(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012040
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】車載ネットワークシステム、ゲートウェイ装置、通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/46 20060101AFI20250117BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H04L12/46 100C
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114569
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高井 聖吾
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA04
5K033BA06
5K033CA07
5K033DA05
5K033DB18
5K033EC01
(57)【要約】
【課題】起動させる電子制御装置が配置されていないネットワーク上にある電子制御装置を起動させてしまうことを抑制できる車載ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】車載ネットワークシステムでは、第1電子制御装置ECU_1~第5電子制御装置ECU_5が第1通信バスBUS_1によるネットワークと第2通信バスBUS_2によるネットワークとを構成している。ゲートウェイ装置100は、処理装置110を備えている。起動させる電子制御装置を特定するためのフレームを含む起動要求メッセージをゲートウェイ装置100が受信したときに、処理装置110が、起動要求メッセージに含まれるフレームを参照して、起動要求メッセージの送信先を決定する。ゲートウェイ装置100は、起動させる電子制御装置である第1電子制御装置ECU_1が配置されているネットワークにのみ起動要求メッセージを送信する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子制御装置同士が、ゲートウェイ装置を介してCANのプロトコルに準拠した通信を行う車載ネットワークシステムであり、
前記複数の電子制御装置が複数の通信バスを介して前記通信バス毎にネットワークを構成し、複数の前記ネットワークが前記ゲートウェイ装置に接続されており、
前記ゲートウェイ装置が、処理装置を備え、
起動させる前記電子制御装置を特定するためのフレームを含む起動要求メッセージを前記ゲートウェイ装置が受信したときに、前記処理装置が、前記起動要求メッセージに含まれる前記フレームを参照して、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークには前記起動要求メッセージを送信せずに、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークに前記起動要求メッセージを送信するように、前記起動要求メッセージの送信先を決定し、
前記ゲートウェイ装置が、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークにのみ前記起動要求メッセージを送信する
車載ネットワークシステム。
【請求項2】
複数の機能のそれぞれを実現するために組み合わせを変えて実行される複数のアプリケーションが前記複数の電子制御装置に配置されており、
前記ゲートウェイ装置が、記憶装置を備え、
前記記憶装置に、同時に稼働させる複数の前記アプリケーションの組合せである複数のグループと各グループに属する前記アプリケーションとの対応関係を示す第1データベースと、複数の前記ネットワークと各ネットワークに属する前記電子制御装置が実行する前記アプリケーションとの対応関係を示す第2データベースと、が記憶されており、
起動を要求する前記グループを示す前記フレームを含む起動要求メッセージを前記ゲートウェイ装置が受信したときに、前記処理装置が、前記起動要求メッセージに含まれる前記フレームと、前記第1データベースと、前記第2データベースと、を参照して、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークを特定することによって、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークには前記起動要求メッセージを送信せずに、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークに前記起動要求メッセージを送信するように、前記起動要求メッセージの送信先を決定する
請求項1に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項3】
前記ゲートウェイ装置が、記憶装置を備え、
前記記憶装置に、同時に稼働させる複数の前記電子制御装置の組合せである複数のグループと各グループに属する前記電子制御装置との対応関係を示す第1データベースと、複数の前記ネットワークと各ネットワークに属する前記電子制御装置との対応関係を示す第2データベースと、が記憶されており、
起動を要求する前記グループを示す前記フレームを含む起動要求メッセージを前記ゲートウェイ装置が受信したときに、前記処理装置が、前記起動要求メッセージに含まれる前記フレームと、前記第1データベースと、前記第2データベースと、を参照して、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークを特定することによって、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークには前記起動要求メッセージを送信せずに、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークに前記起動要求メッセージを送信するように、前記起動要求メッセージの送信先を決定する
請求項1に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項4】
各電子制御装置は、
前記電子制御装置がアクティブ状態である場合にカウンタをカウントアップさせ、前記電子制御装置が前記起動要求メッセージを受け付けたときに、前記カウンタをリセットするタイマを備えており、
前記電子制御装置が、前記タイマでカウントしている前記カウンタが既定値に達したときに、スリープ状態に移行する
請求項1に記載の車載ネットワークシステム。
【請求項5】
複数の電子制御装置が複数の通信バスを介して前記通信バス毎にネットワークを構成しており、前記複数の電子制御装置同士がCANのプロトコルに準拠した通信を行う車載ネットワークシステムに適用され、複数の前記ネットワークが接続されて前記複数の電子制御装置同士の通信を中継するゲートウェイ装置であり、
処理装置を備え、
起動させる前記電子制御装置を特定するためのフレームを含む起動要求メッセージを受信したときに、前記処理装置が、前記起動要求メッセージに含まれる前記フレームを参照して、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークには前記起動要求メッセージを送信せずに、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークに前記起動要求メッセージを送信するように、前記起動要求メッセージの送信先を決定する
ゲートウェイ装置。
【請求項6】
複数の電子制御装置が複数の通信バスを介して前記通信バス毎にネットワークを構成しており、前記複数の電子制御装置同士が、CANのプロトコルに準拠した通信を行う車載ネットワークシステムにおける通信方法であり、
複数の前記ネットワークが接続されて前記複数の電子制御装置同士の通信を中継するゲートウェイ装置が、前記電子制御装置から起動させる前記電子制御装置を特定するためのフレームを含む起動要求メッセージを受信する第1ステップと、
前記ゲートウェイ装置が、受信した前記起動要求メッセージに含まれる前記フレームを参照して、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークには前記起動要求メッセージを送信せずに、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークに前記起動要求メッセージを送信するように、前記起動要求メッセージの送信先を決定する第2ステップと、
前記ゲートウェイ装置が、前記第2ステップにおいて決定した送信先の前記ネットワークにのみ前記起動要求メッセージを送信する第3ステップと、を含む
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車載ネットワークシステム、ゲートウェイ装置、通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された複数の電子制御装置同士が通信を行う車載ネットワークシステムが開示されている。この車載ネットワークシステムにおける通信バスを介した通信には、CAN(Controller Area Network)のプロトコルが適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載ネットワークシステムにおける複数の電子制御装置のうち、一部の電子制御装置のみを起動させて、残りの電子制御装置をスリープ状態のままに維持するパーシャルネットワークが知られている。パーシャルネットワークは、車載ネットワークシステムの消費電力を低減することができる。
【0005】
パーシャルネットワークに対応した電子制御装置は、個別に割り当てられた特定のフレームを含む起動要求メッセージを受信したときに起動して、アクティブ状態に移行する。アクティブ状態は、電子制御装置がアプリケーションを実行できる状態である。
【0006】
パーシャルネットワークに対応した電子制御装置は、当該電子制御装置に割り当てられた特定のフレームを含まない起動要求メッセージを受信した場合には、当該起動要求メッセージを無視する。これにより、当該電子制御装置は、スリープ状態を維持する。スリープ状態は、アプリケーションを実行する機能を停止させて消費電力を低減させた状態である。
【0007】
パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置は、他の電子制御装置を起動させるための起動要求メッセージを無視する構成を備えていない。そのため、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置が、他の電子制御装置を起動させるための起動要求メッセージを受信すると、起動する必要がないにも拘わらず起動してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するための車載ネットワークシステムは、複数の電子制御装置同士が、ゲートウェイ装置を介してCANのプロトコルに準拠した通信を行う車載ネットワークシステムである。この車載ネットワークシステムでは、前記複数の電子制御装置が複数の通信バスを介して前記通信バス毎にネットワークを構成している。そして、複数の前記ネットワークが前記ゲートウェイ装置に接続されている。前記ゲートウェイ装置は、処理装置を備えている。起動させる前記電子制御装置を特定するためのフレームを含む起動要求メッセージを前記ゲートウェイ装置が受信したときに、前記処理装置が、前記起動要求メッセージに含まれる前記フレームを参照して、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークには前記起動要求メッセージを送信せずに、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークに前記起動要求メッセージを送信するように、前記起動要求メッセージの送信先を決定する。前記ゲートウェイ装置が、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークにのみ前記起動要求メッセージを送信する。
【0009】
上記課題を解決するためのゲートウェイ装置は、複数の電子制御装置が複数の通信バスを介して前記通信バス毎にネットワークを構成しており、前記複数の電子制御装置同士がCANのプロトコルに準拠した通信を行う車載ネットワークシステムに適用される。このゲートウェイ装置には、複数の前記ネットワークが接続されている。そして、このゲートウェイ装置は、前記複数の電子制御装置同士の通信を中継する。このゲートウェイ装置は、処理装置を備えている。起動させる前記電子制御装置を特定するためのフレームを含む起動要求メッセージを受信したときに、前記処理装置が、前記起動要求メッセージに含まれる前記フレームを参照して、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークには前記起動要求メッセージを送信せずに、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークに前記起動要求メッセージを送信するように、前記起動要求メッセージの送信先を決定する。
【0010】
上記課題を解決するための通信方法は、複数の電子制御装置が複数の通信バスを介して前記通信バス毎にネットワークを構成しており、前記複数の電子制御装置同士が、CANのプロトコルに準拠した通信を行う車載ネットワークシステムにおける通信方法である。この通信方法は、複数の前記ネットワークが接続されて前記複数の電子制御装置同士の通信を中継するゲートウェイ装置が、前記電子制御装置から起動させる前記電子制御装置を特定するためのフレームを含む起動要求メッセージを受信する第1ステップを含む。この通信方法は、前記ゲートウェイ装置が、受信した前記起動要求メッセージに含まれる前記フレームを参照して、起動させる前記電子制御装置が配置されていない前記ネットワークには前記起動要求メッセージを送信せずに、起動させる前記電子制御装置が配置されている前記ネットワークに前記起動要求メッセージを送信するように、前記起動要求メッセージの送信先を決定する第2ステップを含む。この通信方法は、前記ゲートウェイ装置が、前記第2ステップにおいて決定した送信先の前記ネットワークにのみ前記起動要求メッセージを送信する第3ステップを含む。
【発明の効果】
【0011】
上記の車載ネットワークシステム、ゲートウェイ装置、及び通信方法は、起動させる電子制御装置が配置されていないネットワーク上にある、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置を起動させてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態の車載ネットワークシステムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態の車載ネットワークシステムにおける、各システムを稼働させるために同時に実行するアプリケーションの組合せと、各アプリケーションが配置されたネットワークとの関係をまとめて示した表である。
【
図3】
図3は、第1比較例において、事例1の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図4】
図4は、第1比較例において、事例2の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図5】
図5は、第1比較例において、事例3の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図6】
図6は、第1比較例において、事例4の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図7】
図7は、第2比較例において、事例1の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図8】
図8は、第2比較例において、事例2の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図9】
図9は、第2比較例において、事例3の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図10】
図10は、第2比較例において、事例4の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図11】
図11は、起動要求メッセージを受信したときにゲートウェイ装置の処理装置が実行する一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態の車載ネットワークシステムにおいて、事例1の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態の車載ネットワークシステムにおいて、事例2の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図14】
図14は、実施形態の車載ネットワークシステムにおいて、事例3の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図15】
図15は、実施形態の車載ネットワークシステムにおいて、事例4の場合に、どの電子制御装置が起動するのかを示した模式図である。
【
図16】
図16は、変更例の車載ネットワークシステムにおける、各システムを稼働させるために同時に稼働させる電子制御装置の組合せと、各電子制御装置が配置されたネットワークとの関係をまとめて示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、車載ネットワークシステムの一実施形態について、
図1~
図15を参照して説明する。
<車載ネットワークシステムの構成>
図1は、実施形態の車載ネットワークシステムの構成を示している。
図1に示すように、この車載ネットワークシステムは、ゲートウェイ装置100を備えている。この車載ネットワークシステムは、複数の電子制御装置ECUを備えている。複数の電子制御装置ECUは、複数の通信バスBUSを介してゲートウェイ装置100に接続されている。この車載ネットワークシステムでは、複数の電子制御装置ECUが、通信バスBUS毎にネットワークを構成している。
【0014】
例えば、
図1に示すように第1通信バスBUS_1と第2通信バスBUS_2とが、ゲートウェイ装置100に接続されている。第1通信バスBUS_1には、第1電子制御装置ECU_1と第2電子制御装置ECU_2とが接続されている。第2通信バスBUS_2には、第3電子制御装置ECU_3と第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とが接続されている。こうして第1電子制御装置ECU_1~第5電子制御装置ECU_5が、第1通信バスBUS_1と、第2通信バスBUS_2とを介してそれぞれゲートウェイ装置100に接続されている。この場合、第1電子制御装置ECU_1~第5電子制御装置ECU_5は、第1通信バスBUS_1によって接続されたネットワークと、第2通信バスBUS_2によって接続されたネットワークとを構成している。
【0015】
各電子制御装置ECUには、それぞれの電子制御装置ECUが実行するアプリケーションAPLが配置されている。例えば、
図1に示すように、第1電子制御装置ECU_1には第1アプリケーションAPL_1が配置されている。第2電子制御装置ECU_2には第2アプリケーションAPL_2が配置されている。第3電子制御装置ECU_3には第3アプリケーションAPL_3が配置されている。第4電子制御装置ECU_4には第4アプリケーションAPL_4及び第5アプリケーションAPL_5が配置されている。第5電子制御装置ECU_5には第6アプリケーションAPL_6が配置されている。
【0016】
この車載ネットワークシステムを搭載した車両では、複数の電子制御装置ECUに配置された複数のアプリケーションAPLを組み合わせて実行することによって各種の機能を実現する。
【0017】
図2は、
図1に示した車載ネットワークシステムを例に、各種の機能を実現するために実行する複数のアプリケーションAPLの組合せを示した表である。実現する機能は様々であり、例えば、自動駐車機能、自動ブレーキ機能、リモートドアロック機能、リモートエアコン機能、セキュリティ機能である。
【0018】
図2に示す例の場合、車両は、それぞれ異なる機能を実現する第1システム、第2システム及び第3システムを備えている。
図2に示すように、第1システムは、第1アプリケーションAPL_1と第4アプリケーションAPL_4と第6アプリケーションAPL_6とを組み合わせて同時に実行することにより機能を実現する。第2システムは、第3アプリケーションAPL_3と第6アプリケーションAPL_6とを組み合わせて同時に実行することにより機能を実現する。第3システムは、第1アプリケーションAPL_1と第2アプリケーションAPL_2とを組み合わせて同時に実行することにより機能を実現する。
【0019】
複数の電子制御装置ECUは、ゲートウェイ装置100を介してCAN(Controller Area Network)のプロトコルに準拠した通信を行う。
ゲートウェイ装置100は、処理装置110と、記憶装置120と、トランシーバ130とを備えている。トランシーバ130は、通信バスBUSとの通信インターフェースとして機能する。
【0020】
この車載ネットワークシステムは、複数の電子制御装置ECUのうち、一部の電子制御装置ECUのみを起動させて、残りの電子制御装置ECUをスリープ状態のままに維持するパーシャルネットワークを実現できるように構成されている。パーシャルネットワークにより、車載ネットワークシステムは、消費電力を低減することができる。
【0021】
各電子制御装置ECUは、タイマ220とトランシーバ230とを備えている。この車載ネットワークシステムは、消費電力を低減させるために、使用していない電子制御装置ECUをスリープ状態に移行させる。タイマ220は、電子制御装置ECUをスリープ状態に移行させるために使用するカウンタをカウントする。例えば、タイマ220は、当該タイマ220が搭載されている電子制御装置ECUがアクティブ状態であるときに定期的にカウンタをカウントアップさせる。タイマ220は、当該タイマ220が搭載されている電子制御装置ECUが後述する起動要求メッセージを受け付けたときに、カウンタをリセットする。電子制御装置ECUは、タイマ220がカウントしているカウンタが既定値に達したときに、スリープ状態に移行する。つまり、電子制御装置ECUは、起動要求メッセージを受け付けていない期間が、一定の期間に亘って継続したときに、自動的にスリープ状態に移行する。
【0022】
トランシーバ230は、各通信バスBUSとの通信インターフェースとして機能する。トランシーバ230には、パーシャルネットワークに対応したトランシーバ230Aと、パーシャルネットワークに対応していないトランシーバ230Bとがある。
図1に示した車載ネットワークシステムでは、第1電子制御装置ECU_1と、第2電子制御装置ECU_2と、第3電子制御装置ECU_3とが、パーシャルネットワークに対応したトランシーバ230Aをそれぞれ備えている。一方で、第4電子制御装置ECU_4と、第5電子制御装置ECU_5とは、パーシャルネットワークに対応していないトランシーバ230Bをそれぞれ備えている。すなわち、第1電子制御装置ECU_1と、第2電子制御装置ECU_2と、第3電子制御装置ECU_3とが、パーシャルネットワークに対応した電子制御装置ECUである。そして、第4電子制御装置ECU_4と、第5電子制御装置ECU_5とが、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。図面では、符号に括弧書きで「PN」を付すことによって、パーシャルネットワークに対応した電子制御装置ECUであることを示している。
【0023】
<パーシャルネットワークについて>
パーシャルネットワークに対応した電子制御装置ECUは、個別に割り当てられた特定のフレームを含む起動要求メッセージを受信したときに起動して、アクティブ状態に移行する。アクティブ状態は、電子制御装置ECUがアプリケーションAPLを実行できる状態である。
【0024】
パーシャルネットワークに対応した電子制御装置ECUは、その電子制御装置ECUに割り当てられた特定のフレームを含まない起動要求メッセージを受信した場合には、起動要求メッセージを無視する。これにより、その電子制御装置ECUは、スリープ状態を維持する。スリープ状態は、アプリケーションAPLを実行する機能を停止させて消費電力を低減させた状態である。
【0025】
パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUのトランシーバ230Bは、その電子制御装置ECUに割り当てられた特定のフレームを含まない起動要求メッセージを無視する機能を備えていない。そのため、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUが、他の電子制御装置ECUを起動させるための起動要求メッセージを受信すると、起動する必要がないにも拘わらず起動してしまう。このことについて、
図3~
図10を参照しながら、具体的な事例1~事例4を示して説明する。
【0026】
図3~
図10に示す車載ネットワークシステムは、
図1に示した車載ネットワークシステムと同様のネットワーク構造を有している。また、第1アプリケーションAPL_1~第6アプリケーションAPL_6は、
図1に示した車載ネットワークシステムと同様に第1電子制御装置ECU_1~第5電子制御装置ECU_5に配置されている。
【0027】
図3~
図6に示す第1比較例の車載ネットワークシステムは、
図1に示した車載ネットワークシステムとは異なり、第1電子制御装置ECU_1~第5電子制御装置ECU_5の全てがパーシャルネットワークに対応した電子制御装置ECUになっている。一方で、
図7~
図10に示す第2比較例の車載ネットワークシステムは、
図1に示した車載ネットワークシステムと同様に、第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とがパーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUになっている。
【0028】
<第1比較例における事例1>
事例1は、第1システムを稼働させるために、第1電子制御装置ECU_1が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
図2に示すように、第1システムには、グループIDとして「2」が割り当てられている。第2システムには、グループIDとして「3」が割り当てられている。第3システムには、グループIDとして「4」が割り当てられている。パーシャルネットワークに対応した電子制御装置ECUのトランシーバ230Aが送信する起動要求メッセージには、起動させる電子制御装置ECUを特定するためのフレームとして、このグループIDを示すフレームが含まれている。パーシャルネットワークに対応している電子制御装置ECUのトランシーバ230Aは、起動要求メッセージに含まれているこのフレームを参照して起動要求メッセージを無視するか否かを判定する。パーシャルネットワークに対応した各電子制御装置ECUには、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDが割り当てられている。各トランシーバ230Aは、受信した起動要求メッセージに含まれるフレームを参照する。そして、各トランシーバ230Aは、フレームが示すグループIDが、割り当てられているグループIDと一致した場合に、その起動要求メッセージを受け付ける。各トランシーバ230Aは、起動要求メッセージにグループIDを示すフレームが含まれていない場合にも、その起動要求メッセージを受け付ける。起動要求メッセージを受け付けた電子制御装置ECUは、スリープ状態から起動してアクティブ状態に移行する。各トランシーバ230Aは、フレームが示すグループIDが、割り当てられているグループIDと一致しない場合には、その起動要求メッセージを受け付けずに無視する。この場合、電子制御装置ECUは、スリープ状態を維持する。
【0029】
図2に示すように、第1システムの機能を実現するためには、第1アプリケーションAPL_1と第4アプリケーションAPL_4と第6アプリケーションAPL_6とが実行される。第1比較例の場合、これらのアプリケーションAPLが配置されている第1電子制御装置ECU_1、第4電子制御装置ECU_4及び第5電子制御装置ECU_5には、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDとして「2」が割り当てられている。
【0030】
第2システムの機能を実現するためには、第3アプリケーションAPL_3と第6アプリケーションAPL_6とが実行される。そのため、第1比較例の場合、これらのアプリケーションAPLが配置されている第3電子制御装置ECU_3及び第5電子制御装置ECU_5には、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDとして「3」が割り当てられている。
【0031】
第3システムの機能を実現するためには、第1アプリケーションAPL_1と第2アプリケーションAPL_2とが実行される。そのため、第1比較例の場合、これらのアプリケーションAPLが配置されている第1電子制御装置ECU_1及び第2電子制御装置ECU_2には、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDとして「4」が割り当てられている。
【0032】
つまり、
図3~
図6に示すように、第1比較例の場合、第1電子制御装置ECU_1には、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDとして「2」と「4」とが割り当てられている。第1比較例の場合、第2電子制御装置ECU_2には、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDとして「4」が割り当てられている。第1比較例の場合、第3電子制御装置ECU_3には、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDとして「3」が割り当てられている。第1比較例の場合、第4電子制御装置ECU_4には、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDとして「2」が割り当てられている。第1比較例の場合、第5電子制御装置ECU_5には、無視せずに従う起動要求メッセージのグループIDとして「2」と「3」とが割り当てられている。
【0033】
各電子制御装置ECUから送信された起動要求メッセージは、ゲートウェイ装置100によって中継されて他の全ての電子制御装置ECUに送信される。ゲートウェイ装置100の処理装置110は、起動要求メッセージを参照して、いずれの電子制御装置ECUがアクティブ状態になっているのかを把握する。
【0034】
図3に示すように、第1比較例における事例1の場合、第1電子制御装置ECU_1以外の各電子制御装置ECUには、ゲートウェイ装置100を介して起動要求メッセージが送信される。この起動要求メッセージには、グループIDとして「2」を示すフレームが含まれている。
【0035】
図3に示すように、第2電子制御装置ECU_2には、グループIDとして「2」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第2電子制御装置ECU_2のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第2電子制御装置ECU_2は、起動せずにスリープ状態を維持する。
図3~
図10では、スリープ状態を維持する電子制御装置ECUを破線で示している。
図3~
図10では、起動してアクティブ状態に移行する電子制御装置ECUを実線で示している。
【0036】
図3に示すように、第3電子制御装置ECU_3には、グループIDとして「2」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第3電子制御装置ECU_3のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第3電子制御装置ECU_3は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0037】
図3に示すように、第4電子制御装置ECU_4には、グループIDとして「2」が割り当てられている。そのため、起動要求メッセージを受信した第4電子制御装置ECU_4のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを受け付ける。第4電子制御装置ECU_4は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0038】
図3に示すように、第5電子制御装置ECU_5には、グループIDとして「2」が割り当てられている。そのため、起動要求メッセージを受信した第5電子制御装置ECU_5のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを受け付ける。第5電子制御装置ECU_5は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0039】
このように第1比較例における事例1の場合には、第1システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されている第1電子制御装置ECU_1と第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とが起動する。一方で、第1システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない第2電子制御装置ECU_2と第3電子制御装置ECU_3とはスリープ状態を維持する。
【0040】
<第1比較例における事例2>
事例2は、第1システムを稼働させるために、第4電子制御装置ECU_4が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0041】
図4に示すように、第1比較例における事例2の場合、第4電子制御装置ECU_4以外の各電子制御装置ECUには、ゲートウェイ装置100を介して起動要求メッセージが送信される。この起動要求メッセージには、グループIDとして「2」を示すフレームが含まれている。
【0042】
図4に示すように、第1電子制御装置ECU_1には、グループIDとして「2」が割り当てられている。そのため、起動要求メッセージを受信した第1電子制御装置ECU_1のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを受け付ける。第1電子制御装置ECU_1は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0043】
図4に示すように、第2電子制御装置ECU_2には、グループIDとして「2」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第2電子制御装置ECU_2のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第2電子制御装置ECU_2は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0044】
図4に示すように、第3電子制御装置ECU_3には、グループIDとして「2」が割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第3電子制御装置ECU_3のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第3電子制御装置ECU_3は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0045】
図4に示すように、第5電子制御装置ECU_5には、グループIDとして「2」が割り当てられている。そのため、起動要求メッセージを受信した第5電子制御装置ECU_5のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを受け付ける。第5電子制御装置ECU_5は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0046】
このように
図4に示す第1比較例における事例2の場合にも、第1システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されている第1電子制御装置ECU_1と第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とが起動する。一方で、第1システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない第2電子制御装置ECU_2と第3電子制御装置ECU_3とはスリープ状態を維持する。
【0047】
<第1比較例における事例3>
事例3は、第3システムを稼働させるために、第2電子制御装置ECU_2が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0048】
図5に示すように、第1比較例における事例3の場合、第2電子制御装置ECU_2以外の各電子制御装置ECUには、ゲートウェイ装置100を介して起動要求メッセージが送信される。この起動要求メッセージには、グループIDとして「4」を示すフレームが含まれている。
【0049】
図5に示すように、第1電子制御装置ECU_1には、グループIDとして「4」が割り当てられている。そのため、起動要求メッセージを受信した第1電子制御装置ECU_1のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを受け付ける。第1電子制御装置ECU_1は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0050】
図5に示すように、第3電子制御装置ECU_3には、グループIDとして「4」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第3電子制御装置ECU_3のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第3電子制御装置ECU_3は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0051】
図5に示すように、第4電子制御装置ECU_4には、グループIDとして「4」が割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第4電子制御装置ECU_4のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第4電子制御装置ECU_4は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0052】
図5に示すように、第5電子制御装置ECU_5には、グループIDとして「4」が割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第5電子制御装置ECU_5のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第5電子制御装置ECU_5は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0053】
このように
図5に示す第1比較例における事例3の場合には、第3システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されている第1電子制御装置ECU_1と第2電子制御装置ECU_2とが起動する。一方で、第3システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない第3電子制御装置ECU_3と第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とはスリープ状態を維持する。
【0054】
<第1比較例における事例4>
事例4は、第2システムを稼働させるために、第3電子制御装置ECU_3が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0055】
図6に示すように、第1比較例における事例4の場合、第3電子制御装置ECU_3以外の各電子制御装置ECUには、ゲートウェイ装置100を介して起動要求メッセージが送信される。この起動要求メッセージには、グループIDとして「3」を示すフレームが含まれている。
【0056】
図6に示すように、第1電子制御装置ECU_1には、グループIDとして「3」が割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第1電子制御装置ECU_1のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第1電子制御装置ECU_1は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0057】
図6に示すように、第2電子制御装置ECU_2には、グループIDとして「3」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第2電子制御装置ECU_2のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第2電子制御装置ECU_2は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0058】
図6に示すように、第4電子制御装置ECU_4には、グループIDとして「3」が割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第4電子制御装置ECU_4のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第4電子制御装置ECU_4は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0059】
図6に示すように、第5電子制御装置ECU_5には、グループIDとして「3」が割り当てられている。そのため、起動要求メッセージを受信した第5電子制御装置ECU_5のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを受け付ける。第5電子制御装置ECU_5は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0060】
このように
図6に示す第1比較例における事例4の場合には、第2システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されている第3電子制御装置ECU_3と第5電子制御装置ECU_5とが起動する。一方で、第2システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない第1電子制御装置ECU_1と第2電子制御装置ECU_2と第4電子制御装置ECU_4とはスリープ状態を維持する。
【0061】
このように、全ての電子制御装置ECUがパーシャルネットワークに対応している第1比較例の場合には、いずれの事例の場合にも、各システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されている電子制御装置ECUのみが起動する。すなわち、全ての電子制御装置ECUがパーシャルネットワークに対応している第1比較例の車載ネットワークシステムは、最小限の電子制御装置ECUだけを起動して消費電力を低減できる。
【0062】
<第2比較例における事例1>
上述したように、第2比較例の車載ネットワークシステムでは、第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とがパーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUになっている。上述したように、事例1は、第1システムを稼働させるために、第1電子制御装置ECU_1が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0063】
図7に示すように、事例1の場合、第1電子制御装置ECU_1以外の各電子制御装置ECUには、ゲートウェイ装置100を介して起動要求メッセージが送信される。この起動要求メッセージには、グループIDとして「2」を示すフレームが含まれている。
【0064】
図7に示すように、第2電子制御装置ECU_2には、グループIDとして「2」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第2電子制御装置ECU_2のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第2電子制御装置ECU_2は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0065】
図7に示すように、第3電子制御装置ECU_3には、グループIDとして「2」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第3電子制御装置ECU_3のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第3電子制御装置ECU_3は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0066】
第2比較例における第4電子制御装置ECU_4は、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUに搭載されているトランシーバ230Bは、起動要求メッセージに含まれるフレームを確認して他の電子制御装置ECUを起動させるための起動要求メッセージを無視する機能を備えていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第4電子制御装置ECU_4のトランシーバ230Bは、起動要求メッセージを受け付ける。その結果、
図7に示すように、第4電子制御装置ECU_4は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0067】
第5電子制御装置ECU_5も、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。そのため、起動要求メッセージを受信した第5電子制御装置ECU_5のトランシーバ230Bも、起動要求メッセージを受け付ける。その結果、
図7に示すように、第5電子制御装置ECU_5も、起動してアクティブ状態に移行する。
【0068】
このように
図7に示す第2比較例における事例1の場合には、第1システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されている第1電子制御装置ECU_1と第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とが起動する。一方で、第1システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない第2電子制御装置ECU_2と第3電子制御装置ECU_3とはスリープ状態を維持する。
【0069】
<第2比較例における事例2>
上述したように、事例2は、第1システムを稼働させるために、第4電子制御装置ECU_4が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0070】
上述したように、第2比較例における第4電子制御装置ECU_4は、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。トランシーバ230Bは、起動要求メッセージに、いずれのシステムを起動するのかを示すグループIDを示す情報を含めて送信する機能を備えていない。したがって、
図8に示すように、第4電子制御装置ECU_4から送信される起動要求メッセージには、グループIDを示すフレームが含まれていない。そのため、第2比較例における事例2の場合、第4電子制御装置ECU_4以外の各電子制御装置ECUには、ゲートウェイ装置100を介してグループIDを示すフレームが含まれていない起動要求メッセージが送信される。
【0071】
上述したように、トランシーバ230Aは、起動要求メッセージにグループIDを示すフレームが含まれていない場合には、起動要求メッセージを受け付ける。トランシーバ230Bは、グループIDを含むフレームが含まれているか否かに因らずに、起動要求メッセージを受け付ける。
【0072】
そのため、
図8に示すように、第2比較例における事例2の場合には、起動要求メッセージを受信した第1電子制御装置ECU_1、第2電子制御装置ECU_2、第3電子制御装置ECU_3及び第5電子制御装置ECU_5が全て起動する。
【0073】
図4に示すように、第1比較例における事例2の場合には、第1システムを稼働させるために必要なアプリケーションAPLが配置されていない第2電子制御装置ECU_2及び第3電子制御装置ECU_3をスリープ状態に維持することができた。これに対して、第2比較例の事例2の場合には、
図8に二点鎖線で囲んで示したように、第2電子制御装置ECU_2及び第3電子制御装置ECU_3も起動してアクティブ状態に移行してしまう。
【0074】
<第2比較例における事例3>
上述したように、事例3は、第3システムを稼働させるために、第2電子制御装置ECU_2が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0075】
図9に示すように、事例3の場合、第2電子制御装置ECU_2以外の各電子制御装置ECUには、ゲートウェイ装置100を介して起動要求メッセージが送信される。この起動要求メッセージには、グループIDとして「4」を示すフレームが含まれている。
【0076】
図9に示すように、第1電子制御装置ECU_1には、グループIDとして「4」が割り当てられている。そのため、起動要求メッセージを受信した第1電子制御装置ECU_1のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを受け付ける。第1電子制御装置ECU_1は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0077】
図9に示すように、第3電子制御装置ECU_3には、グループIDとして「4」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第3電子制御装置ECU_3のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第3電子制御装置ECU_3は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0078】
図9に示すように、第2比較例における第4電子制御装置ECU_4は、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。そのため、起動要求メッセージを受信した第4電子制御装置ECU_4のトランシーバ230Bは、起動要求メッセージを受け付ける。第4電子制御装置ECU_4は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0079】
第5電子制御装置ECU_5も、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。そのため、起動要求メッセージを受信した第5電子制御装置ECU_5のトランシーバ230Bも、起動要求メッセージを受け付ける。第5電子制御装置ECU_5も、起動してアクティブ状態に移行する。
【0080】
図5に示すように、第1比較例における事例3の場合には、第3システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない電子制御装置ECUをスリープ状態に維持することができた。すなわち、比較例1においては、第3電子制御装置ECU_3と第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とをスリープ状態に維持することができた。これに対して、第2比較例の事例3の場合には、
図9に二点鎖線で囲んで示したように、第4電子制御装置ECU_4及び第5電子制御装置ECU_5が起動してアクティブ状態に移行してしまう。
【0081】
<第2比較例における事例4>
上述したように、事例4は、第2システムを稼働させるために、第3電子制御装置ECU_3が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0082】
図10に示すように、事例4の場合、第3電子制御装置ECU_3以外の各電子制御装置ECUには、ゲートウェイ装置100を介して起動要求メッセージが送信される。この起動要求メッセージには、グループIDとして「3」を示すフレームが含まれている。
【0083】
図10に示すように、第1電子制御装置ECU_1には、グループIDとして「3」が割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第1電子制御装置ECU_1のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第1電子制御装置ECU_1は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0084】
図10に示すように、第2電子制御装置ECU_2には、グループIDとして「3」が割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第2電子制御装置ECU_2のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第2電子制御装置ECU_2は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0085】
トランシーバ230Bが、起動要求メッセージを受け付けるため、
図10に示すように、起動要求メッセージを受信した第4電子制御装置ECU_4及び第5電子制御装置ECU_5は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0086】
図6に示すように、第1比較例における事例4の場合には、第2システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない電子制御装置ECUをスリープ状態に維持することができた。すなわち、比較例1においては、第1電子制御装置ECU_1と第2電子制御装置ECU_2と第4電子制御装置ECU_4とをスリープ状態に維持することができた。これに対して、第2比較例の事例4の場合には、
図10に二点鎖線で囲んで示したように、第4電子制御装置ECU_4が起動してアクティブ状態に移行してしまう。
【0087】
このように、車載ネットワークシステムに、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUが含まれている場合には、起動する必要がない電子制御装置ECUが起動してしまうことがある。
【0088】
<本実施形態の車載ネットワークシステムにおける処理>
この実施形態の車載ネットワークシステムでは、ゲートウェイ装置100が、起動要求メッセージに含まれるフレームを参照して、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークにのみ起動要求メッセージを送信する。これを実現するために、
図1に示すように、ゲートウェイ装置100の記憶装置120には、第1データベース121と第2データベース122とが記憶されている。
【0089】
第1データベース121は、各種の機能を実現するために実行する複数のアプリケーションAPLの組合せをまとめたデータベースである。すなわち、第1データベース121は、同時に稼働させる複数のアプリケーションAPLの組合せである複数のグループと各グループに属するアプリケーションAPLとの対応関係を示すデータベースである。例えば、
図1に示す車載ネットワークシステムの第1データベース121には、
図2における破線で囲んだ部分に示されている情報が格納されている。
【0090】
第2データベース122は、車載ネットワークシステムにおける複数のネットワークと各ネットワークに属する電子制御装置ECUが実行するアプリケーションAPLとの対応関係を示すデータベースである。例えば、
図1に示す車載ネットワークシステムの第2データベース122には、
図2における実線で囲んだ部分に示されている情報が格納されている。
【0091】
図11は、ゲートウェイ装置100の処理装置110が実行するルーチンにおける一連の処理の流れを示している。処理装置110は、各電子制御装置ECUから起動要求メッセージを受信する度に、このルーチンを実行する。
【0092】
図11に示すように、このルーチンを開始すると、処理装置110は、ステップS100の処理において、起動要求メッセージに含まれるグループIDを取得する。具体的には、処理装置110は、起動要求メッセージに含まれているグループIDを示すフレームを参照してグループIDを取得する。起動要求メッセージにグループIDを示すフレームが含まれていない場合には、処理装置110は、グループIDを取得できない。そのため、その場合には、処理装置110は、そのまま次のステップS110の処理に進む。
【0093】
次のステップS110の処理において、処理装置110は、起動要求メッセージの送信先を決定する。具体的には、処理装置110は、取得したグループIDと、第1データベース121と、第2データベース122と、を参照して、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークを特定する。そして、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークのみに起動要求メッセージを送信するように、起動要求メッセージの送信先を決定する。
【0094】
図2に示すように、第1データベース121の情報と、第2データベース122の情報と、を組み合わせれば、処理装置110は、グループIDに基づいて起動させるECUが配置されているネットワークを特定できる。
【0095】
例えば、取得したグループIDが「4」である場合、
図2に示すように、必要なアプリケーションAPLは、第1アプリケーションAPL_1及び第2アプリケーションAPL_2であることが分かる。そして、第1アプリケーションAPL_1を実行する第1電子制御装置ECU_1と、第2アプリケーションAPL_2を実行する第2電子制御装置ECU_2とが、いずれも第1通信バスBUS_1によるネットワークに属していることが分かる。これにより、処理装置110は、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークが第1通信バスBUS_1によって構成されたネットワークであることを認識する。処理装置110は、起動させる電子制御装置ECUが配置されていないネットワークが第2通信バスBUS_2によって構成されたネットワークであることを認識する。
【0096】
処理装置110は、グループIDが取得できていない場合には、全てのネットワークに起動要求メッセージを送信するように、起動要求メッセージの送信先を決定する。
次のステップS120の処理において、処理装置110は、送信先のネットワークに起動要求メッセージを送信する。
【0097】
上記のように、本実施形態の車載ネットワークシステムは、処理装置110が、起動要求メッセージに含まれるフレームを参照して、起動要求メッセージの送信先を決定する。処理装置110は、起動させる電子制御装置ECUが配置されていないネットワークには起動要求メッセージを送信せずに、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークに起動要求メッセージを送信するように、送信先を決定する。処理装置110は、起動要求メッセージに含まれるフレームを参照して、起動要求メッセージの送信先を決定する。そして、ゲートウェイ装置100は、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークにのみ起動要求メッセージを送信する。
【0098】
処理装置110は、グループIDが取得できていない場合には、全てのネットワークに起動要求メッセージを送信するように、起動要求メッセージの送信先を決定する。そして、ゲートウェイ装置100は、全てのネットワークに起動要求メッセージを送信する。
【0099】
<本実施形態の作用>
次に、
図12~
図15を参照して、上述した事例1~事例4にあてはめて本実施形態の作用を説明する。
【0100】
<本実施形態の車載ネットワークシステムにおける事例1>
本実施形態の車載ネットワークシステムは、第2比較例と同様に、第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とがパーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUになっている。上述したように、事例1は、第1システムを稼働させるために、第1電子制御装置ECU_1が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0101】
図12に示すように、事例1の場合、第1電子制御装置ECU_1が、ゲートウェイ装置100に起動要求メッセージを送信する。この起動要求メッセージには、グループIDとして「2」を示すフレームが含まれている。
【0102】
ゲートウェイ装置100は、この起動要求メッセージを受信してグループIDを取得する(S100)。そして、ゲートウェイ装置100は、受信した起動要求メッセージに含まれるフレームと、第1データベース121と、第2データベース122とを参照して、起動要求メッセージの送信先を決定する(S110)。
【0103】
図2に示すように、「2」のグループIDに対応付けられているアプリケーションAPLは、第1アプリケーションAPL_1と第4アプリケーションAPL_4と第6アプリケーションAPL_6である。第1アプリケーションAPL_1を実行する第1電子制御装置ECU_1は、第1通信バスBUS_1によるネットワークに属している。第4アプリケーションAPL_4を実行する第4電子制御装置ECU_4と、第6アプリケーションAPL_6を実行する第5電子制御装置ECU_5とは、いずれも第2通信バスBUS_2によるネットワークに属している。すなわち、この場合には、第1通信バスBUS_1によるネットワークと、第2通信バスBUS_2によるネットワークとの双方が、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークに相当する。そのため、処理装置110は、第1通信バスBUS_1によるネットワークと、第2通信バスBUS_2によるネットワークとの双方を、起動要求メッセージの送信先にする。
【0104】
そして、ゲートウェイ装置100は、
図12に矢印で示すように第1通信バスBUS_1によるネットワークと、第2通信バスBUS_2によるネットワークとの双方に起動要求メッセージを送信する(S120)。
【0105】
図12に示すように、第2電子制御装置ECU_2には、グループIDとして「2」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第2電子制御装置ECU_2のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第2電子制御装置ECU_2は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0106】
図12に示すように、第3電子制御装置ECU_3には、グループIDとして「2」は割り当てられていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第3電子制御装置ECU_3のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを無視して受け付けない。第3電子制御装置ECU_3は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0107】
本実施形態の車載ネットワークシステムにおける第4電子制御装置ECU_4は、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。上述したように、この電子制御装置ECUに搭載されているトランシーバ230Bは、起動要求メッセージに含まれるフレームを確認して他の電子制御装置ECUを起動させるための起動要求メッセージを無視する機能を備えていない。そのため、起動要求メッセージを受信した第4電子制御装置ECU_4のトランシーバ230Bは、起動要求メッセージを受け付ける。その結果、
図12に示すように、第4電子制御装置ECU_4は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0108】
第5電子制御装置ECU_5も、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。そのため、起動要求メッセージを受信した第5電子制御装置ECU_5のトランシーバ230Bも、起動要求メッセージを受け付ける。その結果、
図12に示すように、第5電子制御装置ECU_5も、起動してアクティブ状態に移行する。
【0109】
このように
図12に示す本実施形態における事例1の場合には、第1システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されている第1電子制御装置ECU_1と第4電子制御装置ECU_4と第5電子制御装置ECU_5とが起動する。一方で、第1システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない第2電子制御装置ECU_2と第3電子制御装置ECU_3とはスリープ状態を維持する。
【0110】
<本実施形態の車載ネットワークシステムにおける事例2>
上述したように、事例2は、第1システムを稼働させるために、第4電子制御装置ECU_4が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。事例2の場合、
図13に示すように、第4電子制御装置ECU_4が、ゲートウェイ装置100に起動要求メッセージを送信する。
【0111】
本実施形態の車載ネットワークシステムにおける第4電子制御装置ECU_4は、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUである。トランシーバ230Bは、起動要求メッセージに、いずれのシステムを起動するのかを示すグループIDを示す情報を含めて送信する機能を備えていない。したがって、
図13に示すように、第4電子制御装置ECU_4から送信される起動要求メッセージには、グループIDを示すフレームが含まれていない。
【0112】
ゲートウェイ装置100は、この起動要求メッセージを受信する。この起動要求メッセージには、グループIDを示すフレームが含まれていない。そのため、グループIDを取得することができない(S100)。そのため、ゲートウェイ装置100は、第1通信バスBUS_1によって構成されたネットワークと、第2通信バスBUS_2によって構成されたネットワークとの双方を、起動要求メッセージの送信先にする(S110)。
【0113】
そして、ゲートウェイ装置100は、
図13に矢印で示すように、第1通信バスBUS_1によるネットワークと、第2通信バスBUS_2によるネットワークとの双方に起動要求メッセージを送信する(S120)。
【0114】
上述したように、トランシーバ230Aは、起動要求メッセージにグループIDを示すフレームが含まれていない場合には、起動要求メッセージを受け付ける。トランシーバ230Bは、グループIDを含むフレームが含まれているか否かに因らずに、起動要求メッセージを受け付ける。
【0115】
そのため、
図13に示すように、本実施形態における事例2の場合には、
図8に示した比較例2における事例2の場合と同様に、全ての電子制御装置ECUが起動する。
図4に示すように、第1比較例における事例2の場合には、第1システムを稼働させるために必要なアプリケーションAPLが配置されていない第2電子制御装置ECU_2及び第3電子制御装置ECU_3をスリープ状態に維持することができた。これに対して比較例2の事例2の場合には、
図8に二点鎖線で囲んで示したように、第2電子制御装置ECU_2及び第3電子制御装置ECU_3も起動してアクティブ状態に移行してしまう。本実施形態の事例2の場合にも、
図13に二点鎖線で囲んで示したように、第2電子制御装置ECU_2及び第3電子制御装置ECU_3が起動してアクティブ状態に移行してしまう。
【0116】
<本実施形態の車載ネットワークシステムにおける事例3>
上述したように、事例3は、第3システムを稼働させるために、第2電子制御装置ECU_2が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0117】
図14に示すように、事例3の場合、第2電子制御装置ECU_2が、ゲートウェイ装置100に起動要求メッセージを送信する。この起動要求メッセージには、グループIDとして「4」を示すフレームが含まれている。
【0118】
ゲートウェイ装置100は、この起動要求メッセージを受信してグループIDを取得する(S100)。そして、ゲートウェイ装置100は、受信した起動要求メッセージに含まれるフレームと、第1データベース121と、第2データベース122とを参照して、起動要求メッセージの送信先を決定する(S110)。
【0119】
図2に示すように、「4」のグループIDに対応付けられているアプリケーションAPLは、第1アプリケーションAPL_1と第2アプリケーションAPL_2である。第1アプリケーションAPL_1を実行する第1電子制御装置ECU_1は、第1通信バスBUS_1によるネットワークに属している。第2アプリケーションAPL_2を実行する第2電子制御装置ECU_2も第1通信バスBUS_1によるネットワークに属している。すなわち、この場合には、第1通信バスBUS_1によるネットワークが、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークである。そのため、処理装置110は、第1通信バスBUS_1によるネットワークを、起動要求メッセージの送信先にする。
【0120】
そして、ゲートウェイ装置100は、
図14に矢印で示すように第1通信バスBUS_1によるネットワークのみに起動要求メッセージを送信する(S120)。
図14に示すように、第1電子制御装置ECU_1には、グループIDとして「4」が割り当てられている。そのため、起動要求メッセージを受信した第1電子制御装置ECU_1のトランシーバ230Aは、起動要求メッセージを受け付ける。第1電子制御装置ECU_1は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0121】
図14に破線で示すように、第2通信バスBUS_2によって構成されたネットワークには、起動要求メッセージが送信されない。そのため、第3電子制御装置ECU_3、第4電子制御装置ECU_4及び第5電子制御装置ECU_5は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0122】
第2比較例の事例3の場合には、
図9に二点鎖線で囲んで示したように、第4電子制御装置ECU_4及び第5電子制御装置ECU_5が起動してアクティブ状態に移行してしまう。これに対して本実施形態の事例3の場合には、車載ネットワークシステムは、起動する必要のない第3電子制御装置ECU_3、第4電子制御装置ECU_4及び第5電子制御装置ECU_5を、起動せずにスリープ状態に維持することができる。
【0123】
<本実施形態の車載ネットワークシステムにおける事例4>
上述したように、事例4は、第2システムを稼働させるために、第3電子制御装置ECU_3が起動要求メッセージを送信した場合の各電子制御装置ECUの挙動を説明する事例である。
【0124】
図15に示すように、事例4の場合、第3電子制御装置ECU_3が、ゲートウェイ装置100に起動要求メッセージを送信する。この起動要求メッセージには、グループIDとして「3」を示すフレームが含まれている。
【0125】
ゲートウェイ装置100は、この起動要求メッセージを受信してグループIDを取得する(S100)。そして、ゲートウェイ装置100は、受信した起動要求メッセージに含まれるフレームと、第1データベース121と、第2データベース122とを参照して、起動要求メッセージの送信先を決定する(S110)。
【0126】
図2に示すように、「3」のグループIDに対応付けられているアプリケーションAPLは、第3アプリケーションAPL_3と第6アプリケーションAPL_6である。第3アプリケーションAPL_3を実行する第3電子制御装置ECU_3は、第2通信バスBUS_2によるネットワークに属している。第6アプリケーションAPL_6を実行する第5電子制御装置ECU_5も第2通信バスBUS_2によるネットワークに属している。すなわち、この場合には、第2通信バスBUS_2によるネットワークが、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークである。そのため、処理装置110は、第2通信バスBUS_2によるネットワークを、起動要求メッセージの送信先にする。
【0127】
そして、ゲートウェイ装置100は、
図15に矢印で示すように第2通信バスBUS_2によるネットワークのみに起動要求メッセージを送信する(S120)。
トランシーバ230Bが、起動要求メッセージを受け付けるため、
図10に示すように、起動要求メッセージを受信した第4電子制御装置ECU_4及び第5電子制御装置ECU_5は、起動してアクティブ状態に移行する。
【0128】
図15に破線で示すように、第1通信バスBUS_1によって構成されたネットワークには、起動要求メッセージが送信されない。そのため、第1電子制御装置ECU_1及び第2電子制御装置ECU_2は、起動せずにスリープ状態を維持する。
【0129】
図6に示すように、第1比較例における事例4の場合には、第2システムの機能を実現するために実行するアプリケーションAPLが配置されていない電子制御装置ECUをスリープ状態に維持することができた。すなわち、比較例1においては、第1電子制御装置ECU_1と第2電子制御装置ECU_2と第4電子制御装置ECU_4とをスリープ状態に維持することができた。これに対して、第2比較例の事例4の場合には、
図10に二点鎖線で囲んで示したように、第4電子制御装置ECU_4が起動してアクティブ状態に移行してしまう。本実施形態の事例4の場合にも、
図15に二点鎖線で囲んで示したように、第4電子制御装置ECU_4が起動してアクティブ状態に移行してしまう。
【0130】
<本実施形態の効果>
(1)本実施形態の車載ネットワークシステムは、CANのプロトコルに準拠した通信を行う車載ネットワークシステムである。CANのプロトコルに準拠している場合、パーシャルネットワークに対応した電子制御装置ECUは、受信した起動要求メッセージが当該電子制御装置ECUの起動を要求するフレームを含んでいない場合には、起動要求メッセージを無視する。すなわち、当該電子制御装置ECUは、スリープ状態を維持する。一方で、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUは、起動要求メッセージを無視する機能を備えていない。そのため、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUは、受信した起動要求メッセージが当該電子制御装置ECUの起動を要求するフレームを含んでいるか否かに拘わらずスリープ状態から起動してアクティブ状態に移行してしまう。
【0131】
これに対して本実施形態の車載ネットワークシステムでは、ゲートウェイ装置100の処理装置110が、起動要求メッセージに含まれるフレームを参照して、起動要求メッセージの送信先を決定する。そして、ゲートウェイ装置100は、起動させる電子制御装置ECUが配置されていないネットワークには起動要求メッセージを送信せずに、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークに起動要求メッセージを送信する。これにより、本実施形態の車載ネットワークシステムは、起動させる電子制御装置ECUが配置されていないネットワーク上にある、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUを起動させてしまうことを抑制できる。例えば、
図14を参照して説明した事例3のように、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUを起動させてしまうことを抑制できる。
【0132】
(2)上記実施形態の車載ネットワークシステムは、何れかのネットワークに電子制御装置ECUが追加されたとしても、第2データベース122を更新することでネットワークの構成の変更に対応できる。
【0133】
(3)上記実施形態の車載ネットワークシステムは、システムが追加されて、電子制御装置ECUが実行するアプリケーションAPLが追加されたとしても、第1データベース121を更新することによってアプリケーションAPLの追加に対応できる。
【0134】
(4)各電子制御装置ECUは、電子制御装置ECUがアクティブ状態である場合にカウンタをカウントアップさせ、電子制御装置ECUが起動要求メッセージを受け付けたときに、カウンタをリセットするタイマ220を備えている。電子制御装置ECUは、タイマ220でカウントしているカウンタが既定値に達したときに、スリープ状態に移行する。
【0135】
上記のようなタイマ220を備えた電子制御装置ECUによって構成された車載ネットワークシステムにおいては、電子制御装置ECUが起動要求メッセージを受け付けるとカウンタがリセットされる。パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUは、起動要求メッセージを無視する構成を備えていない。そのため、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUは、一旦起動してアクティブ状態に移行すると、起動要求メッセージを受信する度にカウンタがリセットされてスリープ状態に移行しにくい。
【0136】
本実施形態の車載ネットワークシステムでは、起動させる電子制御装置ECUが配置されていないネットワークには、起動要求メッセージが送信されない。そのため、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUのタイマ220が他の電子制御装置ECUを起動するための起動要求メッセージによってリセットされてしまうことを抑制できる。そのため、本実施形態の車載ネットワークシステムは、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUがスリープ状態に移行する機会を確保して消費電力を低減できる。
【0137】
(5)ゲートウェイ装置100は、複数の電子制御装置ECUが複数の通信バスBUSを介して通信バスBUS毎にネットワークを構成しており、CANのプロトコルに準拠した通信を行う車載ネットワークシステムに適用されている。ゲートウェイ装置100は、複数のネットワークが接続されて複数の電子制御装置ECU同士の通信を中継する。ゲートウェイ装置100は、処理装置110を備えている。ゲートウェイ装置100が、起動させる電子制御装置ECUを特定するためのフレームを含む起動要求メッセージを受信したときに、処理装置110は、起動要求メッセージに含まれるフレームを参照して起動要求メッセージの送信先を決定する。処理装置110は、起動要求メッセージを、起動させる電子制御装置ECUが配置されていないネットワークには送信せずに、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークに送信するように、起動要求メッセージの送信先を決定する。
【0138】
そのため、ゲートウェイ装置100を適用すれば、上記の実施形態の車載ネットワークシステムと同様に、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUを起動させてしまうことを抑制できるようになる。すなわち、ゲートウェイ装置100は、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUの起動を抑制し、車載ネットワークシステムの消費電力を低減できる。
【0139】
(6)本実施形態の車載ネットワークシステムにおける通信方法は、以下の第1ステップ~第3ステップを含む。
第1ステップは、
図11のフローチャートにおけるステップS100に相当する。第1ステップは、ゲートウェイ装置100が、電子制御装置ECUから起動させる電子制御装置ECUを特定するためのフレームを含む起動要求メッセージを受信するステップである。
【0140】
第2ステップは、
図11のフローチャートにおけるステップS110に相当する。第2ステップは、ゲートウェイ装置100が、受信した起動要求メッセージに含まれるフレームを参照して、起動要求メッセージの送信先を決定するステップである。第2ステップでは、ゲートウェイ装置100は、起動要求メッセージを、起動させる電子制御装置ECUが配置されていないネットワークには送信せずに、起動させる電子制御装置ECUが配置されているネットワークに送信するように、送信先を決定する。
【0141】
第3ステップは、ゲートウェイ装置100が、第2ステップにおいて決定した送信先の前記ネットワークにのみ起動要求メッセージを送信するステップである。
この通信方法によれば、パーシャルネットワークに対応していない電子制御装置ECUを起動させてしまうことを抑制できる。
【0142】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0143】
・第1データベース121及び第2データベース122は、上記の実施形態で例示したものには限定されない。例えば、ゲートウェイ装置100の記憶装置120に、以下のような第1データベース121と第2データベース122とが記憶されている構成を採用してもよい。
【0144】
変更例における第1データベース121は、同時に稼働させる複数の電子制御装置ECUの組合せである複数のグループと各グループに属する電子制御装置ECUとの対応関係を示すデータベースである。上記の実施形態の車載ネットワークシステムの構成に適用する変更例を例示すると、第1データベース121には、
図16における破線で囲んだ部分に示されている情報が格納されている。
【0145】
変更例における第2データベース122は、複数のネットワークと各ネットワークに属する電子制御装置ECUとの対応関係を示すデータベースである。上記の実施形態の車載ネットワークシステムの構成に適用する変更例を例示すると、第2データベース122には、
図16における実線で囲んだ部分に示されている情報が格納されている。
【0146】
この変更例の車載ネットワークシステムでは、処理装置110が、起動要求メッセージに含まれるフレームと、この第1データベース121と、この第2データベース122と、を参照して、前記起動要求メッセージの送信先を決定する。
【0147】
この変更例の車載ネットワークシステムによっても、
図12~
図15を参照して説明した事例と同様に各電子制御装置ECUが起動する。そのため、この変更例の車載ネットワークシステムによっても、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0148】
・各電子制御装置ECUがタイマ220を備えており、各電子制御装置ECUが、タイマ220でカウントしているカウンタが既定値に達したときに、スリープ状態に移行する実施形態を例示した。これに対して、各電子制御装置ECUがスリープ状態に移行する条件はこうした条件に限定されない。そのため、各電子制御装置ECUは、タイマ220を備えていなくてもよい。
【0149】
・処理装置110は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成し得る。処理装置110は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0150】
100…ゲートウェイ装置
110…処理装置
120…記憶装置
121…第1データベース
122…第2データベース
130…トランシーバ
220…タイマ
230…トランシーバ
BUS_1…第1通信バス
BUS_2…第2通信バス
ECU_1…第1電子制御装置
ECU_2…第2電子制御装置
ECU_3…第3電子制御装置
ECU_4…第4電子制御装置
ECU_5…第5電子制御装置
APL_1…第1アプリケーション
APL_2…第2アプリケーション
APL_3…第3アプリケーション
APL_4…第4アプリケーション
APL_5…第5アプリケーション
APL_6…第6アプリケーション