(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001215
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】移送器具
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20241225BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
A61M31/00
A61B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100690
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C066
4C160
【Fターム(参考)】
4C066BB05
4C066CC04
4C066CC06
4C066DD06
4C066FF01
4C160MM38
4C160MM43
4C160NN03
4C160NN08
4C160NN13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具を提供する。
【解決手段】移送器具10の第1キャリア部材18は、外筒22の内部に軸方向に沿って移動可能に配置される第1シャフト24と、第1シャフト24の先端部に配置されたシート状の第1支持部26とを備える。第1支持部26は、医療用シートを保持可能な第1支持面261と、第1支持面261から上方に向けて突出した一対の第1突出部38と、第1支持面261と第1突出部38との境界部に設けられ第1突出部38を折り曲げた第1折曲部444とを備える。第1支持部26には、第1折曲部444に設けられ第1支持部26を厚さ方向に貫通する第1スリット961を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具であって、
先端開口を有する外筒と、
前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置されるシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、
を備え、
前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面と、
前記シャフトの移動方向と直交する前記支持面の幅方向の両側部から上方に向けて突出した一対の突出部と、
前記支持部を厚さ方向に貫通するスリットと、
を有し、
前記支持部は、前記シャフトの延在方向と直交方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、
前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、
前記支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、
前記支持部が前記外筒の先端部から前記先端方向に突出し、前記支持部に前記医療用シートが載置された状態で、前記外筒に対して前記支持部を前記基端方向に相対移動させるとき、前記外筒の先端開口に向けて前記支持部を案内して、前記支持部の幅方向の両側が前記支持面に向かって突出するように前記支持部が湾曲形状に変形する、移送器具。
【請求項2】
請求項1記載の移送器具において、
前記支持部は、前記支持面と前記突出部との境界部に設けられ、前記支持面に対して前記突出部を折り曲げた折曲部を有し、前記スリットが前記折曲部に設けられる、移送器具。
【請求項3】
請求項2記載の移送器具において、
前記スリットは、前記折曲部の延在方向に沿って設けられる、移送器具。
【請求項4】
請求項3記載の移送器具において、
前記スリットは、前記折曲部の延在方向において互いに離間した複数の切欠部を有する、移送器具。
【請求項5】
請求項2記載の移送器具において、
各前記折曲部に設けられた前記スリットは、前記折曲部の延在方向に沿って延びる単一の切欠部からなる、移送器具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の移送器具において、
前記支持部は、前記支持部の基端側を構成する基端支持部を備え、
前記基端支持部は第2折曲部を有し、前記第2折曲部には、前記支持部を前記厚さ方向に貫通する第2スリットが設けられる、移送器具。
【請求項7】
請求項1記載の移送器具において、
前記スリットが前記突出部に設けられる、移送器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば臓器移植に用いられる医療用シート(細胞シート)を生体の処置対象部に移送するための移送器具が開示されている。この移送器具は、外筒と、外筒内に摺動可能に支持されたスライド部材と、スライド部材の先端部に設けられたシート支持部材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療用シートを処置対象部へとより効率的に移送することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の態様は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具であって、先端開口を有する外筒と、前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置されるシャフトと、前記シャフトの先端部に配置されたシート状の支持部とを有するキャリア部材と、を備え、前記支持部は、前記医療用シートを保持可能な支持面と、前記シャフトの移動方向と直交する前記支持面の幅方向の両側部から上方に向けて突出した一対の突出部と、前記支持部を厚さ方向に貫通するスリットと、を有し、前記支持部は、前記シャフトの延在方向と直交方向の前記支持部の幅が前記外筒の内周長さより大きく、前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、前記支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、前記支持部が前記外筒の先端部から前記先端方向に突出し、前記支持部に前記医療用シートが載置された状態で、前記外筒に対して前記支持部を前記基端方向に相対移動させるとき、前記外筒の先端開口に向けて前記支持部を案内して、前記支持部の幅方向の両側が前記支持面に向かって突出するように前記支持部が湾曲形状に変形する、移送器具である。
【0006】
この移送器具によれば、支持部の支持面に医療用シートを載置したとき、スリットを通じて支持面における水分を効果的に支持部の外側に排出できるため、支持面に載置された医療用シートを処置対象部に移送するとき、水分の影響を抑制して処置対象部の所定の位置に医療用シートを載置できる。そのため、支持部によって医療用シートを処置対象部に効率よく移送することができる。第2位置において支持部が展開した際、スリットによって支持面に対する突出部の形状付け(折り曲げ)を効果的に維持することができる。
【0007】
(2)上記の(1)記載の移送器具において、前記支持部は、前記支持面と前記突出部との境界部に設けられ、前記支持面に対して前記突出部を折り曲げた折曲部を有し、前記スリットが前記折曲部に設けられてもよい。
【0008】
この構成により、第2位置において支持部が展開した際、スリットによって折曲部を基点とした突出部の形状付け(折り曲げ)を効果的に維持することができる。
【0009】
(3)上記の(2)記載の移送器具において、前記スリットは、前記折曲部の延在方向に沿って設けられてもよい。
【0010】
この構成により、折曲部に沿ってスリットが延在しているため、長尺なスリットによって支持面の水分をより効果的に支持部の外部へと排出できる共に、突出部の形状付けをより効果的に維持することができる。
【0011】
(4)上記の(2)又は(3)記載の移送器具において、前記スリットは、前記折曲部の延在方向において互いに離間した複数の切欠部を有してもよい。
【0012】
この構成により、折曲部の延在方向に沿って連続する単一のスリットを備える構造に比べ、折曲部の延在方向に複数のスリットをより広範囲に配置できる。そのため、支持面における水分の排出範囲を拡大でき、しかも突出部の形状付けをより広範囲で行うことが可能である。
【0013】
(5)上記の(2)~(4)のいずれか1つに記載の移送器具において、各前記折曲部に設けられた前記スリットは、前記折曲部の延在方向に沿って延びる単一の切欠部であってもよい。この構成により、支持部におけるスリットの形成が容易である。
【0014】
(6)上記の(2)~(5)のいずれか1つに記載の移送器具において、前記支持部は、前記支持部の基端側を構成する基端支持部を備え、前記基端支持部は第2折曲部を有し、前記第2折曲部には、前記支持部を前記厚さ方向に貫通する第2スリットが設けられてもよい。
【0015】
この構成により、支持部が基端支持部側から外筒内に収容されるとき、第2折曲部を基点として支持部を効果的に湾曲変形させることができ、支持部を円滑に外筒内に収容できる。第2スリットによって、支持面における水分をより効果的に支持部の外側に排出できる。
【0016】
(7)上記の(1)記載の移送器具において、前記スリットが前記突出部に設けられてもよい。
【0017】
この構成により、スリットを通じて支持部の水分を外部に排出しつつ、突出部の形状付けを効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移送器具の支持部には、支持面に対して突出部を折り曲げた折曲部にスリットを備え、スリットが支持部を厚さ方向に貫通する。そのため、支持部の支持面に医療用シートを載置したとき、スリットを通じて支持面における水分を効果的に支持部の外側に排出できる。そのため、支持面に載置された医療用シートを処置対象部に移送するとき、水分の影響を抑制して処置対象部の所定の位置に医療用シートを載置できる。これにより、支持部によって医療用シートを処置対象部に効率よく移送することができる。第2位置において支持部が展開した際、スリットによって支持面に対する突出部の形状付け(折り曲げ)を効果的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る移送器具の斜視図である。
【
図6】
図6は、第1突出部にスリットを有した移送器具の先端部の平面図である。
【
図7】
図7は、突出部を形成する前の平面状態での第1支持部を示す平面図である。
【
図8】
図8は、第1変形例に係る第1支持部を有した移送器具の先端部の平面図である。
【
図9】
図9は、
図1の移送器具を用いた医療用シートの移送方法の手順を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、第2変形例に係る第1支持部を有した移送器具の先端部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示されるように、本実施形態に係る移送器具10は、医療用シート300を生体の処置対象部に移送するための医療機器である。移送器具10は、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用される。この場合、医療用シート300は、心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移植される(
図14~
図17参照)。移送器具10では、複数枚の医療用シート300を移植対象部402に貼付することができる。
【0021】
このような医療用シート300は、医療用途の医薬品や再生医療等製品、医療機器等を含む。医療用シート300は、フィルム状、膜状(ゲル状の物体)等のシート状に形成されている。医療用シート300は、フィブリン等を塗布して補強されてもよい。細胞を含む再生医療等製品は、例えば、細胞シート(シート状細胞培養物)、スフェロイド等を含む。細胞シートは、自家細胞又は他家細胞を培養して形成することができる。細胞シートを構成する細胞は、例えば、体性幹細胞(somatic stem cells)(成体幹細胞(adult stem cells))、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells)、又はiPS細胞(人工多能性幹細胞:induced Pluripotent Stem Cells)由来心筋細胞を含む。体性幹細胞は、好ましくは、骨格筋芽細胞(筋芽細胞(myoblast cells))を含む。
【0022】
医療用シート300は、組織接着剤、局所麻酔剤等を含んでもよい。医療用シート300の厚さは、例えば約100μmであり、医療用シート300の直径は、例えば約60mmである。ただし、医療用シート300の厚さ及び直径(大きさ)は、適宜設定可能である。
【0023】
医療用シート300は、心臓400以外の臓器(例えば、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、食道等)に移植されるシートであってもよい。また、医療用シート300は、医療用途であれば、例えば、癒着を防止するためのシートであってもよい。
【0024】
図1及び
図2に示すように、移送器具10は、器具本体12と、内視鏡14と、固定部材16とを備える。器具本体12は、第1キャリア部材18と、第2キャリア部材20と、外筒22とを有する。なお、移送器具10は、内視鏡14を備える場合に限定されない。
【0025】
図2において、第1キャリア部材18は、第1シャフト24及び第1支持部26を有する。
【0026】
第1シャフト24は、第1内腔28を有する管状体(本実施形態では、円管部材)である。第1内腔28は、第1シャフト24の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共に第1シャフト24の基端(矢印X2方向の端)に開口する。第1シャフト24の基端には、第2シャフト48の外周面に密着する気密用の弁体55が設けられる。弁体55の外周面にはマーカ551が設けられる。移送器具10を使用するとき、ユーザがマーカ551を視認可能である。なお、第1シャフト24は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0027】
第1シャフト24は、外筒22の軸方向に延在して外筒22の内部に軸方向に沿って移動可能に配置される。第1シャフト24は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1シャフト24の構成材料としては、特に限定されないがポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。第1シャフト24は、金属材料によって構成されてもよい。
【0028】
第1シャフト24は、可撓性を有してもよい。第1シャフト24は、曲げた形状を保持可能なフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、体腔内において第1シャフト24を適宜の形状に屈曲させると共にその屈曲形状を保持できる。
【0029】
図2~
図4に示すように、第1支持部26は、第1シャフト24の先端部に取り付けられる。第1支持部26は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1支持部26は、医療用シート300を保持可能である。第1支持部26は、可撓性を有した樹脂製のシート材(フィルム材)を所定形状に折り曲げることにより形成される。第1支持部26は、例えば、シート成形型によってシート材を所定形状に成形することにより形成される。シート材の肉厚は、特に限定されないが、例えば、100μm以上200μm以下に設定されるのが好ましい。第1支持部26は、第1接合部30及び第1支持本体32を有する。
【0030】
第1支持部26の構成材料としては、特に限定されないが透明性を有することが望ましく、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂等が挙げられる。また、第1支持部26はメッシュ状であってもよい。
【0031】
図4において、第1接合部30は、第1シャフト24の先端部の内周面に接着剤によって接着されている。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、UV接着剤、ホットメルト接着剤、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤)等が挙げられる。第1接合部30は、第1シャフト24の内周面に熱融着されてもよい。なお、第1シャフト24の先端部に対して第1支持部26が着脱可能であってもよい。
【0032】
図2に示すように、第1支持本体32は、第1接合部30から先端方向に延出している。第1支持本体32は、基端支持部34と、中間支持部36と、一対の第1突出部38と、一対の第2突出部40と、先端支持部42とを有する。第1支持本体32は、第1支持面261を有する。第1支持面261を上方に向けたときに第1シャフト24のマーカ551が上方に向くように、マーカ551が配置される。すなわち、マーカ551によって、ユーザが第1支持部26における第1支持面261の方向を確認可能である。
【0033】
図3に示すように、基端支持部34は、その延出方向に向かって幅広に形成されている。換言すれば、基端支持部34の幅方向の両側部は、第1接合部30に向かってテーパ状に傾斜している。中間支持部36は、先端から基端方向(矢印X2方向)に向けて徐々に幅が小さくなるテーパ状に形成される。
【0034】
先端支持部42は、中間支持部36の先端と一対の第2突出部40の先端とに繋がっている。先端支持部42は、先端方向(矢印X1方向)に向かって円弧状に突出している。すなわち、
図3に示す第1支持面261と直交する方向から見て、第1支持部26の先端支持部42は、一対の第2突出部40を繋ぐ円弧状である。
【0035】
図4に示すように、基端支持部34は、第1接合部30の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに概ね沿うように延出している。中間支持部36は、基端支持部34の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに対して交差し、第1支持部26の先端方向(矢印X1方向)に向かって延出している。
【0036】
図2及び
図3において、一対の第1突出部38は、第1シャフト24の移動方向と直交する中間支持部36の幅方向の両側部から上方(矢印Y方向)且つ中間支持部36の幅方向内方に突出している。一対の第1突出部38は、基端支持部34に接続されている。第1突出部38は、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した円弧状である。
【0037】
図3に示すように、一対の第2突出部40は、一対の第1突出部38の先端にそれぞれ繋がっている。一対の第2突出部40は、中間支持部36の幅方向の両側部から上方且つ中間支持部36の幅方向外方に突出している。第2突出部40は、第1突出部38よりも小さな曲率で形成される。第2突出部40は、第1突出部38より第1支持面261に対する突出高さが低い。
【0038】
図3に示すように、以下、第1支持部26の第1突出部38及び第2突出部40を合わせた部分を「突出部37」という。従って、第1支持部26の幅方向の両側には一対の突出部37が設けられている。
図3において、第1シャフト24の軸方向と直交する方向(W方向)が第1支持部26の幅方向である。W方向は、他の構成要素(外筒22等)の幅方向でもある。本実施形態において第1支持部26は、一対の突出部37を有するが、
図3におけるW1は、第1支持部26を平面状に展開した場合の第1支持部26の幅が最大になる箇所の幅である。すなわち、第1支持部26の幅W1は、一対の突出部37を形成する前(折曲げ前)の平面状態での第1支持部26Pの最大幅である。第1支持部26の幅W1は、外筒22の内周長さL(
図13参照)よりも大きい。
図13において、外筒22の内周長さLは、外筒22の周方向に沿った内周面の長さである(L=2πR)。Rは外筒22の内腔78の半径である。
【0039】
一対の第1突出部38の各々は、一対の折曲部444を有する。以下、折曲部444を、「第1折曲部444」という。一対の第1折曲部444の各々は、一対の第1突出部38を第1支持部26の第1支持面261(中間支持部36)に対して折り曲げる(
図5参照)。
【0040】
第1支持本体32は、上方(矢印Y方向)を向き第1支持面261を含む表面461と、表面461の反対面である裏面462とを有する。第1支持面261は、基端支持部34の上面、中間支持部36及び先端支持部42の上面に連なった平坦面である。第1支持面261には、第2キャリア部材20の後述する第2支持部50を第1支持面261に対して円滑にスライドできるように潤滑剤が塗布されてもよい。
【0041】
図2に示すように、第2キャリア部材20は、第2シャフト48と、第2支持部50と、ハブ52とを有する。
【0042】
第2シャフト48は、第2内腔57を有する管状体(本実施形態では、円管部材)である。第2シャフト48の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも長い。第2シャフト48は、第1シャフト24の第1内腔28に挿通されている(
図1及び
図4参照)。換言すれば、第2シャフト48の先端部は、第1シャフト24の先端開口から先端方向(矢印X1方向)に突出している。第2シャフト48の基端部は、第1シャフト24の基端開口から基端方向(矢印X2方向)に突出している(
図1参照)。第2シャフト48は、第1シャフト24に沿って延在して第1シャフト24に沿って移動可能に設けられる。なお、第2シャフト48は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0043】
第2シャフト48は、第1支持部26の形状に追従できるように構成される。第2シャフト48の構成材料としては、例えば、第1シャフト24の構成材料よりも柔軟性がある材料が選択される。具体的に、第2シャフト48の構成材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、シリコーンゴム、金属コイル(樹脂との複合も含む)等が挙げられる。第2シャフト48は、可撓性を有する。
【0044】
図4に示すように、第2シャフト48は、キャリア保持部54と、第2シャフト48の先端部により構成された押付部56を有する。押付部56は、エラストマ材等の弾性体から形成される。押付部56は、外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、第1支持部26を外筒22の内面に押し付ける。
【0045】
キャリア保持部54の先端は、押圧面58を有する。キャリア保持部54は、第1支持部26に支持された医療用シート300の外周端面を押圧面58により先端方向(矢印X1方向)に押圧可能である。本実施形態では、押付部56には、第2支持部50を支持するキャリア保持部54が設けられる。キャリア保持部54は、押圧面58と、取付孔60とを備える。
【0046】
図4において、押圧面58は、キャリア保持部54の先端面に設けられる。押圧面58に取付孔60が開口する。押圧面58には、第2支持部50が取り付けられる。押圧面58は、医療用シート300の外周端面を先端方向(矢印X1方向)に押圧する(
図16参照)。
【0047】
図2~
図4において、第2支持部50は、可撓性を有したシート状に構成される。第2支持部50は、第2接合部70及び第2支持本体72を有する。第2接合部70は、第2支持部50の基端に設けられる。第2接合部70は、第2支持本体72の基端に設けられる。第2接合部70は、キャリア保持部54の取付孔60に挿入され、例えば、接着されている。第2接合部70は、接着以外の適宜の接合方法によりキャリア保持部54の取付孔60に接合されてもよい。また、第2支持部50は、キャリア保持部54と一体的に成形されてもよい。
【0048】
第2支持本体72は、第2接合部70から先端方向(矢印X1方向)に延出している。第2支持本体72の第2接合部70からの延出方向長さは、第1支持本体32の第1接合部30からの延出方向長さよりも短い。第2支持本体72の上面には、医療用シート300を載せるための第2支持面74が設けられる。第2支持面74は、平坦面である。第2支持本体72は、第1支持本体32よりも小さい。すなわち、第2支持面74の面積は、第1支持面261の面積よりも小さい。
【0049】
図2において、ハブ52は、第2シャフト48の基端部に取り付けられている。
【0050】
図1及び
図2において、外筒22は、内腔78を有する円筒部材である。内腔78は、外筒22の先端(矢印X1方向の端)に開口する先端開口80を有する。内腔78は、外筒22の基端(矢印X2方向の端)に開口する。外筒22は、可撓性を有する。外筒22の構成材料は、上述した第1シャフト24の構成材料と同様の材料が挙げられる。外筒22の内腔78には、第1シャフト24が挿通されている。外筒22の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも短い。外筒22の基端には、第1シャフト24の外周面に密着する気密用の弁体84が設けられる。
【0051】
図2及び
図4において、外筒22の先端面は、外筒22の軸方向と直交する方向に沿って延在している。
【0052】
図2に示すように、内視鏡14は、長尺な内視鏡本体86を有する。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の外周面に固定部材16によって固定されている(
図1参照)。内視鏡本体86の先端面に設けられた対物レンズ88は、外筒22の先端方向(矢印X1方向)を向いている。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の軸方向の中間部に固定される。ただし、内視鏡本体86の先端部は、外筒22の先端部に固定されてもよい。
【0053】
固定部材16は、例えば、固定筒90と、固定チューブ92とを含む。固定筒90は、例えば、硬質な樹脂材料によって構成されている。固定筒90の内腔には、内視鏡本体86を挿入可能である。固定筒90は、外筒22の長手方向に沿うように配置されている。固定チューブ92は、固定筒90を外筒22の所定位置に固定するためのチューブである。固定チューブ92は、例えば、熱収縮チューブである。なお、内視鏡本体86の先端部の外筒22への固定方法は、適宜設定可能である。
【0054】
図3に示すように、第1支持部26の第1支持本体32は、一対の基端突出部94をさらに有する。一対の基端突出部94は、基端支持部34に設けられる。基端突出部94は、第1シャフト24の移動方向と直交する基端支持部34の幅方向(W方向)の両側部から斜め上方、且つ基端支持部34の幅方向外方及び基端方向に向かう斜め方向に突出している。一対の基端突出部94の先端が、第1突出部38に接続される。一対の基端突出部94の後端が、第1接合部30(
図2参照)に接続されている。
【0055】
一対の基端突出部94の各々は、一対の折曲部98を有する。以下、折曲部98を、「第2折曲部98」という。一対の第2折曲部98の各々は、一対の基端突出部94を第1支持部26の第1支持面261に対して折り曲げる。第2折曲部98は、基端支持部34の形状に沿って形成される。第1支持部26の平面視において、第2折曲部98は、第1支持部26の幅方向内方且つ先端方向に向けて凸状に湾曲した略円弧形状である。第1支持部26の幅方向(W方向)において、一対の第2折曲部98の離間距離は、第1接合部30に向かって徐々に小さくなる。すなわち、一対の第2折曲部98は、基端支持部34の基端から先端方向(矢印X1方向)に向けて幅方向外方に広がる。第2折曲部98は、第1支持部26の第1支持面261と基端突出部94との境界部に設けられる。第2折曲部98は、第1支持面261に対して基端突出部94を折り曲げた部位である。
【0056】
図2に示すように、第1支持部26は、スリット構造96をさらに有する。
図5に示すように、スリット構造96は、第1支持部26を厚さ方向に貫通する。
図3に示すように、スリット構造96は、第1折曲部444に設けられるスリット961(以下、「第1スリット961」という)と、第2折曲部98に設けられるスリット962(以下、「第2スリット962」という)とを備える。
【0057】
第1スリット961は、一対の第1折曲部444の各々に設けられる。各第1スリット961は、第1折曲部444の延在方向に沿って設けられる。すなわち、一対の第1スリット961は、第1支持面261を挟んだ第1支持部26の幅方向外方に配置される。一対の第1スリット961が、第1支持部26の幅方向(W方向)に互いに離間する。一対の第1スリット961は、互いに略平行に配置される。第1折曲部444は、第1支持部26における第1支持面261と第1突出部38との境界部に設けられる。第1折曲部444は、第1支持面261に対して第1突出部38を折り曲げた部位である。
【0058】
第1スリット961は、複数の第1切欠部1001から構成されるミシン目である。第1切欠部1001は、第1支持部26を厚さ方向に貫通する(
図5参照)。各第1切欠部1001は、第1折曲部444の延在方向と直交する幅に対し、第1折曲部444の延在方向に沿った長さが大きい。複数の第1切欠部1001は、第1折曲部444の延在方向において互いに離間する。第1切欠部1001の数、第1折曲部444の延在方向と直交する第1切欠部1001の幅は、適宜設定される。第1スリット961を通じて、第1支持部26の第1支持面261(表面461)と裏面462とが連通する。第1スリット961は、第1折曲部444に形成される場合に限定されない。
図6に示すように、例えば、一対の第1突出部38に第1スリット961Aが形成されていてもよい。
【0059】
なお、各第1切欠部1001は、第1折曲部444の延在方向と直交する幅に対し、第1折曲部444の延在方向に沿った長さが大きい場合に限定されない。例えば、第1切欠部1001は、第1折曲部444の延在方向と直交する幅に対し、第1折曲部444の延在方向に沿った長さが小さくてもよいし、第1折曲部444の延在方向と直交する幅と第1折曲部444の延在方向に沿った長さとが同じでもよい。
【0060】
第2スリット962は、第1支持部26の第2折曲部98に設けられる。第2スリット962は、第2折曲部98の延在方向に沿って設けられる。
図3に示す第1支持部26の平面視において、第2スリット962は、第1支持部26の幅方向内方に向けて凸状に湾曲した略円弧状である。すなわち、第2スリット962は、第1支持部26の基端支持部34に設けられる。
【0061】
第2スリット962は、複数の第2切欠部1002から構成されるミシン目である。第2切欠部1002は、第1支持部26を厚さ方向に貫通する。第2折曲部98の延在方向と直交する幅に対し、第2折曲部98の延在方向に沿った長さが大きい。複数の第2切欠部1002は、第2折曲部98の延在方向において互いに離間する。第2切欠部1002の数、第2折曲部98の延在方向と直交する第2切欠部1002の幅は、適宜設定される。第2スリット962を通じて、第1支持部26の第1支持面261(表面461)と裏面462とが連通する。
【0062】
なお、各第2切欠部1002は、第2折曲部98の延在方向と直交する幅に対し、第2折曲部98の延在方向に沿った長さが大きい場合に限定されない。例えば、第2切欠部1002は、第2折曲部98の延在方向と直交する幅に対し、第2折曲部98の延在方向に沿った長さが小さくてもよいし、第2折曲部98の延在方向と直交する幅と第2折曲部98の延在方向に沿った長さとが同じでもよい。
【0063】
図3に示すように、第1支持部26の平面視において、第1及び第2スリット961、962を含むスリット構造96が、第1支持部26の第1支持面261を囲むように配置される。なお、スリット構造96は、第1及び第2スリット961、962を備える場合に限定されない。例えば、スリット構造96が、第1スリット961のみを備える構成でもよい。
【0064】
図7に示すように、スリット構造96は、一対の突出部37を形成する前(折曲げ前)の平面状態での第1支持部26P(以下、シート材Sともいう)に予め形成される。シート材Sは、長手方向に長尺な略楕円形状である。シート材Sの先端Saは、先端方向に向けて凸状となる湾曲形状である。シート材Sの基端部Sbは、基端方向に向けて凸状となる湾曲形状である。シート材Sの基端部Sbは、基端方向に突出して第1接合部30となる膨出部Scを有する。スリット構造96の一対の第1スリット961は、シート材Sの長手方向中央から基端方向(矢印X2方向)に配置される。第1スリット961は、幅中心から幅方向外方に離間して略平行に配置される。第1スリット961は、シート材Sの長手方向に沿って形成される。第1スリット961は、シート材Sの幅方向両側を折り曲げて第1突出部38を成形するとき、第1折曲部444となる位置に形成される。換言すれば、第1突出部38と第1支持面261との境界部となる位置に第1スリット961(第1切欠部1001)を予め形成しておく。
【0065】
スリット構造96の一対の第2スリット962は、シート材Sの基端部Sbに設けられる。第2スリット962は、第1スリット961の基端に対して基端方向に配置される。一対の第2スリット962は、先端が最も幅方向に互いに離間して配置され、先端から基端方向に向けて徐々に幅方向に近づくように湾曲する。第2スリット962の基端は、膨出部Scの途中まで延在する。なお、第2スリット962の基端は、膨出部Scの基端部まで延在してもよい。第2スリット962は、シート材Sを折り曲げて基端突出部94を成形するとき、第2折曲部98となる位置に形成される。換言すれば、基端突出部94と第1支持面261との境界部となる位置に第2スリット962(第2切欠部1002)を予め形成しておく。
【0066】
図示しないシート成形型によってシート材Sを所定形状に成形し、第1支持部26を形成することで、第1スリット961を有した第1折曲部444が折り曲げられて第1突出部38が形成され、第2スリット962を有した第2折曲部98が折り曲げられて基端突出部94が形成される(
図3参照)。
【0067】
なお、第1及び第2スリット961、962は、第1及び第2折曲部444、98の延在方向に沿って長尺な構成に限定されない。例えば、
図8に示すように、第1変形例に係る第1支持部26Aは、第1折曲部444及び第2折曲部98に沿って設けられるスリット構造96Aを備える。スリット構造96Aのスリット961Aは、平面視で円形状に形成される複数の第1切欠部1001Aを有する。以下、スリット961Aを、「第1スリット961A」という。第1切欠部1001A(第1スリット961A)は、第1支持部26Aを貫通し、第1折曲部444の延在方向に沿って互いに離間して複数設けられる。スリット構造96Aのスリット962Aは、平面視で円形状に形成される第2切欠部1002Aを有する。以下、スリット962Aを、「第2スリット962A」という。第2切欠部1002A(第2スリット962A)は、第1支持部26Aを貫通し、第2折曲部98の延在方向に沿って互いに離間して複数設けられる。第1切欠部1001A及び第2切欠部1002Aの形状は、円形状に限定されるものではない。
【0068】
次に、医療用シート300を生体の処置対象部に移送する移送方法について説明する。具体的に、
図14~
図17に示すように、胸腔鏡下手術により医療用シート300を心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移送する移送方法について説明する。
図9に示すように、本実施形態に係る移送方法は、準備工程、シート載置工程、収容工程、配置工程、展開工程、移動工程、抜去工程を含む。
【0069】
まず、準備工程(ステップS1)において、上述した本実施形態に係る移送器具10を準備する。以下では、
図1に示すような状態を移送器具10の初期状態として説明する。初期状態では、第1シャフト24及び第2シャフト48を外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させ、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22の先端開口80から先端方向に突出させた突出位置(第2位置)の状態となっている。第1及び第2支持部26、50の各々は、外筒22から先端方向に露出することで展開し、第1支持部26の第1支持面261の上に第2支持部50を配置させる。すなわち、第2支持部50は、第1支持部26の第1支持面261に重なった後退位置に配置される。このとき、キャリア保持部54の基端部は、第1シャフト24の第1内腔28に挿入されている。
【0070】
続いて、シート載置工程(ステップS2)において、
図10に示すように、シャーレ401内に配置されている医療用シート300を第2支持面74に載せる。医療用シート300は、第2支持面74に載せた状態で第2支持部50から外側に張り出している。第1支持面261は、医療用シート300のうち第2支持部50から外側に張り出した張出部302を支持する。
図11に示すように、このとき、第1支持部26において、医療用シート300に含まれる水分Mが、第1支持面261に沿って流れ、第1スリット961(複数の第1切欠部1001)及び第2スリット962(複数の第2切欠部1002)を通じて第1支持面261から裏面462側(外部)へと排出される(図中、破線矢印参照)。
【0071】
その後、収容工程(
図9のステップS3)において、
図12に示すように、医療用シート300を第1支持部26及び第2支持部50と共に外筒22内に収容した収容位置(第1位置)とする。具体的に、第1キャリア部材18の第1シャフト24と第2キャリア部材20の第2シャフト48とを一緒に外筒22に対して基端方向(矢印X2方向)に移動させる。
【0072】
そうすると、第1支持部26の基端支持部34(
図2参照)が外筒22の先端開口80から基端方向に引き込まれる。このとき、基端支持部34のテーパ状の両側部が外筒22の先端開口80に接触することにより、基端支持部34には、基端支持部34を外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、基端支持部34は、丸まりながら外筒22内にスムーズに引き込まれる。このとき、第1支持部26は、先端側が大径で、基端支持部34が小径となるように円錐状に丸まりながら、外筒22内に収容される。
【0073】
第1支持部26の基端支持部34が変形すると、第1支持部26の中間支持部36に外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、中間支持部36(
図2参照)は、丸まりながら外筒22内に引き込まれる。このとき、中間支持部36は、外筒22の内面に沿って円筒状に変形する。一対の第1突出部38の各々は、第1支持部26の表面461が内側、第1支持部26の裏面462が外側となるように湾曲していく。
図13に示すように、第1支持部26の幅方向両側の裏面462同士が外筒22の中心軸と直交方向に延在する仮想線D上で互いに接触する。一方の第1突出部38と他方の第1突出部38とが接触して下方(第1支持面261、表面461)に向けて収容されていく。
【0074】
これにより、第1支持部26の裏面462が外筒22の内面に密着した湾曲形状となり、各第1突出部38が外筒22の中心に向けて折り返すようにさらに湾曲し、各第1突出部38の自由端が外筒22の中心軸より下方に配置される。すなわち、第1支持部26は、外筒22の内面に沿ったハート型に湾曲する。
【0075】
ハート型とは、一方において凸状に湾曲した形状と、一方とは反対側となる他方において二つの凸状に湾曲した形状からなる略円形状の形状をいう。管状体(外筒22)の内腔78にハート型が形成される場合、管状体の内面に沿って他方に突出した二つの凸状の湾曲形状が互いに近づいて一部の周面が互いに接することで、全体の輪郭が管状体の内面に沿った略円形状となる(
図13中、第1支持部26の形状を参照)。
【0076】
第1支持部26の湾曲変形に伴って、第2支持部50も同様に、第1支持部26の内側(表面461側)で第1支持部26に沿って第2支持部50が湾曲変形する。第1支持部26及び第2支持部50の湾曲変形に伴って、医療用シート300が、第1支持本体32及び第2支持本体72の形状に対応した形状に変形し、医療用シート300が外筒22内に収容される。
【0077】
収容工程は、
図12に示すように、第1支持部26の全体が外筒22内に完全に挿入されることにより完了する。収容工程完了時において、第1支持部26の一部が外筒22の先端開口80から突出してもよい。この場合、第1支持部26の一部が外筒22の先端開口80から突出している状態が、第1支持部26の第1位置である。
【0078】
その後、配置工程(
図9のステップS4)において、
図14に示すように、胸部408の切開創409から胸腔410内に移送器具10を挿入する。この時、心臓400における移植対象部402の近くに移送器具10の先端を位置させると共に内視鏡14の先端を胸腔410内に位置させる。なお、移送器具10を胸腔410内に挿入する前に、ハブ52の接続ポート部に図示しない液体供給器具を接続して液体(例えば、生理食塩水)を導入してもよい。
【0079】
続いて、展開工程(
図9のステップS5)において、
図15に示すように、第1支持部26、第2支持部50及び医療用シート300を展開させる。具体的に、展開工程では、第1シャフト24を把持し、第1シャフト24を外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させる。これにより、第1シャフト24の弁体55によって、第1シャフト24と共に第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)に向けて一体的に移動する。そうすると、外筒22の先端開口80から露出した第1支持部26は、復元力によって元の形状に復帰する。第1支持部26が展開した第2位置において、第2支持部50は、平面形状に広がる。
【0080】
展開工程において、第2キャリア部材20は、医療用シート300を載せた第2支持面74の全体が第1支持面261の上に位置する。この時、医療用シート300は、第1支持面261と第2支持面74とによって支持される。これにより、医療用シート300を心臓400の移植対象部402に移送する前の状態で、医療用シート300の張出部302に皺が発生することを抑制できる。
【0081】
次いで、移動工程(
図9のステップS6)において、
図16に示すように、第2キャリア部材20を第1キャリア部材18に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させることで、医療用シート300が載せられた第2支持部50が後退位置から進出位置へと移動し、第2支持部50が第1支持部26の先端よりも先端方向(矢印X1方向)に突出する。具体的に、移動工程では、第2シャフト48を第1シャフト24に対して先端方向に移動させる。
【0082】
これにより、第2支持部50が第1支持部26に対して先端方向(矢印X1方向)に移動する。このとき、キャリア保持部54(押付部56)の先端面が医療用シート300の外周端面を先端方向に押圧すると、医療用シート300の全体が、第1支持部26よりも先端方向に位置する。この移動工程では、医療用シート300を心臓400の移植対象部402の上まで移動させて医療用シート300の張出部302を移植対象部402に接触させる。
【0083】
その後、抜去工程(
図9のステップS7)において、
図17に示すように、第2キャリア部材20を第2位置から第1位置まで移動させることにより第2支持部50を移植対象部402と医療用シート300との間から引き抜く。そうすると、医療用シート300の全体が移植対象部402の表面に接触する。これにより、医療用シート300の移植対象部402への移送が完了する。その後、移送器具10は、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22内に収容した状態で、胸部408から抜去される。
【0084】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0085】
図3に示すように、移送器具10における第1キャリア部材18の第1支持部26は、医療用シート300を保持可能な第1支持面261と、第1支持面261の幅方向の両側部から上方に向けて突出した一対の突出部37と、第1支持部26を厚さ方向に貫通する第1スリット961を備える。
【0086】
これにより、
図11に示すように、第1支持部26に医療用シート300を載置したとき、第1スリット961を通じて第1支持面261における水分Mを効果的に第1支持部26の外側に排出できるため、
図16示すように、第1支持面261に載置された医療用シート300を生体の移植対象部402に移送するとき、水分Mの影響を抑制して移植対象部402の所定の位置に医療用シート300を載置できる。これにより、第1支持部26によって医療用シート300を移植対象部402に効率よく移送することができる。第2位置において第1支持部26が展開した際、第1スリット961によって第1支持面261に対する第1突出部38の形状付け(折り曲げ)を効果的に維持することができる。
【0087】
図5に示すように、第1支持部26は、突出部37と第1支持面261との境界部に設けられ第1支持面261に対して突出部37を折り曲げた第1折曲部444を有し、第1スリット961が、第1折曲部444に設けられる。これにより、第2位置において第1支持部26が展開した際、第1スリット961によって第1折曲部444を基点とした第1突出部38の形状付け(折り曲げ)を効果的に維持することができる。
【0088】
図11に示すように、第1スリット961は、第1折曲部444の延在方向に沿って設けられる。これにより、第1折曲部444に沿って延在する長尺な第1スリット961によって、第1支持面261の水分Mをより効果的に第1支持部26の外部へと排出できる。第1支持面261に対する第1突出部38の形状付けをより効果的に維持することができる。
【0089】
図3に示すように、第1スリット961は、第1折曲部444の延在方向において互いに離間した複数の第1切欠部1001を有する。これにより、折曲部の延在方向に沿って連続する単一のスリットを備える構造に比べ、複数の第1切欠部1001によって、第1折曲部444の延在方向に沿って連続して切り欠かれることがない。そのため、第1支持部26において、複数の第1切欠部1001をより広範囲に配置でき、第1支持面261における水分Mの排出範囲を拡大でき、しかも第1突出部38の形状付けをより広範囲で行うことが可能である。
【0090】
第1支持部26は、第1支持部26の基端側を構成する基端支持部34を備え、基端支持部34は第2折曲部98を有し、第2折曲部98には、第1支持部26を厚さ方向に貫通する第2スリット962が設けられる。
【0091】
これにより、第1支持部26が基端支持部34側から外筒22の内腔78に収容されるとき、第2折曲部98を基点として第1支持部26を効果的に湾曲変形させることができ、
第1支持部26を円滑に外筒22の内腔78に収容できる。換言すれば、第2スリット962を有した第2折曲部98によって、第1支持部26が湾曲変形する際のきっかけを作ることができる。第2スリット962により、第1支持面261における水分Mをより効果的に第1支持部26の外側に排出できる。
【0092】
図6に示すように、第1スリット961Aが一対の第1突出部38に設けられる。これにより、第1スリット961Aを通じて第1支持部26の水分Mを外部に排出しつつ、第1突出部38の形状付けを効果的に行うことができる。
【0093】
なお、第1スリット961が、第1折曲部444の延在方向において複数の第1切欠部1001を備える構成に限定されない。第2スリット962が、第2折曲部98の延在方向において複数の第2切欠部1002を備える構成に限定されない。例えば、
図18に示すように、第1支持部110は、スリット構造112を有する。スリット構造112は、第1折曲部444に設けられる一対のスリット1141(以下、「第1スリット1141」という)と、第2折曲部98に設けられる一対のスリット1142(以下、「第2スリット1142」という)とを備える。なお、スリット構造112は、第1及び第2スリット1141、1142を備える場合に限定されない。例えば、スリット構造112が、第1スリット1141のみを備える構成でもよい。
【0094】
各第1スリット1141は、第1折曲部444の延在方向に沿って延在する長尺な単一の第1切欠部1161からなる。各第2スリット1142は、第2折曲部98の延在方向に沿って延在する長尺な単一の第2切欠部1162からなる。なお、第1スリット1141及び第2スリット1142のいずれか一方のみが、連続する単一の切欠部から構成されてもよい。
【0095】
本変形例は、以下の効果を奏する。
【0096】
図18に示すように、第1支持部110のスリット構造112は、一対の第1スリット1141が、第1折曲部444の延在方向に沿って延びる単一の第1切欠部1161を有し、一対の第2スリット1142が、第2折曲部98の延在方向に沿って延びる単一の第2切欠部1162を有する。そのため、第1及び第2折曲部444、98の延在方向に沿って複数の切欠部を有したスリット構造を形成する構成に比べ、スリット構造112の形成が容易である。連続する単一の第1及び第2スリット1141、1142(スリット構造112)を通じて、第1支持面261における水分Mを効果的に第1支持部26の外側に排出できる。
【0097】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0098】
10…移送器具
18…第1キャリア部材
22…外筒
24…第1シャフト
26、26A、110…第1支持部
38…第1突出部
96、96A、112…スリット構造
98…第2折曲部
261…第1支持面
300…医療用シート
402…移植対象部
444…第1折曲部(折曲部)