電圧を出力するインバータと、
アーク発生部へ溶接用の直流電圧を供給する第1出力端及び第2出力端と、
前記インバータからの前記一次側交流電圧が入力される一次巻線と、前記第1出力端に接続された中間点を有する二次巻線とを備え、前記中間点の電位を基準として、前記中間点と前記二次巻線の一端との間に、所定の電圧を有し前記一次側交流電圧と同相の同相二次側交流電圧を出力するとともに、前記中間点と前記二次巻線の他端との間に、前記所定の電圧を有し前記一次側交流電圧と逆相の逆相交流電圧を出力する2相半波整流用の変圧器と、
一端から他端に向かう正方向と前記他端から前記一端に向かう負方向との双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であり、前記一端が前記変圧器の前記二次巻線の前記一端に接続されるとともに前記他端が前記第2出力端に接続された第1双方向スイッチと、
一端から他端に向かう正方向と前記他端から前記一端に向かう負方向との双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であり、前記一端が前記変圧器の前記二次巻線の前記他端に接続されるとともに前記他端が前記第2出力端に接続された第2双方向スイッチと、
前記第1及び第2双方向スイッチを通る電流の経路に介挿された平滑リアクトルと、
前記第1及び第2双方向スイッチの動作を制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、
前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第1双方向スイッチを前記正方向に導通状態にするとともに前記第2双方向スイッチを遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波正極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第2双方向スイッチを前記正方向に導通状態にするとともに前記第1双方向スイッチを遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波正極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波正極直流電圧を供給する、正側整流制御と、
前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第2双方向スイッチを前記負方向に導通状態にするとともに前記第1双方向スイッチを遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波負極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第1双方向スイッチを前記負方向に導通状態にするとともに前記第2双方向スイッチを遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波負極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波負極直流電圧を供給する、負側整流制御と、の少なくともいずれかを行うように構成されている、交流溶接用電源装置。
【請求項2】
前記第1双方向スイッチは、前記双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であって、互いに逆直列接続された第1の一対のスイッチング素子と、前記第1の一対のスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されるとともに互いに逆直列接続された第1の一対のダイオードと、を含み、
前記第2双方向スイッチは、前記双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であって、互いに逆直列接続された第2の一対のスイッチング素子と、前記第2の一対のスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されるとともに互いに逆直列接続された第2の一対のダイオードと、を含み、
前記制御器は、
前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第1の一対のスイッチング素子を導通状態にするとともに、前記第2の一対のスイッチング素子のうちの前記第2双方向スイッチの前記正方向において導通するダイオードに並列なスイッチング素子を遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波正極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第2の一対のスイッチング素子を導通状態にするとともに、前記第1の一対のスイッチング素子のうちの前記第1双方向スイッチの前記正方向において導通するダイオードに並列なスイッチング素子を遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波正極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波正極直流電圧を供給する、前記正側整流制御としての正側同期整流制御と、
前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第2の一対のスイッチング素子を導通状態にするとともに、前記第1の一対のスイッチング素子のうちの前記第1双方向スイッチの前記負方向において導通するダイオードに並列なスイッチング素子を遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて同相半波負極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第1の一対のスイッチング素子を導通状態にするとともに、前記第2の一対のスイッチング素子のうちの前記第2双方向スイッチの前記負方向において導通するダイオードに並列なスイッチング素子を遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて逆相半波負極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波負極直流電圧を供給する、前記負側整流としての負側同期整流の少なくともいずれかを行うように構成されている、請求項1に記載の交流溶接用電源装置。
【請求項3】
前記制御器は、
前記正側整流制御において、前記第1双方向スイッチに前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波正極直流電圧を出力させる際に、さらに、前記第2の一対のスイッチング素子のうちの残りのスイッチング素子を導通状態にし、且つ、前記第2双方向スイッチに前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波正極直流電圧を出力させる際に、さらに、前記第1の一対のスイッチング素子のうちの残りのスイッチング素子を導通状態にし、且つ、
前記負側同期整流において、前記第2双方向スイッチに前記逆相二次側交流電圧を整流させて同相半波負極直流電圧を出力させる際に、前記第1の一対のスイッチング素子のうちの残りのスイッチング素子を導通状態にし、且つ、前記第1双方向スイッチに前記同相二次側交流電圧を整流させて逆相半波負極直流電圧を出力させる際に、前記第2の一対のスイッチング素子のうちの残りのスイッチング素子を導通状態にするように構成されている、請求項2に記載の交流溶接用電源装置。
【請求項4】
前記制御器は、前記正側整流制御と前記負側整流制御とを、前記一次側交流電圧の周波数より低い周波数で交互に行うよう構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の交流溶接用電源装置。
【請求項5】
一端が前記第1双方向スイッチの前記他端に接続された第1スナバコンデンサと、
アノードが前記第1双方向スイッチの前記一端に接続されるとともにカソードが前記第1スナバコンデンサの他端に接続された第1ダイオードと、
一端が、ボディダイオードのカソード側が前記第1スナバコンデンサの前記他端に接続されるように、当該第1スナバコンデンサの前記他端に接続された第1放電スイッチング素子と、
一端が前記第1放電スイッチング素子の他端に接続されるとともに他端が前記第1出力端に接続された限流抵抗素子と、
アノードが前記第2双方向スイッチの前記一端に接続されるとともにカソードが前記第1ダイオードのカソードに接続された第2ダイオードと、
一端が前記第2双方向スイッチの前記他端に接続された第2スナバコンデンサと、
カソードが前記第2双方向スイッチの前記一端に接続されるとともにアノードが前記第2スナバコンデンサの他端に接続された第3ダイオードと、
一端が、ボディダイオードのアノード側が前記第2スナバコンデンサの前記他端に接続されるように、当該第2スナバコンデンサの前記他端に接続されるとともに、他端が前記限流抵抗素子の前記一端に接続された第2放電スイッチング素子と、
カソードが前記第1双方向スイッチの前記一端に接続されるとともにアノードが前記第3ダイオードのアノードに接続された第4ダイオードと、をさらに備え、
前記制御器は、前記正側制御を前記負側制御に切り替える際に、前記第1及び第2双方向スイッチを遮断状態にするとともに、その前後に渡る又はその後の期間に、前記第1放電スイッチング素子を導通状態にする第1アーク切れ防止制御と、前記負側同期整流制御を前記正側同期整流制御に切り替える際に、前記第1及び前記第2双方向スイッチを遮断状態にするとともに、その前後に渡る又はその後の期間に、前記第2放電スイッチング素子を導通状態にする第2アーク切れ防止制御との少なくともいずれかを行うように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の交流溶接用電源装置。
【請求項6】
前記第1放電スイッチング素子と並列に第1ハイパスフィルタが設けられており、且つ、前記第2放電スイッチング素子と並列に第2ハイパスフィルタが設けられている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の交流溶接用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流溶接用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から交流溶接用の電源装置が知られている。そのような電源装置として、例えば、直流電源から高周波の交流電力を生成するインバータと、生成された高周波の交流電力を変圧する変圧器と、変圧された高周波の交流電力を直流電力に整流する整流回路と、整流された直流電力を交流電力に変換してそれを溶接トーチに供給するインバータ回路と、を備える溶接電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-089093号公報(特に、
図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記溶接電源装置は、変圧器の二次側に整流回路とインバータ回路との2つの回路とを備えていて、変圧された交流電力の整流及び交流化の回路構成が複雑であるという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、変圧された交流電力の整流及び交流化の回路構成を簡素化可能な交流溶接用電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のある形態(aspect)に係る交流溶接用電源装置は、直流電源に接続され、第1半サイクル期間と前記第1半サイクル期間と反対の極性の第2半サイクル期間とを含む一次側交流電圧を出力するインバータと、アーク発生部へ溶接用の直流電圧を供給する第1出力端及び第2出力端と、前記インバータからの前記一次側交流電圧が入力される一次巻線と、前記第1出力端に接続された中間点を有する二次巻線とを備え、前記中間点の電位を基準として、前記中間点と前記二次巻線の一端との間に、所定の電圧を有し前記一次側交流電圧と同相の同相二次側交流電圧を出力するとともに、前記中間点と前記二次巻線の他端との間に、前記所定の電圧を有し前記一次側交流電圧と逆相の逆相交流電圧を出力する2相半波整流用の変圧器と、一端から他端に向かう正方向と前記他端から前記一端に向かう負方向との双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であり、前記一端が前記変圧器の前記二次巻線の前記一端に接続されるとともに前記他端が前記第2出力端に接続された第1双方向スイッチと、一端から他端に向かう正方向と前記他端から前記一端に向かう負方向との双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であり、前記一端が前記変圧器の前記二次巻線の前記他端に接続されるとともに前記他端が前記第2出力端に接続された第2双方向スイッチと、前記第1及び第2双方向スイッチを通る電流の経路に介挿された平滑リアクトルと、前記第1及び第2双方向スイッチの動作を制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第1双方向スイッチを前記正方向に導通状態にするとともに前記第2双方向スイッチを遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波正極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第2双方向スイッチを前記正方向に導通状態にするとともに前記第1双方向スイッチを遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波正極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波正極直流電圧を供給する、正側整流制御と、前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第2双方向スイッチを前記負方向に導通状態にするとともに前記第1双方向スイッチを遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波負極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第1双方向スイッチを前記負方向に導通状態にするとともに前記第2双方向スイッチを遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波負極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波負極直流電圧を供給する、負側整流制御と、の少なくともいずれかを行うように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、変圧された交流電力の整流及び交流化の回路構成を簡素化可能な交流溶接用電源装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る交流溶接用電源装置の構成の一例を示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1の制御器による第1交流溶接の整流及び極性制御の内容を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、出力電流の波形及び双方向スイッチへのゲート信号の波形を示す波形図である。
【
図4】
図4は、第1モードの正側同相整流における入力電流及び出力電流の流れを
図1の回路において示す図である。
【
図5】
図5は、第1モードの正側逆相整流における入力電流及び出力電流の流れを
図1の回路において示す図である。
【
図6】
図6は、第2モードである正から負への極性切り替え時の充電電流及び放電電流の流れを
図1の回路において示す図である。
【
図7】
図7は、第3モードの負側逆相整流における入力電流及び出力電流の流れを
図1の回路において示す図である。
【
図8】
図8は、第3モードの負側同相整流における入力電流及び出力電流の流れを
図1の回路において示す図である。
【
図9】
図9は、第4モードである負から正への極性切り替え時の充電電流及び放電電流の流れを
図1の回路において示す図である。
【
図10A】
図10Aは、本開示の実施形態2に係る交流溶接用電源装置の第1双方向スイッチの構成の一例を示す回路図である。
【
図10B】
図10Bは、本開示の実施形態2に係る交流溶接用電源装置の第2双方向スイッチの構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のある形態(aspect)に係る交流溶接用電源装置は、直流電源に接続され、第1半サイクル期間と前記第1半サイクル期間と反対の極性の第2半サイクル期間とを含む一次側交流電圧を出力するインバータと、アーク発生部へ溶接用の直流電圧を供給する第1出力端及び第2出力端と、前記インバータからの前記一次側交流電圧が入力される一次巻線と、前記第1出力端に接続された中間点を有する二次巻線とを備え、前記中間点の電位を基準として、前記中間点と前記二次巻線の一端との間に、所定の電圧を有し前記一次側交流電圧と同相の同相二次側交流電圧を出力するとともに、前記中間点と前記二次巻線の他端との間に、前記所定の電圧を有し前記一次側交流電圧と逆相の逆相交流電圧を出力する2相半波整流用の変圧器と、一端から他端に向かう正方向と前記他端から前記一端に向かう負方向との双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であり、前記一端が前記変圧器の前記二次巻線の前記一端に接続されるとともに前記他端が前記第2出力端に接続された第1双方向スイッチと、一端から他端に向かう正方向と前記他端から前記一端に向かう負方向との双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であり、前記一端が前記変圧器の前記二次巻線の前記他端に接続されるとともに前記他端が前記第2出力端に接続された第2双方向スイッチと、前記第1及び第2双方向スイッチを通る電流の経路に介挿された平滑リアクトルと、前記第1及び第2双方向スイッチの動作を制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第1双方向スイッチを前記正方向に導通状態にするとともに前記第2双方向スイッチを遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波正極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第2双方向スイッチを前記正方向に導通状態にするとともに前記第1双方向スイッチを遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波正極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波正極直流電圧を供給する、正側整流制御と、前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第2双方向スイッチを前記負方向に導通状態にするとともに前記第1双方向スイッチを遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波負極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第1双方向スイッチを前記負方向に導通状態にするとともに前記第2双方向スイッチを遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波負極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波負極直流電圧を供給する、負側整流制御と、の少なくともいずれかを行うように構成されている。ここで、双方向スイッチを、「正方向に導通状態にする」とは、双方向スイッチを、「正方向に電流が流れるようにする」ことを意味し、双方向スイッチを、「負方向に導通状態にする」とは、双方向スイッチを、「負方向に電流が流れるようにする」ことを意味する。
【0010】
この構成によれば、一次側交流電圧の半サイクル期間毎に変圧器の二次巻線に出力される交流電圧の正側整流又は負側整流が第1及び第2双方向スイッチによって行われる。正側整流によって、正極の直流電圧が第1出力端と第2出力端との間に供給され、負側整流によって、負極の直流電圧が第1出力端と第2出力端との間に供給される。正側同期整流を行うかあるいは負側同期整流を行うかは、一方の半サイクル期間において、一方の双方向スイッチに同相二次側交流電圧を整流させるかあるいは逆相二次側交流電圧を整流させるかによって決定できる。従って、2つの双方向スイッチを用いて、変圧器の二次巻線に出力される交流電圧の整流とアーク溶接用の直流電圧の極性の切り替えとを行うことができ、当該切り替えに関する構成を簡素化することができる。従って、変圧された交流電力の整流及び交流化の回路構成を簡素化可能な交流溶接用電源装置を提供できる。
【0011】
前記第1双方向スイッチは、前記双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であって、互いに逆直列接続された第1の一対のスイッチング素子と、前記第1の一対のスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されるとともに互いに逆直列接続された第1の一対のダイオードと、を含み、前記第2双方向スイッチは、前記双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能であって、互いに逆直列接続された第2の一対のスイッチング素子と、前記第2の一対のスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されるとともに互いに逆直列接続された第2の一対のダイオードと、を含み、前記制御器は、前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第1の一対のスイッチング素子を導通状態にするとともに、前記第2の一対のスイッチング素子のうちの前記第2双方向スイッチの前記正方向において導通するダイオードに並列なスイッチング素子を遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波正極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第2の一対のスイッチング素子を導通状態にするとともに、前記第1の一対のスイッチング素子のうちの前記第1双方向スイッチの前記正方向において導通するダイオードに並列なスイッチング素子を遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波正極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波正極直流電圧を供給する、前記正側整流制御としての正側同期整流制御と、前記一次側交流電圧の前記第1半サイクル期間において、前記第2の一対のスイッチング素子を導通状態にするとともに、前記第1の一対のスイッチング素子のうちの前記第1双方向スイッチの前記負方向において導通するダイオードに並列なスイッチング素子を遮断状態にして、前記第2双方向スイッチに、前記逆相二次側交流電圧を整流させて同相半波負極直流電圧を出力させ、且つ、前記一次側交流電圧の前記第2半サイクル期間において、前記第1の一対のスイッチング素子を導通状態にするとともに、前記第2の一対のスイッチング素子のうちの前記第2双方向スイッチの前記負方向において導通するダイオードに並列なスイッチング素子を遮断状態にして、前記第1双方向スイッチに、前記同相二次側交流電圧を整流させて逆相半波負極直流電圧を出力させ、それによって、前記第1及び第2双方向スイッチが前記第1出力端と前記第2出力端との間に全波負極直流電圧を供給する、前記負側整流としての負側同期整流の少なくともいずれかを行うように構成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、一次側交流電圧の一方の半サイクル期間に同期して一方の一対のスイッチング素子が導通状態になり、且つ、一次側交流電圧の他方の半サイクル期間に同期して他方の一対のスイッチング素子が導通状態になるので、変圧器から出力される二次側交流電圧を整流する際の整流素子による電圧降下(両端電圧)がスイッチング素子の電圧降下のみになるので、一対のスイッチング素子として、導通時における電圧降下がダイオードの電圧降下より小さいスイッチング素子を選択することによって、整流素子による電力損失を低減することができ、交流溶接用電源装置の効率を向上させることができる。
【0013】
前記制御器は、前記正側整流制御において、前記第1双方向スイッチに前記同相二次側交流電圧を整流させて同相半波正極直流電圧を出力させる際に、さらに、前記第2の一対のスイッチング素子のうちの残りのスイッチング素子を導通状態にし、且つ、前記第2双方向スイッチに前記逆相二次側交流電圧を整流させて逆相半波正極直流電圧を出力させる際に、さらに、前記第1の一対のスイッチング素子のうちの残りのスイッチング素子を導通状態にし、且つ、前記負側同期整流において、前記第2双方向スイッチに前記逆相二次側交流電圧を整流させて同相半波負極直流電圧を出力させる際に、前記第1の一対のスイッチング素子のうちの残りのスイッチング素子を導通状態にし、且つ、前記第1双方向スイッチに前記同相二次側交流電圧を整流させて逆相半波負極直流電圧を出力させる際に、前記第2の一対のスイッチング素子のうちの残りのスイッチング素子を導通状態にするように構成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、双方向スイッチの一対のスイッチング素子のうちの一方を常時オン状態にして他方のみをオンオフすることによって、双方向スイッチの導通状態と遮断状態とを切り替えるので、第1双方向スイッチ及び第2双方向スイッチを高速動作させることができる。
【0015】
前記制御器は、前記正側整流制御と前記負側整流制御とを、前記一次側交流電圧の周波数より低い周波数で交互に行うよう構成されていてもよい。この構成によれば、交流溶接を行うことができる。
【0016】
前記交流溶接用電源装置は、一端が前記第1双方向スイッチの前記他端に接続された第1スナバコンデンサと、アノードが前記第1双方向スイッチの前記一端に接続されるとともにカソードが前記第1スナバコンデンサの他端に接続された第1ダイオードと、一端が、ボディダイオードのカソード側が前記第1スナバコンデンサの前記他端に接続されるように、当該第1スナバコンデンサの前記他端に接続された第1放電スイッチング素子と、一端が前記第1放電スイッチング素子の他端に接続されるとともに他端が前記第1出力端に接続された限流抵抗素子と、アノードが前記第2双方向スイッチの前記一端に接続されるとともにカソードが前記第1ダイオードのカソードに接続された第2ダイオードと、一端が前記第2双方向スイッチの前記他端に接続された第2スナバコンデンサと、カソードが前記第2双方向スイッチの前記一端に接続されるとともにアノードが前記第2スナバコンデンサの他端に接続された第3ダイオードと、一端が、ボディダイオードのアノード側が前記第2スナバコンデンサの前記他端に接続されるように、当該第2スナバコンデンサの前記他端に接続されるとともに、他端が前記限流抵抗素子の前記一端に接続された第2放電スイッチング素子と、カソードが前記第1双方向スイッチの前記一端に接続されるとともにアノードが前記第3ダイオードのアノードに接続された第4ダイオードと、をさらに備え、前記制御器は、前記正側制御を前記負側制御に切り替える際に、前記第1及び第2双方向スイッチを遮断状態にするとともに、その前後に渡る又はその後の期間に、前記第1放電スイッチング素子を導通状態にする第1アーク切れ防止制御と、前記負側同期整流制御を前記正側同期整流制御に切り替える際に、前記第1及び前記第2双方向スイッチを遮断状態にするとともに、その前後に渡る又はその後の期間に、前記第2放電スイッチング素子を導通状態にする第2アーク切れ防止制御との少なくともいずれかを行うように構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1アーク切れ防止制御において、正側整流制御を負側整流制御に切り替える際に、第1及び第2双方向スイッチを遮断状態にすると、アーク発生部である溶接トーチのトーチケーブルのインダクタンス成分に蓄えられた磁気エネルギーによってサージ電圧が発生し、このサージ電圧によって、第1出力端から、平滑リアクトルを通って変圧器の二次巻線の中間点に至り、そこで分流して、一方の分流が当該二次巻線の一端及び第1ダイオードを通って第1スナバコンデンサの前記他端に至るとともに他方の分流が当該二次巻線の他端及び第2ダイオードを通って第1スナバコンデンサの前記他端に至り、そこで両方の分流が合流して、その合流した流れが第1スナバコンデンサ及び第2出力端を通ってアーク発生部に戻るように、第1スナバコンデンサへの充電電流が流れる。従って、このサージ電圧による充電電流によって、従来は抵抗素子で消費されるエネルギーが、第1スナバコンデンサに蓄えられる。一方、この充電電流が流れる前後において、第1放電スイッチング素子を導通状態にすると、第1スナバコンデンサが放電し、その放電電流が、第1放電スイッチング素子、限流抵抗素子、第1出力端、アーク発生部、及び第2出力端を通って第1スナバコンデンサに戻るように流れる。この放電電流の方向は、サージ電圧による充電電流の方向と逆であるので、第1スナバコンデンサの電圧は、前記充電電流及び前記放電電流の関係で決まる。従って、制御器が、アーク切れを防止する最適な電圧になるよう第1放電スイッチング素子の導通期間を制御することによって、第1スナバコンデンサからアーク切れを防止する負極の電圧をトーチケーブルのインダクタンス成分及びアーク発生部に供給することができる。また、第2アーク切れ防止制御においても、第1アーク切れ防止制御と同様の原理によって、第2スナバコンデンサからアーク切れを防止する正極の電圧をトーチケーブルのインダクタンス成分及びアーク発生部に供給することができる。
【0018】
前記第1放電スイッチング素子と並列に第1ハイパスフィルタが設けられており、且つ、前記第2放電スイッチング素子と並列に第2ハイパスフィルタが設けられていてもよい。
【0019】
この構成によれば、第1ハイパスフィルタによって、第1放電スイッチング素子のターンオフによるサージ電圧から当該第1放電スイッチング素子を保護することができ、且つ、第2ハイパスフィルタによって、第2放電スイッチング素子のターンオフによるサージ電圧から当該第2放電スイッチング素子を保護することができる。
【0020】
以下、本開示の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本開示を説明するための図であるので、本開示に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図において互いに対応する要素の形態が一致しない場合等がある。また、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0021】
(実施形態1)
【0022】
[構成]
図1は、本開示の実施形態1に係る交流溶接用電源装置100の構成の一例を示す回路図である。
【0023】
図1を参照すると、交流溶接用電源装置100は、主要な構成要素として、直流電源1と、インバータ2と、変圧器3と、第1双方向スイッチ4と、第2双方向スイッチ5と、第1出力端6と、第2出力端7と、平滑リアクトル9と、制御器10と、アーク切れ防止回路と、を含む。以下、これらの要素を詳しく説明する。
【0024】
<直流電源1>
直流電源1は、直流電圧を出力するものであれば、特に、限定されない。直流電源は、例えば、交流電力を整流する整流器、各種の電池又は充電池、直流発電機等であってもよい。
【0025】
<インバータ2>
インバータ2は、直流電源1に接続され、制御器10の制御によって、第1半サイクル期間と第2半サイクル期間とを含む矩形波の一次側交流電圧を出力する。この一次側交流電圧は、例えば、周波数が20~100kHzの高周波電圧である。インバータ2は、直流電源1から交流電圧を生成するものであれば、特に限定されない。インバータ2は、例えば、単相フルブリッジ型のインバータ又は単相ハーフブリッジ型のインバータであってもよい。
【0026】
インバータ2は、ここでは、単相フルブリッジ型のインバータであり、直流電源1の両端に、一対のアームが並列に接続されている。一方のアームでは、ハイサイドのスイッチング素子SW21とローサイドのスイッチング素子SW22とが直列に接続されている。他方のアームでは、ハイサイドのスイッチング素子SW23とローサイドのスイッチング素子SW24とが直列に接続されている。一対のアームのそれぞれの一対のスイッチング素子の接続点が、インバータの出力端21,22を構成している。スイッチング素子SW21とスイッチング素子SW24との組と、スイッチング素子SW23とスイッチング素子SW22との組とが、交互に導通することによって、出力端21,22から矩形波の一次側交流電圧が出力される。この一次側交流電圧は、互いに極性の異なる第1半サイクル期間と第2半サイクル期間とを含む。第1半サイクル期間と第2半サイクル期間との間で「極性」が異なるとは、出力端21,22のうちの一方の出力端の電位を基準とした場合における他方の出力端の電位の高いか又は低いかが、第1半サイクル期間と第2半サイクル期間との間で異なることを意味する。ここでは、後述するように、便宜上、一次側交流電圧の第1半サイクル期間及び第2半サイクル期間が、変圧器3の一次巻線31を流れる電流の方向によって定義される。
【0027】
<変圧器3>
変圧器3は、例えば、2相半波整流用の変圧器で構成される。具体的には、変圧器3は、一次巻線31と中間点32cを有する二次巻線32とを有する。二次巻線32に対する一次巻線31の巻き数比は適宜な比に決定される。変圧器3は、例えば、減極性の変圧器である。なお、変圧器3は、加極性の変圧器であってもよい。この場合、二次巻線32の第1及び第2双方向スイッチ4,5に対する結線を減極性の変圧器と逆の結線にすればよい。従って、変圧器3においては、一次巻線31の一端31aと他端31bとの間に誘起される電圧の当該他端31bの電位を基準にした場合における極性と、二次巻線32の一端32aと中間点32cとの間に誘起される電圧の当該中間点32cの電位を基準にした場合における極性と、二次巻線32の中間点32cと他端32bとの間に誘起される電圧の当該他端32bの電位を基準にした場合における極性と、は、互いに同じである。従って、中間点32cの電位を基準とした場合、二次巻線32の中間点32cと他端32bとの間に誘起される電圧の極性は、二次巻線32の中間点32cと一端32aとの間に誘起される電圧の極性と逆である。
【0028】
例えば、一次巻線31の一端31aは、インバータ2の一方の出力端21に接続され、一次巻線31の他端31bは、コンデンサを介してインバータ2の他方の出力端22に接続されている。なお、一次巻線31の一端31aが、コンデンサを介してインバータ2の他方の出力端22に接続され、一次巻線31の他端31bがインバータ2の一方の出力端21に接続されてもよい。また、二次巻線32の中間点32cは、平滑リアクトル9を介して第1出力端6に接続されている。
【0029】
変圧器3は、一次側交流電圧が、インバータ2の一対の出力端21,22から、一次巻線31の両端31a,31b間に入力されると、二次巻線32の中間点32cの電位を基準として、二次巻線32の中間点32cと一端32aとの間に、巻き数比に応じた所定の電圧を有し一次側交流電圧と同相の同相二次側交流電圧を出力するとともに、中間点32cと二次巻線の他端32bとの間に、前記巻き数比に応じた所定の電圧を有し一次側交流電圧と逆相の逆相交流電圧を出力する。
【0030】
ここでは、一次側交流電圧の1サイクル期間のうちの、変圧器3の一次巻線31において、電流が一端31aから他端31bに向かって流れる半サイクル期間が、第1半サイクル期間として定義され、変圧器3の一次巻線31において、電流が他端31bから一端31aに向かって流れる半サイクル期間が、第2半サイクル期間として定義される。
【0031】
<第1及び第2双方向スイッチ4,5>
第1及び第2双方向スイッチ4,5は、共に、一端から他端に向かう正方向と前記他端から前記一端に向かう負方向との双方向に流れる電流をそれぞれ選択的に導通及び遮断可能な機能を有する。
【0032】
具体的には、第1双方向スイッチ4は、互いに逆直列接続された第1の一対のスイッチング素子SW1,SW2と、この第1の一対のスイッチング素子SW1,SW2にそれぞれ逆並列接続されるとともに互いに逆直列接続された第1の一対のダイオード41、42とを含む。第1の一対のスイッチング素子SW1,SW2の個々のスイッチング素子を、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2と呼ぶ。第1双方向スイッチ4は、一端が変圧器3の二次巻線32の一端32aに接続されるとともに他端が第2出力端7に接続されている。具体的には、第1スイッチング素子SW1の一端が変圧器3の二次巻線32の一端32aに接続されるとともに第1スイッチング素子SW1の他端が第2スイッチング素子SW2の一端に接続されている。そして、第2スイッチング素子SW2の他端が第2出力端7に接続されている。
【0033】
第2双方向スイッチ5は、互いに逆直列接続された第2の一対のスイッチング素子SW3,SW4と、この第2の一対のスイッチング素子SW3,SW4にそれぞれ逆並列接続されるとともに互いに逆直列接続された第1の一対のダイオード51,52とを含む。第2の一対のスイッチング素子SW3,SW4の個々のスイッチング素子を、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4と呼ぶ。第2双方向スイッチ5は、一端が変圧器3の二次巻線32の他端32bに接続されるとともに他端が第2出力端7に接続されている。具体的には、第3スイッチング素子SW3の一端が変圧器3の二次巻線32の他端32bに接続されるとともに第3スイッチング素子SW3の他端が第4スイッチング素子SW4の一端に接続されている。そして、第4スイッチング素子SW4の他端が第2出力端7に接続されている。
【0034】
{第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4}
第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4は、少なくとも一方向に流れる電流を選択的に導通及び遮断可能な半導体スイッチング素子であればよい。一方向に流れる電流のみを選択的に導通及び遮断可能な半導体スイッチング素子として、例えば、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate bipolar Transistor)等が挙げられる。
【0035】
双方向に流れる電流を選択的に導通及び遮断可能なスイッチング素子として、例えば、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。FETとして、例えば、MOSFET、MESFET、JFET等が挙げられる。
【0036】
《スイッチング素子の逆直列接続》
スイッチング素子の「逆直列接続」は、2つのスイッチング素子(正確には、2つの半導体スイッチング素子)が、単独で使用する場合における一対の主端子間への電圧の印加方向が互いに逆になるように、互いに直列に接続されることを意味する。具体的には、バイポーラトランジスタに関しては、2つのバイポーラトランジスタが、エミッタ同士又はコレクタ同士が接続されるように、互いに直列に接続されることを意味する。FETに関しては、2つのFETが、ソース同士又はドレイン同士が接続されるように、互いに直列に接続されることを意味する。なお、MOSFET及びMESFETでは、一対の主端子のうち、制御端子(ゲート)と接続されている(導通している)主端子がソースである。MOSFET及びMESFETのチャンネル型は、Nチャンネル型及びPチャンネル型のいずれであってもよい。
【0037】
{ダイオード41,42,51,52}
個々のダイオード41,42,51,52は、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4とは別個の素子であるダイオード(以下、外付けダイオードと呼ぶ)であってもよく、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4の内部に形成されたボディダイオードであってもよい。ボディダイオードは、寄生ダイオードであってもよく、意図的に設計されたダイオードであってもよい。
【0038】
外付けダイオードとして、例えば、整流ダイオード、スイッチングダイオード、ファストリカバリダイオード、ショットキーダイオード等が挙げられる。
【0039】
《ダイオードの逆並列接続》
スイッチング素子へのダイオードの「逆並列接続」は、ダイオードの順方向が、スイッチング素子の単独で使用する場合における一対の主端子間への電圧の印加方向と逆になるように、ダイオードがスイッチング素子に並列に接続されることを意味する。
【0040】
《ダイオードの逆直列接続》
ダイオードの「逆直列接続」は、2つのダイオードが、順方向が互いに逆になるように、互いに直列に接続されることを意味する。
【0041】
{第1及び第2双方向スイッチ4,5の動作}
第1双方向スイッチ4は、制御器10の制御によって、一次側交流電圧の第1半サイクル期間において、変圧器3から出力される同相二次側交流電圧を整流して同相半波正極直流電圧を出力し、且つ、一次側交流電圧の第2半サイクル期間において、変圧器3から出力される同相二次側交流電圧を整流して同相半波負極直流電圧を出力する。
【0042】
第2双方向スイッチ5は、制御器10の制御によって、一次側交流電圧の第1半サイクル期間において、変圧器3から出力される逆相二次側交流電圧を整流して逆相半波負極直流電圧を出力し、且つ、一次側交流電圧の第2半サイクル期間において、変圧器3から出力される逆相二次側交流電圧を整流して逆相半波正極直流電圧を出力する。
【0043】
{第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4の具体的構成例}
ここでは、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4が、双方向に流れる電流を選択的に導通及び遮断可能なスイッチング素子である。第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4が、一方向に流れる電流のみを選択的に導通及び遮断可能なスイッチング素子である構成については、後述する実施形態2において説明される。
【0044】
第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4は、例えば、MOSFETで構成される。第1双方向スイッチ4では、第1スイッチング素子SW1を構成するMOSFETと第2スイッチング素子SW2を構成するMOSFETとが、ソース同士が接続されるように、互いに直列に接続される。そして、第1スイッチング素子SW1を構成するMOSFETのドレインが変圧器3の二次巻線32の一端32aに接続されるとともに、第2スイッチング素子SW2を構成するMOSFETのドレインが第2出力端7に接続される。ダイオード41及びダイオード42は、それぞれ、第1スイッチング素子SW1のボディダイオード及び第2スイッチング素子SW2のボディダイオードで構成される。第2双方向スイッチ5では、第3スイッチング素子SW3を構成するMOSFETと第4スイッチング素子SW4を構成するMOSFETとが、ソース同士が接続されるように、互いに直列に接続される。そして、第3スイッチング素子SW3を構成するMOSFETのドレインが変圧器3の二次巻線32の他端32bに接続されるとともに、第4スイッチング素子SW4を構成するMOSFETのドレインが第2出力端7に接続される。ダイオード51及びダイオード52は、それぞれ、第3スイッチング素子SW3のボディダイオード及び第4スイッチング素子SW4のボディダイオードで構成される。
【0045】
<第1及び第2出力端6,7>
第1及び第2出力端6,7は、アーク発生部8へ溶接用の直流電圧を供給するための交流溶接用電源装置100の出力部である。第1出力端6には被加工物が接続される。第2出力端7には、先端に溶接トーチが接続されたトーチケーブルの基端が接続される。参照符号Lsは、このトーチケーブルのインダクタンス成分を示す。被加工物と溶接トーチとの間にアークが発生する。すなわち、被加工物及び溶接トーチがアーク発生部8を構成する。
【0046】
具体的には、第1及び第2出力端6,7は、第1及び第2双方向スイッチ4,5から出力される全波正極直流電圧又は全波負極直流電圧を、溶接用の直流電圧としてアーク発生部8に供給する。
【0047】
<平滑リアクトル9>
平滑リアクトル9は、第1及び第2双方向スイッチ4,5を通る電流の経路に介挿される。平滑リアクトル9は、例えば、変圧器3の二次巻線32の中間点32cと第1出力端6との間に介挿されている。なお、一対の平滑リアクトル9が、変圧器3の二次巻線32の一端32aと第1双方向スイッチ4との間と、変圧器3の二次巻線32の他端32bと第2双方向スイッチ5との間と、にそれぞれ介挿されていてもよい。
【0048】
<アーク切れ防止回路>
アーク切れ防止回路は、第1スナバコンデンサCs1と、第2スナバコンデンサCs2と、第1放電スイッチング素子SW5と、第2放電スイッチング素子SW6と、第1乃至第4ダイオードD1~D4と、限流抵抗素子R1と、第1及び第2ハイパスフィルタHf1,Hf2と、を含む。
【0049】
第1スナバコンデンサCs1は、一端が第1双方向スイッチ4の前記他端に接続されている。第1ダイオードD1は、アノードが第1双方向スイッチ4の前記一端に接続されるとともにカソードが第1スナバコンデンサCs1の他端に接続されている。
【0050】
第1放電スイッチング素子SW5は、一端が第1スナバコンデンサCs1の前記他端に接続されている。この場合、第1放電スイッチング素子SW5に逆並列接続されたダイオード61のカソード側が第1スナバコンデンサCs1の前記他端に接続される。第1放電スイッチング素子SW5は、例えば、バイポーラトランジスタ、IGBT、又はFETで構成されてもよい。ここでは、第1放電スイッチング素子SW5は、IGBTで構成される。
【0051】
限流抵抗素子R1は、一端が第1放電スイッチング素子SW5の他端に接続されるとともに他端が第2出力端7に接続されている。第2ダイオードD2は、アノードが第2双方向スイッチ5の前記一端に接続されるとともにカソードが第1ダイオードD1のカソードに接続されている。限流抵抗素子R1は、後述する放電電流Idを制限するための抵抗素子である。
【0052】
第2スナバコンデンサCs2は、一端が第2双方向スイッチ5の前記他端に接続されている。第3ダイオードD3は、カソードが第2双方向スイッチ5の前記一端に接続されるとともにアノードが第2スナバコンデンサCs2の他端に接続されている。
【0053】
第2放電スイッチング素子SW6は、一端が第2スナバコンデンサCs2の前記他端に接続されるとともに、他端が限流抵抗素子R1の前記一端に接続されている。この場合、第2放電スイッチング素子SW6に逆並列接続されたダイオード62のアノード側が第2スナバコンデンサの前記他端に接続される。第2放電スイッチング素子SW6は、例えば、バイポーラトランジスタ、IGBT、又はFETで構成されてもよい。ここでは、第2放電スイッチング素子SW5は、IGBTで構成される。
【0054】
<第1及び第2ハイパスフィルタHf1,Hf2>
交流溶接用電源装置100は、さらに、第1及び第2放電スイッチング素子SW5,SW6にそれぞれ並列に接続された第1及び第2ハイパスフィルタHf1,Hf2を備える。第1及び第2ハイパスフィルタHf1,Hf2は、それぞれ、第1及び第2放電スイッチング素子SW5,SW6のためのスナバ回路である。第1ハイパスフィルタHf1は、互いに直列接続されたスナバ抵抗素子R2及び第3スナバコンデンサCs3で構成される。第2ハイパスフィルタHf2は、互いに直列接続されたスナバ抵抗素子R3及び第4スナバコンデンサCs4で構成される。
【0055】
<制御器10>
制御器10は、交流溶接用電源装置100全体の動作を制御する。制御器10は、特に、インバータ2のスイッチング素子SW21~SW24、第1及び第2双方向スイッチ4,5の第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4、及び第1及び第2放電スイッチング素子SW5,SW6の動作を制御する。
【0056】
制御器10は、例えば、プロセッサとメモリとを有する演算器で構成される。この演算器は、具体的には、例えば、コンピュータ、パーソナルコンピュータ、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等で構成される。制御器10は、集中制御を行う単独の演算器で構成されてもよく、分散制御を行う複数の演算器で構成されてもよい。
【0057】
換言すると、制御器10の機能は、開示された機能を実行するよう構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路(processing circuitry)又は回路(circuitry)と見なされる。
【0058】
メモリには、例えば、溶接制御プログラムを含む各種の制御プログラムが格納されている。プロセッサは、これらの制御プログラムをメモリから読みだして実行することによって、交流溶接用電源装置の動作を制御する。交流溶接には、正極直流溶接(第1モード)から開始する第1交流溶接と負極直流溶接(第3モード)から開始する第2交流溶接とがある。
【0059】
制御器10は、例えば、ユーザインタフェースを備える。このユーザインタフェースは、例えば、ユーザが第1交流溶接を指示するための第1交流溶接指示部、ユーザが第2交流溶接を指示するための第2交流溶接指示部、ユーザが正極直流溶接を指示するための正極直流溶接指示部、及びユーザが負極直流溶接を指示するための負極直流溶接指示部を含む。制御器10の制御内容は、交流溶接用電源装置100の動作として、以下に、詳しく説明する。
【0060】
[動作]
次に、以上のように構成された交流溶接用電源装置100の動作を説明する。交流溶接用電源装置100の動作は、制御器10の制御によって遂行される。
【0061】
ここでは、交流溶接用電源装置100が交流溶接用の電圧を出力する場合の動作を説明する。この場合、交流溶接用電源装置100は、例えば、第1乃至第4の動作モードを有し、制御器10は交流溶接の整流及び極性制御を行う。ここでは、第1交流溶接の制御の概要を説明する。
【0062】
図2は、制御器10による第1交流溶接の整流及び極性制御の内容を示すフローチャートである。
図2を参照すると、制御器10は、ユーザインタフェースから第1交流溶接が指示されると、第1交流溶接の整流及び極性制御を開始し、溶接開始指令が入力されるのを待機する(ステップS1においてNO、ステップS1)。
【0063】
制御器10は、溶接開始指令が入力されると(ステップS1においてYES)、交流溶接用電源装置100に、順次、第1モード乃至第4モード(ステップS2~S5)を実行させる。
【0064】
制御器10は、交流溶接用電源装置100に第4モード(S5)を実行させ終わると、溶接終了指令が入力された否か判定する(ステップS6)。制御器10は、溶接終了指令が入力されていない場合(ステップS6でNO)、ステップS2に戻り、以降、溶接終了指令が入力されるまで、ステップS2~S6(NO)を繰り返す。
【0065】
制御器10は、溶接終了指令が入力されていると(ステップS6でYES)、第1交流溶接の整流及び極性制御を終了する。
【0066】
次に、第1交流溶接の整流及び極性制御を、
図3乃至
図9を参照して、各モード別に、詳しく説明する。
図3は、出力電流の波形及び双方向スイッチへのゲート信号の波形を示す波形図である。
【0067】
具体的には、
図3における各段の波形図の内容は以下の通りである。最上段の波形図は、第1及び第2出力端6,7から出力される出力電流の波形を示す。上から2段目の波形図は、第2スイッチング素子SW2のゲート信号の波形を示す。上から3段目の波形図は、第1スイッチング素子SW1のゲート信号の波形を示す。上から4段目の波形図は、第4スイッチング素子SW4のゲート信号の波形を示す。上から5段目の波形図は、第3スイッチング素子SW3のゲート信号の波形を示す。上から6段目の波形図は、第1放電スイッチング素子SW5のゲート信号の波形を示す。上から7段目(最下段)の波形図は、第2放電スイッチング素子SW6のゲート信号の波形を示す。
【0068】
図3を参照すると、各スイッチング素子SW1~SW6には、各々に対応するゲート信号が制御器10から入力される。これらのゲート信号は、正確には、制御器10から送出された後それぞれゲート駆動回路で増幅され、その後、各々に対応するスイッチング素子SW1~SW6に入力されるが、ここでは、説明を簡略化するために、これらのゲート信号が、それぞれ、制御器10から各々に対応するスイッチング素子SW1~SW6に入力されるものとして説明する。また、ゲート信号において、ハイレベルの部分を「オン信号」と呼び、ローレベルの部分を「オフ信号」と呼ぶ。なお、これらのことは、インバータ2のスイッチング素子SW21~SW24へのゲート信号についても同様である。
【0069】
第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4のゲート信号において、微小な間隔の縦線で表された部分は、オン信号とオフ信号とが微小な等しい時間間隔で交互に繰り返し送出されていることを示す。このオン信号及びオフ信号の繰り返し周波数は、例えば、20~100kHzである。このオン信号の繰り返し周波数は、インバータ2から出力される一次側交流電圧の周波数に等しい。つまり、後述の説明から明らかなように、第1及び第2双方向スイッチ4,5によって行われる整流は、インバータ2のスイッチング素子SW21~SW24のスイッチングに同期して行われる同期整流である。
【0070】
なお、第1乃至第4モードの期間の周期に相当する周波数、すなわち、交流溶接用の電圧(及び電流)の極性切り替え周波数は、例えば、100~500Hzの低い周波数である。
【0071】
<第1モード>
図4は、第1モードの正側同相整流における入力電流Ii及び出力電流Ioの流れを
図1の回路において示す図である。
図5は、第1モードの正側逆相整流における入力電流Ii及び出力電流Ioの流れを
図1の回路において示す図である。なお、
図4~
図9においては、各電流の流れを見やすくするために、制御器10が省略され、且つ、その他の要素の参照符号が省略されている。
【0072】
第1モードでは、制御器10は、正側整流制御によって、第1及び第2双方向スイッチ4,5に、それぞれ、正側同相整流及び正側逆相整流を行わせる。また、第1モードでは、出力電流Ioは、最速、当該出力電流Ioが通流する回路の時定数(τ=L/R)に従ってハイレベルの電流値まで立ち上がる。
【0073】
{正側同相整流}
図1、
図3、及び
図4を参照すると、制御器10は、交流溶接の際に、インバータ2に一次側交流電圧を出力させる。そして、制御器10は、第1モードにおいて、まず、一次側交流電圧の第1半サイクル期間において、第1双方向スイッチ4を正方向に導通状態にするとともに第2双方向スイッチ5を遮断状態にする。具体的には、制御器10は、第2スイッチング素子SW2にオン信号のゲート信号を送出するとともに第1スイッチング素子SW1に、第1モードの全期間に渡ってオン信号のゲート信号を送出する。すると、第2スイッチング素子SW2が導通状態になるとともに第1スイッチング素子SW1が第1モードの全期間に渡って導通状態になり、第1双方向スイッチ4が正方向に導通状態になる。これにより、第1双方向スイッチ4が、変圧器3から出力される同相二次側交流電圧を整流して同相半波正極直流電圧を出力する。ここで、「正方向に導通状態」とは、「正方向に電流が流れる状態」を意味する。
【0074】
その一方、制御器10は、第4スイッチング素子SW4にオフ信号のゲート信号を送出する。すると、第4スイッチング素子SW4が遮断状態になり、第2双方向スイッチ5が遮断状態になる。これにより、第2双方向スイッチ5が、変圧器3から出力される逆相二次側交流電圧を阻止する。また、この際、制御器10は、第3スイッチング素子SW3に第1モードの全期間に渡ってオン信号のゲート信号を送出する。すると、第3スイッチング素子SW3が第1モードの全期間に渡って導通状態になる。
【0075】
また、制御器10は、第1放電スイッチング素子SW5に、前サイクルの第3モードから今サイクルの第1モードの全期間に渡ってオフ信号のゲート信号を送出するとともに、第2放電スイッチング素子SW6に、第1乃至第3モードの全期間に渡ってオフ信号のゲート信号を送出し、それにより、第1放電スイッチング素子SW5が前サイクルの第3モードから今サイクルの第1モードまでの全期間に渡って遮断状態になるとともに、第2放電スイッチング素子SW6が第1乃至第3モードの全期間に渡って遮断状態になる。
【0076】
図4を参照すると、交流溶接用電源装置100が以上の状態になると、変圧器3の一次側においては、インバータ2から変圧器3への入力電流Iiが、変圧器3の一次巻線31を、一端31aから他端31bに向かう方向に流れる一方、変圧器3の二次側においては、出力電流Ioが、変圧器3の二次巻線32の一端32aから、順に、第1双方向スイッチ4、第2出力端7、アーク発生部8、第1出力端6、平滑リアクトル9、及び変圧器3の二次巻線32の中間点32cを通って、変圧器3の二次巻線32の一端32aに戻るように流れる。
【0077】
また、第1スナバコンデンサCs1は、第1双方向スイッチ4の両端電圧に応じた電圧CV1に充電される。但し、その前記他端(第1ダイオードD1のカソード側の端)が、第1ダイオードD1によって、変圧器3から出力される同相二次側交流電圧の最高電位(正極)に維持される。
【0078】
また、第2スナバコンデンサCs2は、第2双方向スイッチ5の両端電圧に応じた電圧CV2に充電される。但し、その前記他端(第3ダイオードD3のアノード側の端)が、第3ダイオードD3によって、変圧器3から出力される逆相二次側交流電圧の最低電位(負極)に維持される。
【0079】
以上のようにして、交流溶接用電源装置100において、正側同相整流が行われる。
【0080】
{正側逆相整流}
図1、
図3、及び
図5を参照すると、制御器10は、次に、一次側交流電圧が第2半サイクル期間になると、第2双方向スイッチ5を正方向に導通状態にするとともに第1双方向スイッチ4を遮断状態にする。具体的には、制御器10は、第4スイッチング素子SW4にオン信号のゲート信号を送出する。すると、第4スイッチング素子SW4が導通状態になるとともに第3スイッチング素子SW3が既に第1モードの全期間に渡って導通状態になっているので、第2双方向スイッチ5が、変圧器3から出力される逆相二次側交流電圧を整流して逆相半波正極直流電圧を出力する。
【0081】
その一方、制御器10は、第2スイッチング素子SW2にオフ信号のゲート信号を送出する。すると、第2スイッチング素子SW2が遮断状態になり、第1双方向スイッチ4が遮断状態になる。これにより、第1双方向スイッチ4が、変圧器3から出力される同相二次側交流電圧を阻止する。
【0082】
図5を参照すると、交流溶接用電源装置100が以上の状態になると、変圧器3の一次側においては、インバータ2から変圧器3への入力電流Iiが、変圧器3の一次巻線31を、他端31bから一端31aに向かう方向に流れる一方、変圧器3の二次側においては、出力電流Ioが、変圧器3の二次巻線の他端32bから、順に、第2双方向スイッチ5、第2出力端7、アーク発生部8、第1出力端6、平滑リアクトル9、及び変圧器3の二次巻線32の中間点32cを通って、変圧器3の二次巻線32の他端32bに戻るように流れる。
【0083】
また、第1スナバコンデンサCs1は、第1双方向スイッチ4の両端電圧に応じた電圧に充電され、第2スナバコンデンサCs2は、第2双方向スイッチ5の両端電圧に応じた電圧に充電される。以上のようにして、交流溶接用電源装置100において、正側逆相整流が行われる。
【0084】
このようにして、上記正側正相整流及び正側逆相整流によって、第1及び第2双方向スイッチ4,5が第1出力端6と第2出力端7との間に全波正極直流電圧を供給する。
【0085】
<第2モード>
図6は、第2モードである正から負への極性切り替え時の充電電流及び放電電流の流れを
図1の回路において示す図である。
【0086】
第2モードでは、制御器10は、出力電圧及び出力電流の正から負への極性切り替え制御及び第1アーク切れ防止制御を行う。
【0087】
図1、
図3、及び
図6参照すると、制御器10は、交流溶接用の電圧(又は電流)の極性切り替え周波数に応じた所定のタイミングで、第1及び第2双方向スイッチ4,5を遮断状態にする。具体的には、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4に、オフ信号のゲート信号を送出する。すると、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4が遮断状態になり、第1及び第2双方向スイッチ4,5が遮断状態になる。これにより、第2モードが開始される。
【0088】
すると、
図6に破線の矢印で示すように、アーク発生部8である溶接トーチのトーチケーブルのインダクタンス成分Lsに蓄えられた磁気エネルギーによってサージ電圧が発生し、第1出力端6から、平滑リアクトル9を通って変圧器3の二次巻線32の中間点32cに至り、そこで分流して、一方の分流が当該二次巻線32の一端32a及び第1ダイオードD1を通って第1スナバコンデンサCs1の前記他端に至るとともに他方の分流が当該二次巻線32の他端32b及び第2ダイオードD2を通って第1スナバコンデンサCs1の前記他端に至り、そこで両方の分流が合流して、その合流した流れが第1スナバコンデンサCs1及び第2出力端7を通ってアーク発生部8に戻るように、第1スナバコンデンサCs1への充電電流Icが流れる。
【0089】
従って、このサージ電圧による充電電流Icによって、従来は抵抗素子で消費されるエネルギーが、第1スナバコンデンサCs1に蓄えられる。
【0090】
一方、この充電電流が流れる前後において、制御器10は、第1放電スイッチング素子SW5にオン信号のゲート信号を送出し、それによって、第1放電スイッチング素子SW5を導通状態にする。すると、第1スナバコンデンサCs1が放電し、
図6に点線の矢印で示すように、その放電電流Idが、第1放電スイッチング素子SW5、限流抵抗素子R1、第1出力端6、アーク発生部8、及び第2出力端7を通って第1スナバコンデンサCs1に戻るように流れる。この放電電流Idの方向は、サージ電圧による充電電流Icの方向と逆であるので、第1スナバコンデンサCs1の電圧CV1は、充電電流Ic及び放電電流Idの関係で決まる。
【0091】
ここで、制御器10のメモリには、アーク切れを防止する最適な電圧になるような第1放電スイッチング素子SW5の導通期間(以下、「第1最適導通期間」と呼ぶ)が予め記憶されている。この「第1最適導通期間」は、シミュレーション、実験、計算等によって求められる。
【0092】
制御器10は、「第1最適導通期間」の間、第1放電スイッチング素子SW5を導通状態にする。これにより、第1スナバコンデンサCs1からアーク切れを防止する負極の直流電圧が、トーチケーブルのインダクタンス成分Ls及びアーク発生部8に供給される。これを、
図3の最上段の出力電流の波形図を参照しながら、詳しく説明する。まず、「出力電流」について説明する。「出力電流」は、交流溶接用電源装置100がアーク発生部8に供給する電流を意味する。充電電流Ic及び放電電流Idは、交流溶接用電源装置100がアーク発生部8に供給する電流によってトーチケーブルのインダクタンス成分Lsに蓄えられた磁気エネルギーをエネルギー源としている。そして、両者は通流方向が互いに逆であって、絶対値の大きい方のみが顕在化する。従って、充電電流Ic及び放電電流Idのうち、絶対値の大きい方が「出力電流」に相当する。
【0093】
図3を参照すると、「第1最適導通期間」は、例えば、第2モードの開始とともに始まり、第2モードの終了とともに終了する。「第1最適導通期間」においては、当初、充電電流Icが放電電流Idより大きいが、途中で放電電流Idが充電電流Icより大きくなり、この時点で、出力電流Io及び出力電圧の極性が正極から負極に切り替わる。そして、充電電流Icに対する放電電流Idの差電流である負極の出力電流Ioの電流値が充電電流Icの減少に伴って増加し、やがて充電電流Icが消滅すると、出力電流Ioの電流値が放電電流Idの略一定の電流値Id=CV1/R(A)(CV1は第1スナバコンデンサCs1の電圧(V)、Rは限流抵抗素子R1の抵抗値(Ω)。)になる。その後、出力電流Ioは、「第1最適導通期間」が終了するまで当該略一定の電流値を維持する。「第1最適導通期間」が終了すると、第1放電スイッチング素子SW5が遮断状態にされる。これにより、第2モードが終了する。
【0094】
なお、第2モードから第3モードへ移行する際に、アーク発生部8に印加される電圧が、第2モードの第1スナバコンデンサCs1による負極電圧から第3モードの第1双方向スイッチ4又は第2双方向スイッチ5による負極電圧に切り替わるが、トーチケーブルのインダクタンス成分Lsによって出力電流Ioが維持される。従って、アーク切れを防止しつつ、出力電圧及び出力電流Ioの正から負への極性切り替えが好適に行われる。
【0095】
なお、第1放電スイッチング素子SW5が「第1最適導通期間」の終了時にターンオフしたとき、それによるサージ電圧が第1ハイパスフィルタHf1によってバイパスされ、それよって、第1放電スイッチング素子SW5が保護される。
【0096】
<第3モード>
図7は、第3モードの負側逆相整流における入力電流及Ii及び出力電流Ioの流れを
図1の回路において示す図である。
図8は、第3モードの負側同相整流における入力電流Ii及び出力電流Ioの流れを
図1の回路において示す図である。第3モードでは、制御器10は、負側整流制御によって、第1及び第2双方向スイッチ4,5に、それぞれ、負側同相整流及び負側逆相整流を行わせる。また、第3モードでは、出力電流Ioは、最速、当該出力電流Ioが通流する回路の時定数(τ=L/R)に従ってローレベルの電流値まで立ち下がる。
【0097】
{負側逆相整流}
図1、
図3、及び
図7を参照すると、制御器10は、第3モードにおいて、まず、一次側交流電圧の第1半サイクル期間において、第2双方向スイッチ5を負方向に導通状態にするとともに第1双方向スイッチ4を遮断状態にする。具体的には、制御器10は、第3スイッチング素子SW3にオン信号のゲート信号を送出するとともに第4スイッチング素子SW4に、第3モードの全期間に渡ってオン信号のゲート信号を送出する。すると、第3スイッチング素子SW3が導通状態になるとともに第4スイッチング素子SW4が第3モードの全期間に渡って導通状態になり、第2双方向スイッチ5が負方向に導通状態になる。これにより、第2双方向スイッチ5が、変圧器3から出力される逆相二次側交流電圧を整流して逆相半波負極直流電圧を出力する。ここで、「負方向に導通状態」とは、「負方向に電流が流れる状態」を意味する。
【0098】
その一方、制御器10は、第1スイッチング素子SW1にオフ信号のゲート信号を送出する。すると、第1スイッチング素子SW1が遮断状態になり、第1双方向スイッチ4が遮断状態になる。これにより、第1双方向スイッチ4が、変圧器3から出力される同相二次側交流電圧を阻止する。また、この際、制御器10は、第2スイッチング素子SW2に第3モードの全期間に渡ってオン信号のゲート信号を送出する。すると、第2スイッチング素子SW2が第3モードの全期間に渡って導通状態になる。
【0099】
また、制御器10は、第1放電スイッチング素子SW5に、第3モードから次サイクルの第1モードまでの全期間に渡ってオフ信号のゲート信号を送出し、それにより、第1放電スイッチング素子SW5が、第3モードから次サイクルの第1モードまでの全期間に渡って遮断状態になる。
【0100】
図7を参照すると、交流溶接用電源装置100が以上の状態になると、変圧器3の一次側においては、インバータ2から変圧器3への入力電流Iiが、変圧器3の一次巻線31を、一端31aから他端31bに向かう方向に流れる一方、変圧器3の二次側においては、出力電流Ioが、変圧器3の二次巻線32の中間点32cから、順に、平滑リアクトル9、第1出力端6、アーク発生部8、第2出力端、第2双方向スイッチ5、及び変圧器3の二次巻線32の他端32bを通って、変圧器3の二次巻線32の中間点32cに戻るように流れる。
【0101】
また、第2スナバコンデンサCs2は、第2双方向スイッチ5の両端電圧に応じた電圧CV2に充電される。但し、その前記他端(第3ダイオードD3のアノード側の端)が、第3ダイオードD3によって、変圧器3から出力される逆相二次側交流電圧の最低電位(負極)に維持される。
【0102】
また、第1スナバコンデンサCs1は、第1双方向スイッチ4の両端電圧に応じた電圧CV1に充電される。但し、その前記他端(第1ダイオードD1のカソード側の端)が、第1ダイオードD1によって、変圧器3から出力される同相二次側交流電圧の最高電位(正極)に維持される。
【0103】
以上のようにして、交流溶接用電源装置100において、負側逆相整流が行われる。
【0104】
{負側同相整流}
図1、
図3、及び
図8を参照すると、制御器10は、次に、一次側交流電圧が第2半サイクル期間になると、第1双方向スイッチ4を負方向に導通状態にするとともに第2双方向スイッチ5を遮断状態にする。具体的には、制御器10は、第1スイッチング素子SW1にオン信号のゲート信号を送出する。すると、第1スイッチング素子SW1が導通状態になるとともに第2スイッチング素子SW2が既に第3モードの全期間に渡って導通状態になっているので、第1双方向スイッチ4が、変圧器3から出力される同相二次側交流電圧を整流して同相半波負極直流電圧を出力する。
【0105】
その一方、制御器10は、第3スイッチング素子SW3にオフ信号のゲート信号を送出する。すると、第3スイッチング素子SW3が遮断状態になり、第2双方向スイッチ5が遮断状態になる。これにより、第2双方向スイッチ5が、変圧器3から出力される逆相二次側交流電圧を阻止する。
【0106】
図8を参照すると、交流溶接用電源装置100が以上の状態になると、変圧器3の一次側においては、インバータ2から変圧器3への入力電流Iiが、変圧器3の一次巻線31を、他端31bから一端31aに向かう方向に流れる一方、変圧器3の二次側においては、出力電流Ioが、変圧器3の二次巻線32の中間点32cから、順に、平滑リアクトル9、第1出力端6、アーク発生部8、第2出力端7、第1双方向スイッチ4、及び変圧器3の二次巻線32の一端32aを通って、変圧器3の二次巻線32の中間点32cに戻るように流れる。
【0107】
また、第1スナバコンデンサCs1は、第1双方向スイッチ4の両端電圧に応じた電圧CV1に充電され、第2スナバコンデンサCs2は、第2双方向スイッチ5の両端電圧に応じた電圧CV2に充電される。以上のようにして、交流溶接用電源装置100において、負側同相整流が行われる。
【0108】
このようにして、上記負側逆相整流及び負側同相整流によって、第1及び第2双方向スイッチ4,5が第1出力端6と第2出力端7との間に全波負極直流電圧を供給する。
【0109】
<第4モード>
図9は、第4モードである負から正への極性切り替え時の充電電流及び放電電流の流れを
図1の回路において示す図である。
【0110】
第4モードでは、制御器10は、出力電圧及び出力電流の負から正への極性切り替え制御及び第2アーク切れ防止制御を行う。
【0111】
図1、
図3、及び
図9参照すると、制御器10は、交流溶接用の電圧(又は電流)の極性切り替え周波数に応じた所定のタイミングで、第1及び第2双方向スイッチ4,5を遮断状態にする。具体的には、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4に、オフ信号のゲート信号を送出する。すると、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4が遮断状態になり、第1及び第2双方向スイッチ4,5が遮断状態になる。これにより、第4モードが開始される。
【0112】
すると、
図9に破線の矢印で示すように、アーク発生部8である溶接トーチのトーチケーブルのインダクタンス成分Lsに蓄えられた磁気エネルギーによってサージ電圧が発生し、このサージ電圧によって、第2出力端7から、第2スナバコンデンサCs2を通り、そこで分流して、一方の分流が、第3ダイオードD3及び変圧器3の二次巻線32の他端32bを通って当該二次巻線32の中間点32cに至るとともに、他方の分流が第4ダイオードD4及び変圧器3の二次巻線32の一端32aを通って当該二次巻線32の中間点32cに至り、そこで双方の分流が合流して、その合流した流れが平滑リアクトル9及び第1出力端6を通ってアーク発生部8に戻るように、第2スナバコンデンサCs2への充電電流Icが流れる。
【0113】
従って、このサージ電圧による充電電流Icによって、従来は抵抗素子で消費されるエネルギーが、第2スナバコンデンサCs2に蓄えられる。
【0114】
一方、この充電電流が流れる前後において、制御器10は、第2放電スイッチング素子SW6にオン信号のゲート信号を送出し、それによって、第2放電スイッチング素子SW6を導通状態にする。すると、第2スナバコンデンサCs2が放電し、
図9に点線の矢印で示すように、その放電電流Idが、第2出力端7、アーク発生部8、限流抵抗素子R1、及び第2放電スイッチング素子SW6を通って第2スナバコンデンサCs2に戻るように流れる。この放電電流Idの方向は、サージ電圧による充電電流Icの方向と逆であるので、第2スナバコンデンサCs2の電圧CV2は、充電電流Ic及び放電電流Idの関係で決まる。
【0115】
ここで、制御器10のメモリには、アーク切れを防止する最適な電圧になるような第2放電スイッチング素子SW6の導通期間(以下、「第2最適導通期間」と呼ぶ)が予め記憶されている。この「第2最適導通期間」は、シミュレーション、実験、計算等によって求められる。
【0116】
制御器10は、「第2最適導通期間」の間、第2放電スイッチング素子SW6を導通状態にする。これにより、第2スナバコンデンサCs2からアーク切れを防止する正極の直流電圧が、トーチケーブルのインダクタンス成分Ls及びアーク発生部8に供給される。
【0117】
以上のようにして、アーク切れを防止しつつ、出力電圧の負から正への極性切り替えが行われる。
【0118】
これを、
図3の最上段の出力電流の波形図を参照しながら、詳しく説明する。
図3を参照すると、「第2最適導通期間」は、例えば、第4モードの開始とともに始まり、第4モードの終了とともに終了する。「第2最適導通期間」においては、当初、充電電流Icが放電電流Idより大きいが、途中で放電電流Idが充電電流Icより大きくなり、この時点で、出力電流Io及び出力電圧の極性が負極から正極に切り替わる。そして、充電電流Icに対する放電電流Idの差電流である正極の出力電流Ioの電流値が充電電流Icの減少に伴って増加し、やがて充電電流Icが消滅すると、出力電流Ioの電流値が放電電流Idの略一定の電流値Id=CV2/R(A)(CV2は第2スナバコンデンサCs2の電圧(V)、Rは限流抵抗素子R1の抵抗値(Ω)。)になる。その後、出力電流Ioは、「第2最適導通期間」が終了するまで当該略一定の電流値を維持する。「第2最適導通期間」が終了すると、第2放電スイッチング素子SW6が遮断状態にされる。これにより、第4モードが終了する。
【0119】
なお、第4モードから第1モードへ移行する際に、アーク発生部8に印加される電圧が、第4モードの第2スナバコンデンサCs2による正極電圧から第3モードの第1双方向スイッチ4又は第2双方向スイッチ5による正極電圧に切り替わるが、トーチケーブルのインダクタンス成分Lsによって出力電流Ioが維持される。従って、アーク切れを防止しつつ、出力電圧及び出力電流Ioの負から正への極性切り替えが好適に行われる。
【0120】
また、第2放電スイッチング素子SW6が「第2最適導通期間」の終了時にターンオフしたとき、それによるサージ電圧が第2ハイパスフィルタHf2によってバイパスされ、それよって、第2放電スイッチング素子SW6が保護される。
【0121】
<その他の動作>
制御器10は、ユーザインタフェースの第2交流溶接指示部から、ユーザが第2交流溶接を指示する指令が入力されると、交流溶接用電源装置100に上述の第3モードから交流溶接を実行させる。これによって第2交流溶接を行うことができる。また、ユーザインタフェースの正極直流溶接指示部から、ユーザが正極直流溶接を指示する指令が入力されると、交流溶接用電源装置100に上述の第1モードを実行させる。これによって、正極直流溶接を行うことができる。また、制御器10は、ユーザインタフェースの負極直流溶接指示部から、ユーザが負極直流溶接を指示する指令が入力されると、交流溶接用電源装置100に上述の第3モードを実行させる。これによって、負極直流溶接を行うことができる。
【0122】
[変形例]
本変形例においては、「第1最適導通期間」が、第2モードで終了せずに、第3モードの出力電圧の立ち上がり区間まで延長される。例えば、「第1最適導通期間」は、第3モードの出力電圧の立ち下がり区間の終了まで延長される。この場合、第2モードは、第3モードの開始(第1双方向スイッチ4又は第2双方向スイッチ5の負方向への導通)によって終了する。また、第3モードは、第1放電スイッチング素子SW5が遮断状態にされて「第1最適導通期間」が終了するまでのサブモードと残りの部分のサブモードとに分割される。上述のように、「第1最適導通期間」の長さは、充電電流Icと放電電流Idとの関係において、第1スナバコンデンサCs1の電圧CV1が「アーク切れを防止する最適な負電圧」になるような長さに決定される。従って、「第1最適導通期間」を、第3モードの出力電圧の立ち下がり区間の終了まで延長することによって、充電電流Icと放電電流Idとの関係から「第1最適導通期間」を長くせざるを得ない場合においても、「アーク切れを防止する最適な負電圧」を好適に設定することができる。
【0123】
また、本変形例において、「第2最適導通期間」が、第4モードで終了せずに、次のサイクルの第1モードの出力電圧の立ち上がり区間まで延長される。例えば、「第2最適導通期間」は、第1モードの出力電圧の立ち上がり区間の終了まで延長される。この場合、第4モードは、第1モードの開始(第1双方向スイッチ4又は第2双方向スイッチ5の正方向への導通)によって終了する。また、第1モードは、第2放電スイッチング素子SW6が遮断状態にされて「第2最適導通期間」が終了するまでのサブモードと残りの部分のサブモードとに分割される。上述のように、「第2最適導通期間」の長さは、充電電流Icと放電電流Idとの関係において、第2スナバコンデンサCs2の電圧CV2が「アーク切れを防止する最適な正電圧」になるような長さに決定される。従って、「第2最適導通期間」を、次のサイクルの第1モードの出力電圧の立ち下がり区間の終了まで延長することによって、充電電流Icと放電電流Idとの関係から「第2最適導通期間」を長くせざるを得ない場合においても、「アーク切れを防止する最適な正電圧」を好適に設定することができる。
【0124】
[作用効果]
以上に説明したように、実施形態1によれば、第1に、2つの双方向スイッチ4,5を用いて、変圧器3の二次巻線32に出力される交流電圧の整流とアーク溶接用の直流電圧の極性の切り替えとを行うことができ、当該切り替えに関する構成を簡素化することができる。従って、変圧された交流電力の整流及び交流化の回路構成を簡素化可能な交流溶接用電源装置100を提供できる。
【0125】
第2に、一次側交流電圧の一方の半サイクル期間に同期して一方の一対のスイッチング素子SW1,SW2が導通状態になり、且つ、一次側交流電圧の他方の半サイクル期間に同期して他方の一対のスイッチング素子SW3,SW4が導通状態になるので、変圧器3から出力される二次側交流電圧を整流する際の整流素子による電圧降下(両端電圧)がスイッチング素子の電圧降下のみになるので、一対のスイッチング素子として、導通時における電圧降下がダイオードの電圧降下より小さいスイッチング素子を選択することによって、整流素子による電力損失を低減することができ、交流溶接用電源装置100の効率を向上させることができる。
【0126】
第3に、第1及び第2双方向スイッチ4,5の一対のスイッチング素子のうちの一方を常時オン状態にして他方のみをオンオフすることによって、第1及び第2双方向スイッチ4,5の導通状態と遮断状態とを切り替えるので、第1双方向スイッチ4及び第2双方向スイッチ5を高速動作させることができる。
【0127】
第4に、制御器10が、出力電圧の極性を切り替える際に、アーク切れを防止する最適な電圧になるよう第1放電スイッチング素子SW5又は第2放電スイッチング素子SW6の導通期間を制御することによって、第1スナバコンデンサCs1又は第2スナバコンデンサCs2からアーク切れを防止する負極又は正極の電圧をトーチケーブルのインダクタンス成分Ls及びアーク発生部8に供給することができる。その結果、出力電圧の極性を切り替える際のアーク切れを好適に防止することができる。
【0128】
(実施形態2)
実施形態2では、以下の点が実施形態1と異なり、その他の点は実施形態1(変形例を含む)と同じである。以下、この相違点を説明する。
【0129】
図10Aは、本開示の実施形態2に係る交流溶接用電源装置100の第1双方向スイッチ4の構成の一例を示す回路図である。
図10Bは、本開示の実施形態2に係る交流溶接用電源装置100の第2双方向スイッチ5の構成の一例を示す回路図である。
【0130】
図10Aを参照すると、実施形態2では、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4が、一方向に流れる電流のみを選択的に導通及び遮断可能なスイッチング素子である。第1双方向スイッチ4は、互いに逆直列接続された第1の一対のスイッチング素子SW1,SW2と、この第1の一対のスイッチング素子SW1,SW2にそれぞれ逆並列に接続されるとともに互いに逆直列接続された第1の一対のダイオード41、42と、を含む。
【0131】
図10Bを参照すると、第2双方向スイッチ5は、互いに逆直列接続された第2の一対のスイッチング素子SW3,SW4と、この第2の一対のスイッチング素子SW3,SW4にそれぞれ逆並列に接続されるとともに互いに逆直列接続された第2の一対のダイオード51、52と、を含む。
【0132】
第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4は、例えば、バイポーラトランジスタ、IGBT等で構成される。個々のダイオード41,42,51,52は、外付けダイオードである。
【0133】
実施形態2においても実施形態1と同様に、一次側交流電圧の半サイクル期間毎に変圧器3の二次巻線32に出力される交流電圧の正側整流(第1モード)又は負側整流(第3モード)が第1及び第2双方向スイッチ4,5によって行われる。但し、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4は、例えば、第1モードにおいて、第1スイッチング素子SW1が第1モードの全期間に渡って導通状態にされるとともに第2スイッチング素子SW2が第1モードの全期間に渡って遮断状態にされ、且つ、第3スイッチング素子SW3が第1モードの全期間に渡って導通状態にされるとともに第4スイッチング素子SW4が第1モードの全期間に渡って遮断状態にされる。すなわち、同期整流が行われない。この場合、{正側同相整流}では、出力電流Ioが第2スイッチング素子SW2に逆並列接続されたダイオード42を流れる。また、{正側逆相整流}では、出力電流Ioが第4スイッチング素子SW4に逆並列接続されたダイオード52を流れる。
【0134】
また、第3モードにおいて、第4スイッチング素子SW4が第3モードの全期間に渡って導通状態にされるとともに第3スイッチング素子SW3が第3モードの全期間に渡って遮断状態にされ、且つ、第2スイッチング素子SW2が第3モードの全期間に渡って導通状態にされるとともに第1スイッチング素子SW1が第3モードの全期間に渡って遮断状態にされる。すなわち、同期整流が行われない。この場合、{負側逆相整流}では、出力電流Ioが第3スイッチング素子SW3に逆並列接続されたダイオード51を流れる。また、{負側同相整流}では、出力電流Ioが第1スイッチング素子SW1に逆並列接続されたダイオード41を流れる。
【0135】
なお、第1乃至第4スイッチング素子SW1~SW4が、実施形態1と同様にオンオフ制御されてもよい。この場合も、上記と同様に出力電流Ioが流れる。
【0136】
以上のように構成された実施形態2は、実施形態1と異なり、交流溶接用電源装置100の効率を向上させることができない。しかし、実施形態2は、それ以外の効果を実施形態1と同様に得ることができる。
【0137】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の交流溶接用電源装置は、変圧された交流電力の整流及び交流化の回路構成を簡素化可能な交流溶接用電源装置として有用である。
【符号の説明】
【0139】
1 直流電源
2 インバータ
3 変圧器
4 第1双方向スイッチ
5 第2双方向スイッチ
6 第1出力端
7 第2出力端
8 アーク発生部
9 平滑リアクトル
10 制御器
31 一次巻線
31a 一端
31b 他端
32 二次巻線
32a 一端
32b 他端
32c 中間点
41,42、51,52,61,62 ダイオード
Cs1~Cs4 第1乃至第4スナバコンデンサ
D1~D4 第1乃至第4ダイオード
Hf1 第1ハイパスフィルタ
Hf2 第2ハイパスフィルタ
Ls インダクタンス成分
SW1~SW4 第1乃至第4スイッチング素子
SW5 第1放電スイッチング素子
SW6 第2放電スイッチング素子
R1 限流抵抗素子