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特開2025-12202タレントマーケットプレイスシステムおよびタレントマーケットプレイスプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012202
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】タレントマーケットプレイスシステムおよびタレントマーケットプレイスプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/105 20230101AFI20250117BHJP
【FI】
G06Q10/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114872
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】河邊 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】滝藤 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】島田 汐理
(72)【発明者】
【氏名】福田 李成
(72)【発明者】
【氏名】阿部 泰己
(72)【発明者】
【氏名】露木 浩章
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA08
5L049AA08
(57)【要約】
【課題】自律的・機動的に人財と業務のより好適なマッチングを実現するタレントマーケットプレイスを構築する。
【解決手段】社員の経歴および実績の情報を取得して記録し、要求に応じて出力する社員情報管理部20と、部署の業務の情報を取得して記録し、要求に応じて出力する部署情報管理部30と、社員の経歴および実績の情報と、部署の業務の情報とに基づいて、レコメンドする1以上の部署または社員からなるレコメンド情報を導出し、また、所定のマッチングアルゴリズムにより、各社員が希望する1以上の部署と、各部署が希望する1以上の社員との間におけるマッチング案を導出するレコメンド処理部50と、レコメンド情報とマッチング案を出力するマッチング情報出力部40とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他部署での業務を希望する応募者の人財と、人財を募集する募集者の部署とのマッチングを支援するタレントマーケットプレイスシステムであって、
応募者の経歴および実績の情報を取得して記録し、要求に応じて出力する応募者情報管理部と、
募集者の業務の情報を取得して記録し、要求に応じて出力する募集者情報管理部と、
応募者の経歴および実績の情報と、募集者の業務の情報とに基づいて、応募者または募集者に対してレコメンドする1以上の募集者または応募者からなるレコメンド情報を導出し、また、所定のマッチングアルゴリズムにより、各応募者が希望する1以上の募集者と、各募集者が希望する1以上の応募者との間におけるマッチング案を導出するレコメンド処理部と、
前記レコメンド情報と前記マッチング案を出力するマッチング情報出力部と、を有する、タレントマーケットプレイスシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のタレントマーケットプレイスシステムにおいて、
前記レコメンド処理部は、各応募者の経歴および実績の情報に係るテキストデータと、各募集者の業務の情報に係るテキストデータについて、自然言語処理により文章および単語の近さを評価して前記レコメンド情報を導出する、タレントマーケットプレイスシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のタレントマーケットプレイスシステムにおいて、
前記応募者情報管理部は、さらに応募者の保有スキルの情報を取得して記録し、
前記募集者情報管理部は、さらに募集者のメンバーの保有スキルの情報を取得して記録し、
前記レコメンド処理部は、応募者の保有スキルの情報と、募集者のメンバーの保有スキルの情報とに基づいて、前記レコメンド情報を導出する、タレントマーケットプレイスシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のタレントマーケットプレイスシステムにおいて、
前記応募者情報管理部は、さらに応募者の性格および資質の情報を取得して記録し、
前記募集者情報管理部は、さらに募集者のメンバーの性格および資質の情報を取得して記録し、
前記レコメンド処理部は、応募者の性格および資質の情報と、募集者のメンバーの性格および資質の情報とに基づいて、前記レコメンド情報を導出する、タレントマーケットプレイスシステム。
【請求項5】
他部署での業務を希望する応募者の人財と、人財を募集する募集者の部署とのマッチングを支援するタレントマーケットプレイスシステムとしてコンピュータを動作させるタレントマーケットプレイスプログラムであって、
前記コンピュータが、
応募者の経歴および実績の情報を取得して記録するステップと、
募集者の業務の情報を取得して記録するステップと、
応募者の経歴および実績の情報と、募集者の業務の情報とに基づいて、応募者または募集者に対してレコメンドする1以上の募集者または応募者からなるレコメンド情報を導出して出力するステップと、
所定のマッチングアルゴリズムにより、各応募者が希望する1以上の募集者と、各募集者が希望する1以上の応募者との間におけるマッチング案を導出して出力するステップと、を実行する、タレントマーケットプレイスプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業における人的資本経営に資する技術に関し、特に、タレントマーケットプレイスを実現するタレントマーケットプレイスシステムおよびタレントマーケットプレイスプログラムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産人口が減少する日本の企業においては、最大効率で人的資本を活用することが必要不可欠である。すなわち、人事部門が事業戦略の遂行に必要な人的資源を調達・育成する人財戦略と、各事業部門が人的資源の強みを活かした事業戦略を練る事業戦略とを、経営層が全社を俯瞰しながら連動させる(経営戦略)ことで、「人財」の価値を最大限に引き出して、中長期的な企業価値向上につなげることが重要である。
【0003】
しかし、将来の予測が困難なVUCA(Volatility(変動性), Uncertainty(不確実性), Complexity(複雑性), Ambiguity(曖昧性))の現代においては、事業戦略は変化し、人財の流動性と多様性も高まっており、従来のような経営層や人事部門が主導する中央集権型の意思決定構造では、双方の変化に対応することは極めて困難である。
【0004】
そこで、事業戦略の遂行に必要な業務と、各人財個人の能力・実績・意思とを市場原理によってマッチングして結びつける「社内人財市場」の仕組み(タレントマーケットプレイス)を形成し、この仕組みによって機動的に人財戦略と事業戦略とを連動させて、現場のエンゲージメントと生産性を向上させることが検討されている。
【0005】
募集者(求人者)と、応募者(求職者)とのマッチングによる配属先の決定に係る技術として、例えば、特開2004-62270(特許文献1)には、求人者と求職者に共通の複数のカテゴリのそれぞれについて、設定されている複数の選択肢のうちから求人者が選択した求人側回答情報と、求職者が選択した求職側回答情報とを比較して、求人者からみた求職者の評価ポイントと、求職者からみた求人者の評価ポイントをそれぞれ算出して、これらのポイントに基づいて求人者と求職者とのマッチングを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-62270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたような従来技術によれば、応募者と募集者のマッチングを行って配属案を作成することが可能ではあるが、人事部門が配属先の試案を作成する際の補助となるような簡易なマッチング手法であって、マッチング結果の適切さや効果を求めるには限界がある。また、対象の応募者全てに対していずれかの募集者(配属先)を決定する必要があることから、全体最適化や、一部の応募者・募集者を対象にした最適化を行った結果、個別には最適なマッチングとは言い難い組合せの応募者や募集者が生じる可能性もある。
【0008】
そこで本発明の目的は、自律的・機動的に人財と業務のより好適なマッチングを実現するタレントマーケットプレイスシステムおよびタレントマーケットプレイスプログラムを提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記載および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
本発明の代表的な実施の形態であるタレントマーケットプレイスシステムは、他部署での業務を希望する応募者の人財と、人財を募集する募集者の部署とのマッチングを支援するタレントマーケットプレイスシステムであって、応募者の経歴および実績の情報を取得して記録し、要求に応じて出力する応募者情報管理部と、募集者の業務の情報を取得して記録し、要求に応じて出力する募集者情報管理部と、応募者の経歴および実績の情報と、募集者の業務の情報とに基づいて、応募者または募集者に対してレコメンドする1以上の募集者または応募者からなるレコメンド情報を導出し、また、所定のマッチングアルゴリズムにより、各応募者が希望する1以上の募集者と、各募集者が希望する1以上の応募者との間におけるマッチング案を導出するレコメンド処理部と、前記レコメンド情報と前記マッチング案を出力するマッチング情報出力部と、を有するものである。
【0012】
また、本発明は、コンピュータを上記のようなタレントマーケットプレイスシステムとして動作させるプログラムにも適用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、より自律的・機動的に人財と業務の好適なマッチングを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態であるタレントマーケットプレイスシステムの構成例について概要を示した図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるタレントマーケットプレイスの画面の例について概要を示した図である。
図3】本発明の一実施の形態におけるタレントマーケットプレイスの画面の他の例について概要を示した図である。
図4】本発明の一実施の形態におけるタレントマーケットプレイスの画面の他の例について概要を示した図である。
図5】本発明の一実施の形態における経歴・実績に基づくレコメンドの考え方の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0017】
<概要>
本発明の一実施の形態であるタレントマーケットプレイス(以下「TMP」と記載する場合がある)システムは、例えば、企業内の複数の社内公募等(その募集者である部署や部門、グループ等(以下「部署」と総称する場合がある))と、これらに対する応募者とをマッチングさせる情報処理システムである。本実施の形態では、マッチングの際に、応募者のスキルや性格・資質、経歴・実績などの情報を用いて、好適な部署をレコメンドすることで情報流通を活性化するとともに、マッチングアルゴリズムにより応募者と募集者との好適なマッチング案を提示することで、経営層や人事部門による最終的な人財のアロケーションの決定を支援する。
【0018】
すなわち、本実施の形態では、マッチングという目的に特化し、応募者となる社員個人の情報(保有スキルや性格・資質、経歴・実績など)や募集者となる部署の情報、レコメンド情報などについて、必要・有用な情報のみをシンプルに画面表示して可視化することで、応募者、募集者双方に対してタレントマーケットプレイスを実現する。
【0019】
なお、本実施の形態では、部署による社内公募とこれに対する応募を主な例として説明するが、これに限られるものではなく、例えば、定期的な人事のローテーションや、新人や中途採用者の配属などの際にも適用することができる。また、対象となる応募者について、人事的な異動を希望する者だけに限らず、スキルアップ等のために他の部署の業務の兼務を希望する場合や、一定期間限定での他の部署での業務経験を目的とする場合なども広く対象とすることができる。
【0020】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態であるタレントマーケットプレイス(TMP)システムの構成例について概要を示した図である。TMPシステム1は、例えば、PC(Personal Computer)やタブレット型端末等の情報処理端末により実装されていてもよいし、サーバ機器もしくはクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等により実装されていてもよい。図中では1つの論理的な情報処理システムとして記載されているが、物理的には複数の情報処理端末やサーバ等に機能が分散して実装されていてもよい。
【0021】
TMPシステム1は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置からメモリ上に展開したOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラム等のミドルウェアや、その上で稼働するソフトウェアを実行することで、TMP構築に係る各種機能を実現する。
【0022】
このTMPシステム1は、例えば、ソフトウェアとして実装されたユーザインタフェース(UI)処理部10、社員情報管理部20、部署情報管理部30、マッチング情報出力部40、およびレコメンド処理部50などの各部を有する。これら各部は全体として1つのアプリケーションプログラムとして実装されていてもよいし、各部がそれぞれ独立したプログラムとして実装されて連携する構成であってもよい。また、TMPシステム1は、例えば、データベースやファイルテーブルなどにより実装されたスキル情報21、性格情報22、経歴情報23、部署スキル情報31、部署性格情報32、および部署業務情報33などの各データストアを有する。
【0023】
UI処理部10は、利用者(応募者や、部署の担当者等)に対して、後述する社員情報管理部20や部署情報管理部30、マッチング情報出力部40などの各部による処理結果を画面表示したり、入力を受け付けたり等のユーザインタフェース機能を提供する。例えば、TMPシステム1が備える図示しないディスプレイ等に表示する構成であってもよいし、図示しないネットワークを介して接続する情報処理端末上のWebブラウザや専用アプリケーションによって表示する構成であってもよい。表示する画面の例については後述する。
【0024】
社員情報管理部20は、異動など他部署での業務を希望する応募者の社員のパーソナル情報を管理し、UI処理部10を介して画面に出力する機能を有する。パーソナル情報としては、例えば、各社員が保有するものとして自己申告した、もしくは社内や外部団体等から認定されたスキルの種類やレベルの情報や、所定の性格診断・適性診断テスト等により計測、判定された性格や資質の情報、これまでの業務上の実績や自身による経歴アピール、今後チャレンジしたい分野や業務の情報などが含まれる。これらの情報は、例えば、UI処理部10を介して社員からの入力を受け付けて、スキル情報21、性格情報22、および経歴情報23等にそれぞれ登録するようにしてもよいし、必要最低限の人事情報等については図示しない人事データベース等との連携により取得して、他の情報を社員からの入力により補充するようにしてもよい。
【0025】
部署情報管理部30は、社内公募をしているなど、社員を募集し、もしくはスカウトしたい部署の情報を管理し、UI処理部10を介して画面に出力する機能を有する。部署の情報としては、例えば、部署のメンバーが保有しているスキルの種類や平均レベル、求めているスキルの種類やレベルの情報や、部署のメンバーによる所定の性格診断・適性診断テスト等により計測、判定された性格や資質の平均の情報、部署において現状行われている業務や今後の方針、社内公募の募集要項の情報などが含まれる。これらの情報は、例えば、UI処理部10を介して部署の担当者からの入力を受け付けて、部署スキル情報31、部署性格情報32、および部署業務情報33等にそれぞれ登録する。
【0026】
マッチング情報出力部40は、後述するレコメンド処理部50により応募者の社員と募集者の部署とをマッチングした結果として、応募者の社員に対してレコメンドする部署、および募集者の部署に対してレコメンドする社員の情報をUI処理部10を介して画面に出力する機能を有する。また、UI処理部10を介して、応募者からの希望の募集者の入力、および募集者からの希望の応募者の入力を受け付けて、レコメンド処理部50により導出された好適なマッチング案を画面に出力する機能を有する。応募者および募集者双方が効果的に検討を行えるようにするための付随機能として、例えば、応募者・募集者の検索機能や、新着の応募者・募集者を表示する機能、応募者・募集者の情報に対する社内全体でのアクセスランキングを表示する機能などを有していてもよい。
【0027】
レコメンド処理部50は、応募者の社員の情報と募集者の部署の情報とに基づいて、応募者に対してレコメンドする募集者、および募集者に対してレコメンドする応募者を特定したレコメンド情報を導出する機能を有する。また、応募者から入力された希望の募集者、および募集者から入力された希望の応募者の情報に基づいて、双方の希望が最大限に満たされるようなマッチングパターンを導出して好適なマッチング案として出力する機能を有する。レコメンドする募集者および応募者を特定する際の考え方や処理については後述する。
【0028】
レコメンド情報に基づいて(レコメンド情報に基づかなくてもよい)入力された応募者および募集者双方の希望をマッチングさせる手法としては、例えば、従来技術の特許文献1に記載されたような手法など各種のものを用いることが可能であるが、本実施の形態では、レコメンド処理部50において公知のDA(Deferred Acceptance)アルゴリズム(Gale-Shapleyアルゴリズム)を用いることで、双方の希望が最大限に満たされるようなマッチングパターンの導出という人手では困難な処理を実現可能とする。
【0029】
本実施の形態では、異動など他部署での業務を希望する社員(応募者)と、社内公募をしているなど、社員を募集し、もしくはスカウトしたい部署(募集者)の担当者が、TMPシステム1にアクセスして、自身もしくは自部署の情報を登録するとともに、募集者である部署や応募者である社員の情報を閲覧する。その際、上述したように、社員や部署のメンバーのスキル、性格・資質、および経歴・実績の情報を用いて双方に対して好適な部署や社員をレコメンドする。
【0030】
応募者および募集者は、それぞれ閲覧した内容に希望の部署や社員があればその部署や社員を特定して入力・登録する。例えば、応募者である社員は、異動したい、もしくは他の部署の業務も兼務したい、あるいは他の部署の業務を経験してみたい等の希望に合致すると考える部署を具体的に特定して希望を出す。一緒に働きたいと考える社員(もしくは当該社員が所属する部署)を特定して希望を出すようにしてもよい。希望を出すに際しては、第1希望~第n希望など複数の部署を順位付けして特定するようにしてもよい。同様に、募集者である部署は、異動してほしい、もしくは自部署の業務を兼務してほしい、あるいは業務支援してほしい等の希望に合致すると考える社員を具体的に特定して希望を出す。第1希望~第n希望など複数の社員を順位付けして特定するようにしてもよい。
【0031】
その上で、各応募者(社員)と各募集者(部署)の希望について、DAアルゴリズムにより双方の希望が最大限に満たされるようなマッチングパターンを自動的に導出する。このマッチング案をベースとして、例えば、人事部門や経営層などが実際の異動やローテーション、他部署での業務の実施可否などを最終決定するようにしてもよい。なお、マッチング案として導出された異動等の内容を全て実現させると、特定の部署から多数の社員が異動してしまうなどの弊害が生じるケースもあることから、例えば、1つの部署から他部署に異動等することができる社員を一定数に制限するなどの制約を設けるようにしてもよい。
【0032】
<画面例>
図2は、本発明の一実施の形態におけるタレントマーケットプレイスの画面の例について概要を示した図である。この画面は、社員情報管理部20によりUI処理部10を介して表示され、他部署での業務を希望する社員が、自身を紹介するためのパーソナルな情報を入力するとともに、募集者である各部署の担当者や他の社員がこれらの情報を閲覧することを可能とする。
【0033】
画面上部のキーワード入力フィールドに氏名や部署名、部署が提供する機会(Opportunity)等のキーワードを入力して社員や部署、機会等を検索することができる。図示しない検索結果から選択されたアイテムに応じて、後述する部署の画面やマッチング結果を表示する画面などに随時遷移することができる。
【0034】
キーワード入力フィールドの下部のエリアには、社員のプロフィール情報として、氏名や写真、所属部署、簡単な自己紹介等の情報が表示されている。必要最低限の人事情報等については、例えば、人事データベース等との連携により取得したデータを表示するようにしてもよい。
【0035】
プロフィール情報の表示エリアの下部エリアには、当該社員がアピールしたい経歴や実績の上表が表示され、さらに下部のエリアには、当該社員が今後挑戦したい領域や獲得・習得したいスキルの情報が表示されている。これらの情報は、当該社員が自身でテキストの文章として入力する。フリーテキストで入力することにより、レコメンド処理部50において自然言語処理によりキーワードを抽出して、募集者の部署の業務内容や募集要項等との類似度や相性などをシステム的に評価することが可能となる。
【0036】
さらに下部のエリアには、当該社員が保有するスキルの情報が表示されている。保有スキルの情報は、例えば、社内で定義されたスキル項目とスキルレベルの基準に基づいて認定され、もしくは社員の自己申告によって設定される。当該社員が個別に入力してもよいし、人事データベース等に登録されているデータを取得して表示するようにしてもよい。
【0037】
図3は、本発明の一実施の形態におけるタレントマーケットプレイスの画面の他の例について概要を示した図である。この画面は、部署情報管理部30によりUI処理部10を介して表示され、社員を募集する部署の担当者が、当該部署や案件、機会などを紹介するための情報を入力するとともに、応募者である社員や他の部署の担当者等がこれらの情報を閲覧することを可能とする。
【0038】
画面上部のキーワード入力フィールドの下部のエリアには、部署のプロフィール情報として、部署名や業務の概要、注力していく領域の紹介等の情報が表示されている。当該部署を紹介する短い動画などが表示されるようにしてもよい。これらの情報は、例えば、当該部署の担当者が入力する。
【0039】
さらに下部のエリアには、当該部署の性格や資質の特徴として、所属メンバーの性格診断・適性診断テストの結果の平均などの集計情報が表示されている。これらの情報は、当該部署の担当者が個別に入力してもよいし、人事部門が保有するデータを取得して表示するようにしてもよい。さらに下部のエリアには、人事データベース等から取得した当該部署の責任者のプロフィール情報が表示され、さらに下部のエリアには、当該部署内のグループやメンバーの紹介等の情報が表示されている。これらの情報は、例えば、当該部署やグループの担当者が入力する。
【0040】
図4は、本発明の一実施の形態におけるタレントマーケットプレイスの画面の他の例について概要を示した図である。この画面は、マッチング情報出力部40によりUI処理部10を介して表示され、応募者である社員および募集者である部署の担当者が、自身にとって好適なものとしてレコメンドされた部署や社員等の情報を閲覧し、希望を出すことを可能とする。図4では、応募者である社員に対してレコメンドする部署等の情報を表示する場合の例を示している。
【0041】
例えば、画面上部のキーワード入力フィールドの下部のエリアには、新着の社内公募案件等、社内の様々な機会の情報が表示されている。そして、その下部のエリアには、当該社員に対して、自身が図2の例の画面等を介して入力したスキルや、性格・資質、および経歴・実績の情報に基づいてそれぞれ好適なものとしてレコメンドされた部署や案件、他の社員などの情報が表示されている。例えば、応募者がこの画面から他の社員や部署等を選択すると、図2図3の例に示した社員のパーソナル情報や部署の紹介情報を表示する画面に遷移して、詳細を確認することができ、さらに対象の社員や部署に対して希望を出すことができる。なお、応募者(または募集者)が、レコメンドされている募集者(または応募者)を「お気に入り」やブックマークに登録する事ができる構成としてもよい。これにより、当該募集者(または当該応募者)の状況を継続的に確認することも可能となる。
【0042】
<レコメンドの手法>
本実施の形態では、上述したように、レコメンド処理部50により、応募者である社員や募集者である部署のメンバーのスキル、性格・資質、および経歴・実績の情報を用いて、好適な部署や社員を双方にレコメンドする。
【0043】
スキルに基づくレコメンドについては、例えば、募集者である各部署が要求するスキルの要件(スキルの種類とレベル)に対する、応募者である各社員の保有スキルの充足度を算出し、充足度の高い部署もしくは社員を順位付けしてレコメンドする。充足度の算出手法は特に限定されないが、例えば、部署が要求するスキル要件と社員が保有するスキルとを比較して単純に充足しているスキルの数をカウントする(スキルによって重み付けしてもよい)というような手法でもよいし、部署が要求するスキル要件と社員が保有するスキルとの統計上の距離の近さを公知の手法により算出して充足度とするような手法であってもよい。
【0044】
なお、ここでは募集者である各部署が要求するスキルの要件に対する、応募者である各社員の保有スキルの充足度を算出するものとしているが、換言すれば、応募者である各社員が充足していないスキルを特定することも可能であり、特定されたスキルを応募者である各社員に対して提示する構成としてもよい。これにより、応募者である各社員は、自身が獲得すべきスキルを把握することができる。また、スキル以外の他の情報について充足度を算出してレコメンドする構成としてもよく、この場合、当該情報の内容によっては、逆に、応募者である各社員が要求・要望する内容や要件に対して、募集者である各部署がこれを充足するか否かを判断する構成となる場合も生じ得る。
【0045】
性格・資質に基づくレコメンドについては、例えば、社員に対して実施した性格診断・適性診断テストの結果に基づいて、所定の手法により応募者である社員の性格・資質と、募集者である部署の各メンバーの性格・資質の平均との統計上の距離の近さを算出し、距離が近い、すなわち性格や資質が似ており相性がよいと推測される部署や社員を順位付けしてレコメンドする。相性という観点では、性格・資質が似ている部署や社員をレコメンドするのに代えて、似ていないが相互に補完する関係にある部署や社員をレコメンドするようにしてもよい。さらに、実際に異動等により他部署での業務を経験した社員にアンケートを実施し、回答における部署との相性を目的変数として機械学習を行って、得られた学習済みモデルを用いて社員と部署との間の性格・資質の相性を推定してレコメンドするようにしてもよい。
【0046】
経歴・実績に基づくレコメンドについては、例えば、応募者である各社員の現在までの経歴・実績や保有スキルと、今後希望する業務や獲得したいスキル、および募集者である各部署の現在の業務と、今後強化もしくは展開したい業務の4つの要素の組合せについてそれぞれ類似度を評価してレコメンドする。
【0047】
図5は、本発明の一実施の形態における経歴・実績に基づくレコメンドの考え方の例について概要を示した図である。図中では上記の4つの要素とその組合せが示されており、応募者である社員の現在までの経歴・実績や保有スキルと、募集者である部署の現在の業務との組合せで評価した場合は、「(1)即戦力人財」という観点でのレコメンドとなることを示している。同様に、社員が今後希望する業務や獲得したいスキルと、部署の現在の業務との組合せで評価した場合、当該社員に対する「(2)キャリア支援」という観点でのレコメンドとなることを示している。また、社員の現在までの経歴・実績や保有スキルと、部署が今後強化もしくは展開したい業務との組合せで評価した場合、社内における「(3)適材適所」という観点でのレコメンドとなることを示している。また、社員が今後希望する業務や獲得したいスキルと、部署が今後強化もしくは展開したい業務との組合せで評価した場合、社内における「(4)人財発掘/育成」という観点でのレコメンドとなることを示している。
【0048】
各要素の組合せにおける類似度の評価は、例えば、応募者である社員および募集者である部署の担当者がそれぞれ図2図3の例に示した画面を介して入力した自身の紹介やアピール等の文章について、自然言語処理における公知の手法を用いて文章や単語の近さを判定して評価するという手法をとることができる。一般に利用可能なAIエンジンを用いて評価する構成としてもよい。このような評価手法により、定型化されたスキル項目だけでなく、フリーテキストの情報から特徴的なキーワードを拾う等により、スキルのマッチだけではカバーできないより適切かつ効果的なレコメンドを実現することができる。
【0049】
なお、上記の説明では、応募者である社員や募集者である部署のメンバーのスキル、性格・資質、および経歴・実績の情報を用いてレコメンドを行う際、現時点(例えば、社員が閲覧した時点もしくは四半期毎等の所定の時点など)でのそれぞれの項目の評価に基づいて組合せを評価するものとしているが、このときのレコメンドの情報を保持しておき、後に、過去に行ったその時点での評価に基づくレコメンドの履歴としてこれを表示する構成としてもよい。これにより、応募者である社員または募集者である部署は、過去の各時点でのレコメンドの内容を振り返ることができ、その時系列での変化を通して自身に合った募集者もしくは応募者を見つけることができる。
【0050】
また、応募者もしくは募集者に対し、指定した特定の募集者もしくは応募者との間のマッチングの状態(例えば、レコメンドの順位等)の変遷を時系列で表示する構成としてもよい。これにより、長期的な視野で好適な募集者もしくは応募者を判断することも可能となる。例えば、応募者である社員について、業務することを希望していた部署があった場合に、当初は当該社員のスキル不足等により、当該部署についてのレコメンドの順位が低かったため応募しなかったが、当該社員が時間の経過により業務経験やスキルを蓄積したことで当該部署についてのレコメンドの順位が上がった結果、自信を持って応募することができるようになる。なお、応募者もしくは募集者が特定の募集者もしくは応募者を指定する際は、例えば、上述した「お気に入り」やブックマークに登録されている募集者もしくは応募者から指定することで、容易に指定することができる。
【0051】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるTMPシステム1によれば、マッチングの際に、応募者である社員や募集者である部署のメンバーのスキルや、性格・資質、経歴・実績などの情報を用いて、好適な部署や社員、社内公募等の機会をレコメンドすることで情報流通を活性化するとともに、マッチングアルゴリズムにより応募者と募集者との好適なマッチング案を提示するタレントマーケットプレイスを実現することができ、経営層や人事部門による最終的な人財のアロケーションの決定を支援することが可能である。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0053】
例えば、上記の実施の形態では、社員および部署のメンバーのスキルや、性格・資質、経歴・実績の情報を用いてレコメンドするものとしているが、これら全ての要素それぞれを用いてレコメンドすることは必須ではなく、いずれか1つ以上の要素を用いてレコメンドするものであってもよい。なお、経歴・実績の情報に基づいて自然言語処理により類似度を評価して行うレコメンドが他の要素に基づくレコメンドより精度が高い傾向があることが分かっていることから、少なくとも経歴・実績の情報を用いたレコメンドについては行うものとするのが望ましい。
【0054】
また、例えば、上記の実施の形態では、現に異動など他部署での業務を希望する社員や、社員を募集したい部署を対象に、レコメンドやマッチングをするものとしているが、これに限らず、現時点で他部署での業務を希望していない社員や、社員の募集を検討していない部署についてもスキルや性格・資質、経歴・実績等の情報を取得するようにしてもよい。これにより、現時点で具体的な希望がなくても、潜在的によりフィットする部署やプロジェクト、社員をレコメンドすることも可能となり、タレントマーケットプレイスの市場機能をより活性化させることができるとともに、社内全体での人財配置の最適化を図ることも可能となる。
【0055】
また、上記の実施の形態では、社内におけるタレントマーケットプレイスを対象としているが、社外のグループ企業やパートナー企業、異業種の企業、採用市場、フリーランス、退職者等も対象に取り込んで、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)を実現するための基盤とすることも可能である。
【0056】
なお、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0057】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、タレントマーケットプレイスを実現するタレントマーケットプレイスシステムおよびタレントマーケットプレイスプログラムに利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…タレントマーケットプレイス(TMP)システム、
10…UI処理部、
20…社員情報管理部、21…スキル情報、22…性格情報、23…経歴情報、
30…部署情報管理部、31…部署スキル情報、32…部署性格情報、33…部署業務情報、
40…マッチング情報出力部、
50…レコメンド処理部
図1
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図3
図4
図5