(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012119
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの電極用カーボンナノチューブ含有粉末、電極合剤ペースト、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20250117BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20250117BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20250117BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20250117BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20250117BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
C01B32/168
H01G11/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114709
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 由
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐樹
【テーマコード(参考)】
4G146
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AD20
4G146AD22
4G146AD23
4G146BA04
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4G146CB35
5E078AB02
5E078AB06
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5H050DA10
5H050EA08
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスの電極合剤中において優れた分散性を発揮できる蓄電デバイスの電極用カーボンナノチューブ(CNT)含有粉末及びその製造方法を提供すること、並びに、前記電極用CNT含有粉末を用いることで、体積抵抗率の低い蓄電デバイス用電極を得ることができる蓄電デバイスの電極用複合体及び蓄電デバイス用電極合剤ペースト、並びに、前記電極合剤ペーストを用いた蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】カーボンナノチューブ(CNT)と分散剤としてエチルセルロースとを含有することを特徴とする、蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末。前記CNTの表面には前記分散剤が付着されていてもよい。前記蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末は、CNT、分散剤及び溶媒を混練してペースト状の混練物を作製し、次いで前記混練物を乾燥してCNT含有粉末を得ることで製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(CNT)と
分散剤としてエチルセルロースと
を含有することを特徴とする、蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末。
【請求項2】
前記CNTの表面に前記分散剤が付着されている、請求項1に記載の蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末。
【請求項3】
前記CNTと前記分散剤との含有量の重量比率(CNT:分散剤)が33:67~99:1である、請求項1に記載の蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の電極用CNT含有粉末及び無機化合物を含有する電極用複合体であって、無機化合物が電極活物質及び/又は固体電解質であることを特徴とする蓄電デバイスの電極用複合体。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末、電極活物質、バインダー及び溶媒を含有する、蓄電デバイス用電極合剤ペースト。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電デバイス用電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含む、蓄電デバイス用電極。
【請求項7】
請求項5に記載の蓄電デバイス用電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含む、蓄電デバイス。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかに記載の蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末を製造する方法であって、
CNT、分散剤及び溶媒を混練してペースト状の混練物を作製し、次いで前記混練物を乾燥してCNT含有粉末を得ることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記溶媒がアルコール系溶媒、アミン系溶媒、エーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選ばれる1種以上である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの電極用カーボンナノチューブ(CNT)含有粉末、その製造方法、当該電極用CNT含有粉末を含む電極合剤ペースト、当該電極合剤ペーストを用いて製造された電極合剤層を含む、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性、熱伝導性及び機械的特性等の諸特性に優れる物質として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)等が知られている。そして、近年では、リチウムイオン二次電池の正極は、電極活物質、バインダー、導電助剤の3つが主材料として使用されており、このうち、正極合剤の90%以上を占める活物質は導電性に乏しいことから、この問題を解消する導電助剤として、カーボンブラック(アセチレンブラック)が用いられてきたが、近年ではカーボンブラックよりも導電性に優れるCNTが着目されている。
【0003】
導電助剤としてCNTが効果的に作用するには、電極活物質中においてCNTが十分に分散されている必要があるが、CNTは凝集し易く、分散させ難い性質を有していることから、その分散性を向上させるために、予めCNTと分散剤とを含有したCNT分散液を作製し、これを電極活物質等と混合する試みがされている。例えば、特許文献1には、カーボンナノチューブ含有組成物、一般式(1)で表される構成単位を有するセルロース誘導体、及び有機溶媒を含むカーボンナノチューブ分散液であって、前記有機溶媒は非プロトン性極性溶媒又はテルペン類から選ばれる1種類以上を含むものであり、前記カーボンナノチューブ分散液に含まれるカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が1質量%以下であり、当該分散液を1万Gにて10分間遠心処理をした後、90vol%を上清として回収したとき、上清部分のカーボンナノチューブ分散液の濃度が、遠心処理前のカーボンナノチューブ分散液の濃度の80%以上であるカーボンナノチューブ分散液が開示されている。
また、特許文献2には、水系分散媒体中に炭素繊維及び少なくとも常温下(20±10℃)にて固体である分散剤を添加し、分散媒体中で炭素繊維を孤立分散化させた分散系から分散媒体を除去して得られる、炭素繊維が独立分散性を維持した状態で集合固化していることを特徴とする、
再分散用微細炭素繊維集合塊であって、微細炭素繊維の含有量が0.01~99.5質量%、分散剤の含有量が0.1~99.5質量%、水分含有量が10質量%未満であり、前記分散剤が、(1)水溶液中で直径が5~2000nmの球状、棒状又は板状ミセルを形成しうる界面活性剤、(2)重量平均分子量が1万~5千万である水溶性高分子、及び(3)サイクロデキストリンとフラーレンとの組合わせ、から選択されてなるいずれか1つのものであることを特徴とする再分散用炭素繊維集合塊が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/188175号
【特許文献2】特開2008-274502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが、特許文献1に記載のカーボンナノチューブ分散液から蓄電デバイス用電極合剤ペーストを作製して電極活物質の表面の状態を電子顕微鏡で観察したところ、CNTが凝集して、分散が不十分な部分があり、また、蓄電デバイス用電極を作製してその導電性を調べたところ、体積抵抗率は十分に低いとはいえず、改善の余地があった。
また、特許文献2に記載の再分散用微細炭素繊維集合塊を作製し、これから蓄電デバイス用電極合剤ペーストを作製して得られる蓄電デバイス用電極の導電性を調べたところ、こちらについても体積抵抗率は十分に低いとはいえず、改善の余地があった。
【0006】
したがって、本発明の課題は、蓄電デバイスの電極合剤中において優れた分散性を発揮できる蓄電デバイスの電極用カーボンナノチューブ(CNT)含有粉末及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、前記電極用CNT含有粉末を用いることで、体積抵抗率の低い蓄電デバイス用電極を得ることができる蓄電デバイスの電極用複合体及び蓄電デバイス用電極合剤ペースト、並びに、前記電極合剤ペーストを用いた蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)と
分散剤としてエチルセルロースと
を含有することを特徴とする、蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末に関する。
【0008】
本発明の実施形態では、前記CNTの表面に前記分散剤が付着されていてもよい。
【0009】
本発明の実施形態では、前記CNTと前記分散剤との含有量の重量比率(CNT:分散剤)が33:67~99:1であってもよい。
【0010】
本発明の他の実施形態では、前記電極用CNT含有粉末及び無機化合物を含有する電極用複合体であって、無機化合物が電極活物質及び/又は固体電解質であることを特徴とする蓄電デバイスの電極用複合体に関する。
【0011】
本発明の他の実施形態では、前記蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末、電極活物質、バインダー及び溶媒を含有する、蓄電デバイス用電極合剤ペーストに関する。
【0012】
本発明の他の実施形態では、前記蓄電デバイス用電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含む、蓄電デバイス用電極に関する。
【0013】
本発明の他の実施形態では、前記蓄電デバイス用電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含む、蓄電デバイスに関する。
【0014】
本発明の他の実施形態では、前記蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末を製造する方法であって、
CNT、分散剤及び溶媒を混練してペースト状の混練物を作製し、次いで前記混練物を乾燥してCNT含有粉末を得ることを特徴とする方法に関する。
【0015】
前記他の実施形態では、前記溶媒がアルコール系溶媒、アミン系溶媒、エーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末は、蓄電デバイス用電極において優れた分散性を有し、優れた導電性を得ることができることから、前記電極用CNT含有粉末を含む電極用複合体や電極合剤ペーストを用いて得られる蓄電デバイス用電極は、体積抵抗率が低くなり、導電性が優れたものとなる。したがって、本発明の蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末を用いて得られる蓄電デバイスは、放電容量を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例14で得られた電極合剤ペースト1を用いて作製した電極表面の電子顕微鏡像(a)(×5,000倍)及びこれを拡大した電子顕微鏡像(b)(×50,000倍)を示す。
【
図2】
図2は、比較例12で得られた電極合剤ペースト19を用いて作製した電極表面の電子顕微鏡像(a)(×5,000倍)及びこれを拡大した電子顕微鏡像(b)(×50,000倍)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末>
本発明の実施形態に係る蓄電デバイスの電極用CNT含有粉末(以下、本発明のCNT粉末、電極用CNT粉末ともいう)は、カーボンナノチューブ(CNT)と分散剤としてエチルセルロースとを含有することを特徴とする。
【0020】
本発明で用いるCNTとしては、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)等が挙げられる。
前記SWCNT、MWCNTは、蓄電デバイス用電極に使用できるものであればよく、例えば、SWCNT又はMWCNTの直径、長さ及びアスペクト比については、特に限定はない。
本発明では、SWCNT及びMWCNTは、それぞれ単独で又は両者を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明で分散剤として用いるエチルセルロースは、セルロースの3つの水酸基の一部及び/又は全部がエチル基で置換された、水不溶性のセルロースエーテルである。
【0022】
前記エチルセルロースの重量平均分子量(Mw)としては、溶媒への溶解性と、CNTの分散性の観点から、20,000~300,000であることが好ましく、30,000~200,000であることがより好ましい。
前記エチルセルロースとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、ダウ・ケミカル社製のETHOCEL(登録商標)シリーズ、アシュランド社製AqualonTM ethylcelluloseシリーズ等が挙げられる。
【0023】
本発明のCNT粉末では、前記CNTと前記分散剤との含有量の重量比率(CNT:分散剤)が33:67~99:1の範囲内に調整されていればよく、40:60~80:20の範囲内に調整されていればより好ましい。
【0024】
本発明のCNT粉末は、前記CNT、前記分散剤及び溶媒を混練してペースト状の混練物を作製し、次いで前記混練物を乾燥することで作製することができる。
【0025】
また、本発明のCNT粉末は、前記CNTの表面に前記分散剤が付着されている構造を有する。このような構造を有することで、本発明のCNT粉末は、電極材料内で優れた分散性を有し、また、電極活物質、固体電解質等の電極材料の表面に幅広く付着して、優れた導電性を発揮することができる。
なお、前記構造を有することは、例えば、本発明のCNT粉末をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶媒に分散させ、遊離する分散剤の重量を調べることによって確認することができる。遊離した分散剤の重量がCNT粉末に含まれる分散剤の重量の10%未満であれば、前記構造を有していると判断できる。
【0026】
市販品・従来品(分散体)には、以下のようなデメリットがある。
1.一般的に分散体は、本発明のCNT粉末と比べて、CNTの凝集や沈殿によるレオロジー変化や、溶媒揮発による濃度変化等が生じやすいため、安定性が悪く製品寿命が短いことが知られている。
2.製品寿命が短いため、また、電池工場で回収再生した溶媒を分散体工場で再利用するためには、電池工場の近くに分散体工場を作る必要がある。
3.市販品でのCNT含有率は一般的に6重量%以下のものが多いが、このようにCNT含有率が低いと電極合剤の処方面で制限が出てくる。
4.CNT含有率が低く、体積や重量(CNT単位重量あたり)が大きくなることから、輸送や保管のコストが高くなる。
5.電池系に合わせた分散体設計が必要になる。例えば、液系リチウムイオン電池と硫化物系全固体電池では使用可能な溶媒が異なる。溶媒が変わればCNT分散条件も変わる可能性が高い。
【0027】
本発明のCNT粉末は、以下のようなメリットがある。
1.CNTの凝集や沈殿によるレオロジー変化や、溶媒揮発による濃度変化等が起こらない等、安定性が良好である。
2.製品寿命が長く、また、電池工場で回収再生した溶媒を、分散体工場で再利用しないために、電池工場の近くに分散体工場を作る必要がない。
3.CNT含有率が高いため、電極合剤を作製する際に、処方面での制限はほぼ無いと考えられる。
4.CNT含有率が高く、体積や重量(CNT単位重量あたり)が小さいため、輸送や保管のコストが低い。
5.様々な組成の電極合剤を作製する際に使用しても優れた分散性を有するため、様々な電池系で適用可能である。例えば、液系リチウムイオン電池と硫化物系全固体電池で同じCNT粉末が使用可能である。
【0028】
前記溶媒としては、アルコール系溶媒、アミン系溶媒、エーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒、ケトン系溶媒が挙げられる。
前記アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、クレゾール、フルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル(ETB)、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
前記アミン系溶媒としては、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン等が挙げられる。
前記エーテル系溶媒としては、メチルフェニルエーテル(アニソール)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
前記グリコールエステル系溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
前記ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
前記溶媒は、単独で又は2種類以上併用することもできる。
【0029】
前記CNT及び前記分散剤に配合する溶媒の量については、ペースト状の混練物が得られるのであれば特に限定はない。
【0030】
前記混練に用いる混合機としては、遊星型撹拌機、ニーダー、押し出し式混練機、薄膜旋回式高速攪撹拌機等が挙げられる。
前記遊星型撹拌機とは、自転と公転(遊星運動)をさせることで発生した遠心力による材料滞留と剪断応力で混合する機械であり、自転公転式ミキサーともいわれる。
前記遊星型撹拌機は、市販されている製造装置を用いればよく、特に限定はない。
【0031】
前記混練物を作製する際の条件については、特に限定はない。温度については、溶媒の沸点未満の温度で混練することが好ましい。
【0032】
前記のようにして得られた混練物を乾燥する手段としては、特に限定はなく、前記溶媒が揮発する温度以上に調整できる装置、減圧により前記溶媒を除去できる装置、凍結乾燥装置等で行えばよい。例えば、効率よく乾燥を行う観点から、前記遊星型撹拌機での処理温度を上げて前記混練物を混練しながら前記溶媒を揮発させることが好ましい。
【0033】
なお、前記溶媒を揮発させる程度としては、前記混練物が粉末状になっていればよく、特に限定はない。また、前記混練物を乾燥させる装置から取り出したときに乾燥が不十分であったり、溶媒の臭気が感じられたりする場合は、追加で乾燥を実施してもよい。本発明のCNT粉末は、このような乾燥工程においても凝集しにくい性質を有する。
【0034】
<蓄電デバイスの電極用複合体>
本発明の蓄電デバイスの電極用複合体(以下、電極用複合体ともいう)は、前記電極用CNT粉末及び無機化合物を含有し、前記無機化合物が電極活物質及び/又は固体電解質であることを特徴とするものである。
【0035】
前記電極用複合体とは、蓄電デバイス用電極を作製する材料として利用できるものである。
例えば、電極活物質を含む前記電極用複合体を、カーボンブラック、バインダー及び溶媒と混合して混練することで、蓄電デバイス用電極合剤ペーストを作製することができる。
【0036】
前記無機化合物としては、電極活物質及び固体電解質が挙げられる。
【0037】
前記電極活物質としては、正極又は負極のいずれかの電極に使用する活物質が含まれる。
正極活物質としては、例えば、リチウムイオン電池の正極に使用される、層状酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiNi1/3Mn1/3Co1/3等)、スピネル型酸化物(LiMnO2、LiMn1.6Ni0.4O4等)、オリビン型酸化物(LiFePO4、Fe2(SO4)3、LiCoPO4等)、逆スピネル型酸化物(LiCoVO4、LiNiVO4等)等が挙げられる。
負極活物質としては、例えば、リチウムイオン電池の負極に使用される、炭素系(黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維等)、酸化物系(Li2TiO3、TiNbxO等)、シリコン系(Si、SiO)等が挙げられる。
前記正極活物質又は前記負極活物質は、それぞれ一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
前記固体電解質とは、イオンのみが伝導できる固体であり、後述する蓄電デバイスの種類に応じて、その蓄電デバイスに使用可能なものであればよい。
例えば、リチウムイオン伝導性の固体電解質として、以下のものが挙げられる。
・酸化物系固体電解質:結晶質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、La0.51Li0.34TiO2.94、Li7La3Zr2O12等)、非晶質(Li2.9PO3.3N0.46等)
・硫化物系固体電解質:結晶質(Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4、Li6PS5Cl等)、ガラスセラミック(Li7P3S11等)、非晶質(70Li2S-30P2S5等)
・その他(Li2B12H12、Li3OCl0.5Br0.5等)
【0039】
前記電極用複合体中における本発明のCNT含有粉末の含有量は、特に限定は無く、無機化合物の種類、CNTの種類、適用する電極の種類及び適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。例えば、二次電池の負極に用いる複合体の場合、CNT含有粉末の含有量は0.01~10重量%であればよい。
【0040】
前記電極用CNT含有粉末と、前記無機化合物を混合させることで前記電極用複合体を製造することができる。
【0041】
前記混合については、特に限定は無く、湿式、乾式のいずれの方法で行ってもよい。また、前記混合に用いる混合機としては、遊星型撹拌機、ニーダー、押し出し式混練機、薄膜旋回式高速撹拌機等が挙げられる。
【0042】
例えば、無機化合物として電極活物質を含む電極用複合体は、以下のような工程で作製することができる。
均一化工程:電極活物質、電極用CNT粉末及び溶媒を混合した混合物を調製する。
解繊工程:前記混合機を用いて、前記混合物を混練する。
仕上げ工程:必要に応じて、乾燥等により溶媒を除去する。
【0043】
前記溶媒としては、特に限定はなく、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、IPA、ブチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、クレゾール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、
PM、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ETB、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコールエーテル系溶媒、
N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系溶媒、
メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、
PMA、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート等のグリコールエステル系溶媒、
アセトン、MEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、
ベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、
NMP、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、
ペンタン、ノルマルヘキサン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、
フルフラル等のアルデヒド系溶媒、
酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ブチルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、
グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール系溶媒、
等が挙げられる。
中でも、NMPを用いた場合には、CNTの良好な解繊性を発揮することができる。
【0044】
前記解繊工程では、必要に応じて溶媒を添加しながら、電極活物質の濃度を、前記電極活物質のタップ密度(DTap)(単位:g/cm3)から下記数式(1)に基づいて算出される電極活物質の濃度(C)(単位:重量%)に調整することで、溶媒と混練した際のCNTの解繊性を良好にして、CNTの均一分散性を向上させることができる。
【0045】
C=7.0×DTap+α ・・・数式(1)
(式中、60≦α≦70を示す。)
【0046】
前記電極活物質のタップ密度は、JIS K 5101-12-2に準ずる処方により測定が可能である。また、市販の電極活物質については、カタログに記載されている数値を用いればよい。
【0047】
<蓄電デバイス用電極合剤ペースト>
本発明の蓄電デバイス用電極合剤ペースト(以下、本発明の電極合剤ペーストともいう。)は、前記電極用CNT粉末、電極活物質、バインダー及び溶媒を含有するものである。
【0048】
本発明の電極合剤ペーストにおける前記電極用CNT粉末の含有量は、導電性向上及び蓄電デバイスの容量の観点から、適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。
【0049】
前記電極活物質としては、前記電極用複合体に用いることができるものであればよく、特に限定はない。
【0050】
本発明の電極合剤ペーストにおける前記電極活物質の含有量は、導電性向上及び蓄電デバイスの容量の観点から、適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。
【0051】
前記バインダーとしては、蓄電デバイス用電極に使用できるバインダーであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン(PVP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは各種官能基で変性していてもよく、該官能基としては酸性基や塩基性基等の極性官能基を好適に用いることができる。前記バインダーは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0052】
前記バインダーの重量平均分子量は、特に限定はないが、例えば、110,000~5,000,000の範囲内のものであれば好適に使用できる。
【0053】
本発明の電極合剤ペーストにおけるバインダーの含有量は、導電性向上及び蓄電デバイスの容量の観点から、適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。
【0054】
前記溶媒としては、特に限定はなく、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、IPA、ブチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、クレゾール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、
PM、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ETB、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコールエーテル系溶媒、
N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系溶媒、
メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、
PMA、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート等のグリコールエステル系溶媒、
アセトン、MEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、
ベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、
NMP、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、
ペンタン、ノルマルヘキサン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、
フルフラル等のアルデヒド系溶媒、
酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ブチルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、
グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール系溶媒、
等が挙げられる。
中でも、NMPを用いた場合には、CNTの良好な解繊性を発揮することができる。
【0055】
本発明の電極合剤ペーストは、前記電極用CNT粉末、電極活物質、バインダー及び溶媒を混練することで得られる。混練方法は特に限定されないが、混練に用いられる混合機としては、例えば、遊星型撹拌機、ニーダー、押し出し式混練機、薄膜旋回式高速撹拌機等を挙げることができる。
【0056】
混合順序においては、各成分を同時に混合してもよいし、溶媒に、前記電極用CNT粉末、電極活物質及びバインダーを順番に混合してもよい。この順番は特に限定されないし、前記電極用CNT粉末及び電極活物質の混合物(電極用複合体)を、徐々に加える等してもよい。また、溶媒とバインダーをあらかじめ混合、溶解させておいてもよい。
【0057】
前記電極合剤ペーストにおける電極成分の割合、すなわち、電極合剤ペースト中の電極用CNT粉末、電極活物質及びバインダーの割合は、得られる電極の厚み、塗布性の観点から、適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。
【0058】
本発明の電極合剤ペーストは、例えば、以下のような工程で作製することができる。
均一化工程:電極活物質、電極用CNT粉末、溶媒を混合した混合物を調製する。
解繊工程:前記混合機を用いて、前記混合物を混練する。
仕上げ工程:バインダー、及び、必要に応じて溶媒を添加する。
【0059】
前記解繊工程では、必要に応じて溶媒を添加しながら、電極活物質の濃度を、前記電極活物質のタップ密度(DTap)(単位:g/cm3)から前記数式(1)に基づいて算出される電極活物質の濃度(C)(単位:重量%)に調整することで、溶媒と混練した際のCNTの解繊性を良好にして、CNTの均一分散性を向上させることができる。
【0060】
前記電極活物質のタップ密度は、JIS K 5101-12-2に準ずる処方により測定が可能である。また、市販の電極活物質については、カタログに記載されている数値を用いればよい。
【0061】
<蓄電デバイス用電極>
本発明の蓄電デバイス用電極(以下、本発明の電極ともいう)は、本発明の電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含むものであり、具体的には、本発明の電極合剤ペーストを集電体に塗布し、得られたものを乾燥したものである。前記乾燥により、本発明の電極合剤ペーストにおける溶媒は除去され、集電体には、電極合剤層が形成され、電極が得られる。
【0062】
本発明の電極において、前記集電体としては、Al、Ni、Cu、ステンレス等を挙げることができる。
前記集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチングメタル状及びエンボス状であるもの、ならびに、これらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板等)等が挙げられる。また、前記集電体の表面にエッチング処理による凹凸を形成させてもよい。
【0063】
本発明の電極合剤ペーストを、前記集電体へ塗布する方法としては特に限定はない。
例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等の方法が挙げられる。また、塗布後に行う乾燥としては、熱処理によって行ってもよいし、送風乾燥、真空乾燥等により行ってもよい。熱処理により乾燥を行う場合には、その温度は、通常50~150℃程度である。また、乾燥後にプレスを行ってもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレス等の方法を挙げることができる。以上に挙げた方法により、本発明の電極を製造することができる。
また、電極の厚みは、通常5~500μm程度である。
【0064】
<蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、本発明の電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含むものである。具体的には、本発明の電極合剤ペーストからなる電極合剤層が形成された本発明の電極を含む、液体型又は固体型の蓄電デバイスが挙げられる。
例えば、液体型蓄電デバイス(リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、多価金属イオン電池、リチウム硫黄電池、硫化物電池、コンバージョン電池、レドックスフロー電池、フッ化物電池、塩素化物電池、亜鉛負極電池等)、各種全固体電池(硫化物系、酸化物系、窒化物系、ポリマー系等)、各種空気電池(リチウム空気電池、亜鉛空気電池、ナトリウム空気電池等)、各種キャパシタ(リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等)、各種燃料電池(固体高分子形、アルカリ形等)等の各種の蓄電デバイスが挙げられる。
【0065】
本発明の蓄電デバイスは、本発明の電極を用いること以外は公知の蓄電デバイスの製造方法により製造できる。また、前記蓄電デバイスに含まれる本発明の電極の構造は、前記のように、蓄電デバイスの種類に応じて、適当な構造とすればよい。
【実施例0066】
実施例で使用した材料は以下のとおり。
<CNT>
・「LUCAN BT 1003M」(LG Chem製、MWCNT)
<分散剤>
・エチルセルロース「ETHOCEL(登録商標) STD-4 Industrial」(重量平均分子量(Mw)約44,000)
・エチルセルロース「ETHOCEL(登録商標) STD-7 Industrial」(重量平均分子量(Mw)約55,000)
・エチルセルロース「ETHOCEL(登録商標) STD-10 Industrial」(重量平均分子量(Mw)約77,000)
・エチルセルロース「ETHOCEL(登録商標) STD-20 Industrial」(重量平均分子量(Mw)約105,000)
・エチルセルロース「ETHOCEL(登録商標) STD-45 Industrial」(重量平均分子量(Mw)約135,000)
・エチルセルロース「ETHOCEL(登録商標) STD-100 Industrial」(重量平均分子量(Mw)約180,000)
・エチルセルロース「ETHOCEL(登録商標) STD-200 Industrial」(重量平均分子量(Mw)約188,000)
・エチルセルロース「ETHOCEL(登録商標) STD-300 Industrial」
以上のETHOCEL(登録商標)シリーズは、ダウ・ケミカル社製のものである。
・エチルセルロース「AqualonTM ethylcellulose EC-N4」
・エチルセルロース「AqualonTM ethylcellulose EC-N50」
・エチルセルロース「AqualonTM ethylcellulose EC-N100」
・エチルセルロース「AqualonTM ethylcellulose EC-N200」
・エチルセルロース「AqualonTM ethylcellulose EC-N300」
以上のAqualonTM ethylcelluloseシリーズは、アシュランド社製のものである。
なお、後述の実施例1~13で用いるETHOCEL(登録商標)シリーズ及びAqualonTM ethylcelluloseシリーズのセルロースエーテルは、いずれも、セルロースの3つの水酸基の一部及び/又は全部がエチル基で置換された、水不溶性のセルロースエーテルである。
・メチルセルロース「メトローズ(登録商標) SM-4000」(信越化学工業社製、水溶性セルロースエーテル)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース「メトローズ(登録商標) 60SH-4000」(信越化学工業社製、水溶性セルロースエーテル)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース「メトローズ(登録商標) 90SH-4000」(信越化学工業社製、水溶性セルロースエーテル)
・セルロースアセテート「L-50」(ダイセル社製、セルロースエステル)
<バインダー>
・PVDF(ポリフッ化ビニリデン)
<電極活物質>
・NCM523(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2) タップ密度:2.13g/cm3
<溶媒>
・PM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
・PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
・NMP(N-メチル-2-ピロリドン)
【0067】
(実施例1~13:CNT含有粉末1~13の製造)
CNTと表1に示す各種分散剤との重量比率(CNT:分散剤)が80:20となるように調整し、これを表1に示す各種溶媒中に固形分含有量が50~10重量%となるように添加し、遊星型撹拌機を用いて混練(温度30℃)してペースト状の混練物を作製した。次いで前記混練物を乾燥して、CNT含有粉末1~13を得た。
【0068】
(比較例1~5:CNT含有粉末14~18の製造)
表1に示す分散剤及び溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にして、CNT含有粉末14~18を得た。
【0069】
(比較例6:CNT分散液の製造)
CNTと表1に示す分散剤及び溶媒を用い、国際公開第2017/188175号の実施例1の条件に従って、CNT分散液(CNT濃度0.1重量%、CNT:分散剤=100:300)を得た。
【0070】
【0071】
(実施例14~26:電極合剤ペースト1~13の製造)
実施例1~13で得られたCNT含有粉末1~13を、NCM523、PVDFとともに、NMP中で遊星型撹拌機を用いて混練して、電極合剤ペースト1~13(固形分重量組成 NCM523:CNT:分散剤:PVDF=97.50:0.50:0.125:1.875)を作製した。なお、前記重量組成中の分散剤は、CNT含有粉末を由来とするものである。
表2に、使用した各成分の種類と混練時の固形分濃度を示す。
【0072】
(比較例7~11:電極合剤ペースト14~18の製造)
比較例1~5で得られたCNT含有粉末14~18を用いた以外は、実施例14と同様にして、電極合剤ペースト14~18を作製した。
表2に、使用した各成分の種類と混練時の固形分濃度を示す。
【0073】
(比較例12:電極合剤ペースト19の製造)
比較例6で得られたCNT分散液を用い、NCM523及びPVDFと混合した後、固形分濃度57.5重量%まで濃縮してから、遊星型撹拌機を用いて混練して、電極合剤ペースト19(固形分重量組成 NCM523:CNT:分散剤:PVDF=97.50:0.50:1.50:0.50)を作製した。なお、前記重量組成中の分散剤は、CNT分散液を由来とするものである。
【0074】
【0075】
<試験例1:表面抵抗率及び膜厚>
得られた電極合剤ペースト1~19を用いて作製した電極の表面抵抗率及び膜厚について、以下のようにして評価した。
・電極の表面抵抗率
電極合剤ペースト1~19をPET製シート材に厚みが0.05mmとなるように塗布して形成された電極合剤層(以下、電極という)の表面抵抗率を低抵抗 抵抗率計「ロレスタ(登録商標)-GX MCP-T700」(日東精工アナリテック社製)を用いて測定した。なお、電極作製時の乾燥条件(温度、時間)は表2に記載の通りである。
・電極の膜厚
上記電極合剤層の膜厚を高精度デジマチックマイクロメータ「MDH-25MB」(ミツトヨ社製)を用いて測定した。
なお、1つの電極合剤ペーストから評価用電極を5つ作製し、表面抵抗率の平均値と膜厚の平均値から体積抵抗率を算出した。結果を表2に示す。
【0076】
(評価:体積抵抗率の評価)
100Ω・cm(1.00E+02 Ω・cm)以下のものは合格
100Ω・cm(1.00E+02 Ω・cm)を超えるものは不合格
【0077】
表2に示す結果より、実施例14~26で得られた電極合剤ペースト1~13を用いて作製された電極は、いずれも体積抵抗率が低い、導電性に優れたものであった。
これに対して、比較例7~12で得られた電極合剤ペースト14~19を用いて作製された電極は、いずれも体積抵抗率が高いものであった。
【0078】
<試験例2:表面状態の観察>
走査型電子顕微鏡を用いて、各電極の表面状態を観察した。
実施例14で得られた電極合剤ペースト1を用いて作製した電極表面の電子顕微鏡像(a)(×5,000倍)及びこれを拡大した電子顕微鏡像(b)(×50,000倍)を
図1に示す。
また、比較例12で得られた電極合剤ペースト19を用いて作製した電極表面の電子顕微鏡像(a)(×5,000倍)及びこれを拡大した電子顕微鏡像(b)(×50,000倍)を
図2に示す。
【0079】
図1(a)から、実施例14で得られた電極合剤ペースト1を用いて作製された電極では、活物質の表面にCNTの凝集は見られず、
図1(b)に示すように電極表面をさらに拡大すると活物質の表面がCNTで均一に被覆される状態であることが確認された。
一方、
図2(a)から、比較例12で得られた電極合剤ペースト19を用いて作製された電極では、表面にCNTの凝集した複数の塊が見られ、また、
図2(b)に示すように電極表面をさらに拡大すると活物質の表面がCNTで覆われておらず、大きく露出している部分があり、CNTが偏在していることが確認された。
【0080】
以上の結果から、本発明の電極用CNT含有粉末は、蓄電デバイス用電極において優れた分散性を有していることから、本発明の電極用CNT含有粉末を含む電極用複合体や電極合剤ペーストを用いて得られる蓄電デバイス用電極は、体積抵抗率が低くなり、導電性が優れたものとなることがわかる。