(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012064
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】取鍋開孔用焼結防止材および取鍋開孔方法
(51)【国際特許分類】
B22D 41/46 20060101AFI20250117BHJP
B22D 11/10 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B22D41/46
B22D11/10 320E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114602
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】516133607
【氏名又は名称】株式会社資源活用技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 照祥
【テーマコード(参考)】
4E004
4E014
【Fターム(参考)】
4E004FA01
4E014FA01
(57)【要約】
【課題】取鍋からの溶鋼排出時に、確実に自然開孔を生じさせる焼結防止材および焼結防止方法を提案する。
【解決手段】取鍋開孔用の焼結防止材10は、取鍋2の底部3に設けられたノズル1に、充填砂Sとともに装入されるものであり、円柱状の芯部20と、芯部20を覆う円筒状のキャップ部30とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋の底部に設けられたノズルに、充填砂とともに装入される取鍋開孔用の焼結防止材であって、
円柱状の芯部と、
前記芯部を覆う円筒状のキャップ部とを備える、焼結防止材。
【請求項2】
前記芯部は、加熱により焼結しない物質から構成される、請求項1に記載の焼結防止材。
【請求項3】
前記芯部は、長さ方向の一方側に向かって外径が小さくなるように形成される、請求項1に記載の焼結防止材。
【請求項4】
前記芯部は長さ方向に沿って連結された複数の部材からなる、請求項1に記載の焼結防止材。
【請求項5】
前記キャップ部の外周壁には、複数の突条が形成されている、請求項1に記載の焼結防止材。
【請求項6】
前記キャップ部の突条は、前記焼結防止材の長さ方向に沿って延在し、前記焼結防止材の周方向に沿って複数設けられている、請求項5に記載の焼結防止材。
【請求項7】
複数の前記突条は、平面からみて前記キャップ部の中心に対して対称の位置に設けられ、対称の位置に設けられた一方の前記突条の端部と他方の前記突条の端部との間の距離は、前記焼結防止材の長さ方向に沿って一定である、請求項6に記載の焼結防止材。
【請求項8】
前記キャップ部は、合成樹脂と耐火材料とを含む物質から構成され、
前記耐火材料は、充填砂に含まれる耐火材料と同じ成分を有する、請求項1に記載の焼結防止材。
【請求項9】
前記キャップ部は、前記芯部の外周面と一方の端面とを覆う、請求項1に記載の焼結防止材。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1に記載の焼結防止材を用いた取鍋開孔方法であって、
前記取鍋の底部のノズルが閉鎖された状態で、前記ノズルに前記焼結防止材と前記充填砂とを装入する工程であって、前記焼結防止材が前記ノズルの中央に位置するように配置され、前記焼結防止材と前記ノズルの内面との間および前記焼結防止材よりも取鍋の内部側に前記充填砂が充填される、工程と、
前記取鍋内に溶鋼が装入された状態において、前記焼結防止材のキャップ部に含まれる合成樹脂が溶解するとともに、前記キャップ部に含まれる耐火材料の一部および前記充填砂の耐火材料の一部が焼結する工程と、
前記取鍋の底部のノズルを開孔する工程と、
前記ノズルの開孔により前記焼結防止材の芯部が排出され、次に前記キャップ部および充填砂が排出され、これにより前記ノズルが開孔して溶鋼を外部へ排出される工程とを含む、取鍋開孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋開孔用焼結防止材および取鍋開孔方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製鋼工程(精錬プロセス)では、取鍋などの溶鋼容器(以下、「取鍋」という)に溶鋼を装入し、様々な精錬処理を行い、その後、取鍋の底部に設けられたノズルから、処理後の溶鋼を外部へ排出している。
【0003】
取鍋の底部の構造を説明する。
図6、
図7に示すように、ノズル1は取鍋2の底部3に設けられている。取鍋2の底部3はレンガ5等により形成されており、レンガ5に形成された貫通孔にレンガ6が取り付けられてノズル1が形成されている。ノズル1の外側(溶鋼が流れる下流側であって、溶鋼排出側)には、スライドプレート4が設けられている。スライドプレート4は、ノズル1の溶鋼排出側に固定された第1プレート4aと、第1プレート4aの溶鋼排出側であって、ノズル1を開閉するように移動自由な第2プレート4bとからなる。第2プレート4bは図示しない油圧シリンダ等の移動機構によって水平方向に移動する。
【0004】
取鍋2へ溶鋼が装入される前には、
図6に示すように、第2プレート4bは一方側(左側)に位置して第2プレート4bの上面4cによりノズル1の外側が閉鎖され、ノズル1内に充填砂Sが充填されている。この状態で、取鍋2内に溶鋼が装入され、所定の精錬処理が行われる。これらの処理が終了し、取鍋2内の溶鋼を外部に排出する際(取鍋開孔時)には、
図7に示すように、第2プレート4bを他方側(右側)に位置させてノズル1を開孔する。すると、充填砂Sが溶鋼の重量によってノズル1から落下し、続いて溶鋼がノズル1を通って流れ出る、いわゆる「自然開孔」となる。
【0005】
しかし、精錬処理を行う間に、溶鋼により充填砂Sの上部が焼結して固まってしまい、ノズル1を開孔しても焼結した充填砂Sが溶鋼の重量に打ち勝って落下せずに溶鋼を支え、溶鋼が下に流れ出ない、すなわち、自然開孔しない場合がある。自然開孔しない場合には、ノズル1内に酸素ガスを流して焼結した充填砂Sを溶解させる強制開孔が行われるが、作業に非常に手間がかかる上、熟練した作業者による危険を伴う作業となる。
【0006】
このため、自然開口を生じやすくするために、例えば特許文献1においては充填砂Sの成分を工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のような充填砂を用いた場合であっても、自然開孔は生じやすくなるものの、十分ではない。
【0009】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、取鍋からの溶鋼排出時に、確実に自然開孔を生じさせる焼結防止材および焼結防止方法を提案している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0011】
項1:取鍋の底部に設けられたノズルに、充填砂とともに装入される取鍋開孔用の焼結防止材であって、
円柱状の芯部と、
前記芯部を覆う円筒状のキャップ部とを備える、焼結防止材。
【0012】
項2:前記芯部は、加熱により焼結しない物質から構成される、項1に記載の焼結防止材。
【0013】
項3:前記芯部は、長さ方向の一方側に向かって外径が小さくなるように形成される、項1または2に記載の焼結防止材。
【0014】
項4:前記芯部は長さ方向に沿って連結された複数の部材からなる、項1から3のいずれか1項に記載の焼結防止材。
【0015】
項5:前記キャップ部の外周壁には、複数の突条が形成されている、項1から4のいずれか1項に記載の焼結防止材。
【0016】
項6:前記キャップ部の突条は、前記焼結防止材の長さ方向に沿って延在し、前記焼結防止材の周方向に沿って複数設けられている、項5に記載の焼結防止材。
【0017】
項7:複数の前記突条は、平面からみて前記キャップ部の中心に対して対称の位置に設けられ、対称の位置に設けられた一方の前記突条の端部と他方の前記突条の端部との間の距離は、前記焼結防止材の長さ方向に沿って一定である、項6に記載の焼結防止材。
【0018】
項8:前記キャップ部は、合成樹脂と耐火材料とを含む物質から構成され、
前記耐火材料は、充填砂に含まれる耐火材料と同じ成分を有する、項1から7のいずれか1項に記載の焼結防止材。
【0019】
項9:前記キャップ部は、前記芯部の外周面と一方の端面とを覆う、項1から8のいずれかに1項記載の焼結防止材。
【0020】
項10:項1から9のいずれか1に記載の焼結防止材を用いた取鍋開孔方法であって、
前記取鍋の底部のノズルが閉鎖された状態で、前記ノズルに前記焼結防止材と前記充填砂とを装入する工程であって、前記焼結防止材が前記ノズルの中央に位置するように配置され、前記焼結防止材と前記ノズルの内面との間および前記焼結防止材よりも取鍋の内部側に前記充填砂が充填される、工程と、
前記取鍋内に溶鋼が装入された状態において、前記焼結防止材のキャップ部に含まれる前記合成樹脂が溶解するとともに、前記キャップ部に含まれる耐火材料の一部および前記充填砂の耐火材料の一部が焼結する工程と、
前記取鍋の底部のノズルを開孔する工程と、
前記ノズルの開孔により前記焼結防止材の芯部が排出され、次に前記キャップ部および充填砂が排出され、これにより前記ノズルが開孔して溶鋼を外部へ排出される工程とを含む、取鍋開孔方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、取鍋からの溶鋼排出時に、ノズルに確実に自然開孔を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る焼結防止材の斜視図である。
【
図2】
図3のA-A線に沿う焼結防止材の断面図である。
【
図5】(A)は焼結防止材がノズルに装入された状態を示す断面図、(B)は(A)のA-A線に沿う拡大断面図である。
【
図6】ノズルが開孔した状態の取鍋の底部の説明図である。
【
図7】ノズルが閉鎖された状態の取鍋の底部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態における取鍋開孔用焼結防止材10(以下、「焼結防止材10」という)は、取鍋開孔用の焼結防止材10は、取鍋2の底部3に設けられたノズル1に、充填砂Sとともに装入されるものである。
【0024】
(取鍋2の底部3)
取鍋2の底部3の構成は、
図6、
図7に示す従来例と同じであるため、対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。ノズル1は、
図5(A)~
図7に示すように、取鍋2の底部3に形成された貫通孔の底部に、貫通孔を有するレンガ6が挿入されたものである。レンガ6の貫通孔の下部は内径が一定であり、上部は内径が上に向かうにつれて広くなっている。ノズル1の内径L1とは、
図6においては、ノズル1の下側部分であってその内径が連続して一定である箇所の内径をいう。また、ノズル1の長さ方向の長さL2とは、
図5(A)~
図7において第2プレート4bの上面4cと取鍋2の底部3の上端との間の長さをいう。
【0025】
なお、本発明の焼結防止材10が用いられる取鍋2の底部3の構成は、
図6、
図7に示す構成に限らず、焼結防止材10をノズル1内に位置させることができれば、任意のノズル1および取鍋2の底部3であってもよい。また、ノズル1に充填される充填砂Sは焼結可能な耐火材料を含み、例えば、アルミナ、リン状黒鉛、石英ガラス(二酸化ケイ素)、鋼・鋳鉄等の粉末またはこれらの粉末の混合物が用いられる。
【0026】
溶鋼は、取鍋2の内部から外側に向かってノズル1を流れるため、以下の説明では、ノズル1の長さ方向を上下方向とし、取鍋2の内部側を上側、取鍋2の外側を下側という。また、焼結防止材10は、
図5(A)に示すように、ノズル1の上下方向が焼結防止材10の長さ方向に沿うようにノズル1に装入される。焼結防止材10は、後述する芯部20の外径の小さい側が取鍋2の内部に向かう方向、芯部20の外径の大きい側が取鍋2の外側に向かう方向となるようにノズル1に装入されるため、焼結防止材10の長さ方向の一方側であって芯部20の外径の小さい側を焼結防止材10の上側または上方ともいう。また、焼結防止材10の長さ方向の他方側、すなわち芯部20の外径の大きい側を、焼結防止材10の下側または下方ともいう。なお、上記の上下方向は現実の鉛直方向に沿う必要はなく、任意の現実の方向に設定される。例えば、取鍋2が横置きされ、ノズル1の上下方向が水平方向に沿ってもよい。
【0027】
(焼結防止材10)
取鍋開孔用の焼結防止材10は、取鍋2の底部3に設けられたノズル1に、充填砂Sとともに装入されるものである。
図1~
図4に示すように、焼結防止材10は、円柱状の芯部20と、芯部20を覆う円筒状のキャップ部30とを備える。本実施形態では、芯部20は、両端面が円形の円柱状であり、特に、
図2に示すように、焼結防止材10の長さ方向の一方側に向かって外径が小さくなるように形成された截頭円錐形状である。すなわち、芯部20の上面20bの外径L21は芯部20の下面の外径L22よりも小さい。しかし、芯部20の形状はこれに限定されず、外径が一定の円柱状であってもよい。また、内部に空間が設けられていてもよい。芯部20は、加熱により焼結しない物質から構成され、例えば、木、プレスした紙、木くず(例えば、木材の間伐材を切削加工したもの)等を固めたもの、等からなる。焼結とは、対象物が融点以下の温度で加熱されたときに、緻密化し、対象物の粒子が互いに付着して固まることをいう。
【0028】
芯部20は、長さ方向(
図2における上下方向)に沿って連結された複数の部材21A~21Dからなる。本実施形態では、4つの部材21A~21Dに分割されており、それぞれの部材21A~21Dの端面同士を接着剤等で接着することで、各部材21A~21Dが連結されている。本実施形態では、芯部20のそれぞれの部材21A~21Dの長さ方向の長さL20を同一としているが、異なっていてもよい。また、部材の数は特に限定されず、2つまたは3つに分割されていてもよく、5個以上でもよい。また、芯部20の外周面20aおよび上面20bであってキャップ部30と接触する領域にはキャップ部30との剥離を促進するための剥離剤が塗布されていてもよい。
【0029】
キャップ部30は、内部に空間を有する円筒状の本体部31と、本体部31の外周壁30aに設けられた突条32とを有する。本体部31は長さ方向の一方側に向かって外径が小さくなるように形成された截頭円錐形状である。キャップ部30の長さ方向の一方側(上側)の端部は上壁30bにより閉鎖され、他方側の端部が開放されている。キャップ部30は芯部20に被せられて芯部20の外周面20aと上面20bとを覆うものであり、キャップ部30の内面が芯部20の外周面20aと上面20bとに当接している。キャップ部30の外周壁30aの厚みL31は、キャップ部30の上壁30bの厚みL32よりも薄く設定される。キャップ部30の外周壁30aの厚みL31は、製造可能な程度にできるだけ薄く設定される。キャップ部30は加熱により後述する耐火材料を残して蒸発するが、キャップ部30が存在していた空間に溶鋼が流れ込むのを避けるためである。また、キャップ部30の上壁30bの厚みL32は、加熱により残留する耐火材料が充填砂Sとともに焼結して溶鋼の重量を支持することができるように、所定量の耐火材料が含まれる厚みとなるように設定される。
【0030】
キャップ部30の外周壁30aには複数の突条32が設けられている。本実施形態においては、8つの突条32が、焼結防止材10の周方向に中心点Pを中心とした一定の中心角で一定の間隔L34を空けて、長さ方向の全長にわたって設けられている。平面からみて、突条32は、焼結防止材10の中心点P(芯部20およびキャップ部30の中心点P)に対して点対称の位置に設けられている。突条32の外周壁30aからの突出長さL35は、焼結防止材10の長さ方向の上側に向かって大きくなり、対称の位置に設けられた一方の突条32の端部と他方の突条32の端部との間の距離L33(以下、「突条32間の距離L33」ともいう)は、焼結防止材10の長さ方向に沿って一定である。
【0031】
焼結防止材10の突条32間の距離L33はノズル1の内径L1と略同じかわずかに短く設定され、これにより、
図5(B)に示すように、ノズル1内に焼結防止材10を装入したときに、突条32の端部がノズル1のレンガ6の下部の内面に当接するか、当接せずともノズル1の内面に近い位置となり、平面からみて焼結防止材10がノズル1の中央部に位置する。
【0032】
なお、突条32は必ずしも長さ方向の全長にわたって設けられる必要はなく、長さ方向の中央部にのみ設けられていてもよく、長さ方向に複数に分かれて設けられていてもよい。
図3、
図4に示すように、本実施形態においては、平面および底面からみた突条32の形状は略三角形状であるが、円形、楕円形等の任意の形状であってもよい。
【0033】
なお、キャップ部30の構成は上記の構成に限定されず、突条32間の距離L33が焼結防止材10の長さ方向に沿って一定であれば、いずれの形態でもよい。例えば、キャップ部30の外周壁30aの厚みL31を芯部20の一方側に向かうにつれて厚くし、キャップ部30の外径および突条32の突出長さL35を長さ方向に沿って一定としてもよい。また、芯部20、キャップ部30、突条32の突出長さL35を長さ方向に沿って一定としてもよい。
【0034】
キャップ部30は、耐火材料と合成樹脂(熱可塑性結合剤および熱硬化性結合剤)を含む。キャップ部30の耐火材料は、充填砂Sに含まれる耐火材料と同じ成分のものが用いられる。本実施形態のキャップ部30は、耐火材料としてアルミナ粉を50%、リン状黒鉛を20%含む。さらに、熱可塑性結合剤として石炭ピッチ粉を10%、熱可塑性フェノールレジンを10%含み、熱硬化性結合剤として熱硬化性フェノールレジンを10%含む。
【0035】
これらの粉末をヘンシェルミキサーで混合して目地材を調製し、これをキャップ部30の寸法・形状に対応した金型に装入する。そして、150度に加熱して流動性を付与して成形した後に冷却する。これにより、キャップ部30が形成される。
【0036】
焼結防止材10の寸法は、ノズル1の内径L1やノズル1の長さ方向の長さL2に応じて適宜設定される。例えば、ノズル1の内径L1を50mm、ノズル1の長さ方向の長さL2を235mmとした場合、焼結防止材10の寸法は、例えば以下のように設定されている。ノズル1内に焼結防止材10の上側に充填砂Sが充填される空間を形成するために、焼結防止材10の長さ方向の長さL10は、ノズル1の長さL2よりも50mmから20mm程度短い長さに設定され、特に好ましくは30mm程度短い長さに設定され、本実施形態では、焼結防止材10の長さL10は205mmであり、ノズル1のレンガ6の高さと略同じに設定されている。本実施形態では、突条32間の距離L33は50mm、
図3における平面からみた突条32の本体部31の外周壁30aからの突出長さL35は6mm、隣合う突条32間の周方向の間隔L34は30~40mmに設定されている。また、キャップ部30の上壁30bの厚みL32は5mm程度、外周壁30aの厚みL31は3mm程度に設定されている。本実施形態では、芯部20の各部材21A~21Dの長さ方向の長さL20は約50mmに設定されている。芯部20の上面20bの外径L21は32mm、芯部20の下面の外径L22は36mmである。なお、上記の寸法は一例であり、この寸法に限定されるものではない。また、図面は説明のために用いられており、実際の寸法を表すものではない。
【0037】
なお、他の実施形態では、突条32間の距離L33は上記の実施形態と同じとするものの、突条32の突出長さL35を上記の実施形態よりも長くし、芯部20の外径L21、L22およびキャップ部30の本体部31の外径を上記の実施形態よりも小さくしてもよい。この場合、上記の実施形態よりも充填砂Sを充填するための空間が大きくなる。適切な充填砂Sの充填量に応じて、突条32の突出長さL35やキャップ部30の本体部31の外径および芯部20の外径L21、L22が設定される。
【0038】
(取鍋開孔方法)
本発明の焼結防止材10を用いた取鍋開孔方法について説明する。前提として、取鍋2の整備が行われ、ノズル1の補修、洗浄等が完了しているものとする。取鍋2の底部3のノズル1の下端をスライドプレート4により閉鎖する。この状態で、ノズル1に焼結防止材10を装入する。専用の焼結防止材10の装入措置により焼結防止材10を装入しても良い。
図5(A)に示すように、焼結防止材10の下端はノズル1の下端を閉鎖する第2プレート4bの上面4cに支持され、
図5(B)に示すように、焼結防止材10は平面からみてノズル1の中央に位置する。次に、ノズル1に充填砂Sを充填する。充填砂Sは焼結防止材10とノズル1の内面および第2プレート4bの上面4cとの間の空間、焼結防止材10の上壁30bより上側の空間に充填される。
【0039】
次に、取鍋2内に溶鋼が装入され、所定の精錬処理が行われる。この処理の間に、キャップ部30の上壁30bに含まれる合成樹脂が溶解や蒸発するとともに、上壁30bの耐火材料の一部および焼結防止材10より上側の充填砂Sの一部が焼結する。この焼結した耐火材料と芯部20とは溶鋼の重量を支えるとともに、溶鋼がノズル1の内部に流れ込むことを防ぐ。また、キャップ部30の外周壁30aに含まれる合成樹脂は溶解や蒸発するが、外周壁30aは薄く形成されているため溶解や蒸発により形成される隙間はわずかである。ノズル1の内部には酸素がないため、焼結防止材10の芯部20はいわゆる蒸し焼き状態になるものの、芯部20の炭化等は生じたり、燃え尽きて灰になることはない。
【0040】
所定の精錬処理の完了後、スライドプレート4の第2プレート4bを移動させ、取鍋2の底部3のノズル1を開孔する。このノズル1の開孔により焼結防止材10の芯部20が排出される。芯部20は長さ方向に複数の部材21A~21Dからなるので、各部材21A~21Dが下から順に落下する。焼結したキャップ部30および充填砂Sは溶鋼の重量を支持できなくなり、焼結したキャップ部30および充填砂Sが排出され、ノズル1が開孔して溶鋼が外部へ排出される。
【0041】
上記の構成によれば、取鍋2からの溶鋼排出時に、確実に自然開孔を生じさせることができる。また、芯部20は加熱により焼結しない物質から構成されるため、所定の精錬処理が行われている間に燃え尽きず、溶鋼の重量を支えることができる。さらに、芯部20は下側に向かって外径が大きくなるように形成されているため、ノズル1の開孔により焼結防止材10の芯部20が落下しやすい。また、芯部20は複数の部材21A~21Bから構成されており、部材21A~21B同士を連結している接着手段は精錬処理時の加熱により接着力が弱められており、下側の部材から順次落下する。
【0042】
キャップ部30には複数の突条32が設けられているため、焼結防止材10のキャップ部30の本体部31がノズル1の内面に接触しないように焼結防止材10を配置することができ、ノズル1の内面と本体部31との間の隙間に充填砂Sを充填することができる。キャップ部30の突条32は、焼結防止材10の長さ方向に沿って延在し、焼結防止材10の周方向に沿って複数設けられていること、突条32は焼結防止材10の長さ方向に沿って一定であることのそれぞれから、平面からみてノズル1内で位置が偏らずに焼結防止材10を配置することができる。さらに、突条32間の距離L33をノズル1の内径L1と略同じかわずかに短く設定することで、突条32の端部がノズル1の内面に当接するか、当接せずともノズル1の内面に近い位置となり、平面からみて焼結防止材10がノズル1の中央部に位置する。また、キャップ部30は充填砂Sに含まれる耐火材料と同じ成分を有するため、精錬処理時の加熱により充填砂Sとともにキャップ部30の上壁30bの耐火材料が焼結して溶鋼の重量を支持することができ、精錬処理時に溶鋼のノズル1内への進入を防ぐことができる。
【0043】
また、焼結防止材10をキャップ部30を備えずに芯部20で構成すると、充填砂Sと芯部20の外周面20aとは直接接触し、精錬処理時の加熱により焼結した充填砂Sが芯部20の外周面20aに食い込み、ノズル1を開孔したときに芯部20がスムーズに落下せず、溶鋼の重量を支えてしまう場合がある。しかし、本実施形態においてはキャップ部30を備え、充填砂Sとともにキャップ部30の上壁30bの耐火材料が焼結して溶鋼の重量を支持しているので、精錬処理時に溶鋼がノズル1内へ進入せず、ノズル1内では、キャップ部30の耐火材料は焼結しない。このため、芯部20の外周面20aに食い込まず、また芯部20には剥離剤が塗布されているため、ノズル1を開孔したときに芯部20がスムーズに落下する。
【0044】
また、取鍋2を繰り返し使用するうち、ノズル1の内径L1が拡大する場合がある。このような場合であっても焼結防止材10をノズル1内の中心に配置できるように、外周壁30aの厚みL31が異なるキャップ部30を複数用意し、ノズル1の内径L1に合わせて芯部20に取り付けてもよい。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。また、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。また、例えば「端部」のように「…部」の表現が用いられている場合がある。例えば、「端部」とは、「端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【符号の説明】
【0046】
1 ノズル
2 取鍋
3 取鍋の底部
4 スライドプレート
4a 第1プレート
4b 第2プレート
10 焼結防止材
20 芯部
30 キャップ部
31 本体部
32 突条
S 充填砂
P 中心点