(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012052
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】静電モータ、および静電モータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02N 1/00 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
H02N1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114588
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁野 新一
(72)【発明者】
【氏名】倉田 和慶
(57)【要約】
【課題】回転子電極50A、50Bの絶縁耐圧を向上する。
【解決手段】静電モータ2では、静電気力によって複数の回転子電極50A、50Bが複数の固定子電極60A、60Bに対して変位が可能になるように構成されている。回転子電極50A、50Bは、金属材料からなる薄膜状に形成されて外側に露出する表面を形成し、固定子電極60A、60Bとの間に静電気力を発生させるメッキ層59を備える。したがって、回転子電極50A、50Bがメッキ層59によって構成されている。このため、回転子電極50A、50Bの表面の表面粗さが小さくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子電極(50A、50B)と、
前記可動子電極に対して間隔を開けて配置されている固定子電極(60A、60B)と、を備え、
前記可動子電極および前記固定子電極の間の静電気力によって前記固定子電極に対して前記可動子電極が変位可能になるように構成されている静電モータであって、
前記可動子電極および前記固定子電極のうちいずれか一方の電極は、
金属材料からなる膜状に形成されて外側に露出する表面を形成し、前記可動子電極および前記固定子電極のうち前記一方の電極以外の他方の電極との間に前記静電気力を発生させるメッキ層(59、69)を備える静電モータ。
【請求項2】
前記一方の電極は、基材(58、68)を備え、
前記メッキ層は、前記基材の周囲を覆うように形成されている請求項1に記載の静電モータ。
【請求項3】
前記一方の電極は、中空部(58X、68X)を形成し、
前記メッキ層は、前記中空部を覆う殻状に形成されている請求項1に記載の静電モータ。
【請求項4】
前記メッキ層を構成する前記金属材料は、クロムである請求項1ないし3のいずれか1つに記載の静電モータ。
【請求項5】
前記基材は、軽合金によって形成されている請求項2に記載の静電モータ。
【請求項6】
前記基材は、樹脂材料によって形成されている請求項2に記載の静電モータ。
【請求項7】
前記静電気力によって前記可動子電極が前記固定子電極に対して軸線(B)を中心とする回転方向(Ka)に変位が可能になるように構成されており、
前記軸線が延びる方向を軸線方向(Za)としたとき、
前記一方の電極は、前記軸線を中心とする径方向(Zb)に延びるように形成されて、かつ前記軸線方向に並べられている複数の歯部(61)と、
前記複数の歯部に対して前記径方向の内側に配置されて前記複数の歯部に接続されている支持部(62)と、を備え、
前記複数の歯部、および前記支持部は、一体化されている一体化構成物を構成する請求項1に記載の静電モータ。
【請求項8】
前記複数の歯部のそれぞれの前記径方向の外側端部には、前記径方向の外側に凸となる半球状に形成されている先端部(161)が設けられている請求項7に記載の静電モータ。
【請求項9】
前記歯部を第1歯部とし、前記支持部を第1支持部としたとき、
前記他方の電極は、
前記第1支持部に対して前記径方向の外側に配置され、かつ前記径方向に延びるように形成されて、さらに前記軸線方向に並べられている複数の第2歯部(71)と、
前記複数の第2歯部に対して前記径方向の外側に配置されて前記複数の第2歯部に接続されている第2支持部(72)と、を備え、
前記複数の第2歯部、および前記第2支持部は、一体化されている一体化構成物を構成する請求項8に記載の静電モータ。
【請求項10】
前記先端部を第1先端部としたとき、前記複数の第2歯部のそれぞれの前記径方向の内側端部には、前記径方向の内側に凸となる半球状に形成されている第2先端部(171)が設けられている請求項9に記載の静電モータ。
【請求項11】
可動子電極(50A、50B)と、
前記可動子電極に対して間隔を開けて配置されている固定子電極(60A、60B)と、を備え、
前記可動子電極および前記固定子電極の間の静電気力によって前記可動子電極が前記固定子電極に対して変位が可能になるように構成されている静電モータの製造方法を含み、
前記可動子電極および前記固定子電極のうちいずれか一方を一方の電極とし、前記可動子電極および前記固定子電極のうち前記一方の電極以外の電極を他方の電極としたとき、
基材(62、72)を準備することと、
金属材料によって前記基材の周囲を覆う膜状に形成されて外側に露出する表面を形成して前記他方の電極と間に前記静電気力を発生させるメッキ層(59、69)をメッキにより設けることにより、前記一方の電極を形成することと、
を含む静電モータの製造方法。
【請求項12】
可動子電極(50A、50B)と、
前記可動子電極に対して間隔を開けて配置されている固定子電極(60A、60B)と、を備え、
前記可動子電極および前記固定子電極の間の静電気力によって前記可動子電極が前記固定子電極に対して変位が可能になるように構成されている静電モータの製造方法を含み、
前記可動子電極および前記固定子電極のうちいずれか一方を一方の電極とし、前記可動子電極および前記固定子電極のうち前記一方の電極以外の電極を他方の電極としたとき、
基材(62、72)を準備することと、
金属材料によって前記基材の周囲を覆う膜状に形成されて外側に露出する表面を形成して前記他方の電極と間に前記静電気力を発生させるメッキ層(59、69)をメッキにより設けることと、
前記メッキ層の内側から前記基材を除去して前記メッキ層を殻状に形成することにより、前記一方の電極を形成することと、
を含む静電モータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電モータ、および静電モータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可動子電極と固定子電極とを備え、可動子電極および固定子電極の間の静電気力によって固定子電極に対して回転子電極が回転可能になるように構成されている静電モータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記静電モータについて、可動子電極および固定子電極の絶縁耐圧を向上することを検討した。
【0005】
本開示は上記点に鑑みて、絶縁耐圧を向上するようにした静電モータ、および静電モータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの観点によれば、可動子電極(50A、50B)と、
可動子電極に対して間隔を開けて配置されている固定子電極(60A、60B)と、を備え、
可動子電極および固定子電極の間の静電気力によって固定子電極に対して可動子電極が変位可能になるように構成されている静電モータであって、
可動子電極および固定子電極のうちいずれか一方の電極は、
金属材料からなる膜状に形成されて外側に露出する表面を形成し、可動子電極および固定子電極のうち一方の電極以外の他方の電極との間に静電気力を発生させるメッキ層(59、69)を備える。
【0007】
したがって、一方の電極の表面がメッキ層によって構成されることになる。メッキ層は、機械加工により形成された金属部品に比べて、表面粗さが小さくなる。このため、機械加工により形成された金属部品の表面粗さに比べて、一方の電極の表面粗さの方が小さくなるので、一方の電極の絶縁耐圧を向上することができる。
したがって、絶縁耐圧を向上するようにした静電モータを提供することができる。
【0008】
本開示の2つの観点によれば、静電モータの製造方法において、
可動子電極(50A、50B)と、
可動子電極に対して間隔を開けて配置されている固定子電極(60A、60B)と、を備え、
可動子電極および固定子電極の間の静電気力によって可動子電極が固定子電極に対して変位が可能になるように構成されている静電モータの製造方法を含み、
可動子電極および固定子電極のうちいずれか一方を一方の電極とし、可動子電極および固定子電極のうち一方の電極以外の電極を他方の電極としたとき、
基材(62、72)を準備することと、
金属材料によって基材の周囲を覆う膜状に形成されて外側に露出する表面を形成して他方の電極と間に静電気力を発生させるメッキ層(59、69)をメッキにより設けることにより、一方の電極を形成することと、を含む。
【0009】
したがって、絶縁耐圧を向上するようにした静電モータの製造方法を提供することができる。
【0010】
本開示の3つの観点によれば、静電モータの製造方法において、
可動子電極(50A、50B)と、
可動子電極に対して間隔を開けて配置されている固定子電極(60A、60B)と、を備え、
可動子電極および固定子電極の間の静電気力によって可動子電極が固定子電極に対して変位が可能になるように構成されている静電モータの製造方法を含み、
可動子電極および固定子電極のうちいずれか一方を一方の電極とし、可動子電極および固定子電極のうち一方の電極以外の電極を他方の電極としたとき、
基材(62、72)を準備することと、
金属材料によって基材の周囲を覆う膜状に形成されて外側に露出する表面を形成して他方の電極と間に静電気力を発生させるメッキ層(59、69)をメッキにより設けることと、
メッキ層の内側から基材を除去してメッキ層を殻状に形成することにより、一方の電極を形成することと、
を含む静電モータ。
【0011】
したがって、絶縁耐圧を向上するようにした静電モータの製造方法を提供することができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第1実施形態における静電モータの全体を示す斜視図である。
【
図2】
図1の第1実施形態における静電モータの内部構成を示す模式化した斜視図であり、静電モータを構成する回転軸、軸受け、回転子電極および固定子電極の説明を補助するための図である。
【
図3】
図1の第1実施形態における静電モータのうち軸線方向一方側の軸受けを軸線方向一方側から視た図であり、回転子電極および固定子電極の図示を省略した状態で、軸受けの構造の説明を補助するための図である。
【
図4】
図1の第1実施形態における静電モータのうち軸線方向他方側の軸受けを軸線方向他方側から視た図であり、回転子電極および固定子電極の図示を省略した状態で、軸受けの構造の説明を補助するための図である。
【
図5】
図1の第1実施形態における静電モータのうち1対の回転子電極および固定子電極を回転方向から視た正面図である。
【
図8】
図7中の回転方向に対して直交する仮想面で回転子電極および固定子電極を切断した断面図であり、回転子電極および固定子電極のそれぞれの内部構造の説明を補助するための図である。
【
図9】
図1の第1実施形態における静電モータの回転子電極および固定子電極の製造工程を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の第2実施形態における静電モータの断面図であり、回転子電極および固定子電極のそれぞれの内部構造の説明を補助するための図であり、
図8に相当する図である。
【
図11】
図10の第2実施形態における静電モータの回転子電極および固定子電極の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
図1、
図2に本開示の静電モータシステム1の本第1実施形態を示す。
図1は、本実施形態の静電モータシステム1における静電モータ2の全体を示す斜視図であり、
図1は、静電モータ2の外観を示している。
図2は、本実施形態の静電モータ2の内部構造を模式化した模式図である。
【0016】
本実施形態の静電モータシステム1は、航空機、ドローン、宇宙船等の各種のモビリティに適用される。
【0017】
具体的には、
図1および
図2に示すように、静電モータ2は、回転軸10、軸受け20A、20B、蓋部40、ハウジング30、複数の回転子電極50A、複数の回転子電極50B、複数の固定子電極60A、および複数の固定子電極60Bを備える。
【0018】
回転軸10は、軸線Bを中心として軸線方向Zaに延びる細長い円柱状に形成されている。回転軸10は、軸線Bを中心とする回転方向Kaに回転可能に構成されている。軸線方向Zaは、軸線Bが延びる方向である。
【0019】
回転軸10は、ハウジング30内に配置されている。回転軸10は、蓋部40を軸線方向Zaの一方側に貫通している。ハウジング30は、軸線Bを中心とする円筒状に形成されている。
【0020】
ハウジング30は、軸線方向Zaの一方側が開口する開口部を有している。蓋部40は、ハウジング30の開口部に嵌め込まれている。ハウジング30のうち軸線方向Zaの他方側には、底部31が設けられている。
【0021】
ハウジング30は、回転軸10とともに、軸受け20A、20B、複数の回転子電極50A、複数の回転子電極50B、複数の固定子電極60A、および複数の固定子電極60Bを収納している。
【0022】
軸受け20Aは、
図2および
図3に示すように、回転軸10のうち軸線方向Za一方側を軸線Bを中心として回転自在に支持する玉軸受けである。具体的には、軸受け20Aは、内側リング21a、外側リング22a、および複数の玉23aを備える。
【0023】
内側リング21aは、回転軸10のうち軸線方向Za一方側に配置されている。内側リング21aは、軸線Bを中心とするリング状に形成されている。内側リング21aは、回転軸10に対して径方向Zb外側に配置されている。径方向Zbは、軸線Bを中心とする径方向である。
【0024】
内側リング21aは、回転軸10の外周面に固定されている。外側リング22aは、軸線Bを中心とするリング状に形成されている。外側リング22aは、内側リング21aに対して径方向Zb外側に配置されている。外側リング22aは、蓋部40に対して支持されている。
【0025】
複数の玉23aは、内側リング21aおよび外側リング22aの間に配置されている。複数の玉23aは、内側リング21aおよび外側リング22aに接触した状態で、軸線Bを中心とする円周方向に並べられている。本実施形態の内側リング21a、外側リング22a、および複数の玉23aは、それぞれ、導電性金属材料によって構成されている。
【0026】
本実施形態では、複数の玉23aは、内側リング21aおよび外側リング22aの間を電気的に接続する。このため、軸受け20Aは、後述するように、複数の回転子電極50Aと直流電源300の正極電極とを電気的に接続する機能を果たす。
【0027】
軸受け20Bは、
図2および
図4に示すように、回転軸10のうち軸線方向Za他方側を回転自在に支持する玉軸受けである。具体的には、内側リング21b、外側リング22b、および複数の玉23bを備える。
【0028】
内側リング21bは、回転軸10のうち軸線方向Za他方側に配置されている。内側リング21bは、軸線Bを中心とするリング状に形成されている。内側リング21bは、回転軸10に対して径方向Zb外側に配置されている。内側リング21bは、回転軸10の外周面に固定されている。
【0029】
外側リング22bは、軸線Bを中心とするリング状に形成されている。外側リング22bは、内側リング21bに対して径方向Zb外側に配置されている。外側リング22bは、底部31に対して支持されている。
【0030】
複数の玉23bは、内側リング21bおよび外側リング22bの間に配置されている。複数の玉23bは、内側リング21bおよび外側リング22bに接触した状態で、軸線Bを中心とする円周方向に並べられている。本実施形態の内側リング21b、外側リング22b、および複数の玉23bは、それぞれ、導電性金属材料によって構成されている。
【0031】
本実施形態では、複数の玉23bは、内側リング21bおよび外側リング22bの間を電気的に接続する。このため、軸受け20Bは、後述するように、複数の回転子電極50Bと直流電源300の負極電極とを電気的に接続する機能を果たす。
【0032】
複数の回転子電極50A、および複数の回転子電極50Bは、それぞれ1つずつ、軸線Bを中心とする周方向に交互に並べられている。複数の回転子電極50A、および複数の回転子電極50Bは、それぞれ、回転軸10に対して軸線Bを中心とする径方向Zb外側に配置されている。
【0033】
以下、説明の便宜上、複数の回転子電極50A、および複数の回転子電極50Bを纏めて複数の回転子電極50A、50Bともいう。
【0034】
複数の回転子電極50A、50Bは、それぞれ、櫛歯状に形成されている可動子電極である。具体的には、複数の回転子電極50A、50Bは、それぞれ、複数の歯部61および支持部62を備える。
【0035】
複数の歯部61は、それぞれ、軸線Bを中心とする径方向Zbに延びるように形成されている第1歯部である。複数の歯部61は、それぞれ、軸線方向Zaに間隔を開けて並べられている。複数の歯部61は、それぞれ、細長い円柱状に形成されている。複数の歯部61のそれぞれの径方向Zb外側の先端部161は、径方向Zb外側に凸となる半球状に形成されている。
【0036】
支持部62は、回転軸10に対して軸線Bを中心とする径方向Zb外側に配置されている第1支持部である。支持部62は、複数の歯部61に対して軸線Bを中心とする径方向Zb内側に配置されている。支持部62は、軸線方向Zaに延びるように形成されている。支持部62は、複数の歯部61のうち軸線Bを中心とする径方向Zb内側に接続されている。
【0037】
具体的には、支持部62は、中間支持部62a、一方側支持部62b、および他側支持部62cを備える。中間支持部62aは、複数の歯部61のうち軸線方向Za中央側の複数の歯部61を支持する。
【0038】
一方側支持部62bは、中間支持部62aに対して軸線方向Za一方側に配置されている。一方側支持部62bは、中間支持部62aに対して軸線Bを中心とする径方向Zb外側に配置されている。一方側支持部62bは、中間支持部62aのうち軸線方向Za一方側に接続されている。一方側支持部62bは、複数の歯部61のうち軸線方向Za一方側の3つの歯部61を支持する。
【0039】
他側支持部62cは、中間支持部62aに対して軸線方向Za他方側に配置されている。他側支持部62cは、中間支持部62aに対して軸線Bを中心とする径方向Zb外側に配置されている。他側支持部62cは、中間支持部62aのうち軸線方向Za他方側に接続されている。他側支持部62cは、複数の歯部61のうち軸線方向Za他方側の3つの歯部61を支持する。
【0040】
支持部62のうち軸線Bを中心とする径方向Zb内側には、取り付け部63、64が設けられている。取り付け部63、64は、軸線方向Zaに間隔を開けて並べられている。
【0041】
取り付け部63は、中間支持部62aのうち軸線方向Za一方側に接続されている。取り付け部64は、中間支持部62aのうち軸線方向Za他方側に接続されている。取り付け部63、64は、支持部62から径方向Zb内側に突起するように形成されている。
【0042】
取り付け部63、64には、軸線Bを中心とする円周方向に貫通する貫通孔65、66が設けられている。取り付け部63、64は、回転子電極50A、50Bを回転軸10に取り付けるために用いられる。
【0043】
本実施形態では、複数の歯部61、支持部62、および取り付け部63、64は、一体化された一体化構成物を構成する。すなわち、複数の回転子電極50A、50Bは、それぞれ、一体化された1つの部品を構成する。
【0044】
複数の回転子電極50Aは、それぞれ、軸受け20Aの内側リング21aに接続されている。このことにより、外側リング22aは、複数の玉23aおよび内側リング21aを通して複数の回転子電極50Aに電気的に接続されることになる。
【0045】
複数の回転子電極50Bは、それぞれ、軸受け20Bの内側リング21bに接続されている。このことにより、外側リング22bは、複数の玉23bおよび内側リング21bを通して複数の回転子電極50Bに電気的に接続されることになる。
【0046】
以下、説明の便宜上、複数の固定子電極60A、および複数の固定子電極60Bを纏めて複数の固定子電極60A、60Bという。複数の固定子電極60A、60Bは、回転子電極50A、50Bに対して間隔を開けて軸線Bを中心とする径方向Zb外側に配置されている。複数の固定子電極60A、60Bは、回転子電極50A、50Bのそれぞれの支持部62に対して軸線Bを中心とする径方向Zb外側に配置されている。
【0047】
複数の固定子電極60A、60Bは、それぞれ、回転軸10に対して軸線Bを中心として径方向Zb外側に配置されている。複数の固定子電極60A、60Bは、1つずつ、交互に軸線Bを中心とする周方向に並べられている。
【0048】
複数の固定子電極60A、60Bは、それぞれ、複数の歯部71および支持部72を備える。複数の歯部71は、それぞれ、軸線Bを中心とする径方向Zbに延びるように形成されている第2歯部である。
【0049】
複数の歯部71は、それぞれ、軸線方向Zaに間隔を開けて並べられている。複数の歯部71は、それぞれ、細長い円柱状に形成されている。
図7に示すように、複数の歯部71のそれぞれの径方向Zb内側端部には、第2先端部としての先端部171が設けられている。先端部171は、径方向Zb内側に凸となる半球状に形成されている。
【0050】
支持部72は、回転軸10に対して軸線Bを中心とする径方向Zb外側に配置されている第2支持部である。支持部72は、複数の回転子電極50A、50Bのそれぞれの支持部62に対して径方向Zb外側に配置されている。
【0051】
支持部72は、複数の歯部71に対して軸線Bを中心とする径方向Zb外側に配置されている。支持部72は、軸線方向Zaに延びるように形成されている。支持部72は、複数の歯部71のうち軸線Bを中心とする径方向Zb外側に接続されている。
【0052】
支持部72のうち軸線Bを中心とする径方向Zb外側には、取り付け部73、74が設けられている。取り付け部73、74は、軸線方向Zaに間隔を開けて並べられている。
【0053】
取り付け部73は、支持部72のうち軸線方向Za一方側に接続されている。取り付け部74は、支持部72のうち軸線方向Za他方側に接続されている。取り付け部73、74は、支持部72から径方向Zb外側に突起するように形成されている。
【0054】
取り付け部73、74には、軸線Bを中心とする円周方向に貫通する貫通孔75、76が設けられている。
【0055】
本実施形態では、複数の歯部71、支持部72、および取り付け部73、64は、一体化された一体化構成物を構成する。すなわち、複数の固定子電極60A、60Bは、それぞれ、一体化された部品を構成する。さらに、複数の固定子電極60A、60Bは、ハウジング30によって支持されている。
【0056】
蓋部40は、複数の回転子電極50A、50B、複数の固定子電極60A、60Bに対して軸線方向Za一方側に配置されている。ハウジング30の底部31は、複数の回転子電極50A、50B、複数の固定子電極60A、60Bに対して軸線方向Za他方側に配置されている。
【0057】
次に、本実施形態の静電モータシステム1の電気的構成について
図2を参照して説明する。
図2では、2つの回転子電極50A、2つの固定子電極60A、2つの回転子電極50B、および2つの固定子電極60Bを備える静電モータ2の具体例を示している。
【0058】
本実施形態の静電モータシステム1は、静電モータ2を駆動するための駆動回路200、および制御回路250を備える。駆動回路200は、トランジスタ210a、210b、210c、210dを備える。
【0059】
トランジスタ210a、210bは、正極母線200aおよび負極母線200bの間において、直列に接続されている。トランジスタ210c、210dは、正極母線200aおよび負極母線200bの間において、直列に接続されている。
【0060】
なお、トランジスタ210a、210b、210c、210dとしては、例えば、nチャネル型の電界効果型トランジスタが用いられる。
【0061】
正極母線200aは、直流電源300の正極電極に接続されている。負極母線200bは、直流電源300の負極電極に接続されている。直流電源300の正極電極は、軸受け20Aの外側リング22aに接続されている。
【0062】
複数の回転子電極50Aのそれぞれの支持部62は、軸受け20Aの内側リング21aに接続されている。これにより、複数の回転子電極50Aは、軸受け20Aを通して直流電源300の正極電極に接続されていることになる。
【0063】
直流電源300の負極電極は、軸受け20Bの外側リング22aに接続されている。複数の回転子電極50Bのそれぞれの支持部62は、軸受け20Bの内側リング21bに接続されている。これにより、複数の回転子電極50Bは、軸受け20Bを通して直流電源300の負極電極に接続されていることになる。
【0064】
ここで、以下説明の便宜上、トランジスタ210a、210bが共通に接続されている共通接続端子を共通接続端子220とし、トランジスタ210c、210dが共通に接続されている共通接続端子を共通接続端子221とする。共通接続端子220は、複数の固定子電極60Aのそれぞれに電気的に接続されている。共通接続端子221は、複数の固定子電極60Bのそれぞれに電気的に接続されている。
【0065】
制御回路250は、マイクロコンピュータ等から構成され、トランジスタ210a、210b、210c、210dをそれぞれオン、オフする。
【0066】
次に、本実施形態の静電モータシステム1の具体的な作動について説明する。
【0067】
まず、複数の固定子電極60Aの複数の歯部71が、それぞれ、複数の回転子電極50Aのうち対応する1つの回転子電極50Aの複数の歯部61に間隔を開けて噛み合った状態になっている。複数の固定子電極60Bの複数の歯部71が、それぞれ、複数の回転子電極50Bのうち対応する1つの回転子電極50Bの複数の歯部61に間隔を開けて噛み合った状態になっている。
【0068】
複数の回転子電極50Aは、上述の如く、軸受け20Aを通して直流電源300の正極電極に電気的に接続されている。複数の回転子電極50Bは、上述の如く、軸受け20Bを通して直流電源300の負極電極に電気的に接続されている。
【0069】
このとき、直流電源300の正極電極および負極電極の間の電圧によって、複数の回転子電極50Aのそれぞれの表面に正電荷が生じ、複数の回転子電極50Bのそれぞれの表面に負電荷が生じる。
【0070】
次に、制御回路250が駆動回路200のトランジスタ210a、210dをオンして、かつトランジスタ210b、210cをオフする。このため、直流電源300の正極電極からトランジスタ210a、共通接続端子220を通して複数の固定子電極60Aに電流が流れる。複数の固定子電極60Bから共通接続端子221、トランジスタ210dを通して直流電源300の負極電極に電流が流れる。
【0071】
このため、直流電源300の正極電極および負極電極の間の電圧によって、複数の固定子電極60Aのそれぞれの表面に正電荷が生じて、複数の固定子電極60Bのそれぞれの表面に負電荷が生じる。
【0072】
複数の固定子電極60Aと複数の回転子電極50Aとの間には、静電気による反力が生じる。複数の固定子電極60Bと複数の回転子電極50Bとの間には、静電気による反力が生じる。
【0073】
このため、複数の固定子電極60A、60Bに対して複数の回転子電極50A、50Bが軸線Bを中心とする回転力が生じる。したがって、複数の回転子電極50A、50Bは、回転軸10とともに、複数の固定子電極60A、60Bに対して回転方向Kaに回転力する。
【0074】
これに伴い、複数の回転子電極50Aが、それぞれ、複数の固定子電極60Bのうち対応する1つの固定子電極60Bに近づく。複数の回転子電極50Bが、それぞれ、複数の固定子電極60Aのうち対応する1つの固定子電極60Aに近づく。
【0075】
このとき、複数の回転子電極50Aと複数の固定子電極60Bと間には、静電気による引力が生じる。複数の回転子電極50Bと複数の固定子電極60Aとの間には、静電気による引力が生じる。
【0076】
したがって、複数の固定子電極60Aの複数の歯部71が、それぞれ、複数の回転子電極50Bのうち対応する1つの回転子電極50Bの複数の歯部61に間隔を開けて噛み合った状態になる。さらに、複数の固定子電極60Bの複数の歯部71が、それぞれ、複数の回転子電極50Aのうち対応する1つの回転子電極50Aの複数の歯部61に間隔を開けて噛み合った状態になる。
【0077】
次に、制御回路250が駆動回路200のトランジスタ210a、210dをオフして、かつトランジスタ210b、210cをオンする。このため、直流電源300の正極電極からトランジスタ210c、共通接続端子221を通して複数の固定子電極60Bに電流が流れる。複数の固定子電極60Aから共通接続端子220、トランジスタ210bを通して直流電源300の負極電極に電流が流れる。
【0078】
このため、複数の固定子電極60Aのそれぞれの表面に負電荷が生じて、複数の固定子電極60Bのそれぞれの表面に正電荷が生じる。複数の固定子電極60Aと複数の回転子電極50Bとの間には、静電気による反力が生じる。複数の固定子電極60Bと複数の回転子電極50Aとの間には、静電気による反力が生じる。
【0079】
このため、複数の固定子電極60A、60Bに対して複数の回転子電極50A、50Bが軸線Bを中心とする回転力が生じる。したがって、複数の回転子電極50A、50B、は、回転軸10とともに、複数の固定子電極60A、60Bに対して回転力する。
【0080】
これに伴い、複数の回転子電極50Aが、それぞれ、複数の固定子電極60Aのうち対応する1つの固定子電極60Aに近づく。複数の回転子電極50Bが、それぞれ、複数の固定子電極60Bのうち対応する1つの固定子電極60Bに近づく。
【0081】
複数の固定子電極60Aと複数の回転子電極50Aと間には、静電気による引力が生じる。複数の固定子電極60Bと複数の回転子電極50Bとの間には、静電気による引力が生じる。
【0082】
したがって、複数の固定子電極60Aの複数の歯部71が、それぞれ、複数の回転子電極50Aのうち対応する1つの回転子電極50Aの複数の歯部61に間隔を開けて噛み合った状態になる。さらに、複数の固定子電極60Bの複数の歯部71が、それぞれ、複数の回転子電極50Bのうち対応する1つの回転子電極50Bの複数の歯部61に間隔を開けて噛み合った状態になる。
【0083】
次に、制御回路250が駆動回路200のトランジスタ210a、210dをオンして、かつトランジスタ210b、210cをオフする。このため、直流電源300の正極電極からトランジスタ210a、共通接続端子220を通して複数の固定子電極60Aに電流が流れる。複数の固定子電極60Bから共通接続端子221、トランジスタ210dを通して直流電源300の負極電極に電流が流れる。
【0084】
このため、上述と同様に、複数の固定子電極60Aと複数の回転子電極50Aとの間には、静電気による反力が生じる。複数の固定子電極60Bと複数の回転子電極50Bとの間には、静電気による反力が生じる。
【0085】
このため、複数の固定子電極60A、60Bに対して複数の回転子電極50A、50Bが軸線Bを中心とする回転力が生じる。したがって、複数の回転子電極50A、50B、は、回転軸10とともに、複数の固定子電極60A、60Bに対して回転力する。
【0086】
以降、制御回路250がトランジスタ210a、210dをオンして、かつトランジスタ210b、210cをオフした状態と、トランジスタ210a、210dをオフして、かつトランジスタ210b、210cをオンした状態とを交互に繰り返す。
【0087】
このため、複数の固定子電極60A、60Bに対して複数の回転子電極50A、50Bが静電気力によって軸線Bを中心とする回転力が生じる。したがって、複数の回転子電極50A、50Bは、回転軸10とともに、複数の固定子電極60A、60Bに対して回転力する。
【0088】
次に、本実施形態の複数の固定子電極60A、60B、複数の回転子電極50A、50Bの構造について
図8を参照して説明する。
【0089】
複数の固定子電極60A、60Bは、
図8に示すように、それぞれ、基材68およびメッキ層69を備える。基材68は、櫛歯状に形成されている。基材68は、アルミニウム等を含む軽合金によって構成されている。或いは、基材68は、樹脂材料によって構成されている。
【0090】
メッキ層69は、基材68の表面の全体を覆う薄膜状に形成されている。メッキ層69は、外側に露出する表面を形成する。このため、メッキ層69の表面は、真空中に晒されることになる。
【0091】
本実施形態では、メッキ層69が真空中に配置された状態である場合において、高い絶縁耐圧を有する金属材料(例えば、クロム、或いはステンレス)によってメッキ層69が形成されている。
【0092】
複数の回転子電極50A、50Bは、固定子電極60A、60Bと同様に、基材58およびメッキ層59を備える。基材58は、櫛歯状に形成されている。基材58は、アルミニウム等を含む軽合金によって構成されている。或いは、基材58は、樹脂材料によって構成されている。メッキ層59は、基材58の表面の全体を覆う薄膜状に形成されている。
【0093】
メッキ層59は、外側に露出する表面を形成する。すなわち、メッキ層59の表面は、真空中に晒されることになる。本実施形態では、メッキ層59が真空中に配置された状態である場合において、高い絶縁耐圧を有する金属材料(例えば、クロム、或いはステンレス)によってメッキ層59が形成されている。
【0094】
次に、本実施形態の複数の回転子電極50A、50Bの製造方法について
図9を参照して説明する。
【0095】
まず、ステップS100の工程において、軽合金や樹脂材料を用いた射出成形により基材58を成形することにより、基材58を準備する。次のステップS110の工程において、電気メッキ等の手法によって、基材58の表面にメッキ層59を形成する。以上により、回転子電極50A、50Bの製造が完成する。
【0096】
次に、本実施形態の複数の固定子電極60A、60Bの製造方法について
図9を参照して説明する。
【0097】
まず、ステップS100の工程において、軽合金や樹脂材料を用いた射出成形により基材68を成形することにより、基材68を準備する。次のステップS110の工程において、電気メッキ等の手法によって、基材68の表面にメッキ層69を形成する。以上により、固定子電極60A、60Bの製造が完成する。
【0098】
以上説明した本実施形態によれば、静電モータ2は、複数の回転子電極50A、50Bと、複数の回転子電極50A、50Bに対して間隔を開けて配置されている複数の固定子電極60A、60Bと、を備える。
【0099】
複数の回転子電極50A、50Bおよび複数の固定子電極60A、60Bの間の静電気力によって、複数の回転子電極50A、50Bが複数の固定子電極60A、60Bに対して回転方向Kaに変位が可能になるように構成されている。
【0100】
回転子電極50A、50Bは、金属材料からなる薄膜状に形成されて外側に露出する表面を形成して固定子電極60A、60Bとの間に静電気力を発生させるメッキ層59を備える。
【0101】
したがって、回転子電極50A、50Bの表面がメッキ層59によって構成されることになる。メッキ層59は、機械加工により形成された金属部品に比べて、表面粗さが小さくなる。このため、回転子電極50A、50Bは、機械加工により形成される回転子電極に比べて、表面粗さが小さくなる。よって、回転子電極50A、50Bの絶縁耐圧を向上することができる。
【0102】
さらに、固定子電極60A、60Bは、金属材料からなる薄膜状に形成されて外側に露出する表面を形成して回転子電極50A、50Bとの間に静電気力を発生させるメッキ層69を備える。
【0103】
したがって、固定子電極60A、60Bの表面がメッキ層69によって構成されることになる。メッキ層69は、機械加工により形成された金属部品に比べて、表面粗さが小さくなる。このため、固定子電極60A、60Bは、機械加工により形成される固定子電極に比べて、表面粗さが小さくなる。よって、固定子電極60A、60Bの絶縁耐圧を向上することができる。
【0104】
本実施形態の静電モータ2の製造方法は、基材58を準備するステップS100の工程を含む。静電モータ2の製造方法は、金属材料によって基材58の周囲を覆う膜状に形成されて固定子電極60A、60Bと間に静電気力を発生させるメッキ層59を形成することにより回転子電極50A、50Bを形成するステップS110の工程を含む。
【0105】
これにより、絶縁耐圧を向上するようにした静電モータ2の製造方法を提供することができる。
【0106】
さらに、本実施形態の静電モータ2の製造方法は、基材68を準備するステップS100の工程を含む。静電モータ2の製造方法は、金属材料によって基材68の周囲を覆う膜状に形成されて回転子電極50A、50Bと間に静電気力を発生させるメッキ層69を形成することにより固定子電極60A、60Bを形成するステップS110の工程を含む。
【0107】
これにより、絶縁耐圧を向上するようにした静電モータ2に適した製造方法を提供することができる。
【0108】
このように構成される本実施形態では、次の(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)(h)(i)の作用効果が得られる。
【0109】
(a)複数の回転子電極50A、50Bは、それぞれ、基材58を備え、メッキ層59は、基材58の周囲を覆うように形成されている。したがって、基材58を用いることにより、複数の回転子電極50A、50Bの機械的強度を高めることができる
【0110】
(b)複数の固定子電極60A、60Bは、それぞれ、基材68を備え、メッキ層69は、基材68の周囲を覆うように形成されている。したがって、基材68を用いることにより、複数の固定子電極60A、60Bの機械的強度を高めることができる
【0111】
(c)メッキ層59、69を構成する金属材料は、クロムである。このため、メッキ層59、69が真空中に晒された状態で、複数の回転子電極50A、50B、複数の固定子電極60A、60Bの絶縁耐圧を向上することができる
【0112】
(d)基材58、68が軽合金によって形成されている場合には、複数の回転子電極50A、50B、複数の固定子電極60A、60Bの機械的強度を高めつつ、軽量化を図ることができる
【0113】
(e)基材58、68が樹脂材料によって形成されている場合には、複数の回転子電極50A、50B、複数の固定子電極60A、60Bの軽量化を図ることができる
【0114】
(f)複数の回転子電極50A、50Bは、静電気力によって複数の固定子電極60A、60Bに対して軸線Bを中心とする回転方向Kaに変位が可能になるように構成されている。複数の回転子電極50A、50Bは、軸線Bを中心とする径方向Zbに延びるように形成されて、かつ軸線方向Zaに並べられている複数の歯部61を備える。
【0115】
複数の回転子電極50A、50Bは、複数の歯部61に対して径方向Zbの内側に配置されて複数の歯部61に接続されている支持部62を備える。複数の歯部61、および支持部62は、一体化されている一体化構成物を構成する。これにより、複数の回転子電極50A、50Bを構成する部品点数を少なくすることができる。
【0116】
複数の回転子電極50A、50Bでは、支持部62の位置を決めることにより、歯部61の位置が自動的に決まる。このため、回転子電極50A、50Bおよび固定子電極60A、60Bの間のギャップを調整する際に、支持部62の位置を決めることにより、歯部61の位置調整が不用となる。
【0117】
(g)複数の回転子電極50A、50Bにおいて、複数の歯部61のそれぞれの径方向の外側端部には、径方向の外側に凸となる半球状に形成されている第1先端部としての先端部161が設けられている。このため、複数の歯部61の先端部において、電界集中による絶縁耐圧の低下を抑制することができる
【0118】
(h)複数の固定子電極60A、60Bは、それぞれ、支持部62に対して径方向Zb外側に配置され、かつ径方向Zbに延びるように形成されて、さらに軸線方向Zaに並べられている複数の歯部71を備える。
【0119】
複数の固定子電極60A、60Bは、それぞれ、複数の歯部71に対して径方向Zb外側に配置されて複数の歯部71に接続されている支持部72を備える。複数の歯部71、および支持部72は、一体化されている一体化構成物を構成する。これにより、複数の固定子電極60A、60Bを構成する部品点数を少なくすることができる。
【0120】
複数の固定子電極60A、60Bでは、支持部72の位置を決めることにより、歯部71の位置が自動的に決まる。このため、回転子電極50A、50Bおよび固定子電極60A、60Bの間のギャップを調整する際に、支持部72の位置を決めることにより、歯部71の位置調整が不用となる。
【0121】
(i)複数の固定子電極60A、60Bは、において、複数の歯部71のそれぞれの径方向Zb内側端部には、径方向Zb内側に凸となる半球状に形成されている先端部171が設けられている。このため、複数の歯部71の先端部において、電界集中による絶縁耐圧の低下を抑制することができる。
【0122】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、基材58およびメッキ層59によって複数の回転子電極50A、50Bを構成した例について説明した。
【0123】
しかし、これに代えて、基材58に代わる中空部58Xとメッキ層59とによって複数の回転子電極50A、50Bを構成する静電モータ2の本第2実施形態について
図10等を参照して説明する。
【0124】
本実施形態の静電モータ2の複数の回転子電極50A、50Bは、それぞれ、基材58に代わる中空部58Xとメッキ層59とによって構成されている。すなわち、本実施形態の静電モータ2の複数の回転子電極50A、50Bでは、基材58が削除され、メッキ層59の内側に中空部58Xが設けられている。
【0125】
本実施形態の静電モータ2の複数の固定子電極60A、60Bは、それぞれ、基材68に代わる中空部68Xとメッキ層69とによって構成されている。すなわち、本実施形態の静電モータ2の複数の固定子電極60A、60Bでは、基材68が削除され、メッキ層69の内側に中空部68Xが設けられている。
【0126】
本実施形態の静電モータ2では、複数の回転子電極50A、50Bおよび複数の固定子電極60A、60B以外の構成は、上記第1実施形態の静電モータ2と同様であるため、その説明を省略する。
【0127】
次に、本実施形態の回転子電極50A、50Bの製造方法について
図11を参照して説明する。
【0128】
まず、ステップS100の工程において、基材58を準備する。基材58は、上記第1実施形態の基材58と同一部材である。
【0129】
次のステップS110の工程において、電気メッキ等の手法によって、基材58の表面にメッキ層59を形成する。
【0130】
次のステップS110の工程において、メッキ層59の内側から基材58を削除する。具体的には、メッキ層59に貫通する貫通孔を設け、この貫通孔に溶融液を流し込み、この溶融液によってメッキ層59の内側の基材58を溶かす。その後、メッキ層59から溶けた液状の基材を排出する。このことにより、メッキ層59の内側に中空部58Xが形成されている。すなわち、中空部58Xを覆う殻状にメッキ層59が形成されている。
【0131】
以上により、殻状のメッキ層59から構成される回転子電極50A、50Bの製造が完成する。
【0132】
次に、本実施形態の固定子電極60A、60Bの製造方法について
図11を参照して説明する。
【0133】
まず、ステップS100の工程において、基材を準備する。基材68は、上記第1実施形態の基材68と同一部材である。
【0134】
次のステップS110の工程において、電気メッキ等の手法によって、基材68の表面にメッキ層69を形成する。
【0135】
次のステップS110の工程において、メッキ層69の内側から基材68を削除する。具体的には、メッキ層69を貫通する貫通孔を設け、この貫通孔に溶融液を流し込み、溶融液によってメッキ層69の内側の基材68を溶かす。その後、メッキ層69から溶けた液状の基材を排出する。このことにより、メッキ層69の内側に中空部68Xが形成されている。すなわち、中空部68Xを覆う殻状にメッキ層69が形成されている。
【0136】
以上により、殻状のメッキ層69から構成される固定子電極60A、60Bの製造が完成する。
【0137】
以上説明した本実施形態によれば、本実施形態の複数の回転子電極50A、50Bでは、メッキ層59の内側に基材58に代わる中空部58Xが設けられている。このため、複数の回転子電極50A、50Bの軽量化を図ることができる。
【0138】
本実施形態の複数の固定子電極60A、60Bでは、メッキ層69の内側に基材68に代わる中空部68Xが設けられている。このため、複数の固定子電極60A、60Bの軽量化を図ることができる。
【0139】
本実施形態の静電モータ2の製造方法は、基材58を準備するステップS100の工程を含む。静電モータ2の製造方法は、金属材料によって基材58の周囲を覆う膜状に形成されて固定子電極60A、60Bと間に静電気力を発生させるメッキ層59を形成することにより回転子電極50A、50Bを形成するステップS110の工程を含む。
【0140】
さらに、静電モータ2の製造方法は、メッキ層59の内側から基材58を除去してメッキ層59を殻状に形成することにより回転子電極50A、50Bを形成するステップS120の工程を含む。
【0141】
以上により、絶縁耐圧を向上するようにした静電モータ2に適した製造方法を提供することができる。
【0142】
本実施形態の静電モータ2の製造方法は、基材を準備するステップS100の工程を含む。静電モータ2の製造方法は、金属材料によって基材の周囲を覆う膜状に形成されて固定子電極60A、60Bと間に静電気力を発生させるメッキ層69を形成することにより回転子電極50A、50Bを形成するステップS110の工程を含む。
【0143】
さらに、静電モータ2の製造方法は、メッキ層59の内側から基材58を除去してメッキ層59を殻状に形成することにより固定子電極60A、60Bを形成するステップS120の工程を含む。
【0144】
以上により、絶縁耐圧を向上するようにした静電モータ2に適した製造方法を提供することができる。
【0145】
(他の実施形態)
【0146】
(1)上記第1実施形態および上記第2実施形態では、複数の回転子電極50A、50Bが複数の固定子電極60A、60Bに対して軸線Bを中心として回転する例について説明した。
【0147】
しかし、これに代えて、複数の回転子電極50A、50Bが複数の固定子電極60A、60Bに対して直線的に変位するリニアモータを静電モータ2が構成するようにしてもよい
【0148】
(2)上記第1実施形態および上記第2実施形態では、複数の回転子電極50A、50Bが複数の固定子電極60A、60Bに対して径方向Zb内側に配置されている例について説明した。
【0149】
しかし、これに代えて、複数の回転子電極50A、50Bを複数の固定子電極60A、60Bに対して径方向Zb外側に配置してもよい
【0150】
(3)上記第1実施形態および上記第2実施形態では、軸受け20Aおよび軸受け20Bとして、玉軸受けを設けた例について説明した。しかし、これに代えて、軸受け20Aおよび軸受け20Bとして、玉軸受け以外の各種の軸受けを用いてもよい
【0151】
(4)上記第1実施形態および上記第2実施形態では、静電モータ2を真空中に配置した例について説明した。しかし、これに代えて、静電モータ2を大気中に配置してもよい。すなわち、回転子電極50A、50Bのメッキ層69と固定子電極60A、60Bのメッキ層59とを大気中に配置してもよい。
(5)なお、本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0152】
2 静電モータ
10 回転軸
20A、20B 軸受け
50A 回転子電極
50B 回転子電極
60A 固定子電極
60B 固定子電極