(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012198
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】発信機の取付構造及び防災装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114864
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】松本 修次
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発信機の点検作業を更に容易なものにして作業効率を向上可能とする。
【解決手段】発信機の取付構造は、消火栓装置に設けられた電装扉20の表側の操作開口部の保護板収納部2440に着脱自在に保持された保護板の押込みにより裏側に位置する押釦スイッチ2410がオン操作されるように発信機24を取り付けている。電装扉20の裏面側に、取付基台、スライド取付部36及びスライドレール38で構成される発信機点検構造が設けられ、保護板の押込みによりオン操作される位置から電装扉20の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置にスライド取付部36を移動し、スライド取付部36に取付けている押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を前方に露出させて操作可能とする。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装板に、前記電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより前記保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、
前記保護板の押込みによりオン操作される位置から前記電装板の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置に押釦スイッチを移動する発信機点検構造を備えたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の発信機の取付構造において、
前記発信機点検構造は、
前記電装板の裏面に固定された取付基台と、
前記取付基台に対し横方向に移動自在に設けられ、前記押釦スイッチが取付けられたスライド取付部と、
前記取付基台に対し前記スライド取付部を横方向に移動自在に支持するスライドレールと、
前記取付基台に位置した前記スライド取付部の固定と当該固定の解除を操作する開閉操作部と、
を備え、
前記開閉操作部で前記取付基台に対する前記スライド取付部の固定を解除した状態で、前記スライド取付部を前記保護板の押込みにより前記押釦スイッチをオン操作される位置から前記スライドレールの伸展により前記電装板の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置に移動することを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記取付基台は、少なくとも前後及び前記スライド取付部の移動方向の側面が開放された浅底の箱底状部材であり、
前記スライド取付部は、少なくとも前面及び前記スライド取付部の移動方向とは反対側の側面が開放された前記取付基台の外側に嵌め込み配置される箱蓋状部材であり、
前記箱底状部材と前記箱蓋状部材の上面の間及び下面の間のそれぞれに前記スライドレールが配置され、
前記箱底状部材と前記箱蓋状部材の移動側の側面の間に前記開閉操作部が配置されたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項4】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記スライドレールは2段階に伸縮する第1レール、第2レール及び第3レールで構成され、
前記第1レールが前記取付基台に固定され、前記第3レールが前記スライド取付部に固定されたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項5】
請求項2記載の発信機の取付構造において、
前記開閉操作部は、
前記取付基台側に配置されるソケットと、
前記スライド取付部側に配置されるプラグと、
で構成され、
前記ソケットに対する前記プラグの込み操作で固定され、当該押込み操作後の再度の押込み操作で前記プラグの固定が解除されるカムロック機構を備えたことを特徴とする発信機の取付構造。
【請求項6】
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装板と、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、
を備えた防災装置であって、
前記発信機は、請求項1記載の発信機の取付構造により前記電装板に取り付けられ、
前記装置扉の開放により開放された前記扉開口部から前記発信機の取付構造の前記発信機点検構造にアクセス可能としたことを特徴とする防災装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信機の取付構造、及び発信機を備えた消火栓装置等の防災装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内に設置され、火災等の非常時に使用するための防災機器を備えた防災装置が知られている。このような防災装置としては、消火栓装置や消火器箱等がある。例えば、消火栓装置は、開閉自在な消火栓扉を備えた消火栓収納部にノズルを装着したホースやバルブ類等の消火栓機器が収納され、道路に面する前面側から開閉可能な消火器扉を備えた消火器収納部に、例えば2本の消火器が収納され、更に消火器扉に隣接して、消火器扉と同様に前面側から開閉可能な電装扉を備えている。また、電装扉には、前面側に赤色表示灯、発信機、応答ランプ、並びに裏面側に電話ジャック等の電装機器が設けられており、発信機は電装扉の閉鎖状態で前面側から操作可能になっている。
【0003】
ここで、消火器扉と電装扉は、装置前面の各扉開口部に設けられ、通常時、電装扉は、裏面に設けられたねじ穴を備えた取付片に、取付片に相対して筐体側の扉開口部付近に設けられた受け部の通し穴を通したローレットねじ等をねじ込むことで、閉鎖位置で仮止め固定されており、例えば消火器扉は閉鎖位置に仮止め固定された電装扉に対して仮止め固定されている。
【0004】
また、発信機は、発信操作のための押釦スイッチを備えており、押釦スイッチの操作部である押釦が電装扉に設けられた所定の開口部を介して前面側から押圧操作できるようにして電装扉の裏面側から取り付けられており、また、電装扉の開口部の押釦位置の前面側には、透明な有機ガラス板等を使用した保護板(セフテクタ)が前面側から着脱自在に保持されている(特許文献1)。
【0005】
車両事故などに伴う火災時には、利用者が発信機の保護板を前面側から強く押し込むと、押釦スイッチの押釦が押し込まれて押釦スイッチがオン操作され、発信機から発信信号が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力され、これに伴う応答信号が防災受信盤から消火栓装置側に送られて応答ランプが点灯する。
【0006】
ところで、このような従来の発信機にあっては、定期点検等の際に、発信機を操作して正常に動作することを確認している。この発信機の点検作業時に火災時と同じ操作をする場合、点検終了後に保護板を再び開口部に嵌め込んで元の状態に戻す作業が必要になる。特許文献1においては、保護板は前面側からの押圧を受けて電装扉の前面パネルと押釦の間の空間に脱落するようになっており、保護板を通常位置に戻す作業には専用工具を必要として手間がかかる。或いは、保護板が破壊封板の場合には、保護板を新しいものに交換する作業が必要となり、同じように手間がかかる。
【0007】
このため、発信機の点検に手間と時間が掛かり、トンネル設備等においては所定間隔で設置されている多数の発信機を順次点検していく必要があるため、点検作業の効率が悪いことが問題となる。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献2にあっては、特許文献2の
図1、
図2及び
図4に示すように、外扉側に保護板を設け、外扉の裏面側に押釦スイッチが取り付けられた内扉を設け、押釦スイッチの押釦が内扉の前面側に位置するように構成している。このようにして、点検時には外扉のみを開放することで保護版を押圧することなく、即ち保護版を通常状態に保持したまま押しボタン操作を可能とすることで、発信機の点検作業を容易にして点検作業の効率を向上させている。
【0009】
また、特許文献2にあっては、
図5乃至
図7に示すように、電装扉(通報装置扉)の裏側に、発信機が取り付けられた横開きする内側子扉を設けるようにしている。点検時には、消火器扉を開いた状態で、電装扉の固定を解除して開き、電装扉の裏面側の内側子扉を開放することで保護板を押圧することなく、即ち保護板を通常状態に保持したまま押釦操作を可能とすることで発信機の点検作業を容易にして点検作業の効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-060580号公報
【特許文献2】特開2016-018219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような特許文献2の
図1、
図2及び
図4に示す外扉の裏面側に押釦スイッチが取り付けられた内扉を設けた構成においては、経年腐食等によって大気、雨水、融雪剤、粉塵等の影響を受けやすい外扉が内扉に対して固着して開放困難になる等、あらたな不良要因を生じる可能性がある。また、前面側から外扉を比較的簡単に開放可能としているため、専門の点検者だけでなく一般の利用者が不要に外扉を開放してしまう可能性が高まり、好ましくない。
【0012】
また、特許文献2の
図5乃至
図7に示す通報装置扉(電装扉)の裏面側に内側子扉を設ける構成については、内側子扉を開いて押釦スイッチの点検を終了した後に、内側子扉を完全に閉鎖した状態に固定し忘れた際に、その状態を前面側から確認し難い場合があり、更に改善の余地があった。
【0013】
また、点検員は手袋をはめた状態で、消火器扉を開いて扉開口から電装扉の裏側に手を入れてローレットねじによる固定を解除し、続いて、電装扉を開いた状態で内側子扉の閉鎖固定を解除して開放する操作が必要となり、また、点検終了後には内側子扉と電装扉を別々に閉鎖状態に戻す操作が必要となり、発信機の点検に手間と時間がかかる場合がある。
【0014】
本発明は、特許文献2における上述の問題点を解決し、保護板を取り外すことなく、また電装扉を開くことなく、発信機の押釦を露出する操作を可能として、発信機の点検作業の作業効率を向上する発信機の取付構造及び発信機を備えた防災装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発信機取付け構造)
本発明は、所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装板に、電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、
保護板の押込みによりオン操作される位置から電装板の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置に押釦スイッチを移動する発信機点検構造を備えたことを特徴とする。
【0016】
(発信機点検構造の構成)
発信機点検構造は、
電装板の裏面に固定された取付基台と、
取付基台に対し横方向に移動自在に設けられ、押釦スイッチが取付けられたスライド取付部と、
取付基台に対しスライド取付部を横方向に移動自在に支持するスライドレールと、
取付基台に位置したスライド取付部の固定と当該固定の解除を操作する開閉操作部と、
を備え、
開閉操作部で取付基台に対するスライド取付部の固定を解除した状態で、スライド取付部を保護板の押込みにより押釦スイッチをオン操作される位置からスライドレールの伸展により電装板の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置に移動する。
【0017】
(取付基台とスライド取付部を構成する箱構造)
取付基台は、少なくとも前後及びスライド取付け部の移動方向の側面が開放された浅底の箱底状部材であり、
スライド取付部は、少なくとも前面及びスライド取付け部の移動方向とは反対側の側面が開放された取付基台の外側に嵌め込み配置される箱蓋状部材であり、
箱底状部材と箱蓋状部材の上面の間及び下面の間のそれぞれにスライドレールが配置され、
箱底状部材と箱蓋状部材の移動側の側面の間に開閉操作部が配置される。
【0018】
(スライドレール)
スライドレールは2段階に伸縮する第1レール、第2レール及び第3レールで構成され、
第1レールが取付基台に固定され、第3レールがスライド取付部に固定される。
【0019】
(開閉操作部)
開閉操作部は、
取付基台側に配置されるソケットと、
スライド取付部側に配置されるプラグと、
で構成され、
ソケットに対するプラグの押込み操作で固定され、当該押込み操作後の再度の押込み操作でプラグの固定が解除されるカムロック機構を備える。
【0020】
(防災装置)
また、本発明の別形態にあっては、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装板と、
装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、
を備えた防災装置であって、
発信機は、前述した発信機の取付構造により電装板に取り付けられ、
装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造にアクセス可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
(発信機取付け構造の効果)
本発明は、所定の装置に形成された所定の扉開口部に設けられる電装板に、電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作される発信機を取り付ける発信機の取付構造であって、保護板の押込みによりオン操作される位置から電装板の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置に押釦スイッチを移動する発信機点検構造を備えたため、発信機の点検時等には、電装板の裏面側に取付けられている発信機の押釦スイッチを、電装扉の側端を超える横方向の所定位置に移動する操作を行うことで、押釦が外部に露出し、押釦スイッチを直接オン操作することで発信機の点検を行うことが可能となり、点検の作業効率を向上することを可能とする。
【0022】
また、電装板の裏面側で発信機の押釦スイッチを横方向へ移動させることで発信機の点検を行うことが可能であるため、電装板が設けられる所定の装置に電装板を開放することなく電装板の裏面側にアクセス可能な構造を設けておくことで、電装板が固着等により開放困難又は開放不可になった場合でも通常時における発信機の使用及び発信機の点検の双方が可能な状態が維持できる。また、電装板を開閉不可とする構成にすれば、一般の利用者による不要な開放を防止することができる。
【0023】
(発信機点検構造の効果)
また、発信機点検構造は、電装板の裏面に固定された取付基台と、取付基台に対し横方向に移動自在に設けられ、押釦スイッチが取付けられたスライド取付部と、取付基台に対しスライド取付部を横方向に移動自在に支持するスライドレールと、取付基台に位置したスライド取付部の固定と当該固定の解除を操作する開閉操作部と、を備え、開閉操作部で取付基台に対するスライド取付部の固定を解除した状態で、スライド取付部を保護板の押込みにより押釦スイッチをオン操作される位置からスライドレールの伸展により電装板の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置に移動するようにしたため、電装板の裏側に設けている開閉操作部を操作して固定を解除することで、固定基台に対し押釦スイッチを取付けているスライド取付部をスライドレールの伸展で横方向に移動して押釦が露出とする位置に移動し、簡単に押釦スイッチの押釦を操作して発信機の点検を行うことを可能とする。
【0024】
(取付基台とスライド取付部を構成する箱枠部材の効果)
また、取付基台は、少なくとも前後面及びスライド取付け部の移動方向の側面が開放された浅底の箱底状部材であり、スライド取付部は、少なくとも前面及びスライド取付け部の移動方向とは反対側の側面が開放された取付基台の外側に嵌め込み配置される箱蓋状部材であり、箱底状部材と箱蓋状部材の上面の間及び下面の間のそれぞれにスライドレールが配置され、箱底状部材と箱蓋状部材の移動側の側面の間に開閉操作部が配置されるようにしたため、箱底状部材となる固定基台に対し箱蓋状部材となるスライド取付部をスライドレールの伸展で横方向に移動して押釦が露出とする位置に移動する構造を簡単に実現可能とする。
【0025】
(スライドレールの効果)
また、スライドレールは2段階に伸縮する第1レール、第2レール及び第3レールで構成され、第1レールが取付基台に固定され、第3レールがスライド取付部に固定されたため、ガイドレールの2段階の伸展により、固定基台に対しスライド取付部を外扉の裏側を超える扉側面を超える横方向の位置に移動し、装置正面から見て外扉の横に発信機の押釦を確実に露出させることを可能とする。
【0026】
(開閉操作部の効果)
また、開閉操作部は、取付基台側に配置されるソケットと、スライド取付部側に配置されるプラグと、で構成され、ソケットに対するプラグの押込み操作で固定され、当該押込み操作後の再度の押込み操作でプラグの固定が解除されるカムロック機構を備えたため、このような開閉操作部として、例えば公知のカムロックファスナーを使用することができ、取付基台に対するスライド取付部の固定と固定解除の各操作を、スライド取付部の側面に設けたプラグのワンタッチ操作により簡単に行うことを可能とする。
【0027】
(防災装置の効果)
また、本発明の別形態にあっては、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装板と、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、を備えた防災装置であって、発信機は、前述した発信機の取付構造により電装板に取り付けられ、装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造にアクセス可能としたため、防災装置の1種である消火栓装置全般の電装扉(開閉可能とした電装板)には、発信機以外にも裏面に電話ジャックが設けられており、点検時には電話ジャックに受話器を接続して通話するために、装置扉に相当する消火器扉が必ず開放されることから、電装扉の裏面側で発信機の点検ができる本発信機の取付構造が適用されている消火栓装置では、発信機の点検のためだけに敢えて消火器扉を開放する作業とならず、かつ電装扉の裏面側で押し釦を押せるようにしたことで、受話器を持ちながら簡単且つ容易に発信機の点検を行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】電装扉が設けられたトンネル用の消火栓装置を示した説明図である。
【
図2】消火器収納部側を断面として
図1の消火栓装置を平面で示した説明図である。
【
図3】電装扉及び消火器扉を取り出して扉裏面側から示した説明図である。
【
図4】電装扉に取り付けられた状態の発信機を側面から示した説明図である。
【
図5】電装扉に取り付けられた状態の発信機を裏面から示した説明図である。
【
図6】電装扉に取り付けられた状態の発信機を縦断面で示した説明図である。
【
図7】電装扉に取り付けられた状態の発信機を平面から示した説明図である
【
図9】スライド取付部を取り出して示した説明図である。
【
図10】スライドレールを取り出して示した説明図である。
【
図11】開閉操作部を取出して示した説明図である。
【
図12】押釦スイッチを横移動した露出状態を消火栓装置の正面から示した説明図である。
【
図13】押釦スイッチを横移動した露出状態を電装扉及び消火器扉を取り出して裏面側から示した説明図である。
【
図14】押釦スイッチを横移動した露出状態を平面から示した説明図である。
【
図15】押釦スイッチを横移動した露出状態を正面から示した説明図である。
【
図16】押釦スイッチを横移動した露出状態を裏面から示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る発信機の取付構造及び発信機を備える防災装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0030】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、電装板に発信機を取り付けるための発信機の取付構造及び当該発信機の取付構造により発信機が取り付けられた電装板が設けられる防災装置に関するものである。
【0031】
ここで、「電装板」は、防災装置といった所定の装置に形成された扉開口部に設けられるものであり、扉開口部に対して開閉不能又は開閉可能に取り付けられたものであり、扉開口部に対して開閉可能に取り付けられた場合には「電装扉」と呼ばれる場合がある。また、「電装扉」は通常時には閉鎖位置で仮止め固定された扉を含む。「仮止め固定」とは、固定状態を解除可能に固定したものであり、仮止め固定状態では扉を開閉することはできないが、必要に応じてその固定を解除することで扉が開閉可能になり、その仮止め固定するための構造は任意であるが、例えば工具を使用することなく操作可能なローレットねじや蝶ねじを用いて、扉裏面に設けられたねじ穴を備えた取付片に、取付片に相対して防災装置の筐体側の扉開口部付近に設けられた受け部の通し穴を通したローレットねじ等をねじ込むことで固定するものを含む。尚、「電装板」には、発信機以外にも赤色表示灯や応答ランプ等の電装機器が取り付けられていても良い。
【0032】
また、「発信機」とは、電装板に形成された操作開口部に着脱自在に保持された保護板の押込みにより保護板の裏面側に位置する押釦スイッチの操作部が操作されるものであり、操作され作動した場合には、例えば発信信号を送信する。そのため、「発信機」は、点検時に押釦スイッチの操作部を操作して正常に作動することが確認されるものである。尚、「前面側」といった場合には、電装板が装置の扉開口部に設けられた場合の装置の外側を指し、「裏面側」といった場合には装置の内側を指している。
【0033】
そして、実施形態の発信機取付け構造は、保護板の押込みによりオン操作される位置から電装板の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置に押釦スイッチを移動する発信機点検構造を備えるものである。
【0034】
このため、発信機の点検時等には、外扉の裏面側に取付けられている発信機の押釦スイッチを、電装板の側端を超える横方向の所定位置に移動する操作を行うことで、押釦が外部に露出し、押釦スイッチを直接オン操作することで発信機の点検を行うことが可能となり、点検作業の効率向上を可能とする。
【0035】
実施形態の「発信機点検構造」は任意であるが、一例として、取付基台、スライド取付部、スライドレール及び開閉操作部で構成されるものである。
【0036】
ここで、「取付基台」とは電装板の裏面に固定されるものある。また。「スライド取付部」とは、取付基台に対し横方向に移動自在に設けられ、押釦スイッチが取付けられるものである。また、「スライドレール」とは、取付基台に対しスライド取付部を横方向に移動自在に支持するものである。さらに、「開閉操作部」とは、取付基台に位置したスライド取付部の固定と当該固定を解除してスライド開閉を操作するものである。
【0037】
このように構成された「発信機取付け構造」は、開閉操作部で取付基台に対するスライド取付部の固定を解除した状態で、スライド取付部を保護板の押込みにより押釦スイッチをオン操作される位置からスライドレールの伸展により電装板の側端を超える直接オン操作可能な横方向の所定位置に移動するものである。
【0038】
このため、電装板の裏側に設けている開閉操作部の操作によりスライド取付部の固定を解除することで、固定基台に対し押釦スイッチを取付けているスライド取付部をスライドレールの伸展で横方向に移動して押釦が露出とする位置に移動し、簡単に押釦スイッチの押釦を操作して発信機の点検を行うことを可能とする。
【0039】
また、「取付基台」は、少なくとも前後面及びスライド取付け部の移動方向の側面が開放された薄底の「箱底状部材」であり、また、「スライド取付部」は、少なくとも前面及びスライド取付部の移動方向とは反対側の側面が開放された取付基台の外側に嵌め込み配置される「箱蓋状部材」である。また、「スライドレール」は、箱底状部材と箱蓋状部材の上面の間及び下面の間のそれぞれに配置され、さらに、「開閉操作部」は、箱底状部材と箱蓋状部材の移動側の側面の間に配置される。
【0040】
このため、箱底状部材となる固定基台に対し箱蓋状部材となるスライド取付部をスライドレールの伸展で横方向に移動して押釦スイッチの操作部が露出とする位置に移動する構造を簡単に実現可能とするものである。
【0041】
また、「スライドレール」は、2段階に伸縮する第1レール、第2レール及び第3レールで構成され、「第1レール」が取付基台に固定され、「第3レール」がスライド取付部に固定される。このため、スライドレールの2段階の伸展により、固定基台に対しスライド取付部を電装板の扉側面を超える横方向の位置に移動し、装置正面から見て電装板の横位置に発信機における押釦スイッチの操作部を確実に露出させることを可能とする。
【0042】
また、「開閉操作部」の構造や種類は任意であるが、一例として、ソケットとプラグで構成される。ここで、「ソケット」とは、取付基台側に配置されるものであり、「プラグ」とは、スライド取付部側に配置されるものであり、ソケットに対するプラグの押込み操作で固定され、当該押込み操作後の再度の押込み操作でプラグの固定が解除されるカムロック機構を備える。実施形態の「開閉操作部」としては、例えば公知の「カムロックファスナー」を使用することができ、取付基台に対するスライド取付部の固定と固定解除の各操作がスライド取付部の側面に設けたプラグのワンタッチ操作(押込み操作)により簡単に行うことを可能とする。
【0043】
また、「防災装置」は、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、所定の電装機器として発信機が設けられた電装板と、装置前面に形成された所定の扉開口部に設けられ、装置内部にアクセスするときに開放される装置扉と、を備え、装置扉の開放により開放された扉開口部から発信機の取付構造の発信機点検構造にアクセス可能とするものである。
【0044】
また、「装置扉」とは、例えば内部に収納されている消火栓機器や消火器等の使用時等の装置内部にアクセスするときに開放される扉であり、特許文献2の
図5乃至
図7に示すような従来の消火器箱にあっては、電装扉に隣接している消火器扉が装置扉に相当する。尚、電装板が設けられる扉開口部と装置扉が設けられる扉開口部は同一の扉開口部であっても良く、異なる扉開口部であっても良い。
【0045】
また、「消火栓装置」の場合、「電装扉」と「装置扉」は、互いに相対する向きで開放される両開きに扉開口部に設けられ、通常、電装扉は閉鎖位置に保持されており、装置扉は閉鎖位置に保持された電装扉に対して開閉自在に設けられている。
【0046】
以下、具体的な実施形態を説明する。実施形態では、「電装板」が「扉開口部に対して開閉可能に取り付けられた電装扉」であり、「防災装置」が「消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置」であり、「装置扉」が「消火器扉」であり、「電装扉」と「装置扉」は、互いに相対する向きで開放される両開きに消火器収納部の前面の扉開口部に設けられる場合について説明する。
【0047】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の消火栓装置について、次のように分けて詳細に説明する。
a.発信機取付け構造を備えた消火栓装置
b.消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造
c.発信機点検構造
c1.発信機点検構造の概要
c2.取付基台
c3.スライド取付部
c4:スライドレール
c5:開閉操作部
d.発信機の点検
e.本発明の変形例
【0048】
[a.発信機取付け構造を備えた消火栓装置]
まず、発信機取付け構造を備えた消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、消火器箱及び非常通報装置が一体化された消火栓装置を示した
図1を参照する。
【0049】
ここで、
図1の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、各種扉が設けられた消火栓装置の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする(尚、
図1においてZ方向は図示されていない)。この点は
図2~
図16においても同様である。
【0050】
図1に示すように、消火栓装置10は、内部が消火栓収納部となる筐体10aと内部が消火器収納部となる筐体10bとに分割された構造であり、筐体10a,10bの前面には化粧枠11a,11bが設けられている。
【0051】
筐体10aの化粧枠11aの扉開口部には上下に分けて別々の扉が設けられ、扉開口部の下側にはヒンジにより下向きに開く前傾式の消火栓扉12が設けられ、扉開口部の上側にはヒンジにより上向きに開く保守扉14が設けられている。消火栓扉12には扉ハンドル1210が設けられ、利用者が扉ハンドル1210に手を入れて手前に引く操作を行うと、消火栓扉12のロックが解除されて消火栓扉12を開くことができる。また、筐体10aの内部である消火栓収納部には消火栓機器として、消火用ホースと消火栓弁を含むバルブ類等が収納されている。
【0052】
筐体10bの化粧枠11bの扉開口部には左右に分けて別々の扉が設けられ、扉開口部の左側にはヒンジにより左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、内部である消火器収納部には、例えば2本の消火器30を収納可能としている。消火器扉18には扉ハンドル1810が設けられ、利用者が扉ハンドル1810に手を入れて手前に引く操作を行うと、例えば磁気吸着による電装扉20に対する消火器扉18のロックが解除されて消火器扉18を開くことができる。また、消火器扉18には覗き窓1820が設けられ、外部から消火器30の有無を確認可能としている。
【0053】
また、化粧枠11bの扉開口部の右側にはヒンジにより右向きに横開きする電装扉20が設けられている。電装扉20には電装機器として、例えば赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ26が設けられ、また、発信機24の下に配置された発信機操作を示すSOS銘板25が位置する電装扉20の裏側には電話ジャックが設けられている。このように電装扉20に設けられた赤色表示灯22、発信機24、応答ランプ26及び電話ジャックにより非常通報装置が構成される。
【0054】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。また、火災が発生した場合には、利用者が発信機24の保護板を押込んで発信機24の押釦スイッチがオンされることで、発信機24から火災通報信号(発信信号)が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力され、これに伴い防災受信盤から応答信号が消火栓装置10側に送信されて、赤色表示灯22が点滅し、応答ランプ26が点灯する。
【0055】
[b.消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造]
続いて、消火器収納部側の筐体、消火器扉及び電装扉の構造について説明する。当該説明にあっては、消火器収納部の断面を平面(上面)で示した
図2、及び電装扉と消火器扉を取り出して示した
図3を参照する。尚、
図2は、
図1のa-a切断線の断面を示し、
図3(A)は扉の裏面(後面)を示し、
図3(B)は
図3(A)のb-b切断線の断面を平面(上面)で示している。
【0056】
まず、消火器収納部側の筐体の構造について説明する。
図2に示すように、筐体11bの内部である消火器収納部には2本の消火器30が収納され、筐体11bの内部後面には端子箱21a,21bが設けられている。端子箱21aには電装扉20に設けられた赤色表示灯22が配線用ケーブルを介して接続され、端子箱21bには電装扉20に設けられた発信機24、応答ランプ26、電話ジャック28及び筐体11aの消火栓収納部に設けられたポンプ起動スイッチとポンプ起動連動スイッチが配線用ケーブルを介して接続されている。
【0057】
また、
図3(A)に示すように、化粧枠11bの扉開口部13の周囲には防水用のゴムシール17が設けられている。また、上側から順番に、赤色表示灯22、発信機24、電話ジャック28及び応答ランプ26を電装扉20に取り付けるために、取付板32(取付部材)が電装扉20の裏側に設けられる。この内、発信機24の取付け構造は発信機点検構造を備え、発信機点検構造は、発信機24の押釦スイッチを取付けているスライド取付部36を消火器扉18側となる横方向に移動可能に設けており、発信機24の操作部を前方に露出可能としている。
【0058】
次に、消火器扉18及び電装扉20の構造について説明する。
図2、3に示すように、化粧枠11bの扉開口部13の正面から見て左側にはヒンジ18aにより左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、化粧枠11bの扉開口部13の右側にはヒンジ20aにより右向きに横開きする電装扉20が設けられている。消火器扉18と電装扉20は、ヒンジ18a,20aにより相対する向きに開く両開き構造の外扉として化粧枠11bの扉開口部13に設けられており、扉の合わせ部分は、扉の閉鎖位置では電装扉20の扉枠2010が筐体11bの内部側に位置し、扉枠2010の外側(前側)に消火器扉18の扉枠1830が位置している。
【0059】
また、電装扉20は消火器扉18に対して扉枠として機能するものであり、扉枠として機能するために、電装扉20の上下2箇所にねじ穴を備えた取付片23が設けられ、取付片23に相対して筐体11b側に設けられた固定片の通し穴を通したローレットねじ又は蝶ねじを取付片23にねじ込むことで、通常、電装扉20は扉開口13部に閉鎖位置で仮止め固定されている。
【0060】
また、消火器扉18との扉合わせ部分となる電装扉20の扉枠2010の中央にはマグネット2020が設けられ、マグネット2020に対して消火器扉18の扉合わせ部分となる扉枠1830の裏面(電装扉20の扉枠2010側)に設けられた磁気吸着板が吸着固定することで、消火器扉18は閉鎖位置で保持されている。
【0061】
また、消火器扉18の扉ハンドル1810は、電装扉20側(右側)の略中央に設けられ、扉ハンドル1810に手を入れて手前に引く操作を行うことで、マグネット2020による磁気吸着を解除してヒンジ18aを軸に消火器扉18を開放可能とする。
【0062】
一方、消火栓装置10の点検時には、発信機24の押釦スイッチをオン操作して発信機24が正常に機能することを確認する点検操作が行われる。本実施形態にあっては、発信機24を点検する場合には、発信機24の押釦スイッチのオン操作を可能とするため、点検員は消火器扉18を開放し、電装扉20の裏面側に設けられた発信機点検構造のスライド取付部36の固定を解除して横方向に移動し、開放している消火器扉18の扉開口部に位置させることで、スライド取付部36に取付けている発信機24の押釦スイッチの操作部を前方に露出させて、押釦スイッチをオン操作することを可能としている。
【0063】
[c.発信機点検構造]
続いて、電装扉の裏側に設けられた発信機点検構造について説明する。当該説明にあっては、
図3に加え、電装扉に取り付けられた状態の発信機を側面から示した
図4、電装扉に取り付けられた状態の発信機を裏面から示した
図5、電装扉に取り付けられた状態の発信機を縦断面で示した
図6、及び電装扉に取り付けられた状態の発信機を平面から示した
図7を参照する。尚、
図6の縦断面は
図5の切断線b-bの断面となる。
【0064】
(c1.発信機取付け構造の概要)
まず、発信機取付け構造の概要について説明する。
図4乃至
図7に示すように、発信機取付け構造は、電装扉20の裏面側に発信機24を取付けるものである。発信機24は押釦スイッチ2410と操作部となるスイッチノブ2430を備える。
【0065】
押釦スイッチ2410は2回路のa接点を備えたスイッチであり、後方に4本の接続端子2420が設けられ、前方にはオン操作される操作部としてスイッチノブ2430が設けられている。また、接続端子2420には端子箱21bからの配線用ケーブル(図示なし)が接続され、接続端子2420及びスイッチノブ2430には防水用のゴムカバーが装着されている。
【0066】
また、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430の位置に対応して電装扉20には保護板収納部2440が設けられている。保護板収納部2440には、特許文献1に示したと同様に、電装扉20の開口穴(操作開口部)にリング状に形成したプラスチック製の枠部材により透明な有機ガラス板等を使用した保護板が着脱自在に保持されている。このため、車両事故などに伴う火災時には、利用者が発信機24の保護板を強く押し込むと、保護板が枠部材から外れて押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を押し込むことでオン操作され、発信機24から火災通報信号(発信信号)が電気室等の防災受信盤に送信されて防災受信盤から火災警報が出力される。
【0067】
尚、発信機24の下側には電話ジャック28が配置されている。電話ジャック28は、取付板32の矩形の開口を有する起立した取付部分に取り付けられ、ジャック本体2810の先端に蓋部材2820を装着しており、点検員等が携帯している非常電話機のプラグを、蓋部材2820を外してジャック本体2810のジャック穴に差し込むことで、防災受信盤側の親電話機と接続して通話することを可能にしている。
【0068】
電装扉20の裏側に発信機24の取付ける発信機取付け構造は、発信機点検構造35を備えており、点検時等に、保護板収納部2440に設けた保護板の押込みによりオン操作される通常時の位置から、電装扉24の側端を超えて消火器扉18の開口部となる横方向の所定位置に移動して、スイッチノブ2430を直接オン操作可能とする。
【0069】
発信機点検構造35の押釦スイッチ2410を通常位置から横方向の露出位置に移動させるための構造や機能は任意であるが、例えば、取付基台34、スライド取付部36、スライドレール38及び開閉操作部40で構成される。
【0070】
図6に示すように、電装扉20の裏側に配置された取付板32の発信機24の取付け位置には、取付基台34が固定されており、取付基台34の外側にスライド取付部36が横方向に移動可能に配置されている。取付基台34とスライド取付部36の上面の間および下面の間の各々にはガイドレール38が配置されている。通常時、スライド取付部36は開閉操作部40により取付基台34に固定されている。
【0071】
点検時などには、点検員は消火器扉18を開き、扉開口から手を入れてスライド取付部36の側面の2個所に配置している開閉操作部40による固定を解除して横方向に移動させる操作を行う。このため取付基台34とスライド取付部36の間に設けているガイドレール38が横方向に伸展し、スライド取付部36を支えた状態で、スライド取付部36を開いている消火器扉18の扉開口部側となる横方向の位置に移動し、スライド取付部36に取付けている押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を前方に露出させ、保護板によらずにスイッチノブ2430を直接オン操作可能とする。
【0072】
(c2.取付基台)
続いて、発信機点検構造35に設けられた取付基台34について説明する。当該説明にあっては、取付基台34を取り出して示した
図8を参照する。尚、
図8(A)は平面を示し、
図8(B)は裏面を示し、
図8(C)は裏側から見た右側面を示し、
図8(D)は
図8(B)の切断線c-cの断面を示す。
【0073】
図8に示すように、取付基台34は、薄底の箱形状を有し、裏面の全面、正面の上下を除く中央及び裏側から見た右側面の上下を除く中央が開放されており、
図9に示すスライド取付部36を箱蓋とすると、取付部材34は浅底の箱底に相当し、箱底状部材ということができる。
【0074】
更に詳細に説明すると、取付基台34の裏面は全面が開放されているが、前面は上下に仕切部3410が形成され、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を前方から保護板により押込み操作するための前面開口部3412が設けられている。また、取付基台34の前面の仕切部3410の4箇所には、
図6に示した電装扉20の裏側配置された取付板32に取付基台34をねじ止め固定するための通し穴3418が形成されている。
【0075】
取付基台34の右側面の側面開口3616の上下には仕切壁3414が形成されており、仕切壁3414の間にスライド取付部36に取付けている押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430を横方向へ通過させるための側面開口部3416が形成されている。また、仕切壁3414には開閉操作部40のソケット4020が配置されている。
【0076】
取付基台34の上面には、
図10に示すガイドレール38の一端を取付け固定するためのねじ穴3420が形成されている。同じねじ穴3420は取付基台34の下面にもスライドレール38を取付け固定するために形成されている。
【0077】
(c3.スライド取付部)
続いて、スライド取付部36について説明する。当該説明にあっては、スライド取付部36を取り出して示した
図9を参照する。尚、
図9(A)は平面を示し、
図9(B)は裏面を示し、
図9(C)は裏側から見た右側面を示し、
図9(D)は
図9(B)の切断線d-dの断面を示す。
【0078】
図9に示すように、スライド取付部36は、薄底の箱形状を有し、前面及び裏側から見た左側面が開放されており、
図8に示した取付基台34を箱底とすると、スライド取付部36は箱蓋に相当し、箱蓋状部材ということができる。
【0079】
スライド取付部36の裏面には取付穴3610が形成され、
図4乃至
図7に示したように、発信機24の押釦スイッチ2410が取付け固定される。このためスライド取付部36の箱蓋状部材の内部は、取付穴3610に取付け固定した押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が位置するスイッチノブ収納部3612を形成している。
【0080】
ここで、取付穴3610に取付けた押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430の飛出し長さを、
図6に示すようにD1とすると、
図9(D)に示すスライド取付部36の深さD2はD1より僅かに長いD1<D2の関係にあり、スライド取付部36を横方向で移動した場合に、押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が取付基台34に当たらないようにしている。
【0081】
スライド取付部36の裏側から見た右側面の上下2カ所には、
図7に示した取付基台34の裏側から見た右側面の上下2カ所に配置した開閉操作部40のソケット部4020に相対して、開閉操作部40のプラグ4010が配置されている。
【0082】
また、スライド取付部36の上面には、
図9に示すスライドレール38の一端を取付け固定するためのねじ穴3614が形成されている。同じねじ穴3614はスライド取付部36の下面にもスライドレール38を取付け固定するために形成されている。
【0083】
(c4:スライドレール)
続いて、スライドレール38について説明する。当該説明にあっては、スライドレールを取り出して示した
図10を参照する。尚、
図10(A)はスライドレールを縮めた状態を示し、
図10(B)はスライドレールを伸ばした状態を示す。
【0084】
図10に示すように、実施形態の発信機点検構造35に使用するスライドレール38は、多段構成のガイドレールであり、例えば、第1レール3810、第2レール3820及び第3レール3830を連結した3段構成とし、それぞれのレール長をL1,L2,L3としている。
【0085】
3段構成のスライドレール38は、第1レール3810を固定側とすると、
図10(B)に示すように、第1レール3810に対し第2レール3820が移動してストッパ構造で決まる所定位置に停止し、続いて、第2レール3820に対し第3レール3830が移動してストッパ構造で決まる所定位置に停止し、2段階のレールの伸長によりレール長が
図10(A)のL1から
図10(B)のLに伸びる。
【0086】
第1レール3810は、通し穴3812を
図9に示した取付基台34の上面のねじ穴3420に合わせることで、取付基台34の上面に固定される。同様に、取付基台34の下面にも、別のガイドレール38の第1レール3810が固定される。
【0087】
第3レール3830は、通し穴3832を
図10に示したスライド取付部36の上面のねじ穴3614に合わせることで、スライド取付部36の上面に固定される。同様に、スライド取付部36の下面も、別のスライドレール38の第3レール3830に固定される。
【0088】
ここで、
図10(B)に示すスライドレール38を最大限に伸ばした場合の長さLは、
図3に示しているスライド取付部36が横方向に移動して、電装扉18の側端を超えて開放している消火器扉18の開口部に位置し、少なくともスライド取付部36に取付けている押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が前方に露出する所定の長さとしている。
【0089】
(c5:開閉操作部)
続いて、開閉操作部40について説明する。当該説明にあっては、開閉操作部40を取出して示した
図11を参照する。
【0090】
開閉操作部40は、
図6に示したように、通常時に取付基台34の外側に嵌め込まれているスライド取付部36の固定と当該固定の解除を操作するものであり、その構造や種類は任意であるが、例えば、公知のカムロックファスナーを使用する。
【0091】
図11に示すように、カムロックファスナーを用いた開閉操作部40は、プラグ4010とソケット4020で構成される。ソケット4020は、取付基台34の側面上部の仕切壁3414に形成した通し穴に固定され、プラグ4010はソケット4020に相対するスライド取付部36の側面に固定される。
【0092】
固定側となる取付基台34に対しスライドレール38を介して支持されたスライド取付部36を裏面から見て左側に移動して当接させ、この状態でプラグ4010をソケット4020に押し込むと、公知のカムロック機構の作動によりプラグ4010がソケット4020に対し抜け止め固定される。
【0093】
プラグ4010がソケット4020に対し抜け止め固定されている状態で、プラグ4010を押込むと、公知のカムロック機構の作動により固定が解除され、ソケット4020からプラグ4010を抜き出すことができる。
【0094】
このようにプラグ4010とソケット4020で構成される開閉操作部40を発信機点検構造35に設けることで、プラグ4010を押込むワンタッチ操作により、取付基台34に対するスライド取付部36の固定と固定解除を簡単な操作で行うことを可能としている。
【0095】
[d.発信機の点検作業]
続いて、発信機の点検作業について説明する。当該説明にあっては、押釦スイッチを横移動した露出状態を消火栓装置の正面から示した
図12、押釦スイッチを横移動した露出状態を電装扉及び消火器扉を取り出して裏面側から示した
図13、押釦スイッチを横移動した露出状態を平面から示した
図14、押釦スイッチを横移動した露出状態を正面から示した
図15、及び押釦スイッチを横移動した露出状態を裏面から示した
図16を参照する。尚、
図13(A)は扉の裏面(後面)を示し、
図13(B)は
図13(A)のe-e切断線の断面を平面(上面)で示している。
【0096】
点検時に消火栓装置10の電装扉20に設けられた発信機24を点検員が点検する場合には、
図12及び
図13に示すように、消火器扉18を開放し、続いて、消火器扉18の開放により開放された開口部分から電装扉20の裏側に作業手袋をした手を入れ、例えば
図5に示したように、電装扉20の裏面側に配置されている発信機点検構造35におけるスライド取付部36の側面の上下2カ所に設けている開閉操作部40のプラグ4010を押込むことで、取付基台34に対するスライド取付部36の固定を解除し、
図12乃至
図16に示すように、スライド取付部36を横方向に移動し、スライドレール38が伸び切ることで、スライド取付部36は開いている消火器扉18の開口に移動する。
【0097】
このようにスライド取付部36が開いている消火器扉18の開口に移動した場合には、
図12及び
図15に示すように、スライド取付部36の裏面側に取付けている押釦スイッチ2410のスイッチノブ2430が前方に露出した状態となり、スイッチノブ2430を押込み操作してスイッチオンし、防災受信盤へ発信信号を送信して動作を確認する。
【0098】
発信機24の点検が終了した後の復旧作業は、
図12乃至
図16に示すように、開いている消火器扉18の開口に位置しているスライド取付部36を電装扉20の裏側に押し込んで、例えば
図5に示した通常位置に戻し、開閉操作部40のプラグ4010を押込むことで、取付基台34にスライド取付部36を固定する。
【0099】
このように電装扉24に設けられた発信機24の点検作業にあっては、開閉操作部40のプラグ4010を押込んでスライド取付部36の固定を解除して横方向の露出する位置に引出してスイッチノブ2430を操作することで発信機24の動作を確認し、点検終了後は、スライド取付部36を元の位置に押し戻し、開閉操作部40のプラグ4010を押込んで固定することで初期状態に戻すことができ、電装扉20を開くことなく、発信機24の動作を確認する点検作業の効率を高めることを可能とする。なお、発信機24等の電装機器の修理交換等を行う場合には、
図3に示すように電装扉20に設けられた取付片23にねじ込んでいるローレットねじ又は蝶ねじを取外して電装扉20の閉鎖固定を解除して開き、修理交換等の作業を行う。
【0100】
[e.本発明の変形例]
本発明による発信機の取付構造及び防災装置の変形例について説明する。本発明の発信機の取付構造及び防災装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0101】
(防災装置)
上記の実施形態は、防災装置として発信機を備えた消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、発信機を備えた消火器箱を含むものである。この場合の消火器箱は、消火器扉と電装扉が設けられた扉構造であれば任意の構造で良く、例えば
図1に示した内部が消火栓収納部となる筐体10aを除いた筐体10bのみとなる消火器箱としてもよい。また、防災機器収納装置として、その他に非常通報装置を含むものである。非常通報装置は、開閉自在な電装扉に消火栓装置の電装扉と同様に、赤色表示灯、発信機、応答ランプが設けられると共に電装扉の裏側に電話ジャックが設けられ、発信機について上記の実施形態と同様に、発信機点検構造が設けられるものである。
【0102】
(電装扉のみの防災機器収納装置)
上記の実施形態は、装置の前面に形成された扉開口部に、電装扉と装置内部にアクセスするときに開放される装置扉が設けられた場合の発信機の取付構造を例にとっているが、装置扉を持たない電装扉のみの防災機器収納装置に、実施形態の発信機点検構造を備えた発信機の取付構造を適用してもよい。この場合には、電装扉を開いた状態で同様にしてスライド取付部36を横方向に移動して押釦スイッチ2410のスイッチノブ3430を外部に露出させ、発信機24の作動を確認する点検を行うものとする。
【0103】
(開閉操作部)
上記の実施形態は、取付基台34に位置したスライド取付部36の固定と当該固定の解除を操作する開閉操作部40としてソケットとプラグで構成される公知のカムロックファスナーを設けたが、これに限定されず、ボールキャッチやマグネットキャッチ等のキャッチ、プッシュラッチやマグネットラッチ等のラッチ等の適宜の構造、機構、種類の開閉操作部を含むものである。
【0104】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0105】
10:消火栓装置
10a,10b:筐体
11a,11b:化粧枠
12:消火栓扉
1210,1810:扉ハンドル
14:保守扉
18:消火器扉
1820:覗き窓
20:電装扉
21a,21b:端子箱
22:赤色表示灯
23:取付片
24:発信機
2410:押釦スイッチ
2420:接続端子
2430:スイッチノブ
2440:保護板収納部
25:SOS銘板
26:応答ランプ
28:電話ジャック
30:消火器
32:取付板
34:取付基台
3410:正面仕切部
3412:正面開口部
3414:側面仕切部
3416:側面開口部
3418:通し穴
3420:ねじ穴
35:発信機点検構造
36:スライド取付部
3610:取付穴
3612:スイッチノブ収納部
3614:ねじ穴
38:ガイドレール
3810:第1レール
3820:第2レール
3830:第3レール
3812,3832:通し穴
40:開閉操作部
4010:プラグ
4020:ソケット