(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012164
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ネット支持装置及びネット支持装置を用いた大型構造物の解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20250117BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
E04G21/32 B
E04G23/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114789
(22)【出願日】2023-07-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 貸出(リース)・実施開始日(公開日) 令和5年2月27日 貸出(リース)・実施場所 東京都千代田区大手町二丁目6番2号
(71)【出願人】
【識別番号】592003924
【氏名又は名称】三伸機材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521479091
【氏名又は名称】杉本 明
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知
(72)【発明者】
【氏名】杉本 明
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易であり、かつ、大型の構造物に対応可能なネット支持装置及びネット支持装置を用いた構造物の解体方法を提供する。
【解決手段】解体する大型の構造物Sを覆うネット50を支持するネット支持装置100であって、大型の構造物Sの周囲に設置される鉛直材10と、鉛直材10に着脱可能に取り付けられる取付金具20と、鉛直材10の長手方向に沿って延び、取付金具20を介して鉛直材10に着脱可能に取り付けられる第1部材30と、第1部材30に沿って延び、第1部材30に対して鉛直位置を変更自在に係止され、ネット50を支持する第2部材40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体する大型構造物を覆うネットを支持するネット支持装置であって、
前記大型構造物の周囲に複数設置される鉛直材と、
前記鉛直材の長手方向に沿って延び、前記鉛直材に着脱可能に取り付けられる第1部材と、
前記第1部材に沿って延び、前記第1部材に対して鉛直位置を変更自在に係止され、前記ネットを支持する第2部材と、
を備える、
ネット支持装置。
【請求項2】
前記鉛直材はH形鋼である請求項1に記載のネット支持装置。
【請求項3】
前記ネットは、ロープと、前記ロープに支持される網部と、を備え、
前記第2部材は、前記ロープの張力を支持するロープ張力支持部と、前記ロープの中間を摺動自在に支持するロープ中間支持部を有し、
前記ロープの端部と前記ロープ張力支持部との間を結び、前記ロープの端部と前記ロープ張力支持部との間の距離を変更可能な張力調整装置を備える、
請求項1に記載のネット支持装置。
【請求項4】
前記第1部材は略C字状の溝形断面を有する溝形部材であり、前記第2部材は閉断面を有する筒状部材である請求項1に記載のネット支持装置。
【請求項5】
前記鉛直材に着脱可能に取り付けられる取付金具を更に備え、
前記第1部材は、前記取付金具を介して前記鉛直材に取り付けられる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のネット支持装置。
【請求項6】
前記取付金具に対する前記第1部材の位置は変更可能である請求項5に記載のネット支持装置。
【請求項7】
前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法であって、
前記大型構造物を挟んで対峙するように、一対の前記鉛直材を設置する鉛直材設置工程と、
前記ネット支持装置のうち、前記鉛直材を除く各構成を、一対の前記鉛直材のそれぞれに取り付けるネット支持装置取付工程と、
前記第2部材を、前記第1部材に対して下方にスライドさせるスライド工程と、を含む請求項6に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【請求項8】
前記第1部材及び前記取付金具を、前記鉛直材から取り外し、下方に移動して、前記鉛直材に取り付ける盛替工程と、を含む、
請求項7に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【請求項9】
前記第1部材は、上第1部材と、前記上第1部材の軸線上に沿って前記上第1部材の下方に配置される下第1部材を備え、
前記ネット支持装置取付工程は、前記上第1部材及び前記下第1部材を前記鉛直材に取り付ける分割設置工程を含み、
前記スライド工程は、前記第2部材を、前記上第1部材から下方にスライドさせて、前記下第1部材に嵌るまでスライドさせた後、前記第2部材を、前記下第1部材に係止する係止工程と、を含む、
請求項7に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【請求項10】
一対に設けられた前記鉛直材同士の間に前記第2部材を介してロープを張り渡すロープ張工程と、
前記スライド工程の前に、前記ロープの張力を下げるリラクセーション工程と、
前記スライド工程の後に、前記ロープの張力を上げるテンショニング工程と、を含む請求項7に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【請求項11】
前記スライド工程の後に、前記鉛直材の上部を解体する鉛直材解体工程と、を含む請求項7に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネット支持装置及びネット支持装置を用いた大型構造物の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の解体現場において、構造物の外部に物が飛散することを防止するための飛散防止ネットが設けられることがある。飛散防止ネットは、構造物の解体に合わせて下方に向けて容易に移動可能であることが求められる。
例えば、特許文献1に記載のネット支持装置は、解体する構造物の周囲に設けられる足場に第1部材が取り付けられ、第1部材が、飛散防止ネットを支持する第2部材を、鉛直方向に相対移動可能に支持している。このことで、構造物の解体に合わせて第2部材を下方に移動させることで、飛散防止ネットを下方に向けて容易に移動可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のネット支持装置は、例えば、構造物が大型である場合等に、例えば、飛散防止ネットを支持する第2部材同士が構造物を挟んで対峙する間隔が長くなる。前記間隔が長くなることで、飛散防止ネットから作用する荷重が増え、足場によっては飛散防止ネットを支えきれなくなる場合があった。
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑み、取り扱いが容易であり、かつ、大型の構造物に対応可能なネット支持装置及びネット支持装置を用いた大型構造物の解体方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0006】
<1>本発明の態様1に係るネット支持装置は、解体する大型構造物を覆うネットを支持するネット支持装置であって、前記大型構造物の周囲に複数設置される鉛直材と、前記鉛直材の長手方向に沿って延び、前記鉛直材に着脱可能に取り付けられる第1部材と、前記第1部材に沿って延び、前記第1部材に対して鉛直位置を変更自在に係止され、前記ネットを支持する第2部材と、を備える。
【0007】
<2>本発明の態様2に係るネット支持装置は、態様1に係るネット支持装置において、前記鉛直材はH形鋼である。
【0008】
<3>本発明の態様3に係るネット支持装置は、態様1又は態様2に係るネット支持装置において、前記ネットは、ロープと、前記ロープに支持される網部と、を備え、前記第2部材は、前記ロープの張力を支持するロープ張力支持部と、前記ロープの中間を摺動自在に支持するロープ中間支持部を有し、前記ロープの端部と前記ロープ張力支持部との間を結び、前記ロープの端部と前記ロープ張力支持部との間の距離を変更可能な張力調整装置を備える。
【0009】
<4>本発明の態様4に係るネット支持装置は、態様1から態様3のいずれか1つに係るネット支持装置において、前記第1部材は略C字状の溝形断面を有する溝形部材であり、前記第2部材は閉断面を有する筒状部材である。
【0010】
<5>本発明の態様5に係るネット支持装置は、態様1から態様4のいずれか1つに係るネット支持装置において、前記鉛直材に着脱可能に取り付けられる取付金具を更に備え、前記第1部材は、前記取付金具を介して前記鉛直材に取り付けられる。
【0011】
<6>本発明の態様6に係るネット支持装置は、態様5に係るネット支持装置において、前記取付金具に対する前記第1部材の位置は変更可能である。
【0012】
<7>本発明の態様7に係る大型構造物の解体方法は、態様1から態様6のいずれか1つに係るネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法であって、前記大型構造物を挟んで対峙するように、一対の前記鉛直材を設置する鉛直材設置工程と、前記ネット支持装置のうち、前記鉛直材を除く各構成を、一対の前記鉛直材のそれぞれに取り付けるネット支持装置取付工程と、前記第2部材を、前記第1部材に対して下方にスライドさせるスライド工程と、を含む。
【0013】
<8>本発明の態様8に係る大型構造物の解体方法は、態様7に係る大型構造物の解体方法において、前記第1部材及び前記取付金具を、前記鉛直材から取り外し、下方に移動して、前記鉛直材に取り付ける盛替工程と、を含む。
【0014】
<9>本発明の態様9に係る大型構造物の解体方法は、態様7又は態様8に係る大型構造物の解体方法において、前記第1部材は、上第1部材と、前記上第1部材の軸線上に沿って前記上第1部材の下方に配置される下第1部材を備え、前記ネット支持装置取付工程は、前記上第1部材及び前記下第1部材を前記鉛直材に取り付ける分割設置工程を含み、前記スライド工程は、前記第2部材を、前記上第1部材から下方にスライドさせて、前記下第1部材に嵌るまでスライドさせた後、前記第2部材を、前記下第1部材に係止する係止工程と、を含む。
【0015】
<10>本発明の態様10に係る大型構造物の解体方法は、態様7から態様9のいずれか1つに係る大型構造物の解体方法において、一対に設けられた前記鉛直材同士の間に前記第2部材を介してロープを張り渡すロープ張工程と、前記スライド工程の前に、前記ロープの張力を下げるリラクセーション工程と、前記スライド工程の後に、前記ロープの張力を上げるテンショニング工程と、を含む。
【0016】
<11>本発明の態様11に係る大型構造物の解体方法は、態様7から態様10のいずれか1つに係る大型構造物の解体方法において、前記スライド工程の後に、前記鉛直材の上部を解体する鉛直材解体工程と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、取り扱いが容易であり、かつ、大型の構造物に対応可能なネット支持装置及びネット支持装置を用いた大型構造物の解体方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】構造物に設けられたネット支持装置を示す側面図である。
【
図2】構造物に設けられたネット支持装置を示す平面図である。
【
図8】解体する対象の構造物の上方を覆うネットが、対面する複数の鉛直材同士の間に張り渡された状態を示す説明図である。
【
図9】対面する複数の鉛直材のうち他方の鉛直材におけるスライド工程及び盛替工程を示す説明図である。
【
図10】対面する複数の鉛直材のうち一方の鉛直材におけるスライド工程及び盛替工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の説明において、作用又は機能が共通する部材には、同じ番号又は符号が付される場合がある。
図1は、構造物S(大型構造物)に設けられたネット支持装置100を示す側面図である。
図2は、構造物Sに設けられたネット支持装置100を示す平面図である。
図3は、取付金具20の平面図である。
図4は、第1部材30の側面図である。
図5は、第2部材40の側面図である。
図6は、
図1におけるA矢視断面図である。
図7は、
図1におけるB矢視断面図である。なお、
図1において、ネット支持装置100は、構造物Sを中心として対称であるので、構造物Sを中心とした一方を代表として示し、他方の図示を省略している。
【0020】
解体する構造物Sは、例えば、複数階層を有する建築物である。解体する構造物Sが複数階層を有する建築物である場合、建築物の解体方法としては、通常、初めにその建築物の最上階層を解体し、その後、順次、その下の階層を階層ごとに解体していく。解体する構造物Sを取り囲むようにして、不図示の足場が地表から立ち上げられて設けられる。本実施形態において、構造物Sは、例えば、平面視において長方形状である、高層ビル等をはじめとする大型構造物である。
本実施形態において、ネット支持装置100に関する作業は、例えば、作業者が前述した不図示の足場の上に立った状態で行われる。
構造物Sを解体する場合、解体作業に伴い生じる飛散しやすい物が、構造物Sの解体現場の主に上方から外部に飛散しないようにするため、ネット50は、鉛直材10の上部に設置される。
【0021】
(ネット支持装置)
図1に示すように、本実施形態に係るネット支持装置100は、解体する構造物Sを覆うネット50を支持するものである。
【0022】
ここで、
図1から
図7に示すように、ネット支持装置100は、構造物Sの周囲に設置される鉛直材10と、鉛直材10に着脱可能に取り付けられる取付金具20と、鉛直材10の長手方向に沿って延び、取付金具20を介して鉛直材10に着脱可能に取り付けられる第1部材30と、第1部材30に沿って延び、第1部材30に対して鉛直位置を変更自在に係止され、ネット50を支持する第2部材40と、を備えている。
このように、ネット支持装置100は、第1部材30と第2部材40とを備えている。このため、第1部材30に対して第2部材40を移動して鉛直位置を変更する段階と、鉛直材10に対して第1部材30を移動して鉛直位置を変更する段階の、2段階で、ネット50を鉛直材10に対して下方に移設(盛り換え)することができる。したがって、第1部材30を鉛直材10に取り付けたまま、ネット50を支持する第2部材40を下方に移動することでネット50の鉛直位置を変更できるので、ネット50を外さなくてもネット50を下方に移動できるとともに、1段階で移動する部分の重量を軽くできる。また、第1部材30が、鉛直材10に沿って延びた状態で、鉛直材10に取付金具20を介して着脱可能に取り付けられているので、鉛直材10に対して第1部材30を安定した姿勢で鉛直方向に長い距離移動させることができる。したがって、特別な揚重装置を使用しなくても、構造物Sの解体作業における下方への進捗に応じてネット支持装置100を取り扱い容易に移設(盛り換え)することができる。すなわち、例えば、第1部材30を人力で移設することができる。
また、ネット支持装置100は、軽量なものにできるとともに、断面寸法をコンパクトにできるので、構造物Sと不図示の足場との間のような、比較的スペースが限られる場所においてであっても、容易に取り回すことができる。
【0023】
(鉛直材)
鉛直材10は、構造物Sの周囲に設置される長尺状の部材である。鉛直材10は、長手方向が鉛直方向に沿うように設けられる。鉛直材10は、構造物Sと不図示の足場との間に配置される。鉛直材10は、構造物Sの周囲に、間隔をあけて複数設けられる。鉛直材10同士の間隔は、例えば、使用するネット50及びロープ60の種類に基づく、鉛直材10に付加される重さや、ロープ60のたるみによって付加される荷重等によって決定される。本実施形態において、鉛直材10同士の間隔は、例えば45m程度であるが、その他任意の間隔に設定してもよい。詳細には、鉛直材10は、例えば、以下のように配置される。
すなわち、例えば、平面視において構造物Sが長方形状である場合、鉛直材10は、平面視における構造物Sの長辺に沿って並ぶように配置される。この時、複数の鉛直材10は、互いに対向する構造物Sの長辺において、それぞれ一対となるように配置される。すなわち、互いに対向する構造物Sの長辺において、一方の長辺に配置された鉛直材10のそれぞれは、いずれも他方の長辺において対応する位置に対となる鉛直材10を有する。以下において、構造物Sの一方の長辺に配置される複数の鉛直材10のそれぞれが、他方の長辺に対となる鉛直材10を有するように鉛直材10が配置されることを、単に鉛直材10が一対に配置されるという。
本実施形態において、鉛直材10は、
図2に示すように、ウェブ11及び一対のフランジ12によってH字形状の断面を有するH形鋼である。これにより、鉛直材10が十分な強度を有することで、ネット50の自重によって鉛直材10に作用する曲げモーメントに対して効果的に抵抗できる。よって、例えば、第1部材30及び第2部材40が作業用足場等に取り付けられている場合と比較して、ネット支持装置100を大型の構造物Sに対応可能とすることができる。
また、本実施形態において、鉛直材10には、次に述べる取付金具20を取り付け可能な鉛直ボルト孔10hが、長手方向に間隔をあけて複数設けられている。このことで、鉛直材10の長手方向において、取付金具20の位置を任意に調整可能となる。
また、上述した特徴を有するものであれば、ネット支持装置100の施工現場において、鉛直材10に用いられるH形鋼は、例えば、レンタル品等を適用可能である。このように、鉛直材10に公知の部材を適用することで、例えば、特殊な部材を用いることを不要として、費用を抑えることができる。
【0024】
(取付金具)
取付金具20は、鉛直材10に着脱可能に取り付けられる。取付金具20は、鉛直材10に対して第1部材30を取り付けるために用いられる。
図2に示すように、取付金具20は、上述のようにH形鋼である鉛直材10と、第1部材30と、のそれぞれに取り付け可能である。取付金具20に対する第1部材30の位置は、構造物Sと鉛直材10との位置関係等の条件に合わせて適宜変更可能である。
取付金具20は、H形鋼である鉛直材10に取り付けられた状態において、それぞれ鉛直材10のフランジ12に平行となる第1フランジ平行部21及び第2フランジ平行部22と、鉛直材10のウェブ11と平行となるウェブ平行部23と、前述の各構成同士を連結することで取付金具20を補強する補強部24と、を備えている。第1フランジ平行部21、第2フランジ平行部22、ウェブ平行部23、及び補強部24は、それぞれ、板状の部材である。本実施形態において、取付金具20は、これらを溶接することで形成される。このため、
図3に示すように、取付金具20は、溶接部に溶接ビード25が形成されている。
【0025】
第1フランジ平行部21は、
図2又は
図3に示すように、鉛直材10のウェブ11の板幅方向の中央に位置し、一対のフランジ12と平行に配置される。第1フランジ平行部21の一方の端部21aは、フランジ12の近傍に位置する。第1フランジ平行部21の他方の端部21bは、
図2又は
図3に示すように、取付金具20が鉛直材10に取り付けられた状態において、鉛直材10のフランジ12の板幅方向の端部12eよりも、ウェブ11から離れた方向に突出している。第1フランジ平行部21の、フランジ12の板幅方向の端部12eよりもウェブ11から離れた方向に突出した部分には、第1部材30の取付部31(後述する)を挿通可能な第1取付ボルト孔20h1を備えている。また、第1フランジ平行部21における、板幅方向の中央よりも一方の端部21aの側に位置する部分には、吊り孔20h2を備えていてもよい。吊り孔20h2は、例えば、取付金具20をワイヤー等で吊り上げる際、ワイヤーを通すために設けられる。あるいは、吊り孔20h2を持ち手にしてもよい。吊り孔20h2は、例えば、第1取付ボルト孔20h1よりも大径であってもよい。第1フランジ平行部21の板幅方向の中央には、ウェブ平行部23が連結される。
【0026】
第2フランジ平行部22は、
図2又は
図3に示すように、鉛直材10のウェブ11の板幅方向の両端の付近に位置し、一対のフランジ12と平行に配置される。第2フランジ平行部22は、一対のフランジ12のそれぞれに対応して一対に設けられる。一対に設けられた第2フランジ平行部22のそれぞれは、フランジ12にボルトBにより固定される。このため、第2フランジ平行部22のそれぞれは、鉛直材10の鉛直ボルト孔10hに対応した位置に第2取付ボルト孔20h3を備えている。第2フランジ平行部22の一方の端部22aは、フランジ12の近傍に位置する。この時、第2フランジ平行部22の一方の端部22aは、フランジ12の板幅方向において、第1フランジ平行部21の一方の端部21aと同じ位置にあることが好ましい。第2フランジ平行部22の他方の端部22bは、フランジ12の板幅方向の端部12eの近傍に位置する。第2フランジ平行部22の他方の端部22bには、ウェブ平行部23が連結される。
【0027】
ウェブ平行部23は、
図2又は
図3に示すように、ウェブ11と平行に配置される。ウェブ平行部23は、第1フランジ平行部21の板厚方向の両側に一対に設けられる。一対のウェブ平行部23のそれぞれの一方の端部23aは、第2フランジ平行部22の他方の端部22bに連結される。一対のウェブ平行部23のそれぞれの他方の端部23bは、第1フランジ平行部21の板幅方向の中央に連結される。このとき、ウェブ平行部23のうち、ウェブ11に面しない側の面23cは、
図2又は
図3に示すように、フランジ12の板幅方向において、フランジ12の板幅方向の端部12eよりも、ウェブ11から離れた側に位置しないように配置されることが好ましい。あるいは、ウェブ平行部23の板厚方向の端部12eは、フランジ12の板幅方向の端部12eと面一であってもよい。一対のウェブ平行部23のそれぞれには、第1部材30の取付部31を挿通可能な第4取付ボルト孔20h4を備えている。
【0028】
補強部24は、
図2又は
図3に示すように、第1フランジ平行部21、第2フランジ平行部22、及びウェブ平行部23のそれぞれを連結することで、取付金具20を補強する。補強部24は、鉛直材10のウェブ11及びフランジ12の両方に直交するように設けられる。すなわち、補強部24の板厚方向は、鉛直材10の長手方向に沿う。
上記各構成により、取付金具20は構成される。上述の構成を備える取付金具20に対しては、
図2に示すように、第1取付ボルト孔20h1又は第4取付ボルト孔20h4のいずれかに第1部材30の取付部31を挿通してナットNで固定することで、第1部材30を取り付け可能である。取付金具20に対する第1部材30の位置は、構造物Sと鉛直材10との位置関係等の条件から、適宜変更してよい。これにより、構造物S及び鉛直材10に対する第1部材30の位置を、より好適なものにすることができる。
【0029】
(第1部材及び第2部材)
第1部材30は、
図1及び
図4に示すように、構造物Sの周囲に設置される鉛直材10の長手方向に沿って延び、取付金具20を介して鉛直材10に着脱可能に取り付けられる棒状体である。あるいは、第1部材30は、取付金具20を介さず、直接鉛直材10に取り付けられてもよい。
第1部材30は、第2部材40の水平方向への相対移動を規制している。詳細には、例えば、
図6又は
図7に示すように、第1部材30は、略C字状の溝形断面を有する溝形部材であってよい。これにより、第1部材30に対して第2部材40の水平方向の移動を規制した状態で第2部材40を鉛直方向に相対移動させることができるとともに、第1部材30及び第2部材40を一体として移動させることができる。なお、第1部材30が、第2部材40の水平方向への相対移動を規制しているとは、言い換えると、相対移動を完全に拘束していることに限られず、第1部材30と第2部材40との構造的な関係が、例えば、10cm程度の、いわゆる遊びに相当する距離の相対移動を許容するが、それ以上の相対移動を許容しないような関係になっていることも含むことを意味する。
本実施形態において、第1部材30は、1つの第2部材40に対して複数設けられる。すなわち、第1部材30は、例えば、1つの第2部材40に対して2つ設けられる。あるいは、これに限らず、第1部材30は、1つの第2部材40に対して3つ以上設けられてもよい。
第1部材30は、取付金具20に対して着脱自在に取り付け可能な取付部31を有している。取付部31は、取付金具20が有する第1取付ボルト孔20h1又は第4取付ボルト孔20h4に挿通可能な棒状の部材である。
取付部31の根元は、第1部材30の外周面に溶接等によって取り付けられている。このことで、取付部31が、第1部材30の溝形断面の内側に位置しないようにすることができる。このことで、取付部31が、第1部材30の溝形断面の内側に位置する第2部材40の位置及び形状に影響を及ぼさないようにすることができる。したがって、例えば、第1部材30の溝形断面の内周面と、第2部材40の外周面との間の距離と小さくすることができる。また、例えば、第2部材40に取付部31を避けるための開口を設けることを不要として、第2部材40を、閉断面を有する筒状の部材とすることができる。
取付部31の先端にはネジ部が設けられ、ナットNが螺合可能である。第1部材30は、取付部31が取付金具20の第1取付ボルト孔20h1又は第4取付ボルト孔20h4に挿通された状態でナットNを締め込むことで、取付金具20に固定される。このことで、第1部材30は、取付金具20を介して鉛直材10に取り付けられる。本実施形態において、取付部31は、第1部材30の長手方向において2つ設けられる。取付部31は、
図4に示すように、例えば、第1部材30の長手方向の両端付近に1つずつ設けられている。このことで、第1部材30は、鉛直材10に対して平行となるように設けられる。
なお、第1部材30は、持ち運びを容易とするための取手32を備えていてもよい。また、第1部材30には、後述するかんぬき41が、紛失防止の為に不図示のチェーン等によって繋げられていてもよい。
【0030】
第2部材40は、
図5に示すように、第1部材30に沿って延びる棒状体である。
図5~
図7に示すように、第2部材40は、角筒状の部材であり、断面視において開口を有さない、いわゆる閉断面を有する。このことで、第2部材40は、断面視において開口を有する場合と比較して、より高い強度を有する。よって、ネット50の自重によって第2部材40に作用する曲げモーメントに対して効果的に抵抗できる。このことは、例えば、第2部材40のロープ中間支持部44が第1部材30の上端よりも上方に位置する場合に、特に顕著な効果を発揮する。断面視において、第2部材40の外形状は、第1部材30の内形状より小さく、第1部材30の開口幅より大きい寸法となっており、第1部材30に嵌った状態で第1部材30から脱落しないようになっている。
【0031】
第2部材40は、第1部材30に対して鉛直位置を変更自在に係止される。第2部材40は、かんぬき41を有している。かんぬき41は、例えば、直径9mmの丸鋼である。かんぬき41は、
図6又は
図7に示すように、第1部材30に設けられた第1部材貫通孔30hと、第2部材40に設けられた第2部材貫通孔40hとの両方を通して挿抜自在に貫通する直線状部分を有している。これにより、第1部材30に対して第2部材40を係止したり、スライド自在にさせたりすることができる。また、かんぬき41は、第1部材貫通孔30h及び第2部材貫通孔40hに挿通された状態から意図せずに抜け落ちることを防ぐために、第1部材貫通孔30h及び第2部材貫通孔40hに挿通された後に、先端が折り曲げ可能であってもよい。
なお、第2部材40は、第1部材30に対してよりスライドさせやすくするために、
図5に示すように、外周面にスライドプレート42を備えていてもよい。スライドプレート42には、例えば、SS400の板材が用いられる。スライドプレート42は、例えば、第2部材40の外周面に溶接される。この時、スライドプレート42の角部は適宜面取りされていることが好ましい。このことで、第2部材40を第1部材30に対してスライドさせる際に、スライドプレート42の角部が第1部材30の内周面に引っ掛からないようにすることが好ましい。
第2部材40は、ネット50を支持している。
【0032】
そして、詳細には、第2部材40は、第1部材30によって、水平方向への相対移動を規制されている。第2部材40は、例えば、
図6及び
図7に示すように、第1部材30の溝形断面の内側に嵌っていてよい。これにより、第2部材40を、第1部材30をガイドにして、鉛直方向に長手方向を沿わせた姿勢のまま、鉛直方向に移動させることができる。よって、ネット50を保持したままの第2部材40を安定させた状態で鉛直位置を下方に移動させることができる。
なお、第1部材30と第2部材40との構造的な関係は、一方が溝形断面で、水平方向への相対移動を規制し合う関係であれば、他方をその溝形断面の内側に嵌る形状の断面とするような関係に限らない。
【0033】
(ネット)
ネット50は、解体する構造物Sから飛散する物を通さずに捕獲するものである。ネット50は、風圧力を過度に受けることなく、飛散する物を通さない程度の網目を有する面状の網である。
ネット50は、ネット支持装置100を介して、面を鉛直に沿う姿勢にした状態で、鉛直材10の上部に支持されてよい。
ネット50は、ネット支持装置100を介して、面を水平に沿う姿勢にした状態で、構造物Sの側方に設けられて対峙する一対の鉛直材10同士の間に張り渡されたロープ60に支持されてもよい。
【0034】
ネット50は、ロープ60と、ロープ60に支持される網部70と、を備えていてよい。そして、第2部材40は、ロープ60の張力を支持するロープ張力支持部43と、ロープ60の中間を摺動自在に支持するロープ中間支持部44を有してよい。これにより、ネット50の網部70の自重を、ロープ60を介して第2部材40に支持させることができる。
本実施形態において、ロープ張力支持部43には、例えば、
図7に示すように、公知の一般的なアイボルトが好適に用いられる。ロープ中間支持部44には、例えば、
図6に示すように、回転自在のアイボルトが好適に用いられる。具体的には、ロープ中間支持部44には、例えば、ダブルスイベルリング(登録商標)が好適に用いられる。
【0035】
(張力調整装置)
図1に示すように、ロープ60の端部60eとロープ張力支持部43との間を結び、ロープ60の端部60eとロープ張力支持部43との間の距離を変更可能な張力調整装置80を備えてよい。張力調整装置80は、ロープ張力支持部43に係止可能な第1フック81と、ロープ60の端部60eに係止可能な第2フック82と、第1フック81と第2フック82との間を結ぶチェーン等の索状体83と、第1フック81と第2フック82との間の索状体83の長さを調整可能なレバー84と、を有する揚重機であってよい。
【0036】
(解体方法)
次に、上述のネット支持装置100を用いた構造物Sの解体方法について、
図8から
図10を用いて説明する。
図8は、解体する対象の構造物Sの上方を覆うネット50が複数の鉛直材10同士の間に張り渡された状態を示す説明図である。
図9は、複数の鉛直材10のうち他方の鉛直材10におけるスライド工程及び盛替工程を示す説明図である。
図10は、複数の鉛直材10のうち一方の鉛直材10におけるスライド工程及び盛替工程を示す説明図である。
【0037】
(S1)まず、
図8に示すように、構造物Sを挟んで対峙するように、一対の鉛直材10を設置する(鉛直材設置工程)。
【0038】
(S2)次に、ネット支持装置100のうち、鉛直材10を除く各構成を、一対の鉛直材10のそれぞれに取り付ける(ネット支持装置取付工程)。詳細には、
図1に示すように、予め鉛直材10に取付金具20が取り付けられた状態で、第1部材30に設けられた取付部31を、上述のように取付金具20を介して鉛直材10に取り付ける。
【0039】
(S2-1)ここで、
図1に示すように、第1部材30は、上第1部材30Uと、上第1部材30Uの軸線上に沿って上第1部材30Uの下方に配置される下第1部材30Bを備えていてよい。この場合、ネット支持装置取付工程において、上第1部材30U及び下第1部材30Bを鉛直材10に取り付ける(分割設置工程)。
【0040】
(S3)次に、
図8に示すように、一対に設けられた鉛直材10同士の間に第2部材40を介してロープ60を張り渡す(ロープ張工程)。詳細には、ロープ60の端部60eを、第2部材40のロープ張力支持部43に反力を取った張力調整装置80を用いて引っ張る。これにより、解体する構造物Sの上方をネット50で覆うことができる。
【0041】
(S4)適宜、構造物Sの上部を解体する(構造物解体工程)。
【0042】
(S5)ここで、適宜、
図9に示すように、次のスライド工程の前に、ロープ60の張力を下げる(リラクセーション工程)。これにより、第1部材30と第2部材40との間の摩擦力を軽減できるので、第2部材40をスライドし易くできる。
【0043】
(S6)次に、
図9に示すように、一対に設けられた鉛直材10のうち、他方の鉛直材10に配置された第2部材40を、第1部材30に対して、例えば、3.4m程、下方にスライドさせる(スライド工程)。すると、第2部材40に支持されたネット50が下方に移動する。
【0044】
(S6-1)この後、適宜、
図9において破線の矢印で示すように、第1部材30及び取付金具20を、鉛直材10から取り外し、例えば、4~6m程、下方に移動して、鉛直材10に取り付ける(盛替工程)。なお、この際、適宜、第2部材40を鉛直材10に支持させる等して第2部材40の高さ位置を維持したまま、第1部材30及び取付金具20だけを鉛直材10から取り外して下方に移動してもよい。この場合、1つの第2部材40を支持している複数の第1部材30のうち一番上に位置するもの(本実施形態では、上第1部材30U)のみを取り外し、前記複数の第1部材30のうち一番下に位置するもの(本実施形態では、下第1部材30B)の直下に移動させることが好ましい。これを繰り返すことで、第2部材40を下方に移動させた際に、再び複数の第1部材30によって第2部材40を支持できるようにすることが好ましい。
あるいはこれに限らず、第2部材40と伴に第1部材30及び取付金具20を鉛直材10から取り外し、第1部材30及び取付金具20とともに、第2部材40の両方を下方に移動してもよい。
【0045】
(S6-2)ネット支持装置取付工程において、上第1部材30U及び下第1部材30Bを鉛直材10に取り付けた場合(分割設置工程を経た場合)、スライド工程において、
図1の下向き白抜き矢印で示すように、第2部材40を、上第1部材30Uから下方にスライドさせて、下第1部材30Bに嵌るまでスライドさせた後、第2部材40を、下第1部材30Bに係止する(係止工程)。詳細には、第2部材40及び上第1部材30Uを貫通するかんぬき41を一旦抜き、第2部材40を上第1部材30Uからスライドさせて下第1部材30Bに嵌めた後、かんぬき41を第2部材40及び下第1部材30Bに貫通させて係止する。
【0046】
(S7)次に、最も上方にある第1部材30(上第1部材30U)、及び当該第1部材30に対応する取付金具20を鉛直材10から取り外す。
【0047】
(S8)次に、上述のスライド工程の後に、鉛直材10の上部を解体する(鉛直材解体工程)。
【0048】
(S9)次に、特に、ロープ60の張力を下げるリラクセーション工程を経た場合、上述のスライド工程の後に、ロープ60の張力を上げる(テンショニング工程)。なお、ロープ60の張力を上げる方法は、上述のロープ張工程のように、張力調整装置80を用いて引っ張る方法であってよい。
【0049】
(S10)続いて、
図10に示すように、上述の構造物解体工程、スライド工程及び鉛直材解体工程を、一対に設けられた鉛直材10のうち、一方の鉛直材10においても、他方の鉛直材10と同様に行う。そして、一対に設けられた鉛直材10の双方で、順次、交互に繰り返すことで、構造物Sを上部から下方に向けて順次解体していくのと同調して、ネット50を支持したネット支持装置100を下方に移設していき、鉛直材10を解体していく。
【0050】
このように、本実施形態に係るネット支持装置100を用いた構造物Sの解体方法によれば、ネット50を取り外すことなく、ネット50を支持したまま、ネット支持装置100を構成する一部の部材である第2部材40を下方にスライドさせて移動することができる。また、鉛直材10がH形鋼であり十分な強度を有することから、例えば、第1部材30及び第2部材40が作業用足場等に取り付けられている場合と比較して、ネット50の自重によって鉛直材10に作用する曲げモーメントに対して効果的に抵抗できる。よって、特別な揚重装置を使用することなく、構造物Sの解体の進捗に応じてネット50を簡単に安定的に下方に移設できる。したがって、取り扱いが容易であり、かつ、大型の構造物Sに対応可能なネット支持装置100を用いた構造物Sの解体方法を提供できる。更に、第1部材30及び第2部材40が作業用足場に取り付けられている場合は、第1部材30を作業用足場から取り外さないと、作業用足場を解体することができない。本実施形態のように、第1部材30が鉛直材10に取り付けられていることで、第1部材30に関わらずに作業用足場を解体することができる。よって、作業用足場の解体工程をより柔軟に調整可能とすることができる。
そして、このようなネット支持装置100を用いた構造物Sの解体方法によれば、例えば、複数階で構成される建築物等の構造物Sを上層階から下層階へ向けて、順次、重機を用いて解体していく解体作業サイクルに対して、その重機を用いることなく比較的簡素な装置でネット50を下方に盛り換える盛替作業を独立して行うことができるため、ネット50の盛替作業が構造物Sの解体作業全体の工程におけるクリティカルパスとならず、重機を解体作業に専属させて継続的に使用して、解体作業の進捗に応じて重機を常に下方に位置させることができる。よって、重機の使用効率を向上でき、解体作業全体の工期の短縮に貢献でき、構造物Sを安全に経済的に解体できる。
ここで、構造物Sを解体していく際に、構造物Sの周囲に設けられる不図示の足場が構造物Sの壁部の上端より上方に残って自立することができる高さ(鉛直方向の長さ)には強度上の限度がある。このため、例えば、第1部材30及び第2部材40が作業用足場等に取り付けられている場合、ネット50の位置を構造物Sの上方に保つために、壁つなぎを介して足場を支持する構造物Sの壁部を残して、床部を先行して解体する必要が生じる場合がある。
これに対して、本実施形態に係るネット支持装置100を用いた構造物Sの解体方法によれば、鉛直材10がH形鋼であり十分な強度を有することから、構造物Sの解体手順への影響を考慮することを不要にすることができ、構造物Sの壁部の解体のタイミングをより早めることができる。よって、解体している構造物Sの床部の上に載せられた重機から鉛直材10の上部に係止されたネット50までの鉛直方向の長さを比較的長めに確保して重機の作業空間を十分に確保でき、構造物Sの解体作業を円滑にできる。
【0051】
(その他の実施形態)
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
【0052】
本実施形態のネット支持装置100は、解体する構造物Sを覆うネット50を支持する。ネット支持装置100は、構造物Sの周囲に設置される鉛直材10に沿って延び、鉛直材10に取付金具20を介して着脱可能に取り付けられる第1部材30と、第1部材30に沿って延び、第1部材30に対して鉛直位置を変更自在に係止され、ネット50を支持する第2部材40と、を備える。これにより、第1部材30に対して第2部材40を移動して鉛直位置を変更する段階と、鉛直材10に対して第1部材30を移動して鉛直位置を変更する段階の、2段階で、ネット50を鉛直材10に対して下方に移設(盛り換え)することができる。したがって、第1部材30を鉛直材10に取り付けたまま、ネット50を支持する第2部材40を下方に移動することでネット50の鉛直位置を変更できるので、ネット50を外さなくてもネット50を下方に移動できるとともに、1段階で移動する部分の重量を軽くできる。また、第1部材30が、鉛直材10に沿って延びた状態で、鉛直材10に取付金具20を介して着脱可能に取り付けられているので、鉛直材10に対して第1部材30を安定した姿勢で鉛直方向に長い距離移動させることができる。したがって、特別な揚重装置を使用しなくても、構造物Sの解体作業における下方への進捗に応じてネット支持装置100を取り扱い容易に移設(盛り換え)することができる。
【0053】
本実施形態のネット支持装置100を用いた構造物Sの解体方法は、構造物Sを挟んで対峙するように、一対の鉛直材10を設置する鉛直材設置工程と、ネット支持装置100のうち、鉛直材10を除く各構成を、一対の鉛直材10のそれぞれに取り付けるネット支持装置取付工程と、第2部材40を、第1部材30に対して下方にスライドさせるスライド工程と、を含む。これにより、ネット50を取り外すことなく、ネット50を支持したまま、ネット支持装置100を構成する一部の部材である第2部材40を下方にスライドさせて移動することができる。また、鉛直材10がH形鋼であり十分な強度を有することから、例えば、第1部材30及び第2部材40が作業用足場等に取り付けられている場合と比較して、ネット50の自重によって鉛直材10に作用する曲げモーメントに対して効果的に抵抗できる。よって、特別な揚重装置を使用することなく、構造物Sの解体の進捗に応じてネット50を簡単に安定的に下方に移設できる。したがって、取り扱いが容易であり、かつ、大型の構造物Sに対応可能なネット支持装置100を用いた構造物Sの解体方法を提供できる。
【0054】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 鉛直材
10h 鉛直ボルト孔
11 ウェブ
12 フランジ
20 取付金具
20h1 第1取付ボルト孔
20h2 吊り孔
20h3 第2取付ボルト孔
21 第1フランジ平行部
22 第2フランジ平行部
23 ウェブ平行部
24 補強部
25 溶接ビード
30 第1部材
30B 下第1部材
30h 第1部材貫通孔
30U 上第1部材
31 取付部
40 第2部材
40h 第2部材貫通孔
41 かんぬき
42 スライドプレート
43 ロープ張力支持部
44 ロープ中間支持部
50 ネット
60 ロープ
70 網部
80 張力調整装置
81 第1フック
82 第2フック
83 索状体
84 レバー
100 ネット支持装置
B ボルト
N ナット
S 構造物
【手続補正書】
【提出日】2024-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体する大型構造物を覆うネットを支持するネット支持装置であって、
前記大型構造物の周囲に複数設置される鉛直材と、
前記鉛直材の長手方向に沿って延び、前記鉛直材に着脱可能に取り付けられる第1部材と、
前記第1部材に沿って延び、前記第1部材に対して鉛直位置を変更自在に係止され、前記ネットを支持する第2部材と、
を備え、
前記鉛直材は、ウェブ及び一対のフランジによってH字形状の断面を有するH形鋼であり、
それぞれ前記鉛直材の前記フランジに平行となる第1フランジ平行部及び第2フランジ平行部と、前記鉛直材の前記ウェブと平行となるウェブ平行部と、を備える取付金具を更に備え、
前記第1部材は、前記取付金具を介して前記鉛直材に取り付けられ、
前記取付金具に対する前記第1部材の位置は変更可能である、
ネット支持装置。
【請求項2】
前記ネットは、ロープと、前記ロープに支持される網部と、を備え、
前記第2部材は、前記ロープの張力を支持するロープ張力支持部と、前記ロープの中間を摺動自在に支持するロープ中間支持部を有し、
前記ロープの端部と前記ロープ張力支持部との間を結び、前記ロープの端部と前記ロープ張力支持部との間の距離を変更可能な張力調整装置を備える、
請求項1に記載のネット支持装置。
【請求項3】
前記第1部材は略C字状の溝形断面を有する溝形部材であり、前記第2部材は閉断面を有する筒状部材である請求項1に記載のネット支持装置。
【請求項4】
前記取付金具は、前記鉛直材に着脱可能に取り付けられる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のネット支持装置。
【請求項5】
前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法であって、
前記大型構造物を挟んで対峙するように、一対の前記鉛直材を設置する鉛直材設置工程と、
前記ネット支持装置のうち、前記鉛直材を除く各構成を、一対の前記鉛直材のそれぞれに取り付けるネット支持装置取付工程と、
前記第2部材を、前記第1部材に対して下方にスライドさせるスライド工程と、を含む請求項4に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【請求項6】
前記第1部材及び前記取付金具を、前記鉛直材から取り外し、下方に移動して、前記鉛直材に取り付ける盛替工程と、を含む、
請求項5に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【請求項7】
前記第1部材は、上第1部材と、前記上第1部材の軸線上に沿って前記上第1部材の下方に配置される下第1部材を備え、
前記ネット支持装置取付工程は、前記上第1部材及び前記下第1部材を前記鉛直材に取り付ける分割設置工程を含み、
前記スライド工程は、前記第2部材を、前記上第1部材から下方にスライドさせて、前記下第1部材に嵌るまでスライドさせた後、前記第2部材を、前記下第1部材に係止する係止工程と、を含む、
請求項5に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【請求項8】
一対に設けられた前記鉛直材同士の間に前記第2部材を介してロープを張り渡すロープ張工程と、
前記スライド工程の前に、前記ロープの張力を下げるリラクセーション工程と、
前記スライド工程の後に、前記ロープの張力を上げるテンショニング工程と、を含む請求項5に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。
【請求項9】
前記スライド工程の後に、前記鉛直材の上部を解体する鉛直材解体工程と、を含む請求項5に記載の前記ネット支持装置を用いた前記大型構造物の解体方法。