(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012113
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】取引システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20250117BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114703
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】594099174
【氏名又は名称】ぷらっとホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友康
(72)【発明者】
【氏名】小河 大将
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敏也
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB21
5L049BB21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一般的な物に関する取引システムを、IoT技術を用いて構築することができる取引システムを提供することを目的とする。
【解決手段】物の取引契約を、ブロックチェーンを利用して保全及び管理し、物の前記取引契約を実行するデータトランザクション部(PTPF200)と、前記物を所有する物所有者アカウント(TO242)と、物所有者が有する物に対して物トークンを発行する発行者アカウント(IS240)と、物の取引をする1又は2以上のステークホルダーアカウントと、を備えた取引システムであって、データトランザクション部は、物の取引を行うため、ステークホルダーアカウント間で、物トークンを用いて前記取引契約を実行する。物トークンは、Semi-fungible Tokenである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物の取引契約を、ブロックチェーンを利用して保全及び管理し、物の前記取引契約を実行するデータトランザクション部と、
前記物を所有する物所有者アカウントと、
前記物所有者が有する前記物に対して物トークンを発行する発行者アカウントと、
前記物の取引をする1又は2以上のステークホルダーアカウントと、を備え、
前記データトランザクション部は、前記物の取引を行うため、前記ステークホルダーアカウント間で、前記物トークンを用いて前記取引契約を実行し、前記物トークンは、Semi-fungible Tokenである、
取引システム。
【請求項2】
前記物トークンは、証券的代替性と、物としての非代替性を、有するトークンである、
請求項1記載の取引システム。
【請求項3】
前記物トークンは、物のアカウントと、Device Token と、Device Asset Tokenと、証券情報と、有するトークンである、
請求項2記載の取引システム。
【請求項4】
前記データトランザクション部は、所定の種類の物についての取引を行うブランドアカウントを備え、
前記ブランドアカウントと前記発行者アカウントとは契約し、前記契約に基づき、前記発行者アカウントは、前記発行した物トークンを前記ブランドアカウントに供給する
請求項1記載の取引システム。
【請求項5】
1個以上の前記ブランドアカウントと、その他のアカウントとのルールを定義したルール界面であるブランドDAO、
をさらに備え、
前記ブランドは、前記ブランドDAOが定義するルールに従って前記発行者アカウントと契約する
請求項4記載の取引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物の取引を行う取引システムに関する。特に、IoT技術を用いつつ、IoTデバイスに直接は関係しない物を取り扱える取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物のインターネットであるIoT(Internet of Things)が広く利用されている。このIoT上のセンサ等で得られたデータは、様々な用途に利用されている。IoTデータを提供する装置をIoTデバイスと呼ぶ。また、このIoTデバイスが発生するデータの取引も活発に行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、IoTデバイスをLPWANで接続して、ポイントを取引するシステムが開示されている。
また、下記特許文献2では、IoTデバイスを利用して金融取引を行うことができる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2021-519471号公報
【特許文献2】特開2022-109163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、IoT技術を利用して、ポイントや金融等の無体物を取引することは、広く提案されている。
しかし、世の中で、およそThings(もの。以下、特に物と記す。)に関する産業システムを構築しようとする場合に、IoTデバイスとは直接関係しない物や人も取り込む必要がある場合が多い。
仮に、当該物にIoTデバイスを付与した場合でも、無関係の参加者や普通の人も取引に参加する場合もあり、市場の広がりともにそのような普通の人も増えていく。また、そもそもIoTとは関係しない物(デバイス、単純な商品)も市場の拡大と共に増大していく。言い換えれば、世の中の物は、そのほとんどがIoTに関係ないデバイス(ただの物、(商品))である。
このような状況に対応できなければ、IoT技術を物の取引システムに応用することは難しい。このような課題に対応するためには、本願発明者は、下記のような工夫が必要であると考えた。
(1)上記のような物に関連している、通貨の関係(関係者、特に投資家や受益者や、途中関与者)を取り扱う必要がある。
(2)また、現実世界の物の数は、膨大(IoTデバイスの数とは比較できないほど膨大)であって、数兆個のスケールを超える物を取り扱う能力を実現することが必用である。
(3)また、産業システム(取引システム)の関係者は多様(例えば、帰属する法域も多種多様である等)であり、それらを矛盾無く取り扱える方法が必用である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、一般的な物に関する取引システムを、IoT技術を用いて構築することができる取引システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(基本原理)
上記課題を解決するために、具体的には、物に関係する、通貨の関係を取り扱う情報を記述したトークン「ThingsToken」(以下、「物トークン」という)を発行する手段を採用している。これによって、物の中にそもそも通貨の関係が記述されているので、通貨のルールを別に参照することがなく、巨大な数の物と利用者に対応することが可能となる。その結果、物を含むブロックチェーンエコノミクスを無理なく現実世界に対応させることが可能となる。
(従来のブロックチェーンとの比較)
従来のブロックチェーンによる取引の管理システムと、本発明の構造とを比較する。
(従来のシステム)
従来は、「物のトークン」と「通貨のトークン、証券のトークン」とは別のトークンとして規定されていた。この結果、物に関する情報と、通貨に関する情報とは別のデータベースとして管理・実行されている。
(本発明のシステム)
本発明では、「物トークン」として、「証券性を入れ込んだトークン」を使用している。
この結果、物に対する参加者の関係をトークンとスマートコントラクトで実行することができる。
【0008】
(実装方法の一例)
ERC-3525(Semi-fungible Token)を活用して、証券性をThingsToken (物トークン)に組み込む、または、ThingsProtocol として別途スマートコントラクトを実装して、ThingsTokenに物としての非代替性と証券的代替性の両方を持たせることができる。そして、各種ステークホルダーをThingsProtocolに参加させることで、Thingsと参加者の多様な契約関係とスケーラビリティを同時に実現することができる。
【0009】
ERC-3525について
ERC-3525は、イーサリアムのトークン規格の一つである。しばしばSFT(Semi-fungible Token)と呼ばれる。NFT(Non-fungible Token)(ERC-721)、FT(Fungible Token)ERC-20等と並んで重要なトークンの一種である。
ERC-3525(SFT)は、FTのように通貨として利用することも、NFTのように識別性を示すユニークIDを持たせたりすることもできる。ERC-3525は、一つのスマートコントラクトで、複数のトークンに対応することができる。また、ERC-3525はトークンの分割・統合を容易にすることができるという特徴を有しており、例えば金融に向いているとされている。本実施形態では、ERC-3525を中心に説明するが、同様の特徴を有するSFT(Semi-fungible Token)であれば利用してよい。また、本特許では、イーサリアムを用いたシステムを主として説明するが、同様の取引が可能なシステムであれば、どのようなシステムを用いてもよい。なお、「ETHEREUM」は登録商標である。
【0010】
(原理図)
本発明の原理図が
図12に示されている。この図に示すように、従来のイーサリアム等のブロックチェーンを利用した取引システムでは、物の表現するトークン10と、証券情報12と、サービス利用者14と、は別個に構成されている。ここで、物の表現するトークン10は、物のアカウントと、DTと、物の情報とを含むものである。DTは、Device Token であり、物の情報とは例えばDAT(Device Asset Token)等である。
また、証券情報12は、証券情報そのものの他に、プログラム、物のアカウント情報、サービス利用者のアカウント情報、等を含むことが好ましい。また、サービス利用者14は、その利用者のアカウントを有している。
このような構成の下では、証券情報12の処理においてボトルネックが発生し、スケールできない場合も想定される。また、利用者14についての多様性も提供することは困難と考えられる。
【0011】
これに対して、本発明の取引システム(
図12)では、物に証券性を組み込んだ物トークン100と、サービス利用者14と、から構成されている。ここで、物の表現するトークン100は、物のアカウントと、DTと、物の情報とを含むものである。DTは、Device Token であり、物の情報とは例えばDAT(Device Asset Token)等である。
また、証券性を組み込まれているので、
図12に示すように、物トークン100には、証券情報120が付加されている。証券情報120は、従来の構成の証券情報12と同様に、証券情報そのものの他に、プログラム、物のアカウント情報、サービス利用者のアカウント情報、等を含むことが好ましい。
このような仕組みによって、ボトルネックが生じることがなく、スケールすることが可能である。また、物に関わる利用に対して、利用者14が直接接触することで多様性も確保することができる。
【0012】
(本発明によるメリット)
1.物も利用者も巨大な数になっても対応することができる。
上記
図12で説明したように、従来の技術では、証券情報を取り扱う為のデータベースが必要となり、物と参加者との関係の管理を別途行う必要があるが、本発明ではその管理が不要となる。その結果、物や利用者が増えても、対応することができる。;
2.物や参加者の多様性が実現できる
上で説明したように、本発明の原理では、物と参加者との関係の管理が不要となる。その結果、物や参加者の多様性を担保できる。
3.参加者が非同期で参加することができる。
上で説明したように、本発明の原理では、物と参加者との関係の管理が不要となる。その結果、参加者が自身の都合に合わせて、非同期で参加することができる。
【0013】
(FTとNFTの説明)
FT(Fungible Token)(例えばERC-20)とNFT(Non-fungible Token)(例えばERC-721)の概念図が
図13に示されている。
FT(Fungible Token)130は、代替性トークンとも呼ばれ、主として、取引システム上の通貨として使用されている。例えばERC-20等である。
NFT(Non-fungible Token)132は、非代替性トークンとも呼ばれ、主としてNFTアイテムとして利用されている。例えば、ERC-721等である。
図13に示すように、FT130は、例えばERC-20が貨幣や銀行券として利用され、ERC1400が証券(例えば、社債、商品券)等として利用される。このように、FTは、価値(金額)140としての特性を持つ。
【0014】
図13に示すように、NFT132は、例えばERC-721やERC-1155等が、NFTアート・アイテムとして利用される。このように、NFT132は、価値(金額)140としての特性に加えて、所有者(アカウント)142のデータも備えている。さらに、NFT132は、アート・アイテム等としてのコンテンツ144も備えている。このコンテンツ144は、テキストデータでもよいし、非テキストデータでもよい。
そして、FTやNFTは、スマートコントラクト134によって結びつけられている。スマートコントラクト134には、契約の内容となる条件146が規定されている。
【0015】
(具体的構成)
具体的には、本発明は、次のような構成を採用する。
【0016】
本発明に係る取引システム(例えば、後述するPTPF200と、PTPF200上のアカウントである、IS240と、TO242と、SH500等、を含むシステム)は、物の取引契約を、ブロックチェーンを利用して保全及び管理し、物の前記取引契約を実行するデータトランザクション部(例えば、後述するPTPF200)と、前記物を所有する物所有者アカウント(例えば、後述するTO242)と、前記物所有者が有する前記物に対して物トークン(例えば、後述する物トークン100)を発行する発行者アカウント(例えば、後述するIS240)と、前記物の取引をする1又は2以上のステークホルダーアカウント(例えば後述するSH500)と、を備え、前記データトランザクション部は、前記物の取引を行うため、前記ステークホルダーアカウント間で、前記物トークンを用いて前記取引契約を実行し、前記物トークンは、Semi-fungible Tokenである。
【0017】
前記物トークンは、証券的代替性と、物としての非代替性を、有するトークンでよい。
【0018】
前記物トークンは、物のアカウントと、Device Token と、Device Asset Tokenと、証券情報と、有するトークンでよい。
【0019】
前記データトランザクション部は、所定の種類の物についての取引を行うブランドアカウント(例えば、後述するB238)を備え、前記ブランドアカウントと前記発行者アカウントとは契約し、前記契約に基づき、前記発行者アカウントは、前記発行した物トークンを前記ブランドアカウントに供給してよい。
【0020】
1個以上の前記ブランドアカウントと、その他のアカウントとのルールを定義したルール界面であるブランドDAO(例えば、後述するBrand DAO)、をさらに備え、前記ブランドは、前記ブランドDAOが定義するルールに従って前記発行者アカウントと契約してよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一般的な物に関する取引システムを、IoT技術を用いて構築することができる取引システムを用いて提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態の取引システムで採用するデータ取引基盤であるPTPFの概念図である。
【
図4】ThingsProtoclの説明図である。
【
図6】本実施形態におけるAC/DBとISの役割の説明のための概念図である。
【
図7】本実施形態におけるBrand DAOの説明図である。
【
図8】Brand DAO:Brandで参照可能なThings (承認)の様子を示す説明図である。
【
図9】ブランド界面Xと、Things界面Yとを分けるアーキテクチャーの説明図である。
【
図10】ThingsDAOとStakeholderの関係を示す概念図である。
【
図11】本実施形態に係る取引システムの実装例を示す説明図である。
【
図12】従来の取引システムと本特許の取引システムの概念構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
第1.PTPF(Payload Transaction Platform)の概要
本実施形態では、上述したように、物に対して効率的な取引を可能とする取引システムを提案するが、その基盤として、本件発明者らが開発したPTPF(Payload Transaction Platform)を採用する。そこで、まず、このPTPFを簡単に説明する。
図1には、PTPF200の概念図が示されている。PTPF200は、ブロックチェーン202を活用し、大量・多種類のIoTデータに取引情報を持たせた情報流通を実現するデータ取引基盤である。PTPF200は、同じく本件発明者らが開発したDEXPF204と連携することを前提としている。DEXPF204はデータ伝送基盤であり、PTPF200はいわば取引契約を司り、DEXPF204は実際のデータの伝送を司る。しかし、DEXPF204は、本件特許出願とは直接関係しないので、説明は省略する。
図1に示すように、G社とE社との間で取引が成立すれば、PTPF200は、取引データをG社とE社との間でやりとりをし、DEXPFはその契約に基づき取引対象のIoTデータを送信・受信する。
【0025】
この仕組みによって、伝送されるIoTデータにブロックチェーン技術でセキュアに所有権など各種取引情報を持たせデータの行き先などの制御を可能とするIoTデータ取引基盤が実現されている。これによって、IoTデータの流通が促進され、データと物理的な物との連携が可能となる。
PTPF200は、ブロックチェーンを利用したプロトコルであるが、PTPF200を使用することによって、IoTデバイス、及びそのメーカープロトコルの違いなど、従来のIoTシステムで課題であった各事業間のサービスやプラットフォーム間の手順の違いを吸収したIoTデータ伝送を実現することができる。PTPF200によれば、伝送されるIoTデータに所有権や使用権、価格など様々な取引情報を付加し、データの行き先等の制御を可能とし、データと物理的な物との連携が実現されている。
【0026】
(2)本実施形態における適用
本実施形態の取引システムは、データ取引基盤としてPTPF200を利用するが、そこでデプロイ可能なNFTとの説明図である。及び関連ソフトウェア説明図が
図2に示されている。
図2に示すように、PTPF200は、基盤ブロックチェーン206の上にあり、PTPFのプロトコル200aの他、DT208、MDT210等を包含する。
DT(Device Token)208は、デバイスを表す。例えばERC-721(NFT)の拡張トークンでよい。
MDT(Meta Data Token)210は、取引されるデータ情報を表す。例えば、ERC-721(NFT)の拡張トークンでよい。
PTPFのプロトコル200aは、スマートコントラクトのプロトコルであり、データ取引情報の保持と、決済等を行う。
【0027】
図3には、より詳細なソフトウェアの構成図が示されている。基盤ブロックチェーン206上に、PTPF200と、PTPFのプロトコル200a、MDT210、DT2-8が設けられている。ブロックチェーン202上には、各種デバイスを仮想化(トークン化)して、表されている。
【0028】
第2.本実施形態におけるPTPF
本実施形態のPTPF200で特徴的なことは、ThingsProtocolを利用していることである。この様子が
図4の説明図に示されている。
(i)AC(Acquirer)234は、DO(Device Owner)230のために、売りオファーをPTPF200に対して出す。
(ii)DB(Data Broker)236は、データを利用するSP(Service Provider)232のために、買いオファーをPTPF200に対して出す。
(iii)PTPF200は、マッチングをしてコントラクトを形成して管理する。
(iv)B(Brand)238は、PTPF200が提供する取引システム上で取引を行う組織である。本実施形態では、特に、酒(物)を販売する酒造組合等が該当する。
(v)本実施形態で特徴的なことは、IS(Issuer)240が物トークン100をTO(Things Owner)242に対して発行することである。TO242は、例えば個別の酒瓶である。これによって、TO242は、物トークン100を利用して物の販売に関する取引契約をPTPF200上で実行することができる。
【0029】
この物トークン100は、データを排出しない受動的な「物」を取り扱うのに非常に好ましい性質を備えたトークンである。このように、本実施形態で特徴的なことは、物の権利帰属関係を柔軟に記述できる、新しいトークンの概念を導入している。
(vi)また、本実施形態においては、ThingsDAO220を設定している。このThingsDAO220は、物の取引のための分散型自律組織である。酒卸や個別の酒店は、このThingsDAO220に参加することによって物(お酒)の取引を円滑に行うことができる。
図4において、破線でThingsDAO220が示されている。すなわち、
図4の破線で囲まれた部分がThingsDAO220を構成する。また、
図4において、Wは、IoTデータ伝送において必要な構成を表し、Zは、物トークン100を利用するための新規な構成を表す。
なお、AC234、DB236、DO230、SP232,IS240、TO242、B238は、いずれもPTPF200のアカウントである。
【0030】
(1)ThingsProtocolのトークン種別(全体)
本実施形態におけるブロックチェーンを利用した取引システムにおいて、使用するトークンを説明する。
(a)センシングデバイス
・DAT(Device asset Token)例えばERC-721等
DT(Device token)208:上述したようにデバイスを表す。例えばERC-721(NFT)の拡張トークンでよい。
MDT(Meta data Token)210:上述したように取引されるデータ情報を表す。例えば、ERC-721(NFT)の拡張トークンでよい。
【0031】
(b)物(Things)
・TT ERC-3525(ThingsToken) 本実施形態において特徴的なことは、個別の物に対するトークンである物トークン(ThingsToken)を利用することである。この物トークンは、ERC-3525(SFT)等を利用することができる。また、物トークンはTTと称する場合もある。
(c)価値
・TCX 本実施形態においては、価値、すなわち通貨としての役割を果たす物としてこのTCXを用いる。すなわち、TCXは、ThingsProtocolのUtility Tokenである。例えばERC-20等を利用することができる。
(d)組織
・ThingsDAO ThingsDAO220については上述したとおりであり、契約やスマートコントラクトのフレームワークである。本実施形態では、基本的に、ThingsDAO220に参加することによって、物の取引を実行することができる。
ThingsDAO220は、各参加者や利害関係者の関係を記述して契約に落とし込む(Nexus of Contract)プログラムや決まりの総体をいう。
【0032】
図5には、TO(Things Owner)242等の詳細な概念図が示されている。この図に示すように、TO242は、自己が管理する物(モノ)100mに対して発行されたTT(物トークン)100を複数個管理している。なお、同様に、DO230は、自己が管理するDev(デバイス)400を複数個管理する。そして、SP232は、Bnf402に対して利益を提供する。Bnfは、Beneficiaryを表しており、「受益者」と表現される場合もある。これら以外のB238や、IS240,AC234、DB236等は、他の
図4等と同様の構成である。
【0033】
(2)AC/DBとISの役割
図6には、本実施形態におけるAC/DBとISの役割の説明のための概念図が示されている。
AC230は、DOのアカウントを承認する。また、DT208やMDT210を発行する。
DB236は、SP238のアカウントを承認する。
IS240は、TO(Things Owner)242のアカウントを承認する。また、TT(ThingsToken)を発行する。このTTは、これまで説明した物トークンである。本実施形態においては、TTを発行することによって個別の物を効率よく扱うことが可能である。
なお、IS240は、
図6に示すようにissuerを表す。これはTT(ThingsToken)をTO(Things Owner)へ発行すると言う意味である。
【0034】
(3)Brand運営:Bに関する契約関係(Brand DAO)
図7には、本実施形態におけるBrand DAOを説明するための概念図が示されている。なお、DAOはDecentralized Autonomous Organizationを表し、日本語では分散型自律組織と呼ばれる。
本実施形態におけるBrand DAOは、ThingsProtocolの実運用の構成単位である。つまり、契約単位である。本実施形態では、このBrand DAOは、ThingsDAO220のフレームワークを用いて記述している。各BrandのThingsProtocolのルール界面がBrand DAOである。
図7に示すように、B238は、ルールの設定者である。
【0035】
AC234、DB236は、B238の代理行為をDO230や、SP232に対して実行する参加者である。
DO230、SP232は、B238のルールの下に実際にData送出やサービス提供を行う参加者である。
Brand DAOは、所定のブランドの分散型自律組織であるが、その事業の目的によっては、PTPF200以外の238プロトコルや機構、法律やルールを使用する(併用する)こともある。
【0036】
例えば、お酒に関する取引をするためには、酒協組合(任意団体)を、当初のB238として機能させて、Brand DAOを構成することも好適である。必要に応じて、後日、構成メンバーの追加等を行うことも好適である。
このようなBrand DAOは業種によって様々なBrand DAOが作られることを想定している。衣料品DAO、食品DAO等が、本実施形態に係る取引システムの上で構築されてよい。
なお、Brand DAOは、一般的には複数の参加者によって構成されてよいが、一社で構成してもよい。1社でエコシステム運用ができれば1社DAOを構成することも可能である。
【0037】
(4)Brand DAO:Brandで参照可能なThings (物)の承認
さて、Brand DAOにおいては、B238が様々なルールを設定してよい。具体的には、例えば参照可能なThingsの承認が挙げられる。この様子を示す説明図が
図8に示されている。
図8に示すように、各Brand238毎のThingsProtocolのルール界面(Brand DAO)に、それぞれAC234/DB236、DO230/SP232が存在する。
図7に示すように、複数のB238が存在しうる。
図8では、B1、B2、B3,・・・Bnが描かれている。この
図8における動作を、以下説明する。
(a)各B238は、IS(issuer)240と契約することによって、各Brand DAOからのThings(物)の利用が可能となる。
(b)各B238は、IS240と契約することによって、IS240の配下のTO242のThings(物)を用いて、各B238のエコシステムへ参加させることが可能となる。これによって、B238の参加者へThings (物)に関係した価値の提供を実現することができる。
【0038】
(c)創出された価値対価を各ステークホルダーへ配布する。例えば、価値対価の一部分をTO242へ配布すると共に、価値対価の他の一部をIS240に配布することができる。すなわち、IS240も配布収益を受領することができるように構成することもできる。配布は各ステークホルダーに自由に行ってよく、その比率も自由に定めてよい。
また、IS240は、複数のBrand DAOに参加してよい。
図8の例では、IS1-240が、B1-238、B2-238、B3-238に参加しており、ISnがB1-238、Bn-238に参加する様子が描かれている。
例えば、お酒に関する取引をするためには、幹事となる企業が当初IS240となり、各酒蔵をTO242として認定することができる。そして、このIS40が、各酒蔵の取り扱う各酒瓶にそれぞれの酒造元のTT(ThingsToken)を発行することが考えられる。
【0039】
(5)BからのTT(物トークン)の利用
本実施形態において特徴的なことは、トークンとしてSFT(例えばERC-3525)を採用して、物の取引を行うのに適した取引システムを実現したことである。
この物トークン(TTとも呼ぶ)100は、IS240が、各TO242に対して発行する。
さて、B238(例えば酒造協議会)からはPTPF200を介してAC234、D236等との間の契約をとりまとめる。一方、IS240は、TO242に対して物トークン100を発行する。この際、各TO242が取り扱う各物毎に物トークン100を発行する(
図9)。
図9は、このようにB238からTT100への利用に関する説明図である。この
図9に示すように、本実施形態においては、ブランド界面Xと、Things界面Yとを分けるアーキテクチャーを採用している。
図9は、このように、ブランド界面Xと、Things界面Yと用いるアーキテクチャーの概念図でもある。なお、界面は、Domainの意味である。
【0040】
本実施形態においては、このようなアークテクチャーの下、上述のようにIssuer(IS)240が、TT(物トークン)100を発行する。どのTT100を、どのB238に参加させるかは、TO242と、B238との間の条件による。条件がまとまれば、IS240は、当該B238のブランド界面Xに、当該TT100の接続を許可する。このような仕組みによって、B238から、TT(物トークン)100の利用が可能となる。
また、
図9に示すように、IS240は、複数のTO242を管理することができる。また、IS240が発行するTT(物トークン)100は、各TO242の、例えば各酒瓶(瓶が個別の物(Thing)に相当)に発行することができる。
【0041】
本実施形態では、TT(物トークン)100として、SFT(Semi-fungible Token)と呼ばれるトークン(例えば、ERC-3525)を採用した。上述したように、SFTは、トークンの分割や統合が容易に行える。そのため、例えば、同じ品種のお酒が大量にある場合でも分割することによって各瓶の管理を容易に行うことができる。また、大量の酒瓶をコンテナにまとめた場合は、それらをまとめ(統合して)、コンテナ一個分の酒瓶を1つのトークンで表現することができ、流通管理をより円滑に行うことができる。その結果、物の取引を、従来より円滑に行うことができる。
【0042】
第3.ThingsToken(物トークン)100と、ThingsDAO220
以下、ThingsToken(物トークン)100と、ThingsDAO220との関係をより詳細に説明する。
(1)TT(ThingsToken)100は、個品としての物と同時に、その物にまつわる各種の権利関係を記述することができる一種の証券的な振る舞いをするトークンである。この点が、本実施形態において特徴的な事項であり、例えば、SFT(Semi-fungible Token)と呼ばれるトークン(例えば、ERC-3525)を利用することができる。
(2)一方、DAT(Device Asset Token)は、PTPF200等のブロックチェーンを利用した取引システムでは、従来から、IoTすなわちセンサーデバイス等のデータを発生する物として扱う。つまり、IoTデバイスの扱いをするためのトークンとして機能する。
【0043】
(3)ThingsProtocolは、ThingsToken(物トークン)100を動かすブロックチェーンや、ThingsToken(物トークン)を必ずしも動かしていないブロックチェーンや、トークン(NFT等)等と、それらを取り巻く各種関係者の価値取引や契約実行を可能としたプログラムや規約の総体をいう。
(4)TCX(Things Transaction Currency)は、ThingsToken(物トークン)100を起点として、各種のステークホルダーが参加したときの、対価をやりとりできる汎用的な価値単位(Transaction Currency)である。TCXは、ThingsToken(物トークン)100に係るエコシステムに共通な通貨とユーティリティを提供する通貨単位として機能する。
【0044】
(5) ThingsTokenのアーキテクチャーは、ThingsTokenとTCXを通じて、参加者の価値創出ができる一連の参加者の役割を規定したものである。それぞれの役割を挙げる。
(a)IoTに関係する参加者である「DO230/SP232、AC234/DB236」と、(b)物(TT=ThingsToken)100に関係する参加者である「TO242=Things Owner」と「IS240=issuer」、さらに(c)それらを束ねるルール記述者=プラットフォーマーとしての「B238(Brand)」の7種のプレイヤーが存在する。
(6)「ThingsDAO」は、ThingsProtocol を利用した(a)トークン(TT、DAT、TCX)と、(b)参加者(AC、DB、DO、SP、B、IS)と、及びそれら以外の外部コミュニティとの間の経済ルールや、法的関係を定義した、プログラムを含む参加者間の契約の束(Nexus of Contract)であり、仮想自律組織(分散型自律組織)(=DAO)である。
【0045】
SH(Stakeholder)は、ThingsDAO220のアカウント
図10には、ThingsDAO220とStakeholderとの関係を示す概念図が示されている。ThingsDAO220のアカウント(を有する者)を、SH(Stakeholder:ステークホルダー)500と呼ぶ。
図10では、ThingsDAO220のアカウントの1種であるB238が示されているが、このB238もまた、SH500の一種である。また、SH500は、ThingsDAO220の関係者でもある。
【0046】
SH500は、ThingsDAO220の関係者であるが、この関係者には、様々な種類の参加者や関係者が含まれてよい。
(i)まず、B238(ブランド)に関する次の参加者がいる。B238、AC234、DB236、DO230、SP232、Bnf402、Dev400等である。
(ii)次に、物(Things:モノ)に関する次の関係者がいる。IS240、TO242等である。
(iii)さらに、上記2種の参加者、関係者に加えて、生産者や消費者、インフルエンサー、監査官、開発者など、上記2種以外の物(Things:モノ)に関係する任意の参加者が含まれてよい。
これら(i)(ii)(iii)の全てを、SH500として総称している。本実施形態における物(Things:モノ)に関する取引契約は、まず、TO(Things Owner)242と、SH(Stakeholder)500との間で行われる。
さらに、本実施形態においては、TO(Things Owner)242と、SH(Stakeholder)500との間だけでなく、SH500とSH500との間、すなわち、ステークホルダー間で取引契約を行うことができる。
すなわち、本実施形態における物に関する取引(取引契約)とは、単に売り買いだけでなく、その物の配送、輸出入、検査、宣伝、広告、陳列、プロモーション、等様々な物(Things:モノ)に関する取引の全てを含むものである。
【0047】
第4.本実施形態に係る取引システム(トークンエコノミクス)の実装例
図11には、本実施形態に係る取引システムの実装例が示されている。
まず、ThingsDAO220には、複数種類の各種DAOが存在することができる。家具のDAOや、衣料品のDAO、その他各種DAOがあってよい。
各種DAOには、
図10で説明したように、SH500がアカウントとして存在する(
図11(参照)。
【0048】
ThingsDAO220においては、開発者のコミュニティ244があってよい。また、取引のためのトークン等を管理するガバナンス組織246が存在してよい。ThingsDAO220において、所定のB(Brand)238が設けられる。このB238は、各種の事業体、例えば酒協議会等が該当する。IS240は、ThingsDAO220及びB238と契約し、取引を行う。上述したように、IS240は、SFTである物トークン(TT)100を発行する。これによって、物の取引を円滑に行うことが可能である。ガバナンス組織246は、種々の管理業務を行い、例えばTCX300の発行等を行ってよい。
【0049】
B238は、上述したTT100、TCX330の受け取り、これらを利用して、AC234,DB235、DO230、SP232、そして、TO242と契約を行い、取引を実行することができる。
DO230には、
図5で説明したように、Dev400が1又は複数個備えられている。また、SP232には、
図5で説明したように、Bnf402が1又は複数個備えられている。
【0050】
本実施形態において特徴的なことは、SFTを利用した物トークン(TT)100を
用いて、物の取引を行ったことである。この結果、同一種類の多数の物を円滑に扱うことが可能となった物であり、実際の小売店等がブロックチェーンを利用した取引システムを容易に利用することが可能となるため、取引の可能性を飛躍的に向上させることが可能となった
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
10……(物の)トークン
12、120……証券情報
14……利用者
100……物トークン(TT)
130……FT
132……NFT
134……スマートコントラクト
140……価値(金額)
142……所有者(アカウント)
144……コンテンツ(テキスト・非テキスト)
146……条件
200……PTPF
200a……PTPFのプロトコル
202……ブロックチェーン
204……DEXPF
206……基盤ブロックチェーン
208……DT
210……MDT
220……ThingsDAO
230……DO
232……SP
234……AC
236……DB
238……B
240……IS
242……TO
244……開発者コミュニティ
246……ガバナンス組織
300……TCX
400……Dev(デバイス)
402……Bnf(Beneficiary)
500……SH
W……IoTデータ伝送において必要な構成
Z……物トークン100を利用するための新規な構成
X……ブランド界面
Y……Things界面
【手続補正書】
【提出日】2024-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物の取引契約を、ブロックチェーンを利用して保全及び管理し、物の前記取引契約を実行するデータトランザクション部と、
前記物を所有する物所有者アカウントと、
前記物所有者が有する前記物に対して物トークンを発行する発行者アカウントと、
前記物の取引をする1又は2以上のステークホルダーアカウントと、を備え、
前記データトランザクション部は、前記物の取引を行うため、前記ステークホルダーアカウント間で、前記物トークンを用いて前記取引契約を実行し、前記物トークンは、Semi-fungible Tokenであり、さらに、前記物トークンは、物のアカウントと、Device Token と、Device Asset Tokenと、証券情報と、を有するトークンである、
取引システム。
【請求項2】
前記物トークンは、証券的代替性と、物としての非代替性を、有するトークンである、
請求項1記載の取引システム。
【請求項3】
前記データトランザクション部は、所定の種類の物についての取引を行うブランドアカウントを備え、
前記ブランドアカウントと前記発行者アカウントとは契約し、前記契約に基づき、前記発行者アカウントは、前記発行した物トークンを前記ブランドアカウントに供給する
請求項1記載の取引システム。
【請求項4】
1個以上の前記ブランドアカウントと、その他のアカウントとのルールを定義したルール界面であるブランドDAO、
をさらに備え、
前記ブランドは、前記ブランドDAOが定義するルールに従って前記発行者アカウントと契約する
請求項3記載の取引システム。