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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012062
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A61M1/00 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114600
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000138037
【氏名又は名称】株式会社メテク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】日野 真弓
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA20
4C077BB02
4C077HH07
4C077HH10
4C077HH13
4C077HH15
4C077HH20
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】接続した処理器の容量を把握できる情報処理装置と、当該方法を実行可能な処理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 血液及び/又は体腔液を処理する処理システムであって、
第1空間と第2空間を仕切る膜を有する浄化器と、
密閉された前記第2空間における液体の体積を制御する送液部と、
密閉された前記第2空間の圧力を測定する圧力測定部と、
前記第2空間の体積V0を推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、前記液体の体積が異なる少なくとも2時点の、前記第2空間の前記液体の体積αと圧力Pに基づいて、前記体積V0を推定する、
処理システム。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液及び/又は体腔液を処理する処理システムであって、
第1空間と第2空間を仕切る膜を有する浄化器と、
密閉された前記第2空間における液体の体積を制御する送液部と、
密閉された前記第2空間の圧力を測定する圧力測定部と、
前記第2空間の体積V0を推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、前記液体の体積が異なる少なくとも2時点の、前記第2空間の前記液体の体積αと圧力Pに基づいて、前記体積V0を推定する、
処理システム。
【請求項2】
前記推定部は、下記式により前記体積V0を推定する、
V0=(α2・P2-α1・P1)/(P2-P1)
P1:送液又は排液前の前記第2空間の圧力
P2:送液又は排液後の前記第2空間の圧力
α1:送液又は排液前の前記第2空間の液体量
α2:送液又は排液後の前記第2空間の液体量
請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記浄化器と前記圧力測定部とを接続する第1流路を備え、
前記推定部は、下記式により前記体積V0を推定する、
V0=(α2・P2-α1・P1)/(P2-P1)-β
P1:送液又は排液前の前記第2空間の圧力
P2:送液又は排液後の前記第2空間の圧力
α1:送液又は排液前の前記第2空間の液体量
α2:送液又は排液後の前記第2空間の液体量
β:第1流路の体積
請求項1に記載の処理システム。
【請求項4】
前記第1空間に液体が充填された状態において、前記推定部は、少なくとも2時点の、前記第2空間の前記液体の体積αと圧力Pに基づいて、前記体積V0を推定する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項5】
前記第1空間に液体が充填された状態とするための密閉手段を備える、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項6】
前記推定部は、液体の送液及び/又は排液の操作に基づいて、前記第2空間の前記液体の体積αを算出する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項7】
前記第2空間の前記液体の体積αを算出する重量計を備える、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項8】
前記送液部は、密閉した前記第2空間に対する前記液体の送液及び/又は排液を繰り返し、
前記推定部は、前記送液の繰り返しに応じて、前記第2空間の体積Vnを複数回推定し、得られた複数前記体積Vnの平均値を、前記体積V0として推定する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項9】
前記送液部は、密閉した前記第2空間に対する前記液体の送液及び/又は排液を繰り返し、
前記推定部は、前記送液の繰り返しに応じて、前記第2空間の体積Vnを複数回推定し、得られた複数の前記体積Vnの最小値を、前記体積V0として推定する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項10】
前記送液部は、密閉した前記第2空間に対する前記液体の送液及び/又は排液を繰り返し、
前記圧力測定部は、送液及び/又は排液後であって、密閉された前記第2空間の圧力の変動が閾値未満となったときに、前記圧力Pを測定する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項11】
前記送液部は、前記浄化器と前記圧力測定部とを接続する第1流路の変形が所定値以下となるように前記液体の体積を制御する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項12】
前記浄化器が、濾過器を含む、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項13】
前記圧力測定部は、前記浄化器の鉛直方向の上側に設置され、
前記送液部は、前記体積V0の推定時において、前記圧力測定部と前記浄化器の接続口に液体が接触しないように前記液体の体積を制御する、
請求項1に記載の処理システム。
【請求項14】
第2空間が、濾過された血液及び/又は体腔液が浸出する空間である、
請求項1に記載の処理システム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液及び/又は体腔液を処理する処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体腔液の1つである腹水における治療法として、患者から腹水を取り出し、当該腹水から細菌やがん細胞などの病因物質を除去し、アルブミンなどの有用成分を残した状態で濃縮し、当該濃縮液を体内に戻す腹水ろ過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)がある。
【0003】
かかる治療法には、一般的に体腔液処理システムが用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-13492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような体腔液処理システムやその他の血液処理システムにおいては、処理内容や処理方法に応じて様々な浄化器が用いられる。浄化器はそれぞれ内容量が異なるため、浄化器の内容量を把握して過度に圧がかからないようにプライミング量などの処理条件を調整する必要がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、接続した浄化器の容量を把握できる情報処理装置と、当該方法を実行可能な処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
血液及び/又は体腔液を処理する処理システムであって、
第1空間と第2空間を仕切る膜を有する浄化器と、
密閉された前記第2空間における液体の体積を制御する送液部と、
密閉された前記第2空間の圧力を測定する圧力測定部と、
前記第2空間の体積V0を推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、前記液体の体積が異なる少なくとも2時点の、前記第2空間の前記液体の体積αと圧力Pに基づいて、前記体積V0を推定する、
処理システム。
〔2〕
前記推定部は、下記式により前記体積V0を推定する、
V0=(α2・P2-α1・P1)/(P2-P1)
P1:送液又は排液前の前記第2空間の圧力
P2:送液又は排液後の前記第2空間の圧力
α1:送液又は排液前の前記第2空間の液体量
α2:送液又は排液後の前記第2空間の液体量
〔1〕に記載の処理システム。
〔3〕
前記浄化器と前記圧力測定部とを接続する第1流路を備え、
前記推定部は、下記式により前記体積V0を推定する、
V0=(α2・P2-α1・P1)/(P2-P1)-β
P1:送液又は排液前の前記第2空間の圧力
P2:送液又は排液後の前記第2空間の圧力
α1:送液又は排液前の前記第2空間の液体量
α2:送液又は排液後の前記第2空間の液体量
β:第1流路の体積
〔1〕に記載の処理システム。
〔4〕
前記第1空間に液体が充填された状態において、前記推定部は、少なくとも2時点の、前記第2空間の前記液体の体積αと圧力Pに基づいて、前記体積V0を推定する、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔5〕
前記第1空間に液体が充填された状態とするための密閉手段を備える、
〔1〕~〔43〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔6〕
前記推定部は、液体の送液及び/又は排液の操作に基づいて、前記第2空間の前記液体の体積αを算出する、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔7〕
前記第2空間の前記液体の体積αを算出する重量計を備える、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔8〕
前記送液部は、密閉した前記第2空間に対する前記液体の送液及び/又は排液を繰り返し、
前記推定部は、前記送液の繰り返しに応じて、前記第2空間の体積Vnを複数回推定し、得られた複数前記体積Vnの平均値を、前記体積V0として推定する、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔9〕
前記送液部は、密閉した前記第2空間に対する前記液体の送液及び/又は排液を繰り返し、
前記推定部は、前記送液の繰り返しに応じて、前記第2空間の体積Vnを複数回推定し、得られた複数の前記体積Vnの最小値を、前記体積V0として推定する、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔10〕
前記送液部は、密閉した前記第2空間に対する前記液体の送液及び/又は排液を繰り返し、
前記圧力測定部は、送液及び/又は排液後であって、密閉された前記第2空間の圧力の変動が閾値未満となったときに、前記圧力Pを測定する、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔11〕
前記送液部は、前記浄化器と前記圧力測定部とを接続する第1流路の変形が所定値以下となるように前記液体の体積を制御する、
〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔12〕
前記浄化器が、濾過器を含む、
〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔13〕
前記圧力測定部は、前記浄化器の鉛直方向の上側に設置され、
前記送液部は、前記体積V0の推定時において、前記圧力測定部と前記浄化器の接続口に液体が接触しないように前記液体の体積を制御する、
〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の処理システム。
〔14〕
第2空間が、濾過された血液及び/又は体腔液が浸出する空間である、
〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載の処理システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接続した浄化器の容量を把握できる情報処理装置と、当該方法を実行可能な処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本実施形態の処理システムの一態様を表す概略図である。
図1B】本実施形態の情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図1C】本実施形態の情報処理装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図1D】本実施形態の処理システムの浄化器において、第2空間に所定量の液体が存在する時点の一態様を表す概略図である。
図1E】本実施形態の処理システムの浄化器において、第2空間に所定量の液体が存在する時点の他の態様を表す概略図である。
図2】体積V0を推定する処理のフローチャートの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0011】
1.処理システム
図1Aに、本実施形態の処理システムの一態様を表す概略図を示す。本実施形態の処理システム1は、血液及び/又は体腔液を処理する処理システムであって、第1空間と第2空間を仕切る膜を有する浄化器と、密閉された第2空間における液体の体積を制御する送液部と、密閉された第2空間の圧力を測定する圧力測定部と、第2空間の体積V0を推定する推定部と、を備え、推定部は、液体の体積が異なる少なくとも2時点の、第2空間の液体の体積αと圧力Pに基づいて、体積V0を推定する。
【0012】
以下、図1Aに基づいて、本実施形態の処理システム1の態様について詳説する。まず、処理システム1は、未処理の血液及び/又は体腔液の収容部としての未処理バッグ10と、濾過器11と、濃縮器12と、濾過処理と濃縮処理後の血液及び/又は体腔液の回収部としての処理済バッグ13と、情報処理装置100等を備えてもよい。情報処理装置100は、処理システム1における処理を実行するための、制御部85、圧力測定部86、及び、推定部87の各種機能部を備えてもよい。
【0013】
以下、体腔液の例として腹水の処理を例に処理システム1の構成を説明するが、本実施形態の処理システム1の処理対象は腹水に限られることなく、処理システム1はその他の体腔液や血液にも適用できる。
【0014】
未処理バッグ10は、例えば軟質性のバッグであり、患者から採取された腹水を収容することができる。推定処理時においては、未処理バッグ10には、生理食塩水や水などの液体が収容されてもよい。
【0015】
濾過器11は、本実施形態の浄化器の一例である。以下においては、濾過器11が体積V0を推定される浄化器であるものとして説明をするが、本実施形態の浄化器が濾過器11に限定されず、後述する濃縮器12なども浄化器として体積V0の推定対象とすることができる。
【0016】
濾過器11は、例えば円筒形状の筐体を有している。濾過器11は、長手方向(上下方向)の両端部に通液口11a、11bを有し、側面に2つの通液口11c、11dを有している。濾過器11は、例えば細菌やがん細胞などの所定の病因物質を除去し、アルブミンなどの所定の有用成分を通過してもよい。なお、推定処理時においては、濾過器11内の各空間には、生理食塩水や水などの液体が通過してもよい。なお、本明細書において処理システム1における上下は、通常使用時の姿勢に基づくものとする。
【0017】
濾過器11は、例えば細菌やがん細胞などの所定の病因物質を除去し、アルブミンなどの所定の有用成分を通過させる濾過膜30を備えている。濾過膜30は、例えば多数本の中空糸膜から構成されている。濾過膜30の一次側の第1空間(中空糸膜の内部空間)30aは、通液口11a、11bに通じ、濾過膜30の二次側の第2空間(中空糸膜の外部空間)30bは、通液口11c、11dに通じている。ここで、第2空間30bは、体腔液等の処理時において、濾過された血液及び/又は体腔液が浸出する空間となる。
【0018】
濾過器11の通液口11cには、第1流路45を介して、圧力測定用の接続口46が接続されてもよい。圧力測定用の接続口46には、圧力センサなどの圧力測定装置が接続されて、封鎖されてもよい。すなわち、第1流路45は、液体又は気体が通過ことにより、濾過膜30の第2空間30bの圧力を接続口46に伝達するものであってもよい。
【0019】
第1流路45の一部には気体が密閉されてもよく、ドリップチャンバーが設けられていてもよい。これにより、接続口46の圧力測定装置に液体が接することを回避できる。接続口46に空気を透過する疎水性フィルタを設けることとしてもよい。
【0020】
濃縮器12は、本実施形態の浄化器の一例である。濃縮器12は、例えば円筒形状の筐体を有している。濃縮器12は、長手方向(上下方向)の両端部に通液口12a、12bを有し、側面に2つの通液口12c、12dを有している。濃縮器12は、例えば腹水から水分を除去して濃縮してもよい。なお、推定処理時においては、濃縮器12内の各空間には、生理食塩水や水などの液体が通過してもよい。
【0021】
濃縮器12は、例えば腹水から水分を除去して濃縮する濃縮膜40を備えている。濃縮膜40は、例えば多数本の中空糸膜から構成されている。濃縮膜40の一次側の第1空間(中空糸膜の内側空間)40aは、通液口12a、12bに通じ、濃縮膜40の二次側の第2空間(中空糸膜の外側空間)40bは、通液口12c、12dに通じている。
【0022】
なお、図1Aにおいては、濃縮器12に情報処理装置100や圧力測定装置が接続される態様について示していないが、濃縮器12においても濾過器11と同様に、情報処理装置100や圧力測定装置が接続されてもよい。
【0023】
処理済バッグ13は、例えば軟質性のバッグであり、濃縮器12で濃縮された濃縮腹水を収容することができる。処理済バッグ13は、未処理バッグ10よりも低い位置に設置されてもよい。推定処理時においては、処理済バッグ13には、濃縮器12を通過した、生理食塩水や水などの液体が収容されてもよい。
【0024】
流路14は、未処理バッグ10と濾過器11を接続している。流路14の上流側の端部は、未処理バッグ10に接続され、流路14の下流側の端部は、濾過器11の通液口11aに接続されている。推定処理時においては、流路14を介して、未処理バッグ10から濾過器11の通液口11aに生理食塩水や水などの液体が流入してもよい。また、体腔液などの処理時においては、流路14を介して、未処理バッグ10から濾過器11の通液口11aに、腹水が流入してもよい。流路14には、流路14を開閉するバルブ41が設けられてもよい。なお、本明細書において、「上流側」とは、腹水が、濾過器11、濃縮器12の順に流れる通常の腹水処理時に上流側になる方向を示し、「下流側」とは、通常の腹水処理時の下流側になる方向を示す。
【0025】
制御部85、圧力測定部86、及び、推定部87は、処理システム1が備える情報処理装置100が備える機能部であってもよい。情報処理装置100としては、特に限定されないが、例えば、タブレット、パーソナルコンピュータ等のコンピュータが挙げられる。
【0026】
図1Bは、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサ111、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置112、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)113、入力操作を受け付ける入力デバイス114、及び情報の出力を行う出力デバイス115を有する。入力デバイス114は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス115は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル及び/又はスピーカ等である。
【0027】
図1Cは、情報処理装置100の機能ブロック構成の一例を示す図である。情報処理装置100は、制御部85、圧力測定部86、及び、推定部87を含んでもよい。記憶部130は、情報処理装置100が備える記憶装置112を用いて実現することができる。また、制御部85、圧力測定部86、及び、推定部87は、情報処理装置100のプロセッサ111が、記憶装置112に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0028】
本実施形態においては、制御部85、圧力測定部86、及び、推定部87の共動により、浄化器の第2空間30bの体積V0の推定処理が行われてもよい。具体的には、処理システム1の制御部85は、送液部の一例であるポンプ51等により第2空間30bに対して液体を送る又は第2空間30bから液体を排出するよう制御し、圧力測定部86は、送液の前後又は排液の前後における第2空間30bの圧力を測定し、推定部87は、第2空間30b内の液体の体積が異なる少なくとも2時点の液体の体積α1,α2と圧力P1,P2に基づいて、第2空間30bの体積V0の推定処理を行う。
【0029】
処理システム1は、第1空間30aに液体が充填された状態とするための密閉手段として、例えば、バルブ41,19aを備えてもよい。バルブ41は、濾過器11の通液口11aに接続された流路14の開閉手段であり、バルブ19aは、濾過器11の通液口11bに接続された流路19の開閉手段である。この場合、制御部85は、バルブ41,19aを閉じた状態で、上記推定処理を行ってもよいし、バルブ41,19aを開いた状態で、上記推定処理を行ってもよい。
【0030】
制御部85は、送液部の一例であるポンプ51を制御し、濾過器11(浄化器)の第2空間30bへの液体の送液、又は、第2空間30bからの液体の排液の制御をするとともに、バルブ41,19aの開閉を制御することで、第1空間30aへの液体の出入りを制御してもよい。そのほか、制御部85は、図示しないが、ポンプ60、バルブ50、逆流防止部65、バルブ70等の各装置の動作を制御して、血液及び/又は体腔液の処理を実行することができる。制御部85は、例えばメモリに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより各処理を実現することができる。
【0031】
圧力測定部86は、濾過器11(浄化器)の第2空間30bの圧力を測定可能に構成されていれば特に制限されない。例えば、圧力測定部86は、第2空間30bに直接的に接続された圧力測定装置から圧力に関する信号を受信して、第2空間30b内の圧力を測定してもよいし、第2空間30bと接続される第1流路45の接続口46に接続された圧力測定装置から圧力に関する信号を受信してもよい。また、第1流路45には、例えばドリップチャンバー(不図示)が接続されていてもよい。
【0032】
圧力測定部86を構成する圧力測定装置は、浄化器の鉛直方向の上側に設置され、制御部85は、送液部が、体積V0の推定時において、圧力測定部86の圧力測定装置に液体が接触しないように液体の体積を制御してもよい。これにより、圧力測定装置に液体が接することを回避できる。
【0033】
推定部87は、液体の体積が異なる少なくとも2時点の、第2空間30bの液体の体積αと圧力Pに基づいて、体積V0を推定する。ここで、図1D及び図1Eに、本実施形態の処理システムの浄化器において、第2空間に所定量の液体が存在する時点の一態様を表す概略図を示す。本実施形態においては、図1D及び図1Eに示すような液体の体積が異なる少なくとも2時点において、推定部87は、下記式により体積V0を推定する。
V0=(α2・P2-α1・P1)/(P2-P1)
P1:送液又は排液前の第2空間30bの圧力
P2:送液又は排液後の第2空間30bの圧力
α1:送液又は排液前の第2空間30bの液体量
α2:送液又は排液後の第2空間30bの液体量
【0034】
また、図1Aに示すように、濾過器11(浄化器)と圧力測定部86とを接続する第1流路45を備える場合には、推定部87は体積V0の推定にあたり、第1流路45内の体積を考慮してもよい。この場合、推定部87は、下記式により体積V0を推定してもよい。これにより、より正確に体積V0を推定することができる。
V0=(α2・P2-α1・P1)/(P2-P1)-β
P1:送液又は排液前の第2空間30bの圧力
P2:送液又は排液後の第2空間30bの圧力
α1:送液又は排液前の第2空間30bの液体量
α2:送液又は排液後の第2空間30bの液体量
β:第1流路45の体積
【0035】
推定部87は、第1空間30aに液体が充填された状態において、少なくとも2時点の、第2空間の液体の体積αと圧力Pに基づいて、体積V0を推定することが好ましい。第1空間30aに液体が充填されることで、第2空間30bに供給した液体により濾過膜30が第1空間30a側にたわみにくくなる。これにより、より正確に体積V0を推定することができる。
【0036】
なお、第1空間30aに液体が充填されており、この状態で制御部85は、送液部の一例であるポンプ51を制御し、濾過器11(浄化器)の第2空間30bへの液体の送液、又は、第2空間30bからの液体の排液の制御を行う。
【0037】
推定部87は、液体の送液及び/又は排液の操作に基づいて、第2空間30bの液体の体積αを算出してもよい。具体的には、制御部85が送液部を制御して、第2空間30bに対して液体の送液及び/又は排液を行った際の液体の量に基づいて、推定部87は、各時点における、第2空間30bの液体の体積αを算出してもよい。
【0038】
また、これに代えて、本実施形態の処理システム1は、第2空間30bの液体の体積αを算出する重量計(不図示)を備えてもよい。重量計は、特に制限されないが、例えば、吊りばかりであってもよく、浄化器である濾過器11を吊りばかりのフックにつるしておくことで、第2空間30bの液体の体積αを測定するようにしてもよい。
【0039】
記憶部130は、体積V0の推定処理に使用する各データを有していてもよく、例えば、圧力測定部86が測定したデータ、推定部87が推定した第2空間30bの体積V0の値などを記録してもよい。
【0040】
流路15は、濾過器11と濃縮器12を接続している。流路15の上流側の端部は、濾過器11の通液口11dに接続され、流路15の下流側の端部は、濃縮器12の上端部の通液口12aに接続されている。すなわち、濾過器11の通液口11dは、濾過器11の出口となり、濃縮器12の通液口12aは、濃縮器12の入口となっている。推定処理時においては、流路15を介して、濃縮器12側から濾過器11側へ向けて、方向F1に、生理食塩水や水などの液体が流れてもよい。また、体腔液などの処理時においては、流路15を介して、濾過器11側から濃縮器12側へ向けて、濾過された腹水が流れてもよい。濾過された腹水には、例えば、アルブミンなどの所定の有用成分が含まれ得る。
【0041】
流路15には、例えばバルブ50と、ポンプ51、ドリップチャンバー52、流路54及び圧力測定装置53、液体バック80、バルブ81、及びバルブ82が上流側から下流側に向けてこの順番で設けられてもよい。バルブ50は、流路15を開閉可能に構成される。
【0042】
ポンプ51は、送液部の一例である。ポンプ51は、特に制限されないが、例えば、流路15のチューブを扱いて液体又は気体を所定の方向F1,F2に圧送するチューブポンプであってもよく、停止時にはチューブを閉塞するため閉塞手段としての機能を有してもよい。
【0043】
圧力測定装置53は、濃縮器12の一次側の空間40aに通じており、この空間40aの圧力を測定することができる。
【0044】
液体バック80は、例えば軟質性のバッグであり、流路15に接続されている。液体バック80は、推定処理時においては、流路15に対して、生理食塩水や水などの液体を導入することができる。液体を導入する場合には、液体バック80に収容された生理食塩水がポンプ51によりF1方向に送液されてもよい。推定処理時においては、液体が濃縮器12に送液されないようにバルブ82は閉じていてもよい。また、通常の腹水処理時の際には、液体バック80に処理液が逆流しないように、バルブ81は閉じていてもよい。
【0045】
流路16は、濃縮器12と処理済バッグ13を接続している。流路16の上流側の端部は、濃縮器12の下端部の通液口12bに接続され、流路16の下流側の端部は、処理済バッグ13に接続されている。すなわち、濃縮器12の通液口12bは、濃縮器12の第1の出口となっている。
【0046】
流路16には、ポンプ60が設けられてもよい。ポンプ60は、流路16のチューブを扱いて送液するチューブポンプであってもよい。ポンプ60は、停止時にチューブを閉塞するため閉塞手段としての機能も備えてもよい。
【0047】
流路17の上流側の端部は、例えば濃縮器12の通液口12c、12dに接続されている。すなわち、濃縮器12の通液口12c、12dは、濃縮器12の第2の出口となっている。なお、流路17の上流側の端部は、通液口12c、12dのいずれか一方にのみ接続されてもよい。流路17の下流側の端部は、濃縮器12で腹水から除去された排液を収容する排液部(不図示)に接続されてもよい。流路17には、逆流防止部65が設けられてもよい。
【0048】
流路18は、処理済バッグ13と流路15を接続している。流路18の一端部(上流側の端部)は、処理済バッグ13に接続されている。流路18の他端部(下流側の端部)は、流路15におけるバルブ50とポンプ51との間に接続されてもよい。流路18には、流路18を開閉するバルブ70が設けられてもよい。
【0049】
2.推定処理
次に、本実施形態の体積V0の推定処理をフローチャートを用いて説明する。図2に、推定処理のフローチャートの一例を示す。
【0050】
ステップS11では、制御部85が、送液部であるポンプ51等を制御し、流路15を介して所定量の液体を第2空間30bに送液する。この際に、制御部85は、予めバルブ19aを閉鎖し、第1空間30aに液体が充填された状態としてもよい。なお、ステップS11は省略することとしてもよい。
【0051】
また、この際に、送液部は、浄化器と圧力測定部86とを接続する第1流路45の変形が所定値以下となるように液体の体積を制御してもよい。上記のとおり、第1流路45は、軟質のチューブである場合があるため、圧力P1,P2によっては変形し、チューブ内の体積が変わりうる。第1流路45の体積変化は、体積V0の算出において誤差を生じさせるため、第1流路45の変形が所定値以下となるように液体の体積を制御することにより、体積V0の推定精度がより向上する傾向にある。
【0052】
ステップS12では、圧力測定部86が、第2空間30bの圧力P1を測定し、推定部87が液体量α1を推定する(図1D参照)。この時、推定部87は、液体の送液及び/又は排液の操作に基づいて、第2空間の液体の体積α1を算出してもよいし、吊りばかりなどの重量計により、記第2空間の液体の体積α1を算出してもよい。
【0053】
ステップS13では、制御部85が、送液部であるポンプ51等を制御し、流路15を介して所定量の液体を第2空間30bに送液したり、又は、所定量の液体を第2空間30bから排液したりする。
【0054】
ステップS14では、圧力測定部86が、第2空間30bの圧力P2を測定し、推定部87が液体量α2を推定する(図1E参照)。この時、推定部87は、液体の送液及び/又は排液の操作に基づいて、第2空間の液体の体積α2を算出してもよいし、吊りばかりなどの重量計により、記第2空間の液体の体積α2を算出してもよい。
【0055】
ステップS15では、推定部87が、液体の体積が異なる少なくとも2時点の、第2空間の液体の体積αと圧力Pに基づいて、体積V0を推定する。この際、推定部87は第1流路の体積βを考慮して体積V0を推定してもよい。
【0056】
また、本実施形態の処理システムは、ステップS11~15を繰り返し、第2空間30bの体積Vを複数回算出し、推定した複数の体積Vに基づいて、体積V0を推定してもよい。例えば、制御部85が送液部であるポンプ51等を制御し、制御部が密閉した第2空間30bに対する液体の送液及び/又は排液を繰り返すとともに、推定部87は、送液の繰り返しに応じて、第2空間30bの体積Vnを複数回推定し、得られた複数体積Vnの平均値を、体積V0として推定してもよい。これにより、体積V0をより正確に推定できる。
【0057】
あるいは、制御部85が送液部であるポンプ51等を制御し、送液部が密閉した第2空間30bに対する液体の送液及び/又は排液を繰り返し、推定部87は、送液の繰り返しに応じて、第2空間30bの体積Vnを複数回推定し、得られた複数の体積Vnの最小値を、体積V0として推定してもよい。これにより、体積V0を過大に推定することを回避できる。そのため、推定した体積V0に基づいて、処理機に許容量を超える液体が供給されることを回避できる。
【0058】
さらに、制御部85が送液部であるポンプ51等を制御し、送液部が密閉した第2空間に対する液体の送液及び/又は排液を繰り返し、圧力測定部86は、送液及び/又は排液後であって、密閉された第2空間30bの圧力の変動が閾値未満となったときに、圧力Pを測定するようにしてもよい。密閉された第2空間30bへの送液の速度が速い場合などに、送液量と圧力の変動の変化のミスマッチが生じるリスクがある。上記のようにすることで、このリスクを低減できる。
【0059】
以上のような処理システム1により、接続した浄化器の容量を容易に把握することができ、それに基づいて、体腔液等の処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の処理システムは、血液及び/又は体腔液を処理する処理システムとして産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0061】
1 処理システム、10…未処理バッグ、11…濾過器、11a,11b…通液口、11c…通液口、11d…通液口、12…濃縮器、12a…通液口、12b…通液口、12c…通液口、12d…通液口、13…処理済バッグ、14…流路、15…流路、16…流路、17…流路、18…流路、19a…バルブ30…濾過膜、30a…第1空間、30b…第2空間、40…濃縮膜、40a…第1空間、40b…第2空間、41…バルブ、45…だい1流路、46…接続口、50…バルブ、51…ポンプ、52…ドリップチャンバー、53…導入部、60…ポンプ、70…バルブ、85…制御部、86…圧力測定部、87…推定部、100…情報処理装置、111…プロセッサ、112…記憶装置、114…入力デバイス、115…出力デバイス、130…記憶部。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2