(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012099
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物およびその硬化方法、並びに実装基板および三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20250117BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20250117BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20250117BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250117BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20250117BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20250117BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20250117BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20250117BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250117BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20250117BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C09D201/00
C08F2/50
C08G59/68
C09D7/61
C09D163/00
C09D4/02
B29C64/112
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y70/10
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114673
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩之
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
4J036
4J038
4M109
【Fターム(参考)】
4F213AA39
4F213AA43
4F213AA44
4F213AB17
4F213AP12
4F213AQ01
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL25
4F213WL32
4J011PA13
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA13
4J011SA01
4J011SA61
4J011SA84
4J011TA06
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA06
4J036AD08
4J036AJ12
4J036FA05
4J036GA03
4J036HA02
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA08
4J038DB061
4J038DB261
4J038DB262
4J038FA111
4J038HA446
4J038KA04
4J038KA08
4J038PA06
4J038PA17
4J038PB09
4M109AA01
4M109CA26
4M109EA03
4M109EA15
4M109EB02
4M109EB12
4M109EB13
(57)【要約】
【課題】光照射により硬化させることが可能であり、十分な機械的特性を有する硬化物を与える光硬化性樹脂組成物およびその硬化方法を提供する。
【解決手段】(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、を具備し、前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化する、光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された状態で塗布装置のノズルから吐出され、被着体に塗布されるとともに光が照射される光硬化性樹脂組成物であって、
反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、
前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、
前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、
前記無機充填剤の含有率が、75質量%以上である、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填剤は、シリカ粒子である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリカ粒子の含有率が、80質量%以上である、請求項2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記反応性化合物は、エポキシ樹脂、オキセタン化合物またはアクリル系モノマーからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光照射により線膨張係数が25ppm/K以下の硬化物を生成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、
(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、
(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、
を具備し、
前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化する、光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【請求項7】
前記光硬化性樹脂組成物に含まれる前記無機充填剤の含有率が、40質量%以上である、請求項6に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【請求項8】
前記加熱工程は、前記光硬化性樹脂組成物を50℃以上100℃以下に加熱する工程である、請求項6に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【請求項9】
前記加熱工程において、前記光硬化性樹脂組成物は、前記塗布装置が具備する液溜部において加熱される、請求項6~8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【請求項10】
前記塗布装置は、ジェットディスペンサであり、
前記光硬化性樹脂組成物は、前記被着体にスポット状またはライン状に吐出される、請求項6~8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【請求項11】
前記光硬化性樹脂組成物が前記ノズルから吐出されてから30秒以内に、前記光照射工程において、前記光硬化性樹脂組成物の塗膜に光が照射される、請求項6~8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【請求項12】
前記被着体に塗布された前記光硬化性樹脂組成物の一層の塗膜の厚みが、2mm以下である、請求項6~8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【請求項13】
前記被着体に塗布され、硬化された前記光硬化性樹脂組成物を、新たな被着体として、前記加熱工程と、前記塗布工程と、前記光照射工程と、を繰り返す、請求項6~8のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
【請求項14】
(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、
(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、
(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、
を具備し、
前記被着体は、基板と、前記基板に実装された電子部品と、を含み、
前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、
前記光硬化性樹脂組成物の硬化物により、前記基板と前記電子部品とが接合される、実装基板の製造方法。
【請求項15】
(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、
(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、
(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、
を具備し、
前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、
前記被着体に塗布され、硬化された前記光硬化性樹脂組成物を、新たな被着体として、前記加熱工程と、前記塗布工程と、前記光照射工程と、を繰り返す、三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物およびその硬化方法、並びに実装基板および三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、「半導体素子へ向けて光線照射硬化型樹脂を滴下した後、この光線照射硬化型樹脂に光線を照射して硬化させ半導体素子に樹脂をコートすることを特徴とする半導体素子樹脂コート方法」を提案している。
【0003】
特許文献2は、「カチオン型紫外線硬化性組成物に紫外線を照射する工程と、紫外線が照射されたカチオン型紫外線硬化性組成物を型に注入する工程とを具備することを特徴とする三次元物体の製造方法」を提案している。
【0004】
特許文献3は、「テーブル1上に載置したリードフレーム2に、上方のディスペンサーから樹脂材料4を各ピン5の所定箇所の表面と各ピン間6に塗付し、それを硬化処理して樹脂性のピン保持部7を形成するようにした、リードフレームへのピン保持部の形成方法において、上記ディスペンサー下端のニードル部8から、弾力性と不電導性を備え低不純物で熱膨張の小さい紫外線硬化型の樹脂材料4を、単位時間当たりに精度良く吐出して、リードフレーム1へ塗付するとともに、その塗付された樹脂材料4に、上記ニードル部8と一体に下方へ向けて設けた紫外線照射ライト9から紫外線3を照射して、樹脂材料4をリードフレーム2へ塗付しながら同時に硬化処理を行うようにしたことを特徴とする、リードフレームへのピン保持部の形成方法」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-175261号公報
【特許文献2】特開2001-96630号公報
【特許文献3】特開平6-196620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、例えば基板上の電子部品を保護するために基板に実装された電子部品に塗布され、硬化される樹脂組成物は、相当量の無機充填剤を含む熱硬化性樹脂組成物が使用されることが一般的である。
【0007】
しかし、熱硬化性樹脂組成物は、加熱のために多量のエネルギーを消費する課題を有している。そのため、近年はカーボンニュートラルの観点から、熱硬化性樹脂組成物ではなく、環境適合性の高い光硬化性樹脂組成物を様々な用途に適用しようとする試みがなされている。
【0008】
光硬化性樹脂組成物は、その中に含まれる光重合開始剤に十分な光量の光照射を行うため、光硬化性樹脂組成物自身が十分な光透過性を有する必要がある。
【0009】
一方、光硬化性樹脂組成物の硬化物に十分な機械的特性を付与するとともに、硬化物の線膨張係数を制御して被着体からの剥離を抑制するには、光硬化性樹脂組成物に相当量の無機充填剤を含ませることが望ましい。しかし、相当量の無機充填剤を含む光硬化性樹脂組成物は、光透過性が低くなってしまう。そのため、光硬化性樹脂組成物の厚さが分厚いもしくは、高さ方向に長く横方向に短い、アスペクト比の高い補強構造物の形成が望まれる場合、底部まで十分に硬化することができなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、加熱された状態で塗布装置のノズルから吐出され、被着体に塗布されるとともに光が照射される光硬化性樹脂組成物であって、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、前記無機充填剤の含有率が、75質量%以上である、光硬化性樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明の別の側面は、(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、を具備し、前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化する、光硬化性樹脂組成物の硬化方法に関する。
【0012】
本発明の更に別の側面は、(i)光硬化性樹脂組成物を加熱して粘度を低下させる加熱工程と、(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、を具備し、前記被着体は、基板と、前記基板に実装された電子部品と、を含み、前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物により、前記基板と前記電子部品とが接合される、実装基板の製造方法に関する。
【0013】
本発明の更に別の側面は、(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、を具備し、前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、前記被着体に塗布され、硬化された前記光硬化性樹脂組成物を、新たな被着体として、前記加熱工程と、前記塗布工程と、前記光照射工程と、を繰り返す、三次元造形物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光照射により硬化させることが可能であり、十分な機械的特性を有する硬化物を与える光硬化性樹脂組成物およびその硬化方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかを任意に組み合わせることができる。
【0016】
本開示は、以下に関する。
[技術1]
反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、
前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、
前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、
前記無機充填剤の含有率が、75質量%以上である、光硬化性樹脂組成物。
[技術2]
加熱された状態で塗布装置のノズルから吐出され、被着体に塗布されるとともに光が照射される、技術1に記載の光硬化性樹脂組成物。
[技術3]
前記反応性化合物は、エポキシ樹脂、オキセタン化合物またはアクリル系モノマーからなる群より選択される少なくとも1種である、技術1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
[技術4]
前記無機充填剤は、シリカ粒子である、技術1~3のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物。
[技術5]
前記無機充填剤もしくはシリカ粒子の含有率が、80質量%以上である、技術1~4のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物。
[技術6]
前記光照射により線膨張係数が25ppm/K以下の硬化物を生成する、技術1~5のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物。
【0017】
[技術7]
(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、
(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、
(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、
を具備し、
前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化する、光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
[技術8]
前記光硬化性樹脂組成物に含まれる前記無機充填剤の含有率が、40質量%以上である、技術7に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
[技術9]
前記加熱工程は、前記光硬化性樹脂組成物を50℃以上100℃以下に加熱する工程である、技術7または8に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
[技術10]
前記加熱工程において、前記光硬化性樹脂組成物は、前記塗布装置が具備する液溜部において加熱される、技術7~9のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
[技術11]
前記塗布装置は、ジェットディスペンサであり、
前記光硬化性樹脂組成物は、前記被着体にスポット状またはライン状に吐出される、技術7~10のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
[技術12]
前記光硬化性樹脂組成物が前記ノズルから吐出されてから30秒以内に、前記光照射工程において、前記光硬化性樹脂組成物の塗膜に光が照射される、技術7~11のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
[技術13]
前記被着体に塗布された前記光硬化性樹脂組成物の一層の塗膜の厚みが、2mm以下である、技術7~12のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
[技術14]
前記被着体に塗布され、硬化された前記光硬化性樹脂組成物を、新たな被着体として、前記加熱工程と、前記塗布工程と、前記光照射工程と、を繰り返す、技術7~13のいずれか1つに記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
[技術15]
(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、
(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、
(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、
を具備し、
前記被着体は、基板と、前記基板に実装された電子部品と、を含み、
前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、
前記光硬化性樹脂組成物の硬化物により、前記基板と前記電子部品とが接合される、実装基板の製造方法。
[技術16]
(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、
(ii)加熱された前記光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、
(iii)加熱され、かつノズルから吐出された前記光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、
を具備し、
前記光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、前記反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、
前記被着体に塗布され、硬化された前記光硬化性樹脂組成物を、新たな被着体として、前記加熱工程と、前記塗布工程と、前記光照射工程と、を繰り返す、三次元造形物の製造方法。
【0018】
(光硬化性樹脂組成物)
本開示に係る光硬化性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(A)」とも称する。)は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含む。
【0019】
反応性化合物は、重合性を有すればよく、例えば、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有する。反応性化合物は、エポキシ樹脂またはアクリル系モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。エポキシ樹脂の種類は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有する限り、特に限定されない。アクリル系モノマーの種類も、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有する限り、特に限定されない。アクリル系モノマーは、重合性を有する限り、アクリル系オリゴマーであってもよい。
【0020】
反応性化合物として用い得るエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、脂環式エポキシ樹脂、有機カルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシなどを用いることができる。ビスフェノール型エポキシとしては、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールAD型エポキシ、水添ビスフェノールA型エポキシなどが含まれる。また、ビスフェノール型エポキシには、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADなどのビスフェノール類のC2-3アルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテルも含まれる。エポキシ樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
反応性化合物として用い得るアクリル系モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。なお、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを、(メタ)アクリル酸エステルと総称する。アクリル系モノマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
反応性化合物としてオキセタン化合物を用いてもよい。反応性化合物として用い得るオキセタン化合物としては、特に限定されないが、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン及びジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどを用いることができる。
【0023】
光重合開始剤は、光照射により活性化して反応性化合物の重合を進行させる化合物であればよく、例えば、UV光照射により活性化する化合物である。反応性化合物がラジカル重合性を有する場合、光重合開始剤は光照射によりラジカルを生成するラジカル重合開始剤であればよい。反応性化合物がカチオン重合性を有する場合、光重合開始剤は光照射によりカチオンを生成するカチオン重合開始剤であえばよい。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系開始剤、アシルホスフィンオキサイド系開始剤が挙げられる。カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩系開始剤、ヨードニウム塩系開始剤等が挙げられる。ただし、光重合開始剤の種類は特に限定されない。
【0025】
樹脂組成物(A)は、例えば、加熱された状態で塗布装置のノズルから吐出され、被着体に塗布された後にUV光などの光が照射される用途で使用することができる。加熱された状態でノズルから吐出することで、反応性化合物と光重合開始剤に予め熱エネルギーを付与することができ、UV光により活性化された光重合開始剤を開始点として、熱エネルギーにより迅速に重合反応が進行する。
【0026】
以上の理由により、加熱された状態の樹脂組成物(A)は、加熱されていない状態の樹脂組成物(A)よりも少ない光量の光照射により十分に硬化し得る。よって、樹脂組成物(A)は、多くの無機充填剤を含んでもよい。一般に、光硬化性樹脂組成物における無機充填剤の含有率は、光硬化性樹脂組成物自身に十分な光透過性を持たせるため、多くても30質量%程度までが限界と考えられている。一方、樹脂組成物(A)における無機充填剤の含有率は、例えば40質量%以上であってもよい。なお、無機充填剤の含有率は、40質量%未満であってもよいが、硬化物の強度や線膨張係数の制御の観点から、40質量%以上、更には50質量%以上もしくは60質量%以上での使用が望ましい場合が多い。
【0027】
無機充填剤が、シリカ粒子を含む場合、樹脂組成物(A)におけるシリカ粒子の含有率は75質量%以上でもよく、80質量%以上でもよい。シリカ粒子の種類は、特に限定されないが、球状シリカ粒子が好ましい。
【0028】
上記のような含有率で無機充填剤を含む樹脂組成物(A)の硬化物の線膨張係数は、例えば、25ppm/K以下であり、20ppm/K以下にもなり得る。
【0029】
無機充填剤は、シリカ粒子に限られない。例えば、アルミナ、窒化ホウ素、タルクなどの様々な無機充填剤を使用し得る。無機充填剤の含有率は、無機充填剤の種類に応じて随時決定される。
【0030】
(光硬化性樹脂組成物の硬化方法)
本開示に係る光硬化性樹脂組成物(樹脂組成物(A))の硬化方法(以下、「硬化方法(A)」とも称する。)は、加熱工程(i)と、塗布工程(ii)と、光照射工程(iii)を含む。
【0031】
加熱工程(i)は、樹脂組成物(A)を加熱する工程である。加熱工程(i)は、樹脂組成物(A)に重合反応に必要なエネルギーの一部を予め付与する工程であり、樹脂組成物(A)の粘度を低下させる工程でもある。
【0032】
樹脂組成物(A)を加熱する温度は、樹脂組成物(A)を劣化させず、かつ樹脂組成物(A)の粘度を十分に低下できる温度であればよい。加熱工程(i)は、例えば、樹脂組成物(A)を50℃以上100℃以下に加熱する工程であることが望ましい。
【0033】
加熱のタイミングは、限定されないが、吐出される直前が好ましい。加熱装置により塗布装置のノズルもしくはディスペンスノズルを加熱する方法が一般的であるが、必要に応じてシリンジに入った樹脂組成物(A)の全体を加熱してもよい。なお、吐出と同時もしくはそれ以降に樹脂組成物(A)を加熱してもよく、ステージヒーターにより基板全体を加熱したり、局所的に温度制御された熱風スポットヒーターを用いたりしてもよい。
【0034】
塗布工程(ii)は、加熱された樹脂組成物(A)を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する工程である。塗布装置は、特に限定されず、被着体も特に限定されない。
【0035】
塗布装置は、例えば、ニードルディスペンサや、ジェットディスペンサでもよい。中でもジェットディスペンサは、被着体に非接触で樹脂組成物(A)を塗布できるため、塗布のタクトが短く、効率的な塗布ができる点で好ましい。ジェットディスペンサによれば、樹脂組成物(A)は、被着体にスポット状またはライン状に吐出される。ライン状の塗膜は、スポット状の塗膜が連続することにより形成される。
【0036】
光照射工程(iii)は、加熱され、かつノズルから吐出された樹脂組成物(A)にUV光などの光を照射する工程である。光照射工程(iii)は、光重合開始剤を活性化させて、ラジカルまたはカチオンを生成させる工程である。
【0037】
樹脂組成物(A)に光照射されるタイミングは、特に限定されない。ただし、加熱された樹脂が熱エネルギーを保持している状態を利用する観点から、樹脂組成物(A)がノズルから吐出されてから30秒以内(好ましくは5秒以内)に光照射することが好ましい。光照射は、ノズルと一体の光照射装置により行ってもよい。光照射装置は、ノズルを操作する移動ヘッドに取り付けられ、ノズルの移動と一緒に移動するように構成されてもよい。移動ヘッドは、水平XY方向(二次元方向)またはXYZ方向(三次元方向)に移動可能なように構成されていてもよい。
【0038】
被着体に塗布された光硬化性樹脂組成物の一層の塗膜の厚みは、例えば2mm以下が好ましい。この場合、予め付与された熱と光照射のエネルギーにより十分に硬化が進行しやすい。光硬化性樹脂組成物の一層の塗膜の厚みは、1mm以下でもよく、0.8mm以下でもよい。
【0039】
被着体に塗布され、硬化された樹脂組成物(A)を、新たな被着体として、加熱工程(i)と、塗布工程(ii)と、光照射工程(iii)と、を繰り返してもよい。一層の塗膜の厚みが2mm以下であっても、複数の塗膜を積層することにより、任意の厚みの塗膜や、三次元の樹脂成形体を形成することができる。なお、加熱工程(i)は、間欠的なプロセスとして繰り返される必要はなく、継続的なプロセスであってもよい。すなわち、塗布工程(ii)と光照射工程(iii)とが繰り返される期間中、所定期間内に塗布工程(ii)に供される所定量の樹脂組成物(A)に対して加熱工程(i)が継続的に行われてもよい。
【0040】
被着体の一例は、基板と、基板に実装された電子部品とを含み得る。例えば、基板に実装された電子部品を、より強固に固定するために、樹脂組成物(A)を接着剤として使用してもよい。その場合、「光硬化性樹脂組成物の硬化方法」は、「実装基板の製造方法」と言い換えることができる。
【0041】
すなわち、光硬化性樹脂組成物の硬化方法は、別観点において、(i)光硬化性樹脂組成物を加熱する加熱工程と、(ii)加熱された光硬化性樹脂組成物を塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布する塗布工程と、(iii)加熱され、かつノズルから吐出された光硬化性樹脂組成物に光を照射する光照射工程と、を具備し、被着体は、基板と、基板に実装された電子部品と、を含み、光硬化性樹脂組成物は、反応性化合物と、光重合開始剤と、無機充填剤と、を含み、反応性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性を有し、前記光重合開始剤は、光照射により活性化し、光硬化性樹脂組成物の硬化物により、基板と電子部品とが接合される、実装基板の製造方法であり得る。
【0042】
また、被着体に塗布され、硬化された樹脂組成物(A)を、新たな被着体として、加熱工程(i)と塗布工程(ii)と光照射工程(iii)とを繰り返す場合、「光硬化性樹脂組成物の硬化方法」は、「三次元造形物の製造方法」と言い換えることができる。無機充填剤の含有率が高い樹脂組成物(A)を光照射により硬化させることが可能である場合、十分な機械的特性を有する形状安定性に優れた三次元造形物を得ることが可能である。換言すれば、光重合性樹脂組成物を用いて様々な形状の三次元造形物を製造することが可能である。
【0043】
なお、必要により被着体を加熱してもよい。被着体を加熱することにより、光硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進させることができる。
【0044】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0045】
<光硬化性樹脂組成物A1~A3およびB1~B2>
表1に示す質量の配合比で樹脂成分を混合し、さらに樹脂成分に無機充填剤を加えて混錬し、樹脂組成物A1~A3およびB1、B2を調製し、露光量3000mJ/cm2、照度100mW/cm2の条件でUV照射機により露光して硬化させた。
【0046】
(配合)
ビスフェノールF型エポキシ:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂
脂環式エポキシ:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート
光反応性重合開始剤:トリアリルスルホニウムアニオン塩
シリカ:溶融球状シリカ粒子
【0047】
硬化させた樹脂組成物の熱収縮応力性能を評価した。ここでは、線膨張係数をTMA(Thermomechanical Analysis、熱機械分析)により測定した。線膨張係数が25ppm/K未満であれば熱収縮応力性能が極めて良好であるといえる。
【0048】
【0049】
表1に示す結果の通り、無機充填剤を75質量%以上含有する樹脂組成物A1~A3の樹脂組成物では、熱収縮応力性能が良好な光硬化性樹脂組成物とすることができた。一方、無機充填剤を70質量%含むB1~B2の樹脂組成物では、熱収縮応力性能が劣っていた。以上のことから、優れた熱収縮応力性能を達成するには、光硬化性樹脂組成物に無機充填剤を75質量%以上含有させることが望ましいといえる。
【0050】
<実施例1~5および比較例1~3>
表1に示した樹脂組成物A1を、プリント基板上に塗布し、下記の塗布露光方法A~Cで硬化させ、有効な形状を形成することができるかどうかを、アスペクト比性能で評価した。
【0051】
(塗布露光方法A)
ノズルおよび液溜部を80℃に加熱したジェットディスペンサを用い、樹脂組成物A1を0.5mm口径のノズルから吐出した。ノズルはX方向に30mm/秒の速度で水平移動させながら走査した。吐出された樹脂組成物A1は5秒以内に、露光量3000mJ/cm2、照度100mW/cm2の条件でUV照射機により露光して硬化させた。高アスペクト比の形状を形成させるため、塗布と露光をそれぞれ1回で1組として、場合により3組の塗布と露光により、樹脂組成物A1を硬化させた。
【0052】
(塗布露光方法B)
ノズルおよび液溜部を80℃に加熱したジェットディスペンサを用い、樹脂組成物A1を0.5mm口径のノズルから吐出した。ノズルはX方向に50mm/秒の速度で水平移動させながら走査した。吐出された樹脂組成物A1は5秒以内に、露光量3000mJ/cm2、照度100mW/cm2の条件でUV照射機により露光して硬化させた。高アスペクト比の形状を形成させるため、塗布と露光をそれぞれ1回で1組として、場合により3組もしくは4組の塗布と露光により、樹脂組成物A1を硬化した。
【0053】
(塗布露光方法C)
25℃の状態で樹脂組成物A1を0.5mm口径のノズルから吐出した。吐出された樹脂組成物A1は、場合により5回重ねて塗布し、塗布から60秒後に、露光量3000mJ/cm2、照度100mW/cm2の条件でUV照射機により露光して硬化させた。
【0054】
基板上に塗布硬化された樹脂組成物A1の硬化物の高さと幅を測長し、(高さ/幅=アスペクト比率)として算出した。アスペクト比性能は下記条件により良好(〇)、不足(×)を判定した。
〇:アスペクト比率0.30未満、×:アスペクト比率0.30以上
【0055】
【0056】
表2に示す結果の通り、塗布露光方法AおよびBを用いた場合、アスペクト比は0.44以上の値となった。塗布回数が3回以上の場合、アスペクト比は最大で2.73となり、塗布回数を増やす、もしくは塗布速度を制御することにより、自由な形状を形成させることができた。一方、塗布露光方法Cを用いた場合、アスペクト比の最大値は0.25となり、アスペクト比の高い自由な形状を形成することは困難であった。
【0057】
以上のことから、無機充填剤を75質量%以上含有する光硬化性樹脂組成物を用いる場合でも、光硬化性樹脂組成物を加熱された状態で塗布装置のノズルから吐出して被着体に塗布し、その後、光照射するプロセスを採用することで、機械的特性や形状安定性に優れた硬化物を形成できるようになることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示に係る光硬化性樹脂組成物は様々な用途に適用することが可能である。