(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025121111
(43)【公開日】2025-08-19
(54)【発明の名称】マイクロ文字の印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20250812BHJP
B42D 25/30 20140101ALI20250812BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/30 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016341
(22)【出願日】2024-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 美都子
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB02
2C005HB10
2C005HB13
2C005JB40
2H113AA01
2H113BA01
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA39
2H113CA40
2H113CA42
2H113FA24
2H113FA35
2H113FA43
(57)【要約】
【課題】良好な品質のマイクロ文字を安価に印刷することが可能な印刷方法を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、印刷方法は、元データからマイクロ文字を指定する第1工程と、第1工程により指定されマイクロ文字の文字幅を調整する第2工程と、第2工程において文字幅を調整された版を用いて、印刷により、マイクロ文字を印刷する第3工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元データからマイクロ文字を指定する第1工程と、
前記第1工程により指定されたマイクロ文字の文字幅を調整する第2工程と、
前記第2工程において前記文字幅を調整された版を用いて、印刷により前記マイクロ文字を印刷する第3工程とを含む、印刷方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記マイクロ文字を、墨文字、ベタ、および白抜きのうちいずれかで印刷する、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記マイクロ文字が、墨文字または単色ベタの場合、前記印刷されたマイクロ文字に、滲みによる潰れが確認されたのであれば、前記第2工程では、前記版の前記文字幅を、10%以上、30%以下、低下させる、請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記第1工程において、前記マイクロ文字が、白抜きで印刷された場合、前記印刷されたマイクロ文字に、滲みによる潰れが確認されたのであれば、前記第2工程では、前記版の文字幅を、10%以上、30%以下、増加させる、請求項2に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記第3工程で印刷されるマイクロ文字は、高さ100μm以下、線幅40μm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記第3工程で印刷されるマイクロ文字は、セリフ体を除いた字体である、請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
オフセット印刷で使用されるインキは、オフセット印刷用のインキである、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項8】
印刷で使用されるインキは、紫外蛍光インキ、赤外蛍光インキ、赤外透過インキ、赤外吸収インキのうち何れかを含むセキュリティインキである、請求項1に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、セキュリティラベル、冊子体、証券印刷物等の偽造防止技術を施した印刷物に設けられたマイクロ文字の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、偽造防止ラベル等のセキュリティラベル、パスポート等の冊子体、株券、債券、小切手、商品券、宝くじ、定期券等の証券印刷物など、偽造防止技術を施した印刷物には、偽造、変造、改ざん等を防止するための有効な手段として、マイクロ文字とも呼ばれる100μm以下の微小な文字が印刷されている。
【0003】
この種のマイクロ文字は、一般的な家庭用プリンターでは再現できない大きさのため、マイクロ文字が施された印刷物を家庭用プリンターでコピーすると、部分的に文字が潰れて印刷される。したがって、この手法で作られた印刷物は、拡大観察をすることで、容易に偽造品と判断することができる。
【0004】
マイクロ文字を用いた真贋判定技術の一種として、特許文献1には、マイクロ文字を施した印刷物の画像を機械で読み込み、読込画像のうちマイクロ文字部を識別し、正しいサイズでマイクロ文字が印刷されているかを確認することにより真贋判定を行う技術が開示されている。
【0005】
また、マイクロ文字の真贋判定を正確に行うためには、滲みやカスレ等のない良品質のマイクロ文字の印刷が求められるが、これに関して、特許文献2には、印刷に対する滲み対策として、基材に受容層を設ける技術が開示されている。
【0006】
さらに、用紙への滲み改善のために、コーティングを行う技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2023-073847号公報
【特許文献2】特開2004-276323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、用紙への滲み改善のためのコーティングを行う場合、印刷費用が高くなる。また、コーティングを行うことで、紙に浸透する偽造防止インキを使用することが難しくなり、証券印刷物への偽造防止方法に制限がかかり、セキュリティ性が低下する恐れもある。
【0009】
これに対処するために、インキに含まれる顔料を増やし、インキの粘度を高めて滲み改善を目指す策も考えられる。しかしながら、顔料が多くなると用紙密着性が落ち、カスレやベタ部のムラが発生する可能性がある。これらは、マイクロ文字の品質を低下させる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、良品質のマイクロ文字を安価に印刷することが可能な印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0012】
第1の態様の発明は、元データからマイクロ文字を指定する第1工程と、第1工程により指定されたマイクロ文字の文字幅を調整する第2工程と、第2工程において文字幅を調整された版を用いて、印刷によりマイクロ文字を印刷する第3工程とを含む。
【0013】
第2の態様の発明は、第1工程において、マイクロ文字を、墨文字、ベタ、および白抜きのうちいずれかで印刷する、第1の態様の印刷方法である。
【0014】
第3の態様の発明は、第1工程において、マイクロ文字が、墨文字または単色ベタの場合、印刷されたマイクロ文字に、滲みによる潰れが確認されたのであれば、第2工程では、版の文字幅を、10%以上、30%以下、低下させる、第2の態様の印刷方法である。
【0015】
第4の態様の発明は、第1工程において、マイクロ文字が、白抜きで印刷された場合、印刷されたマイクロ文字に、滲みによる潰れが確認されたのであれば、第2工程では、版の文字幅を、10%以上、30%以下、増加させる、第2の態様の印刷方法である。
【0016】
第5の態様の発明は、第3工程で印刷されるマイクロ文字は、高さ100μm以下、線幅40μm以上である、第1から3のいずれかの態様の印刷方法である。
【0017】
第6の態様の発明は、第3工程で印刷されるマイクロ文字は、セリフ体を除いた字体である、第5の態様の印刷方法である。
【0018】
第7の態様の発明は、オフセット印刷で使用されるインキは、オフセット印刷用のインキである、第1の態様の印刷方法である。
【0019】
第8の態様の発明は、印刷で使用されるインキは、紫外蛍光インキ、赤外蛍光インキ、赤外透過インキ、赤外吸収インキのうち何れかを含むセキュリティインキである、第1の態様の印刷方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良好な品質のマイクロ文字を安価に印刷することが可能な印刷方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る印刷方法の流れを示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る印刷方法によって印刷された印刷物の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、線幅の調整をせずにオフセット印刷した調色ベタ(墨ベタ)で印刷されたマイクロ文字の一例を示す拡大平面図である。
【
図4】
図4は、線幅の調整をせずに白抜きでオフセット印刷されたマイクロ文字の一例を示す拡大平面図である。
【
図5】
図5は、第2工程において調整された版によって、滲みがない場合に印刷されるマイクロ文字(黒ベタ)の一例を示す拡大平面図である。
【
図6】
図6は、第2工程において調整された版によって、滲みがない場合に印刷されるマイクロ文字(白抜き)の一例を示す拡大平面図である。
【
図7】
図7は、想定された文字幅を有するマイクロ文字(黒ベタ)の一例を示す拡大平面図である。
【
図8】
図8は、想定された文字幅を有するマイクロ文字(白抜き)の一例を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明や、重複した説明は適宜省略する。
【0023】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る印刷方法の流れを示すフローチャートである。
【0025】
すなわち、本実施形態に係る印刷方法は、元データから、文字幅のマイクロ文字を指定する第1工程と、指定されたマイクロ文字が印刷の原画データでは墨またはベタ文字では線幅を狭くし、白抜きでは線幅を広くする、版の文字幅を調整する第2工程(S2)と、第2工程において文字幅を調整された版を用いて、印刷によりマイクロ文字を、上質紙、コート紙、合成紙等の用紙に印刷する第3工程(S3)とを含む。つまり、本実施形態に係る印刷方法は、オフセット印刷でマイクロ文字を印刷する場合、滲みを想定し、文字幅を調整して製版した版を用いて印刷することで滲みを改善する。なお、用紙には透かし加工、繊維のすき込み、ホログラム転写等、他のセキュリティ要素を付与しても良い。
【0026】
第1工程(S1)では、印刷する墨文字、調色ベタ、および白抜きのうちいずれかのマイクロ文字を指定するる。このマイクロ文字を印字するインキのタックは、インコメーターで400rpm、温度は30℃、1分測定時に半径7~12mmの範囲のものを、フローは、スプレッドメーターで、温度は25℃、1分測定時に半径14~20mmの範囲のものを使用する。
【0027】
例えば、タック、フローが上記条件より低い条件においてオフセット印刷すると、インキの粘度が高くなりすぎてしまい、墨ベタ、調色ベタのマイクロ文字にカスレが生じ、品質が低下する可能性がある。また凹版印刷やインクジェットでもタック、フローを調整することで、同様に印刷することができる。
【0028】
したがって、原画の指定の幅通りに印刷した場合、マイクロ文字が、墨文字またはベタで印刷された場合、印刷されたマイクロ文字に、滲みによる潰れが確認される場合がある。この場合、第2工程(S2)では、版の文字の線幅を、10%以上、30%以下、低下させる。つまり登録されているフォントの輪郭線から10%以上、30%以下の範囲で内側とした輪郭線のフォント(字体)を製版のデータとして用いる。印刷では、原画として例えばベクトルデータとして受け取り、それを製版で用いるラスターデータにRIPと呼ばれるソフトで変換できる。このRIPの処理の際に、文字を原画の通りに変換することもできるが、線幅を太くしたり狭くしたりすることができる。
【0029】
一方、白抜きのマイクロ文字を印刷する場合に、ベタ部分にムラやカスレが生じ、印刷品質が低下する可能性がある。タック、フローが後述する条件よりも高い場合、インキの粘度が柔らかくなりすぎてしまい、滲みの度合いが大きくなり、正確な形状のマイクロ文字を印刷できない可能性がある。具体的には、マイクロ文字の角が丸く表現されてしまい、明朝体やゴシック体等の角がある書体のマイクロ文字を使用した場合、角が丸くなり、マイクロ文字の品質が低下する懸念がある。
【0030】
したがって、第1工程(S1)において、白抜きのマイクロ文字が指定された場合、指定されたマイクロ文字に、滲みによる潰れが確認される場合がある。この場合、第2工程(S2)では、版の文字幅を、10%以上、30%以下、増加させる。
【0031】
第3工程(S3)で印刷されるマイクロ文字は、高さ100μm以下、線幅40μm以上である。また、好ましくは、マイクロ文字の字体にはセリフ体の文字を含まない。
【0032】
第3工程(S3)では、印刷がなされるが、この印刷がオフセット印刷の場合、オフセット印刷で使用されるインキは、オフセット印刷用の色インキやメジウムとできる。またオフセット用のインキはUV乾燥インキとできる。また、偽造防止性を高めるために、紫外蛍光インキ、赤外蛍光インキ、赤外透過インキ、赤外吸収インキのうち何れかを含むセキュリティインキを、オフセット印刷に使用することもできる。
【0033】
次に、本実施形態に係る印刷方法によって印刷された印刷物について説明する。
【0034】
図2は、本実施形態に係る印刷方法によって印刷された印刷物の一例を示す平面図である。
【0035】
この印刷物10は、マイクロ文字が印刷された偽造防止用の印刷物である。印刷物10の用紙には上質紙を使用できる。しかしながら、用紙には、上質紙に代えて、コート紙、合成紙等を使用することもできる。また、用紙には透かし加工、繊維のすき込み、ホログラム転写等、他のセキュリティ要素を付与しても良い。
【0036】
印刷物10には、領域M1,M2に印刷されるマイクロ文字の他に、絵柄Aも印刷されている。これら絵柄Aも、オフセット印刷で印刷できる。しかしながら、絵柄Aは、オフセット印刷のみで印刷されることには限定されず、部分的に凹版印刷やスクリーン印刷等を使用するなど、異なる印刷手法を用いて印刷しても良い。
【0037】
印刷に用いる版では、黒文字では、文字の線幅が狭く、白ヌキでは文字の線幅が広いが、この版で印刷された印刷物は、調色ベタと白抜き文字とでは線幅が略等しいものとなる。より具体的にはその線幅の差は±10%以下とでき、より好ましくは、±5%以下が好ましい。このようなマイクロ文字を形成することによって文字を拡大観察した際の視認性が高まる。また、マイクロ文字の線幅を揃えて印字することは、高精度な印刷技術を要することから、偽造が困難であり偽造耐性が高い。
【0038】
特にオフセット印刷は、インキのカスレや滲みをインキの粘度や版の押しつけ圧力等の印刷条件を調整して印刷する必要があり、印刷には技量が必要となり、本物を再現した偽造品を作ることは困難である。またインクジェットでマイクロ文字を印刷する場合、チケット、くじ、クーッポン等で個別の文字列とすることができ、その文字列の規則性から真偽判定を行うことができる。
【0039】
このような規則性のある文字列としては、チケットやくじ毎にユニークな文字列を生成し、この文字列から暗号学的ハッシュ関数で生成されたハッシュ値との対としてもよい。暗号学的ハッシュ関数には対称性暗号と非対称性暗号のいずれかまたは双方を用いることができる。非対称性暗号を用いることで公開鍵による真偽判定を行うことができ、予め公開鍵を検証装置に組み込んでオフラインでの検証が可能とできる。
【0040】
マイクロ文字にはアルファベットを用いることができる。そのほかアラビア数字を用いてもよい。またマイクロ文字とアラビア数字の双方を含んでいてもよい。
【0041】
また、印刷の適正と、視認性の観点から、アルファベット、アラビア数字、またはその双方から構成されたマイクロ文字の文字列としても良い。なお、マイクロ文字は、マイクロテキストともいう。
【0042】
この調色ベタと白抜きは同じ文字列とすることができる。これにより対比がより簡単になる。また調色ベタと白抜きのマイマイク文字は同じ文字サイズで形成してもよい。また異なる文字サイズとしてもよい。同じ文字サイズであれば、印刷は容易となる。異なる文字サイズでは印刷に高い技量が必要となるためより、偽造が困難となる。
【0043】
また、調色ベタと白抜きのそれぞれのマイクロ文字の列で一定の文字サイズとしてもよいし、異なる文字サイズとしてもよい。字体は同じ字体を用いることができ、この場合、違和感を生じにくい。調色ベタと白抜きのマイクロ文字は同じ色で形成してもよいし、異なる色としてもよい。
【0044】
また、調色ベタと白抜きのマイクロ文字は、単色で形成しても混色で形成してもよい。淡色であれば、高精細がマイクロ文字を形成しやすい。混色であれば、版同士の色合わせが必要となるため偽造が困難となる。
【0045】
次に、領域M1,M2に印刷されるマイクロ文字について、下記実施例1~3で説明する。
【0046】
(実施例1)
実施例1では、マイクロ文字を印刷するために、指定された50μmの文字幅のマイクロ文字(「SECURE」)を、タック9.1、フロー16.5のUV乾燥オフセットインキを使用して、上質紙に印刷した。
【0047】
図3は、線幅の調整をせずにオフセット印刷した調色ベタ(墨ベタ)で印刷されたマイクロ文字の一例を示す拡大平面図である。
【0048】
図4は、線幅の調整をせずに白抜きでオフセット印刷されたマイクロ文字の一例を示す拡大平面図である。
【0049】
図5は、第2工程において調整された版によって、滲みがない場合に印刷されるマイクロ文字(黒ベタ)の一例を示す拡大平面図である。
【0050】
図6は、第2工程において調整された版によって、滲みがない場合に印刷されるマイクロ文字(白抜き)の一例を示す拡大平面図である。
【0051】
図7は、想定された文字幅を有するマイクロ文字(黒ベタ)の一例を示す拡大平面図である。
【0052】
図8は、想定された文字幅を有するマイクロ文字(白抜き)の一例を示す拡大平面図である。
【0053】
黒ベタ印刷の場合、
図3に示す通り、滲みによって黒ベタが広がり、想定するよりも太いマイクロ文字(「SECURE」)b1となり、品質の低下が確認された。一方、白抜き印刷の場合、
図4に示す通り、黒ベタが白抜きに滲み入ることによって、想定するよりも細いマイクロ文字(「SECURE」)w1となり、品質の低下が確認された。
【0054】
そこで、第2工程において、版の文字幅を調整した。具体的には、黒ベタのマイクロ文字b1の元データに対しては、文字幅を10μm細くする調整を行った。この版を用いて印刷した場合、滲みがなければ、
図5に示すようなマイクロ文字b2が得られることになる。一方、
図4のような白抜きのマイクロ文字w1を印刷した版に対しては、逆に文字幅を10μm太くする調整を行った。この版を用いて印刷した場合、滲みがなければ、
図6に示すようなマイクロ文字w2が得られることになる。
【0055】
次に、このように文字幅を調整された版を用いて、第3工程において、UV乾燥オフセットインキを使って、オフセット印刷により、マイクロ文字を印刷した。その結果、黒ベタ印刷の場合、
図7に示す通り、想定通り50μmの幅を有する黒ベタ印刷によるマイクロ文字b3を得ることができた。また、白抜き印刷の場合も、
図8に示すように、想定通り50μmの幅を有する白抜き印刷によるマイクロ文字w3を得ることができた。
【0056】
(実施例2)
実施例2では、想定されたマイクロ文字の文字幅のみを変えて、その他は、実施例1と同じ条件で、マイクロ文字を印刷した。実施例1では、想定されたマイクロ文字の文字幅は50μmであったが、実施例2では、150μmとした。
【0057】
実施例2においても、黒ベタ印刷の場合、
図3に示す通り、滲みによって黒ベタが広がり、想定するよりも太いマイクロ文字(「SECURE」)b1となり、品質の低下が確認された。また、白抜き印刷の場合、
図4に示す通り、黒ベタが白抜きに滲み入ることによって、想定するよりも細いマイクロ文字(「SECURE」)w1となり、品質の低下が確認された。
【0058】
これに対して、実施例2では、第2工程において、
図3のような黒ベタのマイクロ文字b1を印刷した版に対しては、文字幅を30μm細くする調整を行った。この版を用いて印刷した場合、滲みがなければ、
図5に示すようなマイクロ文字b2が得られることになる。一方、
図4のような白抜きのマイクロ文字w1を印刷した版に対しては、文字幅を30μm太くする調整を行った。この版を用いて印刷した場合、滲みがなければ、
図6に示すようなマイクロ文字w2が得られることになる。つまり、実施例2は、実施例1よりも文字幅が3倍であるので、調整幅も3倍としている。
【0059】
次に、このように文字幅を調整された版を用いて、第3工程において、UV乾燥オフセットインキを使って、オフセット印刷により、マイクロ文字を印刷した。その結果、黒ベタ印刷の場合、
図7に示す通り、想定通り150μmの幅を有する黒ベタ印刷によるマイクロ文字b3を得ることができた。また、白抜き印刷の場合も、
図8に示すように、想定通り150μmの幅を有する白抜き印刷によるマイクロ文字w3を得ることができた。
【0060】
実施例1と実施例2との結果から分かるように、マイクロ文字の文字幅が異なる場合であっても、同じ割合の調整幅を使って版を調整することによって、同様に良質なマイクロ文字を印刷することができる。
【0061】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同じ種類のインキを用いたが、インキに含まれる顔料比率を変えた条件でマイクロ文字を印刷した。具体的には、実施例1では、タック9.1、フロー16.5のUV乾燥オフセットインキを使用したのに対して、実施例3では、タック6.5、フロー14のUV乾燥オフセットインキを使用して、マイクロ文字を印刷した。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0062】
実施例3においても、黒ベタ印刷の場合、
図3に示す通り、滲みによって黒ベタが広がり、想定するよりも太いマイクロ文字(「SECURE」)b1となり、品質の低下が確認された。また、白抜き印刷の場合、
図4に示す通り、黒ベタが白抜きに滲み入ることによって、想定するよりも細いマイクロ文字(「SECURE」)w1となり、品質の低下が確認された。
【0063】
これに対しても、実施例1と同様に、第2工程において、
図3のような黒ベタのマイクロ文字b1を印刷した版に対しては、文字幅を30μm細くする調整を行い、
図4のような白抜きのマイクロ文字w1を印刷した版に対しては、文字幅を30μm太くする調整を行った。
【0064】
次に、このように文字幅を調整された版を用いて、第3工程において、UV乾燥オフセットインキを使って、オフセット印刷により、マイクロ文字を印刷した。その結果、黒ベタ印刷の場合、
図7に示す通り、想定通り150μmの幅を有する黒ベタ印刷によるマイクロ文字b3を得ることができた。また、白抜き印刷の場合も、
図8に示すように、想定通り150μmの幅を有する白抜き印刷によるマイクロ文字w3を得ることができた。
【0065】
実施例1と実施例3との結果から分かるように、顔料比率を変えたインキを用いてマイクロ文字を印刷した場合であっても、想定するマイクロ文字の文字幅に対して、10%から30%程度の調整を行った版によって印刷することによって、良質なマイクロ文字を印刷することができる。
【0066】
上述したように、本実施形態に係る印刷方法によれば、良品質のマイクロ文字を安価に印刷することが可能となる。
【0067】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0068】
10 印刷物
A 絵柄
M1、M2 領域
b1、b2、b3 マイクロ文字(黒ベタ)
w1、w2、w3 マイクロ文字(白抜き)