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特開2025-12128安否確認システム、制御装置、居室および安否確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012128
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】安否確認システム、制御装置、居室および安否確認方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20250117BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20250117BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20250117BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20250117BHJP
   G01V 3/08 20060101ALI20250117BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20250117BHJP
   G01V 11/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
A61B5/11 110
A61B5/113
G01V3/08 A
G01V8/10 S
G01V11/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114719
(22)【出願日】2023-07-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岩田 翔士
(72)【発明者】
【氏名】森 文徳
(72)【発明者】
【氏名】興津 美那
(72)【発明者】
【氏名】桶本 紘子
(72)【発明者】
【氏名】仲本 晶絵
(72)【発明者】
【氏名】松下 和彦
【テーマコード(参考)】
2G105
4C038
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB09
2G105BB16
2G105CC01
2G105CC04
2G105DD01
2G105DD02
2G105EE02
2G105FF02
2G105GG01
2G105HH01
2G105JJ05
2G105KK06
4C038VA04
4C038VA16
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC01
4C038VC20
5C086AA22
5C086BA01
5C086CA06
5C086FA02
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA42
5C087BB74
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG66
(57)【要約】
【課題】対象者の安否を確認するシステムにおける誤検知および処理負荷の増大を抑制する。
【解決手段】本発明の一態様に係る安否確認システム(1)は、所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサ(41)と、第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサ(42)と、第2センサ(42)が、検知範囲に対象者が一人だけ存在することを検出した場合、第1センサ(41)により対象者の前記生体情報を測定させる、第1センサ(41)および第2センサ(42)の制御を行う制御部(30)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、
前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、
前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させる、前記第1センサおよび前記第2センサの制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする安否確認システム。
【請求項2】
前記第2センサにより、前記検知範囲に一人だけ存在していた前記対象者が前記検知範囲から退出したことを検出した場合、
前記第1センサによる前記対象者の前記生体情報の測定を終了させることを特徴とする請求項1に記載の安否確認システム。
【請求項3】
第1の検知範囲に隣接する第2の検知範囲へ前記第1の検知範囲から前記一人だけ存在していた前記対象者が移動したことを、前記第1の検知範囲に対応する第2センサと、前記第2の検知範囲に対応する第2センサとが検出した場合、
前記第1の検知範囲に対応する第1センサにより測定された前記対象者の前記生体情報のデータと、前記第2の検知範囲に対応する第1センサにより測定された前記対象者の前記生体情報のデータとを連続する一連のデータとすることを特徴とする請求項1または2に記載の安否確認システム。
【請求項4】
前記第2センサの検出範囲は、前記第1センサの検知範囲よりも広い
ことを特徴とする請求項3に記載の安否確認システム。
【請求項5】
前記第1センサは、前記対象者の心拍数および呼吸数の少なくとも一方を測定することを特徴とする請求項4に記載の安否確認システム。
【請求項6】
所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、
前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、
を制御し、
前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
居室であって、
当該居室における所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、
前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、
前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させる、前記第1センサおよび前記第2センサの制御を行う制御装置と、
を備えることを特徴とする居室。
【請求項8】
居室に設置され、前記居室における所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサによるセンシングステップと、
前記居室に設置され、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサによる検出ステップと、
前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定する測定ステップと、
を含むことを特徴とする安否確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安否確認システム、制御装置、居室および安否確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自宅で発症する急性疾患や事故は、未だ数多く発生している。また、近年は、高齢化社会になり、さらに独居者も増えていることから、自宅での事故や急性疾患への対応はますます重要となってきている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、居住者が生活する住空間にセンサを設置し、予め設定
されている異常状態をセンサが検知した際に、居住者の安否確認を促す通知を発信する建
物が記載されている。また、特許文献2には、浴室における被験者の体動の検出を実施することが可能な体動信号処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015―26146号公報(2015年2月5日公開)
【特許文献2】特許第6537701号公報(2017年9月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、安否確認の対象者の呼吸数等を測定するセンサが、測定対象を誤検知する虞がある。また、上記センサによって、検知範囲に対象者が居ない場合にも呼吸数等の測定を試みた場合、システムの処理負荷が増大するという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、対象者の安否を確認するシステムにおける誤検知および処理負荷の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る安否確認システムは、所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させる、前記第1センサおよび前記第2センサの制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、第1センサの検知範囲に対象者が一人だけ存在することを、第2センサが検知した場合に初めて第1センサによる測定が行われる。これにより、対象者の安否を確認するシステムにおける誤検知および処理負荷の増大を抑制できる。
【0009】
本発明の一態様に係る安否確認システムでは、前記第2センサにより、前記検知範囲に一人だけ存在していた前記対象者が前記検知範囲から退出したことを検出した場合、前記第1センサによる前記対象者の前記生体情報の測定を終了させてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、検知範囲に対象者が存在しなくなった場合には第1センサによる測定が終了するので、誤検知および処理負荷の増大の抑制に寄与する。
【0011】
本発明の一態様に係る安否確認システムでは、第1の検知範囲に隣接する第2の検知範囲へ前記第1の検知範囲から前記一人だけ存在していた前記対象者が移動したことを、前記第1の検知範囲に対応する第2センサと、前記第2の検知範囲に対応する第2センサとが検出した場合、前記第1の検知範囲に対応する第1センサにより測定された前記対象者の前記生体情報のデータと、前記第2の検知範囲に対応する第1センサにより測定された前記対象者の前記生体情報のデータとを連続する一連のデータとしてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、ユーザが複数の検知範囲間を移動した場合においても第1センサによる一連の測定を継続することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る安否確認システムでは、前記第2センサの検出範囲は、前記第1センサの検知範囲よりも広くてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、ユーザが第1センサの検知範囲に存在する場合に、対象者の生体情報の測定が行われる構成を、第1センサ以下の個数の第2センサを用いて実現できる。
【0015】
本発明の一態様に係る安否確認システムでは、前記第1センサは、前記対象者の心拍数および呼吸数の少なくとも一方を測定してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、対象者の心拍数または呼吸数に基づいて安否を確認することができる。
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、を制御し、前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させる。
【0018】
上記の構成によれば、上述した安否確認システムの実現に寄与する。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る居室は、当該居室における所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させる、前記第1センサおよび前記第2センサの制御を行う制御装置と、を備える。
【0020】
上記の構成によれば、上述した安否確認システムと同様な効果を奏する居室を実現できる。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る安否確認方法は、居室に設置され、前記居室における所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサによるセンシングステップと、前記居室に設置され、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサによる検出ステップと、前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定する測定ステップと、を含む。
【0022】
上記の構成によれば、上述した安否確認システムと同様な効果を奏する。
【0023】
本発明の各態様に係る安否確認システムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記安否確認システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記安否確認システムをコンピュータにて実現させる安否確認システムの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、対象者の安否を確認するシステムにおける誤検知および処理負荷の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る安否確認システムの全体概要を示す図である。
図2】安否確認システムの全体概要を示す図である。
図3】第1センサおよび第2センサの設置例を示す図である。
図4】第1センサおよび第2センサの設置例を示す図である。
図5】第1センサおよび第2センサの設置例を示す図である。
図6】安否確認システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図7】第2センサの測定結果と比較される閾値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、以下に記載する実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定を付しているが、本発明の範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0027】
〔全体概要〕
まず、図1を参照して本実施形態に係る安否確認システム1の全体概要について説明する。図1は、安否確認システム1の全体概要を示す図である。図1に示すように、安否確認システム1は、住宅内における居室10における居住者等の心拍数等に異常が生じていないかを確認し、異常が生じていれば、その旨を例えばオペレータが操作する外部装置等に発報するためのシステムである。
【0028】
以下、安否確認システム1は、居室10に設置されているものとして説明するが、これに限定されず、システムの一部又は全部が、例えば病院等の施設内や、任意の空間に設置されるものであってもよい。以下、安否確認システム1による安否確認の対象を、対象者と呼称することもある。
【0029】
図2は、安否確認システム1の全体概要を示す図である。図2に示すように、安否確認システム1には、第1センサ41、第2センサ42、制御部30、記憶部50および通信部43が含まれる。
【0030】
第1センサ41は、検知範囲内における対象者の生体情報を非接触でセンシングし、生体情報を取得する。具体的には、対象者の心拍数、呼吸数、体温及び血圧のうち、少なくともいずれか1つを非接触でセンシングする。本実施形態においては、第1センサ41が、当該生体情報のうち、検知範囲内における対象者の心拍および呼吸の少なくとも一方を非接触でセンシングし、前記対象者の心拍数および呼吸数の少なくとも一方を測定する場合を一例に挙げて説明する。但し、第1センサ41が、その他の生体情報を非接触でセンシング及び測定する構成についても本開示に含まれる。以下、第1センサ41はドップラーセンサであるものとして説明するが、ドップラーセンサに限定されるものではない。例えば赤外線アレイセンサや、FMCWレーダー(Frequency Modulated Continuous Wave radar:周波数変調連続波レーダー)等であってもよい。
【0031】
第2センサ42は、検出範囲における対象者の人数を非接触で検出する。以下、第2センサ42は、焦電センサであるものとして説明するが、これに限定されず、上述した検出が可能な他のセンサであってもよい。第2センサ42が焦電センサである場合、対象者から放射される赤外線をセンシングすることによって対象者の検出を行う。
【0032】
また、第1センサ41の検知範囲、及び第2センサ42の検出範囲は、少なくとも一部が重畳し、一方が他方に含まれるものであってもよい。例えば、第2センサ42の検出範囲は、第1センサ41の検知範囲より広いものであってもよい。また、一方が他方に含まれるとは、同一である場合を包含する。
【0033】
また、第1センサ41の検知範囲、及び第2センサ42の検出範囲は、各センサを起点とする同一方向の範囲であってもよい。換言すると、第1センサ41および第2センサ42は、同一の壁面又は天井若しくは床、造り付けの棚、家具等に設けられ、同一の方向に放射する構成であってもよい。なお、上記以外の構成としては、一方のセンサが床方向に向けて天井に設けられており、他方のセンサが天井方向に向けて床面に設けられている構成等が挙げられる。
【0034】
図3図5は、第1センサ41および第2センサ42の設置例を示す図である。ただし、図5においては、後述する説明において参照する都合上、第1センサ41のそれぞれを第1センサ41a~41dとし、第2センサ42のそれぞれを第2センサ42a~42dとして図示している。
【0035】
図3図5は、第1センサ41および第2センサ42が、天井に設置され、床面方向に向けて放射する構成を例示している。また、図3図5において、各センサは近傍に設けられて同一の方向に放射する構成であり、第1センサ41の検知範囲、及び第2センサ42のセンシング範囲は同一である。
【0036】
また、安否確認システム1が備える少なくとも第1センサ41および第2センサ42の一方は、図1等に示すように複数であってもよい。安否確認システム1のその他の構成要素についても同様である。また、複数の第1センサ41の検知範囲、或いは複数の第2センサ42の検出範囲は、一部が互いに重畳していてもよい。
【0037】
図4および図5は、居室10の同じ部屋に第1センサ41および第2センサ42が複数設けられた構成を例示している。このような構成の場合、複数の各センサが連携することにより、対象者の体が複数の検知範囲(検出範囲)にまたがる場合にも対応できる。
【0038】
制御部30は、第1センサ41および第2センサ42等の制御を行い、安否確認システム1全体を統括する制御装置であって、判定部31、発報部32および通信制御部33としても機能する。
【0039】
また、制御部30は、第2センサ42が、第1センサ41の検知範囲に対象者が一人だけ存在することを検出した場合、第1センサ41により対象者の心拍数および呼吸数の少なくとも一方を測定させる制御を行う。
【0040】
判定部31は、第1センサ41および第2センサ42の検知結果についての判定を行う。当該判定の詳細については後述する。
【0041】
発報部32は、判定部31が対象者に異常が発生したと判定した場合、その旨を示す情報を、通信部43を介して受付管理部(外部装置)25に発報する。ここで、外部装置とは、例えば図1に示すオペレータが操作する端末装置、或いは対象者の家族が保有する携帯端末等が挙げられる。また、受付管理部25は、オペレータによる作業であってもよいが、AI等の機械学習によりオペレータによる作業の一部または全部を代替してもよい。オペレータが対応する受付に関するデータは情報量が多いため、AI等の機械学習を用いて判断情報を生成することも有用である。通信制御部33は、通信部43による通信処理に係る制御を行う。
【0042】
記憶部50は、第1センサ41の測定結果と比較される閾値51を少なくとも格納する記憶装置である。記憶部50には、対象者の通常時の生体情報(年齢、性別、身長、体重といった体格に関するデータ、心拍数等のデータ)、行動情報(曜日、時間帯等による行動パターンの情報)等が格納されていてもよい。また、閾値51は、制御部30が対象者の生体情報および行動情報の少なくとも何れかを参照して算出するものであってもよい。また、第1センサ41によって測定された対象者の心拍数または呼吸数を示す情報が、制御部30によって記憶部50に格納される。通信部43は、外部装置との通信を行うインターフェースである。
【0043】
なお、図2とは別の態様として、制御部30、記憶部50および通信部43の少なくとも何れかは、第1センサ41および第2センサ42の少なくとも一方が備える構成であってもよい。また、安否確認システム1は、例えば、記憶部50が格納する情報のユーザ入力を受け付ける図示しない入力部であって、キーボード等のボタンやタッチパネルとして実現される入力部を別途備えていてもよい。或いは、記憶部50が格納する情報は、スマートフォン等の携帯端末を介して入力された情報を、通信部43を介して制御部30が取得したものであってもよい。
【0044】
〔安否確認システム1における処理の流れ〕
次に、図5図7を参照して、安否確認システム1における処理の流れを説明する。
【0045】
まず、図5について補足する。図5に示す居室10において、第1センサ41aの検知範囲および第2センサ42aの検出範囲は、領域Aである。また、第1センサ41bの検知範囲および第2センサ42bの検出範囲は、領域Bである。また、第1センサ41cの検知範囲および第2センサ42cの検出範囲は、領域Cである。また、第1センサ41dの検知範囲および第2センサ42dの検出範囲は、領域Dである。また、第1センサ41a~41dを特に区別しない場合、それらの一部または全部を、第1センサ41と呼称することもある。また、第2センサ42a~42dを特に区別しない場合、それらの一部または全部を、第2センサ42と呼称することもある。
【0046】
また、図5の居室10に出入りするための出入口60が、領域Aの外側にのみ設けられている。これにより、居室10の外部から領域B~Dに行くためには、領域Aを経由することを要する。また、必須ではないが、出入口60の近傍に、図示しない第2センサ42eが別途設けられているものとする。
【0047】
また、図6は、安否確認システム1における処理の流れを示すフローチャートである。図6のフローチャートに示す処理は、第2センサ42e、或いは他の第2センサ42が、居室10に入室する対象者を検出した場合に開始される。
【0048】
第1センサ41a~41dは、マイクロ波を照射して、反射したマイクロ波をセンシングする処理を開始する(S101)。ここで、反射したマイクロ波の周波数は、照射された物体の動きに応じてドップラシフトされている。なお、本ステップにおいてマイクロ波を照射する処理が実行されることは必須ではなく、後述するステップS103の処理が実行される直前に実行される構成であってもよい。
【0049】
続いて判定部31は、第2センサ42の何れかが、第1センサ41の検知範囲に対象者が存在することを検出したか否かを判定する(S102)。判定部31が、第2センサ42の何れかが上記検出を行ったと判定した場合(S102でYES、検出ステップ)、続いて第1センサ41は、ステップS103の処理を実行する。判定部31が、第2センサ42の何れも上記検出をしていないと判定した場合(S102でNO)、第2センサ42の何れかが対象者を検出するまでステップS102の処理が継続される。
【0050】
なお、第2センサ42の何れかが検出範囲内において複数の対象者を検出した場合には、ステップS103への遷移が行われず、ステップS102の処理が継続される構成であってもよい。これは、複数人の対象者が近傍に存在する場合には異常が生じたことに互いに気づくことが出来ると見做せるためである。また、これにより、測定中の対象者の近傍に他者が位置して測定に干渉することによる誤測定を抑制できる。ただし、居室10に複数の対象者が存在していたとしても、当該複数の対象者が、複数の第2センサ42の互いに異なる検出範囲のそれぞれにおいて検出された場合には、続いて第1センサ41がステップS103の処理を実行する構成であってもよい。特に、居室10が十分に広く、各対象者を検出した第2センサ42同士が離れている場合、上記の構成が有意である。
【0051】
続いて、上記検出を行った第2センサ42に対応する第1センサ41は、上述の反射したマイクロ波を参照して、前記対象者の心拍数および呼吸数の測定を開始する。(S103、測定ステップ)。ここで、第2センサ42に対応する第1センサ41とは、対象となる第2センサ42の検出範囲と同じ検知範囲を有する第1センサ41を意味する。例えば第2センサ42aが、第1センサ41aの検知範囲に対象者が一人だけ存在することを検出した場合、第1センサ41aが、当該対象者の心拍数および呼吸数の測定を開始する。また、この場合において、検知範囲に対象者が存在しない第1センサ41b~41dは、心拍数および呼吸数の測定を行わない。
【0052】
続いて、判定部31は、第1センサ41による心拍数および呼吸数の測定が行われている間に、第2センサ42が、対象者が隣接する検知範囲(領域)に移動したことを検出したか否かを判定する(S104)。判定部31が、対象者が隣接する検知範囲に移動したことを第2センサ42が検出したと判定した場合(S104でYES)、続いてステップS105の処理が実行される。判定部31が、第2センサ42が上記検出をしていないと判定した場合(S104でNO)、続いてステップS106の処理が実行される。
【0053】
続いて、対象者の移動元となった検知範囲に対応する第1センサ41は、心拍数および呼吸数の測定を終了し、対象者の移動先である検知範囲に対応する第1センサ41は、当該対象者の心拍数および呼吸数の測定を開始する(S105)。例えば対象者が領域Aから領域Bに移動した場合、第1センサ41aは、対象者の心拍数および呼吸数の測定を終了し、第1センサ41bが、上記測定を引き継いで実行する。また、これらの第1センサ41が測定したデータは、一連のデータとして扱われる。
【0054】
換言すると、第1センサ41の第1の検知範囲に隣接する第2の検知範囲へ第1の検知範囲から一人だけ存在していた対象者が移動したことを、第1の検知範囲に対応する第2センサ42と、第2の検知範囲に対応する第2センサ42とが検出した場合、制御部30は、第1の検知範囲に対応する第1センサ41により測定された対象者の心拍数および呼吸数のデータと、第2の検知範囲に対応する第1センサ41により測定された対象者の心拍数および呼吸数のデータとを連続する一連のデータとして、記憶部50に格納する。
【0055】
また、ステップS104およびS105の処理は、複数回実行され得る。つまり対象者が、第2センサ42の隣接する検出範囲に移動する度に、心拍数および呼吸数を測定する第1センサ41が当該第2センサ42に対応するものに切り替わる。また、各測定データは、一連のデータとして記憶部50に格納される。
【0056】
続いて判定部31は、第1センサ41の測定結果が、記憶部50に格納された閾値51によって規定される値の範囲内(以下、単に「値の範囲内」と呼称することもある。)にあるか否かを判定する(S106)。図7は、閾値51の一例を示す図である。ここで、図7における「BPM(Beats Per Minute)」とは、1分間当たりの拍動等の回数を示している。例えば図7に例示する心拍数の場合、判定部31は、対象者の1分間あたりの心拍数が40以上130以下であれば、第1センサ41の測定結果が値の範囲内にあると判定し、そうでなければ記憶部50に格納された閾値51によって規定される値の範囲外(以下、単に「値の範囲外」と呼称することもある。)であると判定する。また、呼吸数の例の場合、判定部31は、対象者の1分間あたりの呼吸数が8以上30以下であれば、第1センサ41の測定結果が値の範囲内にあると判定し、そうでなければ値の範囲内にはなく範囲外であると判定する。
【0057】
また、上述したように、第2センサ42の測定結果と比較される閾値51は、対象者の通常の生体情報および行動情報の少なくとも何れかに応じたものであってもよい。即ち、図7は簡略化した閾値51の構成を例示しているが、これに限定されず、判定部31は、対象者の年齢若しくは性別、又は運動習慣等の属性によって、互いに異なる閾値51を判定に用いてもよい。
【0058】
判定部31が、第1センサ41の測定結果が値の範囲外にあると判定した場合(S106でYES)、続いて発報部32は、ステップS107の処理を実行する。判定部31が、第1センサ41の測定結果が値の範囲内にあると判定した場合(S106でNO)、ステップS102の処理が再度実行される。
【0059】
なお、本ステップS106の別の態様として、判定部31は、直近の所定時間内における第1センサ41による複数の測定結果を参照し、対象者の心拍数および呼吸数の少なくとも一方において、値の範囲内にないと判定される上記測定結果の割合が所定割合以上であるか否かを判定する構成であってもよい。上記の構成においては、判定部31が、値の範囲内にないと判定される上記複数の測定結果の割合が所定割合以上であると判定した場合(S106でYES)、続いて発報部32は、ステップS107の処理を実行する。判定部31が、上記割合が所定割合未満であると判定した場合(S106でNO)、ステップS102の処理が再度実行される。
【0060】
続いて、発報部32は、対象者に異常が生じたことを示す情報を、通信部43を介して受付管理部(外部装置)25に発報する(S107)。続いて、受付管理部25は、当該安否確認システム1が設置された居室10を有する住宅に対して、例えば対象者の安否確認の問い合わせ等を自動的に行ってもよい。
【0061】
また、図6のフローチャートに示す処理は、第2センサ42e及び第2センサ42a~42dが、居室10からの全ての対象者の退室を検出するまで実行されるものであってもよい。また、居室10からの全ての対象者の退室が検出された場合、第1センサ41は、マイクロ波を照射して反射したマイクロ波をセンシングする処理を終了してもよい。
【0062】
図6のフローチャートを参照して説明した上記の方法によれば、対象者の安否を確認する方法における誤検知および処理負荷の増大を抑制できる。また、対象者に異常が生じていない場合においては、当該対象者が住宅内のどの居室に滞在する時間が長いかなど、対象者の生活リズムを把握することもできる。
【0063】
<付記事項>
安否確認システム1が通信部43を備え、制御部30が発報部32として機能することは必ずしも要求されない。例えば、制御部30が対象者に異常が生じたと判定した場合に、その旨をブザー等で通知する構成であってもよい。
【0064】
また、第1センサ41による測定、及びその測定結果に基づく判定は、心拍数および呼吸数のうち、何れか一方のみ行われる構成であってもよい。
【0065】
また、第1センサ41の測定結果と上述した閾値51とが等しい場合には、上記測定結果が値の範囲内にあるものと判定する構成でもよいし、範囲外にあるものと判定する構成でもよい。
【0066】
また、居室10には、居室10内に設けられた第1センサ41及び第2センサ42のうち、少なくとも一方の機能を有効とするか無効とするかを切り替えるスイッチが設けられていてもよい。例えば対象者が居室10内において運動する場合に、上記スイッチを操作し、各センサの機能を一時的に無効にすることによって、安否確認システム1が、対象者の心拍数または呼吸数に異常が生じていると誤判定することを抑制することができる。
【0067】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る安否確認システムは、所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させる、前記第1センサおよび前記第2センサの制御を行う制御部と、を備える構成である。
【0068】
本発明の態様2に係る安否確認システムは、上記の態様1において、前記第2センサにより、前記検知範囲に一人だけ存在していた前記対象者が前記検知範囲から退出したことを検出した場合、前記第1センサによる前記対象者の前記生体情報の測定を終了させる構成としてもよい。
【0069】
本発明の態様3に係る安否確認システムは、上記の態様1または2において、第1の検知範囲に隣接する第2の検知範囲へ前記第1の検知範囲から前記一人だけ存在していた前記対象者が移動したことを、前記第1の検知範囲に対応する第2センサと、前記第2の検知範囲に対応する第2センサとが検出した場合、前記第1の検知範囲に対応する第1センサにより測定された前記対象者の前記生体情報のデータと、前記第2の検知範囲に対応する第1センサにより測定された前記対象者の前記生体情報のデータとを連続する一連のデータとする構成としてもよい。
【0070】
本発明の態様4に係る安否確認システムは、上記の態様1から3までの何れかにおいて、前記第2センサの検出範囲は、前記第1センサの検知範囲よりも広い構成としてもよい。
【0071】
本発明の態様5に係る安否確認システムは、上記の態様1から4までの何れかにおいて、前記第1センサは、前記対象者の心拍数および呼吸数の少なくとも一方を測定する構成としてもよい。
【0072】
本発明の態様6に係る制御装置は、所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、を制御し、前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させる構成である。
【0073】
本発明の態様7に係る居室は、居室であって、当該居室における所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサと、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサと、前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定させる、前記第1センサおよび前記第2センサの制御を行う制御装置と、を備える構成である。
【0074】
本発明の態様8に係る安否確認方法は、居室に設置され、前記居室における所定検知範囲内での対象者の生体情報を非接触でセンシングする第1センサによるセンシングステップと、前記居室に設置され、前記第1センサの検知範囲における対象者の人数を非接触で検出する第2センサによる検出ステップと、前記第2センサが、前記検知範囲に前記対象者が一人だけ存在することを検出した場合、前記第1センサにより前記対象者の前記生体情報を測定する測定ステップと、を含む方法である。
【0075】
〔ソフトウェアによる実現例〕
安否確認システム1に含まれる制御ブロック(特に制御部30の判定部31、発報部32および通信制御部33)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0076】
後者の場合、安否確認システム1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 安否確認システム
10 居室
25 受付管理部
30 制御部(制御装置)
31 判定部
32 発報部
33 通信制御部
41 第1センサ
42 第2センサ
43 通信部
50 記憶部
51 閾値

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7