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特開2025-1204移送器具の製造方法及びその滅菌方法と、医療機器パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001204
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】移送器具の製造方法及びその滅菌方法と、医療機器パッケージ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100673
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】臓器移植に用いられる医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具をより細経化し、低侵襲化する。
【解決手段】移送器具の支持部は、幅方向の両側部が裏面で向かい合うように湾曲変形される。この状態で、支持部が設けられたシャフトが、先端方向の第2位置から基端方向の第1位置に移動される。これにより、互いに向かい合った両側部が、外筒の内周面から離間して外筒の内部へと突出する一対の離間部を形成するように、支持部が外筒内に収容される。次に、この状態の外筒、シャフト及び支持部に対し、滅菌処理が施される。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具の製造方法であって、
前記移送器具は、
先端開口を有する外筒と、
前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置されるシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、
前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面と、前記支持面を含む表面と、前記表面とは反対側の裏面とを有し、前記シャフトの延在方向と直交する方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、
前記支持部は、前記支持面を有する支持ベース部と、前記支持部の幅方向における前記支持ベース部の両側から上方に向けて突出した一対の突出部とを有し、
前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容されると共に、前記支持部が前記外筒の前記先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から先端方向に露出することで展開し、
前記製造方法は、
前記支持部の幅方向の両側部が前記裏面で向かい合うように前記支持部を湾曲変形させた状態とし、前記シャフトを前記第2位置から前記第1位置に移動させることによって、互いに向かい合った前記両側部が、前記外筒の内周面から離間して前記外筒の内部へと突出する一対の離間部を形成するように、前記支持部を前記外筒内に収容する収容工程と、
前記外筒内において前記支持部が前記一対の離間部を形成した状態で、前記外筒、前記シャフト及び前記支持部に対し、前記外筒、前記シャフト及び前記支持部の温度上昇を伴う昇温処理を施すことによって、前記一対の突出部の形状付けを行う形状付与工程と、
を有する移送器具の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の移送器具の製造方法において、前記形状付与工程における前記昇温処理が滅菌処理である、移送器具の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の移送器具の製造方法において、前記滅菌処理として放射線滅菌を行う、移送器具の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の移送器具の製造方法において、前記収容工程で、前記一対の離間部において互いに向かい合う部分の少なくとも一部を接触させる、移送器具の製造方法。
【請求項5】
医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具と、前記移送器具を包装した包装材とを備える医療機器パッケージであって、
前記移送器具は、
先端開口を有する外筒と、
前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置されるシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、
前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面と、前記支持面を含む表面と、前記表面とは反対側の裏面とを有し、前記シャフトの延在方向と直交する方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、
前記支持部は、前記支持面を有する支持ベース部と、前記支持部の幅方向における前記支持ベース部の両側から上方に向けて突出した一対の突出部とを有し、
前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容されると共に、前記支持部が前記外筒の前記先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から先端方向に露出することで展開し、
滅菌処理が施された前記外筒、前記シャフト及び前記支持部が前記包装材に収容され、前記包装材を開封する前の未開封状態において、前記シャフトが前記第1位置に位置するとともに、前記一対の突出部が前記外筒の内周面から離間して前記外筒の内部へと突出する一対の離間部を形成するように、前記支持部が湾曲変形して前記外筒内に収容されている、医療機器パッケージ。
【請求項6】
医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具の滅菌方法であって、
前記移送器具は、
先端開口を有する外筒と、
前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置されるシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、
前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面と、前記支持面を含む表面と、前記表面とは反対側の裏面とを有し、前記シャフトの延在方向と直交する方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、
前記支持部は、前記支持面を有する支持ベース部と、前記支持部の幅方向における前記支持ベース部の両側から上方に向けて突出した一対の突出部とを有し、
前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容されると共に、前記支持部が前記外筒の前記先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から先端方向に露出することで展開し、
前記滅菌方法は、
前記支持部の幅方向の両側部が前記裏面で向かい合うように前記支持部を湾曲変形させた状態とし、前記シャフトを前記第2位置から前記第1位置に移動させることによって、互いに向かい合った前記両側部が、前記外筒の内周面から離間して前記外筒の内部へと突出する一対の離間部を形成するように、前記支持部を前記外筒内に収容する収容工程と、
前記外筒内において前記支持部が前記一対の離間部を形成した状態で、前記外筒、前記シャフト及び前記支持部に対し、前記外筒、前記シャフト及び前記支持部の温度上昇を伴う滅菌処理を施すとともに、前記温度上昇に基づいて前記一対の突出部の形状付けを行う滅菌処理工程と、
を有する移送器具の滅菌方法。
【請求項7】
請求項6記載の移送器具の滅菌方法において、前記移送器具を包装材で包装する包装工程を有し、前記滅菌処理工程を前記包装工程よりも後に実施する、移送器具の滅菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具の製造方法及びその滅菌方法に関する。また、本発明は、移送器具と包装材とを備える医療機器パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば臓器移植に用いられる医療用シート(細胞シート)を生体の処置対象部に移送するための移送器具が開示されている。この移送器具は、外筒と、外筒内に摺動可能に支持されたスライド部材と、スライド部材の先端部に設けられたシート支持部材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-000511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移送器具をより細経化し、低侵襲化することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示の第1の態様は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具の製造方法である。ここで、前記移送器具は、先端開口を有する外筒と、前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置されるシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面と、前記支持面を含む表面と、前記表面とは反対側の裏面とを有し、前記シャフトの延在方向と直交する方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、前記支持部は、前記支持面を有する支持ベース部と、前記支持部の幅方向における前記支持ベース部の両側から上方に向けて突出した一対の突出部とを有し、前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容されると共に、前記支持部が前記外筒の前記先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から先端方向に露出することで展開する。
【0006】
前記製造方法は、前記支持部の幅方向の両側部が前記裏面で向かい合うように前記支持部を湾曲変形させた状態とし、前記シャフトを前記第2位置から前記第1位置に移動させることによって、互いに向かい合った前記両側部が、前記外筒の内周面から離間して前記外筒の内部へと突出する一対の離間部を形成するように、前記支持部を前記外筒内に収容する収容工程と、前記外筒内において前記支持部が前記一対の離間部を形成した状態で、前記外筒、前記シャフト及び前記支持部に対し、前記外筒、前記シャフト及び前記支持部の温度上昇を伴う昇温処理を施すことによって、前記一対の突出部の形状付けを行う形状付与工程と、を有する。
【0007】
上記の製造方法によれば、一対の突出部の形状が、昇温処理時に形状付けされた形状で安定する。従って、医療用シートを移送する際、シャフトを第2位置から第1位置に移動させることにより、外筒内に支持部が円滑に収容される。このため、移送器具をより細経化し、低侵襲化することができる。
【0008】
(2)上記項目(1)記載の移送器具の製造方法において、前記形状付与工程における前記昇温処理を滅菌処理としてもよい。
【0009】
この場合、一対の突出部の形状付けを、滅菌処理と同時に行うことができる。このため、移送器具を効率よく製造することができる。
【0010】
(3)上記項目(2)記載の移送器具の製造方法において、前記滅菌処理として放射線滅菌を行ってもよい。
【0011】
この場合、一対の突出部の形状が、形状付けされたときの形状で一層安定する。
【0012】
(4)上記項目(1)~(3)のいずれか1つに記載の移送器具の製造方法において、前記収容工程で、前記一対の離間部において互いに向かい合う部分の少なくとも一部を接触させてもよい。
【0013】
(5)本開示の第2の態様は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具と、前記移送器具を包装した包装材とを備える医療機器パッケージである。ここで、前記移送器具は、先端開口を有する外筒と、前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置されるシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面と、前記支持面を含む表面と、前記表面とは反対側の裏面とを有し、前記シャフトの延在方向と直交する方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、前記支持部は、前記支持面を有する支持ベース部と、前記支持部の幅方向における前記支持ベース部の両側から上方に向けて突出した一対の突出部とを有し、前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容されると共に、前記支持部が前記外筒の前記先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から先端方向に露出することで展開する。
【0014】
医療機器パッケージは、滅菌処理が施された前記外筒、前記シャフト及び前記支持部が前記包装材に収容されることで構成される。前記包装材を開封する前の未開封状態において、前記シャフトが前記第1位置に位置するとともに、前記一対の突出部が前記外筒の内周面から離間して前記外筒の内部へと突出する一対の離間部を形成するように、前記支持部が湾曲変形して前記外筒内に収容されている。
【0015】
支持部は、昇温処理時に形状付けされた一対の突出部を有する。この場合、一対の突出部の形状が、昇温処理時に形状付けされた形状で安定する。
【0016】
また、移送器具を使用する前段階において、このような支持部を外筒内に収容した状態を維持した場合、一対の突出部の形状が一層安定する。従って、包装材から取り出した移送器具を用いて医療用シートを移送する際、シャフトを第2位置から第1位置に移動させることにより、外筒内に支持部が円滑に収容される。このため、移送器具をより細経化し、低侵襲化することができる。
【0017】
(6)本開示の第3の態様は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具の滅菌方法である。ここで、前記移送器具は、先端開口を有する外筒と、前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置されるシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面と、前記支持面を含む表面と、前記表面とは反対側の裏面とを有し、前記シャフトの延在方向と直交する方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、前記支持部は、前記支持面を有する支持ベース部と、前記支持部の幅方向における前記支持ベース部の両側から上方に向けて突出した一対の突出部とを有し、前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容されると共に、前記支持部が前記外筒の前記先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から先端方向に露出することで展開する。
【0018】
前記滅菌方法は、前記支持部の幅方向の両側部が前記裏面で向かい合うように前記支持部を湾曲変形させた状態とし、前記シャフトを前記第2位置から前記第1位置に移動させることによって、互いに向かい合った前記両側部が、前記外筒の内周面から離間して前記外筒の内部へと突出する一対の離間部を形成するように、前記支持部を前記外筒内に収容する収容工程と、前記外筒内において前記支持部が前記一対の離間部を形成した状態で、前記外筒、前記シャフト及び前記支持部に対し、前記外筒、前記シャフト及び前記支持部の温度上昇を伴う滅菌処理を施すとともに、前記温度上昇に基づいて前記一対の突出部の形状付けを行う滅菌処理工程と、を有する。
【0019】
この滅菌方法によれば、一対の突出部の形状が、滅菌処理時に形状付けされた形状で安定する。従って、医療用シートを移送する際、シャフトを第2位置から第1位置に移動させることにより、外筒内に支持部が円滑に収容される。このため、移送器具をより細経化し、低侵襲化することができる。
【0020】
しかも、一対の突出部の形状付けを、滅菌処理と同時に行うことができる。このため、滅菌済みの移送器具を効率よく得ることができる。
【0021】
(7)上記項目(6)記載の移送器具の滅菌方法において、前記移送器具を包装材で包装する包装工程を有し、前記滅菌処理工程を前記包装工程よりも後に実施してもよい。
【0022】
この場合、滅菌処理の前後において移送器具が包装材に包装された状態が保たれる。このため、移送器具を清潔な状態に保つことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、支持部を外筒内に円滑に収容することができるので、移送器具をより細経化し、低侵襲化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態に係る移送器具の斜視図である。
図2図2は、図1の移送器具の分解斜視図である。
図3図3は、図1の移送器具の先端部の平面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った縦断面図である。
図5図5は、図3のV-V線に沿った横断面図である。
図6図6は、図1の移送器具を用いた医療用シートの移送方法の手順を示すフローチャートである。
図7図7は、シート載置工程の説明図である。
図8図8は、収容工程の説明図である。
図9図9は、図8のIX-IX線に沿った横断面図である。
図10図10は、配置工程の説明図である。
図11図11は、展開工程の説明図である。
図12図12は、移動工程の説明図である。
図13図13は、抜去工程の説明図である。
図14図14は、図1の移送器具を得るための製造方法及び滅菌方法の工程を示すフローチャートである。
図15図15は、滅菌処理が施された移送器具が包装材で包装された医療機器パッケージの概略斜視図である。
図16図16は、図14とは別の態様における移送器具の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示されるように、本実施形態に係る移送器具10は、医療用シート300を生体の処置対象部に移送するための医療機器である。移送器具10は、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用される。この場合、医療用シート300は、心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移植される(図12参照)。移送器具10では、複数枚の医療用シート300を移植対象部402に貼付することができる。
【0026】
このような医療用シート300は、医療用途の医薬品や再生医療等製品、医療機器等を含む。医療用シート300は、フィルム状、膜状(ゲル状の物体)等のシート状に形成されている。医療用シート300は、フィブリン等を塗布して補強されてもよい。細胞を含む再生医療等製品は、例えば、細胞シート(シート状細胞培養物)、スフェロイド等を含む。細胞シートは、自家細胞又は他家細胞を培養して形成することができる。細胞シートを構成する細胞は、例えば、体性幹細胞(somatic stem cells)(成体幹細胞(adult stem cells))、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells)、又はiPS細胞(人工多能性幹細胞:induced Pluripotent Stem Cells)由来心筋細胞を含む。体性幹細胞は、好ましくは、骨格筋芽細胞(筋芽細胞(myoblast cells))を含む。
【0027】
医療用シート300は、組織接着剤、局所麻酔剤等を含んでもよい。医療用シート300の厚さは、例えば約100μmであり、医療用シート300の直径は、例えば約60mmである。ただし、医療用シート300の厚さ及び直径(大きさ)は、適宜設定可能である。
【0028】
医療用シート300は、心臓400以外の臓器(例えば、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、食道等)に移植されるシートであってもよい。また、医療用シート300は、医療用途であれば、例えば、癒着を防止するためのシートであってもよい。
【0029】
図1及び図2に示すように、移送器具10は、器具本体12と、内視鏡14と、固定部材16とを備える。器具本体12は、第1キャリア部材18と、第2キャリア部材20と、外筒22とを有する。なお、移送器具10は、内視鏡14を備える場合に限定されない。
【0030】
図2において、第1キャリア部材18は、第1シャフト24及び第1支持部26を有する。
【0031】
第1シャフト24は、第1内腔28を有する管状体(本実施形態では、円管部材)である。第1内腔28は、第1シャフト24の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共に第1シャフト24の基端(矢印X2方向の端)に開口する。第1シャフト24の基端には、第2シャフト48の外周面に密着する気密用の弁体55が設けられる。弁体55の外周面にはマーカ551が設けられる。移送器具10を使用するとき、ユーザがマーカ551を視認可能である。なお、第1シャフト24は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0032】
第1シャフト24は、外筒22の軸方向に延在して外筒22の内部に軸方向に沿って移動可能に配置される。第1シャフト24は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1シャフト24の構成材料としては、特に限定されないがポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。第1シャフト24は、金属材料によって構成されてもよい。
【0033】
第1シャフト24は、可撓性を有してもよい。第1シャフト24は、曲げた形状を保持可能なフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、体腔内において第1シャフト24を適宜の形状に屈曲させると共にその屈曲形状を保持できる。
【0034】
図2図4に示すように、第1支持部26は、第1シャフト24の先端部に取り付けられる。第1支持部26は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1支持部26は、医療用シート300を保持可能である。第1支持部26は、可撓性を有した樹脂製のシート材(フィルム材)を所定形状に折り曲げることにより形成される。第1支持部26は、例えば、シート成形型によってシート材を所定形状に成形することにより形成される。シート材の肉厚は、特に限定されないが、例えば、100μm以上200μm以下に設定されるのが好ましい。第1支持部26は、第1接合部30及び第1支持本体32を有する。
【0035】
第1支持部26の構成材料としては、特に限定されないが透明性を有することが望ましく、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂等が挙げられる。また、第1支持部26はメッシュ状であってもよい。
【0036】
図4において、第1接合部30は、第1シャフト24の先端部の内周面に接着剤によって接着されている。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、UV接着剤、ホットメルト接着剤、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤)等が挙げられる。第1接合部30は、第1シャフト24の内周面に熱融着されてもよい。なお、第1シャフト24の先端部に対して第1支持部26が着脱可能であってもよい。
【0037】
図2に示すように、第1支持本体32は、第1接合部30から先端方向に延出している。第1支持本体32は、基端支持部34と、中間支持部36と、突出部38と、先端支持部42とを有する。第1支持本体32は、第1支持面261を有する。第1支持面261を上方に向けたときに第1シャフト24のマーカ551が上方に向くように、マーカ551が配置される。すなわち、マーカ551によって、ユーザが第1支持部26における第1支持面261の方向を確認可能である。
【0038】
図3に示すように、基端支持部34は、その延出方向に向かって幅広に形成されている。換言すれば、基端支持部34の幅方向の両側部は、第1接合部30(図2参照)に向かってテーパ状に傾斜している。中間支持部36は、先端から基端方向(矢印X2方向)に向けて徐々に幅が小さくなるテーパ状に形成される。
【0039】
先端支持部42は、中間支持部36の先端と一対の突出部38の先端とに繋がっている。先端支持部42は、先端方向(矢印X1方向)に向かって円弧状に突出している。すなわち、図3に示す第1支持面261と直交する方向から見て、第1支持部26の先端支持部42は、一対の突出部38を繋ぐ円弧状である。
【0040】
図4に示すように、基端支持部34は、第1接合部30の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに概ね沿うように延出している。中間支持部36は、基端支持部34の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに対して交差し、第1支持部26の先端方向(矢印X1方向)に向かって延出している。
【0041】
図2及び図3において、一対の突出部38は、第1シャフト24の移動方向と直交する中間支持部36の幅方向の両側部から上方(矢印Y方向)且つ中間支持部36の幅方向内方に突出している。突出部38は、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した円弧状である。
【0042】
図3において、第1シャフト24の軸方向と直交する方向(W方向)が第1支持部26の幅方向である。従って、一対の突出部38は、第1支持部26の幅方向の両側部に設けられている。W方向は、他の構成要素(外筒22等)の幅方向でもある。本実施形態において、第1支持部26は一対の突出部38を有するが、図3におけるW1は、第1支持部26を平面状に展開した場合の第1支持部26の幅が最大になる箇所の幅である。すなわち、第1支持部26の幅W1は、一対の突出部38を形成する前(折曲げ前)の平面状態での第1支持部26Pの最大幅である。第1支持部26の幅W1は、外筒22の内周長さL(図9参照)よりも大きい。図9において、外筒22の内周長さLは、外筒22の周方向に沿った内周面の長さである(L=2πR)。Rは外筒22の内腔78の半径である。
【0043】
図5に示すように、第1支持部26は、第1支持面261を有する支持ベース部264を有する。一対の突出部38は、第1支持部26の幅方向における支持ベース部264の両側部から上方に向けて突出している。支持ベース部264と一対の突出部38とは、弧状に湾曲した一対の湾曲部444を介して連結されている。第1支持部26の表面461の一部が湾曲部444の内側(湾曲形状の内側)を構成し、第1支持部26の裏面462の一部が湾曲部444の外側(湾曲形状の外側)を構成するように、各湾曲部444が湾曲している。一対の湾曲部444の各々は、一対の突出部38を第1支持部26の第1支持面261(中間支持部36)に対して折り曲げる(図5参照)。
【0044】
第1支持本体32は、上方(矢印Y方向)を向き第1支持面261を含む表面461と、表面461の反対面である裏面462とを有する。第1支持面261は、基端支持部34の上面、中間支持部36及び先端支持部42の上面に連なった略平坦面である。第1支持面261には、第2キャリア部材20の後述する第2支持部50を第1支持面261に対して円滑にスライドできるように潤滑剤が塗布されてもよい。
【0045】
図2に示すように、第2キャリア部材20は、第2シャフト48と、第2支持部50と、ハブ52とを有する。
【0046】
第2シャフト48は、第2内腔57を有する管状体(本実施形態では、円管部材)である。第2シャフト48の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも長い。第2シャフト48は、第1シャフト24の第1内腔28に挿通されている(図1及び図4参照)。換言すれば、第2シャフト48の先端部は、第1シャフト24の先端開口から先端方向(矢印X1方向)に突出している。第2シャフト48の基端部は、第1シャフト24の基端開口から基端方向(矢印X2方向)に突出している(図1参照)。第2シャフト48は、第1シャフト24に沿って延在して第1シャフト24に沿って移動可能に設けられる。なお、第2シャフト48は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0047】
第2シャフト48は、第1支持部26の形状に追従できるように構成される。第2シャフト48の構成材料としては、例えば、第1シャフト24の構成材料よりも柔軟性がある材料が選択される。具体的に、第2シャフト48の構成材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、シリコーンゴム、金属コイル(樹脂との複合も含む)等が挙げられる。第2シャフト48は、可撓性を有する。
【0048】
図4に示すように、第2シャフト48は、キャリア保持部54と、第2シャフト48の先端部により構成された押付部56を有する。押付部56は、エラストマ材等の弾性体から形成される。押付部56は、外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、第1支持部26を外筒22の内面に押し付ける。
【0049】
キャリア保持部54の先端は、押圧面58を有する。キャリア保持部54は、第1支持部26に支持された医療用シート300の外周端面を押圧面58により先端方向(矢印X1方向)に押圧可能である。本実施形態では、押付部56には、第2支持部50を支持するキャリア保持部54が設けられる。キャリア保持部54は、押圧面58と、取付孔60とを備える。
【0050】
図4において、押圧面58は、キャリア保持部54の先端面に設けられる。押圧面58に取付孔60が開口する。押圧面58には、第2支持部50が取り付けられる。押圧面58は、医療用シート300の外周端面を先端方向(矢印X1方向)に押圧する(図12参照)。
【0051】
図2図4において、第2支持部50は、可撓性を有したシート状に構成される。第2支持部50は、第2接合部70及び第2支持本体72を有する。第2接合部70は、第2支持部50の基端に設けられる。第2接合部70は、第2支持本体72の基端に設けられる。第2接合部70は、キャリア保持部54の取付孔60に挿入され、例えば、接着されている。第2接合部70は、接着以外の適宜の接合方法によりキャリア保持部54の取付孔60に接合されてもよい。また、第2支持部50は、キャリア保持部54と一体的に成形されてもよい。
【0052】
第2支持本体72は、第2接合部70から先端方向(矢印X1方向)に延出している。第2支持本体72の第2接合部70からの延出方向長さは、第1支持本体32の第1接合部30からの延出方向長さよりも短い。第2支持本体72の上面には、医療用シート300を載せるための第2支持面74が設けられる。第2支持面74は、略平坦面である。第2支持本体72は、第1支持本体32よりも小さい。すなわち、第2支持面74の面積は、第1支持面261の面積よりも小さい。
【0053】
図2において、ハブ52は、第2シャフト48の基端部に取り付けられている。
【0054】
図1及び図2において、外筒22は、内腔78を有する円筒部材である。内腔78は、外筒22の先端(矢印X1方向の端)に開口する先端開口80を有する。内腔78は、外筒22の基端(矢印X2方向の端)に開口する。外筒22は、可撓性を有する。外筒22の構成材料は、上述した第1シャフト24の構成材料と同様の材料が挙げられる。外筒22の内腔78には、第1シャフト24が挿通されている。外筒22の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも短い。外筒22の基端には、第1シャフト24の外周面に密着する気密用の弁体84が設けられる。
【0055】
図2及び図4において、外筒22の先端面は、外筒22の軸方向と直交する方向に沿って延在している。
【0056】
図2に示すように、内視鏡14は、長尺な内視鏡本体86を有する。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の外周面に固定部材16によって固定されている(図1参照)。内視鏡本体86の先端面に設けられた対物レンズ88は、外筒22の先端方向(矢印X1方向)を向いている。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の軸方向の中間部に固定される。ただし、内視鏡本体86の先端部は、外筒22の先端部に固定されてもよい。
【0057】
固定部材16は、例えば、固定筒90と、固定チューブ92とを含む。固定筒90は、例えば、硬質な樹脂材料によって構成されている。固定筒90の内腔には、内視鏡本体86を挿入可能である。固定筒90は、外筒22の長手方向に沿うように配置されている。固定チューブ92は、固定筒90を外筒22の所定位置に固定するためのチューブである。固定チューブ92は、例えば、熱収縮チューブである。なお、内視鏡本体86の先端部の外筒22への固定方法は、適宜設定可能である。
【0058】
次に、医療用シート300を生体の処置対象部に移送する移送方法について説明する。具体的に、図10図13に示すように、胸腔鏡下手術により医療用シート300を心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移送する移送方法について説明する。図6に示すように、本実施形態に係る移送方法は、準備工程、シート載置工程、収容工程、配置工程、展開工程、移動工程、抜去工程を含む。
【0059】
まず、準備工程(ステップS1)において、上述した本実施形態に係る移送器具10を準備する。以下では、図1に示すような状態を移送器具10の初期状態として説明する。初期状態では、第1シャフト24及び第2シャフト48を外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させ、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22の先端開口80から先端方向に突出させた突出位置(第2位置)の状態となっている。第1及び第2支持部26、50の各々は、外筒22から先端方向に露出することで展開し、第1支持部26の第1支持面261の上に第2支持部50を配置させる。すなわち、第2支持部50は、第1支持部26の第1支持面261に重なった後退位置に配置される。このとき、キャリア保持部54の基端部は、第1シャフト24の第1内腔28に挿入されている。
【0060】
続いて、シート載置工程(ステップS2)において、図7に示すように、シャーレ401内に配置されている医療用シート300を第2支持面74に載せる。医療用シート300は、第2支持面74に載せた状態で第2支持部50から外側に張り出している。第1支持面261は、医療用シート300のうち第2支持部50から外側に張り出した張出部302を支持する。
【0061】
その後、収容工程(図6のステップS3)において、図8に示すように、医療用シート300を第1支持部26及び第2支持部50と共に外筒22内に収容した収容位置(第1位置)とする。具体的に、第1キャリア部材18の第1シャフト24と第2キャリア部材20の第2シャフト48とを一緒に外筒22に対して基端方向(矢印X2方向)に移動させる。
【0062】
そうすると、第1支持部26の基端支持部34(図2参照)が外筒22の先端開口80から基端方向に引き込まれる。このとき、基端支持部34のテーパ状の両側部が外筒22の先端開口80に接触することにより、基端支持部34には、基端支持部34を外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、基端支持部34は、丸まりながら外筒22内にスムーズに引き込まれる。このとき、第1支持部26は、先端側が大径で、基端支持部34が小径となるように円錐状に丸まりながら、外筒22内に収容される。
【0063】
第1支持部26の基端支持部34が変形すると、第1支持部26の中間支持部36に外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、中間支持部36(図2参照)は、丸まりながら外筒22内に引き込まれる。このとき、中間支持部36は、外筒22の内面に沿って円筒状に変形する。一対の突出部38の各々は、第1支持部26の表面461が内側、第1支持部26の裏面462が外側となるように湾曲していく。図9に示すように、第1支持部26の幅方向両側の裏面462同士が外筒22の中心軸と直交方向に延在する仮想線L2上で互いに接触する。一方の突出部38と他方の突出部38とが接触して下方(第1支持面261、表面461)に向けて収容されていく。
【0064】
これにより、第1支持部26の裏面462が外筒22の内面に密着した湾曲形状となり、各突出部38が外筒22の中心に向けて折り返すようにさらに湾曲し、各突出部38の自由端が外筒22の中心軸より下方に配置される。すなわち、第1支持部26は、外筒22の内面に沿ったハート型に湾曲する。
【0065】
ハート型とは、一方において凸状に湾曲した形状と、一方とは反対側となる他方において二つの凸状に湾曲した形状からなる略円形状の形状をいう。管状体(外筒22)の内腔78にハート型が形成される場合、管状体の内面に沿って他方に突出した二つの凸状の湾曲形状が互いに近づいて一部の周面が互いに接することで、全体の輪郭が管状体の内面に沿った略円形状となる(図9中、第1支持部26の形状を参照)。
【0066】
第1支持部26の湾曲変形に伴って、第2支持部50も同様に、第1支持部26の内側(表面461側)で第1支持部26に沿って第2支持部50が湾曲変形する。第1支持部26及び第2支持部50の湾曲変形に伴って、医療用シート300が、第1支持本体32及び第2支持本体72の形状に対応した形状に変形し、医療用シート300が外筒22内に収容される。
【0067】
収容工程は、図8に示すように、第1支持部26の全体が外筒22内に完全に挿入されることにより完了する。収容工程完了時において、第1支持部26の一部が外筒22の先端開口80から突出してもよい。この場合、第1支持部26の一部が外筒22の先端開口80から突出している状態が、第1支持部26の第1位置である。
【0068】
その後、配置工程(図6のステップS4)において、図10に示すように、胸部408の切開創409から胸腔410内に移送器具10を挿入する。この時、心臓400における移植対象部402の近くに移送器具10の先端を位置させると共に内視鏡14の先端を胸腔410内に位置させる。なお、移送器具10を胸腔410内に挿入する前に、ハブ52の接続ポート部に図示しない液体供給器具を接続して液体(例えば、生理食塩水)を導入してもよい。
【0069】
続いて、展開工程(図6のステップS5)において、図11に示すように、第1支持部26、第2支持部50及び医療用シート300を展開させる。具体的に、展開工程では、第1シャフト24を把持し、第1シャフト24を外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させる。これにより、第1シャフト24の弁体55によって、第1シャフト24と共に第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)に向けて一体的に移動する。そうすると、外筒22の先端開口80から露出した第1支持部26は、復元力によって元の形状に復帰する。第1支持部26が展開した第2位置において、第2支持部50は、平面形状に広がる。
【0070】
展開工程において、第2キャリア部材20は、医療用シート300を載せた第2支持面74の全体が第1支持面261の上に位置する。この時、医療用シート300は、第1支持面261と第2支持面74とによって支持される。これにより、医療用シート300を心臓400の移植対象部402に移送する前の状態で、医療用シート300の張出部302に皺が発生することを抑制できる。
【0071】
次いで、移動工程(図6のステップS6)において、図12に示すように、第2キャリア部材20を第1キャリア部材18に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させることで、医療用シート300が載せられた第2支持部50が後退位置から進出位置へと移動し、第2支持部50が第1支持部26の先端よりも先端方向(矢印X1方向)に突出する。具体的に、移動工程では、第2シャフト48を第1シャフト24に対して先端方向に移動させる。
【0072】
これにより、第2支持部50が第1支持部26に対して先端方向(矢印X1方向)に移動する。このとき、キャリア保持部54(押付部56)の先端面が医療用シート300の外周端面を先端方向に押圧すると、医療用シート300の全体が、第1支持部26よりも先端方向に位置する。この移動工程では、医療用シート300を心臓400の移植対象部402の上まで移動させて医療用シート300の張出部302を移植対象部402に接触させる。
【0073】
その後、抜去工程(図6のステップS7)において、図13に示すように、第2キャリア部材20を第2位置から第1位置まで移動させることにより第2支持部50を移植対象部402と医療用シート300との間から引き抜く。そうすると、医療用シート300の全体が移植対象部402の表面に接触する。これにより、医療用シート300の移植対象部402への移送が完了する。その後、移送器具10は、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22内に収容した状態で、胸部408から抜去される。
【0074】
次に、移送器具10の製造方法及び滅菌方法について説明する。図14に示すように、本実施形態に係る製造方法及び滅菌方法には、収容工程(ステップS10)と、包装工程(ステップS15)と、形状付与工程(ステップS20)とを有する。
【0075】
形状付与工程が実施される前、第1支持部26の表面461及び裏面462は平坦面である。収容工程では、作業者は、このような形状の第1支持部26(平板状の素材シート)を、幅方向の両側部の裏面462が向かい合うように湾曲変形させる。続いて、作業者は、移送方法における収容工程(図6のステップS3)と同様に、第1キャリア部材18の第1シャフト24と第2キャリア部材20の第2シャフト48とを一緒に外筒22に対して基端方向(矢印X2方向)の第1位置に移動させる。ただし、製造方法及び滅菌方法を実施する際、医療用シート300は第1支持部26に支持されない。
【0076】
これにより、上記した移送方法における収容工程(図6のステップS3)と同様に、第1支持部26の基端支持部34(図2参照)が外筒22の先端開口80から基端方向に引き込まれる。このとき、基端支持部34は、丸まりながら外筒22内に引き込まれる。また、第1支持部26は、先端側が大径で、基端支持部34が小径となるように円錐状に丸まりながら、外筒22内に収容される。
【0077】
第1支持部26の基端支持部34が変形すると、中間支持部36(図2参照)は、丸まりながら外筒22内に引き込まれ、外筒22の内面に沿って円筒状に変形する。両側部の各々は、第1支持部26の表面461が内側となり、第1支持部26の裏面462が外側となるように湾曲していく。従って、図9と同様に、第1支持部26の幅方向両側の裏面462同士が外筒22の中心軸と直交方向に延在する仮想線L2を挟んで互いに向かい合う。その結果、第1支持部26は、外筒22の内面に沿ったハート型に湾曲する。第1支持部26には、互いの裏面462が向かい合った両側部に基づき、一対の離間部39が形成される。
【0078】
第1支持部26の湾曲変形に伴って、第2支持部50(図1図3参照)も同様に、第1支持部26の内側(表面461側)で第1支持部26に沿って湾曲変形する。
【0079】
次に、包装工程(図14のステップS15)を実施する。ここで、移送器具10は、収容工程に引き続き、第1シャフト24及び第2シャフト48が第1位置に位置し且つ第1支持部26及び第2支持部50が外筒22に収容された状態である。この状態の移送器具10を、図15に示す包装材502で包装する。
【0080】
次に、形状付与工程(図14のステップS20)を実施する。この場合、形状付与工程では、移送器具10に滅菌処理が施される。すなわち、この態様において、形状付与工程は、滅菌処理工程(図14のステップS20’)である。
【0081】
具体的に、第1シャフト24及び第2シャフト48が第1位置に位置し且つ第1支持部26及び第2支持部50が外筒22に収容された状態の移送器具10に対し、滅菌処理を施す。滅菌処理に伴い、第1シャフト24、第1支持部26、第2シャフト48、第2支持部50及び外筒22を含む移送器具10の温度が上昇する。この温度上昇により、外筒22内に収容された一対の離間部39の形状付けがなされることに基づいて、一対の突出部38が形成される。突出部38は、この形状付けがなされたときの形状で安定する。
【0082】
滅菌処理の手法としては、蒸気滅菌、放射線滅菌、酸化エチレンガス(EOG)滅菌又は過酸化水素滅菌等の手法が挙げられるが、放射線滅菌が特に好ましい。放射線滅菌の場合、放射線が照射されることに伴い、第1支持部26の分子構造に変化が起こる。この変化に基づき、滅菌処理後において、突出部38の形状が一層安定する。放射線滅菌において移送器具10に照射する放射線は、電子線又はガンマ線のいずれであってもよい。
【0083】
以上により、滅菌処理が施された移送器具10と、該移送器具10を包装した包装材502とを備える医療機器パッケージ500が構成される。典型的には、医療機器パッケージ500は、不図示の梱包材(外梱包)で梱包される。
【0084】
包装材502を開封する前の未開封状態において、滅菌処理が施された移送器具10は、第1シャフト24及び第2シャフト48が第1位置に位置し、且つ第1支持部26及び第2支持部50が外筒22に収容された状態である。第1支持部26は、一対の突出部38が外筒22の内周面から離間して外筒22の内部へと突出する一対の離間部39を形成するように、湾曲変形している。
【0085】
包装材502は、例えば、手術室等において開封される。移送器具10は、包装材502から取り出された後、上記したように医療用シート300(図1参照)の移送に用いられる。
【0086】
図14に示した態様では、形状付与工程において、一対の離間部39の形状付けと、移送器具10の滅菌処理とを同時に行っている。これに対し、図16に示すように、一対の離間部39の形状付けと、移送器具10の滅菌処理とを互いに別個の工程としてもよい。以下、この態様における移送器具10の製造方法について説明する。
【0087】
この態様の製造方法は、図16に示すように、収容工程(ステップS10)と、形状付与工程(ステップS12)と、包装工程(ステップS15)と、滅菌処理工程(ステップS20’)とを有する。なお、収容工程、包装工程及び滅菌処理工程については上記と同様にして実施することが可能であるので、詳細な説明を省略する。
【0088】
収容工程(図16のステップS10)において、第1支持部26が図9に示す状態で外筒22に収容される。次に、形状付与工程(図16のステップS12)において、移送器具10の温度上昇を伴う昇温処理が実施される。この昇温処理に基づいて、一対の離間部39の形状付けがなされる。
【0089】
昇温処理では、移送器具10の温度を、一対の離間部39の形状付けがなされる温度まで上昇させればよい。移送器具10の温度を上昇させる手法の一例としては、滅菌処理を施すための上記の手法が挙げられる。上記した理由から、電子線又はガンマ線等の放射線を移送器具10に照射することが好ましい。ただし、移送器具10の到達温度は、滅菌処理における移送器具10の到達温度よりも低温であってもよい。又は、移送器具10の到達温度は、滅菌処理における移送器具10の到達温度以上であってもよい。
【0090】
この形状付与工程により、外筒22内に収容された一対の離間部39の形状付けがなされ、一対の突出部38が形成される。突出部38は、この形状付けがなされたときの形状で安定する。
【0091】
次に、包装工程(図16のステップS15)を実施する。移送器具10は、例えば、包装材502内に密封される。
【0092】
次に、滅菌処理工程(図16のステップS20’)を実施し、移送器具10に対して滅菌処理を施す。滅菌処理の具体例としては、図14に示す形状付与工程(ステップS20)において提示した滅菌処理手法が挙げられる。
【0093】
なお、包装工程を形状付与工程の前に実施してもよい。この態様の製造方法では、収容工程、包装工程、形状付与工程及び滅菌処理工程がこの順序で実施される。
【0094】
以上により、滅菌処理が施された移送器具10と、該移送器具10を包装した包装材502とを備える医療機器パッケージ500が構成される。典型的には、医療機器パッケージ500は、不図示の梱包材(外梱包)で梱包される。
【0095】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0096】
移送器具10は、先端開口80を有する外筒22と、第1キャリア部材18とを備える。ここで、第1キャリア部材18は、外筒22の軸方向に延在して外筒22の内部に軸方向に沿って移動可能に配置される第1シャフト24と、第1シャフト24の先端部に配置されたシート状の第1支持部26とを有する。第1支持部26は、医療用シート300を保持可能な第1支持面261と、第1支持面261を含む表面461と、表面461とは反対側の裏面462とを有する。第1支持部26において、第1シャフト24の延在方向と直交する方向の幅は、外筒22の内周長さよりも大きい。
【0097】
第1支持部26は、第1支持面261を有する支持ベース部264と、第1支持部26の幅方向における支持ベース部264の両側部から上方に向けて突出した一対の突出部38とを有する。第1支持部26が外筒22内に収容されるように第1シャフト24を外筒22に対して基端方向に移動させた第1位置において、第1支持部26は、湾曲変形した状態で外筒22内に収容される。その一方で、第1支持部26が外筒22の先端開口80から突出するように第1シャフト24を外筒22に対して先端方向に移動させた第2位置において、第1支持部26は、外筒22から先端方向に露出することで展開する。
【0098】
このような移送器具10を得るための製造方法は、収容工程(図14又は図16におけるステップS10)と、形状付与工程(図14におけるステップS20、又は図16におけるステップS12)とを有する。収容工程は、両側部が裏面462で向かい合うように第1支持部26を湾曲変形させた状態で、第1シャフト24を第2位置から第1位置に移動させることによって、第1支持部26を外筒22内に収容する工程である。外筒22内に収容された第1支持部26においては、互いに向かい合った両側部が、外筒22の内周面から離間して外筒22の内部へと突出する一対の離間部39を形成する。形状付与工程は、外筒22内において第1支持部26が一対の離間部39を形成した状態で、外筒22、第1シャフト24及び第1支持部26に対し、外筒22、第1シャフト24及び第1支持部26の温度上昇を伴う昇温処理を施し、これにより、一対の突出部38を形状付けする工程である。
【0099】
この製造方法によれば、一対の突出部38が、形状付与工程時に形状付けされた形状で安定する。従って、医療用シート300を移送する際、第1シャフト24を第2位置から第1位置に移動させることにより、外筒22内(内腔78)に突出部38が円滑に収容される。このため、移送器具10をより細経化し、低侵襲化することができる。
【0100】
一態様において、形状付与工程では、移送器具10に対して滅菌処理が施される。すなわち、この態様では、形状付与工程は滅菌処理工程(図14におけるステップS20’)を兼ねている。
【0101】
この場合、一対の突出部38の形状付けを、滅菌処理と同時に行うことができる。このため、移送器具10を効率よく製造することができる。
【0102】
滅菌処理としては、放射線滅菌が好ましい。この場合、一対の突出部38の形状が、形状付けされたときの形状で一層安定する。
【0103】
典型例では、収容工程により、一対の離間部39において互いに向かい合う部分の少なくとも一部が接触する。
【0104】
医療機器パッケージ500は、滅菌処理が施された上記の移送器具10と、移送器具10を包装した包装材502とを備える。ここで、外筒22、第1シャフト24及び第1支持部26は、包装材502を開封する前の未開封状態において、第1シャフト24が第1位置に位置するとともに、一対の突出部38が外筒22の内周面から離間して外筒22の内部へと突出する一対の離間部39を形成するように、第1支持部26が湾曲変形して外筒22内に収容されている。
【0105】
第1支持部26は、滅菌処理時に形状付けされた一対の突出部38を有する。この場合、一対の突出部38の形状が、滅菌処理時に形状付けされた形状で安定する。
【0106】
また、移送器具10を使用する前段階において、このような第1支持部26を外筒22内に収容した状態を維持した場合、一対の突出部38の形状が一層安定する。従って、包装材502から取り出した移送器具10を用いて医療用シート300を移送する際、第1シャフト24を第2位置から第1位置に移動させることにより、外筒22内に突出部38が円滑に収容される。このため、移送器具10をより細経化し、低侵襲化することができる。
【0107】
移送器具10に施す滅菌方法は、収容工程(図14におけるステップS10)と、滅菌処理工程(図14におけるステップS20’)とを有する。収容工程は、両側部が裏面462で向かい合うように第1支持部26を湾曲変形させた状態で、第1シャフト24を第2位置から第1位置に移動させることによって、第1支持部26を外筒22内に収容する工程である。外筒22内に収容された第1支持部26においては、互いに向かい合った両側部が、外筒22の内周面から離間して外筒22の内部へと突出する一対の離間部39を形成する。滅菌処理工程は、外筒22内において第1支持部26が一対の離間部39を形成した状態で、外筒22、第1シャフト24及び第1支持部26に対し、外筒22、第1シャフト24及び第1支持部26の温度上昇を伴う昇温処理を施し、これにより、移送器具10に滅菌処理を施すとともに、一対の突出部38を形状付けする工程である。
【0108】
上記した理由から、この滅菌方法によれば、移送器具10をより細経化し、低侵襲化することができるとともに、移送器具10を効率よく製造することができる。
【0109】
移送器具10を包装材502で包装する包装工程(図14におけるステップS15)を実施する場合、滅菌処理工程を包装工程よりも後に実施する。この場合、包装材502で包装された移送器具10に滅菌処理を施すので、移送器具10が滅菌処理前後で包装材502に包装された状態が保たれる。このため、移送器具10を清潔な状態に保つことができる。
【0110】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0111】
10…移送器具 18…第1キャリア部材
22…外筒 24…第1シャフト
26…第1支持部 38…突出部
39…離間部 261…第1支持面
300…医療用シート 402…移植対象部
500…医療機器パッケージ 502…包装材
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