(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012034
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】カッティングヘッド付きプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20250117BHJP
B41J 11/66 20060101ALI20250117BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J11/66
B26D5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114558
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】松永 翔
(72)【発明者】
【氏名】古川 倫久
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3C024
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056HA37
2C056HA44
2C056HA60
2C056KD10
2C058AB11
2C058AC07
2C058AC11
2C058AE08
2C058AF51
2C058LA04
2C058LA07
2C058LA09
2C058LA29
2C058LB06
2C058LB42
3C024AA06
(57)【要約】
【課題】プリントキャリッジとカットキャリッジとをより安定して連結する。
【解決手段】連結機構は、マグネット81と、プリントキャリッジに設けられるとともにマグネット81を支持する支持部材82と、カットキャリッジに設けられマグネット81に吸着する吸着体と、を備える。支持部材82は、マグネット81を支持する支持部82aと、プリントキャリッジに取り付けられる取付部82bと、支持部82aおよび取付部82bに接続された補強部82c、82dと、を備え、プリントキャリッジに対して、主走査方向Yに直交する第1直交方向に延びる第1の軸線L1周りに回転可能に構成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するプリントヘッドと、
前記プリントヘッドを保持するプリントキャリッジと、
記録媒体を切断可能なカッターを有するカッティングヘッドと、
前記カッティングヘッドを保持するカットキャリッジと、
主走査方向に延び、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジが前記主走査方向に摺動可能に係合したガイドレールと、
前記プリントキャリッジまたは前記カットキャリッジを前記ガイドレールに沿って移動させる移動装置と、
前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジに設けられ、前記プリントキャリッジと前記カットキャリッジとを連結する連結機構と、を備え、
前記連結機構は、
マグネットと、
前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの一方に設けられるとともに前記マグネットを支持する支持部材と、
前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの他方に設けられ、前記マグネットに吸着する吸着体と、を備え、
前記支持部材は、前記マグネットを支持する支持部と、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方に取り付けられる取付部と、前記支持部および前記取付部に接続された補強部と、を備え、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方に対して、前記主走査方向に直交する第1直交方向に延びる第1の軸線周りに回転可能に構成されている、
カッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項2】
前記吸着体は、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記他方に対して、前記主走査方向および前記第1直交方向に直交する第2直交方向に延びる第2の軸線周りに回転可能なように構成されている、
請求項1に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項3】
前記連結機構は、
前記支持部材を前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方に固定する第1固定部材と、
前記吸着体を前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記他方に固定する第2固定部材と、を備え、
前記支持部材は、前記第1固定部材による固定を緩めると前記第1の軸線周りに回転可能なように構成され、
前記吸着体は、前記第2固定部材による固定を緩めると前記第2の軸線周りに回転可能なように構成されている、
請求項2に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項4】
前記取付部は、前記第1直交方向にそれぞれ貫通する第1貫通孔および第2貫通孔を備え、
前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方は、それぞれ前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と向かい合う位置に形成され前記第1直交方向に延びる第1ネジ孔および第2ネジ孔を備え、
前記第1固定部材は、
前記第1貫通孔に挿通されるとともに前記第1ネジ孔に螺合された第1ネジと、
前記第2貫通孔に挿通されるとともに前記第2ネジ孔に螺合された第2ネジと、を含み、
前記第1貫通孔は、前記第1ネジの径に対応した径を有し、
前記第2貫通孔は、前記支持部材が前記第1貫通孔を中心として回転可能なように、前記第2ネジの径よりも大きく形成されている、
請求項3に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項5】
前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方は、
前記プリントヘッドまたは前記カッティングヘッドを収容するケースと、
前記主走査方向および前記第1直交方向に延び、前記ケースを支持する取付板と、を備え、
前記取付板は、前記主走査方向および前記第1直交方向に延びる面の一部を切り曲げることにより形成され、前記第1直交方向を向いた取付面を有し、
前記第1ネジ孔および前記第2ネジ孔は、前記取付面に形成されている、
請求項4に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項6】
前記主走査方向および前記第1直交方向に直交する方向を第2直交方向として、
前記連結機構は、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方と前記支持部材との間に介在し、前記第1の軸線周りに回転可能に前記支持部材を支持するとともに、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方に対して前記第2直交方向に延びる第2の軸線周りに回転可能な他の支持部材を備えている、
請求項1に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項7】
前記連結機構は、
前記支持部材を前記他の支持部材に固定する固定部材と、
前記他の支持部材を前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方に固定する他の固定部材と、を備え、
前記支持部材は、前記固定部材による固定を緩めると前記第1の軸線周りに回転可能なように構成され、
前記他の支持部材は、前記他の固定部材による固定を緩めると前記第2の軸線周りに回転可能なように構成されている、
請求項6に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項8】
前記取付部は、前記第1直交方向にそれぞれ貫通する第1貫通孔および第2貫通孔を備え、
前記他の支持部材は、それぞれ前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と向かい合う位置に形成され前記第1直交方向に延びる第1ネジ孔および第2ネジ孔を備え、
前記固定部材は、
前記第1貫通孔に挿通されるとともに前記第1ネジ孔に螺合された第1ネジと、
前記第2貫通孔に挿通されるとともに前記第2ネジ孔に螺合された第2ネジと、を含み、
前記第1貫通孔は、前記第1ネジの径に対応した径を有し、
前記第2貫通孔は、前記支持部材が前記第1貫通孔を中心として回転可能なように、前記第2ネジの径よりも大きく形成されている、
請求項6に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項9】
前記他の支持部材は、前記第2直交方向にそれぞれ貫通する第3貫通孔および第4貫通孔を備え、
前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方は、それぞれ前記第3貫通孔および前記第4貫通孔と向かい合う位置に形成され前記第2直交方向に延びる第3ネジ孔および第4ネジ孔を備え、
前記他の固定部材は、
前記第3貫通孔に挿通されるとともに前記第3ネジ孔に螺合された第3ネジと、
前記第4貫通孔に挿通されるとともに前記第4ネジ孔に螺合された第4ネジと、を含み、
前記第3貫通孔は、前記第3ネジの径に対応した径を有し、
前記第4貫通孔は、前記他の支持部材が前記第3貫通孔を中心として回転可能なように、前記第4ネジの径よりも大きく形成されている、
請求項8に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【請求項10】
前記補強部は、前記取付部を挟んで対向する一対の補強部材であって、それぞれが前記支持部と前記取付部とに接続された一対の補強部材を含んでいる、
請求項1に記載のカッティングヘッド付きプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッティングヘッド付きプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に印刷を行うプリントヘッド、および、記録媒体を切断するカッティングヘッドをともに備えたカッティングヘッド付きプリンタが従来から知られている。例えば特許文献1には、プリントヘッド(インクヘッド)と、カッティングヘッドと、プリントヘッドとカッティングヘッドとを連結する連結装置と、プリントヘッドおよびカッティングヘッドが摺動自在に係合したガイドレールと、カッティングヘッドをガイドレールに沿って移動させる装置と、を備えたカッティングヘッド付きプリンタが開示されている。特許文献1に記載の連結装置は、プリントヘッドに設けられたマグネットと、カッティングヘッドに設けられマグネットに吸着する板金と、を備えている。プリントヘッドは、カッティングヘッドと連結されることにより、移動装置により移動可能となる。
【0003】
特許文献1に記載の連結装置は、さらに、マグネットの吸着面と反対側に挿入されたゴム部材を備えている。特許文献1によれば、マグネットと板金とが連結されると、マグネットの吸着面と板金の吸着面とが平行になるようにゴム部材が変形する。そのため、マグネットと板金との接触面積が大きくなり、プリントヘッドとカッティングヘッドとの連結力が強くなる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクヘッドとカッティングヘッドとを連結し、または切り離す際、マグネットを保持する部材には比較的大きな衝撃荷重が加わる。このため、マグネットを保持する部材の剛性が低いと、マグネットを保持する部材に撓みが発生する場合がある。引用文献1に記載されたような構成の場合には、ゴム部材の変形によってもマグネットの吸着面を板金の吸着面に対して平行とすることができず、吸着力が弱くなり、安定した連結力を発揮できない場合が発生する。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プリントヘッドを搭載したプリントキャリッジとカッティングヘッドを搭載したカットキャリッジとを連結する連結機構を備えるカッティングヘッド付きプリンタであって、より安定した連結力を発揮できるカッティングヘッド付きプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するカッティングヘッド付きプリンタは、インクを吐出するプリントヘッドと、前記プリントヘッドを保持するプリントキャリッジと、記録媒体を切断可能なカッターを有するカッティングヘッドと、前記カッティングヘッドを保持するカットキャリッジと、主走査方向に延び前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジが前記主走査方向に摺動可能に係合したガイドレールと、前記プリントキャリッジまたは前記カットキャリッジを前記ガイドレールに沿って移動させる移動装置と、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジに設けられ前記プリントキャリッジと前記カットキャリッジとを連結する連結機構と、を備える。前記連結機構は、マグネットと、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの一方に設けられるとともに前記マグネットを支持する支持部材と、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの他方に設けられ、前記マグネットに吸着する吸着体と、を備えている。前記支持部材は、前記マグネットを支持する支持部と、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方に取り付けられる取付部と、前記支持部および前記取付部に接続された補強部と、を備え、前記プリントキャリッジおよび前記カットキャリッジのうちの前記一方に対して、前記主走査方向に直交する第1直交方向に延びる第1の軸線周りに回転可能に構成されている。
【0008】
上記カッティングヘッド付きプリンタによれば、マグネットを支持する支持部材を主走査方向に直交する第1の軸線周りに回転可能とすることにより、マグネットの向きを吸着体の向きに合わせることができる。また、支持部材は、マグネットを支持する支持部と、プリントキャリッジまたはカットキャリッジに取り付けられた取付部と、に接続された補強部を備えている。補強部は、支持部と取付部とを接続することにより、支持部の剛性を向上させている。そのため、支持部が撓みにくくなり、プリントキャリッジとカットキャリッジとを連結し、または切り離す際にも、マグネットの向きを維持することができる。これにより、連結機構によるプリントキャリッジとカットキャリッジとの連結を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るカッティングヘッド付きプリンタの斜視図である。
【
図2】プリントキャリッジおよびカットキャリッジの正面図である。
【
図5】プリントキャリッジのベースプレートの斜視図である。
【
図8】マグネットホルダが取り付けられた状態のベースプレートの平面図である。
【
図10】第2実施形態に係るプリントキャリッジのベースプレートの斜視図である。
【
図12】マグネットホルダおよびマウント部材が取り付けられた状態のベースプレートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
[カッティングヘッド付きプリンタの構成]
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るカッティングヘッド付きプリンタ10(以下、プリンタ10)の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、シート状の記録媒体5に対して印刷およびカッティングを行う装置である。記録媒体5は、例えば、台紙と台紙上に積層されかつ粘着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材であってもよく、記録紙や樹脂製のシート等であってもよい。記録媒体5は印刷およびカッティングのうちの少なくとも一方が可能な記録媒体であれば足り、特に限定されない。
【0011】
本明細書において「切断」とは、記録媒体5の厚み方向の全体を切断する場合(例えば、シール材の台紙および剥離紙の両方を切断する場合)と、記録媒体5の厚み方向の一部を切断する場合(例えば、シール材の台紙は切断せず、剥離紙のみを切断する場合)とを含む。
【0012】
プリンタ10は、本体11と、本体11に設けられ記録媒体5を支持するプラテン12と、プラテン12に支持された記録媒体5を搬送する搬送装置20と、記録媒体5にインクを吐出するプリントヘッド30と、プリントヘッド30を保持するプリントキャリッジ40と、記録媒体5を切断するカッティングヘッド50と、カッティングヘッド50を保持するカットキャリッジ60と、プリントキャリッジ40およびカットキャリッジ60を移動させるキャリッジ移動装置70と、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とを連結する連結機構80と、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とを連結解除して分離する分離装置90(
図2参照)と、を備えている。
【0013】
詳細は後述するが、キャリッジ移動装置70によるプリントキャリッジ40およびカットキャリッジ60の移動方向は、図示Y方向である。また、記録媒体5は、搬送装置20により、図示X方向に搬送される。以下では、Y方向を主走査方向ともいい、X方向を副走査方向ともいう。主走査方向Yは、ここでは、左右方向である。副走査方向Xは、ここでは、前後方向である。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは互いに直交している。上下方向Zは、主走査方向Yに直交する第1直交方向の一例である。副走査方向Xは、主走査方向Yに直交する第2直交方向の一例である。図面の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。
【0014】
図1に示すように、搬送装置20は、グリットローラ21と、ピンチローラ22と、フィードモータ23とを備えている。グリットローラ21は、プラテン12に設けられている。グリットローラ21は、フィードモータ23に駆動されることによって回転する。ピンチローラ22は、グリットローラ21の上方に配置されている。ピンチローラ22は、グリットローラ21と対向するように設けられている。ピンチローラ22は、グリットローラ21に対し接近および離反が可能なように、上下に揺動自在に構成されている。記録媒体5がピンチローラ22とグリットローラ21との間に挟み込まれた状態でグリットローラ21が回転すると、記録媒体5は前方または後方に搬送される。なお、
図1では、3つのグリットローラ21および2つのピンチローラ22しか図示されていないが、実際にはより多くのグリットローラ21およびピンチローラ22がそれぞれ主走査方向Yに配列されていてもよい。
【0015】
図2は、プリントキャリッジ40およびカットキャリッジ60の正面図である。
図2は、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とが連結された状態を示している。キャリッジ移動装置70は、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とが連結された状態では、両者を一体で移動させる。また、キャリッジ移動装置70は、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とが分離された状態では、カットキャリッジ60だけを単独で移動させる。
【0016】
図2に示すように、キャリッジ移動装置70は、ガイドレール71と、ベルト72と、スキャンモータ73と、を備えている。ガイドレール71は、プラテン12の上方に設けられている。ガイドレール71は主走査方向Yに延びている。ガイドレール71には、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とが主走査方向Yに摺動可能に係合している。ここでは、カッティングヘッド50は、プリントヘッド30よりも左方に配置されている。カットキャリッジ60の背面上部には、主走査方向Yに延びるベルト72が固定されている。ベルト72は、スキャンモータ73に接続されている。スキャンモータ73およびベルト72は、カットキャリッジ60をガイドレール71に沿って移動させる移動装置の一例である。スキャンモータ73が回転すると、ベルト72が主走査方向Yに走行する。これにより、カットキャリッジ60は主走査方向Yに移動する。ただし、キャリッジ移動装置70は、プリントヘッド30をガイドレール71に沿って主走査方向Yに移動させるように構成されていてもよい。その場合には、キャリッジ移動装置70は、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とが分離された状態では、プリントキャリッジ40だけを単独で移動させる。
【0017】
プリントヘッド30は、プリントキャリッジ40に搭載され、プラテン12よりも上方に配置されている。プリントヘッド30は、プラテン12に支持された記録媒体5に向かってインクを吐出する。プリントヘッド30は、複数のインクヘッド31を備えている。複数のインクヘッド31の下面には、それぞれ、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)が形成されている。インクヘッド31は、ここでは、インクジェット方式のヘッドである。インクヘッド31の数量は特に限定されず、インクヘッド31が吐出するインクの種類や色も何ら限定されない。また、インクヘッド31のインク吐出方式も特に限定されない。
【0018】
カッティングヘッド50は、カットキャリッジ60に搭載され、プラテン12よりも上方に配置されている。カッティングヘッド50は、記録媒体5を切断可能なカッター51と、カッター保持装置52とを備えている。カッター保持装置52は、カッター51を上下方向Zに移動させてプラテン12上の記録媒体5に接触または離反させる。カッター保持装置52は、カッター51を上下方向Zに移動させる図示しないソレノイドを備えている。ソレノイドがON/OFFされると、カッター51は上下方向Zに移動して記録媒体5に接触し、あるいは記録媒体5から離反する。
【0019】
連結機構80は、プリントキャリッジ40およびカットキャリッジ60に設けられ、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とを連結する。プリントヘッド30による印刷を行う際には、カットキャリッジ60とプリントキャリッジ40とが連結される。これにより、プリントキャリッジ40は、カットキャリッジ60とともに主走査方向Yに移動可能となる。連結機構80、および、連結機構80に関連するプリントキャリッジ40およびカットキャリッジ60の構成については後述する。
【0020】
分離装置90は、主走査方向Yに移動不能にプリントキャリッジ40をロックすることにより、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とを分離する。
図2に示すように、分離装置90は、プリントキャリッジ40に引っ掛けられるフック91を備えている。フック91は、プリントキャリッジ40およびカットキャリッジ60の可動範囲の右端に設けられている。カッティングヘッド50によるカッティングの際には、プリントキャリッジ40は、可動範囲右端の待機位置に位置付けられる。その状態で、図示しないアクチュエータにより、フック91がプリントキャリッジ40に引っ掛けられる。これにより、プリントキャリッジ40の移動が阻止される。この状態でカットキャリッジ60が左方へ移動すると、カットキャリッジ60とプリントキャリッジ40とが引き離される。これにより、プリントキャリッジ40が待機位置に待機した状態で、カットキャリッジ60だけを主走査方向Yに移動させることが可能となる。
【0021】
図1に示すように、プリンタ10は、制御装置100を備えている。制御装置100は、搬送装置20のフィードモータ23、キャリッジ移動装置70のスキャンモータ73、プリントヘッド30のインクヘッド31、カッティングヘッド50の図示しないソレノイド、および、分離装置90の図示しないアクチュエータの動作を制御している。制御装置100の構成は特に限定されないが、例えば、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。
【0022】
[連結機構の構成]
以下では、連結機構80、および、連結機構80に関連するプリントキャリッジ40およびカットキャリッジ60の構成について説明する。
図3は、プリントキャリッジ40の斜視図である。
図3は、左側面、すなわちカットキャリッジ60側の側面が見えるように図示したプリントキャリッジ40の斜視図である。
図4は、カットキャリッジ60の斜視図である。
図4は、右側面、すなわちプリントキャリッジ40側の側面が見えるように図示したカットキャリッジ60の斜視図である。
図3および
図4に示すように、連結機構80は、マグネット81と、マグネット81を支持するマグネットホルダ82と、その一部がマグネット81と向かい合う(
図2も参照)ように設けられた吸着板83と、を備えている。マグネット81およびマグネットホルダ82は、プリントキャリッジ40に設けられている。吸着板83は、カットキャリッジ60に設けられている。吸着板83は、マグネット81に吸着するように磁性体によって形成されている。吸着板83は、マグネット81に吸着する吸着体の一例である。
【0023】
図3に示すように、プリントキャリッジ40は、プリントヘッド30(
図2参照)を収容するケース41と、ケース41を支持するベースプレート42と、ベースプレート42に固定されるとともにガイドレール71に摺動自在に係合したリニアガイド43(
図2参照)と、を備えている。
【0024】
図5は、プリントキャリッジ40のベースプレート42の斜視図である。
図5に示すように、ベースプレート42は、板状の部材である。ベースプレート42は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びている。ベースプレート42には、マグネットホルダ82が取り付けられるマウント部42aが形成されている。マウント部42aは、ベースプレート42の左端に設けられている。
図5に示すように、マウント部42aは、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びたベースプレート42の面42bの一部を切断し、上下方向Zを向くように曲げることにより形成されている。詳しくは、ベースプレート42の面42bには、主走査方向Yに延び、左縁まで切り抜けた横切断部42cと、横切断部42cの右端から下方に延びる縦切断部42dとが形成されている。面42bの一部は、縦切断部42dの下端から主走査方向Yに延びる曲げ部42eに沿って前方に曲げられている。この前方に曲げられた部分により、上方を向いたマウント部42aが形成されている。マウント部42aの上面は、マグネットホルダ82が取り付けられる取付面42a1を構成している。
【0025】
取付面42a1には、マグネットホルダ82を固定するためのネジ84L,84R(後述、いずれも
図8参照)が螺合されるネジ孔42fL,42fRが形成されている。ネジ孔42fL,42fRは、主走査方向Yに並んで設けられている。ただし、ネジ孔42fL,42fRの並び方向は、主走査方向Yには限定されない。ネジ孔42fL,42fRは、上下方向Zに延びている。左側のネジ孔42fLは、第1ネジ孔の一例である。右側のネジ孔42fRは、第2ネジ孔の一例である。ここでは、ネジ孔42fL,42fRは、それぞれ、マウント部42aを貫通している。ただし、ネジ孔42fL,42fRは、マウント部42aを貫通する貫通ネジ孔でなければならないわけではない。
【0026】
図6および
図7は、マグネットホルダ82の斜視図である。
図8は、マグネットホルダ82が取り付けられた状態のベースプレート42の平面図である。
図6および
図7に示すように、マグネットホルダ82は、マグネット81を支持する支持壁82aと、支持壁82aに接続された底壁82bと、支持壁82aおよび底壁82bに接続された第1補強壁82cと、同じく支持壁82aおよび底壁82bに接続された第2補強壁82dと、を備えている。第1補強壁82cおよび第2補強壁82dは、支持壁82aと底壁82bとに接続され、支持壁82aの剛性を向上させる補強部を構成している。
【0027】
支持壁82aは、上下方向Zおよび副走査方向Xに延びている。ここでは、支持壁82aは、マグネットホルダ82の左側壁、すなわち、カットキャリッジ60の側の側壁である。マグネット81は、ここでは、有底かつ中空の円柱状の形状を有している。ただし、マグネット81の形状は特に限定されない。マグネット81は、カットキャリッジ60の方向(ここでは左方)を向いた平面を有していればよい。マグネット81の底部は、支持壁82aに締結されたネジ85によって支持壁82aに固定されている。ただし、支持壁82aがマグネット81を支持する構成は特に限定されない。
【0028】
底壁82bは、支持壁82aの下縁に接続されている。底壁82bは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。底壁82bは、ネジ84L,84Rによってプリントキャリッジ40(詳しくは、ベースプレート42の取付面42a1)に固定される壁部である。ただし、底壁82bは、ネジ84L,84Rを緩めるとプリントキャリッジ40(取付面42a1)に対して前後方向に回転するように構成されている。底壁82bは、プリントキャリッジ40に取り付けられる取付部の一例である。
【0029】
図7に示すように、底壁82bは、上下方向Zにそれぞれ貫通する左貫通孔82eLと右貫通孔82eRとを備えている。左貫通孔82eLと右貫通孔82eRとは、主走査方向Yに並んでいる。取付面42a1の左ネジ孔42fLおよび右ネジ孔42fRは、それぞれ、左貫通孔82eLと右貫通孔82eRに向かい合う位置に形成されている(
図8を参照)。左側ネジ84Lは、左貫通孔82eLに挿通されるとともに左ネジ孔42fLに螺合されている。右側ネジ84Rは、右貫通孔82eRに挿通されるとともに右ネジ孔42fRに螺合されている。左側ネジ84Lおよび右側ネジ84Rは、マグネットホルダ82をプリントキャリッジ40に固定する第1固定部材の一例である。
【0030】
左貫通孔82eLは、左側ネジ84Lの径に対応した径を有している。左貫通孔82eLは、左側ネジ84Lに対してほとんどガタがないように構成されている。左側ネジ84Lを左貫通孔82eLに挿通しかつ左ネジ孔42fLに螺合させることにより、左貫通孔82eLの位置は、左ネジ孔42fLの上方に決まる。
【0031】
右貫通孔82eRは、マグネットホルダ82が左貫通孔82eLおよび左ネジ孔42fLを中心として回転可能なように、右側ネジ84Rの径よりも大きく形成されている。ここでは、右貫通孔82eRは、副走査方向Xの長さが長い長孔に構成されている。ただし、右貫通孔82eRは、マグネットホルダ82が左貫通孔82eLおよび左ネジ孔42fLを中心として必要なだけ回転可能なように構成されていればよく、その形状は、例えば円形や四角形等であってもよい。
図3および
図8に示すように、以下では、左貫通孔82eLおよび左ネジ孔42fLを通り上下方向Zに延びる軸線を第1の軸線L1とも呼ぶ。第1の軸線L1は、マグネットホルダ82が回転する際の回転軸である。マグネットホルダ82は、ネジ84Lおよび84Rを緩めると、第1の軸線L1周りに回転可能なように構成されている。なお、ネジ84Lおよび84Rを締めると、マグネットホルダ82は、第1の軸線L1周りに回転できず、固定される。
【0032】
図6に示すように、第1補強壁82cは、支持壁82aの副走査方向Xの一方の縁部、ここでは前縁部に接続されている。第1補強壁82cは、底壁82bの前縁部にも接続されている。第1補強壁82cは、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びている。ここで、第1補強壁82c等が「主走査方向Yに延びる」ことには、回転可能な範囲でマグネットホルダ82を回転させ、第1補強壁82c等の伸長方向が僅かに変わった場合も含まれる。なお、後述する吸着板83の向きに関しても同様であり、調整により僅かに向きが変わった場合でも、「吸着板83は上下方向Zに延びる」等と言う。第1補強壁82cは、支持壁82aと底壁82bとを繋ぐことにより、支持壁82aの剛性を向上させている。
【0033】
第2補強壁82dは、支持壁82aの副走査方向Xの他方の縁部、ここでは後縁部に接続されている。第2補強壁82dは、底壁82bの後縁部にも接続されている。第2補強壁82dは、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びている。第2補強壁82dは、第1補強壁82cと略平行に延びている。第2補強壁82dは、底壁82bを挟んで第1補強壁82cと対向している。第2補強壁82dも、支持壁82aと底壁82bとを繋ぐことにより、支持壁82aの剛性を向上させるものである。これらの壁部82a~82dにより、マグネットホルダ82は、無蓋、有底、かつ、支持壁82aの対向面が開放された箱状に構成されている。
【0034】
図3に示すように、マグネットホルダ82は、プリントキャリッジ40の主走査方向Yの側面にマグネット81を配置する。ここでは、マグネット81は、マグネットホルダ82によってプリントキャリッジ40の左側面(カットキャリッジ60の側の側面)に配置されている。これにより、マグネット81は、カットキャリッジ60の方を向いている。
【0035】
図4に示すように、カットキャリッジ60は、カッティングヘッド50(
図2参照)を収容するケース61と、ガイドレール71に摺動自在に係合したリニアガイド62と、を備えている。本実施形態では、吸着板83は、ケース61を支持するとともにリニアガイド62に固定されている。吸着板83は、カットキャリッジ60のベースプレートを兼ねている。
図4に示すように、吸着板83は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びベースプレートの機能を担うベースプレート部83aと、副走査方向Xおよび上下方向Zに延びマグネット81に吸着される吸着部83bと、を備えている。吸着板83の一部、ここでは吸着部83bは、マグネット81と向かい合うようにカットキャリッジ60に設けられ、マグネット81に吸着する。ベースプレート部83aおよび吸着部83bは、吸着板83を曲げることにより形成されている。吸着板83は、磁性体金属の平板、例えば鉄板からなっている。
【0036】
図9は、カットキャリッジ60の吸着板83(ベースプレート)の正面図である。
図9に示すように、吸着板83は、副走査方向Xにそれぞれ貫通する上貫通孔83cUと下貫通孔83cDとを備えている。上貫通孔83cUと下貫通孔83cDとは、上下方向Zに並んでいる。
図2に示すように、リニアガイド62のうち、上貫通孔83cUおよび下貫通孔83cDに対応する位置には、それぞれ、上ネジ孔62aUおよび下ネジ孔62aDが形成されている。吸着板83の上貫通孔83cUには上側ネジ86Uが挿通されている。上側ネジ86Uは、リニアガイド62の上ネジ孔62aUに螺合されている。吸着板83の下貫通孔83cDには下側ネジ86Dが挿通されている。下側ネジ86Dは、リニアガイド62の下ネジ孔62aDに螺合されている。上側ネジ86Uおよび下側ネジ86Dは、吸着板83をカットキャリッジ60に固定する第2固定部材の一例である。
【0037】
上貫通孔83cUは、上側ネジ86Uの径に対応した径を有している。上貫通孔83cUは、上側ネジ86Uに対してほとんどガタがないように構成されている。上側ネジ86Uを上貫通孔83cUに挿通しかつ上ネジ孔62aUに螺合させることにより、上貫通孔83cUの位置は、上ネジ孔62aUに重なる位置(ここでは前方)に決まる。
【0038】
下貫通孔83cDは、吸着板83が上貫通孔83cUおよび上ネジ孔62aUを中心として回転可能なように、下側ネジ86Dの径よりも大きく形成されている。ここでは、下貫通孔83cDは、下側ネジ86Dよりも径が大きい円形に構成されている。ただし、下貫通孔83cDの形状は、特に限定されない。
図4および
図9に示すように、以下では、上貫通孔83cUおよび上ネジ孔62aUを通り副走査方向Xに延びる軸線を第2の軸線L2とも呼ぶ。第2の軸線L2は、吸着板83が回転する際の回転軸である。吸着板83は、ネジ86Uおよび86Dを緩めると、第2の軸線L2周りに回転可能なように構成されている。ネジ86Uおよび86Dを締めると、吸着板83は、第2の軸線L2周りに回転不能となって固定される。
【0039】
[マグネットおよび吸着板の向き調整手順]
プリンタ10の製造工程では、マグネット81の第1の軸線L1周りの向き、および、吸着板83の第2の軸線L2周りの向きを調整して、マグネット81と吸着板83とを高精度で正対させる調整が行われる。これにより、マグネット81と吸着板83との接触面積が設計通りに確保され、その結果、マグネット81と吸着板83との吸着力が確保される。
【0040】
マグネット81および吸着板83の向き調整は、以下の手順で行われる。まず、マグネットホルダ82は、ネジ84Lおよび84Rを緩く締めた状態で、ベースプレート42に取り付けられる。この状態では、マグネットホルダ82は、
図8の矢印で示すように、第1の軸線L1周りに前後方向に回転し得る。また、吸着板83は、ネジ86Uおよび86Dを緩く締めた状態で、リニアガイド62に取り付けられる。
図9の矢印で示すように、この状態では、吸着板83は、第2の軸線L2周りに、正面視で時計回りおよび反時計回りに回転し得る。
【0041】
上記した状態でマグネット81と吸着板83とを吸着させると、マグネット81およびマグネットホルダ82は、吸着板83の平面視における向き(前後方向の傾き)に合わせるように回転する。同時に、吸着板83は、マグネット81の正面視における向き(上下方向の傾き)に合わせるように回転する。これにより、マグネット81と吸着板83とが高精度で正対し、マグネット81の向きと吸着板83の向きとが一致する。すなわち、マグネット81の向きと吸着板83の向きとが平行となる。この状態で、ネジ84L、84R、86Uおよび86Dを強く締めると、マグネット81の吸着面全体が吸着板83に接触可能な状態でマグネット81および吸着板83が固定される。
【0042】
[第1実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るプリンタ10が奏することができる作用効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係るプリンタ10では、連結機構80は、マグネット81と、プリントキャリッジ40に設けられるとともにマグネット81を支持するマグネットホルダ82と、カットキャリッジ60に設けられマグネット81に吸着する吸着板83と、を備えている。マグネットホルダ82は、マグネット81を支持する支持壁82aと、プリントキャリッジ40に取り付けられる底壁82bと、支持壁82aおよび底壁82bに接続された第1および第2補強壁82c、82d(補強部)と、を備えている。マグネットホルダ82は、プリントキャリッジ40に対して上下方向Zに延びる第1の軸線L1周りに回転可能に構成されている。
【0044】
かかるプリンタ10によれば、マグネット81を支持するマグネットホルダ82を上下方向Zに延びる第1の軸線L1周りに回転可能とすることにより、マグネット81の向きを吸着板83の向きに合わせることができる。また、マグネットホルダ82は、マグネット81を支持する支持壁82aを底壁82bと接続することにより、支持壁82aの剛性を向上させる補強部82c,82dを備えている。そのため、支持壁82aが撓みにくくなり、プリントキャリッジ40とカットキャリッジ60とを連結し、または切り離す際にも、マグネット81の向きを維持することができる。これにより、連結機構80によるプリントキャリッジ40とカットキャリッジ60との連結を安定させることができる。
【0045】
本実施形態では、吸着板83は、カットキャリッジ60に対し、副走査方向Xに延びる第2の軸線L2周りに回転可能なように構成されている。かかる構成によれば、マグネット81を支持するマグネットホルダ82を第1の軸線L1周りに回転させることにより、第1の軸線L1周りのマグネット81の向きを変えることができ、第2の軸線L2周りに吸着板83を回転させることにより、第2の軸線L2周りの吸着板83の向きを変えることができる。これらの機能により、第1の軸線L1周りのマグネット81の向きを吸着板83に合わせること、および、第2の軸線L2周りの吸着板83の向きをマグネット81に合わせることができる。その結果、上下方向Z周りおよび副走査方向X周りともに、マグネット81の向きと吸着板83の向きとが一致する。これにより、連結機構80の連結力を大きくすることができる。
【0046】
本実施形態では、連結機構80は、マグネットホルダ82をプリントキャリッジ40に固定する第1固定部材としてのネジ84L,84Rと、吸着板83をカットキャリッジ60に固定する第2固定部材としてのネジ86U,86Dと、を備えている。マグネットホルダ82は、ネジ84L,84Rによる固定を緩めると第1の軸線L1周りに回転可能なように構成されている。吸着板83は、ネジ86U,86Dによる固定を緩めると第2の軸線L2周りに回転可能なように構成されている。かかる構成によれば、ネジ84L,84R,86U,および86Dの固定を緩めてマグネット81の向きと吸着板83の向きとを一致させた後に、ネジ84L,84R,86U,および86Dを締めてマグネット81および吸着板83の向きを固定することにより、連結機構80の連結力をより安定させることができる。
【0047】
本実施形態では、マグネットホルダ82の底壁82bは、上下方向Zにそれぞれ貫通する左貫通孔82eLおよび右貫通孔82eRを備えている。プリントキャリッジ40は、それぞれ左貫通孔82eLおよび右貫通孔82eRと向かい合う位置に形成され上下方向Zに延びる左ネジ孔42fLおよび右ネジ孔42fRを備えている。左側ネジ84Lは、左貫通孔82eLに挿通されるとともに左ネジ孔42fLに螺合されている。右側ネジ84Rは、右貫通孔82eRに挿通されるとともに右ネジ孔42fRに螺合されている。左貫通孔82eLは、左側ネジ84Lの径に対応した径を有している。右貫通孔82eRは、マグネットホルダ82が左貫通孔82eLを中心として回転可能なように、右側ネジ84Rの径よりも大きく形成されている。かかるプリンタ10によれば、右貫通孔82eRを右側ネジ84Rの径よりも大きく形成するという簡易な構成により、上下方向Zに延びる第1の軸線L1周りにマグネットホルダ82が回転する構成を実現することができる。
【0048】
本実施形態では、プリントキャリッジ40は、プリントヘッド30を収容するケース41と、主走査方向Yおよび上下方向Zに延び、ケース41を支持するベースプレート42と、を備えている。ベースプレート42は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びる面42bの一部を切り曲げることにより形成され、上方を向いた取付面42a1を有している。左ネジ孔42fLおよび右ネジ孔42fRは、取付面42a1に形成されている。かかる構成によれば、プリントヘッド30およびケース41を支持するベースプレート42を切り曲げることにより、部品点数を増やすことなく、左ネジ孔42fLおよび右ネジ孔42fRが形成される取付面42a1を設けることができる。
【0049】
本実施形態では、マグネットホルダ82の補強部は、底壁82bを挟んで対向する一対の補強壁であって、それぞれが支持壁82aと底壁82bとに接続された一対の補強壁82cおよび82dを含んでいる。かかる構成によれば、一対の補強壁82cおよび82dによりマグネットホルダ82が箱状となり、支持壁82aの剛性をさらに向上させることができる。
【0050】
[第2実施形態]
第2実施形態では、上下方向Zに延びる軸線周り、および、副走査方向Xに延びる軸線周りにマグネット81が回転する。以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通の機能を奏する部材には、第1実施形態と共通の符号を使用する。また、重複する説明は、省略または簡略化する。
【0051】
図10は、第2実施形態に係るプリントキャリッジ40のベースプレート42の斜視図である。
図10に示すように、本実施形態では、ベースプレート42には、マウント部42a(
図5参照)が設けられていない。また、図示は省略するが、吸着板83は回転不能にリニアガイド62に固定されている。
【0052】
図11は、第1実施形態のマウント部42aに相当するマウント部材87の斜視図である。
図11に示すように、マウント部材87は、主走査方向Y視においてL字に構成されている。マウント部材87は、平板をL字に曲げることにより形成されている。マウント部材87の上面は、マグネットホルダ82の取付面87aを構成している。取付面87aは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。マウント部材87の取付面87aと略直交する面87bは、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びている。マウント部材87の面87bは、ベースプレート42に対して、副走査方向Xに延びる軸線(本実施形態でも第2の軸線L2と呼ぶ)周りに回転可能な可動面87bを構成している。
【0053】
図11に示すように、マウント部材87の取付面87aには、マグネットホルダ82を固定するためのネジ84L,84R(
図8参照)が螺合されるネジ孔87cL,87cRが形成されている。ネジ孔87cL,87cRは、主走査方向Yに並んで設けられている。ネジ孔87cL,87cRは、それぞれ、マグネットホルダ82の左貫通孔82eLおよび右貫通孔82eR(
図7参照)と向かい合う位置に形成されている。ネジ孔87cL,87cRは、それぞれ、上下方向Zに延びている。
【0054】
マウント部材87は、副走査方向Xにそれぞれ貫通する左貫通孔87dLと右貫通孔87dRとを備えている。左貫通孔87dLおよび右貫通孔87dRは、可動面87bに形成されている。左貫通孔87dLおよび右貫通孔87dRは、それぞれ、第3貫通孔および第4貫通孔の一例である。
図10に示すように、プリントキャリッジ40のベースプレート42は、それぞれ左貫通孔87dLおよび右貫通孔87dRと向かい合う位置に形成された左ネジ孔42gLおよび右ネジ孔42gRを備えている。左ネジ孔42gLおよび右ネジ孔42gRは、それぞれ、副走査方向Xに延びている。左ネジ孔42gLおよび右ネジ孔42gRは、それぞれ、第3ネジ孔および第4ネジ孔の一例である。
【0055】
図12は、マグネットホルダ82およびマウント部材87が取り付けられた状態のベースプレート42の正面図である。
図12に示すように、左側ネジ88Lは、マウント部材87の左貫通孔87dLに挿通されるとともに、ベースプレート42の左ネジ孔42gLに螺合されている。右側ネジ88Rは、マウント部材87の右貫通孔87dRに挿通されるとともに、ベースプレート42の右ネジ孔42gRに螺合されている。左側ネジ88Lおよび右側ネジ88Rは、他の固定部材の一例である。マウント部材87は、プリントキャリッジ40に設けられ、マグネットホルダ82を支持している。マウント部材87は、マグネットホルダ82に支持されたマグネット81をプリントキャリッジ40の主走査方向Yの側面(ここでは左側面)に配置する。
【0056】
マウント部材87の左貫通孔87dLは、左側ネジ88Lの径に対応した径を有している。右貫通孔87dRは、マウント部材87が左貫通孔87dLを中心として回転可能なように、右側ネジ88Rの径よりも大きく形成されている。かかる構成により、マウント部材87は、ネジ88L,88Rによる固定を緩めると副走査方向Xに延びる第2の軸線L2周りに回転可能となっている。
【0057】
マグネットホルダ82は、第1実施形態と同様に構成されている。マグネットホルダ82は、ネジ84L、84Rによる固定を緩めると、マウント部材87に対して、上下方向Zに延びる第1の軸線L1周りに回転可能である。マウント部材87は、プリントキャリッジ40とマグネットホルダ82との間に介在し、第1の軸線L1周りに回転可能にマグネットホルダ82を支持している。また、マウント部材87は、プリントキャリッジ40に対して、第2の軸線L2周りに回転可能に構成されている。
【0058】
本実施形態に係るプリンタ10によっても、第1実施形態に係るプリンタ10と同様の作用効果を奏することができる。本実施形態では、マグネット81の第1の軸線L1周りの向きおよび第2の軸線L2周りの向きを吸着板83に合わせることができる。その結果、上下方向Z周りおよび副走査方向X周りともに、マグネット81の向きと吸着板83の向きとが一致する。これにより、連結機構80の連結力を大きくすることができる。
【0059】
また、マグネットホルダ82がマウント部材87に対して回転するのと同様の構造(右貫通孔87dRを右側ネジ88Rの径よりも大きく形成すること)により、副走査方向Xに延びる第2の軸線L2周りにマウント部材87が回転する構成を簡易に実現することができる。
【0060】
[他の実施形態]
以上、いくつかの好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。
【0061】
例えば、上記した実施形態では、マグネット81がプリントキャリッジ40に、吸着板83がカットキャリッジ60に設けられていた。しかし、マグネット81がカットキャリッジ60に、吸着板83がプリントキャリッジ40に設けられていてもよい。
【0062】
上記した実施形態では、マグネットホルダ82は、第1補強壁82cと第2補強壁82dとを備えていた。しかし、マグネットホルダ82が備える補強部は1つであってもよい。補強部は、マグネット81を支持する支持壁82aの縁部に接続されていなくてもよい。例えば、補強部は、支持壁82aの副走査方向Xの中央部に設けられていてもよい。補強部を構成する部材の数量、配置、形状などは特に限定されない。
【0063】
上記した第1実施形態では、マグネット81の第1の軸線L1周りの向き(上下方向Zに延びる軸線周りの向き)と、吸着板83の第2の軸線L2周りの向き(副走査方向Xに延びる軸線周りの向き)とが調整された。しかし、副走査方向Xに延びる軸線周りのマグネット81の向きと、上下方向Zに延びる軸線周りの吸着板83の向きとが調整されてもよい。
【0064】
上記した第2実施形態では、マグネット81の第1の軸線L1周りの向きおよび第2の軸線L2周りの向きが調整された。しかし、上下方向Zに延びる軸線周り、および、副走査方向Xに延びる軸線周りの吸着板83の向きが調整されてもよい。
【0065】
上記実施形態の説明では、プリントヘッドを保持するプリントキャリッジとカッティングヘッドを保持するカットキャリッジとを連結する連結機構について説明した。しかし、連結機構は、2つのキャリッジを連結する機構であれば、プリントキャリッジとカットキャリッジとを連結するものに限定されない。
【0066】
その他、ここに記載された実施形態は、特に断らない限り、本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0067】
5 記録媒体
10 カッティングヘッド付きプリンタ
30 プリントヘッド
40 プリントキャリッジ
41 ケース
42 ベースプレート(取付板)
42a1 取付面
42fL 左ネジ孔(第1ネジ孔)
42fR 右ネジ孔(第2ネジ孔)
42gL 左ネジ孔(第3ネジ孔)
42gR 右ネジ孔(第4ネジ孔)
50 カッティングヘッド
60 カットキャリッジ
71 ガイドレール
73 スキャンモータ(移動装置)
80 連結機構
81 マグネット
82 マグネットホルダ(支持部材)
82a 支持壁(支持部)
82b 底壁(取付部)
82c 第1補強壁(補強部、補強部材)
82d 第2補強壁(補強部、補強部材)
82eL 左貫通孔(第1貫通孔)
82eR 右貫通孔(第2貫通孔)
83 吸着板(吸着体)
84L 左側ネジ(第1固定部材、第1ネジ)
84R 右側ネジ(第1固定部材、第2ネジ)
86D 下側ネジ(第2固定部材)
86U 上側ネジ(第2固定部材)
87 マウント部材(他の支持部材)
87cL 左ネジ孔(第1ネジ孔)
87cR 右ネジ孔(第2ネジ孔)
87dL 左貫通孔(第3貫通孔)
87dR 右貫通孔(第4貫通孔)
88L 左側ネジ(第3ネジ)
88R 右側ネジ(第4ネジ)
L1 第1の軸線
L2 第2の軸線
X 副走査方向(第2直交方向)
Y 主走査方向
Z 上下方向(第1直交方向)