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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012195
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】発信機の取付構造及び防災装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114860
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】松本 修次
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発信機の点検作業や修理交換作業を更に容易なものにして作業効率を向上可能とする。
【解決手段】発信機24の取付構造は、消火栓装置の消火器収納部に形成された扉開口部15に開閉自在に設けられる電装扉20に、電装扉20の操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチのスイッチノブ2430を操作可能に、発信機24を取り付けている。電装扉20の裏面側に内部扉32が設けられ、内部扉32にはスイッチノブ2430が前面に位置するように押釦スイッチ24が取付けられている。電装扉20と内部扉32は軸部を共通とした二重3管蝶番34により個別に開閉自在に設けられる。発信機24の点検時には、内部扉32を閉鎖固定した状態で電装扉20を開放し、内部扉32に取付けられた押釦スイッチのスイッチノブ2430を操作可能に露出させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装置に形成された所定の扉開口部に開閉自在に設けられる外部扉に、前記外部扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより前記保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの押釦が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、
前記外部扉の内側に、前記押釦が前面に位置するように前記押釦スイッチが取付けられた内部扉が開閉自在に設けられ、前記内部扉を閉鎖固定した状態で、前記外部扉を開放して前記内部扉に取付けられた前記押釦スイッチの前記押釦を操作可能に露出させる扉開閉構造を備えたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の発信機の取付構造において、
前記扉開閉構造は、
前記外部扉と前記内部扉を共通の軸部により前記扉開口部に開閉自在に軸支する蝶番構造と、
前記内部扉の閉鎖固定と当該閉鎖固定の解除を操作する第1開閉操作部と、
前記第1開閉操作部に比べ高い操作性を有し、前記外部扉の閉鎖固定と当該閉鎖固定の解除を操作する第2開閉操作部と、
が設けられ、
前記第1開閉操作部により前記内部扉を閉鎖固定した状態で、前記第2開閉操作部により前記外部扉の閉鎖固定を解除して開放することにより、前記内部扉に取付けられた前記押釦スイッチの押釦を操作可能に露出させることを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記蝶番構造は、
前記内部扉を前記扉開口部に開閉自在に軸支する第1蝶番と、前記外部扉を前記扉開口部に開閉自在に軸支する第2蝶番を、同一の軸部で回動自在に軸支したことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項4】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記第1開閉操作部は、前記内部扉の裏面側に設けられ、指先操作可能なねじ部材により前記内部扉の固定操作と固定解除操作を行うことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項5】
請求項4記載の発信機の取付構造において、
前記ねじ部材は、ローレットねじ又は蝶ねじを含むことを特徴とする発信機取付構造。
【請求項6】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記第2開閉操作部は、前記外部扉の先端側の側端又は側端内側に設けられ、扉ハンドルの操作に伴うロッド部材の移動により、前記扉開口部との固定と固定解除を行うことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項7】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記第2開閉操作部は、
ソケット穴を裏面側に向けて扉開口部に配置されるソケット部と、
前記ソケット部に相対して前記外部扉の裏面側に配置されるプラグ部と、
で構成され、
前記外部扉を閉鎖した状態での前記プラグ部の押込み操作により前記ソケット部と固定され、当該押込み操作後の前記プラグ部の再度の押込み操作で前記ソケット部との固定が解除されることを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項8】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記内部扉には、前記発信機の押釦スイッチに加え、表示機器及び電話ジャックを含む所定の電装機器が取付けられており、
前記表示機器に対応して前記外部扉に表示窓又は表示開口部が形成されたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項9】
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた外部扉と、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、
を備えた防災装置であって、
発信機は、前記請求項1記載の発信機の取付構造により外部扉の内側に設けられた内部扉に取り付けられ、
前記装置扉の開放により開放された扉開口部から前記発信機の取付構造の前記扉開閉構造にアクセス可能としたことを特徴とする防災装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信機の取付構造、及び発信機を備えた消火栓装置等の防災装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内に設置され、火災等の非常時に使用するための防災機器を備えた防災装置が知られている。このような防災装置としては、消火栓装置や消火器箱等がある。例えば、消火栓装置は、開閉自在な消火栓扉を備えた消火栓収納部にノズルを装着したホースやバルブ類等の消火栓機器が収納され、道路に面する前面側から開閉可能な消火器扉を備えた消火器収納部に、例えば2本の消火器が収納され、更に消火器扉に隣接して、消火器扉と同様に前面側から開閉可能な電装扉を備えている。また、電装扉には、前面側に赤色表示灯、発信機、応答ランプ、並びに裏面側に電話ジャック等の電装機器が設けられており、発信機は電装扉の閉鎖状態で前面側から操作可能になっている。
【0003】
ここで、消火器扉と電装扉は、装置前面の各扉開口部に設けられ、通常時、電装扉は、裏面に設けられたねじ穴を備えた取付片に、取付片に相対して筐体側の扉開口部付近に設けられた受け部の通し穴を通したローレットねじ等をねじ込むことで、閉鎖位置で仮止め固定されており、例えば消火器扉は閉鎖位置に仮止め固定された電装扉に対して電装扉に対して扉ハンドルの操作等により開閉可能に閉鎖位置に保持されている。
【0004】
また、発信機は、発信操作のための押釦スイッチを備えており、押釦スイッチの操作部である押釦が電装扉に設けられた所定の開口部を介して前面側から押圧操作できるようにして電装扉の裏面側から取り付けられており、また、電装扉の開口部の押釦位置の前面側には、透明な有機ガラス板等を使用した保護板(セフテクタ)が前面側から着脱自在に保持されている(特許文献1)。
【0005】
車両事故などに伴う火災時には、利用者が発信機の保護板を前面側から強く押し込むと、押釦スイッチの押釦が押し込まれて押釦スイッチがオン操作され、発信機から発信信号が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力され、これに伴う応答信号が防災受信盤から消火栓装置側に送られて応答ランプが点灯する。
【0006】
ところで、このような従来の発信機にあっては、定期点検等の際に、発信機を操作して正常に動作することを確認している。この発信機の点検作業時に火災時と同じ操作をする場合、点検終了後に保護板を再び開口部に嵌め込んで元の状態に戻す作業が必要になる。特許文献1においては、保護板は前面側からの押圧を受けて電装扉の前面パネルと押釦の間の空間に脱落するようになっており、保護板を通常位置に戻す作業には専用工具を必要として手間がかかる。或いは、保護板が破壊封板の場合には、保護板を新しいものに交換する作業が必要となり、同じように手間がかかる。
【0007】
このため、発信機の点検に手間と時間が掛かり、トンネル設備等においては所定間隔で設置されている多数の発信機を順次点検していく必要があるため、点検作業の効率が悪いことが問題となる。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献2にあっては、特許文献2の図1図2及び図4に示すように、外扉側に保護板を設け、外扉の裏面側に押釦スイッチが取り付けられた内扉を設け、押釦スイッチの押釦が内扉の前面側に位置するように構成している。このようにして、点検時には外扉のみを開放することで保護板を押圧することなく、即ち保護版を通常状態に保持したまま押しボタン操作を可能とすることで、発信機の点検作業を容易にして点検作業の効率を向上させている。
【0009】
また、特許文献2にあっては、図5乃至図7に示すように、通報装置扉(電装扉)の裏面側に内側子扉を設け、内側子扉に発信機の押釦スイッチを取り付けており、内側子扉が装置の設置状態に於ける上下方向を軸として回動し装置の幅方向(設置状態に於ける横方向)に開放するように構成している。このようにして、点検時には、電装扉を開いた状態で内側子扉を開放することで、押釦スイッチの押釦を外部に露出させ、保護板を通常状態に保持したまま押釦操作を可能とすることで、発信機の点検作業を容易にして点検作業の効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-060580号公報
【特許文献2】特開2016-018219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような特許文献2の構成においては、前面側から外扉を比較的簡単に開放可能としているため、専門の点検者だけでなく一般の利用者が不要に外扉を開放してしまう可能性が高まり、好ましくない。
【0012】
また、特許文献2の図1図2及び図4に示す外扉の裏面側に押釦スイッチが取り付けられた内扉を設ける構成については、内扉はねじ止め等により筐体開口部に固定されており、内扉といっても、外扉のように蝶番による開閉構造を持たない固定板であり、内扉に取付けている発信機の押釦スイッチを修理交換する作業を行う場合等には、内扉を取り外す必要があるので、修理交換に手間と時間がかかる。
【0013】
さらに、特許文献2の図5乃至図7に示す通報装置扉(電装扉)の裏面側に内側子扉を設ける構成については、内側子扉を開いて押釦スイッチの点検を終了した後に、内側子扉を完全に閉鎖した状態に固定し忘れた際に、その状態を前面側から確認し難い場合があり、更に改善の余地があった。
【0014】
本発明は、特許文献2における上述の問題点を解決し、発信機の点検作業や修理交換作業を更に容易なものにして作業効率を向上可能とする発信機の取付構造及び発信機を備えた防災装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発信機の取付構造)
本発明は、所定の装置に形成された所定の扉開口部に開閉自在に設けられる外部扉に、外部扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの押釦が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、
外部扉の内側に、操作部が前面に位置するように押釦スイッチが取付けられた内部扉が開閉自在に設けられ、内部扉を閉鎖固定した状態で、外部扉を開放して内部扉に取付けられた押釦スイッチの押釦を操作可能に露出させる扉開閉構造を備えたことを特徴とする。
【0016】
(扉開閉構造)
扉開閉構造は、
外部扉と内部扉を共通の軸部により扉開口部に開閉自在に軸支する蝶番構造と、
内部扉の閉鎖固定と当該閉鎖固定の解除を操作する第1開閉操作部と、
第1開閉操作部に比べ高い操作性を有し、外部扉の閉鎖固定と当該閉鎖固定の解除を操作する第2開閉操作部と、
を備え、
第1開閉操作部により内部扉を閉鎖固定した状態で、第2開閉操作部により外部扉の閉鎖固定を解除して開放することで、内部扉に取付けられた押釦スイッチの操作部を操作可能に露出させる。
【0017】
(蝶番構造)
蝶番構造は、
内部扉を扉開口部に開閉自在に軸支する第1蝶番と、外部扉を扉開口部に開閉自在に軸支する第2蝶番を、同一の軸部で回動自在に軸支する。
【0018】
(第1開閉操作部)
第1開閉操作部は、内部扉の裏面側に設けられ、指先操作可能なねじ部材により内部扉の固定操作と固定解除操作を行う。
【0019】
(第1開閉操作部のねじ部材)
指先操作可能なねじ部材は、ローレットねじ又は蝶ねじを含む。
【0020】
(第2開閉操作部1)
第2開閉操作部は、外部扉の先端側の側端又は側端内側に設けられ、扉ハンドルの操作に伴うロッド部材の移動により、扉開口部との固定と固定解除を行う。
【0021】
(第2開閉操作部2)
第2開閉操作部は、
ソケット穴を裏面側に向けて扉開口部に配置されるソケット部と、
ソケット部に相対して外部扉の裏面側に配置されるプラグ部材と、
で構成され、
外側扉を閉鎖した状態でのプラグの押込み操作によりソケット部と固定され、当該押込み操作後のプラグの再度の押込み操作でソケットとの固定が解除される。
【0022】
(電装機器)
内部扉には、発信機の押釦スイッチに加え、表示機器及び電話ジャックを含む所定の電装機器が取付けられており、
表示機器に対応して外部扉に表示窓又は表示開口部が形成される。
【0023】
(防災装置)
また、本発明の別形態にあっては、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた外部扉と、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、
を備えた防災装置であって、
発信機は、前述した発信機の取付構造により内部扉に取り付けられ、
装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の扉開閉構造にアクセス可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
(発信機の取付構造の効果)
本発明は、所定の装置に形成された所定の扉開口部に開閉自在に設けられる外部扉に、外部扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの押釦が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、外部扉の内側に、押釦が前面に位置するように押釦スイッチが取付けられた内部扉が開閉自在に設けられ、内部扉を閉鎖固定した状態で、外部扉を開放して内部扉に取付けられた押釦スイッチの操作部を操作可能に露出させる扉開閉構造を備えるようにしたため、発信機の押釦スイッチの操作部を直接オン操作可能とするときには、外部扉を開放して内部扉に取付けている押釦スイッチの操作部を外部露出させることから当該操作が容易であり、発信機の点検作業を簡単且つ容易なものとし、点検作業の効率を向上可能とする。
【0025】
(扉開閉構造の効果)
また、扉開閉構造は、外部扉と内部扉を共通の軸部により扉開口部に開閉自在に軸支する蝶番構造と、内部扉の閉鎖固定と当該閉鎖固定の解除を操作する第1開閉操作部と、第1開閉操作部に比べ高い操作性を有し、外部扉の閉鎖固定と当該閉鎖固定の解除を操作する第2開閉操作部と、を備え、第1開閉操作部により内部扉を閉鎖固定した状態で、第2開閉操作部により外部扉の閉鎖固定を解除して開放することで、内部扉に取付けられた押釦スイッチの操作部を操作可能に露出させるようにしたため、外部扉と内部扉の蝶番が共有されることで、扉開口部に二重構成の扉を必要最小限のスペースで開閉自在に軸支することを可能とし、また、二重構成の扉の薄型化を可能とする。
【0026】
また、内部扉を開閉する第1開閉操作部と外部扉を開閉する第2開閉操作部が個別に設けられたことで、発信機を点検する場合には第2開閉操作部により外側扉の閉鎖固定を解除することで発信機の点検作業を簡単且つ容易なものとし、一方、押釦スイッチの修理交換等を必要とする場合には、第1開閉操作部により内部扉の閉鎖固定を解除することで発信機の修理交換作業を簡単且つ容易なものとする。
【0027】
また、内部扉の第1開閉操作部に比べ外側扉の第2開閉操作部の操作性を高くする構造としたことで、例えば、発信機の定期点検等の際に、第2開閉操作部のワンタッチ操作で閉鎖固定を解除して外側扉を開くことができ、一方、内部扉の第1開閉操作部は、例えば、ねじ止め固定といった操作性の低い構造としたことで、通常時に確実に閉鎖固定し、発信機等の電装機器の修理交換といった頻度の低い作業の際には、工具を使用することなく、比較的簡単に閉鎖固定を解除して内部扉を開くことを可能とする。
【0028】
(蝶番構造の効果)
また、蝶番構造は、内部扉を扉開口部に開閉自在に軸支する第1蝶番と、外部扉を扉開口部に開閉自在に軸支する第2蝶番を、同一の軸部で回動自在に軸支するようにしたため、外部扉と内部扉を前後に重ね合わせた状態で閉鎖固定するとともに、外部扉の個別の開閉、外部扉を開いた状態での内部扉の個別の開閉、更には、外部扉と内部扉を一体とした開閉を可能とする。
【0029】
(第1開閉操作部の効果)
また、第1開閉操作部は、内部扉の裏面側に設けられ、指先操作可能なねじ部材により内部扉の固定操作と固定解除操作を行うようにしたため、外部扉を開いても、第1開閉操作部は、内部扉の裏面側に設けられているため、一般の利用者による不要な開放を防止することができ、第1開閉操作部の場所がわかっても、指先操作可能なねじ部材による操作性の低い構造であることから、一般の利用者による不要な開放を確実に防止することができる。一方、点検員などの関係者は、第1開閉操作部の位置がわかっており、また、指先操作可能なねじ部材による扉固定の知識もあるため、必要に応じて内部扉の閉鎖固定を解除して簡単に開くことを可能とする。
【0030】
(第1開閉操作部のねじ部材の効果)
また、指先操作可能なねじ部材は、ローレットねじ又は蝶ねじを含むことから、必要な作業を行う関係者は、手袋をはめた状態であっても、工具を使用することなく、ローレットねじ又は蝶ねじを指先で回すことで、内部扉の閉鎖固定または閉鎖固定の解除を簡単且つ容易なものとする。
【0031】
(第2開閉操作部1の効果)
また、外部扉の第2開閉操作部は、外部扉の先端側の側端又は側端内側に設けられ、扉ハンドルの操作に伴う上下方向に配置されたロッド部材の移動により、扉開口部との固定と固定解除を行うようにしたため、第2開閉操作部が外部扉の先端側の側端又は側端内側といった前方から見えにくい位置にあるため、一般の利用者による不要な開放を防止することができ、一方、点検員などの関係者は、第1開閉操作部の位置が分かっているため、外部扉の閉鎖固定を解除して簡単に開くことを可能とする。
【0032】
また、外部扉の第2開閉操作部は、扉ハンドルを引くとロッド部材が引き込まれて閉鎖固定を解除し、また、外部扉を閉鎖した状態で、引いている扉ハンドルを戻すことで、ロッド部材が戻って閉鎖固定し、扉ハンドルのワンタッチ操作によることから高い操作性が得られ、外部扉の閉鎖固定とその解除を簡単且つ容易なものとする。
【0033】
(第2開閉操作部2の効果)
また、別の構成として、外部扉の第2開閉操作部は、ソケット穴を裏面側に向けて扉開口部に配置されるソケット部と、ソケット部に相対して外部扉の裏面側に配置されるプラグ部材と、で構成され、外側扉を閉鎖した状態でのプラグの押込み操作によりソケット部と固定され、当該押込み操作後のプラグの再度の押込み操作でソケットとの固定が解除されるようにしたため、外部扉の第2開閉操作部として、例えば公知のカムロックファスナーを使用することができ、扉開口部に対する外部扉の閉鎖固定と閉鎖固定の解除の各操作を、外部扉の裏面側に設けたプラグ部のワンタッチ操作により行うことから、高い操作性が得られ、外部扉の閉鎖固定とその解除を簡単且つ容易なものとする。
【0034】
また、第2開閉操作部は、外部扉の側端又は側端内側前方から見えにくい位置にあるため、一般の利用者による不要な開放を防止することができ、一方、点検員などの関係者は、第2開閉操作部の位置が分かっているため、外部扉の閉鎖固定を解除して簡単に開くことを可能とする。
【0035】
(表示機器の効果)
また、内部扉には、発信機の押釦スイッチに加え、表示機器及び電話ジャックを含む電装機器が取付けられており、表示機器に対応して外部扉に表示窓又は表示開口部が形成されており、内部扉の閉鎖固定を解除して開くことで、内部扉に取付けている電装機器の点検や交換修理などを簡単且つ容易なものとする。
【0036】
(防災装置)
また、本発明の別形態にあっては、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた外部扉と、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、を備えた防災装置であって、発信機は、前述した発信機の取付構造により内部扉に取り付けられ、装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の扉開閉構造にアクセス可能としたため、防災装置の1種である消火栓装置の内部扉には、発信機の押釦スイッチ以外にも電話ジャックが設けられており、点検時には電話ジャックに受話器を接続して通話するために、装置扉に相当する消火器扉が必ず開放されることから、外部扉を開いて内部扉に取付けている発信機の押釦スイッチの点検ができる発信機の取付構造が適用されている消火栓装置では、発信機の点検のためだけに敢えて消火器扉を開放する作業とならず、かつ外部扉を開いて内部扉に取付けている押釦スイッチの操作部を押せるようにしたことで、受話器を持ちながら簡単且つ容易に発信機の点検を行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置を示した説明図である。
図2】消火器収納部の断面を平面で示した説明図である。
図3】電装扉と内部扉の二重扉と消火器扉を備えた化粧枠を取り出して裏面側から示した説明図である。
図4】電装扉と内部扉を閉じて固定した状態と外部扉を開いた状態を消火器扉との合わせ面で切断して左側から示した説明図である。
図5】電装扉に続いて内部扉を開いた状態を図4と同様に示した説明図である。
図6】消火器扉と電装扉を開いて内部扉を露出させた状態の消火栓装置を正面から示した説明図である。
図7】電装扉と内部扉を閉鎖固定した状態を平面から見た断面で示した説明図である。
図8】電装扉と内部扉を開閉自在に軸支する二重3管蝶番を取出して示した説明図である。
図9】電装扉を開いた状態を平面から見た断面で示した説明図である。
図10】内部扉と電装扉を開いた状態を平面から見た断面で示した説明図である。
図11】扉ハンドルによりロッドを移動させる電装扉の第2開閉操作部を示した説明図である。
図12】ロックファスナーを用いた電装扉の第2開閉操作部の他の実施形態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明に係る発信機の取付構造及び発信機を備える防災装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0039】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、外部扉に発信機を取り付けるための発信機の取付構造及び当該発信機の取付構造により発信機が取り付けられた外部扉が設けられる防災装置に関するものである。
【0040】
ここで、「外部扉」は、防災装置といった所定の装置の扉開口部に開閉可能に設けられるものであり、発信機の取付構造は、外部扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの押釦が操作される発信機を取り付けるものである。なお、「外部扉」とは、「外側扉」や「外扉」の概念を含むものである。
【0041】
また、「発信機」とは、外部扉に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより操作され発信機が作動した場合には、例えば発信信号を送信する。そのため、「発信機」は、点検時に押釦スイッチの操作部を操作して正常に作動することが確認されるものである。尚、「前面側」といった場合には、外部扉が装置の扉開口部に設けられた場合の装置の外側を指し、「裏面側」といった場合には装置の内側を指している。
【0042】
そして、実施形態の発信機の取付構造は、外部扉の内側に、操作部が前面に位置するように押釦スイッチが取付けられた内部扉が開閉自在に設けられ、内部扉を閉鎖固定した状態で、外部扉を開放して内部扉に取付けられた押釦スイッチの操作部を操作可能に露出させる扉開閉構造を備えることを特徴とし、これにより、点検時などに発信機の押釦スイッチの操作部を直接オン操作可能とする場合には、外部扉を開放して内部扉に取付けている押釦スイッチの操作部を外部露出させることから当該操作が容易であり、発信機の点検作業を簡単且つ容易なものとし、点検作業の効率を向上可能とする。
【0043】
また、「扉開閉構造」は、外部扉と内部扉の二重扉を開閉させるものであり、その構造や機構は任意であるが、例えば、蝶番構造、内部扉の第1開閉操作部、外部扉の第2開閉操作部で構成されるものである。なお、「内部扉」とは、「内側扉」や「内扉」の概念を含むものである。
【0044】
ここで、「蝶番構造」とは、外部扉と内部扉を共通の軸部により扉開口部に開閉自在に軸支するものであり、その構造や機能は任意であるが、例えば、内部扉を扉開口部に開閉自在に軸支する第1蝶番と、外部扉を扉開口部に開閉自在に軸支する第2蝶番を、同一の軸部で回動自在に軸支する。通常、扉の開閉に使用される蝶番は、公知の「3管蝶番」を使用するものであるが、本実施形態は、第1蝶番及び第2蝶番として、公知の3管蝶番を2つ軸方向に連接した構造の所謂「二重3管蝶番」を使用するものである。なお、「蝶番」は、「ヒンジ」及び「丁番」の概念を含むものである。
【0045】
また、「第1開閉操作部」とは、内部扉の閉鎖固定と当該閉鎖固定の解除を操作するものであり、内部扉の開閉は発信機などの取付けている電装機器の修理交換等の頻度の低い作業を対象としていることから、外部扉の第2開閉操作部のような高い操作性を必要としない。
【0046】
「内部扉の第1開閉操作部」の機能や構造は任意であるが、高い操作性を必要としないことから、例えば、内部扉の裏面側に設けられ、指先操作可能なねじ部材により内部扉の固定操作と固定解除操作を行うようする。ここで、「指先操作可能なねじ部材」の種類や構造は任意であるが、例えばローレットねじ又は蝶ねじを含むものである。これにより、内部扉を開いて必要な作業を行う関係者は、手袋をはめた状態であっても、工具を使用することなく、ローレットねじ又は蝶ねじを指先で回すことで、内部扉の閉鎖固定または閉鎖固定の解除を簡単且つ容易なものとする。
【0047】
また、外部扉を開いても、第1開閉操作部は、内部扉の裏面側に設けられているため、一般の利用者による不要な開放を防止することができ、第1開閉操作部の場所がわかっても、指先操作可能なねじ部材による操作性の低い構造であることから、一般の利用者による不要な開放を確実に防止することができる。一方、点検員などの関係者は、第1開閉操作部の位置が分かっており、また、指先操作可能なねじ部材による扉固定の知識もあるため、必要に応じて内部扉の閉鎖固定を解除して簡単に開くことを可能とする。
【0048】
また、「外部扉の第2開閉操作部」とは、内部扉の第1開閉操作部に比べ高い操作性を有し、外部扉の閉鎖固定と当該閉鎖固定の解除を容易に操作可能とするものである。「外部扉の第2開閉操作部」の構造や機能は任意であるが、内部扉の第1開閉操作部に比べ高い操作性を有するため、例えば、外部扉の先端側の側端又は側端内側に設けられ、扉ハンドルの操作に伴う上下方向に配置されたロッド部材の移動により、扉開口部との固定と固定解除を行うものである。
【0049】
これにより、第2開閉操作部は外部扉の先端側の側端又は側端内側といった前方から見えにくい位置にあるため、一般の利用者による不要な開放を防止することができ、一方、点検員などの関係者は、第2開閉操作部の位置が分かっているため、容易に外部扉の閉鎖固定を解除して簡単に開く操作を可能とする。また、外部扉の第2開閉操作部は、扉ハンドルのワンタッチ操作により閉鎖固定とその解除を可能とすることから高い操作性が得られるものである。ここで、「外部扉の先端側の側端」とは、外部扉のヒンジ側を後端部とした場合の扉の反対側を先端部とした場合の扉の側端を意味する。
【0050】
また、高い操作性を有する「外部扉の第2開閉操作部」の他の構成として、例えば、ソケット穴を裏面側に向けて扉開口部に配置されるソケット部と、ソケット部に相対して外部扉の裏面側に配置されるプラグ部材とで構成され、外部扉を閉鎖した状態でのプラグの押込み操作によりソケット部と固定され、当該押込み操作後のプラグの再度の押込み操作でソケットとの固定が解除されるものである。このための「外部扉の第2開閉操作部」として、例えば公知のカムロックファスナーを使用することができ、扉開口部に対する外部扉の閉鎖固定と閉鎖固定の解除の各操作を、外部扉の裏面側に設けたプラグ部のワンタッチ操作により行うことから、高い操作性が得られものである。
【0051】
また、「内部扉」には、発信機の押釦スイッチに加え、表示機器及び電話ジャックを含む電装機器が取付けられており、表示機器に対応して外部扉に表示窓又は表示開口部が形成されている。このため、第1開閉操作部により内部扉の閉鎖固定を解除して開くことで、内部扉に取付けている電装機器の点検や交換修理などを簡単且つ容易なものとする。
【0052】
そして、当該発信機の取付構造により発信機が取り付けられた外部扉及び内部扉を備える防災装置は、発信機が設けられたあらゆる装置、機器等を含むものであり、例えば消火栓装置、消火器箱や非常通報装置等を含むものである。
【0053】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる、例えば高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置されるものであり、内部に消火用ホース等の消火栓機器が収納されたものであり、「非常通報装置」とは、発信機以外にも赤色表示灯や応答ランプ等の必要な電装機器が設けられたものであり、「消火器箱」とは、内部に消火器が収納されたものである。また、「消火栓装置」は、「非常通報装置」や「消火器箱」と一体に設けられたものを含み、「消火器箱」は、「非常通報装置」と一体に設けられたものを含む。また、消火栓装置の場合、「外部扉」は「電装扉」と呼ばれる場合がある。
【0054】
また、「防災装置」は、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ所定の電装機器として発信機が設けられた二重構成の外部扉及び内部扉と、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、を備え、装置扉の開放により開放された扉開口部から外部扉を開放して内部扉に取付けられた発信機を点検する発信機の取付構造にアクセス可能とするものである。
【0055】
また、「装置扉」とは、例えば内部に収納されている消火栓機器や消火器等の使用時等の装置内部にアクセスするときに開放される扉であり、特許文献2の図5乃至図7に示すような従来の消火器箱にあっては、電装扉に隣接している消火器扉が装置扉に相当する。尚、電装板が設けられる扉開口部と装置扉が設けられる扉開口部は同一の扉開口部であっても良く、異なる扉開口部であっても良い。
【0056】
以下、具体的な実施形態を説明する。実施形態では、「防災装置」が「消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置」であり、「外部扉」が「電装扉」であり、「装置扉」が「消火器扉」であり、「発信機点検構造」が「電装扉、内部扉及び開閉構造をそなえるもの」であり、「扉開閉構造」が「蝶番構造、内部扉の第1開閉操作部及び外部扉の第2開閉操作部を備えるもの」であり、「内部扉の第1開閉操作部」が「蝶ねじ又はローレットねじにより内部扉の閉鎖固定と閉鎖固定を解除するもの」であり、「外部扉の第2開閉操作部」が「扉ハンドルの操作によるロッド部材を移動させるものか」又は「ソケットに対するプラグの押込みで外部扉の閉鎖固定と閉鎖固定を解除するもの」である場合について説明する。
【0057】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の発信機の取付構造及び発信機を備えた消火栓装置(防災装置)について、次のように分けて詳細に説明する。
a.消火栓装置
b.消火器収納部側の筐体の構造
c.内部扉と電装扉の構造
d.蝶番構造
e.第1開閉操作部の構造
f.電装扉開閉操作部の構造
g.電装扉開閉操作部の他の構造
h.発信機の点検作業
i.電装機器の点検修理作業
j.本発明の変形例
【0058】
[a.消火栓装置]
まず、消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置を示した図1参照する。
【0059】
ここで、図1の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、各種扉が設けられた消火栓装置の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする(尚、図1においてZ方向は図示されていない)。この点は図2図12においても同様である。
【0060】
図1に示すように、消火栓装置10は、内部が消火栓収納部となる筐体10aと内部が消火器収納部となる筐体10bとに分割された構造であり、筐体10a,10bの前面には化粧枠11a,11bが設けられている。
【0061】
筐体10aの化粧枠11aの扉開口部には上下に分けて別々の扉が設けられ、扉開口部の下側には蝶番(ヒンジ)により下向きに開く前傾式の消火栓扉12が設けられ、扉開口部の上側には蝶番(ヒンジ)により上向きに開く保守扉14が設けられている。消火栓扉12には扉ハンドル1210が設けられ、利用者が扉ハンドル1210に手を入れて手前に引く操作を行うと、消火栓扉12のロックが解除されて消火栓扉12を開くことができる。また、筐体10aの内部である消火栓収納部には消火栓機器として、消火用ホースと消火栓弁を含むバルブ類等が収納されている。
【0062】
筐体10bの化粧枠11bの扉開口部には左右に分けて別々の扉が設けられ、扉開口部の左側には蝶番(ヒンジ)により左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、内部である消火器収納部には、例えば2本の消火器30を収納可能としている。消火器扉18には扉ハンドル1810が設けられ、利用者が扉ハンドル1810に手を入れて手前に引く操作を行うと、例えば磁気吸着による電装扉20に対する消火器扉18の閉鎖固定が解除されて消火器扉18を開くことができる。また、消火器扉18には覗き窓1820が設けられ、外部から消火器30の有無を確認可能としている。
【0063】
また、化粧枠11bの扉開口部の右側には蝶番(ヒンジ)により右向きに横開きする電装扉20が設けられている。電装扉20の裏面側には、後の説明で明らかにするように、内部扉が設けられた二重扉構造としており、電装扉20の裏面側に配置される内部扉には、電装機器として、例えば赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ26が設けられ、また、発信機24の下に配置された発信機操作を示すSOS銘板25が位置する電装扉20の裏面側には電話ジャックが設けられている。このように電装扉20に設けられた赤色表示灯22、発信機24、応答ランプ26及び電話ジャックにより非常通報装置が構成される。
【0064】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。また、火災が発生した場合には、利用者が発信機24の保護板を押し込んで発信機24の押釦スイッチがオンされることで、発信機24から火災通報信号(発信信号)が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力され、これに伴い防災受信盤から応答信号が消火栓装置10側に送信されて、赤色表示灯22が点滅し、応答ランプ26が点灯する。
【0065】
[b.消火器収納部側の筐体の構造]
続いて、消火器収納部側の筐体の構造について説明する。当該説明にあっては、消火器収納部の断面を平面(上面)で示した図2、及び電装扉と内部扉の二重扉と消火器扉を備えた化粧枠を取り出して裏面側から示した図3を参照する。尚、図2は、図1のa-a切断線の断面を示している。
【0066】
図2に示すように、筐体11bの内部である消火器収納部には2本の消火器30が収納され、筐体11bの内部後面には端子箱21a,21bが設けられている。端子箱21aには、図3に示す赤色表示灯22が配線用ケーブルを介して接続され、端子箱21bには図3に示す発信機24、応答ランプ26、電話ジャック28及び筐体11aの消火栓収納部に設けられたポンプ起動スイッチとポンプ起動連動スイッチが配線用ケーブルを介して接続されている。
【0067】
また、図3に示すように、化粧枠11bの扉開口部15の周囲には防水用のゴムシール17が設けられている。図2、3に示すように、化粧枠11bの扉開口部15の左側にはヒンジ18aにより左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、化粧枠11bの扉開口部13の右側には、二重扉として電装扉20と内部扉32が設けられている。二重扉を構成する電装扉20と内部扉32は、軸部を共通とする2つの蝶番を連設した構造を持つ二重3管蝶番34により、個別に右向き横開きするように軸支されている。
【0068】
消火器扉18と電装扉20は、蝶番18aと二重3管蝶番34により相対する向きに開く両開きする扉として化粧枠11bの扉開口部13に設けられており、消火器扉18と電装扉20の合わせ部分は、相対する段付部として形成され、扉の閉鎖位置で電装扉20の段付部が扉開口部15の内側に位置し、電装扉20の段付部が扉開口部15の外側(前側)に位置している。
【0069】
[c.内部扉と電装扉の構造]
続いて内部扉32と電装扉20の構造について説明する。当該説明にあっては、図3に加え、電装扉と内部扉を閉じて固定した状態と電装扉を開いた状態を消火器扉との合わせ面で切断して左側から示した図4、電装扉に続いて内部扉を開いた状態を図4と同様に示した図5、及び消火器扉と電装扉を開いて内部扉を露出させた状態の消火栓装置を正面から示した図6を参照する。
【0070】
図3図4に示すように、電装扉20の裏面側に配置された内部扉32には、上から順番に、赤色表示灯22、発信機24の押釦スイッチ2410、電話ジャック28及び応答ランプ26が取付けられている。
【0071】
この内、発信機24の押釦スイッチ2410は、操作部となるスイッチノブ2430が内部扉32の前面に位置するように取付けられている。内部扉32に取付けた押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430に相対した電装扉20の扉面の操作開口部には、図4(B)に示すように、保護板収納部25により保護板25aが押込み自在に配置されている。
【0072】
また、内部扉32に取付けられた赤色表示灯22と応答ランプ26に相対した電装扉20の扉面には、表示開口部22a,26aが形成され、赤色表示灯22及び応答ランプ26を前方から視認可能としている。
【0073】
通常時、図4(A)に示すように、内部扉32及び電装扉20は閉鎖位置に閉じており、内部扉32は第1開閉操作部36により閉鎖固定され、電装扉20は第2開閉操作部38により閉鎖固定されている。なお、通常時、図1及び図2に示したように、消火器扉18も閉鎖固定された電装扉20を扉枠側として閉鎖固定されている。
【0074】
発信機24の点検時には、第2開閉操作部38による電装扉20の閉鎖固定を解除し、図4(B)及び図6に示すように、電装扉20を開放させる。電装扉20を開放させると内部扉32に取付けている押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が前方〈外部〉に露出し、スイッチノブ2430を直接押込んでスイッチオンさせることで、発信機24の点検を可能とする。
【0075】
また、内部扉32に取付けている発信機24を含む電装機器が故障した場合の点検や修理交換の際には、第1開閉操作部36による内部扉32の閉鎖固定を解除し、図5に示すように、内部扉32を開放し、例えば、発信機24における押釦スイッチ2410の修理交換などの作業を可能とする。
【0076】
[d.蝶番構造]
続いて、電装扉20と内部扉32で構成される二重扉の蝶番構造について説明する。当該説明にあっては、電装扉と内部扉を閉鎖固定した状態を平面から見た断面で示した図7、電装扉と内部扉を開閉自在に軸支する二重3管蝶番を取出して示した図8、電装扉を開いた状態を平面から見た断面で示した図9、及び内部扉と電装扉を開いた状態を平面から見た断面で示した図10を参照する。なお、図7図4(A)の切断線c-cの断面を示し、図8図4(B)の切断線d-dの断面を示す。また、図8(A)は二重3管蝶番を開いた状態で示し、図8(B)は図8(A)の切断線e-eの断面を示す。
【0077】
図7に示すように、電装扉20と内部扉32を開閉自在に軸支するための蝶番構造として、二重3管蝶番34が設けられる。
【0078】
二重3管蝶番34は、図8(A)に示すように、第1蝶番3410と第2蝶番3420を備える。第1蝶番3410は扉取付板部3412の側端に、軸方向に分けて管状に形成した一対の軸受管部3416,3417を一体に備え、また、基台取付部3430の上側に軸受配管部3418を一体に備えている。
【0079】
第2蝶番3420も第1蝶番3410と同様であり、扉取付板部3422の側端に、軸方向に分けて管状に形成した一対の軸受管部3426,3427を一体に備え、また、基台取付部3430の下側に軸受配管部3428を一体に備えている。
【0080】
第1蝶番3410の3つの軸受管部3416,3417,3418と第2蝶番3420の3つの軸受管部3426,3427,3428は同軸に配置され、そこに軸部3440を通して回動自在に軸支する構造としている。
【0081】
また、基台取付部3430は、基台側となる化粧枠11bに蝶番を支持固定するために多段階に屈曲させた段付板構造としている。また、扉取付板部3412,3422及び基台取付部3430にはねじ止め固定に使用する通し穴40が複数個所に形成されている。なお、公知の蝶番は、例えば、第1蝶番3410を独立した1つの蝶番としており、3つの軸受管部3416,3417,3418を持つことから「3管蝶番(3管ヒンジ)」と呼ばれている。
【0082】
続いて、二重3管蝶番34により電装扉20と内部扉32を開閉自在に軸支構造について説明する。図7に示すように、二重3管蝶番34の基台固定部3430は、筐体側となる化粧枠11bの内側張出部11cにねじ止め固定され、軸部3440を扉開口部15の右端の所定位置に支持している。軸部3440に軸支された第1蝶番3410の扉取付板部3412は内部扉32の右端にねじ止め固定され、内部扉32を右方向に横開き自在に支持している。また、軸部3440に軸支された第2蝶番3420の扉取付板部3422は電装扉20の右端内側にねじ止め固定され、電装扉20を右方向に横開き自在に支持している。
【0083】
このような蝶番構造により、消火器扉18が開放されていることを条件に、図9に示すように、点検時などの際に、内部扉32を閉鎖固定した状態で電装扉20の開閉を可能とする。また、電装扉20を開放していることを条件に、図10に示すように、発信機等の電装機器の修理交換などの際に、内部扉32の開閉を可能とし、さらに、電装扉20と内部扉32を一体とした開閉も可能とする。
【0084】
[e.内部扉の第1開閉操作部の構造]
続いて、内部扉32の第1開閉操作部36の構造について説明する。当該説明にあっては、図3乃至図5を参照する。
【0085】
図3に示すように、内部扉32には第1開閉操作部36が設けられ、第1開閉操作部36の操作により内部扉32の閉鎖固定と閉鎖固定の解除が行われる。第1開閉操作部36は、消火器扉18を開いた扉開口からのアクセスで操作可能な内部扉32の裏面側に設けられ、一般の利用者による不要な開放を防止可能としている。
【0086】
第1開閉操作部36は、指先操作により閉鎖固定とその解除を可能とする構造であり、その構造や機能は任意であるが、例えば、蝶ねじ3610と取付片3620で構成される。取付片3620は、内部扉32が位置する扉開口部15の裏側の上下の所定位置に固定され、通し穴が形成されている。
【0087】
取付片3620の通し穴に相対して内部扉32の扉面にはねじ穴が形成されており、取付片3620の通し穴に蝶ねじ3610を通して扉面のねじ穴にねじ込むことで、内部扉32を化粧枠11bの扉開口部15に閉鎖固定している。また、消火器扉18を開いて扉開口部15から内部扉32の裏面に手を入れることで、蝶ねじ3610を扉面のねじ穴から外すことで、内部扉32の閉鎖固定を解除して開放することを可能とする。なお、蝶ねじ3610に代えて、ローレットねじを使用してもよい。
【0088】
[f.電装扉の第2開閉操作部の構造]
続いて、電装扉20の第2開閉操作部38の構造について説明する。当該説明にあっては、図3乃至図5に加え、扉ハンドルによりロッドを移動させる電装扉20の第2開閉操作部を示した図11を参照する。なお、図11(A)は電装扉を閉鎖固定した状態を示し、図11(B)は電装扉の閉鎖固定を解除した状態を示す。
【0089】
図3乃至図5に示すように、電装扉20には第2開閉操作部38が設けられ、第2開閉操作部38の操作により電装扉20の閉鎖固定と閉鎖固定の解除が行われる。第2開閉操作部38は、電装扉20の蝶番と反対側の側面又は側面裏側となる見にくい位置に設けられ、一般の利用者による不要な開放を防止可能としている。
【0090】
ここで、電装扉20の第2開閉操作部38は、内部扉32の第1開閉操作部36に比べ高い操作性を有する構造としている。これは内部扉32の開閉操作は、例えば、取付けている電装機器の修理交換といった発生頻度の低い作業で必要とするものであり、通常は開くことのない仮止め固定を主体とした構造としている。これに対し電装扉20の開閉操作は定期的に行われる発信機24の点検作業といった発生頻度の高い作業で必要とすることから、操作性を高くして容易に操作できるようにしている。
【0091】
電装扉20の第2開閉操作部38は、図11(A)に示すように、電装扉20の側端の上下方向の略中央部に扉ハンドル3810が配置され、扉ハンドル3810から上方にロッド3830が取り出され、また、下方にロッド3840が取り出されている。
【0092】
上方に取り出したロッド3830の上端は、電装扉20の上縁に形成したガイド穴44を通して化粧枠11bの扉開開口部15の内縁に形成した通し穴42に貫通し、電装扉20の上側を筐体側に閉鎖固定している。
【0093】
また、下方に取り出したロッド3840の下端は、電装扉20の下縁に形成したガイド穴44を通して化粧枠11bの扉開開口部15の内縁に形成した通し穴42に貫通し、電装扉20の下側を筐体側に閉鎖固定している。
【0094】
扉ハンドル3810は、公知のリンク機構によりロッド3830,3840を連結しており、図11(B)に示すように、扉ハンドル3810のレバー3820を手前に引くと、ロッド3830,3840が扉ハンドル3810側に引き込まれて化粧枠11bの通し穴42から抜け出し、電装扉20の閉鎖固定が解除される。
【0095】
また、電装扉20の閉鎖位置でレバー3820を離して元の位置に戻すと、ロッド3830,3840が押し出されて化粧枠11bの通し穴42に貫通し、電装扉20が閉鎖固定される。
【0096】
[g.電装扉の第2開閉操作部の他の実施形態]
続いて、電装扉の第2開閉操作部の別形態について説明する。当該説明にあっては、ロックファスナーを用いた電装扉の第2開閉操作部を示した図12を参照する。なお、図12(A)は電装扉を閉鎖固定した状態を示し、図12(B)は電装扉の閉鎖固定を解除した状態を示す。
【0097】
図12(A)に示すように、他の実施形態となる電装扉32の第2開閉操作部46は、図11の場合と同様に、前方から分かりにくい位置として、電装扉20の蝶番側とは反対側の側端内側に配置され、一般の利用者による不要な開放を防止可能としている。
【0098】
本実施形態の第2開閉操作部46は、図11の構造と同様に、電装扉20の閉鎖固定と閉鎖固定の解除を行うものであり、公知のカムロックファスナーを使用している。
【0099】
図12(A)に示すように、カムロックファスナーを用いた電装扉20の第2開閉操作部46は、電装扉20の上下2カ所に設けられ、ソケット4610とプラグ4620で構成される。ソケット4610は、電装扉20の裏面側の仕切壁2010に形成した通し穴に固定され、プラグ4620はソケット4610に相対する化粧枠11bの内側に固定された取付片48に固定される。
【0100】
電装扉20を図12(A)に示すように閉鎖位置に保持し、この状態でプラグ46200をソケット4610に押し込むと、公知のカムロック機構の作動によりプラグ4620がソケット46100に対し抜け止め固定される。
【0101】
プラグ4620がソケット4610に対し抜け止め固定されている状態で、プラグ4620を押込むと、公知のカムロック機構の作動により固定が解除され、図12(B)に示すように、電装扉20の開放を可能とする。
【0102】
このようにソケット4610とプラグ4620で構成される電装扉20の第2開閉操作部46を設けることで、プラグ4620を押込むワンタッチ操作により、電装扉20の閉鎖固定と固定解除を簡単な操作で行うことを可能としている。
【0103】
[h.発信機の点検作業]
続いて、発信機の点検作業について説明する。当該説明にあっては、図11に示す電装扉20の第2開閉操作部38を設けた場合を例にとって説明する。
【0104】
点検時に消火栓装置10の電装扉20に設けられた発信機24を点検者が点検する場合には、図1及び図2に示した消火器扉18を開放し、図3に示した扉開口部15の消火器扉18の開放により開放された部分から電装扉20の側面裏側に作業手袋をした状態の手を入れ、図11(B)に示したように、扉ハンドル3810のレバー3820を引くと、上下に配置しているロッド3830,3840が引き込まれ、電装扉20の閉鎖固定が解除される。
【0105】
これにより、図4(B)、図6及び図9に示したように、閉鎖固定されている内部扉32に対し電装扉20を開放し、内部扉32に取付けている発信機24を構成する押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を前方(外部)に露出させる。続いて、点検者は露出された押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を操作して、発信機24から防災受信盤へ発信信号を送信して正常に動作するか否かを確認する。
【0106】
発信機24の点検終了後は、図11(B)に示したように、扉ハンドル3810のレバー3820を引いてロッド3830,3840を引き込んだ状態で電装扉20を閉鎖位置に戻し、レバー3820を離すとロッド3830,3840が上下に押し出され、閉鎖固定される。
【0107】
[i.電装機器の点検修理作業]
続いて、内部扉32に取付けられている電装機器の点検修理作業について、発信機24を例にとって説明する。
【0108】
発信機24を構成する押釦スイッチ2410に故障等の障害が発生した場合、担当者は図1及び図2に示した消火器扉18を開放し、図3に示した扉開口部15の消火器扉18の開放により開放された部分から電装扉20の側面裏側に作業手袋をした状態の手を入れ、図11(B)に示したように、扉ハンドル3810のレバー3820を引いて電装扉20の閉鎖固定を解除する。
【0109】
続いて、図3に示した扉開口部15の消火器扉18の開放により開放された部分から電装扉20の側面裏側に作業手袋をした状態の手を入れ、指先で蝶ねじ3610を回して取付片3620のねじ穴から取り外し、内部扉32の閉鎖固定を解除し、図5及び図10に示したように、電装扉20に続いて内部扉32を開放し、故障した押釦スイッチ2410を取外して新品に交換する修理作業を行う。
【0110】
修理作業を終了したら、内部扉32を閉鎖位置に戻して蝶ねじ3610で固定し、続いて、電装扉20を閉鎖位置に戻し、発信機24の点検作業と同様にして電装扉20を閉鎖固定する。
【0111】
[j.本発明の変形例]
本発明による発信機の取付構造及び防災装置*E1の変形例について説明する。本発明による発信機の取付構造及び防災装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0112】
(防災装置)
上記の実施形態は、防災装置として発信機を備えた消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、発信機を備えた消火器箱を含むものである。この場合の消火器箱は、例えば消火器扉と電装扉が設けられた扉構造であり、図1に示した内部が消火栓収納部となる筐体10aを除いた筐体10bのみとなる消火器箱としてもよい。
【0113】
また、防災装置として、その他に非常通報装置を含むものである。非常通報装置は、開閉自在な電装扉に消火栓装置の電装扉と同様に、赤色表示灯、発信機、応答ランプが設けられると共に電装扉の裏面側に電話ジャックが設けられ、発信機について上記の実施形態と同様に、発信機点検構造が設けられるものである。
【0114】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0115】
10:消火栓装置
10a,10b:筐体
11a,11b:化粧枠
12:消火栓扉
1210,1810:扉ハンドル
13:扉開口部
14:保守扉
17:ゴムシール
18:消火器扉
1820:覗き窓
20:電装扉
21a,21b:端子箱
22:赤色表示灯
23:取付片
24:発信機
2410:押釦スイッチ
2420:接続端子
2430:スイッチノブ
2440:保護板収納部
25:SOS銘板
26:応答ランプ
28:電話ジャック
30:消火器
32:内部扉
34:二重3管蝶番
3410:第1蝶番
3412,3422:扉子取付板部
3416,3417,3418,3426,3427,3428:軸受管部
3420:第2蝶番
3430:基台取付部
3440:軸部
36:第1開閉操作部
3610:蝶ねじ
3620,48:取付片
38,46:第2開閉操作部
3810:扉ハンドル
3820:レバー
3830,3840:ロッド
40,42:通し穴
44:ガイド穴
4610:ソケット
4620:プラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12