(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012084
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】サトウキビ濃縮ジュース
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20250117BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20250117BHJP
A23B 70/00 20250101ALI20250117BHJP
C13B 10/00 20110101ALN20250117BHJP
【FI】
A23L2/38 C
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L2/42
A23L2/00 N
C13B10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114650
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】509256780
【氏名又は名称】長興実業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 強
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC09
4B117LC14
4B117LC15
4B117LE10
4B117LG24
4B117LK04
4B117LK24
4B117LP01
4B117LP02
4B117LP06
4B117LP07
4B117LP11
4B117LP13
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】サトウキビ特有の風味を保持し、雑味や濁りのないサトウキビ濃縮ジュースを提供することであり、保管・輸送中も変質せず、コストのかからない製品を提供することである。
【解決手段】サトウキビの搾汁液に対し、少なくとも、炭酸飽充と酵素処理をしてなるサトウキビ濃縮ジュースであって、
Brix値が30%以上70%以下であり、かつ、ICUMSA色価が200以上800以下であるサトウキビ濃縮ジュースであり、また、該サトウキビ濃縮ジュースを、殺菌し、バッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装してなるサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サトウキビの搾汁液に対し、少なくとも、炭酸飽充と酵素処理をしてなるサトウキビ濃縮ジュースであって、
Brix値が30%以上70%以下であり、かつ、ICUMSA色価が200以上800以下であるサトウキビ濃縮ジュース。
【請求項2】
前記酵素処理に使用する酵素がペクチナーゼを含有する酵素である請求項1に記載のサトウキビ濃縮ジュース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のサトウキビ濃縮ジュースを、殺菌し、バッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装してなるものであることを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品。
【請求項4】
少なくとも以下の工程(1)、(2)及び(3)を全て行うことによって、ICUMSA色価を200以上800以下に調整することを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースの製造方法。
(1)サトウキビを原料として搾汁して搾汁液を得る搾汁工程
(2)工程(1)で得た搾汁液を炭酸飽充する炭酸飽充工程
(3)工程(2)で得た炭酸飽充後の搾汁液を酵素処理する酵素処理工程
【請求項5】
更に、以下の工程(4)を行うことによっても、ICUMSA色価200以上800以下に調整する請求項4に記載のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法。
(4)工程(3)で得た酵素処理後の搾汁液を活性炭処理する活性炭処理工程
【請求項6】
更に、以下の工程(5)を行うことによって、Brix値を30%以上70%以下に調整する請求項4に記載のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法。
(5)工程(3)で得た酵素処理後の搾汁液を減圧濃縮する濃縮工程
【請求項7】
更に、以下の工程(5)を行うことによって、Brix値を30%以上70%以下に調整する請求項5に記載のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法。
(5)工程(4)で得た活性炭処理後の搾汁液を減圧濃縮する濃縮工程
【請求項8】
前記搾汁液に対してイオン交換樹脂による処理工程を行わない請求項4ないし請求項7に記載のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法。
【請求項9】
請求項4ないし請求項7に記載のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法を使用して得たサトウキビ濃縮ジュースを、殺菌し、バッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装することを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の製造方法。
【請求項10】
前記サトウキビ濃縮ジュースを冷凍する冷凍工程を行わない請求項9に記載のサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サトウキビ濃縮ジュースに関し、更に詳しくは、サトウキビの搾汁液に対し、複数の特定の処理を行ってICUMSA色価を特定の範囲にすることで美味しくした、サトウキビ濃縮ジュース、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サトウキビは、ショ糖、ブドウ糖、果糖等の甘みのある糖類を含み、それらの含有率は、約12質量%~約17質量%である。また、サトウキビには、黒糖風味があり、更に、それ以外にも未知の独特の風味が存在している可能性がある。
【0003】
サトウキビには、人体に必要な他の物質も多く含んでいる。例えば、カルシウム、リン、鉄等のミネラル類;アスパラギン酸、グルタミン酸等の多種多様のアミノ酸類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC等のビタミン類;クエン酸等の有機酸;等が含まれている。
更に、サトウキビには、サトウキビ独特の風味を醸し出している物質(群)が存在する可能性がある。
【0004】
サトウキビを利用した技術としては、当然に、砂糖(ショ糖)の単離方法や精製方法がある。
それ以外の技術としては、サトウキビ又はその搾汁液の醗酵方法とそれに続く蒸留方法又は加工方法や、酒若しくはエタノールの製造方法に関するものが殆どであり、サトウキビ由来の、濃縮液、ジュース、シロップ等の液体の製造方法や、それらの旨味の創出・現出方法等に関する技術・発明は少ない。
【0005】
サトウキビの搾汁液であって、醗酵しない又はエタノールを生成させない技術として、例えば、特許文献1には、サトウキビの搾汁残渣からセルロースを取り除いて得た緑液から、糖を結晶化させて取り除き、その残液をスプレードライして、得られた粉末にアスコルビン酸を補充する、サトウキビを原料とした強壮食品の製造方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ショ糖等の糖類を結晶化させて除いていることに加え、製造されるものは粉末であり、しかも外部からアスコルビン酸を補充しているので、製造されるものは、サトウキビ本来の風味(味と匂い)を有するものではなかった。
【0007】
特許文献2には、サトウキビ搾汁液ともろみ液とを混和することによってpHを低下させ、サトウキビ搾汁液の腐敗を抑制し保存性を高める方法が記載されており、更に、そこにクエン酸や焼酎を含有させ混和することによって、腐敗を更に抑制し保存性を更に高めることができるとしている。
【0008】
しかしながら、特許文献2では、外部からもろみ液を加えており、更にクエン酸や焼酎を加えており、技術(発明)の目的も、美味しい液を作ることではなく、サトウキビ搾汁液の腐敗を抑制するものであった。
【0009】
特許文献3には、サトウキビジュースに、豆類抽出液、麦類抽出液、又は、それらの両方、である抽出液を添加し、その反応液の上澄み液を得る、澄明化サトウキビジュースの製造方法が記載されている。
【0010】
しかしながら、特許文献3では、外部から豆類抽出液や麦類抽出液を加えており、技術(発明)の目的も、美味しい液を作ることではなく、糖以外の成分を効率よく除去することである。
すなわち、特許文献3に記載の技術は、サトウキビ独特の風味の原因物質(群)を、むしろ除去するものであり、サトウキビの(未知の)独特の風味を得ようとするものではなかった。
【0011】
サトウキビは、搾汁等の加工をしても、そこに含有されている栄養成分や旨味成分は破壊され難いので、食品・飲料の原料としては好適である。
【0012】
また、サトウキビの搾汁液の風味として、ショ糖を分離した後の黒糖の風味は知られているが、それ以外のサトウキビ特有の(本来の)風味は知られていなかった。
【0013】
また、一般に搾汁液の保管方法や移送方法としては、風味の低下、液の着色防止のために、「液の凍結」が主流であった。
【0014】
甘味を有する飲料・食品への要求は、ますます高くなってきており、かかる公知技術では、甘味の質、独特の風味、嗜好性等に関しては、全く不十分であり、更なる改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭58-116650号公報
【特許文献2】特開2003-289833号公報
【特許文献3】国際公開第2019/167371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、サトウキビ特有の風味を保持し、雑味や濁りのないサトウキビ濃縮ジュースを提供することにあり、保管・輸送中も着色も変質もせず、保管・輸送コストのかからない製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、サトウキビの搾汁液に対し、特定の処理を施してICUMSA色価を200以上800以下に調整することによって、サトウキビ特有の風味を保持し若しくは現出し、雑味や濁りがない液が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、サトウキビの搾汁液に対し、少なくとも、炭酸飽充と酵素処理をしてなるサトウキビ濃縮ジュースであって、
Brix値が30%以上70%以下であり、かつ、ICUMSA色価が200以上800以下であるサトウキビ濃縮ジュースを提供するものである。
【0019】
また、本発明は、前記酵素処理に使用する酵素がペクチナーゼを含有する酵素である前記のサトウキビ濃縮ジュースを提供するものである。
【0020】
また、本発明は、前記のサトウキビ濃縮ジュースを、殺菌し、バッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装してなるものであることを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、少なくとも以下の工程(1)、(2)及び(3)を全て行うことによって、ICUMSA色価を200以上800以下に調整することを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースの製造方法を提供するものである。
(1)サトウキビを原料として搾汁して搾汁液を得る搾汁工程
(2)工程(1)で得た搾汁液を炭酸飽充する炭酸飽充工程
(3)工程(2)で得た炭酸飽充後の搾汁液を酵素処理する酵素処理工程
【0022】
また、本発明は、更に、以下の工程(5)を行うことによって、Brix値を30%以上70%以下に調整する前記のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法を提供するものである。
(5)工程(3)で得た酵素処理後の搾汁液を減圧濃縮する濃縮工程
【0023】
また、本発明は、前記搾汁液に対してイオン交換樹脂による処理工程を行わない前記のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法を提供するものである。
【0024】
また、本発明は、前記のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法を使用して得たサトウキビ濃縮ジュースを、殺菌し、バッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装することを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の製造方法を提供するものである。
【0025】
また、本発明は、前記サトウキビ濃縮ジュースを冷凍する冷凍工程を行わない前記のサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、前記問題点や課題を解決し、サトウキビの搾汁液に対し、炭酸飽充と酵素処理と言った特定の処理(の組み合わせ)を施してICUMSA色価を200以上800以下に調整することによって、サトウキビ特有の風味を保持することができ、若しくは、新たにサトウキビ特有の風味を現出・実現・知覚させることができ、しかも、雑味や濁りがないサトウキビ濃縮ジュースを獲得することができる。
以下、味と匂いを総合して「風味」と略記する。
【0027】
ICUMSA色価は、水溶液の性質ではなく、該水溶液における溶質の性質であり、該溶質10質量%の水溶液を、420nmの波長で、1cmの光路長で測定したときの吸光度として定義されており、本発明でもそのように定義する。
該溶質とは、ショ糖等の糖類を含めて、「サトウキビ濃縮ジュース」中の全ての水溶性物質のことを言う。
なお、実際の測定方法としては、例えば、該溶質1質量%の水溶液を用いて測定したときの上記吸光度を10倍して、該溶質のICUMSA色価としてもよいし、該溶質0.01質量%の水溶液を用いて測定したときの上記吸光度を1000倍して、該溶質のICUMSA色価としてもよい。
【0028】
本発明では、処理工程の種類及びそれぞれの処理の強さを調整することで、サトウキビ濃縮ジュース中の溶質のICUMSA色価を200以上800以下に調整すると、意外にも、「サトウキビ特有の風味(味と匂い)を実現できる」等と言った前記効果が得られた。
もちろん、ICUMSA色価の大小によって、サトウキビ濃縮ジュースの着色度合は変わるが、本発明では、サトウキビ濃縮ジュースの色自体は重要ではない、本発明では、「ICUMSA色価」と言うパラメーターを、前記した本発明の効果、すなわち「雑味がなくサトウキビ特有の風味」が得られるか否かのバロメーター(指標)として用いている。
【0029】
ICUMSA色価が200以上800以下になるように、炭酸飽充や酵素処理等の処理を行うことで、前記した本発明の効果、すなわち、雑味がなくサトウキビ特有の美味しい風味を有するサトウキビ濃縮ジュースが得られる。なお、ICUMSA色価は、上記した通り、サトウキビ濃縮ジュースの物性ではなく、そこに溶解されている溶質全体自体の物性である。
【0030】
ICUMSA色価が小さ過ぎると、サトウキビ特有の風味が弱くなり、逆に大き過ぎると、雑味が強くなる。また、濁りがあったり色が濃くなったりする傾向にある。
ここで、上記「サトウキビ特有の風味」とは、炭酸飽充と酵素処理をしてICUMSA色価を200に調整したときの「Brix値が65%のサトウキビ濃縮ジュースの風味」であり、上記「雑味」とは、該「サトウキビ特有の風味」と甘さ以外の風味のことを言い、黒糖の風味に含まれている(黒糖の風味のうちの)不味い風味に近いものである。
【0031】
上記「サトウキビ特有の風味」は、白糖に比べて黒糖の美味い風味が付いてはいるが、黒糖の風味とも異なり、新規な風味である。
【0032】
本発明によれば、効率的、連続的、大規模生産等を行うことができ、すなわち、本発明は工業化に適しており、良好な経済的利益をあげられる。製造されたサトウキビ濃縮ジュースは、透明で甘みが豊富で、サトウキビ自体の栄養素と風味を維持している。
【0033】
本発明のサトウキビ濃縮ジュースは、殺菌し、バッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装して「サトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品」として販売・譲渡等することが好ましい。
梨、林檎、桃等の殆どの果物の搾汁液(ジュース)は、搾汁した後に即座に冷凍しないと、短時間で褐色に着色する。従って、搾汁した工場内等で直ぐに冷凍しなければならない場合がある。
【0034】
本発明の「炭酸飽充と酵素処理をしてなるICUMSA色価が200以上800以下であるサトウキビ濃縮ジュース」は、製造後に即座に冷凍しなくても、また、輸送や保存中の長期間に亘って冷凍しなくても、着色していかない。
そのため、常温でのバッグ・イン・ボックス製品として、保存、輸送、販売、譲渡等が可能となる。
【0035】
バッグ・イン・ボックス製品とすることで、冷凍製品とすることに比べて、大幅なコスト削減が可能となった。生産地で冷凍する必要がなくなったため、冷凍車で輸送する必要がなくなったためや、冷凍庫で保管する必要がなくなったためである。
本発明のサトウキビ濃縮ジュースを、特定の方法でバッグ・イン・ボックス包装すれば、形状的に移送や持ち運びが簡便になると共に、常温流通が可能となり、食品や飲料製品への応用がより好適となる。
【0036】
本発明のサトウキビ濃縮ジュースは、砂糖の代替、黒糖の代替、砂糖や黒糖以外の甘味料の代替等に用いられることは勿論、新たな「サトウキビ特有の風味」があるので、新規な甘味料として使用され、飲食品や料理等において顕著な優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の製造フローであって、本発明の「サトウキビ濃縮ジュースの製造工程」、「サトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の製造工程」における、それぞれの必須工程を示した製造フローの図である。
【
図2】本発明のサトウキビ濃縮ジュースの製造工程、及び、そのバッグ・イン・ボックス製品の製造工程の一例を示した製造フロー図である。
【
図3】本発明のサトウキビ濃縮ジュースの製造工程、及び、そのバッグ・イン・ボックス製品の製造工程の一例を示した製造フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、サトウキビの搾汁液に対し、少なくとも、炭酸飽充と酵素処理をしてなるサトウキビ濃縮ジュースであって、
Brix値が30%以上70%以下であり、かつ、ICUMSA色価が200以上800以下であるサトウキビ濃縮ジュースである。
【0039】
また、本発明は、少なくとも以下の工程(1)、(2)及び(3)を全て行うことによって、ICUMSA色価を200以上800以下に調整することを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースの製造方法でもある。
(1)サトウキビを原料として搾汁して搾汁液を得る搾汁工程
(2)工程(1)で得た搾汁液を炭酸飽充する炭酸飽充工程
(3)工程(2)で得た炭酸飽充後の搾汁液を酵素処理する酵素処理工程
【0040】
以下、「本発明のサトウキビ濃縮ジュース」の製造方法について、その処理工程(方法)順に説明するが、そこには、本発明における必須要件の処理と、行った方が好ましい処理と、行ってもよい処理と、濾過工程等の本発明にとっての必須要件ではないが当たり前の処理が含まれている。
また、
図1に、本発明のサトウキビ濃縮ジュースの製造における必須工程を示した製造フローを示し、
図2及び
図3に、本発明のサトウキビ濃縮ジュースの好ましい製造工程と各製造工程での数値条件等の一例の製造フローを示す。
【0041】
以下に記載された「濾過」や「遠心分離」は、省略してもよい場合(箇所・段階)は、省略でき、また、以下に記載されていない箇所(段階)に、「濾過」や「遠心分離」等を挿入することもでき、また、新たに、例えば、放置(静置)、清澄、加温・冷却、pH調整、濃度調整(希釈・濃縮)、調合等の汎用処理を挿入することもできる。ただ、下記する工程を踏むことが特に好ましい。
また、下記する各工程は、その順番を交換することもできる。ただし、下記する順番で各工程を行うことが、本発明の効果を得るために特に好ましい。
【0042】
[サトウキビ]
原料であるサトウキビの品種や産地は、特に限定はなく、何れのものも用いられ得る。精製して砂糖を得るための汎用の品種・産地品も好適に用いられ得る。搾汁の対象となるサトウキビの部位も砂糖を得るための部位と同様である。
【0043】
<粉砕工程>
サトウキビの粉砕は、その要否、粉砕方法、粉砕サイズ等、特に限定はないが、搾汁が機械的に行い易くなる、搾汁の効率が上がり含有成分を取り出し易くなる等の点から行うことが好ましい(
図3)。
【0044】
<(1)搾汁工程>
サトウキビ又はサトウキビの粉砕物は、搾汁工程に供される。本発明において、搾汁は必須である。
「ジュース」とは「搾汁液」のことを言うので、本発明の「サトウキビ濃縮ジュース」は、「サトウキビ搾汁濃縮液」と読み換えることもできる。
搾汁機、搾汁方法は、公知のものが使用され得て、通常の砂糖を得るためのものと同様のものも使用され得る(
図1~3)。
【0045】
<濾過>
搾汁に次いで行う濾過は、本発明の「サトウキビ濃縮ジュース」の製造における必須要件ではないが、搾汁後の液には、バガス(Bagasse)、ゴミ等の不溶の不要物が存在するので、それを除去するために行う(
図2、
図3)。
【0046】
<(2)炭酸飽充工程>
本発明において、炭酸飽充は必須である。
「炭酸飽充」とは、上記搾汁後の液と、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)の水溶液の混合溶液中に、気体の二酸化炭素(CO
2)を吹き込んで、該混合水溶液中に生成する炭酸カルシウム(CaCO
3)粉末の表面に外搾汁液中の不要成分(不純物)を吸着させて除去する方法である(
図1~3)。
【0047】
水酸化カルシウムの水に対する溶解度は低いので、該「水酸化カルシウムの水溶液」は飽和水溶液であることが好ましく、該「水酸化カルシウムの水溶液」中には、固体の水酸化カルシウム粉末又は粒子を分散(懸濁)させておいて、炭酸カルシウム粉末となって系外に出た水酸化カルシウムを補充できるようになっていることが特に好ましい。
上記「水酸化カルシウム粉末又は粒子が分散された懸濁液である水酸化カルシウム飽和水溶液」として、所謂「石灰乳」を用いることが好ましい(
図3)。
【0048】
炭酸飽充の時間、温度、炭酸飽充における、水酸化カルシウムや石灰乳の使用量(添加量)、二酸化炭素の吹き込み量(速度)等の炭酸飽充の条件は、最終のサトウキビ濃縮ジュースのICUMSA色価が200以上800以下になるように決める。該条件は、特に限定はないが、常法の範囲内で決めることが好ましい。
【0049】
上記炭酸飽充と後記する酵素処理の両方を行うことによってICUMSA色価を200以上800以下に調整したサトウキビ濃縮ジュースは、濁りがなく、雑味がなく、サトウキビ特有の美味しい風味を有する。どちらか一方だけで、ICUMSA色価を200以上800以下に調整したサトウキビ濃縮ジュースは、濁りがあったり、雑味があったり、サトウキビ特有の美味しい風味を有しなかったり、又は、ICUMSA色価を200以上800以下に調整し難かったりする場合がある。
【0050】
<濾過>
炭酸飽充を行うと、外搾汁液中の不要成分(不純物)が吸着した炭酸カルシウム粉末等が析出・沈殿するので、それらを濾過することが好ましい(
図2、
図3)。
濾過のレベルは、特に限定はないが、70~200メッシュで行うことが好ましく、100~150メッシュで行うことが特に好ましい(
図2)。
【0051】
<(3)酵素処理工程>
上記液は、次いで酵素処理を行う(
図1~3)。本発明において、酵素処理は必須である。
該酵素処理に使用する酵素としては、ペクチナーゼを含有する酵素であることが好ましい。該「ペクチナーゼ」には、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ等があり、それらは好ましく用いられる。
【0052】
酵素処理には、ペクチナーゼ以外の他の酵素を用いてもよく、ペクチナーゼと共に他の酵素を併用して用いることも好ましい。該「他の酵素」としては、セルラーゼ等が挙げられる。
【0053】
該酵素処理の条件は、最終のサトウキビ濃縮ジュースのICUMSA色価が200以上800以下になり、また、サトウキビ濃縮ジュースの濁りがなくなるように決められる。
【0054】
酵素濃度としては、限定はないが、50ppm~400ppmが好ましく、100ppm~300ppmがより好ましく、150ppm~200ppmが特に好ましい。
酵素処理の温度も、上記性能がでれば特に限定はないが、20℃~80℃が好ましく、30℃~70℃がより好ましく、40℃~60℃が特に好ましい。
酵素処理の時間も、上記性能がでれば特に限定はないが、10分~3時間が好ましく、20分~2時間がより好ましく、40分~1時間が特に好ましい。
【0055】
前記した炭酸飽充と該酵素処理の両方を行うことによってICUMSA色価を200以上800以下に調整したサトウキビ濃縮ジュースは、濁りがなく、雑味がなく、サトウキビ特有の美味しい風味を有する。どちらか一方だけで、ICUMSA色価を200以上800以下に調整したサトウキビ濃縮ジュースは、濁りがあったり、雑味があったり、又は、サトウキビ特有の美味しい風味を有しなかったりする。
【0056】
<濾過>
酵素処理を行うと、液中に酵素等が存在するので、それらを濾過することが好ましい(
図2、
図3)。
濾過のレベルは、特に限定はないが、80~450メッシュで行うことが好ましく、150~350メッシュで行うことが特に好ましい(
図2)。
【0057】
<(4)活性炭処理工程>
上記液は、色を薄くして(着色を取って)見栄えを良くするために、活性炭処理を行うことも好ましい(
図2)。使用する活性炭は、特に限定はないが、粉末状の活性炭であることが好ましい。
活性炭の使用量は、特に限定はないが、0.003%~0.6%が好ましく、0.01%~0.2%が特に好ましい。ここで、「%の数値」は、100×[活性炭質量(g)]/[搾汁液(cm
3)]である。
【0058】
活性炭処理をすることによってもICUMSA色価を調整できるが(小さくできるが)、活性炭処理のみで、又は、活性炭処理と炭酸飽充のみで、又は、活性炭処理と酵素処理のみで調整した場合、ICUMSA色価が200以上800以下になったとしても、本発明の前記した効果が得られない。
活性炭処理を行うと、色は薄くなるが、サトウキビ特有の風味が薄れる傾向にある。
【0059】
<濾過>
次いで、不要物が吸着した活性炭を濾過する。濾過レベルとしては、該活性炭が濾過できれば特に限定はない。
【0060】
<遠心分離>
上記濾過に替えて、又は、上記濾過と併用して、「不要物が吸着した活性炭」を遠心分離することも好ましい。
該遠心分離の回転数は、容量や時間にも依存し、特に限定はないが、2000rpm以上が好ましく、4000rpm以上がより好ましく、6000rpm~20000rpmが特に好ましい。
【0061】
<(5)濃縮工程>
工程(3)で得た酵素処理後の搾汁液、又は、工程(3)で得た酵素処理後の搾汁液を工程(4)で活性炭処理した搾汁液は、要すれば減圧濃縮して、Brix値を30%以上70%以下に調整することが好ましい。なお、上記した通り、途中に濾過や遠心分離を挟むことが好ましい。Brix値が丁度上記好適値の範囲に入っていれば、濃縮する必要はないが(濃縮工程はなくてもよいが)、濃縮する(濃縮工程を行う)ことは好ましい。
サトウキビのジュース(すなわち搾汁液)は、「(5)濃縮工程」以外の工程で必然的に濃縮されるので、本発明において、「(5)濃縮工程」は必須工程ではなく、「(5)濃縮工程」を行わない場合も、本発明を「サトウキビ濃縮ジュース」と表現する。
【0062】
濃縮方法は、特に限定はないが、濃縮時の温度は、30℃~90℃が好ましく、45℃~70℃が特に好ましい。濃縮時の圧力は、特に限定はないが、0.003MPa~0.099MPaが好ましく、0.010MPa~0.098MPaが特に好ましい。
【0063】
[Brix値]
「Brix値」は、Brix屈折計で液の屈折率を測定して、「ショ糖1gを含有するショ糖水溶液100gの屈折率」を「Brix値1%」として、ショ糖以外の物質が溶解されている場合であっても、ショ糖に換算して得られる値、と定義されている。従って、本発明でも、そのように定義する。なお、ショ糖以外の物質とは、「ショ糖以外の糖類」に限定されず、「ショ糖以外の水溶性物質」の全てである。
【0064】
本発明のサトウキビ濃縮ジュースは、Brix値が30%以上70%以下であり、言い換えると、Brix値が30%以上70%以下になるように、溶質の濃度を調整して製造する。
より好ましくはBrix値が35%以上68%以下であり、特に好ましくはBrix値が40%以上67%以下であり、最も好ましくはBrix値が50%以上65%以下である。
【0065】
Brix値が低過ぎると、輸送する際の体積が大きくなり過ぎて輸送コスト的に不利になる場合があり、Brix値が高過ぎると、粘度が高くなり過ぎて、製造段階でも使用段階でも、取り扱いが難しくなる等の場合がある。
【0066】
[ICUMSA色価]
本発明のサトウキビ濃縮ジュースは、ICUMSA色価が200以上800以下であることが必須である。
少なくとも、炭酸飽充と酵素処理をして、サトウキビ濃縮ジュースの溶質のICUMSA色価を200以上800以下に調整したものは、そうでないものに比べて、サトウキビ特有の風味を保持することができ、若しくは、新たにサトウキビ特有の風味を現出・実現・知覚させることができ、しかも、雑味や濁りがないサトウキビ濃縮ジュースを提供することができる。
【0067】
本発明のサトウキビ濃縮ジュースの着色度は、風味や雑味が同一ならば、低いに越したことはないが、本発明の特徴は低い着色度にある訳ではない。
該ICUMSA色価は、本発明のサトウキビ濃縮ジュースの性能・特徴(雑味のなさ、特有の風味、濁りのなさ等)を示す優れたバロメーター(優れた指標)として用いられている。
本発明によって、意外にも、ICUMSA色価が、上記性能を明確に示す優れたバロメーター(優れた指標)となることが見出された。
すなわち、本発明のサトウキビ濃縮ジュースの上記優れた性能は、ICUMSA色価が200以上800以下であるときに好適に実現される。
【0068】
ICUMSA色価は、炭酸飽充の程度、酵素処理の種類や程度、活性炭処理の有無や程度、イオン交換樹脂処理等によって調整できる。
炭酸飽充の程度、及び、酵素処理の種類や程度によって調整することが、更には、「炭酸飽充の程度、及び、酵素処理の種類や程度」のみによって調整することが、サトウキビ特有の風味を保持することができ、雑味や濁りがないサトウキビ濃縮ジュースを提供できる点から好ましい。
【0069】
ICUMSA色価は、200以上800以下であることが必須であるが、220以上770以下が好ましく、250以上750以下がより好ましく、270以上730以下が更に好ましく、300以上700以下が特に好ましい。
ICUMSA色価が小さ過ぎると、サトウキビ特有の風味がなくなる又は減少し、ICUMSA色価が大き過ぎると、雑味や濁りが生じる。なお、本発明の効果とは直接関係ないが、また当然ではあるが、ICUMSA色価が大き過ぎると、着色が強過ぎて使用勝手が悪くなる場合がある。
【0070】
<参考:イオン交換樹脂処理>
イオン交換樹脂による処理は、色味を取ったり、不純物を取ったりする際の常套手段であり、ショ糖の精製の際は汎用されているが、本発明のサトウキビ濃縮ジュースを製造する際には、特に限定はされないが、イオン交換樹脂による処理は行わないことが好ましい。
イオン交換樹脂に通すと、雑味はなくなるが、同時に、サトウキビ特有の風味を保持することができずに、本発明の特長であるサトウキビ特有の風味が消失してしまう場合がある。
【0071】
<バッグ・イン・ボックス製品、及び、その製造方法>
本発明は、上記したサトウキビ濃縮ジュースを、殺菌し、バッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装してなるものであることを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品でもある。
また、本発明は、上記した本発明のサトウキビ濃縮ジュースの製造方法を使用して得たサトウキビ濃縮ジュースを、殺菌し、バッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装することを特徴とするサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の製造方法でもある。
【0072】
<<殺菌>>
上記殺菌の方法としては、特に限定はされないが、UHT殺菌法、UHT滅菌法、超高温殺菌法、超高温滅菌法と言われている方法が好ましい。バッチ法(回分法)でも連続法でもよい。
【0073】
処理温度は、限定はされないが、110℃~160℃が好ましく、115℃~150℃がより好ましく、120℃~140℃が特に好ましい。
処理時間は、限定はされないが、1秒~40秒が好ましく、3秒~30秒がより好ましく、5秒~20秒が特に好ましい。
【0074】
前記した通り、通常のジュースは、搾汁した直後に冷凍しないと直ぐに着色するところ、本発明のサトウキビ濃縮ジュースの場合、冷凍せずに殺菌処理だけで、変色もなければ、変質も起こらないので、保存や輸送コストが著しく削減される。
従って、本発明の特に好ましい態様は、上記特性を生かすために、本発明のサトウキビ濃縮ジュースを冷凍する冷凍工程を行わない、前記のサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の製造方法である。
【0075】
<<無菌充填>>
本発明のサトウキビ濃縮ジュースは、それをバッグに無菌充填し、バッグ・イン・ボックス包装して、バッグ・イン・ボックス製品とすることが好ましい。
また、本発明は、サトウキビ濃縮ジュースを冷凍する冷凍工程を行わない、サトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の製造方法でもある。
冷凍しないので、取り扱い易いバッグ・イン・ボックス製品として流通させることが可能となった。
【実施例0076】
以下、本発明を実施例と比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの具体的実施例に限定されるものではない。
【0077】
実施例1
<粉砕、搾汁、濾過>
既存の製糖工場で搾汁されたサトウキビ搾汁液を、100~150メッシュの篩及び/又はネットで濾過して、バガス(Bagasse)、ゴミ、泥等を除去した。
【0078】
<炭酸飽充>
上記で濾過したサトウキビ搾汁液100質量部に、汎用の石灰乳5~8質量部を入れて、60~65℃で10~20分間、二酸化炭素を吹き込み続けた。
不要物が吸着した炭酸カルシウムが沈降したので、その上澄み液を採取した。
【0079】
<酵素処理>
上記で澄清された上澄み液を50~60℃に加熱し、ペクチナーゼを150~200ppm加えて、60分間酵素処理を行い、サトウキビ搾汁液中の不純物を酵素(ペクチナーゼ)にて小分子物質に分解し、該液の濁りを改善し、製品貯蔵中の沈殿の形成をも防止した。
次いで、250メッシュで濾過を行った。
【0080】
<活性炭処理>
上記で酵素処理したサトウキビ搾汁液に、0.10%[活性炭w(g)/搾汁液v(cm3)]の粉末状活性炭を加えて、撹拌機を用いて混ぜ合わせた。
【0081】
次いで、活性炭処理されたサトウキビ搾汁液を、遠心分離機にポンプ送液し、上澄み液を取り出した。使用した遠心分離機は、水平螺旋遠心分離機、又は、バタフライ遠心分離機を採用し、回転速度は、6000r/min(rpm)であった。
【0082】
<濃縮>
上記処理で得たサトウキビ搾汁液を、真空濃縮し、Brix値60%のサトウキビ濃縮ジュースを得た。
上記真空濃縮(低温真空濃縮)は、温度45℃~70℃、真空度0.090~0.098MPaの範囲で行った。
【0083】
<ICUMSA色価の測定>
上記濃縮工程で得たサトウキビ濃縮ジュースのICUMSA色価を、ICUMSA色価の定義に従って測定した。
測定値を表1に記載する。
【0084】
<殺菌>
上記濃縮工程で得たサトウキビ濃縮ジュースを、120℃~130℃で、15秒間~20秒間、常法に従ってUHT殺菌(UHT滅菌)した。
【0085】
<バッグに無菌充填>
上記で得た殺菌後のサトウキビ濃縮ジュースを、冷凍せずに液体のまま、内容積20Lのバッグに無菌充填し、次いで、箱(ボックス)に包装して、サトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品を得た。
【0086】
実施例2
実施例1において、活性炭処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
次いで、得られたサトウキビ濃縮ジュースを、実施例1と同様に、殺菌、バッグに無菌充填、箱(ボックス)に包装して、サトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品を得た。
【0087】
実施例3
実施例1において、酵素処理の時間を30分間に短縮した以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
次いで、得られたサトウキビ濃縮ジュースを、実施例1と同様に、殺菌、バッグに無菌充填、箱(ボックス)に包装して、サトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品を得た。
【0088】
比較例1
実施例1において、酵素処理と活性炭処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0089】
比較例2
実施例1において、炭酸飽充の時間を1/3にした以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0090】
比較例3
実施例1において、酵素処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0091】
比較例4
実施例1において、炭酸飽充と活性炭処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0092】
比較例5
実施例1において、炭酸飽充を行わない以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0093】
比較例6
実施例1において、酵素処理の時間を30分間に短縮し、活性炭処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
すなわち、実施例3において、活性炭処理を行わない以外は、実施例3と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0094】
比較例7
実施例1において、炭酸飽充の時間を1/3とし、活性炭処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
すなわち、比較例2において、酵素処理を実施例1と同様に行った以外は、比較例2と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0095】
比較例8
実施例1において、炭酸飽充、酵素処理、活性炭処理の条件を強くして、ICUMSA色価を150にした。
【0096】
比較例9
実施例1において、酵素処理をして濾過を行った液を、活性炭処理を行わず、糖液脱色専用のイオン交換樹脂(ブランド名:BESTION、型番:SS841)のカラムに、常法に従って通過させた以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0097】
比較例10
実施例1において、活性炭処理をして、遠心分離機にかけて上澄み液を取り出し、該上澄み液を、糖液脱色専用のイオン交換樹脂(ブランド名:BESTION、型番:SS841)のカラムに、常法に従って通過させた以外は、実施例1と同様にしてサトウキビ濃縮ジュースを得た。
【0098】
<サトウキビ濃縮ジュースの評価結果>
上記実施例と比較例で得られたサトウキビ濃縮ジュースのICUMSA色価と評価を以下の表1にまとめた。
【0099】
表1の製造工程における、「○」は、前記した実施例1の条件と同様の条件で行ったことを示し、「△~○」は、上記した実施例又は比較例の条件で行ったことを示し、「×」は処理を行わなかったことを示す。
表1の評価結果における、「○」は優れていることを示し、「×」は劣っていることを示す。
【0100】
【0101】
炭酸飽充、及び、酵素処理を行って、ICUMSA色価を200以上800以下にしたサトウキビ濃縮ジュースは、雑味がなく、濁りもなく、サトウキビ特有の風味があった。
【0102】
一方、ICUMSA色価が200以上800以下であっても、炭酸飽充を行っていないサトウキビ濃縮ジュースは、上記何れかが劣っていた(比較例5)。
また、ICUMSA色価が200以上800以下であっても、酵素処理を行っていないサトウキビ濃縮ジュースは、上記何れかが劣っていた(比較例1、3)。
【0103】
炭酸飽充、及び、酵素処理を行っていて、活性炭処理及び/又はイオン交換樹脂処理を行ってICUMSA色価を200未満としてしまったサトウキビ濃縮ジュースは、サトウキビ特有の風味がなくなってしまった(比較例8、9、10)。
【0104】
また、炭酸飽充、及び、酵素処理を行っていても、条件が弱く、ICUMSA色価が800より大きいサトウキビ濃縮ジュースは雑味があった(比較例6、7)。
更に、炭酸飽充、又は、酵素処理を行わず、ICUMSA色価が800より大きいサトウキビ濃縮ジュースは雑味があると共に濁りもあった(比較例2、4)。
【0105】
<サトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品の評価結果>
上記実施例1~3で得られたサトウキビ濃縮ジュースのバッグ・イン・ボックス製品を、20~25℃で、10か月間、保管・静置したが、全く着色しなかった。
更に、サトウキビ特有の風味が変化せず良好に維持され、雑味や不味さが出ることもなく、濁りや沈殿物も生じなかった。
一方、殺菌(滅菌)処理しなかったものは、上記条件で保管・静置したところ、変色と変質が起こった。
【0106】
また、上記実施例1~3で得られたサトウキビ濃縮ジュースを冷凍パッケージにして保管したものは、冷凍にコストがかかった。更に、冷凍車で輸送する必要があるため、輸送のコストがかかる。
本発明のサトウキビ濃縮ジュースは、新規の風味である「サトウキビ特有の風味」があり、雑味も濁りもないので、それを含有させることによって、今までにない美味しい飲食品を与えるので、広く様々な飲食品の製造業等に利用されるものである。